説明

燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法

【課題】低コスト化及び軽量化を実現することが可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム100は、燃料電池111と、燃料電池111に反応ガスを出入りさせる反応ガス供給通路101及び反応ガス排出通路102と、反応ガス供給通路101に接続されて反応ガスを供給する反応ガス供給部112と、反応ガス供給通路101に接続されて掃気ガスとして酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部113と、反応ガス排出通路102に設けられて当該反応ガス排出通路102を開閉するパイロットキック式電磁弁1と、反応ガス供給部112、酸化剤ガス供給部113及びパイロットキック式電磁弁1の駆動を制御する制御部121と、を備えており、パージ時には、パイロットキック式電磁弁1から反応ガスを第一の流量で排出させ、掃気時には、パイロットキック式電磁弁1から酸化剤ガスを第一の流量よりも多い第二の流量で排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に搭載される燃料電池システムにおいて、燃料電池の運転停止時に、燃料電池のアノード側に残留する水分を掃気する(システム系外に追い出す)ために、燃料電池のカソード側に供給される酸化剤ガスを掃気ガスとして用いてアノード側を掃気する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる技術においては、燃料電池のアノード側の下流には掃気排出弁が設けられており、アノード側を掃気する際には、かかる掃気排出弁が開弁される。
【0003】
また、燃料電池の運転時に、燃料電池のアノード側に存在する水分、窒素等の不純物を排出する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。かかる技術においては、燃料電池のアノード側の下流にはパージ弁が設けられており、アノード側の不純物を排出する際にはかかるパージ弁が開弁される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−288007号公報
【特許文献2】特開2006−324058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、前記した掃気排出弁は掃気ガスを大流量で流すのに対して、前記したパージ弁は反応ガスを小流量で流すものであり、望まれる流量特性が異なるため、これらは別体のバルブとして燃料電池システムに並列に組み込まれている。これに対して、燃料電池システムにおいては、低コスト化及び軽量化が望まれている。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決すべく創案されたものであり、低コスト化及び軽量化を実現することが可能な燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本願発明の燃料電池システムは、反応ガスを供給されて発電を行う燃料電池と、前記燃料電池に前記反応ガスを出入りさせる反応ガス流路と、前記反応ガス流路における前記燃料電池の上流側に接続されて前記反応ガスを供給する反応ガス供給部と、前記反応ガス流路における前記燃料電池の上流側に接続されて反応に供しない掃気ガスを供給する掃気ガス供給部と、前記反応ガス流路における前記燃料電池の下流側に設けられて前記反応ガス流路を開閉するバルブと、前記反応ガス供給部、前記掃気ガス供給部及び前記バルブの駆動を制御する制御部と、を備える燃料電池システムであって、前記バルブは、前記反応ガス流路の上流側と連通する導入ポートと、前記反応ガス流路の下流側と連通する導出ポートと、を有するバルブボディと、前記バルブボディ内に設けられて前記制御部の制御に基づいて移動する可動部材と、前記導入ポートと前記導出ポートとの間に設けられ、前記可動部材に形成されたパイロット弁座に着座及び離座可能な第一弁部と、前記バルブボディに形成されたメイン弁座に着座及び離座可能な第二弁部と、を有する弁体と、前記弁体に形成され、当該弁体の上流側と下流側を導通させるパイロット通路と、を備え、前記制御部は、前記反応ガス流路内の反応ガスを新鮮な反応ガスに置換する際には、前記反応ガス供給部を駆動させることによって前記反応ガスを供給している状態において、前記バルブの駆動を制御して前記弁体の前記第二弁部を前記メイン弁座に着座させつつ前記第一弁部を前記パイロット弁座から離座させることによって、前記パイロット通路を介して第一の流量の前記反応ガスを排出させ、前記反応ガス流路内の反応ガスを掃気ガスに置換する際には、前記反応ガス供給部の駆動を停止させることによって前記反応ガスの供給が中止されている状態において、前記バルブの駆動を制御して前記第二弁部を前記メイン弁座から離座させ、続いて前記掃気ガス供給部を駆動させることによって前記掃気ガスの供給を開始し、前記第一の流量よりも多い第二の流量の前記掃気ガスを排出させることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によると、従来のパージ弁及び掃気排出弁の機能を一つのバルブによって実現することが可能となる。
