説明

燃料電池システム

【課題】フィルタの目詰まりを容易に検知して、フィルタの目詰まりによる問題の発生を未然に防止できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】ステップ100にて、外側水位センサによって、フィルタ外液面高さh1を検出する。ステップ110では、内側水位センサによって、フィルタ内液面高さh2を検出する。ステップ120では、フィルタ内液面高さh2とフィルタ外液面高さh1との差Δhを求める。ステップ130では、フィルタ内液面高さh2とフィルタ外液面高さh1との差Δhが、閾値ΔhTH以上か否かを判定する。ステップ140では、目詰まりの程度が大きく、フィルタの交換時期(或いは清掃時期)であるとして、その旨の警報を出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池から排出される排ガスに含まれる水分を凝縮して回収し、その回収した凝縮水を燃料ガスの改質用などに再利用できる燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば固体酸化物形燃料電池(SOFC)等の燃料電池においては、発電後の排ガス(オフガス)を熱交換して、排ガス中に含まれる水分を凝縮して回収している。
この回収した凝縮水は、燃料ガスの改質用などに再利用されるが、凝縮水に含まれる鉄等の酸化物などからなる汚損物(異物)が、水質の低下や水を輸送するポンプを傷つける原因となっていた。
【0003】
そこで、凝縮水中の異物を除去する方法として、例えば、凝縮水の輸送配管に異物除去用のフィルタを設ける方法が提案されている(特許文献1参照)。
具体的には、この燃料電池システムにおいては、図9に示す様に、燃料電池P1を有する発電モジュールP2、排熱回収用熱交換器P3、上水用フィルタP4、排熱回収用水ポンプP5、水タンクP6、液面高さ検出器P7を備えるとともに、改質水ラインP8には、水改質用ポンプP9、異物除去用フィルタクP10、イオン交換樹脂フィルタP11、水流検出器P12等を備えており、改質水ラインP8に配置された異物除去用フィルタP10にて異物を除去するように構成されている。
【0004】
また、上述した技術とは別に、例えば、凝縮水を回収する水タンクを設けるとともに、水タンク内に筒状の異物除去用のフィルタを配置し、このフィルタの内側に凝縮水を供給する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
具体的には、この燃料電池システムでは、図10に示す様に、燃料電池P13を有する発電モジュールP14、排熱回収用熱交換器P15、上水用フィルタP16、排熱回収用水ポンプP17、異物除去用フィルタP18を収容した水タンクP19、液面高さ検出器P20を備えるとともに、改質水ラインP21には、水改質用ポンプP22、イオン交換樹脂フィルタP23、水流検出器P24等を備えており、水タンクP19内に配置された異物除去用フィルタP18にて異物を除去するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−161833号公報
【特許文献2】特開2008−176999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した従来技術のうち、特許文献1の技術では、(異物除去用の)フィルタの目詰まりの状態が分からないという問題があった。また、フィルタに目詰まりが発生すると、フィルタを交換する必要があるが、フィルタの交換の際には、配管の水抜き作業が発生するので、メンテナンスに時間がかかるという問題があった。
【0008】
