説明

燃料電池システム

【課題】簡易な構成にしつつ、温度管理可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】水素及び空気が供給されることで発電する燃料電池10と、水素を循環させる燃料ガス循環系と、循環する水素を排出する燃料ガス排出手段と、ラジエータ液冷却液を循環させる冷却液循環系と、を備える燃料電池システム1であって、アノードオフガスの温度Taを検出する温度センサ25と、カソードオフガスの温度Tcを検出する温度センサ32と、ECU70と、を備え、ECU70は、推定開始時の温度Taと推定終了時の温度Taとに基づいて、温度変化量ΔTaを算出し、温度変化量ΔTaに基づいて、温度変化量ΔTcを推定し、推定開始時の温度Tcと、温度変化量ΔTcと、に基づいて、推定終了時の温度Tcを推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素(燃料ガス)がアノードに、酸素(酸化剤ガス)がカソードに、それぞれ供給されることで、電気化学反応が生じ発電する固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)等の燃料電池の開発が盛んである。燃料電池は、その発電電力によって走行する燃料電池自動車や、家庭用電源等の広範囲で適用されつつあり、今後もその適用範囲の拡大が期待されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような燃料電池は、好適に発電する温度(好適発電温度)を固有している。例えば、固体高分子型燃料電池の場合、その好適発電温度は、70〜80℃である。なお、このような好適発電温度は、燃料電池を構成するMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)のアノード及びカソードに含まれる触媒(Pt等)の種類に主に依存する。
【0004】
したがって、燃料電池を効率的に発電させるために、燃料電池の温度を管理することは重要である。そこで、一般には、燃料電池から排出された水素、空気、冷却液の温度を検出する温度センサをそれぞれ設け、これらの温度を検出し、燃料電池の温度を管理する燃料電池システムが提案されている。
【特許文献1】特開2004−179127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、温度センサは、一般に電力によって作動するものであるので、例えば、複数の温度センサを備える燃料電池システムの場合、温度センサの作動回数、つまり、温度の検出回数を減らし、システムの制御構成を簡易にしたいという要望がある。また、温度センサの数を減らし、簡易な構成のシステムにしたいという要望もある。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成にしつつ、温度管理可能な燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで発電する燃料電池と、前記燃料電池から排出された未反応の燃料ガスを、当該燃料電池の上流側に戻し、燃料ガスを循環させる燃料ガス循環系と、循環する燃料ガスを排出する燃料ガス排出手段と、前記燃料電池を経由するように冷却液を循環させる冷却液循環系と、を備える燃料電池システムであって、前記燃料電池から排出された燃料ガス、及び、前記燃料電池から排出された酸化剤ガス又は冷却液、の一方である第1流体の温度を検出する第1温度検出手段と、前記燃料電池から排出された燃料ガス、及び、前記燃料電池から排出された酸化剤ガス又は冷却液、の他方である第2流体の温度を検出する第2温度検出手段と、前記第1流体の温度に基づいて、第2流体の温度を推定する推定手段と、を備え、前記推定手段は、前記第1流体の推定開始時の検出温度と推定終了時の検出温度とに基づいて、前記第1流体の温度変化量を算出し、当該第1流体の温度変化量に基づいて、前記第2流体の温度変化量を推定し、前記第2流体の推定開始時の検出温度と、前記第2流体の温度変化量と、に基づいて、当該第2流体の推定終了時の温度を推定することを特徴とする燃料電池システムである。
【0008】
ここで、燃料電池から排出された燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却液は、連続的に流れている必要は無く、滞留していてもよいものとする。
このような燃料電池システムによれば、推定手段が、第1流体の推定開始時の温度と推定終了時の温度とに基づいて、第1流体の温度変化量を算出する。そして、推定手段が、第1流体の温度変化量に基づいて、第2流体の温度変化量を推定する。次いで、推定手段が、第2流体の推定開始時の温度と、第2流体の温度変化量と、に基づいて、第2流体の推定終了時の温度を推定する。
これにより、推定終了時において、第2温度検出手段を作動させずに、第2流体の温度を把握することができ、燃料電池の温度を管理しつつ、システムの制御構成が簡易となる。また、第2温度検出手段の作動回数を減らすことによって、推定終了時における第2温度検出手段の電力消費を抑えることができる。
【0009】
ここで、本発明に係る燃料電池システムは、燃料ガス循環系と燃料ガス排出手段とを備えるものであるので、燃料ガス排出手段(例えば、パージ弁)によって燃料ガスが排出される場合、一般に燃料ガス供給手段として使用される水素タンクから、断熱膨張した低温の水素(燃料ガス)が燃料電池に流れ込む。そうすると、燃料電池から排出される水素の温度は、燃料電池の温度でなく、前記断熱膨張の影響を受けることになり、燃料電池から排出される水素の温度がばらつくことになる。
そこで、第1流体を酸化剤ガス又は冷却液とし、第2流体を燃料ガスとすれば、推定終了時に燃料ガス排出手段によって燃料ガスが排出され、燃料電池から排出された燃料ガスが前記断熱膨張の影響を受けてばらついていたとしても、この影響を受けずに、燃料電池の温度に本来依存する燃料ガスの温度を推定することができる。
【0010】
また、推定終了時における前記第2流体の推定温度と検出温度との差が、所定値以下でない場合、前記第1温度検出手段又は前記第2温度検出手段が故障していると判定する故障判定手段を、さらに備えたことを特徴とする。
【0011】
このような燃料電池システムによれば、故障判定手段によって、推定終了時における第2流体の推定温度と検出温度との差が、所定値以下でない場合、第1温度検出手段又は第2温度検出手段が故障していると判定することができる。