【0009】
また、本願発明の燃料電池システムの制御方法は、前記バルブの前記第一弁部が前記パイロット弁座に着座するとともに前記第二弁部が前記メイン弁座に着座することによって前記バルブが閉弁された状態において、前記制御部が、前記反応ガス供給部を駆動させることによって前記反応ガスを供給する燃料電池運転ステップと、前記燃料電池運転ステップの後に、前記反応ガス供給部の駆動を停止させることによって前記反応ガスの供給が中止されている状態において、前記制御部が、前記バルブの駆動を制御して前記第二弁部を前記メイン弁座から離座させ、続いて前記掃気ガス供給部を駆動させることによって前記掃気ガスの供給を開始し、第二の流量の前記掃気ガスを排出させる掃気ステップと、を含み、前記燃料電池運転ステップは、前記反応ガス供給部を駆動させることによって前記反応ガスを供給している状態において、前記制御部が、前記バルブの駆動を制御して前記弁体の前記第二弁部を前記メイン弁座に着座させたまま前記第一弁部を前記パイロット弁座から離座させることによって、前記パイロット通路を介して第一の流量の前記反応ガスを排出させるパージステップを含むことを特徴とする。
【0010】
かかる構成によると、パージステップにおいて反応ガス流路内の反応ガスを新鮮な反応ガスに置換することと、掃気ステップにおいて反応ガス流路内の反応ガスを反応に供しない掃気ガスに置換することを一つのバルブによって実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反応ガス流路内の反応ガスを新鮮な反応ガスに置換することと、反応ガス流路内の反応ガスを反応に供しない掃気ガスに置換することを一つのバルブによって実現し用いることができるので、燃料電池システムの低コスト化及び軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムを模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るパイロットキック式電磁弁を模式的に示す図であり、閉弁状態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るパイロットキック式電子弁を模式的に示す図であり、第一の開弁状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るパイロットキック式電磁弁を模式的に示す図であり、第二の開弁状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同様の部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。かかる燃料電池システム100は、例えば、自動車等の車両に搭載される。
【0014】
図1に示すように、燃料電池システム100は、燃料電池111と、燃料電池111に対して反応ガスとしての水素ガスを供給する反応ガス供給部112と、燃料電池111に対して酸化剤ガス(酸素)を供給する酸化剤ガス供給部113と、燃料電池111から排出された反応ガスを、燃料電池111から排出された酸化剤ガスによって希釈する希釈器114と、を備えている。
【0015】
燃料電池111は、例えば、固体高分子電解質型燃料電池(PEFC)であり、図示しない燃料電池自動車等の車両に搭載される。この燃料電池111は、複数の単セルが積層して構成されたスタック本体(図示せず)を有しており、反応ガスとして水素ガスが供給されるアノードと、酸化剤ガスとして、例えば、酸素を含むエアが供給されるカソードと、を備えている。
【0016】
反応ガス供給部112は、内部に高圧の水素ガスが充填された水素タンク(図示せず)と、水素ガスの供給を制御するための遮断弁(図示せず)と、を備えている。反応ガス供給部112と燃料電池111との間には、反応ガス供給通路101が設けられており、反応ガス供給通路101中には、エゼクタ115が配設されている。エゼクタ115は、燃料電池111から排出された未反応の反応ガスをフィードバックさせる循環通路105と接続されており、燃料電池111からフィードバックされた未反応の反応ガスを反応ガス供給部112から供給される反応ガスに混合させて、燃料電池111のアノードに供給する装置である。
【0017】