一方、特許文献2の技術では、特許文献1の技術に比べて、メンテナンスは容易であるものの、フィルタの目詰まりの状態が分からず、また、この技術の場合には、筒状のフィルタ内に異物が堆積するが、その異物の堆積状態が分からず、そのため、フィルタの性能の低下が分からないという問題があった。更に、水タンク内の筒状のフィルタで異物を回収し続けると、フィルタ内に異物が堆積するとともに目詰まりが生じるので、そのまま、フィルタ内に凝縮水を供給し続けると、改質に用いる(フィルタにて濾過された)浄水が十分に得られない恐れがあった。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、フィルタの目詰まり等によるフィルタの浄水供給能力の低下を容易に検知して、フィルタの性能の低下による問題の発生を未然に防止できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)かかる問題を解決するためになされた本発明は、第1態様として、酸化剤ガスと燃料ガスとを用いて発電を行う燃料電池と、前記燃料電池から排出される排ガスから凝縮水を取り出す熱交換器と、前記凝縮水を含む水を貯める水タンクと、前記水タンクに貯められた水を前記燃料電池に供給するポンプと、を備えた燃料電池システムにおいて、前記水タンク内に配置され、内側に前記凝縮水を一旦収容し、底面または側面を濾過面として前記収容された水を前記水タンク内に濾過して排出する有底筒状のフィルタと、前記フィルタの内側に前記熱交換器から前記凝縮水を導入する導入管路と、前記フィルタの内側の水位を検出する内側検出手段と、前記フィルタの外側の水位を検出する外側検出手段と、を備えており、前記内側検出手段によって検出された内側の水位と、前記外側検出手段によって検出された外側の水位とに基づき、前記フィルタの前記内側と前記外側の水位差が検知されることを特徴とする。
【0011】
本第1態様では、燃料電池から排出される排ガスから凝縮水を取り出し、その凝縮水を水タンク内に配置された有底筒状のフィルタの内側に導入し、フィルタでは凝縮水から異物を除去して濾過し、その濾過した浄水を燃料電池に供給する。
【0012】
このとき、フィルタの内側の水位はフィルタの目詰まりの状態や異物の堆積状態に応じて変化するので、フィルタの目詰まり等の程度に応じて、フィルタの内側と外側の水位には差が生じる。つまり、目詰まり等によって、フィルタの内側から外側に供給される水の供給状態(即ちフィルタの浄化性能)が低下すると、フィルタの内側の水位は外側の水位より高くなり、その水位差が大きいほど目詰まり等の程度(従ってフィルタの浄水供給能力の低下)が大きいと考えられる。
【0013】
よって、本第1形態では、フィルタの内側と外側の水位を検出し、フィルタの内側と外側の水位差を検知する。この水位差は、フィルタの目詰まり等によるフィルタの浄化性能の低下の状態に対応しているので、内側と外側の水位差からフィルタの目詰まり等によるフィルタの浄化性能の低下を容易に検知することができる。
【0014】
従って、フィルタの浄化性能の低下を検知した場合には、例えばフィルタの交換や清掃をすることにより、フィルタの浄化性能の低下によって生じる問題点、例えばフィルタの浄化性能の低下によって、燃料電池の改質器等に供給する浄水が不足するという問題の発生を未然に防止することができる。
【0015】
なお、内側検出手段及び外側検出手段としては、抵抗式センサ、超音波式センサ、静電容量式センサなどの各種の液面の高さを検出する水位センサ(液面センサ)を採用できる。
【0016】
(2)本発明では、第2態様として、さらに、前記内側の水位と前記外側の水位とを比較し、前記内側と前記外側の水位差が所定閾値を超えるか否かを監視する水位差監視手段を備えることを特徴とする。
【0017】
本第2態様では、水位差監視手段によって、フィルタの内側と外側の水位差が所定閾値を超えるか否かを監視することにより、フィルタの目詰まり等によるフィルタの浄化性能の低下を検知することができる。
【0018】
なお、目詰まり等によるフィルタの浄化性能の低下には、低下の程度によって段階があるので、どの程度の閾値を設定するかは、実験等によって適宜設定すればよい(以下同様)。
【0019】
(3)本発明では、第3態様として、前記水位差監視手段は、前記内側と前記外側の水位差が前記所定閾値を超えた場合に、前記水位差が前記所定閾値を超過する超過時間が所定時間閾値を超えるか否かを監視する時間監視手段を、更に備えることを特徴とする。
【0020】