【0012】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで発電する燃料電池と、前記燃料電池から排出された未反応の燃料ガスを、当該燃料電池の上流側に戻し、燃料ガスを循環させる燃料ガス循環系と、循環する燃料ガスを排出する燃料ガス排出手段と、前記燃料電池を経由するように冷却液を循環させる冷却液循環系と、を備える燃料電池システムであって、前記燃料電池から排出された燃料ガス、及び、前記燃料電池から排出された酸化剤ガス又は冷却液、の一方である第1流体の温度を検出する第1温度検出手段と、前記第1流体の温度に基づいて、前記燃料電池から排出された燃料ガス、及び、前記燃料電池から排出された酸化剤ガス又は冷却液、の他方である第2流体の温度を推定する推定手段と、を備え、前記推定手段は、前記第1流体の推定開始時の検出温度に基づいて、前記第2流体の推定開始時の温度を推定し、前記第1流体の推定開始時の検出温度と推定終了時の検出温度とに基づいて、前記第1流体の温度変化量を算出し、当該第1流体の温度変化量に基づいて、前記第2流体の温度変化量を推定し、前記第2流体の推定開始時の推定温度と、前記第2流体の温度変化量と、に基づいて、推定終了時における前記第2流体の温度を推定することを特徴とする燃料電池システムである。
【0013】
このような燃料電池システムによれば、推定手段が、第1流体の推定開始時の温度に基づいて、第2流体の推定開始時の温度を推定する。そして、推定手段が、第1流体の推定開始時の温度と推定終了時の温度とに基づいて、第1流体の温度変化量を算出する。次いで、推定手段が、第1流体の温度変化量に基づいて、第2流体の温度変化量を推定する。その後、推定手段が、第2流体の推定開始時の推定温度と、第2流体の温度変化量と、に基づいて、推定終了時における第2流体の温度を推定する。
このように、第2流体の温度を検出する第2温度検出手段を備えず、システム構成を簡易としつつ、第2流体の温度を把握し、燃料電池の温度を管理することができる。また、第2温度検出手段による電力消費を抑えることができる。
【0014】
また、前記推定開始時は前記燃料電池の発電停止時であり、前記推定終了時は前記燃料電池の発電開始時であることを特徴とする。
【0015】
このような燃料電池システムによれば、第2温度検出手段を備える場合、推定手段が、第1流体の燃料電池の発電停止時(推定開始時)の検出温度と、発電開始時(推定終了時)の検出温度とに基づいて、第1流体の温度変化量を算出し、これに基づいて、第2流体の温度変化量を推定する。そして、推定手段が、第2流体の発電停止時の温度と、第2流体の温度変化量と、に基づいて、第2流体の発電開始時の温度を推定することができる。
これにより、発電開始時(推定終了時)において第2温度検出手段を作動させる必要がなく、システム制御構成が簡易になると共に、電力消費を抑えることができる。
【0016】
また、第2温度検出手段を備えない場合、推定手段が、第1流体の発電停止時(推定開始時)の検出温度に基づいて、第2流体の発電停止時の温度を推定する。そして、推定手段が、第1流体の発電停止時の検出温度と発電開始時(推定終了時)の検出温度とに基づいて、第1流体の温度変化量を算出し、この温度変化量に基づいて、第2流体の温度変化量を推定する。そして、推定手段が、第2流体の発電停止時の推定温度と、第2流体の温度変化量と、に基づいて、発電停止時における前記第2流体の温度を推定する。
このようにして、第2流体の温度を把握しつつ、燃料電池システムを簡易な構成とでき、さらに、第2温度検出手段による電力消費を抑えることができる。
【0017】
また、前記推定手段は、前記燃料電池の発電中に、前記第1流体の温度に基づいて、前記第2流体の温度を推定することを特徴とする。
【0018】
このような燃料電池システムによれば、推定手段が、燃料電池の発電中において、第1流体の温度に基づいて、第2流体の温度を推定することができる。
【0019】
また、前記推定手段は、第2流体の温度を累積的に推定するように構成されており、今回の第2流体の温度変化量と、前回の第2流体の推定温度と、に基づいて、今回の推定終了時の第2流体の温度を推定することを特徴とする。
【0020】
このような燃料電池システムによれば、推定手段が、今回の第2流体の温度変化量と、前回の推定終了時であって今回の推定開始時の第2流体の推定温度と、に基づいて、今回の推定終了時の第2流体の温度を累積的に推定することができる。
【0021】
また、前記第1流体又は前記第2流体は冷却液であり、前記推定手段は、前記燃料電池の発電中に、前記循環する冷却液の温度変化特性に基づいて、前記第2流体の温度変化量を推定することを特徴とする。
【0022】
このような燃料電池システムによれば、推定手段が、燃料電池の発電中に、循環する冷却液の温度変化特性に基づいて、第2流体の温度変化量を推定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡易な構成にしつつ、温度管理可能な燃料電池システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
≪第1実施形態≫
以下、本発明の第1実施形態について、図面を適宜参照して説明する。
【0025】
<燃料電池システムの構成>
図1に示す第1実施形態に係る燃料電池システム1は、図示しない燃料電池自動車に搭載されている。燃料電池システム1は、燃料電池10の出力端子(図示しない)に接続された走行モータ51を備えている。走行モータ51は燃料電池10の発電電力によって駆動し、これにより、燃料電池自動車が走行するようになっている。
【0026】
燃料電池システム1は、燃料電池10と、燃料電池10のアノードに対して水素(燃料ガス、反応ガス)を供給及び排出するアノード系と、燃料電池10のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)を供給及び排出するカソード系と、燃料電池を経由するように、ラジエータ液(冷却液)を循環させるラジエータ液循環系(冷却液循環系)と、走行モータ51と、IG61(イグニッション)と、これらを電子制御するECU70(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を主に備えている。
【0027】
[燃料電池]
燃料電池10(燃料電池スタック)は、単セルが複数積層されることによって構成された固体高分子型燃料電池である。単セルは、電解質膜(固体高分子膜)の両面をアノード(燃料極)及びカソード(空気極)で挟んでなるMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)と、MEAを挟む一対のセパレータと、を主に備えている。各セパレータには、各単セルを構成するMEAの全面に水素又は空気を供給するための溝や、全単セルに水素、空気を導くための貫通孔等が形成されており、これら溝等がアノード流路11、カソード流路12(いずれも反応ガス流路)として機能している。
