説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池システムにおいて、燃料電池の停止中における遮断弁の封止性を向上させる。
【解決手段】燃料電池13内の空気流路と大気との間に設けられる遮断弁50,60とを含む燃料電池システム11において、各遮断弁50,60は、各弁座58,68と、各弁座58,68に当接して空気のシールを行う各弁体56,66とを含み、各弁体56,66は、燃料電池13内の空気流路の負圧によって各弁座58,68の方向に吸引されるよう構成する。また、燃料電池13内の空気流路と各遮断弁50,60との間に設けられ、燃料電池13内の空気流路の負圧を大気圧に開放する大気開放弁47を備え、燃料電池の起動の際に燃料電池13の空気流路内の負圧を開放してから各遮断弁50,60を開弁する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの構成に関し、特に遮断弁の駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は燃料と酸化剤の電気化学反応によって発電をするもので、イオン交換膜からなる電解質の両側に燃料極と酸化剤極とが対向して配置された膜電極アセンブリ(MEA)と、燃料極に燃料を供給する燃料供給流路が形成された燃料用セパレータと、酸化剤極に酸化剤を供給する酸化剤供給流路が形成された酸化剤用セパレータと、を備えている。燃料と酸化剤には色々なガスが用いられるが、例えば、燃料には水素、酸化剤としては酸素を含む空気が用いられ、電気化学反応によって発電がされると共に酸化剤極に水が生成される形式のものが多く用いられている。
【0003】
このような燃料電池において、運転を停止した際には、酸化剤極側の酸化剤供給流路中に酸化剤ガスである空気が残留しており、燃料極側の燃料供給流路中には燃料ガスである水素が残留した状態となっている。一方、停止中の燃料電池内では、燃料ガスである水素がイオン交換膜を通って酸化剤極に移動し、逆に酸化剤ガスである空気中の酸素がイオン交換膜を通って燃料極に移動するクロスリークが発生する。このクロスリークが発生すると、発電反応とは違う化学反応によって水素と酸素が結合して水が生成される。
【0004】
クロスリークによる水素と酸素の反応は、空気中の酸素が消費されてしまうと停止するものであるが、燃料電池の停止中に酸化剤供給流路に新たな空気が流れこむと、上記のクロスリークによる反応が継続して発生してしまう。すると、燃料電池内の酸化剤極と燃料極の電位の上昇によって燃料極と酸化剤極に含まれている触媒が劣化して触媒性能が低下し、燃料電池の性能低下につながってしまうという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような燃料電池の性能低下を防止する方法として、特許文献1には、燃料電池の酸化剤ガスの入口及び出口の管路中に駆動用の電源が遮断されると閉状態となるノーマルクローズの電磁弁を設けて、燃料電池の停止中でも酸化剤極を容易に封止する方法が記載されている。また、特許文献2には、燃料電池の遮断弁を空気圧で駆動するシステムが記載されている。
【0006】
一方、燃料電池の遮断弁として、酸化剤ガスの流れに対して下流側から上流側に向かう方向に弁の可動部分が移動して開弁するタイプ(以下、上流方向開弁タイプと呼ぶ)のものが用いられる場合がある。このような構造の弁は、弁内のガス通路に酸化剤ガスが流れ込むと、ガスの圧力が弁の可動部分を閉弁方向に(酸化剤ガスの流れに対して上流側から下流側に向かって)加圧するものである(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−221836号公報
【特許文献2】特開2000−3717号公報
【特許文献3】特開2006−24469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料電池の酸化剤入口、出口に設けられる遮断弁は、燃料電池の運転中には常に開状態を保持していることが必要な弁である。このため、運転中の開状態の保持を確保するために、特許文献1に記載されたようなノーマルクローズの弁ではなく、弁開閉用の電源、空気源などの駆動源が停止した際に弁が開状態を保持するノーマルオープンの弁が用いられることがある。このようなノーマルオープンの弁では、燃料電池の停止中に遮断弁を閉止状態に保持するために、電源あるいは空気源などの駆動源を供給する必要があるので、駆動源が停止した場合には遮断弁が開状態となったり、閉止力が弱くなったりして空気が漏れこむ可能性がある。
【0009】
