説明

燃料電池システム

【課題】冷却器を迂回するバイパス通路を備える燃料電池システムであって、空気の流路を切り換える弁の故障を検知できる燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】燃料電池システムは、冷却器22の上流側と下流側とを連通するバイパス管31と、冷却器22を流れる反応ガス量を調整するバイパス弁32と、バイパス管31の内圧と背圧との差分が所定値以上になると開くチェックバルブ33と、冷却器22よりも下流側の内圧をチェックバルブ33の背圧として導入する背圧導入管34と、背圧導入管34と外部とを連通する大気開放管35と、大気開放管35に設けられて、大気開放管35を開閉するリリーフ弁351と、リリーフ弁351よりも背圧導入管34についての大気開放管35の内圧を検出する圧力センサ352と、圧力センサ352で検出した圧力の変動に基づいて、リリーフ弁351の故障を検知する故障検知部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。詳しくは、エアを冷却する冷却器をバイパスする機能を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の新たな動力源として燃料電池システムが注目されている。燃料電池システムは、例えば、反応ガスを化学反応させて発電する燃料電池と、反応ガス流路を介して燃料電池に反応ガスを供給する反応ガス供給装置と、この反応ガス供給装置を制御する制御装置と、を備える。
【0003】
燃料電池は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。ここで、各セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成され、膜電極構造体は、アノード電極(陽極)およびカソード電極(陰極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。
【0004】
この燃料電池のアノード電極に反応ガスとしての水素ガスを供給し、カソード電極に反応ガスとしての酸素を含む空気を供給すると、電気化学反応により発電する。この発電時に生成されるのは、基本的に無害な水だけであるため、環境への影響や利用効率の観点から、燃料電池が注目されている。
【0005】
ここで、カソード電極に供給される空気は、従来より、大気中の空気から取り込んだものが用いられる。具体的には、燃料電池システムに圧縮機を設け、この圧縮機で大気中の空気を圧送することにより、発電に必要な量の空気をカソード電極に供給する。しかしながら、圧縮されてその温度が上昇した空気を燃料電池に供給し続けると、上述の電解質膜が劣化してしまうため、空気が流れる通路上には、圧縮された空気を冷却する冷却器が設けられる。
【0006】
ところで、燃料電池システムを低温始動する場合には、安定した発電が可能となるまで、燃料電池を暖気する必要がある。そこで、特許文献1には、冷却器を迂回するバイパス通路と、冷却器を介して空気を供給する状態、およびバイパス通路を介して空気を供給する状態を切り換えるバイパス弁と、を備える燃料電池システムが示されている。
【0007】
この燃料電池システムによれば、低温始動する際には、バイパス弁を作動させて、圧縮された空気を、バイパス通路を流通させて燃料電池に供給することにより、燃料電池の暖機を促進することができる。
【特許文献1】特開2003−208914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば、暖機が終了し、バイパス通路を介して空気を供給する状態から、冷却器を介して空気を供給する状態に切り換える際に、バイパス弁が故障すると、圧縮されて温度が上昇した空気が燃料電池に供給され続けることとなる。このような状態で燃料電池の発電を継続すると、燃料電池や加湿器などといった、バイパス通路の下流に設けられたデバイスの温度が上昇してしまい、これらデバイスが劣化してしまうおそれがある。このため、バイパス弁の故障を早期に検出できる燃料電池システムの開発が望まれていた。
【0009】
本発明は、冷却器を迂回するバイパス通路を備える燃料電池システムであって、空気の流路を切り換える弁の故障を検知できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の燃料電池システムは、反応ガス(例えば、後述の水素ガスおよびエア)により発電を行う燃料電池(例えば、後述の燃料電池10)と、反応ガスを前記燃料電池に導入する主流路(例えば、後述のエア供給管23)と、反応ガスを、前記主流路を介して前記燃料電池に供給する反応ガス供給機(例えば、後述の圧縮機21)と、当該主流路に設けられ、当該主流路を流れる反応ガスの状態を変化させる状態変化装置(例えば、後述の冷却器22)と、前記主流路のうち前記状態変化装置の上流側と下流側とを連通するバイパス流路(例えば、後述のバイパス管31)と、前記主流路に設けられ、前記状態変化装置を流れる反応ガス量を調整する遮断弁(例えば、後述のバイパス弁32)と、前記バイパス流路に開閉可能に設けられ、当該バイパス流路の内圧と背圧との差分が所定値以上になると開くチェックバルブ(例えば、後述のチェックバルブ33)と、前記主流路の前記状態変化装置よりも下流側の内圧を、前記チェックバルブの背圧として導入する第1の連結流路(例えば、後述の背圧導入管34)と、を備える燃料電池システム(例えば、後述の燃料電池システム1)であって、前記第1の連結流路と外部とを連通する第2の連結流路(例えば、後述の大気開放管35)と、当該第2の連結流路に設けられて、当該第2の連結流路を開閉するリリーフ弁(例えば、後述のリリーフ弁351)と、前記リリーフ弁よりも前記第1の連結流路側についての前記第2の連結流路の内圧を検出する圧力検出手段(例えば、後述の圧力センサ352)と、当該圧力検出手段で検出した圧力の変動に基づいて、前記リリーフ弁の故障を検知する故障検知手段(例えば、後述の故障検知部45)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、チェックバルブには、反応ガス供給機から供給されたガスの圧力が作動圧として導入され、さらに主流路の状態変化装置よりも下流側の圧力が第1の連結流路を通って背圧として導入される。ここで、第2の連結流路およびリリーフ弁を設けたので、リリーフ弁を閉じた状態では、チェックバルブに対して、主流路の状態変化装置よりも下流側の圧力が背圧として導入される。この状態から、リリーフ弁を開くことにより、第1の連結流路を大気に開放して、チェックバルブに大気圧を背圧として導入できる。つまり、リリーフ弁を開くことにより、チェックバルブに導入される背圧を補助して、作動圧と背圧との差分を大きくできる。その結果、わずかな作動圧でチェックバルブを開くことができる。これにより、遮断弁を作動させるとともに、リリーフ弁を作動させることで、ガスをバイパスして燃料電池に導入したり、状態変化装置を介して導入したりできる。