酸化剤ガス供給部113は、酸化剤ガスとしての圧縮エアを生成するエアコンプレッサ(図示せず)と、生成された圧縮エアを加湿する加湿器(図示せず)と、を備えている。酸化剤ガス供給部113と燃料電池111との間には、酸化剤ガス供給通路103が設けられている。
【0018】
燃料電池111と希釈器114との間には、燃料電池111のアノードから排出された反応ガスを希釈器114に送る反応ガス排出通路102が設けられている。なお、反応ガス排出通路102において、循環通路105との分岐の下流側には、パイロットキック式電磁弁1が設けられいる。
【0019】
燃料電池111と希釈器114との間には、燃料電池111のカソードから排出された酸化剤ガスを希釈器114に送る酸化剤ガス排出通路104が設けられている。また、酸化剤ガス供給通路103と反応ガス供給通路101との間には、酸化剤ガス導入通路106が設けられている。酸化剤ガス導入通路106には、掃気導入弁116が設けられている。掃気導入弁116は、常閉型の電磁弁であり、酸化剤ガスを掃気ガスとして燃料電池111のアノード及び反応ガス排出通路102に供給する際に開弁される。
【0020】
なお、反応ガス供給通路101及び反応ガス排出通路102の組み合わせが、特許請求の範囲における「反応ガス流路」の一例であり、酸化剤ガス供給部113、酸化剤導入通路106及び掃気導入弁116の組み合わせが、特許請求の範囲における「掃気ガス供給部」の一例である。
【0021】
燃料電池システム100は、制御部121をさらに備えている。制御部121は、例えば、CPU、RAM、ROM及び入出力回路から構成されており、イグニッションスイッチ122からの出力等に基づいて、反応ガス供給部112、酸化剤ガス供給部113、掃気導入弁116及びパイロットキック式電磁弁1の駆動を制御する。
【0022】
<パイロットキック式電磁弁1>
パイロットキック式電磁弁1は、常閉型の電磁弁であり、図2に示すように、バルブボディ10と、コイル20と、可動コア30と、スプリング40と、パイロット弁体50と、メイン弁体60と、を備えている。後記するように、メイン弁体60は、第一弁部61及び第二弁部62を備えている。
【0023】
≪バルブボディ10≫
バルブボディ10は、酸化剤ガス又は掃気ガス(エア)が導入される導入ポート10aと、導入された酸化剤ガス又は掃気ガス(エア)が外部へと排出される導出ポート10bと、を有する。バルブボディ10は、金属製材料(例えば、ステンレス鋼)から形成されており、その内部にパイロット弁体50及びメイン弁体60が変位自在(ここでは、図の上下方向に変位自在)に設けられている。
【0024】
導入ポート10aは、酸化剤ガス又は掃気ガスとしての酸化剤ガスが供給される通路であり、バルブボディ10の内部に形成されるパイロット室10cと連通している。
【0025】
導出ポート10bは、パイロット室10c内の酸化剤ガス又は掃気ガスとして酸化剤ガスが導出される通路であり、連通室10cの底壁10cに形成された孔部10dを介してパイロット室10cと連通している。この底壁10cの上面は、メイン弁体60の第二弁部62が着座及び離座するメイン弁座10eとして機能している。孔部10dの開口面積は、後記する掃気ステップにおいて必要な流量(第二の流量)で酸化剤ガスを流すことが可能な大きさに設定されている。
【0026】
≪コイル20、可動コア30、スプリング40≫
コイル20は、バルブボディ10の外周に巻回されている。可動コア30は、磁性体からなる金属製材料によって円柱状に形成されている。スプリング40は、バルブボディ10と可動コア30の上端部との間に介装された付勢手段であり、スプリング40の弾発力は、可動コア30を下方(閉弁方向)に付勢している。
≪パイロット弁体50≫
パイロット弁体50は、可動コア30の下部に一体に形成されており、パイロット弁座部51と、係止部52と、を備えている。
【0027】
パイロット弁座部51は、パイロット弁体50の下面に形成されており、後記するメイン弁体60の第一弁部61が着座及び離座することが可能な弁座である。係止部52は、パイロット弁座部51から下方に立設されており、その先端部には、後記するメイン弁体61の係止部64と係脱可能な内向きの突起が形成されている。また、後記するように、パイロット弁座部51と係止部52とで形成される領域内には、メイン弁体60の第一弁部61及び係止部64が収容されている。なお、可動コア30及びパイロット弁体50の組み合わせが、特許請求の範囲における「可動部材」の一例である。
【0028】
≪メイン弁体60≫
メイン弁体60は、特許請求の範囲における「弁体」の一例であって、パイロット弁体50と導出ポート10bとの間に設けられており、第一弁部61と、第二弁部62と、パイロット通路63と、係止部64と、流路65と、を備えている。
【0029】
