説明

燃料電池システム

【課題】電解質膜の含有水分量を正確に測定にすることができる水分量測定装置を提供する。
【解決手段】固体高分子膜からなる電解質膜111を有して空気と水素とを電気化学反応させて電気エネルギを出力するセル10aを複数積層配置して構成された燃料電池10に適用され、複数のセル10aにおける少なくとも1つのセル(センサセル)100aの電解質膜111の含有水分量を測定する水分量測定装置であって、センサセル100aの電解質膜111と同一平面上において電解質膜111の外周縁部に当接して配置され、電解質膜111に含まれる水分を吸湿して膨潤する膨潤部材132と、膨潤部材132の膨潤量を検出する膨潤量検出機構133と、センサセル100aの温度を検出するセル温度センサ102と、膨潤量検出手段133の検出値およびセル温度センサ102の検出値に基づいて電解質膜111の含有水分量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の含有水分量を測定する水分量測定装置、およびこれを適用した燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型の電解質膜を有する燃料電池では、燃料電池の内部水分量、すなわち電解質膜の含有水分量が少なく、電解質膜が乾燥している場合、内部抵抗が大きくなり燃料電池の出力電圧が低下する。一方、電解質膜の含有水分量が過剰である場合、燃料電池の電解質膜、電極等が水分で覆われてしまうため、反応物質である酸素、水素の拡散が阻害され、出力電圧が低下する。
【0003】
従って、燃料電池システムにおいては、燃料電池の内部水分状態、すなわち電解質膜の含有水分量を適切に管理する技術が重要となる。そこで、電解質膜の含有水分量と相関関係を有する燃料電池(燃料電池スタック)の内圧を略一定に保持するように燃料電池に関わるパラメータを調整する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1では、燃料電池の冷却機構を制御して燃料電池の運転温度を調整して等を行い、燃料電池セルの内圧を略一定に保持することで、燃料電池の内部水分状態、すなわち電解質膜の含有水分量の適切な管理を図っている。
【特許文献1】特開2006−236917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池セルにおける電解質膜の含有水分量は、各燃料電池セルにおいてバラツキが生じる。理由としては、燃料電池では、例えば積層方向の両端側と中央位置では燃料電池セルの温度が異なり、電解質膜の含有水分量にバラツキが生じるためである。従って、電解質膜の含有水分量を適切に管理するためには、燃料電池セルの温度のバラツキを考慮する必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、電解質膜の含有水分量を検出する手段は何ら開示されていない。さらに、特許文献1では、燃料電池の運転温度、すなわち燃料電池全体の温度に基づいて、電解質膜の含有水分量を調整しているため、各燃料電池セルにおける電解質膜の含有水分量にバラツキが生じる。その結果、特許文献1に記載の手段では、燃料電池セルの電解質膜の含有水分状態を適切に管理することができないといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、電解質膜の含有水分量を正確に測定することができる水分量測定装置を提供することを第1の目的とする。さらに、本発明は、電解質膜の含有水分量の適切な管理を行なうことを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、固体高分子膜からなる電解質膜(111)を有して酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを出力する燃料電池セル(10a)を複数積層配置して構成された燃料電池(10)に適用され、複数の燃料電池セル(10a)における少なくとも1つの燃料電池セル(100a)の電解質膜(111)の含有水分量を測定する水分量測定装置であって、少なくとも1つの燃料電池セル(100a)における電解質膜(111)の同一平面上において電解質膜(111)の外周縁部に当接して配置され、電解質膜(111)に含まれる水分を吸湿して膨潤する膨潤部材(132)と、膨潤部材(132)の膨潤量を検出する膨潤量検出手段(133)と、膨潤部材(132)が配置された燃料電池セル(100a)の温度を検出するセル温度検出手段(102)と、電解質膜(111)の含有水分量を測定する水分量測定手段とを備え、水分量測定手段は、膨潤量検出手段(133)の検出値およびセル温度検出手段(102)の検出値に基づいて電解質膜(111)の含有水分量を測定することを特徴とする。
【0008】
このように、水分量測定装置を膨潤量検出部(130)で検出する膨潤部材(132)の膨潤量および膨潤量検出部(130)が設けられた燃料電池セル(100a)の温度に基づいて、電解質膜(111)の含有水分量を測定する構成とすることで、各燃料電池セル(10a)における温度のバラツキが生じたとしても電解質膜(111)の含有水分量を正確に測定することができる。