【0012】
また、チェックバルブを開くためにリリーフ弁を開いた場合、これに伴い、第2の連結流路の内圧は大きく変動する。ここで、リリーフ弁が故障し、開かなかった場合には、第2の連結流路の内圧は変化することがない。本発明によれば、この第2の連結流路の内圧を圧力検出手段により検出し、この圧力の変動に基づいて、リリーフ弁の故障を検知することができる。
【0013】
この場合、前記遮断弁を閉じるとともに前記リリーフ弁を開いて、反応ガスを前記バイパス流路に導入する際において、前記故障検知手段は、前記圧力検出手段で検出した圧力値が前記燃料電池の運転状態に基づいて設定された大気圧以上の所定の圧力値以上である場合には、前記リリーフ弁が閉故障したと判定することが好ましい。
【0014】
遮断弁を閉じるとともにリリーフ弁を開くと、ガスはバイパス流路を介して導入される。ここで、リリーフ弁が閉故障した場合には、圧力検出手段により大気圧よりも高い圧力値が検出されることとなる。この発明によれば、この圧力の変動に基づいてリリーフ弁の閉故障が検知される。
【0015】
この場合、前記遮断弁を開くとともに前記リリーフ弁を閉じて、反応ガスを前記状態変化装置に導入する際において、前記故障検知手段は、前記圧力検出手段で検出した圧力値が前記燃料電池の運転状態に基づいて設定された大気圧以上の所定の圧力値より小さい場合には、前記リリーフ弁が開故障したと判定することが好ましい。
【0016】
遮断弁を開くとともにリリーフ弁を閉じると、ガスは冷却器を介して導入される。ここで、リリーフ弁が開故障した場合には、圧力検出手段により大気圧と略等しい圧力値が検出されることとなる。この発明によれば、この圧力の変動に基づいてリリーフ弁の開故障が検知される。
【0017】
本発明の燃料電池システムは、反応ガスにより発電を行う燃料電池と、反応ガスを前記燃料電池に導入する主流路と、反応ガスを、前記主流路を介して前記燃料電池に供給する反応ガス供給機と、当該主流路に設けられ、当該主流路を流れる反応ガスの状態を変化させる状態変化装置と、前記主流路のうち前記状態変化装置の上流側と下流側とを連通するバイパス流路と、前記主流路に設けられ、前記状態変化装置を流れる反応ガス量を調整する遮断弁と、前記バイパス流路に開閉可能に設けられ、当該バイパス流路の内圧と背圧との差分が所定値以上になると開くチェックバルブと、前記主流路の前記状態変化装置よりも下流側の内圧を、前記チェックバルブの背圧として導入する第1の連結流路と、を備える燃料電池システムであって、前記第1の連結流路と外部とを連通する第2の連結流路と、当該第2の連結流路に設けられて、当該第2の連結流路を開閉するリリーフ弁と、前記リリーフ弁よりも前記外部側についての前記第2の連結流路の内圧を検出する圧力検出手段(例えば、後述の圧力センサ352A)と、当該圧力検出手段で検出した圧力の変動に基づいて、前記リリーフ弁の故障を検知する故障検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、チェックバルブを開くためにリリーフ弁を開いた場合、これに伴い、第2の連結流路の内圧は大きく変動する。ここで、リリーフ弁が故障し、開かなかった場合には、第2の連結流路の内圧は変化することがない。本発明によれば、この第2の連結流路の内圧を圧力検出手段により検出し、この圧力の変動に基づいて、リリーフ弁の故障を検知することができる。
【0019】
この場合、前記遮断弁を閉じるとともに前記リリーフ弁を開いて、反応ガスを前記バイパス流路に導入する際において、前記故障検知手段は、前記圧力検出手段で検出した圧力値が前記燃料電池の運転状態に基づいて設定された大気圧以上の所定の圧力値より小さい場合には、前記リリーフ弁が閉故障したと判定することが好ましい。
【0020】
遮断弁を閉じるとともにリリーフ弁を開くと、ガスはバイパス流路を介して導入される。ここで、リリーフ弁が閉故障した場合には、圧力検出手段により大気圧と略等しい圧力値が検出されることとなる。この発明によれば、この圧力の変動に基づいてリリーフ弁の閉故障が検知される。
【0021】
この場合、前記遮断弁を開くとともに前記リリーフ弁を閉じて、反応ガスを前記状態変化装置に導入する際において、前記故障検知手段は、前記圧力検出手段で検出した圧力値が前記燃料電池の運転状態に基づいて設定された大気圧以上の所定の圧力値以上である場合には、前記リリーフ弁が開故障したと判定することが好ましい。
【0022】
遮断弁を開くとともにリリーフ弁を閉じると、ガスは状態変化装置を介して導入される。ここで、リリーフ弁が開故障した場合には、圧力検出手段により大気圧よりも高い圧力値が検出されることとなる。この発明によれば、この圧力の変動に基づいてリリーフ弁の開故障が検知される。
【0023】