第一弁部61は、メイン弁体60の上面に形成されており、前記したパイロット弁座部51に着座及び離座する。第一弁部61がパイロット弁座部51に着座した状態では、パイロット通路63の上側開口が閉塞される。
【0030】
第二弁部62は、メイン弁体60の下面に形成されており、前記したメイン弁座部10eに着座及び離座する。第二弁部62がメイン弁座部10eに着座した状態では、孔部10dの上側開口が閉塞される。
【0031】
パイロット通路63は、メイン弁体60の上流側と下流側とを導通させる通路であり、その上側開口は第一弁部61に形成され、その下側開口は第二弁部62に形成されている。パイロット通路63の下側開口は、第二弁部62がメイン弁座部10eに着座した状態において、孔部10dと連通している。パイロット通路63の開口面積は、後記するパージステップにおいて必要な流量(第一の流量)で反応ガスを流すことが可能な大きさに設定されている。かかる第一の流量は、前記した第二の流量よりも少ない。
【0032】
係止部64は、前記したパイロット弁体50の係止部52と係脱可能な外向きの突起である。メイン弁体60の第一弁部61及び係止部64は、パイロット弁体50のパイロット弁座部51及び係止部52によって区画された領域に収容されている。かかる係止部64は、制御部121による駆動制御によって可動コア50が上方に移動した際に、パイロット弁体50の係止部52に係止される。
【0033】
流路65は、係止部64に形成された切欠き又は孔であり、パイロット弁体の係止部52とメイン弁体60の係止部64とが互いに係止された状態(図3参照)において、その上流側から下流側へのガスの流れを可能としている。
【0034】
<動作例>
続いて、本発明の実施形態に係る燃料電池システム100の動作例について、図1〜図4を参照して説明する。
【0035】
パイロットキック式電磁弁1は、常閉型の電磁弁であるので、初期状態としては、図2に示すように、スプリング40がパイロット弁体50及びメイン弁体60を下方(閉弁方向)に付勢しており、第一弁部61がパイロット弁座部51に着座するとともに第二弁部62がメイン弁座部10eに着座している。すなわち、パイロットキック式電磁弁1は、反応ガス等の流れを遮断する閉弁状態となっている。また、反応ガス供給部112及び酸化剤ガス供給部113の駆動は停止しており、掃気導入弁116は閉弁状態となっている。
【0036】
≪燃料電池運転ステップ≫
かかる初期状態においてイグニッションスイッチ122からON信号が出力されると、制御部121は、反応ガス供給部112の遮断弁を開弁させることによって、反応ガスを燃料電池111のアノードに供給するとともに、酸化剤ガス供給部113のエアコンプレッサを駆動することによって、酸化剤ガスを燃料電池111のカソードに供給する。ここで、パイロットキック式電磁弁1は閉弁状態であるため、反応ガス排出通路102に排出された未反応の反応ガスは、循環通路105及びエゼクタ115を介して反応ガス供給通路101に戻されて再度燃料電池111に供給される。
【0037】
≪パージステップ≫
燃料電池運転ステップにおいて、反応ガス供給通路101、燃料電池111のアノード及び反応ガス排出通路102内の反応ガスを新鮮な反応ガスに置換するために、パージステップが所定間隔ごとに行われる。すなわち、燃料電池運転ステップとパージステップとが繰り返される。
【0038】
パージステップにおいて、制御部121は、図示しない電源部を駆動してコイル20に通電することによってコイル20を励磁させる。励磁作用下においては、磁束が、コイル20から可動コア30へと向かい、再びコイル20へと復帰して周回するように発生する。そして、図3に示すように、可動コア30がスプリング40の弾発力に抗して軸線方向に沿って上方(開弁方向)へと変位し、メイン弁体60の第一弁部61がパイロット弁体50のパイロット弁座51から離座する。
【0039】
なお、パイロットキック式電磁弁1は、下記式を満たすように設計されている。

G=C・A・[P・ρ・2κ/(κ−1)・{(P/P2/κ−(P/P(κ+1)/κ}1/2

ここで、Gはパイロット通路63の体積流量、Cはパイロット通路63の流量係数、Aはパイロット通路63の開口面積、Pはパイロット通路63よりも上流の圧力、Pはパイロット通路63よりも下流の圧力、ρはガス密度、κは比熱比である。
【0040】
ここで、パイロット弁体50の係止部52とメイン弁体60の係止部64とが互いに係止することによって、可動コア30が上方(開弁方向)に移動しようとする力(吸引力)が、メイン弁体60の第二弁部62をメイン弁座10eから離座させようとする方向に作用する。しかし、パイロットキック式電磁弁1は、吸引力が、[スプリング40の弾発力]+[PとPの差圧]×[孔部10dの開口面積]よりも小さくなるように設定されており、反応ガスを供給し続けている状態では、メイン弁体60の第二弁部62は、メイン弁座部10eに着座したままの状態を維持する。したがって、パージステップにおいて、パイロットキック式電磁弁1は、パイロット通路63を介して第一の流量の反応ガスを排出する。