【0009】
ところで、複数の燃料電池セル(10a)が複数積層配置される場合、燃料電池セル(10a)同士の連結によって、膨潤部材(132)が燃料電池セル(10a)の積層方向に膨潤しにくくなっている。つまり、膨潤量検出手段で燃料電池セル(10a)の積層方向への膨潤部材(132)の膨潤量を検出しにくくなっている。
【0010】
そこで、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、膨潤部材(132)は、膨潤室(131)内に配置され、膨潤室(131)は、膨潤部材(132)が電解質膜(111)に含まれる水分を吸湿した場合に、膨潤部材(132)が燃料電池セル(10a)の積層方向に直交する方向であって、電解質膜(111)から遠ざかる方向にのみ膨潤することを許容するように設けられていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、膨潤部材(132)が燃料電池セル(10a)の積層方向に直交する方向であって、電解質膜(111)から遠ざかる方向にのみ膨潤するため、膨潤量検出手段で膨潤部材(132)の膨潤量を検出しやすくすることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の発明において、電解質膜(111)の両側には、一対の電極(112、113)が配置されており、膨潤部材(132)は、一対の電極(112、113)と接触しないように配置されていることを特徴とする。
【0013】
このように、膨潤部材(132)と一対の電極(112、113)とが接触しないように配置することで、膨潤部材(132)を、発電に寄与しない部位に配置することができる。これにより、膨潤部材(132)を燃料電池(10)の発電に伴う膜痩せ等の劣化から保護することができる。従って、膨潤部材(132)の劣化による膨潤量の検出誤差が生じるのを抑制することができるため、電解質膜(111)の含有水分量を正確に測定することができる。
【0014】
また、具体的には、請求項4に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の発明において、膨潤量検出手段(133)を、膨潤部材(132)に埋設されて膨潤部材(132)の膨潤の変化に応じて移動する磁性体(133a)と、磁性体(133a)の位置を検出する位置検出手段(133b)とを有し、位置検出手段(133b)の検出値に基づいて膨潤部材(132)の膨潤量を検出するようにしてもよい。
【0015】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の発明において、膨潤量検出手段(133)を、膨潤部材(132)に当接して配置されて膨潤部材(133)の膨潤に応じて生ずる押圧力を検出する圧力センサ(133c)を有し、圧力センサ(133c)の検出値に基づいて膨潤部材(132)の膨潤量を検出するようにしてもよい。
【0016】
また、請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の発明において、膨潤部材(132)を電解質膜(111)よりも親水性基の割合が多い構造とすることで、膨潤部材(132)を電解質膜(111)に含まれる水分を吸湿しやすい構造とすることができる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の発明において、膨潤部材(132)は、少なくとも燃料電池(10)の積層方向の一端側の燃料電池セル(100a)、および燃料電池(10)の積層方向の中央側の燃料電池セル(100a)に設けられていることを特徴とする。
【0018】
このように、少なくとも燃料電池(10)の積層方向の一端側と中央側のセルといった燃料電池セル(10a)の温度が異なる箇所で電解質膜(111)の含有水分量測定することで、燃料電池(10)の積層方向における内部水分量の分布を測定することができる。
【0019】
また、請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の水分量測定装置(100)を適用した燃料電池を備える燃料電池システムであって、燃料電池(10)の内部水分量を制御する水分量制御手段(50)を備え、水分量制御手段(50)は、水分量測定手段で測定した電解質膜(111)の含有水分量に基づいて燃料電池(10)の内部水分状態を判定し、燃料電池(10)の内部水分量を制御することを特徴とする。
【0020】
これによれば、水分量測定装置(100)で正確に測定した電解質膜(111)の含有水分量に基づいて燃料電池(10)の積層方向における水分状態を判定することができるため、燃料電池(10)の内部水分量を適切に管理することができる。