本発明の燃料電池システムは、反応ガスにより発電を行う燃料電池と、反応ガスを前記燃料電池に導入する主流路と、反応ガスを、前記主流路を介して前記燃料電池に供給する反応ガス供給機と、当該主流路に設けられ、当該主流路を流れる反応ガスを冷却する冷却器と、前記主流路のうち前記冷却器の上流側と下流側とを連通するバイパス流路と、前記主流路に設けられ、前記冷却器を流れる反応ガス量を調整する遮断弁と、前記バイパス流路に開閉可能に設けられ、当該バイパス流路の内圧と背圧との差分が所定値以上になると開くチェックバルブと、前記主流路の前記冷却器よりも下流側の内圧を、前記チェックバルブの背圧として導入する第1の連結流路と、を備える燃料電池システムであって、前記第1の連結流路と外部とを連通する第2の連結流路と、当該第2の連結流路に設けられて、当該第2の連結流路を開閉するリリーフ弁と、前記主流路のうち前記バイパス流路の下流側の温度を検出する第1の温度検出手段(例えば、後述の下流温度センサ236B)と、当該第1の温度検出手段で検出した温度の変動に基づいて、前記リリーフ弁または前記遮断弁の故障を検知する故障検知手段(例えば、後述の故障検知部45B)と、を備えることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、チェックバルブには、反応ガス供給機から供給されたガスの圧力が作動圧として導入され、さらに主流路の冷却器よりも下流側の圧力が第1の連結流路を通って背圧として導入される。ここで、第2の連結流路およびリリーフ弁を設けたので、リリーフ弁を閉じた状態では、チェックバルブに対して、主流路の冷却器よりも下流側の圧力が背圧として導入される。この状態から、リリーフ弁を開くことにより、第1の連結流路を大気に開放して、チェックバルブに大気圧を背圧として導入できる。つまり、リリーフ弁を開くことにより、チェックバルブに導入される背圧を補助して、作動圧と背圧との差分を大きくできる。その結果、わずかな作動圧でチェックバルブを開くことができる。これにより、遮断弁を作動させるとともに、リリーフ弁を作動させることで、ガスをバイパスして燃料電池に導入したり、冷却器を介して導入したりできる。
【0025】
ここで、リリーフ弁および遮断弁を動作させることにより、ガスを、冷却器を介して燃料電池に導入したり、または、バイパス流路を介して燃料電池に導入したりすると、バイパス流路の下流側の温度が大きく変動する。ここで、リリーフ弁または遮断弁が故障し、ガスの流路が切り換わらなかった場合には、バイパス流路の下流側の温度は変化することがない。本発明によれば、このバイパス流路の下流側の温度の変動を第1の温度検出手段で検出し、この温度の変動に基づいて、リリーフ弁または遮断弁の故障を検知することができる。
【0026】
この場合、前記主流路のうち前記冷却器よりも上流側の温度を検出する第2の温度検出手段(例えば、後述の上流温度センサ235B)をさらに備え、前記遮断弁を閉じるとともに前記リリーフ弁を開いて、反応ガスを前記バイパス流路に導入する際において、前記故障検知手段は、前記第1の温度検出手段で検出した温度が前記第2の温度検出手段で検出した温度よりも低い場合には、前記リリーフ弁または前記遮断弁が故障したと判定することが好ましい。
【0027】
この発明によれば、遮断弁を閉じるとともにリリーフ弁を開くと、ガスはバイパス流路を介して導入される。ここで、リリーフ弁または遮断弁が故障した場合には、第1の温度検出手段により検出される温度は、冷却器の上流の温度よりも低くなる。この発明によれば、この温度の変動に基づいてリリーフ弁または遮断弁の故障が検知される。
【0028】
この場合、前記主流路のうち前記冷却器よりも上流側の温度を検出する第2の温度検出手段(例えば、後述の上流温度センサ235B)をさらに備え、前記遮断弁を開くとともに前記リリーフ弁を閉じて、反応ガスを前記冷却器に導入する際において、前記故障検知手段は、前記第1の温度検出手段で検出した温度が前記第2の温度検出手段で検出した温度以上である場合には、前記リリーフ弁または前記遮断弁が故障したと判定することが好ましい。
【0029】
遮断弁を開くとともにリリーフ弁を閉じると、ガスは冷却器を介して導入される。ここで、リリーフ弁または遮断弁が故障した場合には、第1の温度検出手段により検出される温度は、冷却器の上流の温度以上となる。この発明によれば、この温度の変動に基づいてリリーフ弁または遮断弁の故障が検知される。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、遮断弁を作動させるとともに、リリーフ弁を作動させることにより、内圧と背圧との差分を大きくしてチェックバルブを開き、ガスをバイパスして燃料電池に導入したり、状態変化装置を介して導入したりできる。また、この第2の連結流路の内圧を圧力検出手段により検出し、この圧力の変動に基づいて、リリーフ弁の故障を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る燃料電池システム1の構成を示すブロック図である。
燃料電池システム1は、燃料電池10と、この燃料電池10に反応ガスとしての水素ガスおよびエア(空気)を供給する供給装置20と、これら燃料電池10および供給装置20を制御する制御装置40とを有する。
【0033】
燃料電池10は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。各セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成される。膜電極構造体は、アノード電極(陽極)およびカソード電極(陰極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。通常、両電極は、固体高分子電解質膜に接して酸化・還元反応を行う触媒層と、この触媒層に接するガス拡散層とから形成される。このような燃料電池10は、アノード電極(陽極)側に水素ガスが供給され、カソード電極(陰極)側に酸素を含むエアが供給されると、これらの電気化学反応により発電する。
【0034】
燃料電池10は、この燃料電池10の出力を制限する電流制限器(VCU)12を介して、モータ13や高圧バッテリ(図示せず)に接続されている。燃料電池10で発電された電力は、モータ13および高圧バッテリに供給される。電流制限器12は、制御装置40から出力される電流制限値に基づいて、この電流制限値の範囲内で燃料電池10から取り出される電流を制限しながら、燃料電池10の電力をモータ13や高圧バッテリに供給する。
【0035】
また、燃料電池10には、スタック温度センサ15、および、スタック電流センサ16が設けられている。スタック温度センサ15は、燃料電池10の温度Tを検出し、制御装置40へ出力する。また、スタック電流センサ16は、燃料電池10の発電電流Iを検出し、制御装置40へ出力する。
【0036】
供給装置20は、燃料電池10のカソード電極側にエアを供給する反応ガス供給機としての圧縮機21と、アノード電極側に水素ガスを供給するエゼクタ28と、を含んで構成される。
【0037】