また、特許文献2に記載された従来技術のように、空気圧力によって遮断弁を駆動する場合には、空気のリークなどによって加圧室の加圧空気圧力が低下し、遮断弁が開状態となったり、閉止力が弱くなったりして空気が漏れこむ可能性がある。
【0010】
一方、燃料電池の酸化剤ガスは湿分を含んでいることから、低温環境において燃料電池が停止状態となると酸化剤ガスの遮断弁が閉弁状態で固着または凍結することがある。遮断弁が特許文献3に記載された従来技術のような上流方向開弁タイプ弁の場合、始動のために供給される酸化剤ガスの圧力が閉弁方向に作用して開弁を妨げるため大きな駆動力が必要となる場合がある。
【0011】
本発明は、燃料電池の停止中における遮断弁の封止性を向上させことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池内の酸化剤ガス流路と大気との間に設けられる遮断弁とを含む燃料電池システムであって、前記遮断弁は、弁座と、前記弁座に当接して酸化剤ガスのシールを行う弁体とを含み、前記弁体は、閉弁状態で燃料電池内の酸化剤ガス流路の大気圧よりも低い負圧によって前記弁座の方向に吸引されること、を特徴とする。また、本発明の燃料電池システムにおいて、前記弁開閉駆動機構は、前記酸化剤ガスが供給される開弁動作側圧力室と前記酸化剤ガスが供給される閉弁動作側圧力室とを含み、前記各圧力室間の圧力差によって前記遮断弁を開閉駆動することとしても好適であるし、前記燃料電池内の前記酸化剤ガス流路と大気との間にある全ての流路に前記遮断弁が設けられていること、としても好適である。
【0013】
また、本発明の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池内の前記酸化剤ガス流路と前記遮断弁との間に設けられ、前記燃料電池内の前記酸化剤ガス流路の負圧を大気圧に開放する大気開放弁を有すること、としても好適であるし、前記燃料電池の起動の際に、前記大気開放弁を開とした後、前記遮断弁の開動作を行うこと、としても好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、燃料電池の停止中における遮断弁の封止性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの実施形態において燃料電池システムの系統構成を示す図である。
【図2】本発明に係る燃料電池システムの実施形態において、遮断弁の開状態を示す詳細断面図である。
【図3】本発明に係る燃料電池システムの実施形態において、遮断弁の閉状態を示す詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように本実施形態の燃料電池システム11は、燃料ガスである水素と酸化剤ガスである空気とが供給されて電気化学反応によって発電する燃料電池13と、燃料電池13に供給する空気を圧縮する空気圧縮機17と、燃料電池13に供給する空気を加湿する加湿モジュール15とを備えている。空気圧縮機17と加湿モジュール15とは圧縮空気供給管27によって接続され、加湿モジュール15と燃料電池13とは、加湿モジュール15において加湿された空気を燃料電池13の空気流路につながっている空気入口13aに導く空気入口管29と燃料電池13の空気流路につながっている空気出口13bから排出された空気を加湿モジュール15に導く空気出口管31とによって接続され、加湿モジュール15には空気を外部に排出する空気排出管33が接続されている。また、圧縮空気供給管27と空気排出管33とを接続するバイパス管35が設けられている。空気圧縮機17はモータ19によって駆動され、空気圧縮機17によって温度が上昇した空気はインタークーラー21によって冷却されてから加湿モジュール15に供給される。
【0017】
空気入口管29には空気入口遮断弁50が設けられ、空気出口管31には空気出口遮断弁60が設けられている。また、空気出口管31の燃料電池13の空気出口13bと空気出口遮断弁60との間には空気圧力調節弁25が設けられ、空気圧力調節弁25の上流側の空気出口管31には燃料電池13の出口空気圧力を測定する圧力センサ37が設けられ、インタークーラー21の出口には圧縮空気の圧力を測定する圧力センサ34が設けられている。また、バイパス管35にはバイパス流量調節弁23が設けられている。空気出口遮断弁60と燃料電池13の空気流路につながっている空気出口13bとの間には大気開放弁47が設けられた大気開放管32が接続されている。
【0018】