【0021】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。図1は、本実施形態の水分量測定装置100を適用した燃料電池システムの全体構成図である。この燃料電池システムは、電気自動車の一種である、いわゆる燃料電池車両に適用されており、車両走行用電動モータ等の電気負荷に電力を供給するものである。
【0023】
まず、燃料電池システムは、図1に示すように、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池10を備えている。燃料電池10は、図示しない車両走行用電動モータ、二次電池、車両用各種補機類等の電気負荷に供給される電気エネルギを出力するもので、本実施形態では、固体高分子電解質型燃料電池を採用している。
【0024】
より具体的には、燃料電池10は、基本単位となる燃料電池セル10a(以下、単にセル10aと記載する。)が複数個、電気的に直列に接続されて構成されたものである。各セル10aでは、以下に示すように、水素と酸素とを電気化学反応させて、電気エネルギを出力する。
【0025】
(負極側)H2→2H++2e−
(正極側)2H++1/2O2+2e−→H2O
さらに、燃料電池10から出力される電気エネルギは、燃料電池10全体として出力される電圧を検出する電圧センサ11、および、燃料電池10全体として出力される電流を検出する電流センサ12によって計測される。なお、電圧センサ11および電流センサ12の検出信号は、後述する制御装置50に入力されている。
【0026】
また、燃料電池10の空気極(正極)側には、酸化剤ガスである空気(酸素)を燃料電池10に供給するための空気供給配管20a、並びに、燃料電池10にて電気化学反応を終えた余剰空気および空気極で生成された生成水を燃料電池10から外気へ排出するための空気排出配管20bが接続されている。
【0027】
空気供給配管20aの最上流部には、大気中から吸入した空気を燃料電池10に圧送するための空気ポンプ21が設けられ、空気排出配管20bには、燃料電池10内の空気の圧力を調整するための空気調圧弁23が設けられている。
【0028】
さらに、空気供給配管20aおよび空気排出配管20bには、空気調圧弁23から流出した空気の有する湿度(水蒸気)を空気ポンプ21から圧送された空気へ移動させるための加湿器22が設けられている。この加湿器22は、複数本の中空糸にて構成されており、燃料電池10へ供給される空気を加湿する機能を果たす。
【0029】
燃料電池10の水素極(負極)側には、燃料ガスである水素を燃料電池10に供給するための水素供給配管30a、水素極側に溜まった生成水を微量な水素とともに燃料電池10から外気へ排出するための水素排出配管30bが接続されている。さらに、水素供給配管30aおよび水素排出配管30bは、水素循環配管30cを介して接続されている。
【0030】
水素供給配管30aの最上流部には、高圧水素が充填された高圧水素タンク31が設けられ、水素供給配管30aにおける高圧水素タンク31と燃料電池10との間には、燃料電池10に供給される水素の圧力を調整する水素調圧弁32が設けられている。
【0031】
水素排出配管30bには、生成水を微量な水素とともに外気へ排出するために所定の時間間隔で開閉する電磁弁34が設けられている。なお、上述の電気化学反応では、水素極側において生成水は発生しないものの、水素極側には、酸素極側から各セル10aの電解質膜を透過した生成水が溜まるおそれがある。そこで、本実施形態では、水素排出配管30bおよび電磁弁34を設けている。
【0032】
水素循環配管30cは、水素供給配管30aの水素調圧弁32下流側と水素排出配管30bの電磁弁34上流側とを接続するように設けられている。これにより、燃料電池10から流出した未反応の水素を、燃料電池10に循環させて再供給している。また、水素循環配管30cには、水素流路30内で水素を循環させるための水素ポンプ33が配置されている。
【0033】
ところで、燃料電池10は発電効率を確保するために運転中一定温度(例えば80℃程度)に維持する必要がある。このため、燃料電池10には、燃料電池10を冷却するための冷却水回路40が接続されている。この冷却水回路40には、燃料電池10に冷却水(熱媒体)を循環させるウォータポンプ41、電動ファン42を備えたラジエータ(放熱器)43が設けられている。
【0034】
さらに、冷却水回路40には、冷却水を、ラジエータ43を迂回するように流すバイパス流路44が設けられている。冷却水回路40とバイパス流路44との合流点には、バイパス流路44に流れる冷却水流量を調整するための流路切替弁45が設けられている。この流路切替弁45の弁開度が調整されることによって、冷却水回路40の冷却能力が調整される。
【0035】
また、冷却水回路40の燃料電池10の出口側近傍には、燃料電池10から流出した冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段としての冷却水温度センサ46が設けられている。この冷却水温度センサ46により冷却水温度を検出することで、燃料電池10の温度を間接的に検出することができる。なお、この冷却水温度センサ46の検出信号も、制御装置50に入力される。