【0028】
そして、アノード流路11を介して各アノードに水素が供給され、カソード流路12を介して各カソードに酸素を含む空気が供給されると、アノード、カソードに含まれる触媒(Pt等)上で電気化学反応が起こり、各単セルで電位差(OCV(Open Circuit Voltage)、開回路電圧)が発生するようになっている。次いで、このように各単セルで電位差が発生した燃料電池10に対して、走行モータ51等の外部負荷から発電要求があり、電流が取り出されると燃料電池10が発電するようになっている。
【0029】
また、前記セパレータには、ラジエータ液流通系から送られ、燃料電池10と熱交換するラジエータ液が流通するラジエータ液流路13が形成されている。
【0030】
[アノード系]
アノード系は、水素が貯蔵された水素タンク21と、遮断弁22と、エゼクタ23と、パージ弁24と、温度センサ25(第1温度検出手段)と、を主に備えている。
水素タンク21は、配管21a、遮断弁22、配管22a、エゼクタ23、配管23aを順に介して、アノード流路11の入口に接続されている。そして、遮断弁22がECU70によって開かれると、水素がアノード流路11に供給されるようになっている。また、配管22aには、図示しない減圧弁が設けられており、水素が所定圧力に減圧されるようになっている。
アノード流路11の出口には、配管24a、パージ弁24、配管24bが順に接続されている。また、配管24aの途中は、配管24cを介して、エゼクタ23に接続されている。
【0031】
パージ弁24は、例えばゲート弁等の開閉弁であって、通常は閉じている。そして、このようにパージ弁が閉じている場合、アノード流路11から排出された未反応の水素を含むアノードオフガス(第1流体)が、燃料電池10の上流側のエゼクタ23に戻され、再び、燃料電池10に供給、つまり、水素が循環するようになっている。一方、アノードオフガス中の水分等の不純物が増加した場合、つまり、循環する水素に同伴する不純物が増加した場合、ECU70によってパージ弁24は開かれ、アノードオフガスが配管24bを介して、外部に排出されるようになっている。
【0032】
したがって、第1実施形態において、燃料ガス循環系は、エゼクタ23、配管24c等によって構成されている。また、循環する水素を排出する燃料ガス排出手段は、パージ弁24等によって構成されている。
【0033】
温度センサ25は、配管24cの接続点よりも燃料電池10側の配管24aに設けられており、燃料電池10から排出されたアノードオフガスの温度Taを検出するようになっている。そして、温度センサ25はECU70と接続されており、ECU70はアノードオフガスの温度Taを検知するようになっている。
因みに、温度センサ25、及び、後記する温度センサ32,44は、燃料電池10や図示しない蓄電装置(高圧バッテリ)等を電源として作動する。
【0034】
[カソード系]
カソード系は、コンプレッサ31(スーパーチャージャ)と、温度センサ32(第2温度検出手段)と、を主に備えている。
コンプレッサ31は、配管31aを介して、カソード流路12の入口に接続されている。そして、ECU70の指令に従ってコンプレッサ31が作動すると、酸素を含む空気が、カソード流路12に圧送されるようになっている。なお、配管31aには加湿器(図示しない)が設けられており、燃料電池10に送られる空気が適宜に加湿されるようになっている。
【0035】
カソード流路12の出口には、配管32aが接続されている。そして、カソード流路12から排出されたカソードオフガス(第2流体)が、配管32aを介して外部に排出されるようになっている。
【0036】
温度センサ32は、配管32aの燃料電池10側に設けられており、燃料電池10から排出されたカソードオフガスの温度Tcを検出するようになっている。そして、温度センサ32はECU70と接続されており、ECU70はカソードオフガスの温度Tcを検知するようになっている。
【0037】
[ラジエータ液循環系]
ラジエータ液循環系は、ポンプ41と、サーモスタット42と、ラジエータ43(放熱器)とを主に備えている。
そして、ラジエータ液流路13の出口から、配管41a、ポンプ41、配管41b、サーモスタット42、配管42a、ラジエータ43、配管43a、ラジエータ液流路13の入口の順に接続されている。また、サーモスタット42は、配管42bを介して配管43aと接続されている。さらに、サーモスタット42は、ラジエータ液の温度が所定温度以上の場合に開き、配管41bと配管42aとが連通するように構成されており、所定温度未満の場合に閉じ、配管41bと配管42bとが連通するように構成されている。
【0038】
したがって、ECU70の指令に従ってポンプ41が作動し、ラジエータ液が所定温度以上である場合、ラジエータ液が燃料電池10とラジエータ43との間で循環するようになっている。一方、ラジエータ液が所定温度未満である場合、ラジエータ液がラジエータ43を迂回するようになっている。
また、サーモスタット42はECU70と接続されており、ECU70はサーモスタット42の開弁/閉弁を検知するように構成されている。
【0039】
[走行モータ、IG]
走行モータ51は、燃料電池自動車を走行させる電動モータであり、燃料電池10の出力端子(図示しない)に接続されている。なお、燃料電池10と走行モータ51との間には、ON/OFFスイッチであるコンタクタや、燃料電池10の出力を制御する制御器(いずれも図示しない)等が設けられている。
【0040】
IG61は、燃料電池自動車及び燃料電池システム1の起動スイッチであり、運転席周りに設けられている。また、IG61はECU70と接続されており、ECU70はIG61のON/OFF信号を検知するようになっている。
【0041】
[ECU]
ECU70は、燃料電池システム1を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されている。
そして、ECU70は、IG61のON信号を検知すると、遮断弁22を開き、コンプレッサ31及びポンプ41を作動させ、燃料電池10の発電を開始するように構成されている。一方、ECU70は、IG61のOFF信号を検知すると、遮断弁22を閉じ、コンプレッサ31及びポンプ41を停止し、燃料電池10の発電を停止するように構成されている。つまり、第1実施形態では、IG61のON時は燃料電池10の発電開始時に相当し、IG61のOFF時は燃料電池10の発電停止時に相当する。