本第3態様では、時間監視手段によって、フィルタの内側と外側の水位差が、上述した所定閾値を超過する超過時間が所定時間閾値を超えるか否かを監視するので、フィルタの目詰まり等によるフィルタの浄化性能の低下をより確実に検出することができる。
【0021】
ここで、超過時間とは、水位差が所定閾値を超過してからの経過時間である。
(4)本発明では、第4態様として、前記水位差監視手段は、警報を発信する警報発信手段を備えることを特徴とする。
【0022】
本第4態様では、水位差監視手段によって、フィルタの内側と外側の水位差が所定閾値を超えたことが検知された場合には、その旨を報知する警報を発信するので、フィルタの目詰まり等によるフィルタの浄化性能の低下を作業者等に確実に報知することができる。
【0023】
(5)本発明では、第5態様として、前記水タンクの内部には、前記フィルタを位置決めするガイドを備えていることを特徴とする。
本第5態様では、ガイドによって、フィルタの位置決めを確実に行うことができる。
【0024】
(6)本発明では、第6態様として、前記フィルタは、多孔質体又は網状体の構造を有することを特徴とする。
ここでは、フィルタの好適な構造を例示している。
【0025】
(7)本発明では、第7態様として、前記フィルタの多孔質体又は網状体の部分において、前記凝縮水を含む水が透過する透孔の径は、10μm以下であることを特徴とする。
ここでは、フィルタの好適な構造を例示している。つまり、透孔の径が10μm以下の場合には、凝縮水中のほぼ全ての異物を好適に除去することができる。
【0026】
なお、この透孔の径とは、透孔の内接円の直径を意味する。
(8)本発明では、第8態様として、前記フィルタの材質は、金属又はセラミックであることを特徴とする。
【0027】
ここでは、フィルタの好適な構造を例示している。つまり、フィルタの材質が金属又はセラミックである場合には、微生物が付着しにくく、フィルタ自体が新たな異物の発生源になりにくいという利点がある。
【0028】
なお、金属としては、ステンレス(SUS304、SUS316など)が挙げられ、セラミックとしては、窒化珪素、アルミナなどが挙げられる。
(9)本発明では、第9態様として、さらに、前記フィルタの内側に水道水を供給する水道水供給手段を備え、前記外側検出手段によって検出された前記フィルタの外側の水位が、第1の閾値(例えばTH1)以下になった場合には、前記水道水供給手段によって、前記フィルタの内側に水道水を供給することを特徴とする。
【0029】
本第9態様では、フィルタの外側の水位が、過度に低くなった(第1の閾値以下)場合には、フィルタの内側に水道水を供給するので、常にフィルタ内(従って水タンク内)に、十分な水を確保することができる。
【0030】
従って、フィルタによって濾過された水を、例えば改質水として燃料電池に供給する場合には、供給する改質水が不足することはない。
なお、ここで、水道水とは、本燃料電池システムにて回収される凝縮水以外の外部から供給される水(以下上水と記することもある)のことである。
【0031】
(10)本発明では、第10態様として、前記外側検出手段によって検出された前記フィルタの外側の水位が、前記第1の閾値(例えばTH1)を上回る第2の閾値(例えばTH2)以上になった場合には、前記水道水供給手段による前記フィルタの内側への水道水の供給を停止することを特徴とする。
【0032】
本第10態様では、フィルタの外側の水位が、過度に高く(第1の閾値を上回る第2の閾値以上)なった場合には、フィルタの内側の水位も過度に高くなったとみなして、フィルタの内側への水道水の供給を停止するので、フィルタ内の凝縮水等が(浄化されずに)フィルタ上部からフィルタ外に溢れることがない。
【0033】
従って、水タンクからは、常に、フィルタにて浄化された浄水を燃料電池に供給することができる。
(11)本発明では、第11態様として、前記内側検出手段によって検出された前記フィルタの内側の水位が、前記第2の閾値(例えばTH2)を上回る第3の閾値(例えばTH3)以上となった場合には、前記水道水供給手段による前記フィルタの内側への水道水の供給を停止することを特徴とする。
【0034】