【0036】
制御装置50は、入力信号に基づいて、燃料電池システムを構成する各種電気式アクチュエータの作動を制御するもので、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。
【0037】
具体的には、制御装置50の入力側には、上述の電圧センサ11、電流センサ12および冷却水温度センサ46の検出信号等の他に、後述する水分量測定装置100のから出力される検出信号が入力される。一方、出力側には、上述の空気ポンプ21、空気調圧弁23、水素調圧弁32、水素ポンプ33、電磁弁34、ウォータポンプ41、流路切替弁45等の各種電気式アクチュエータが接続されている。
【0038】
次に、本実施形態の水分量測定装置100の詳細について説明する。水分量測定装置100は、燃料電池10の積層方向の両端側、および中央側に配置された3つのセンサセル100a、センサセル100aの温度を検出するセル温度センサ102、後述する膨潤量検出部130の各配置箇所に対応する部位の水分量を測定して制御装置50へ出力する信号処理回路51を備えて構成されている。
【0039】
まず、図2〜図4によりセンサセル100aの概要について説明する。図2は燃料電池10の外管斜視図、図3は燃料電池内の温度分布を説明する説明図、図4はセンサセル100aの分解図を示している。
【0040】
図2に示すように、センサセル100aは、燃料電池10の内部水分状態がセル10aの温度に影響を受けることを考慮して、燃料電池10におけるセル10aの積層方向の両端側、および中央側に配置されている。ここで、燃料電池10の運転中における温度分布は、図3に示すように、中央側のセルで高温となり、両端側のセルで低温となっている。
【0041】
センサセル100aは、図4に示すように、後述する電解質膜111の両側に一対の電極112、113を配置した四角形状の膜電極接合体110を、一対のセパレータ120で狭持する構成となっている。
【0042】
なお、図示しないが、一対のセパレータ120における膜電極接合体110の外周縁部の各角部に対応する部位の近傍には、膜電極接合体110に空気および水素を供給するためのマニホールド、および膜電極接合体110から空気および水素を排出するためのマニホールドがそれぞれ形成されている。
【0043】
そして、センサセル100aには、膜電極接合体110の外周縁部における各角部から外方側に突出するように4つの膨潤量検出部130が設けられている。つまり、膜電極接合体110に空気および水素を供給・排出するためのマニホールドの近傍に各膨潤量検出部130が設けられる構成となっている。これは、空気および水素を供給・排出するためのマニホールドの近傍で電解質膜111の含有水分量にバラツキが生じやすいためである。
【0044】
次に、図5、図6によりセンサセル100aの詳細について説明する。図5は、センサセル100aの膜電極接合体110をセル10aの積層方向から見た透視図であり、図6は、本実施形態におけるセンサセル100aの部分断面図である。ここで、図6は、図5のA−A断面図に対応している。なお、各膨潤量検出部130の内部構成はそれぞれ同等な構成となっているため、図6で示す膨潤量検出部130の内部構成を代表して説明し、他の膨潤量検出部130の説明を省略する。
【0045】
図5、図6に示すように、センサセル100aは、電解質膜111、触媒層112、および拡散層113からなる膜電極接合体(MEA)110と、一対のセパレータ120とを備えている。電解質膜111の両外側には、触媒層112が配置され、各触媒層112の外側には拡散層113が配置されており、各拡散層113の外側には、セパレータ120が配置されている。
【0046】
ここで、触媒層112および拡散層113は、各電極(負極(水素極)、正極(空気極))を構成している。触媒層112は、カーボン担体に電気化学反応を促進する触媒(白金等)を担持させたカーボン担持白金触媒等で構成され、拡散層113は、導電体でかつ液体水分保持性能を有するカーボンクロス等で構成されている。
【0047】
また、一対のセパレータ120は、空気極と対向する面に空気極に空気を供給するための空気通路121aが形成されたセパレータ121と水素極と対向する面に水素極に水素を供給するための水素通路122aが形成されたセパレータ122からなる。各セパレータ120は、導電性金属又はカーボン材よりなる板状部材で構成されている。
【0048】
そして、センサセル100aには、膜電極接合体110の外周縁部の各角部からセル10aの積層方向に直交する方向であって膜電極接合体110から遠ざかる方向に突出するように4つの膨潤量検出部130が設けられている。
【0049】
具体的には、各膨潤量検出部130は、各セパレータ120間における膜電極接合体110の外周縁部の各角部に対応する位置に区画形成された膨潤室131、電解質膜111と同一平面状において電解質膜111の外周縁部と当接して配置され、電解質膜111に含まれる水分を吸湿して膨潤する膨潤部材132、および膨潤部材132の膨潤量を測定する膨潤量検出手段を構成する膨潤量検出機構133を有して構成されている。なお、膨潤部材132は、膨潤室131内に配置されている。