空気入口遮断弁50は、弁本体50bと駆動部50aとを備えている。弁本体50bはケーシングの中に弁座58と弁体56とを備えている。弁体56には弁棒57が取り付けられている。駆動部50aはダイヤフラム54によって2つの圧力室に仕切られている。図1の上部の圧力室は圧縮空気供給管27から供給される圧縮空気によって加圧されて弁体56を閉弁方向に駆動する力を発生させる閉弁動作側圧力室51であり、図1の下部の圧力室は圧縮空気供給管27から供給される圧縮空気によって加圧されて弁体56を開弁方向に駆動する力を発生させる開弁動作側圧力室52である。ダイヤフラム54には弁棒57に接続されて弁体56を駆動する駆動板55が取り付けられ、駆動板55の開弁動作側圧力室52側には、開弁動作側圧力室52の壁面に取り付けられ、駆動板55を弁座58と反対側に向かって押し上げて開弁方向の力を与える開弁用ばね53が設けられている。空気出口遮断弁60も空気入口遮断弁50と同様の構造を有し、弁本体60bと駆動部60aとを備え、弁本体60bは弁座68と弁体66とを備え、駆動部60aはダイヤフラム64によって閉弁方向に駆動する力を発生させる閉弁動作側圧力室61と開弁方向に駆動する力を発生させる開弁動作側圧力室62と、弁棒67に接続されて弁体66を駆動する駆動板65と開弁用ばね63とが設けられている。
【0019】
圧縮空気供給管27には、空気入口遮断弁50と空気出口遮断弁60の駆動用空気を供給する駆動用空気供給管39の一端が接続され、駆動用空気供給管39の他端は分岐して、空気入口遮断弁駆動空気切換弁41、空気出口遮断弁駆動空気切換弁44に接続されている。各切換弁41、44は2つの空気供給口を持ち、一方の空気供給口は各遮断弁50,60の閉弁動作側圧力室51,61と管路71,73とによって接続され、他方の空気供給口は各遮断弁50,60の開弁動作側圧力室52,62と管路72,74によって接続されている。また、各管路71,73には各管路71,73に供給された圧縮空気を大気に排出する閉弁側排出弁42,45が管路75,77を介して設けられ、各管路72,74には各管路72,74に供給された圧縮空気を大気に排出する開弁側排出弁43,46が管路76,78を介して設けられている。
【0020】
圧縮空気供給管27に設けられた圧力センサ34と、燃料電池13の空気出口13bの圧力センサ37とは制御部80に接続され、検出信号が制御部80に入力されるように構成されている。また、空気圧縮機17のモータ19と、バイパス流量調節弁23と、空気圧力調節弁25と、空気入口遮断弁駆動空気切換弁41と、空気出口遮断弁駆動空気切換弁44と、閉弁側排出弁42,45と、開弁側排出弁43,46と、大気開放弁47とは制御部80に接続され、制御部80の指令によって動作するよう構成されている。空気入口遮断弁駆動空気切換弁41と、閉弁側排出弁42と、開弁側排出弁43とは空気入口遮断弁50の弁駆動機構に含まれる弁機構を構成し、空気出口遮断弁駆動空気切換弁44と、閉弁側排出弁45と、開弁側排出弁46とは空気出口遮断弁60の弁駆動機構に含まれる弁機構を構成する。
【0021】
以下、本実施形態の燃料電池システム11に用いられている空気入口遮断弁50の詳細構造について図2を参照しながら説明する。図1と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
【0022】
図2に示すように、弁本体50bのケーシング50cは空気入口管29にそれぞれ接続された弁入口50dと弁出口50eを備えている。ケーシング50cの内面の弁出口50e側には、弁座58が設けられている。弁座58はケーシング50cの内面に設けられた円環状の突出部であり、その上面は弁体56が当接して空気をシールするシール面となっている。弁本体50bの上部には駆動部50aが取り付けられている。駆動部50aは駆動部ケーシング50fと駆動部蓋50gの間に挟みこんだダイヤフラム54によって閉弁動作側圧力室51と開弁動作側圧力室52に仕切られている。
【0023】
閉弁動作側圧力室51を構成する駆動部蓋50gには、閉弁動作側圧力室51に駆動用空気を出し入れする閉弁動作側圧力室空気座51aが設けられている。閉弁動作側圧力室空気座51aには圧縮空気を供給する管路71が接続されている。また、開弁動作側圧力室52を構成する駆動部ケーシング50fには、開弁動作側圧力室52に駆動用空気を出し入れする開弁動作側圧力室空気座52aが設けられている。この開弁動作側圧力室空気座52aには圧縮空気を供給する管路72が接続されている。
【0024】
ダイヤフラム54の中心部には弁棒57に接続されて弁体56を駆動する駆動板55が取り付けられている。駆動板55と駆動部ケーシング50fの間には開弁用ばね53が設けられ、開弁用ばね53は駆動板55を開弁方向に向かって付勢している。弁棒57の先端に取り付けられた弁体56は、円板状で、弁座58のシール面と対向する部分に空気をシールするシール面が設けられている。この弁体56のシール面が弁座58のシール面に当接すると、双方のシール面が密着して空気をシールすることができるよう構成されている。