【0042】
また、ECU70(推定手段、故障判定手段)は、後記する燃料電池システム1の動作において具体的に説明するように、IG61のOFF−ON間(推定開始時−推定終了時間)における温度Taの温度変化量ΔTaを算出する機能を有している。また、ECU70は、OFF−ON間の温度変化量ΔTaに基づいて、OFF−ON間の温度変化量ΔTcを推定する機能を有している。さらに、ECU70は、OFF時の温度Tcと温度変化量ΔTcとに基づいて、ON時の温度Tcを推定する機能を有している。さらにまた、ECU70は、ON時に実際に検出された温度Tcと推定された温度Tcとに基づいて、温度センサ25、32が故障しているか否かを判定する機能を有している。
【0043】
≪燃料電池システムの動作≫
次に、燃料電池システム1の動作を、図2を主に参照して、ECU70に設定されたプログラム(フローチャート)の流れと共に説明する。なお、ここでは、IG61がOFFされ、燃料電池10の発電停止時(システム起動時)を推定開始時とし、その後、IG61がONされ、燃料電池10の発電開始時(システム停止時)を推定終了時とした場合を例示する。
【0044】
IG61がOFFされると、このOFF信号を検知したECU70は、各種処理を実行し、その結果として、図2に示すフローチャートがスタートする。
【0045】
ステップS101において、ECU70は、IG61のOFF時における温度Taと、温度Tcとを検出する。そして、ECU70は、内部クロックを利用して、IG61のOFF後、次回IG61がONされるまでの時間t11を計測する。
【0046】
ステップS102において、ECU70は、IG61がONされたか否かを判定する。IG61はONされたと判定した場合(S102・Yes)、ECU70の処理はステップS103に進む。IG61はONされていないと判定した場合(S102・No)、ステップS102の判定を繰り返す。
【0047】
ステップS103において、ECU70は、推定終了時であるIG61のON時(現在)における温度Taを検出する。
【0048】
ステップS104において、ECU70は、IG61のOFF、ON間の時間t11が、判定時間t1未満であるか否かを判定する。
因みに、判定時間t1は、IG61のOFF後、この時間以上経過していれば、温度低下が進み、温度Taと温度Tcとが略同一となる時間であり(図3参照)、事前試験等によって求められ、ECU70に記憶されている。また、このように温度Taと温度Tcとが略同一となる判定時間t1は、IG61のOFF時の燃料電池10の温度、つまり、温度Ta及び温度Tcや、外気温度に依存すると考えられる。例えば、温度Taが高い場合や外気温度が低い場合、判定時間t1が長くなるように補正する構成としてもよい。
【0049】
そして、OFF−ON間の時間t11が判定時間t1未満であると判定した場合(S104・Yes)、ECU70の処理はステップS105に進む。一方、時間t11が判定時間t1未満でない、つまり、時間t11が判定時間t1以上である場合(S104・No)、ECU70の処理はステップS107に進む。
【0050】
ステップS105において、ECU70は、OFF時の温度Taと、ON時の温度Taとに基づいて、OFF−ON間における温度Taの温度変化量ΔTaを算出する。
次いで、ECU70は、温度変化量ΔTaと、図4のマップとに基づいて、OFF−ON間における温度Tcの温度変化量ΔTcを推定する。
なお、図4のマップは、温度Taの温度変化量ΔTaと、温度Tcの温度変化量ΔTcとの相関関係を示すデータベースであり、事前試験等によって求められ、ECU70に記憶されている。
【0051】
ステップS106において、ECU70は、現在(ON時)の温度Tcは、OFF時の温度Tcと、温度変化量ΔTcと、の和であると推定する。このよう推定することによって、ON時(推定終了時)における温度Tcを、温度センサ32による検出動作を行わずに、把握することができる。
【0052】
ステップS107において、ECU70は、現在(ON時)の温度Tcは、ON時の温度Tcに等しいと推定する。
【0053】
ステップS108において、ECU70は、現在(ON時)の温度Tcを、温度センサ32で実際に検出する。
【0054】
ステップS109において、ECU70は、実際に検出された現在(ON時)の温度Tcと、推定された現在(ON時)の温度Tcと、の差の絶対値が、所定の判定閾値(所定値)以下であるか否かを判定する。なお、所定の判定閾値は、例えば、温度センサ25及び温度センサ32の検出誤差を考慮し、事前試験等によって求められ、ECU70に記憶されている。
【0055】
そして、差の絶対値が、所定の判定閾値以下であると判定した場合(S109・Yes)、ECU70の処理は、ステップS110に進む。一方、差の絶対値が、所定の判定閾値以下でないと判定した場合(S109・No)、ECU70の処理はステップS111に進む。
【0056】
ステップS110において、ECU70は、温度センサ25及び温度センサ32が正常であると認識する。
そして、ECU70の処理は、エンドに進み、IG61のOFFからONにおける温度Tcの推定処理、温度センサ25及び温度センサ32の故障判定処理を終了する。
【0057】
ステップS111において、ECU70は、温度センサ25又は温度センサ32が故障していると認識する。そして、ECU70は、例えば、運転者に温度センサ25、32の点検を促すように、警告ランプを点灯させる。
その後、ECU70の処理は、エンドに進む。
【0058】
<燃料電池システムの効果>
このような第1実施形態に係る燃料電池システム1によれば、主に以下の効果を得ることができる。
(1)ステップS106又はステップS107の処理により、ON時(推定終了時)において温度センサ32を作動させずに、温度Tcを把握することができる(図5参照)。
(2)また、温度センサ25、32が検出する流体(水素、空気)の熱マス等の違いにより、OFF後の温度Ta、Tcの温度変化量ΔTa、ΔTcが異なっていたとしても、算出された温度変化量ΔTaと図4のマップとに基づいて温度変化量ΔTcを推定し(S105)、この温度変化量ΔTcとOFF時の温度Tcとに基づいて、ON時の温度Tcを高精度で推定することができる。すなわち、例えば、実際に検出された温度Taに対して、一定温度をオフセットすることで温度Tcを推定する方法では、熱マス等の違いを考慮できないが、第1実施形態では、熱マス等を考慮しつつ温度Tcを推定することができる。