エゼクタ28は、燃料電池10のアノード電極側をその経路に含む水素循環路25上に設けられ、図示しない水素タンクから供給された水素ガスを、この水素循環路25上で循環させる。また、この水素循環路25には、この水素循環路25内のガスを外部に排出する水素排出路26が分岐して形成されている。この水素排出路26の先端側には、パージ弁261が設けられている。
【0038】
圧縮機21は、主流路としてのエア供給管23を介して、燃料電池10のカソード電極側に接続されている。この圧縮機21は、大気に開放されたエア導入管27から導入されたエアを圧縮し、この圧縮したエアを、エア供給管23を介して燃料電池10に供給する。この圧縮機21は、制御装置40からの指令信号に応じて動作し、設定された圧縮比でエアを圧縮してエア供給管23にエアを供給する。
【0039】
また、この圧縮機21の圧縮比とは、圧縮機21前後の差圧比、すなわち、エア導入管27内の圧力とエア供給管23内の圧力との比であり、この圧縮比は、制御装置40からの制御信号に応じて変更可能となっている。ここで、この圧縮機21は、圧縮比を大きくするに従い、エア供給管23内の圧力が上昇するようになっている。
【0040】
また、エア導入管27には、流量センサ272が設けられている。この流量センサ272は、エア導入管27を流れるエアの体積流量Fを検出し、制御装置40へ出力する。
【0041】
燃料電池10のカソード電極側には、エア供給管23から導入されたエアを排出するエア排出管24が接続され、このエア排出管24の先端側には、背圧弁241が設けられる。
【0042】
また、エア供給管23には、圧縮機21から燃料電池10へ向かって順に、このエア供給管23を流れるエアの状態を変化させる状態変化装置としての冷却器22、および、このエア供給管23を流れるエアを加湿する加湿器29が設けられている。
【0043】
冷却器22は、熱交換器であり、圧縮機21から供給されるエアを熱交換により冷却する。圧縮機21で圧縮されたエアは、圧縮前の状態に比べて高温になるため、この高温のエアをそのまま加湿器29や燃料電池10などのデバイスに導入すると、これらデバイスが破損するおそれがある。特に、これらデバイスのうち、加湿器29に設けられた後述の中空糸膜は、その耐熱温度すなわち使用許可温度が最も低くなっている。そこで、エア供給管23に冷却器22を設けることにより、高温に圧縮されたエアを冷却して、加湿器29や燃料電池10を保護する。
【0044】
加湿器29は、いわゆる中空糸膜を用いた加湿装置である。具体的にはこの加湿器29は、水透過性の中空糸膜の束と、この中空糸膜束を収納するハウジングとを備える。加湿器29導入されたエアは、ハウジング内部で中空糸膜束と水分交換して加湿される。燃料電池10には、この加湿器29により加湿されたエアが供給される。燃料電池10における化学反応は上述のようにMEA膜で行われるが、このMEA膜の湿度がある程度確保できないと、イオンの交換が行われないため、この加湿器29でエアを加湿することにより、MEAの湿度をある程度確保する。
【0045】
ところで、この燃料電池システム1を始動する際、燃料電池10が低温の状態にある場合は、この燃料電池10を発電に適した温度まで暖機する必要がある。このため、燃料電池システム1を低温始動する際には、この暖機を促進するために、圧縮機21で圧縮されたエアを冷却器22で冷却せずに、そのまま加湿器29および燃料電池10に導入することが好ましい場合がある。そこで、エア供給管23には、冷却器22をバイパスするバイパス機構30が設けられる。
【0046】
図2は、バイパス機構30の構成を示すブロック図である。
バイパス機構30は、バイパス流路としてのバイパス管31と、遮断弁としてのバイパス弁32と、チェックバルブ33と、第1の連結流路としての背圧導入管34と、第2の連結流路としての大気開放管35と、を備える。
【0047】
バイパス管31は、エア供給管23に接続され、冷却器22の上流側と下流側とを連通する。また、このバイパス管31の流路は、エア供給管23の流路よりも狭くなっている。
バイパス弁32は、エア供給管23のうち、冷却器22の下流側で、かつ、バイパス管31とエア供給管23との合流地点よりも上流側に設けられ、冷却器22を流れるエア量を調整する。
【0048】
チェックバルブ33は、バイパス管31に設けられ、このバイパス管31を開閉する。背圧導入管34は、チェックバルブ33に接続され、エア供給管23の冷却器22よりも下流側の内圧をチェックバルブ33に背圧として導入する。また、この背圧導入管34には、背圧導入管34の流路を絞るオリフィス341が設けられている。
【0049】
チェックバルブ33は、バイパス管31の内圧Pを作動圧として開閉する。より具体的には、チェックバルブ33は、バイパス管31の内圧Pと、背圧導入管34で導入された背圧Pとの差分が所定値未満では閉じており、所定値以上になると開く。具体的には、チェックバルブ33は、円筒状のバルブ本体331と、このバルブ本体の内部に進退可能に設けられたピストン332と、このピストンを付勢するばね機構333と、を備える。
【0050】
バルブ本体331は、円筒状の第1円筒部334と、この第1円筒部334に接続された第2円筒部335と、を有する。この第1円筒部334と第2円筒部335との間には、ダイヤフラム336が設けられている。
ピストン332は、第2円筒部の内部に設けられ、第2円筒部の内部を仕切るダイヤフラム336と、このダイヤフラム336に設けられたロッド337と、を備える。
ばね機構333は、バルブ本体331を閉じる方向へピストン332を付勢する。
【0051】
エア供給管23は、バルブ本体331の第1円筒部334側の開口に接続され、背圧導入管34は、バルブ本体331の第2円筒部335側の開口に接続され、バイパス管31は、第1円筒部334のダイヤフラム336近傍に接続される。これにより、第1円筒部334の内部は、バイパス管31の内圧Pとなり、第2円筒部335の内部は、背圧導入管34で導入された背圧Pとなっている。
【0052】
このチェックバルブ33の動作は、以下のようになる。
すなわち、このチェックバルブ33では、PとPの差分が所定値未満の場合、ばね機構333により、バルブ本体331を閉じる方向へピストン332が付勢されることで、ダイヤフラム336により第1円筒部334が閉塞される。これにより、バイパス管31は閉じた状態となる。
一方、PとPの差分が所定値以上になると、この差圧により、ばね機構333の付勢力に抵抗して、ピストン332が後退し、バルブ本体331を開く。これにより、バイパス管31は開いた状態となる。