【0025】
弁体56はケーシング50cの中で上下に移動できるよう、ケーシング50cとの間にベローシール54aが設けられている。空気入口遮断弁50はベローシール54aによって弁本体50b側と駆動部50a側とに仕切られ、ベローシール54aの駆動部50a側の駆動部ケーシング50fには、大気室空気座59aを通して大気に連通している大気室59が形成されている。空気出口遮断弁60は上記の空気入口遮断弁50と同様の構造となっている。
【0026】
燃料電池システム11の運転中には、制御部80は、空気入口遮断弁駆動空気切換弁41を開側に切り換える指令と、空気入口遮断弁50用の閉弁側排出弁42を開とする指令と、空気入口遮断弁50用の開弁側排出弁43を閉とする指令とを出力する。この指令によって、空気入口遮断弁駆動空気切換弁41の空気供給方向は開弁側に切り換えられ、閉弁側排出弁42が開き、開弁側排出弁43が閉まり、圧縮空気供給管27から空気入口遮断弁駆動空気切換弁41、管路72を介して圧縮空気が空気入口遮断弁50の開弁動作側圧力室52に供給される流路が形成され、開弁動作側圧力室52は、内部に流入した圧縮空気が大気に排出されないように封止され、圧力を上昇させることができる。
【0027】
空気入口遮断弁駆動空気切換弁41が開弁側に切り換えられていることから閉弁動作側圧力室51に圧縮空気を供給する管路71は封止された状態となり、閉弁動作側圧力室51に接続されている管路71に接続された管路75に設けられた閉弁側排出弁42が開となっているので、閉弁動作側圧力室51は大気に連通し、内部の圧力は大気圧力を保持する状態となる。
【0028】
また、開弁用ばね53は弁体56が弁棒57によって接続された駆動板55を弁座58と反対側に向かって押し上げる開弁方向の力を与えていることから、図2に示すように、空気入口遮断弁50は開弁状態に保持される。また、空気出口遮断弁60も同様の動作によって開弁状態に保持される。また、燃料電池13の運転中に、各遮断弁50,60の各閉弁側排出弁42,45を閉として、各閉弁動作側圧力室51,61と開弁動作側圧力室52,62との圧力差を保持しても開弁状態を保持することができる。更に、本実施形態では、各圧力室51,52への圧縮空気の供給が停止された場合であっても、各開弁用ばね53,63の開弁方向の付勢力によって各遮断弁50,60は開弁状態に保持されるノーマルオープンの弁として構成される。
【0029】
燃料電池システム11の停止の際には、制御部80は空気入口遮断弁駆動空気切換弁41を閉側に切り換える指令と、空気入口遮断弁50用の閉弁側排出弁42を閉とする指令と、空気入口遮断弁50用の開弁側排出弁43を開とする指令とを出力する。この指令によって、空気入口遮断弁駆動空気切換弁41の空気供給方向は閉弁側に切り換えられ、閉弁側排出弁42が閉まり、開弁側排出弁43が開く。この弁の切り換え、開閉動作によって、圧縮空気供給管27から空気入口遮断弁駆動空気切換弁41、管路71を介して圧縮空気が空気入口遮断弁50の閉弁動作側圧力室51に供給される流路が形成されると共に、閉弁動作側圧力室51は、内部に流入した圧縮空気が大気に排出されないように封止され、圧力を上昇させることができる状態となる。
【0030】
空気入口遮断弁駆動空気切換弁41が閉弁側に切り換えられていることから開弁動作側圧力室52に圧縮空気を供給する管路72は封止された状態となり、開弁動作側圧力室52に接続されている管路72に接続された管路76に設けられている開弁側排出弁43が開となっているので、開弁動作側圧力室52は大気に連通し、内部の圧力は大気圧力状態となる。そして、運転されている空気圧縮機17からの圧縮空気が閉弁動作側圧力室51に供給され、各圧力室51,52の圧力差によって空気入口遮断弁50の駆動板55には弁体56を閉弁する方向の閉弁方向力がかかる。この閉弁方向の力は、開弁用ばね53による開弁方向の力よりも大きいので、図3に示すように、空気入口遮断弁50の弁体56は弁座58に密着して閉弁状態となる。燃料電池13の停止の際には空気出口遮断弁60も空気入口遮断弁50と同様の動作によって閉弁される。
【0031】
各遮断弁50,60が閉となった際には、空気圧縮機17はまだ運転されており、空気圧縮機17からの圧縮空気は圧縮空気供給管27から駆動用空気供給管39、各切換弁41,44、管路71,73を介して各閉弁動作側圧力室51,61に供給されており、各閉弁動作側圧力室51,61と各開弁動作側圧力室52,62との間の差圧によって各弁体56,66には開弁用ばね53,63よりも大きな閉弁方向の力がかかっており、各遮断弁は閉弁状態を保持している。