本第11態様では、フィルタの内側の水位が、過度に高く(第2の閾値を上回る第3の閾値以上)なった場合には、フィルタの内側への水道水の供給を停止するので、フィルタ内の凝縮水等が(浄化されずに)フィルタ上部からフィルタ外に溢れることがない。
【0035】
従って、水タンクからは、常に、フィルタにて浄化された浄水を燃料電池に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1の燃料電池システムを模式的に示す説明図である。
【図2】燃料電池システムの水タンク及びフィルタにおける液面の高さ等を示す説明図である。
【図3】実施例1のフィルタ目詰まり検知処理を示すフローチャートである。
【図4】実施例1の第1液面制御処理を示すフローチャートである。
【図5】実施例1の第2液面制御処理を示すフローチャートである。
【図6】実施例1の他のフィルタ目詰まり検知処理を示すフローチャートである。
【図7】実施例2の燃料電池システムの要部を示す説明図である。
【図8】実施例3の燃料電池システムの要部を示す説明図である。
【図9】従来技術の燃料電池システムを模式的に示す説明図である。
【図10】他の従来技術の燃料電池システムを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明が適用された燃料電池システムの実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0038】
a)まず、本実施例の燃料電池システムの構成について説明する。
図1に模式的に示す様に、本実施例の燃料電池システム1は、周知の固体酸化物形燃料電池(SOFC)である燃料電池3のシステムであり、燃料ガス(アノード燃料:例えば都市ガス)と酸化剤ガス(カソードエア:例えば空気)との供給を受けて発電を行う燃料電池3と、燃料電池3に供給する燃料ガスを水素リッチのガスに改質する改質器5などを備えており、それらは、断熱容器7に収納されている。
【0039】
なお、この燃料電池3及び改質器5等を断熱容器7に収容した構成を、発電モジュール9と称する。
また、発電モジュール9の外部には、基本的な構成として、空気を燃料電池3の図示しない空気極側に送る空気供給ライン11と、燃料ガスを燃料電池3の図示しない燃料極側に送る燃料供給ライン13とを備えるとともに、排ガスから水分を凝縮して回収する排熱回収用熱交換器15と、凝縮水を溜める水タンク(改質水タンク)17と、水タンク17内に配置された異物除去用フィルタ19と、発電モジュール9(即ち燃料電池3)から排出される排ガス(オフガス)を熱交換器15に導く第1排ガスライン21と、熱交換器15によって回収された凝縮水(改質水)等を水タンク17に導く導入管路23と、凝縮水を改質水として水タンク17から改質器5に送る改質水ライン25とを備えている。
【0040】
また、これとは別に、水道水等の上水を熱交換器19に供給する第1上水ライン27と、熱交換後の温水を排出する温排水ライン29と、上水を水タンク17に供給する第2上水ライン31と、水タンク17から気液分離後の排ガスを排出する第2排ガスライン33と、水タンク17から余剰の水(ドレン水)を排出するドレンライン35とを備えている。
【0041】
以下、各構成について説明する。
前記燃料電池3は、図示しないが、固体酸化物形燃料電池の発電単位である板状の燃料電池セルが複数個積層されたスタックである。この燃料電池セルは、いわゆる燃料極支持膜形タイプの燃料電池セルであり、周知の(燃料流路に接する様に配置された)燃料極と、固体電解質体と、(空気流路に接する様に配置された)空気極とを備えている。
【0042】
前記改質器5は、燃料電池3に供給される燃料ガスを水素リッチの燃料ガス(改質ガス)に改質する装置である。この改質器5の上流側には、図示しないが、改質水を気化させる気化器が設けられている。
【0043】
なお、ここで、改質に使用する燃料ガスとしては、都市ガスのほかに、LPG・灯油・メタノール・バイオメタノールなどがある。