(3)さらに、ステップS109の故障判定処理により、温度センサ25、32が故障しているか否かを判定することができる(図5参照)。したがって、例えば、温度センサ25、32を利用して、温度Ta、Tcを常に検出する燃料電池システムにおいて、このような故障判定処理を併用すれば、温度センサ25又は温度センサ32の故障を検知することができる。これにより、異常高温での発電継続による燃料電池10の破損を防止することができる。
【0059】
以上、第1実施形態に係る燃料電池システム1について説明したが、これに限定されず、例えば以下のような変更をしてもよい。因みに、後記する実施形態についても同様である。
第1実施形態では、アノードオフガスの温度Taを基準として、カソードオフガスの温度Tcを推定する構成を例示したが、温度Tcを基準として、温度Taを推定する構成としてもよい。また、配管41aに燃料電池10から排出されたラジエータ液の温度Twを検出する温度センサ44(図8参照)を設け、温度Taを基準として温度Twを推定する構成としてもよいし、この逆でもよい。
さらに、例えば、温度Tc、温度Twに基づいて、温度Taをそれぞれ推定するように構成し、温度センサ25、32、44のいずれが故障しているかを判定する構成としてもよい。
【0060】
第1実施形態では、推定開始時をIG61のOFF時(燃料電池10の発電停止時)、推定終了時をIG61のON時(燃料電池10の発電開始時)とした場合を例示したが、これに限定されることはない。例えば、外部負荷からの発電要求がない場合、燃料電池10の発電を停止させるアイドル停止機能を備える燃料電池システム1の場合、推定開始時をアイドル停止の開始時とし、推定終了時をアイドル停止の終了時(解除時)としてもよい。その他、高速走行からの減速中、走行モータ51の回生電力を蓄電装置(図示しない)に充電することに並行して、燃料電池10の発電を一時的に停止させる場合に、このような推定処理を行ってもよい。
【0061】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る燃料電池システム2について、図1、図6及び図7を参照して説明する。
【0062】
<燃料電池システムの動作>
図1に示すように、第2実施形態に係る燃料電池システム2は、第1実施形態に係る燃料電池システム1と機械的構成は同じであるがECU70に設定されているプログラムが異なる。そこで、このプログラムの流れに基づく、燃料電池システム2の動作について、図1、図6を主に参照して説明する。
なお、ここでは、IG61がONされた後の、燃料電池10の発電中において、推定開始時と推定終了時との区間における温度変化量ΔTaに基づいて、当該区間における温度変化量ΔTbを推定し、推定開始時の温度Tcと温度変化量ΔTcとに基づいて、推定終了時の温度Tcを推定する場合を例示する。さらに、この推定された温度Tcと、推定終了時に検出された温度Tcとを比較して、温度センサ25、32を故障判定する場合を例示する。さらにまた、検出された温度Tcと推定された温度Tcとの差が小さい場合、温度Tcを累積的に推定し、故障判定する場合を例示する。
【0063】
IG61がONされると図6のフローチャートがスタートし、ステップS201において、ECU70は、温度センサ25でON時の温度Taを、温度センサ32でON時の温度Tcを、それぞれ実際に検出する。
【0064】
ステップS202において、ECU70は、内部クロックを利用して、ステップS201で温度Ta、温度Tcを検出した後、所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は、適宜に設定される時間であり、例えば、30秒、1分に設定される。
そして、所定時間が経過したと判定した場合(S202・Yes)、ECU70の処理は、ステップS203に進む。一方、所定時間が経過していないと判定した場合(S202・No)、ステップS202の判定を繰り返す。
なお、後記するステップS213での判定がNoとなる場合、ステップS202での時間の起算点は、次のステップS203での温度Taの検出時刻とするように設定されている。
【0065】
ステップS203において、ECU70は、温度センサ25で所定時間経過後の温度Taを実際に検出する。そして、ECU70は、この温度Taと、ステップS201で検出された温度Taと、に基づいて、これらの差である温度変化量ΔTaを算出する。
なお、後記するステップS213での判定がNoとなる場合、前回ステップS203で検出された温度Taと、今回ステップS203で検出された温度Taと、に基づいて、温度変化量ΔTaを算出する。
【0066】
ステップS204において、ECU70は、ステップS203で算出した温度変化量ΔTaと、図4のマップと、に基づいて、温度変化量ΔTcを推定する。
【0067】
ステップS205において、ECU70は、温度Tcの推定が1回目であるか否かを、FlagAを参照して判定する。FlagAが0である場合、推定が1回目(初回推定)であると判定して(S205・Yes)、ECU70の処理はステップS206に進む。FlagAが0でない場合、推定が1回目でない、つまり、累積推定中と判定して(S205・No)、ECU70の処理はステップS208に進む。
【0068】
ステップS206において、ECU70は、現在の温度Tcは、ステップS201で検出された温度Tcと、ステップS204で推定した温度変化量ΔTcとの和であると推定する。
ステップS207において、ECU70は、1回目の推定が完了したことを一時的に記憶するために、FlagAに1を代入する。
【0069】
ステップS208において、ECU70は、現在(今回)の温度Tcは、前回のステップS206又はステップS208で推定した温度Tcと、今回ステップS204で推定した温度変化量ΔTcとの和であると推定する。
このようにして、ステップS206、S208において、現在(今回)の温度Tcを把握することができるので、温度センサ32による検出回数を少なくすることができる。
【0070】
ステップS209において、ECU70は、温度センサ32によって、現在の温度Tcを実際に検出する。
【0071】
ステップS210において、ECU70は、ステップS209で検出された現在の温度Tcと、ステップS206又はステップS208で推定された現在の温度Tcと、の差の絶対値が、所定の判定閾値以下であるか否かを判定する。
そして、差の絶対値が、所定の判定閾値以下であると判定した場合(S210・Yes)、ECU70の処理は、ステップS211に進む。一方、差の絶対値が、所定の判定閾値以下でない場合(S210・No)、ECU70の処理はステップS212に進む。