【0053】
大気開放管35は、背圧導入管34と大気圧に開放された外部とを連通する。リリーフ弁351は、大気開放管35に設けられ、この大気開放管35を開閉する。すなわち、このリリーフ弁351を開き、背圧導入管34を外部と連通することで、チェックバルブ33の背圧Pを大気圧近傍に下げて、PとPの差分を大きくし、チェックバルブ33の動作を補助することができる。
【0054】
また、大気開放管35には、圧力検出手段としての圧力センサ352が設けられている。この圧力センサ352は、リリーフ弁351よりも背圧導入管34側についての大気開放管35の内圧Pを検出し、制御装置40へ出力する。
【0055】
次に、以上のように構成されたバイパス機構30の動作について説明する。
圧縮機21で圧縮されたエアを、バイパス管31に流通させる場合には、バイパス弁32を閉じるとともにリリーフ弁351を開く。
すると、背圧導入管34で導入された背圧Pは、大気圧に近い圧力となる。これに対し、内圧Pは、圧縮機21で圧縮されたエアの圧力であるため、大気圧よりも高くなっている。よって、これらPおよびPに大きな差分が生じ、チェックバルブ33は、開いた状態で保持されることとなる。したがって、バイパス管31は開いた状態で保持され、エアはバイパス管31を流通する。
燃料電池システム1を低温始動する際には、上述のようにバイパス弁32を閉じかつリリーフ弁351を開いた状態にして、冷却器22を迂回してエアを供給することにより、燃料電池10の暖機を促進できる。
【0056】
また、圧縮機21で圧縮されたエアを、冷却器22を流通させる場合には、バイパス弁32を開くとともにリリーフ弁351を閉じる。
すると、圧縮機21で圧縮されたエアは、エア供給管23を流通する。この状態では、バイパス管31の内圧Pと背圧導入管34で導入された背圧Pは、略等しくなり、チェックバルブ33は閉じた状態で保持される。したがって、バイパス管31は閉じた状態となり、エアは冷却器22のみを流通することになる。
燃料電池システム1を通常運転する際には、上述のようにバイパス弁32を開きかつリリーフ弁351を閉じた状態にして、冷却器22を経由してエアを供給することにより、加湿器29および燃料電池10を耐熱温度以下の状態にして運転を継続させることができる。
【0057】
ところで、燃料電池システム1を始動させた直後、燃料電池10の暖機を行っている間などは、エアの流量が特に少なくなっているため、バイパス管31における圧損が小さくPとPとの差分も小さくなり、チェックバルブ33が開きにくくなる場合がある。そこで、上述のように、バイパス弁32を閉じるとともに、リリーフ弁351を開き、このPとPとの差分を大きくすることで、チェックバルブ33を確実に動作させることができる。また、エアの流量が多い場合であっても、リリーフ弁351を開き、PとPとの差分を大きくすることで、チェックバルブ33における圧損を低減できる。これにより圧縮機21の消費電力を低減できる。
【0058】
図1に戻って、制御装置40には、この制御装置40から出力される制御信号に基づいて駆動するデバイスとして、上述のVCU12、圧縮機21、背圧弁241、パージ弁261、バイパス弁32などが接続されている。
【0059】
制御装置40には、図示しないイグニッションスイッチが接続される。このイグニッションスイッチは、燃料電池車の運転席に設けられており、運転者の操作に従って、オン/オフ信号を制御装置40に送信する。制御装置40は、イグニッションスイッチのオン/オフに従って、燃料電池10の発電を行う。
【0060】
ここで、イグニッションスイッチがオンにされたことに基づいて、制御装置40により、燃料電池10で発電する手順は、以下のようになる。
すなわち、図示しない水素タンクから、エゼクタ28を介して、燃料電池10のアノード側に水素ガスを供給する。また、圧縮機21を駆動させることにより、エア供給管23を介して、燃料電池10のカソード側にエアを供給する。
燃料電池10に供給された水素ガスおよびエアは、発電に供された後、燃料電池10からアノード側の生成水等の残留水とともに、水素排出路26およびエア排出管24に流入する。これら水素ガスおよびエアは、図示しない排ガス処理装置で処理されて、外部に排出される。
【0061】
図3は、制御装置40の構成を示すブロック図である。
制御装置40は、バイパス実施判断部41、バイパス弁制御部42、リリーフ弁制御部43、および故障検知手段としての故障検知部45を備え、上述のようにして燃料電池10で発電を行う他、バイパス機構30を制御することが可能となっている。
【0062】
バイパス実施判断部41は、スタック温度センサ15で検出された温度Tおよびスタック電流センサ16で検出された電流Iに基づいて燃料電池10の状態を判断し、バイパス制御を実施するか、または、バイパス制御を解除(非実施)するかを判断する。ここで、バイパス制御とは、エアをバイパスして供給する制御である。
【0063】
具体的には、例えば、温度Tが所定の温度よりも低い場合には、バイパス実施判断部41は、燃料電池10の暖機を促進するために、バイパス制御を実施することを判断し、バイパス制御実施指令信号をバイパス弁制御部42、リリーフ弁制御部43、および故障検知部45に出力する。また、温度Tが所定の温度以上となった場合には、燃料電池10および加湿器29を保護するために、バイパス制御を解除することを判断し、バイパス制御非実施指令信号をバイパス弁制御部42、リリーフ弁制御部43、および故障検知部45に出力する。
【0064】
バイパス弁制御部42は、バイパス実施判断部41による判断に応じて、バイパス弁32に指令信号を出力し、バイパス弁32を開閉制御する。具体的には、バイパス実施判断部41によりバイパス制御を実施すると判断された場合には、バイパス弁制御部42は、バイパス弁32に閉指令信号を出力し、バイパス弁32を閉じた状態にする。また、バイパス実施判断部41によりバイパス制御を解除すると判断された場合には、バイパス弁制御部42は、バイパス弁32に開指令信号を出力し、バイパス弁32を開いた状態にする。
【0065】