【0032】
そして、制御部80は、空気入口遮断弁駆動空気切換弁41と空気出口遮断弁駆動空気切換弁44をそれぞれ開弁側に切り換え、各開弁側排出弁43,46を開とする指令を出力する。この指令によって、各切換弁41,44は開弁側に切り換えられ、各開弁側排出弁43,46は開状態が保持される。各切換弁41,44が開弁側に切り換えられると、各切換弁41,44の閉弁動作側圧力室51,61に接続されている管路71,73は封止される。各閉弁側排出弁42,45は閉弁状態で保持されていることから、各閉弁動作側圧力室51,61は内部に圧力を保ったまま封止されることとなる。これによって、各遮断弁50,60は閉弁用駆動空気の供給が無い状態でも保持圧力によって各遮断弁を閉状態に保持することができる状態となる。この後、制御部80は、空気圧縮機17を停止させる。空気圧縮機17が停止して駆動用空気が供給されなくなっても、各遮断弁50,60は各閉弁動作側圧力室51,61の内部に保った圧力によって図3に示すような閉状態に保持されている。
【0033】
空気入口遮断弁50及び空気出口遮断弁60が共に閉となると、燃料電池13は外気と遮断され、酸化剤ガスである空気が流入しなくなる。しかし、燃料電池13の内部の空気流路には酸化剤である酸素を含んだ空気が残留しており、この残留空気中の酸素と水素流路内に残留している水素との反応によって空気の体積が減少することにより、燃料電池13の空気流路の圧力は負圧に低下してくる。
【0034】
図3に示すように、燃料電池13内部の空気流路の圧力が負圧となると、燃料電池13の空気入口遮断弁50の弁体56は大気圧状態にある大気室59と弁出口50eにかかる燃料電池13の空気流路の負圧との圧力差によって、燃料電池13の空気流路側にある各弁座58方向に吸引される。負圧がある程度大きくなり、弁体56を弁座58に吸引することによる閉弁方向の力が開弁用ばね53による開弁方向の力よりも大きくなると、弁体56のシール面が対向する弁座58シート面に当接する力が大きくなり、弁体56は負圧のみによって閉弁状態を保持することができる様になる。従って、燃料電池13の停止中に駆動用空気のリークによって、閉弁動作側圧力室51の圧力が低下しても、空気入口遮断弁50は燃料電池13の空気流路の負圧により閉弁状態を保つことができる。また、燃料電池13の負圧によって空気入口遮断弁50の閉状態が保持されていることから電力など燃料電池13の停止中に閉弁を保持するための駆動力を必要としない。空気出口遮断弁60も上記と同様に、燃料電池13の空気流路の負圧によって弁体66が弁座68に当接して空気をシールして閉弁状態を保持することができる。
【0035】
本実施形態では、ノーマルオープンの弁であっても、燃料電池13の停止中には、各閉弁動作側圧力室51,61の中に保持した圧力と燃料電池13の負圧による弁体56,66の吸引力によって閉弁状態の保持を行えることから、燃料電池の13停止中における各遮断弁50,60の封止性を向上させることができるという効果を奏する。また、各遮断弁50,60は燃料電池13の空気流路の負圧により弁体56,66を吸引して閉弁状態を保つことができ、停止中に駆動用空気のリークがあっても封止状態を保持することができ、封止性を向上させることができる。また、閉弁状態を保持するために電力などの動力を必要としないことから燃料電池を効率的に運用することができるという効果を奏する。
【0036】
以上述べた、本実施形態では、燃料電池13の停止後の残留水素と残量空気の反応による燃料電池13の空気流路中の圧力低下によって、燃料電池13の空気流路が負圧となることを利用して遮断弁50,60の封止性を向上させることとしたが、各遮断弁50,60を閉とした後、燃料電池13の空気流路から空気を吸引するなどして、空気流路を負圧とし、その負圧を利用して各遮断弁50,60の封止性を向上させることとしてもよい。
【0037】
次に、本実施形態の燃料電池システム11において、停止中の燃料電池13の空気流路の圧力が負圧の状態からの起動について説明する。燃料電池13の空気流路の圧力が負圧の状態では、空気入口遮断弁50は図3に示すように、負圧によって弁体56が弁座58側に当接し、密着し、弁入口50dは大気圧状態となっている。
【0038】