【0072】
都合上、ステップS212を先に説明する。
ステップS212において、ECU70は、温度センサ25又は温度センサ32が故障していると認識する。そして、ECU70は、例えば、運転者に温度センサ25、32の点検を促すように、警告ランプを点灯させる。
その後、ECU70の処理は、エンドに進む。
【0073】
ステップS211において、ECU70は、ステップS210の判定回数を数えるため、内蔵するカウンタを1つ加算し、一時的に記憶する。
【0074】
ステップS213において、ECU70は、カウンタ数、つまり、ステップS210の判定回数がn回(例えば10回)以上であるか否かを判定する。
そして、カウンタ数がn回以上であると判定した場合(S213・Yes)、ECU70の処理はステップS214に進む。一方、カウンタ数がn回以上でないと判定した場合(S213・No)、ECU70の処理は、ステップS202に進む。
【0075】
ステップS214において、ECU70は、温度センサ25及び温度センサ32が正常であると認識する。
ステップS215において、ECU70は、カウンタをリセットし、FlagAに0を代入する。
その後、ECU70の処理は、リターンを介して、スタートに戻る。
【0076】
<燃料電池システムの効果>
このような第2実施形態に係る燃料電池システム1によれば、主に以下の効果を得ることができる。
(1)ステップS206又はステップS208の処理により、現在(推定終了時)において、温度センサ32を作動させずに、温度Tcを把握することができる(図7参照)。
これに加えて、ステップS208では、前回推定された温度Tcと今回推定された温度変化量ΔTcとに基づいて、今回(現在)の温度Tcを推定するので、つまり、累積的に温度Tcを推定するので、1回目に温度Tcを実際に検出すれば、その後、検出することなく温度Tcを把握することができる(図7参照)。
(2)また、第1実施形態と同様に、水素と空気との熱マス等の違いが考慮された図4のマップを参照して、温度変化量ΔTcを推定するので、今回(現在)の温度Tcを高精度で推定することができる。
(3)さらに、ステップS210の故障判定処理により、温度センサ25、32が故障しているか否かを判定することができる。これに加えて、実際に検出された温度Tcと推定された温度Tcとの差が小さく、判定閾値以下である場合(S210・No)、累積的に推定した温度Tcに基づいて次回故障判定するので、誤判定が防止されている。
【0077】
以上、第2実施形態に係る燃料電池システム2について説明したが、これに限定されず、例えば以下のような変更をしてもよい。因みに、後記する実施形態についても同様である。
第2実施形態では、温度Taに基づいて温度Tcを推定する構成を例示したが、これに限定されず、温度Tc及び/又は温度Twに基づいて、温度Taを推定する構成としてもよい。このように温度Taを推定する構成とすれば、パージ弁24が開かれた場合、水素タンク21から流出する低温の水素によって実際の温度Taがばらつくことになるが、この影響を受けずに、燃料電池10の温度に依存した温度Taを把握することができる。
【0078】
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態に係る燃料電池システムについて、図8から図10を参照して説明する。
【0079】
<燃料電池システムの構成>
図8に示すように、第3実施形態に係る燃料電池システム3は、温度センサ44を備えている。温度センサ44は、配管41aの燃料電池10側に設けられており、燃料電池10から排出されたラジエータ液の温度Twを検出するようになっている。そして、温度センサ44はECU70と接続されており、ECU70は温度Twを検知するようになっている。
また、ここでは、ラジエータ液(第1流体)の温度Twを基準として、アノードオフガス(第2流体)の温度Taを推定する場合を例示する。そして、温度センサ44が第1温度検出手段に、温度センサ25が第2温度検出手段に、それぞれ相当する。
【0080】
次に、第3実施形態の特徴について、図8及び図9を主に参照して説明する。
図8に示すサーモスタット42は、第1実施形態で説明したように、その内部を流れるラジエータ液の温度Twが所定温度以上である場合に開き、ラジエータ液がラジエータ43に流れる。したがって、図9に示すように、IG61がONされた後であって、燃料電池10が暖機中であり、ラジエータ液の温度Twが所定温度以上でない場合、サーモスタット42は閉じた状態にある。一方、燃料電池10の暖機が完了し、ラジエータ液の温度Twが所定温度以上となった場合、サーモスタット42が開いた状態にある。
【0081】
これを踏まえた上で、鋭意研究を重ねたところ、発明者らは、図9に示すように、サーモスタット42が開/閉状態のいずれにおいても、ラジエータ液の温度Twの上昇低下の傾向に遅れて、アノードオフガスの温度Taが上昇低下するものの、サーモスタット42が閉じている場合の遅れは、サーモスタット42が開いている場合よりも大きいという知見を得た。すなわち、サーモスタット42が閉じている場合と開いている場合とでは、ラジエータ液の温度変化特性が異なるという知見を得た。つまり、発電によって自己発熱する燃料電池10の温度に対するラジエータ液の温度の追従性は、サーモスタット42の開/閉状態で異なることを得た。
この一理由としては、サーモスタット42が閉じている場合、ラジエータ液の熱がラジエータ43で放熱されず、ラジエータ液がアノードオフガスに対して昇温しやすいためと考えられる。
そして、このような温度Twの変化に対しての温度Taの遅れは、事前試験により求められ、ECU70に記憶されている。また、このような遅れを考慮することによって、温度Twの温度変化量ΔTwに基づいて、温度Taの温度変化量ΔTaを高精度で推定可能となる。
【0082】
<燃料電池システムの動作>
次に、このようなラジエータ液の温度変化特性、つまり、温度Twに対しての温度Taの遅れを考慮する、燃料電池システム3の動作について、図10を参照して説明する。
なお、第1実施形態、第2実施形態に対して、主に異なる部分のみを説明する。
【0083】
IG61がONされると、図10のフローチャートがスタートする。
そして、ステップS301において、ECU70は、サーモスタット42が開いているか否かを、サーモスタット42からの開弁/閉弁信号に基づいて判定する。そして、サーモスタット42は開いていると判定した場合(S301・Yes)、ECU70の処理はステップS302に進む。一方、サーモスタット42は開いていないと判定した場合(S301・No)、ECU70の処理はステップS303に進む。