リリーフ弁制御部43は、バイパス実施判断部41による判断に応じて、リリーフ弁351に指令信号を出力し、リリーフ弁351を開閉制御する。具体的には、バイパス実施判断部41によりバイパス制御を実施すると判断された場合には、リリーフ弁制御部43は、リリーフ弁351に開指令信号を出力し、リリーフ弁351を開いた状態にする。また、バイパス実施判断部41によりバイパス制御を解除すると判断された場合には、リリーフ弁制御部43は、リリーフ弁351に閉指令信号を出力し、リリーフ弁351を閉じた状態にする。
【0066】
故障検知部45は、圧力センサ352で検出した圧力値Pの変動に基づいて、リリーフ弁351の故障を検知する。故障検知部45は、圧力値Pに基づいてリリーフ弁351の故障を検知するための故障判断テーブルを備える。
【0067】
図4は、故障判断テーブルを示す図である。
故障検知部45は、バイパス実施判断部41によりバイパス制御を実施すると判断された場合、および、バイパス制御を解除すると判断された場合に、圧力値Pを参照し、この圧力値Pと予め設定された判定値とを比較することにより、リリーフ弁351が故障したか否かを判断する。
【0068】
上述のように、バイパス制御を実施する場合、バイパス弁32には閉指令信号が出力され、リリーフ弁351には開指令信号が出力される。
この際、リリーフ弁351が正常に動作し開いた状態になると、圧力値Pは大気圧と略等しくなる。
一方、リリーフ弁351が閉故障し、閉じた状態から開いた状態に動作しない場合には、圧力値Pは、背圧導入管34内の圧力値と略等しくなる。背圧導入管34内は圧縮機21により圧縮されたエアで満たされているため、圧力値Pは、燃料電池10の運転状態により異なるものの大気圧よりも高くなる。
【0069】
また、バイパス制御を解除する場合、バイパス弁32には開指令信号が出力され、リリーフ弁351には閉指令信号が出力される。
この際、リリーフ弁351が正常に動作し閉じた状態になると、圧力値Pは、背圧導入管34内の圧力値と略等しくなる。
一方、リリーフ弁351が開故障し、開いた状態から閉じた状態に動作しない場合には、圧力値Pは大気圧と略等しくなる。
【0070】
そこで、大気圧よりも大きな値に設定され、かつ、燃料電池10の運転状態に基づいて設定された圧力値を、判定値とすることにより、リリーフ弁351の故障を判断することができる。
【0071】
具体的には、図4に示すように、バイパス制御を実施する際において、故障検知部45は、圧力値Pが判定値より小さい場合にはリリーフ弁351が正常であると判定し、圧力値Pが判定値以上である場合にはリリーフ弁351が閉故障したと判定する。
また、バイパス制御を解除する際において、故障検知部45は、圧力値Pが判定値より小さい場合にはリリーフ弁351が開故障したと判定し、圧力値Pが判定値以上である場合にはリリーフ弁351が正常であると判定する。
【0072】
ここで、上述の判定値は、燃料電池10の運転状態に基づいて設定された圧力値であるとしたが、これに限らず、流量センサ272で検出された体積流量Fに応じて補正してもよい。
【0073】
次に、図5のフローチャートを参照して、制御装置40によるバイパス機構30の制御の手順について説明する。
S11において、バイパス制御を実施するか否かを判断する。具体的には、上述のように、温度Tおよび電流Iに基づいて燃料電池10の状態を判断し、バイパス制御を実施するか否かを判断する。この判断がYESの場合はS13に移り、NOの場合はS12に移る。
S12では、バイパス制御を解除すると判断されたことに応じて、バイパス弁32に開指令信号を出力しバイパス弁32を開いた状態にし、かつ、リリーフ弁351に閉指令信号を出力しリリーフ弁351を閉じた状態にし、S14に移る。
S13では、バイパス制御を実施すると判断されたことに応じて、バイパス弁32に閉指令信号を出力しバイパス弁32を閉じた状態にし、かつ、リリーフ弁351に開指令信号を出力しリリーフ弁351を開いた状態にし、S14に移る。
S14では、故障判断処理を行い、バイパス機構30の制御処理を終了する。このステップでは、具体的には、図4に示す故障判断テーブルを参照して、リリーフ弁351の故障を検知する。
【0074】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について、図6および図7を参照して説明する。
以下の第2実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0075】
図6は、本実施形態に係るバイパス機構30Aの構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る燃料電池システムは、バイパス機構30Aの構成、および、故障検知部の構成が、上記第1実施形態に係る燃料電池システム1と異なる。具体的には、本実施形態では、圧力センサ352Aが検出する圧力の位置が、第1実施形態と異なる。
【0076】
図6に示すように、大気開放管35には、圧力検出手段としての圧力センサ352Aが設けられている。この圧力センサ352Aは、リリーフ弁351よりも外部側についての大気開放管35の内圧Pを検出し、制御装置へ出力する。
【0077】
図7は、本実施形態に係る制御装置の故障検知部の故障判断テーブルを示す図である。
本実施形態に係る故障判断テーブルでは、故障を判定する条件とその判定結果との対応が、第1実施形態と異なる。
【0078】
具体的には、図7に示すように、バイパス制御を実施する際において、故障検知部は、圧力値Pが判定値より小さい場合にはリリーフ弁351が閉故障したと判定し、圧力値Pが判定値以上である場合にはリリーフ弁351が正常であると判定する。
また、バイパス制御を解除する際において、故障検知部は、圧力値Pが判定値より小さい場合にはリリーフ弁351が正常であると判定し、圧力値Pが判定値以上である場合にはリリーフ弁351が開故障したと判定する。
【0079】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態について、図8から図10を参照して説明する。
以下の第3実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0080】
図8は、本実施形態に係るバイパス機構30Bの構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る燃料電池システムは、バイパス機構30Bの構成、および、制御装置40Bの構成が、上記第1実施形態に係る燃料電池システム1と異なる。具体的には、本実施形態の燃料電池システムは、第2の温度検出手段としての上流温度センサ235B、第1の温度検出手段としての下流温度センサ236B、および開度センサ321Bを備える点が、第1実施形態と異なる。