図1に示す制御部80は、まず、大気開放弁47を開とする指令を出力する。そして、この指令によって、大気開放弁47が開となる。大気開放弁47が開となると大気開放弁47から大気開放管32を通して空気が燃料電池13の空気流路と各遮断弁50,60によって封止されている負圧領域に侵入し、燃料電池13の空気流路の負圧が低下してくる。燃料電池13の空気流路の負圧が低下すると、負圧による弁体56の弁座58への吸引力が低下し、弁体56にかかる閉弁方向の力が小さくなってくる。一方、弁体56が接続されている弁棒57に取り付けられた駆動板55には開弁用ばね53からの開弁方向の力がかかっている。弁体56にかかる開弁用ばね53の開弁方向の力の大きさが負圧による閉弁方向の力よりも大きくなると、弁体56は開弁方向に移動し、弁座58と弁体56の各シート面が離れ、空気をシールすることができなくなる。すると、弁入口50dからも空気が燃料電池13の空気流路に流れ込んで、更に負圧が低下して閉弁方向の力が小さくなる。このため、空気入口遮断弁50の弁体56にはより大きな開弁方向の力がかかり、空気入口遮断弁50は開弁する。空気出口遮断弁60も、上記と同様に開弁する。
【0039】
空気入口遮断弁50の弁体56と弁座58とが停止中に固着している場合でも、大気開放弁47を開とすることによって、燃料電池13の空気流路の圧力を大気圧とし、燃料電池13の空気流路の負圧による閉弁方向の力を略ゼロとすることができるので、開弁動作側圧力室52の加圧圧力が低い状態でも開弁することが可能となる。
【0040】
このように本実施形態では、燃料電池13の空気流路が停止中に負圧となった場合でも、各遮断弁50,60の開弁性を向上させることができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0041】
11 燃料電池システム、13 燃料電池、13a 空気入口、13b 空気出口、15 加湿モジュール、17 空気圧縮機、19 モータ、21 インタークーラー、23 バイパス流量調節弁、25 空気圧力調節弁、27 圧縮空気供給管、29 空気入口管、31 空気出口管、32 大気開放管、33 空気排出管、34 圧力センサ、35 バイパス管、37 圧力センサ、39 駆動用空気供給管、41 空気入口遮断弁駆動空気切換弁、42,45 閉弁側排出弁、43,46 開弁側排出弁、44 空気出口遮断弁駆動空気切換弁、47 大気開放弁、50 空気入口遮断弁、50a,60a 駆動部、50b,60b 弁本体、50c ケーシング、50d 弁入口、50e 弁出口、50f 駆動部ケーシング、50g 駆動部蓋、51,61 閉弁動作側圧力室、51a 閉弁動作側圧力室空気座、52,62 開弁動作側圧力室、52a 開弁動作側圧力室空気座、53,63 開弁用ばね、54,64 ダイヤフラム、54a ベローシール、55,65 駆動板、56,66 弁体、57,67 弁棒、58,68 弁座、59 大気室、59a 大気室空気座、60 空気出口遮断弁、71〜78 管路、80 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池内の酸化剤ガス流路と大気との間に設けられる遮断弁とを含む燃料電池システムであって、
前記遮断弁は、弁座と、前記弁座に当接して酸化剤ガスのシールを行う弁体とを含み、
前記弁体は、閉弁状態で燃料電池内の酸化剤ガス流路の大気圧よりも低い負圧によって前記弁座の方向に吸引されること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記弁開閉駆動機構は、前記酸化剤ガスが供給される開弁動作側圧力室と前記酸化剤ガスが供給される閉弁動作側圧力室とを含み、前記各圧力室間の圧力差によって前記遮断弁を開閉駆動すること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池内の前記酸化剤ガス流路と大気との間にある全ての流路に前記遮断弁が設けられていること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池内の前記酸化剤ガス流路と前記遮断弁との間に設けられ、前記燃料電池内の前記酸化剤ガス流路の負圧を大気圧に開放する大気開放弁を有すること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池の起動の際に、前記大気開放弁を開とした後、前記遮断弁の開動作を行うこと、
を特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−94534(P2012−94534A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1298(P2012−1298)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2007−108793(P2007−108793)の分割
【原出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】