【0084】
ステップS302において、ECU70は、サーモスタット42が開いている状態用の遅れ(これを開用遅れ)を使用して、温度Taを推定する。詳細には、推定開始時と推定終了時において温度Twを検出し、これらから算出される温度変化量ΔTwと、開用遅れとに基づいて、温度変化量ΔTaを推定する。そして、推定開始時において実際に検出された温度Taと、温度変化量ΔTaとに基づいて、推定終了時の温度Taを推定する。
その後、ECU70の処理は、リターンを通って、スタートに戻る。
【0085】
ステップS303において、ECU70は、サーモスタット42が閉じている状態用の遅れ(これを閉用遅れ)を使用して、温度Taを推定する。詳細には、温度変化量ΔTwと、閉用遅れに基づいて、温度変化量ΔTaを推定する。そして、推定開始時において実際に検出された温度Taと、温度変化量ΔTaとに基づいて、推定終了時の温度Taを推定する。
その後、ECU70の処理は、リターンを通って、スタートに戻る。
【0086】
<燃料電池システムの効果>
このような第3実施形態に係る燃料電池システム3によれば、主に以下の効果を得ることができる。
(1)サーモスタット42の開閉状態によるラジエータ液の温度変化特性、つまり、温度Twに対しての温度Taの遅れに基づいて、温度変化量ΔTaを高精度で推定し、その結果として、推定終了時の温度Taを高精度で推定することができる。
【0087】
以上、第3実施形態に係る燃料電池システム3について説明したが、これに限定されず、例えば以下のような変更をしてもよい。因みに、後記する実施形態についても同様である。
第3実施形態では、サーモスタット42の開閉状態に基づいて、ラジエータ液の温度変化特性による遅れを把握する場合を例示したが、これに加えて、車風速(車速)や冷媒流量(ポンプ41の回転速度)に基づいて、ラジエータ液の温度変化特性を把握してもよい。具体的には、車風速が小さい場合や、冷媒流量が少ない場合、ラジエータ43における放熱量が低下すると考えられ、ラジエータ液は昇温しやすい温度変化特性となると考えられる。よって、このような場合、温度Twに対しての温度Taの遅れが大きくなるように補正する構成としてもよい。
【0088】
≪第4実施形態≫
次に、第4実施形態に係る燃料電池システムについて、図11、図12を参照して説明する。なお、第4実施形態に係る燃料電池システムは、カソードオフガス(第2流体)の温度Tcを検出する温度センサ32(図1参照、第2温度検出手段)を備えていない。以下、第1実施形態に対して異なる部分のみを説明する。
【0089】
<燃料電池システムの動作>
図11のステップS401において、ECU70は、温度センサ25によってIG61のOFF時の温度Taを実際に検出する。
【0090】
ステップS402において、ECU70は、実際に検出されたOFF時の温度Taと、事前試験等により求められたOFF時における温度Taと温度Tcとの相関マップと、に基づいて、OFF時の温度Tcを推定する。ここで、通常、燃料電池10の発電が安定している状態で、IG61がOFFされるので、OFF時における温度Taと温度Tcとは高い相関を有していると考えられる。よって、OFF時の温度Tcは高精度で推定される。
【0091】
そして、ステップS403において、ECU70は、現在(IG61のON時)の温度Tcは、OFF時に推定された温度Tcと、推定された温度変化量ΔTcとの和であると推定する。
【0092】
<燃料電池システムの効果>
このような第4実施形態に係る燃料電池システムによれば、主に以下の効果を得ることができる。
(1)温度Tc用の温度センサ32を備えずに、IG61のOFF時(推定開始時)及びON時(推定終了時)の温度Tcを把握することができる(図12参照)。すなわち、燃料電池システムの構成を簡易とすることができると共に、温度センサ32による電力消費を削除することができる。
【0093】
≪第5実施形態≫
次に、第5実施形態に係る燃料電池システムについて、図13、図14を参照して説明する。なお、第5実施形態に係る燃料電池システムは、カソードオフガス(第2流体)の温度Tc検出する温度センサ32(図1参照、第2温度検出手段)を備えていない。以下、第2実施形態に対して異なる部分のみを説明する。
【0094】
<燃料電池システムの動作>
ステップS501において、ECU70は、温度センサ25によってIG61のON時(推定開始時)の温度Taを実際に検出する。
ステップS502において、ECU70は、ON時の温度Tcを、例えば第4実施形態に係る推定方法によって推定する。
ステップS503において、ECU70は、現在(推定終了時)の温度Tcは、ステップS502で推定した温度Tcと、温度変化量ΔTcとの和であると推定する。
【0095】
なお、図13に示すように、ステップS207、S208の後、ECU70の処理は、ステップS202に進むようになっている。また、2回目以降の推定の場合(S205・No)に進むステップS208において、ECU70は、現在(今回)の温度Tcは、ステップS503で推定した前回の温度Tcと、今回推定された温度変化量ΔTcとの和であると推定する。
【0096】
<燃料電池システムの効果>
このような第5実施形態に係る燃料電池システムによれば、主に以下の効果を得ることができる。
(1)温度Tc用の温度センサ32を備えずに、温度Tcを累積的に推定することができる(図15参照)。これにより、燃料電池システムの構成を簡易とすることができると共に、温度センサ32による電力消費を削除することができる。
【0097】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば以下のような変更をすることができる。
前記した各実施形態では、本発明が、燃料電池自動車に搭載された燃料電池システム1に適用された場合について説明したが、これに限定されず、例えば、自動二輪車や列車等の他、家庭用の据え置き型の燃料電池システムや給湯システムに組み込まれた燃料電池システム等に、適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第1実施形態(第2実施形態)に係る燃料電池システムの構成図である。
【図2】第1実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】燃料電池の発電停止後において、温度Ta、温度Tc及び温度Twの経時変化を示すグラフである。
【図4】温度変化量ΔTaと温度変化量ΔTcとの相関関係を示す相関マップである。