【0050】
膨潤室131は、膨潤部材132が電解質膜111に含まれる水分を吸湿した場合に、膨潤部材132がセル10aの積層方向に直交する方向であって電解質膜111から遠ざかる方向(以下、膨潤方向とも呼ぶ)にのみ膨潤することを許容するように区画形成されている。
【0051】
具体的には、膨潤室131は、膨潤部材132と電解質膜111とが当接する部位における電解質膜111の外周縁部に沿う方向(以下、膨潤室131、膨潤部材132の幅方向とも呼ぶ)の寸法は、膨潤部材132が幅方向に膨潤しないように、膨潤部材132の幅方向と同一寸法となっている。つまり、膨潤室131の幅方向の壁面によって、膨潤部材132が幅方向に膨潤することを規制している。
【0052】
さらに、膨潤室131は、膨潤部材132の膨潤方向における一端側(電解質膜111に近い側)の壁面が、膨潤部材132と電解質膜111とが当接可能に開口している。また、膨潤室131は、膨潤部材132の膨潤方向における他端側(電解質膜111から遠い側)の壁面が膨潤部材132と隙間が空くように区画形成されている。
【0053】
さらに、膨潤部材132は、電解質膜111と同一平面状に配置される構成であるため、膨潤部材132は、電解質膜111に含まれる水分を吸湿すると、膨順方向にのみ膨潤する。なお、膨潤部材132は、膨潤室131内の膨潤部材132の膨潤方向における他端側に形成された隙間を埋めるように膨潤する。
【0054】
ここで、本実施形態の膨潤部材132は、電解質膜111と同様の材料、例えば、スルホン酸フルオロポリマ、ナフィオン(登録商標)等で構成され、電解質膜111同様に水分を含有する。つまり、膨潤部材132は、電解質膜111に含まれる水分を吸湿して膨潤する構成となっている。
【0055】
また、膨潤部材132は、電解質膜111に含まれる水分を吸湿して膨潤するため、電解質膜111の含有水分量が多い場合は、膨潤部材132の膨潤量が多く、電解質膜111の含有水分量が少ない場合は、膨潤部材132の膨潤量が少ない状態となる。このように、電解質膜111の含有水分量と膨潤部材132の膨潤量とは、密接な相関関係を有している。
【0056】
なお、膨潤部材132は、電解質膜111に含まれる水分を吸湿しやすいように電解質膜111よりも親水性基(親水性のスルホン酸基)の割合が多い構造(例えば、電解質膜111よりも微細なクラスタ構造)を有する材料を用いてもよい。この場合、膨潤部材132がより膨潤しやすくなるため、膨潤量検出部130で膨潤量を検出しやすくすることができる。
【0057】
また、上述のように膨潤部材132は、膜電極接合体110の外周縁部に形成された膨潤室131内に配置される構成であるため、膨潤部材132の両側面が一対の電極112、113と接触しないように配置される構成となっている。すなわち、膨潤部材132は、センサセル100aにおける発電に寄与しない部位に配置される構成となっている。
【0058】
次に、本実施形態の膨潤量検出機構133は、膨潤部材132に埋設された磁性体133a、および磁性体133aの位置を検出する位置検出手段である近接センサ133bで構成されている。
【0059】
この磁性体133aは、膨潤部材132に埋設されているため、膨潤部材132が電解質膜111に含まれる水分を吸湿して膨潤(体積変化)すると、膨潤部材132の膨潤方向に移動する。
【0060】
また、近接センサ133bは、セパレータ120における膨潤部材132の膨潤方向の外側に配設されている。そのため、磁性体133aは、膨潤部材132が電解質膜111に含まれる水分を吸湿して膨潤すると、近接センサ133bに近づくように移動することとなる。
【0061】
つまり、近接センサ133bで検出する磁性体133aの位置が近接センサ133bに対して近いほど膨潤部材132の膨潤量が多く、磁性体133aの位置が近接センサ133bに対して遠いほど膨潤部材132の膨潤量が少ない状態となる。
【0062】
また、膨潤部材132には、セル温度センサ102が設けられている。このセル温度センサ102は、膨潤部材132の温度変化によって吸湿できる水分量が変化することを考慮して設けられており、各膨潤量検出部130の膨潤部材132の温度を検出している。なお、セル温度センサ102は、膨潤部材132の温度を直接検出する構成でなくとも、間接的にセンサセル100aの温度を検出する構成としてもよい。
【0063】
次に、本実施形態の燃料電池10の内部水分量制御について図7に基づいて説明する。図7は、制御装置50のCPUがROM等に格納された制御プログラムにしたがって行う水分量制御の流れを示すフローチャートである。図7の制御フローは、燃料電池システムの作動後にスタートする。
【0064】
まず、ステップS10にて、各センサセル100aの各膨潤量検出部130における膨潤量検出機構133で、膨潤部材132の膨潤量を検出する。具体的には、膨潤部材132に埋設された磁性体133aの位置を近接センサ133bで検出する。