【0041】
≪掃気ステップ≫
燃料電池運転ステップの終了後、すなわち、燃料電池100の運転停止時には、燃料電池111のアノード及び反応ガス排出通路102内の反応ガスを掃気ガスに置換するために、掃気ステップが行われる。掃気ステップにおいて、イグニッションスイッチ122からOFF信号が出力されると、制御部121は、反応ガス供給部112の遮断弁を閉弁させることによって反応ガスの供給を中止するとともに、図示しない電源部を駆動してコイル20に通電することによってコイル20を励磁させる。すると、図3に示すように、可動コア30がスプリング40の弾発力に抗して軸線方向に沿って上方(開弁方向)へと変位し、メイン弁体60の第一弁部61がパイロット弁体50のパイロット弁座51から離座する。かかる状態において、反応ガス供給通路101、燃料電池111のアノード及び反応ガス排出通路102に残留していた反応ガスがパイロット通路63を介して排出されると、パイロット通路63よりも上流の圧力Pとパイロット通路63よりも下流の圧力Pとの差圧が小さくなり、可動コア30が上方に移動しようとする力(吸引力)が、[スプリング40の弾発力]+[PとPの差圧]×[孔部10dの開口面積]よりも大きくなる。そのため、図4に示すように、メイン弁体60の第二弁部62がメイン弁座部10eから離座する。続いて、制御部121は、酸化剤ガス供給部111のエアコンプレッサを駆動させる(通常、燃料電池運転ステップにおいて駆動されたままとなっている)とともに掃気導入弁116を開弁させることによって、掃気ガスとしての酸化剤ガスの供給を開始する。酸化剤ガスの供給開始のタイミングに関しては、反応ガスの供給を中止してからパイロットキック式電磁弁1の第二弁部62が離座するのに要する時間を予め測定しておき、測定された時間を制御部121に記憶させておくことにより、制御部121は、測定された時間に基づいて酸化剤ガス供給部111のエアコンプレッサを駆動させるとともに掃気導入弁116を開弁させることが望ましい。したがって、掃気ステップにおいて、パイロットキック式電磁弁1は、開口面積がパイロット通路63よりもはるかに大きい孔部10dを介して第二の流量の酸化剤ガスを掃気ガスとして排出する。制御部121は、例えば所定時間経過後に酸化剤ガス供給部111のエアコンプレッサの駆動を停止させるとともに掃気導入弁106及びパイロットキック式電磁弁1を閉弁させることによって、掃気ステップを終了させる。
【0042】
なお、従来のパージ弁は、小流量の反応ガスを排出するに際して高速応答性が要求される(例えば、数百msec)弁であり、従来の掃気排出弁は、大流量の掃気ガスを排出するに際して高速応答性が要求されない(例えば、数sec)弁である。これに対して、本発明の実施形態に係るパイロットキック式電磁弁1は、従来のパージ弁における高速応答による小流量の反応ガスの排出と、従来の掃気排出弁における低速応答による大容量の掃気ガスの排出と、を一つのパイロットキック式電磁弁1によって実現することができる。また、パイロットキック式電磁弁1の第二弁部62の離座を、酸化剤ガス供給部113のエアコンプレッサがOFFの状態で行うので、第二弁部62の離座をエアコンプレッサがONの状態で行う場合と比べて、コイル20を小さくすることができ、さらには消費電力も小さくすることができる。したがって、本発明の実施形態に係る燃料電池システム100は、燃料電池システムの低コスト化及び軽量化を実現することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、本発明は、自動車だけではなく、建物等に定置される燃料電池システムにも適用可能である。また、燃料電池システム100は、システムの温度を測定する温度センサを備え、制御部121が、かかる温度センサの測定結果に基づいて、反応ガス供給通路101、燃料電池111のアノード及び反応ガス排出通路102に残留した水分が凍結するおそれがある場合(例えば、温度センサの測定結果が0度以下となった場合)にのみ、掃気ステップを実行する構成であってもよい。
【0044】
また、掃気ステップにおいて、制御部121は、第二弁部62の離座後に掃気導入弁116を開弁させるが、この際に第二弁部62の離座をタイマを用いて推定する以外に、圧力P,Pを検出する圧力センサからの出力に基づいて、圧力Pと圧力Pとの差圧がゼロになった場合、圧力Pが急上昇した場合、圧力Pが急降下した場合等に第二弁部62が離座したと推定し、酸化剤ガス供給部113のエアコンプレッサを駆動させるとともに掃気導入弁116を開弁させることによって、掃気ガスとしての酸化剤ガスの供給を開始する構成であってもよい。それ以外にも、機械的なスイッチ等によって第二弁部62の離座を検出し、かかる検出結果に基づいて制御部121が酸化剤ガス供給部113のエアコンプレッサを駆動させるとともに掃気導入弁116を開弁させることによって、掃気ガスとしての酸化剤ガスの供給を開始する構成であってもよい。また、掃気ガスとして酸化剤ガス以外のガスを使用する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 パイロットキック式電磁弁(バルブ)