前記熱交換器15は、燃料電池3から排出される(発電後の)排ガスを冷却し、その排ガス中から水分を凝縮して回収する装置であり、排ガスの冷却のために、外部から冷却水として(例えば水道水や井戸水等の)上水が導入される。
【0044】
前記フィルタ19は、有底カップ状であり、その側面が濾過面として構成されている。このフィルタ19は、多孔質体又は網状体であり、(細菌の増殖を防止するために)例えばステンレス等の金属、又は例えばアルミナ等のセラミックから構成されている。なお、凝縮水が酸性になる場合は、金属の場合には、耐酸性が高い材質か表面に耐酸性処理を施すことが望ましい。更に、異物のサイズは通常10μm以上であるので、フィルタ19の目の粗さは10μm以下とする。
【0045】
前記改質水ライン25には、周知の水改質用ポンプ37、イオン交換樹脂フィルタ39、水流検出器41が配置されている。
また、前記第1上水ライン27には、周知の上水用フィルタ43、排熱回収用水ポンプ45が配置され、第2上水ライン29には、上水の供給を調節する(例えば電磁弁である)給水弁47が配置されている。
【0046】
なお、第2排ガスライン33は、水タンク17の上部の蓋49に接続され、ドレンライン35は水タンク17の側壁50に接続されている。
更に、本実施例では、フィルタ19の内側の水位を検出するために、蓋49に内側水位センサ51が配置されている。この内側水位センサ51は、フィルタ19の内部の液面を検知する検知部53を備えている。
【0047】
同様に、蓋49には、フィルタ19の外側の水位を検出するために、外側水位センサ55が配置されている。この外側水位センサ55は、フィルタ19の外側の液面を検知する検知部57を備えている。
【0048】
そして、内側水位センサ51及び外側水位センサ53は、周知のマイコン等を備えた電子制御装置(コントローラ)59を備えており、この電子制御装置59により、燃料電池システム1の各種の動作が制御される。
【0049】
なお、図示しないが、電子制御装置59には、フィルタ19の目詰まり等の異常を、表示や音声等の音で報知する表示装置やスピーカ等が接続されている。
b)次に、燃料電池システム1の要部である水タンク17等の構成について説明する。
【0050】
図2に拡大して示すように、本実施例では、水タンク17のタンク内底面からの高さ方向において、各種の高さが設定されている。
具体的には、フィルタ19の高さであるフィルタ高さH2、フィルタ19内の凝縮水の高さの上限である満水時高さH1(=第3の閾値TH3)が設定されている。なお、H2>H1である。
【0051】
特に本実施例では、第3の閾値TH3より低い位置に、フィルタ19の外側の水位の下限値である第1の閾値TH1が設定され、第3の閾値TH3と第1の閾値TH1との間に、フィルタ19の外側の水位の上限値である第2の閾値TH2が設定されている。
【0052】
なお、以下では、内側検出センサ51によって検出されたフィルタ19の内側の水位をフィルタ内液面高さh2と称し、外側検出センサ55によって検出されたフィルタ19の外側の水位をフィルタ外液面高さ(タンク内液面高さ)h1と称する。
【0053】
また、水タンク17の蓋49に取り付けられた第2排ガスライン33は、水タンク17側の開口部61が、水タンク17内の水に接しないような高さ(フィルタ高さH2よりも高い位置)に設けられている。
【0054】
更に、水タンク17の側壁50に取り付けられたドレンライン35の取水口63は、水タンク17内の水位が所定の高さ(満水時高さH1)を超えないように、満水時高さH1に設けられている。なお、図示しないが、ドレンライン35の他の取水口は、フィルタ19においても、満水時高さH1に設けられている。これにより、フィルタ19の外側の、水位が満水時高さH1を上回らないように設定されている。
【0055】
また、改質水ライン25の取水口65は、水タンク17の側壁50の低い位置、例えば第1の閾値TH1よりも低い位置に設けられている。
c)次に、燃料電池システム1の動作と電子制御装置59にて行われる処理について説明する。
【0056】
<フィルタ目詰まり検知処理>
本処理は、フィルタ19の内側と外側の液面高さの差(水位差Δh=h2−h1)が、所定の水位差の閾値ΔhTHに達した場合には、目詰まり等によるフィルタ交換時期であるとして、警報を発生する処理である。