【0065】
そして、近接センサ133bの検出値と膨潤部材132とを関連付けた制御マップ等を用いて、近接センサ133bの検出値から膨潤部材132の膨潤量を検出する。なお、この制御マップは、予め実験等で作成し、制御装置50のROM等に記憶しておけばよい。
【0066】
次に、ステップS20にて、各センサセル100aの各膨潤量検出部130におけるセル温度センサ102で、それぞれの膨潤部材132の温度を検出する。
【0067】
次に、ステップS30で、各膨潤量検出部130で検出した膨潤部材132の膨潤量とセル温度センサ102で検出した温度から各センサセル100a内の各膨潤量検出部130における電解質膜111の含有水分量を測定する。具体的には、膨潤部材132の膨潤量およびセンサセル100aの温度と、電解質膜111の含有水分量とを関連付けた制御マップを用いて、各膨潤量検出部130の検出値とセル温度センサ102の検出値から電解質膜111の含有水分量を測定する。
【0068】
なお、膨潤部材132の膨潤量および温度と電解質膜111の含有水分量とを関連付けた制御マップは、予め実験等で作成し、制御装置50のROM等に記憶しておけばよい。
【0069】
次に、ステップS40で、燃料電池10の内部水分状態が、ドライアップ状態か否かを判定する。このドライアップ状態か否かの判定は、ステップS30で測定した各センサセル100a内の各膨潤量検出部130で検出した電解質膜111の含有水分量に基づいて行なう。具体的には、各センサセル100a内の各膨潤量検出部130で測定した電解質膜111の含有水分量の最小値若しくは平均値等が、予め実験等により設定した乾燥基準量を下回る場合にドライアップ状態と判定することができる。
【0070】
ステップS40でドライアップ状態と判定された場合には、ステップS50でドライアップ対策処理を行なう。ドライアップ対策処理としては、例えば、空気調圧弁23を閉鎖側に絞るとともに、燃料電池10の負荷率を増加される処理を行なえばよい。
【0071】
これによれば、空気調圧弁23を閉鎖側に絞ることで、各セル10aへの加湿器22で加湿された空気量を増加させることができる。また、燃料電池10の負荷率を増加させることで燃料電池10の発電に伴う生成水が増加する。従って、各セル10aにおける電解質膜111の含有水分量を増加させることができ、ドライアップ状態を解消することができる。なお、燃料電池10の負荷率は、定格負荷に対する割合を意味している。
【0072】
一方、ステップS40でドライアップ状態と判定されなかった場合には、ステップS60で燃料電池10の水分状態がフラッディング状態か否かを判定する。このフラッディング状態か否かの判定は、ステップS30で測定した電解質膜111の含有水分量に基づいて行なう。具体的には、各センサセル100a内の各膨潤量検出部130で測定した電解質膜111の含有水分量の最大値若しくは平均値等が、予め実験等により設定した湿潤基準量を上回る場合にフラッディング状態と判定する。
【0073】
ステップS60でフラッディング状態と判定された場合には、ステップS70でフラッディング対策処理を行なう。フラッディング対策処理としては、例えば、空気調圧弁23若しくは水素排出配管30bの電磁弁34を開放側に開くとともに、空気ポンプ21からの空気の供給量の増加若しくは水素調圧弁32を開放側に開く処理を行なえばよい。
【0074】
これによれば、空気調圧弁23若しくは電磁弁34を開放側に開くことで、排出ガスととともに電解質膜111に含まれる水分を外部に排出することができる。また、空気ポンプ21からの空気の供給量の増加、若しくは水素調圧弁32を開放側に開くことで、電解質膜111に含まれる水分を外部に排出し易くすることができる。従って、各セル10aにおける電解質膜111の含有水分量を減少させることができ、フラッディング状態を解消することができる。
【0075】
なお、上述のステップS30の処理が、本発明の水分量測定手段に相当し、ステップS40〜ステップS70の処理が、本発明の水分量制御手段に相当している。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の構成では、各膨潤量検出部130において検出する膨潤部材132の膨潤量およびセル温度センサ102で検出する膨潤部材132の温度に基づいて、電解質膜111の含有水分量を測定する構成とすることで、各セル10aにおける温度のバラツキが生じたとしても、電解質膜111の含有水分量を正確に測定することができる。
【0077】
さらに、電解質膜111と同一平面状に配置した膨潤部材132にて水分を吸湿する構成とすることで、電解質膜111が厚さ方向に膨潤して他の構成(セパレータ120等)と干渉することを抑制することができる。
【0078】
また、膨潤部材132を配置する膨潤室131を発電に寄与しない部位に設ける構成とすることで、膨潤部材132を燃料電池10の発電に伴う膜痩せ等の劣化から保護することができる。従って、膨潤部材132の劣化による膨潤量の検出誤差が生じるのを抑制することができるため、電解質膜111の含有水分量を正確に測定することができる。