10 バルブボディ
10a 導入ポート
10b 導出ポート
10e メイン弁座
30 可動コア(可動部材)
51 パイロット弁座
60 メイン弁体(弁体)
61 第一弁部
62 第二弁部
63 パイロット通路
100 燃料電池システム
101 反応ガス供給通路(反応ガス流路)
102 反応ガス排出通路(反応ガス流路)
111 燃料電池
112 反応ガス供給部
113 酸化剤ガス供給部(掃気ガス供給部)
116 掃気導入弁(掃気ガス供給部)
121 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスを供給されて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池に前記反応ガスを出入りさせる反応ガス流路と、
前記反応ガス流路における前記燃料電池の上流側に接続されて前記反応ガスを供給する反応ガス供給部と、
前記反応ガス流路における前記燃料電池の上流側に接続されて反応に供しない掃気ガスを供給する掃気ガス供給部と、
前記反応ガス流路における前記燃料電池の下流側に設けられて前記反応ガス流路を開閉するバルブと、
前記反応ガス供給部、前記掃気ガス供給部及び前記バルブの駆動を制御する制御部と、
を備える燃料電池システムであって、
前記バルブは、
前記反応ガス流路の上流側と連通する導入ポートと、前記反応ガス流路の下流側と連通する導出ポートと、を有するバルブボディと、
前記バルブボディ内に設けられて前記制御部の制御に基づいて移動する可動部材と、
前記導入ポートと前記導出ポートとの間に設けられ、前記可動部材に形成されたパイロット弁座に着座及び離座可能な第一弁部と、前記バルブボディに形成されたメイン弁座に着座及び離座可能な第二弁部と、を有する弁体と、
前記弁体に形成され、当該弁体の上流側と下流側を導通させるパイロット通路と、
を備え、
前記制御部は、
前記反応ガス流路内の反応ガスを新鮮な反応ガスに置換する際には、前記反応ガス供給部を駆動させることによって前記反応ガスを供給している状態において、前記バルブの駆動を制御して前記弁体の前記第二弁部を前記メイン弁座に着座させつつ前記第一弁部を前記パイロット弁座から離座させることによって、前記パイロット通路を介して第一の流量の前記反応ガスを排出させ、
前記反応ガス流路内の反応ガスを掃気ガスに置換する際には、前記反応ガス供給部の駆動を停止させることによって前記反応ガスの供給が中止されている状態において、前記バルブの駆動を制御して前記第二弁部を前記メイン弁座から離座させ、続いて前記掃気ガス供給部を駆動させることによって前記掃気ガスの供給を開始し、前記第一の流量よりも多い第二の流量の前記掃気ガスを排出させる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムの制御方法であって、
前記バルブの前記第一弁部が前記パイロット弁座に着座するとともに前記第二弁部が前記メイン弁座に着座することによって前記バルブが閉弁された状態において、前記制御部が、前記反応ガス供給部を駆動させることによって前記反応ガスを供給する燃料電池運転ステップと、
前記燃料電池運転ステップの後に、前記反応ガス供給部の駆動を停止させることによって前記反応ガスの供給が中止されている状態において、前記制御部が、前記バルブの駆動を制御して前記第二弁部を前記メイン弁座から離座させ、続いて前記掃気ガス供給部を駆動させることによって前記掃気ガスの供給を開始し、第二の流量の前記掃気ガスを排出させる掃気ステップと、
を含み、
前記燃料電池運転ステップは、前記反応ガス供給部を駆動させることによって前記反応ガスを供給している状態において、前記制御部が、前記バルブの駆動を制御して前記弁体の前記第二弁部を前記メイン弁座に着座させたまま前記第一弁部を前記パイロット弁座から離座させることによって、前記パイロット通路を介して第一の流量の前記反応ガスを排出させるパージステップを含む
ことを特徴とする燃料電池システムの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−182450(P2010−182450A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22645(P2009−22645)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】