【0057】
図3に示す様に、まず、ステップ(S)100にて、外側水位センサ55によって、フィルタ外液面高さ(タンク内液面高さ)h1を検出する。
続くステップ110では、内側水位センサ51によって、フィルタ内液面高さh2を検出する。
【0058】
続くステップ120では、目詰まりや異物の堆積の程度が大きくなると、その程度に応じて、フィルタ内液面高さh2がフィルタ外液面高さh1より大きくなるので、フィルタ内液面高さh2からフィルタ外液面高さh1を引いて、その水位差Δh(=h2−h1)を求める。
【0059】
続くステップ130では、フィルタ外液面高さh2とフィルタ外液面高さh1との水位差Δhが、閾値ΔhTH以上か否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ140に進み、一方否定判断されるとステップ100に戻る。
【0060】
なお、この閾値ΔhTHは、目詰まりや異物の堆積の程度(従ってフィルタ19の浄水供給能力の低下の程度)を判定するための基準値であり、実験等によって定めることができる。
【0061】
ステップ140では、水位差Δhが大きく、よって、目詰まりや異物の堆積の程度が大きく(従ってフィルタ19の浄水供給能力の低下が大きく)、フィルタ19の交換時期(或いは清掃時期)であるとみなして、その旨の警報を出し、一旦本処理を終了する。
【0062】
<第1液面制御処理>
本処理は、フィルタ外液面高さh1が、第1の閾値TH1に達した場合には、貯水量不足として、フィルタ19内に上水を供給し、また、フィルタ外液面高さh1が、第2の閾値TH2に達した場合には、貯水量過剰として、フィルタ19内への上水の供給を停止する処理である。
【0063】
図4に示す様に、まず、ステップ200にて、外側水位センサ55によって、フィルタ外液面高さh1を検出する。
続くステップ210にて、フィルタ外液面高さh1の高さの判定を行う。具体的には、フィルタ外液面高さh1の高さが、「h1≦第1の閾値TH1」か、「第1の閾値TH1<h1<第2の閾値TH2」か、「第2の閾値TH2≦h1」かを判定する。そして、「h1≦第1の閾値TH1」の場合はステップ220に進み、「第1の閾値TH1<h1<第2の閾値TH2」の場合はステップ230に進み、「第2の閾値TH2≦h1」の場合はステップ240に進む。
【0064】
ステップ220では、フィルタ19の外側の水位が過度に低下した(下限に達した)として、給水弁47を開き、上水をフィルタ19の内側に供給する。
ステップ240では、フィルタ19の外側の水位が過度に上昇した(上限に達した)として、給水弁47を閉じ、上水のフィルタ19の内側への供給を停止する。
【0065】
ステップ230では、給水弁47による上水の供給中か、或いは、フィルタ19の外側の水位が適度だとして、前回の制御状態を維持し(給水弁47の開放又は閉鎖の維持)、一旦本処理を終了する。
【0066】
<第2液面制御処理>
上水供給時に、フィルタ19を通過する水流量が、フィルタ19内に供給される上水の供給量より少ないと、フィルタ19の内側の水位が上昇し、フィルタ19の上面から(未浄化の)水が溢れる恐れがある。そこで、本処理では、フィルタ内液面高さh2が、第3の閾値TH3に達した場合には、フィルタ19内への上水の供給を停止する。なお、本処理は、上水が供給されている場合の処理である。
【0067】
図5に示す様に、まず、ステップ300にて、内側水位センサ51によって、フィルタ内液面高さh2を検出する。
続くステップ310にて、フィルタ内液面高さh2が第3の閾値TH3以上か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ320に進み、一方否定判断されるとステップ300に進む。
【0068】
ステップ230では、フィルタ19の内側の水位が過度に上昇した(満水時高さH1に達した)として、給水弁47を閉じ、上水のフィルタ19の内側への供給を停止する。
d)次に、本実施例の効果を説明する。
【0069】