【0081】
図8に示すように、エア供給管23には、上流温度センサ235B、下流温度センサ236B、および、開度センサ321Bが設けられている。上流温度センサ235Bは、エア供給管23のうち冷却器22よりも上流側の温度TUBを検出し、制御装置40Bへ出力する。下流温度センサ236Bは、バイパス管31の下流側の温度TDBを検出し、制御装置40Bへ出力する。開度センサ321Bは、バイパス弁32の開度を検出し、制御装置40Bへ出力する。
【0082】
図9は、制御装置40Bの構成を示すブロック図である。
故障検知部45Bは、下流温度センサ236Bで検出した温度TDBの変動に基づいて、リリーフ弁351またはバイパス弁32の故障を検知する。故障検知部45Bは、温度TDBに基づいてリリーフ弁351またはバイパス弁32の故障を検知するための故障判断テーブルを備える。
【0083】
図10は、故障検知部45Bの故障判断テーブルを示す図である。
故障検知部45Bは、バイパス実施判断部41によりバイパス制御を実施すると判断された場合、および、バイパス制御を解除すると判断された場合に、温度TDBを参照し、この温度TDBと設定された判定値とを比較することにより、リリーフ弁351またはバイパス弁32が故障したか否かを判断する。
【0084】
上述のように、バイパス制御を実施する場合、バイパス弁32には閉指令信号が出力され、リリーフ弁351には開指令信号が出力される。
この際、リリーフ弁351およびバイパス弁32が正常に動作すると、温度TDBは、温度TUBと略等しくなる。
一方、リリーフ弁351が閉故障またはバイパス弁32が開故障した場合は、温度TDBは、温度TUBより小さくなる。
【0085】
また、バイパス制御を解除する場合、バイパス弁32には開指令信号が出力され、リリーフ弁351には閉指令信号が出力される。
この際、リリーフ弁351およびバイパス弁32が正常に動作すると、温度TDBは、温度TUBより小さくなる。
一方、リリーフ弁351が開故障またはがバイパス弁32が閉故障すると、温度TDBは、温度TUBと略等しくなる。
【0086】
そこで、上流温度センサ235Bで検出された温度TUBを判定値として設定することにより、リリーフ弁351またはバイパス弁32の故障を判断することができる。
【0087】
具体的には、図10に示すように、バイパス制御を実施する際において、故障検知部45Bは、温度TDBが判定値以上である場合にはリリーフ弁351およびバイパス弁32が正常であると判定し、温度TDBが判定値より小さい場合にはリリーフ弁351が閉故障またはバイパス弁32が開故障したと判定する。
また、バイパス制御を解除する際において、故障検知部45Bは、温度TDBが判定値以上である場合にはリリーフ弁351が開故障またはバイパス弁32が閉故障したと判定し、温度TDBが判定値より小さい場合にはリリーフ弁351およびバイパス弁32が正常であると判定する。
【0088】
またここで、上述のようにしてリリーフ弁351またはバイパス弁32の故障を検知した場合には、故障検知部45Bは、開度センサ321Bにより検出された開度を参照することにより、リリーフ弁351およびバイパス弁32のどちらが故障したかを判別する。つまり、開度センサ321Bにより検出された開度を参照することにより、バイパス弁32が正常に作動したか否かを判別することができるので、リリーフ弁351およびバイパス弁32のどちらが故障したかを判別することができる。
【0089】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
【0090】
第3実施形態では、冷却器22の上流に設けられた上流温度センサ235Bにより検出された温度TUBにより、故障検知に用いる判定値としたが、これに限るものではない。例えば、外気の温度を検出する温度センサを設け、この温度センサで検出された温度と、圧縮機の圧縮比とに基づいて冷却器22の上流の温度を推定し、これを故障検知に用いる判定値としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図2】前記実施形態に係るバイパス機構の構成を示すブロック図である。
【図3】前記実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】前記実施形態に係る故障検知部の故障判断テーブルを示す図である。
【図5】前記実施形態に係る制御装置におけるバイパス機構の制御の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係るバイパス機構の構成を示すブロック図である。
【図7】前記実施形態に係る故障検知部の故障判断テーブルを示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るバイパス機構の構成を示すブロック図である。
【図9】前記実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】前記実施形態に係る故障検知部の故障判断テーブルを示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 燃料電池システム
10 燃料電池
20 供給装置
21 圧縮機(反応ガス供給機)
22 冷却器(状態変化装置)
23 エア供給管(主流路)
235B 上流温度センサ(第2の温度検出手段)
236B 下流温度センサ(第1の温度検出手段)
29 加湿器
30,30A,30B バイパス機構
31 バイパス管(バイパス流路)
32 バイパス弁(遮断弁)
33 チェックバルブ
34 背圧導入管(第1の連結流路)
35 大気開放管(第2の連結流路)
351 リリーフ弁(リリーフ弁)
352 圧力センサ(圧力検出手段)
40,40B 制御装置
45,45B 故障検知部(故障検知手段)
352,352A 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスにより発電を行う燃料電池と、
反応ガスを前記燃料電池に導入する主流路と、
反応ガスを、前記主流路を介して前記燃料電池に供給する反応ガス供給機と、