【0079】
また、水分量測定装置100で正確に測定した電解質膜111の含有水分量に基づいて燃料電池10の積層方向における水分状態を判定することができるため、燃料電池10の内部水分量を適切に管理することができる。
【0080】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8に基づいて説明する。ここで、図8は、本実施形態におけるセンサセル100aの部分断面図である。なお、図8は、図5のA−A断面図に対応している。
【0081】
上述の実施形態では、膨潤量検出部130における膨潤量検出機構133を、膨潤部材132に埋設された磁性体133aと磁性体133aの位置を検出する近接センサ133bとで構成する例について説明した。本実施形態では、膨潤量検出機構133を圧力センサ133cで構成する例について説明する。以下、上記第1実施形態と同様または均等な部分について同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
具体的には、図8に示すように、膨潤室131において膨潤部材132と電解質膜111と当接させる一端側の反対側(電解質膜111から遠い側)に圧力センサ133cを配設する。そして、膨潤部材132が電解質膜111に含まれる水分を吸湿して膨潤する際に、膨潤部材132の膨潤によって発生する押圧力を圧力センサ133cで検出する。
【0083】
そして、圧力センサ133cの検出値と膨潤部材132とを関連付けた制御マップ等を用いて、圧力センサ133cの検出値から膨潤部材132の膨潤量を検出する。なお、この制御マップは、予め実験等で作成し、制御装置50のROM等に記憶しておけばよい。
【0084】
次に、各センサセル100aの各膨潤量検出部130におけるセル温度センサ102で、膨潤部材132の温度を検出し、各膨潤量検出部130の膨潤量検出機構133で検出した膨潤量とセル温度センサ102で検出した温度から各センサセル100a内の電解質膜111の含有水分量を測定する。
【0085】
具体的には、膨潤部材132の膨潤量および温度と、電解質膜111の含有水分量とを関連付けた制御マップを用いて、各膨潤量検出部130の膨潤量検出機構133の検出値とセル温度センサ102の検出値から電解質膜111の含有水分量を測定する。なお、膨潤部材132の膨潤量(圧力センサ133cの検出値)および温度と電解質膜111の含有水分量とを関連付けた制御マップは、予め実験等で作成し、制御装置50のROM等に記憶しておけばよい。
【0086】
このように、膨潤量検出機構133の構成を圧力センサ133cで構成したとしても、膨潤部材132の膨潤量を検出することができ、第1実施形態の構成と同様な効果を得ることができる。
【0087】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
【0088】
(1)上述の実施形態では、センサセル100aにおける膜電極接合体110の外周縁部における各角部に4つの膨潤量検出部130を設ける例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、膜電極接合体110の外周縁部における水素若しくは空気を供給するためのマニホールド近傍で電解質膜111の含有水分量が最も変化しやすい部位に1つ設ける構成でもよく、逆に膜電極接合体110の周縁部に多数設けてもよい。
【0089】
(2)上述の実施形態では、センサセル100aを燃料電池10のセル10aの積層方向の両端側、および中央側に配置する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、燃料電池10における少なくともセル10aの積層方向の一端側と中央側に配置する構成であれ、燃料電池10の積層方向における水分状態の分布を把握することができる。
【0090】
(3)上述の実施形態では、膨潤部材132の膨潤量の検出する場合や電解質膜111の含有水分量を測定する場合に、予め制御装置50のROM等に記憶しておいた制御マップに基づいているが、これに限定されず、例えば、理論式等に基づいて算出してもよい。
【0091】
(4)上述の実施形態では、燃料電池10の内部水分状態の判定方法、および内部水分量の制御方法についての例を説明したが、説明した例に限定されず、他の内部水分状態の判定方法、および内部水分量の制御方法を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1実施形態の燃料電池システムの全体構成図である。
【図2】第1実施形態の燃料電池の斜視図である。
【図3】燃料電池の積層方向における温度分布を説明する説明図である。
【図4】第1実施形態のセンサセルの分解図である。
【図5】第1実施形態のセンサセルの内部構成を説明する説明図である。
【図6】第1実施形態のセンサセルの部分断面図である。
【図7】第1実施形態の水分量制御の流れを示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態のセンサセルの部分断面図である。