【図5】第1実施形態に係る燃料電池システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【図6】第2実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態に係る燃料電池システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【図8】第3実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【図9】第3実施形態の概念を示すグラフである。
【図10】第3実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図11】第4実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図12】第4実施形態に係る燃料電池システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【図13】第5実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図14】第5実施形態に係る燃料電池システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0099】
1 燃料電池システム
10 燃料電池
11 アノード流路
12 カソード流路
13 ラジエータ液流路
23 エゼクタ(燃料ガス循環系)
24 パージ弁(燃料ガス排出手段)
24c 配管(燃料ガス循環系)
25 温度センサ(第1温度検出手段、第2温度検出手段)
32 温度センサ(第2温度検出手段)
41 ポンプ(冷却液循環系)
42 サーモスタット(冷却液循環系)
43 ラジエータ(冷却液循環系)
44 温度センサ(第1温度検出手段)
51 走行モータ
70 ECU(推定手段、故障判定手段)
Ta アノードオフガスの温度
Tc カソードオフガスの温度
Tw ラジエータ液の温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで発電する燃料電池と、
前記燃料電池から排出された未反応の燃料ガスを、当該燃料電池の上流側に戻し、燃料ガスを循環させる燃料ガス循環系と、
循環する燃料ガスを排出する燃料ガス排出手段と、
前記燃料電池を経由するように冷却液を循環させる冷却液循環系と、
を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池から排出された燃料ガス、及び、前記燃料電池から排出された酸化剤ガス又は冷却液、の一方である第1流体の温度を検出する第1温度検出手段と、
前記燃料電池から排出された燃料ガス、及び、前記燃料電池から排出された酸化剤ガス又は冷却液、の他方である第2流体の温度を検出する第2温度検出手段と、
前記第1流体の温度に基づいて、第2流体の温度を推定する推定手段と、
を備え、
前記推定手段は、
前記第1流体の推定開始時の検出温度と推定終了時の検出温度とに基づいて、前記第1流体の温度変化量を算出し、
当該第1流体の温度変化量に基づいて、前記第2流体の温度変化量を推定し、
前記第2流体の推定開始時の検出温度と、前記第2流体の温度変化量と、に基づいて、当該第2流体の推定終了時の温度を推定する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
推定終了時における前記第2流体の推定温度と検出温度との差が、所定値以下でない場合、前記第1温度検出手段又は前記第2温度検出手段が故障していると判定する故障判定手段を、さらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで発電する燃料電池と、
前記燃料電池から排出された未反応の燃料ガスを、当該燃料電池の上流側に戻し、燃料ガスを循環させる燃料ガス循環系と、
循環する燃料ガスを排出する燃料ガス排出手段と、
前記燃料電池を経由するように冷却液を循環させる冷却液循環系と、
を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池から排出された燃料ガス、及び、前記燃料電池から排出された酸化剤ガス又は冷却液、の一方である第1流体の温度を検出する第1温度検出手段と、
前記第1流体の温度に基づいて、前記燃料電池から排出された燃料ガス、及び、前記燃料電池から排出された酸化剤ガス又は冷却液、の他方である第2流体の温度を推定する推定手段と、
を備え、
前記推定手段は、
前記第1流体の推定開始時の検出温度に基づいて、前記第2流体の推定開始時の温度を推定し、
前記第1流体の推定開始時の検出温度と推定終了時の検出温度とに基づいて、前記第1流体の温度変化量を算出し、
当該第1流体の温度変化量に基づいて、前記第2流体の温度変化量を推定し、
前記第2流体の推定開始時の推定温度と、前記第2流体の温度変化量と、に基づいて、推定終了時における前記第2流体の温度を推定する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
前記推定開始時は前記燃料電池の発電停止時であり、前記推定終了時は前記燃料電池の発電開始時である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記推定手段は、前記燃料電池の発電中に、前記第1流体の温度に基づいて、前記第2流体の温度を推定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記推定手段は、第2流体の温度を累積的に推定するように構成されており、
今回の第2流体の温度変化量と、前回の第2流体の推定温度と、に基づいて、今回の推定終了時の第2流体の温度を推定する
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記第1流体又は前記第2流体は冷却液であり、
前記推定手段は、前記燃料電池の発電中に、前記循環する冷却液の温度変化特性に基づいて、前記第2流体の温度変化量を推定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3、請求項5、請求項6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−77961(P2008−77961A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255568(P2006−255568)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】