当該主流路に設けられ、当該主流路を流れる反応ガスの状態を変化させる状態変化装置と、
前記主流路のうち前記状態変化装置の上流側と下流側とを連通するバイパス流路と、
前記主流路に設けられ、前記状態変化装置を流れる反応ガス量を調整する遮断弁と、
前記バイパス流路に開閉可能に設けられ、当該バイパス流路の内圧と背圧との差分が所定値以上になると開くチェックバルブと、
前記主流路の前記状態変化装置よりも下流側の内圧を、前記チェックバルブの背圧として導入する第1の連結流路と、を備える燃料電池システムであって、
前記第1の連結流路と外部とを連通する第2の連結流路と、
当該第2の連結流路に設けられて、当該第2の連結流路を開閉するリリーフ弁と、
前記リリーフ弁よりも前記第1の連結流路側についての前記第2の連結流路の内圧を検出する圧力検出手段と、
当該圧力検出手段で検出した圧力の変動に基づいて、前記リリーフ弁の故障を検知する故障検知手段と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記遮断弁を閉じるとともに前記リリーフ弁を開いて、反応ガスを前記バイパス流路に導入する際において、前記故障検知手段は、前記圧力検出手段で検出した圧力値が前記燃料電池の運転状態に基づいて設定された大気圧以上の所定の圧力値以上である場合には、前記リリーフ弁が閉故障したと判定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記遮断弁を開くとともに前記リリーフ弁を閉じて、反応ガスを前記状態変化装置に導入する際において、前記故障検知手段は、前記圧力検出手段で検出した圧力値が前記燃料電池の運転状態に基づいて設定された大気圧以上の所定の圧力値より小さい場合には、前記リリーフ弁が開故障したと判定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
反応ガスにより発電を行う燃料電池と、
反応ガスを前記燃料電池に導入する主流路と、
反応ガスを、前記主流路を介して前記燃料電池に供給する反応ガス供給機と、
当該主流路に設けられ、当該主流路を流れる反応ガスの状態を変化させる状態変化装置と、
前記主流路のうち前記状態変化装置の上流側と下流側とを連通するバイパス流路と、
前記主流路に設けられ、前記状態変化装置を流れる反応ガス量を調整する遮断弁と、
前記バイパス流路に開閉可能に設けられ、当該バイパス流路の内圧と背圧との差分が所定値以上になると開くチェックバルブと、
前記主流路の前記状態変化装置よりも下流側の内圧を、前記チェックバルブの背圧として導入する第1の連結流路と、を備える燃料電池システムであって、
前記第1の連結流路と外部とを連通する第2の連結流路と、
当該第2の連結流路に設けられて、当該第2の連結流路を開閉するリリーフ弁と、
前記リリーフ弁よりも前記外部側についての前記第2の連結流路の内圧を検出する圧力検出手段と、
当該圧力検出手段で検出した圧力の変動に基づいて、前記リリーフ弁の故障を検知する故障検知手段と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
前記遮断弁を閉じるとともに前記リリーフ弁を開いて、反応ガスを前記バイパス流路に導入する際において、前記故障検知手段は、前記圧力検出手段で検出した圧力値が前記燃料電池の運転状態に基づいて設定された大気圧以上の所定の圧力値より小さい場合には、前記リリーフ弁が閉故障したと判定することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記遮断弁を開くとともに前記リリーフ弁を閉じて、反応ガスを前記状態変化装置に導入する際において、前記故障検知手段は、前記圧力検出手段で検出した圧力値が前記燃料電池の運転状態に基づいて設定された大気圧以上の所定の圧力値以上である場合には、前記リリーフ弁が開故障したと判定することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
反応ガスにより発電を行う燃料電池と、
反応ガスを前記燃料電池に導入する主流路と、
反応ガスを、前記主流路を介して前記燃料電池に供給する反応ガス供給機と、
当該主流路に設けられ、当該主流路を流れる反応ガスを冷却する冷却器と、
前記主流路のうち前記冷却器の上流側と下流側とを連通するバイパス流路と、
前記主流路に設けられ、前記冷却器を流れる反応ガス量を調整する遮断弁と、
前記バイパス流路に開閉可能に設けられ、当該バイパス流路の内圧と背圧との差分が所定値以上になると開くチェックバルブと、
前記主流路の前記冷却器よりも下流側の内圧を、前記チェックバルブの背圧として導入する第1の連結流路と、を備える燃料電池システムであって、
前記第1の連結流路と外部とを連通する第2の連結流路と、
当該第2の連結流路に設けられて、当該第2の連結流路を開閉するリリーフ弁と、
前記主流路のうち前記バイパス流路の下流側の温度を検出する第1の温度検出手段と、
当該第1の温度検出手段で検出した温度の変動に基づいて、前記リリーフ弁または前記遮断弁の故障を検知する故障検知手段と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
前記主流路のうち前記冷却器よりも上流側の温度を検出する第2の温度検出手段をさらに備え、
前記遮断弁を閉じるとともに前記リリーフ弁を開いて、反応ガスを前記バイパス流路に導入する際において、前記故障検知手段は、前記第1の温度検出手段で検出した温度が前記第2の温度検出手段で検出した温度よりも低い場合には、前記リリーフ弁または前記遮断弁が故障したと判定することを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記主流路のうち前記冷却器よりも上流側の温度を検出する第2の温度検出手段をさらに備え、
前記遮断弁を開くとともに前記リリーフ弁を閉じて、反応ガスを前記冷却器に導入する際において、前記故障検知手段は、前記第1の温度検出手段で検出した温度が前記第2の温度検出手段で検出した温度以上である場合には、前記リリーフ弁または前記遮断弁が故障したと判定することを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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