【符号の説明】
【0093】
10 燃料電池
10a セル
50 制御装置
100 水分量測定装置
100a センサセル(膨潤検出部が設けられた燃料電池セル)
131 膨潤室
132 膨潤部材
133 膨潤量検出機構(膨潤量検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子膜からなる電解質膜(111)を有して酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを出力する燃料電池セル(10a)を複数積層配置して構成された燃料電池(10)に適用され、前記複数の燃料電池セル(10a)における少なくとも1つの燃料電池セル(100a)の前記電解質膜(111)の含有水分量を測定する水分量測定装置であって、
前記少なくとも1つの燃料電池セル(100a)における前記電解質膜(111)の同一平面上において前記電解質膜(111)の外周縁部に当接して配置され、前記電解質膜(111)に含まれる水分を吸湿して膨潤する膨潤部材(132)と、
前記膨潤部材(132)の膨潤量を検出する膨潤量検出手段(133)と、
前記膨潤部材(132)が配置された燃料電池セル(100a)の温度を検出するセル温度検出手段(102)と、
前記電解質膜(111)の含有水分量を測定する水分量測定手段とを備え、
前記水分量測定手段は、前記膨潤量検出手段(133)の検出値および前記セル温度検出手段(102)の検出値に基づいて前記電解質膜(111)の含有水分量を測定することを特徴とする水分量測定装置。
【請求項2】
前記膨潤部材(132)は、膨潤室(131)内に配置され、
前記膨潤室(131)は、前記膨潤部材(132)が前記電解質膜(111)に含まれる水分を吸湿した場合に、前記膨潤部材(132)が前記燃料電池セル(10a)の積層方向に直交する方向であって、前記電解質膜(111)から遠ざかる方向にのみ膨潤することを許容するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水分量測定装置。
【請求項3】
前記電解質膜(111)の両側には、一対の電極(112、113)が配置されており、
前記膨潤部材(132)は、前記一対の電極(112、113)と接触しないように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の水分量測定装置。
【請求項4】
前記膨潤量検出手段(133)は、前記膨潤部材(132)に埋設されて前記膨潤部材(132)の膨潤量に応じて移動する磁性体(133a)と、前記磁性体(133a)の位置を検出する位置検出手段(133b)とを有して構成され、前記位置検出手段(133b)の検出値に基づいて前記膨潤部材(132)の膨潤量を検出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の水分量測定装置。
【請求項5】
前記膨潤量検出手段(133)は、前記膨潤部材(132)に当接して配置されて前記膨潤部材(133)の膨潤量に応じて生ずる押圧力を検出する圧力センサ(133c)を有して構成され、前記圧力センサ(133c)の検出値に基づいて前記膨潤部材(132)の膨潤量を検出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の水分量測定装置。
【請求項6】
前記膨潤部材(132)は、前記電解質膜(111)よりも親水性基の割合が多い構造としていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の水分量測定装置。
【請求項7】
前記膨潤部材(132)は、少なくとも前記燃料電池(10)の積層方向の一端側の燃料電池セル(100a)、および前記燃料電池(10)の積層方向の中央側の燃料電池セル(100a)に設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の水分量測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の水分量測定装置(100)を適用した燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池(10)の内部水分量を制御する水分量制御手段(50)を備え、
前記水分量制御手段(50)は、前記水分量測定手段で測定した前記電解質膜(111)の含有水分量に基づいて前記燃料電池(10)の内部水分状態を判定し、前記燃料電池(10)の内部水分量を制御することを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−86716(P2010−86716A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252787(P2008−252787)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】