本実施例では、燃料電池3から排出される排ガスから凝縮水を取り出し、その凝縮水を水タンク17内に配置されたフィルタ19の内側に導入し、フィルタ19では凝縮水から異物を除去して濾過し、その濾過した浄水を改質器5に供給する。
【0070】
このとき、フィルタ19の内側の水位は、フィルタ19の目詰まりや異物の堆積の状態(従ってフィルタ19の浄水供給能力)に応じて変化するので、フィルタ19の目詰まり等の程度に応じて、フィルタ19の内側の水位と外側の水位とには差が生じる。
【0071】
よって、本実施例では、フィルタ内液面高さh2とフィルタ外液面高さh1とを検出し、その高さの差(水位差)Δhを求める。この水位差Δhは、フィルタ19の目詰まり等の程度に対応しているので、この水位差Δhからフィルタ19の目詰まり等の程度、従って目詰まり等によるフィルタ19の浄水供給能力(浄化性能)の低下を容易に検知することができる。
【0072】
従って、例えば水位差Δhが所定の(目詰まり等の判定値である)閾値ΔhTH以上となった場合、即ち、フィルタ19に(フィルタ19の交換等に対応する程度の)目詰まり等があると判断した場合には、その旨やフィルタ交換の案内等を報知することにより、フィルタ19の適切な交換や清掃を行うことができる。
【0073】
これにより、フィルタ19の目詰まり等によるフィルタの浄化性能の低下によって生じる問題点、例えば、改質器5に供給する浄水が不足するという問題の発生を未然に防止することができる。
【0074】
また、本実施例では、フィルタ19の外側の水位が、過度に低くなった(第1の閾値TH1以下)場合には、フィルタ19の内側に上水を供給するので、常にフィルタ19内(従って水タンク17内)に、十分な水を確保することができる。よって、改質水が不足することはない。
【0075】
更に、本実施例では、フィルタ19の外側の水位が、過度に高く(第2の閾値TH2以上)なった場合には、フィルタ19の内側の水位も過度に高くなったとみなして、フィルタ19の内側への上水の供給を停止するので、フィルタ19内の凝縮水等が(浄化されずに)フィルタ19外に溢れることがない。よって、水タンク17からは、常に、フィルタ19にて浄化された浄水を改質器5に供給することができる。
【0076】
その上、本実施例では、上水の供給中に、フィルタ19の内側の水位が、過度に高く(第3の閾値TH3以上)なった場合には、フィルタ19の内側への上水の供給を停止するので、フィルタ19内の凝縮水等が(浄化されずに)フィルタ19外に溢れることがない。よって、この点からも、フィルタ19にて浄化された浄水を改質器5に供給することができる。
【0077】
また、本実施例では、フィルタ19の透孔の径は、10μm以下であるので、凝縮水中のほぼ全ての異物を好適に除去することができる。
更に、本実施例では、フィルタ19の材質が金属又はセラミックであるので、微生物が発生することがなく、フィルタ自体が新たな異物の発生源になりにくいという利点がある。
【0078】
その上、本実施例では、改質水ライン25が水タンク17の下部に接続されているので、フィルタ19内の凝縮水は、ほぼ下方に向かってフィルタ19外に流れる。よって、異物が舞い上がりにくくフィルタ19内の底部に堆積し易いという利点がある。
【0079】
また、本実施例では、導入配管23がフィルタ19の内側に向かって配置されるとともに、第2排ガスライン33は、蓋49に接続されている。従って、熱交換器15によって気液分離された凝縮水は減少することなく、全量がフィルタ19内に供給される。
【0080】
なお、他の例として、フィルタ外液面高さ(タンク内液面高さ)h1とフィルタ内液面高さh2との差である水位差Δhが、上述した所定の閾値ΔhTHを連続して超過する超過時間(連続時間)を監視し、この連続した超過時間が所定時間閾値Ta以上となった場合に、目詰まりなどによるフィルタ交換時期であるとして、警報を発する処理を行っても良い。これによって、一層的確にフィルタ19の目詰まり検出することができる。
【0081】
以下に、この他の例のフィルタ目詰まり検知処理について簡単に説明する。
図6に示す様に、まず、ステップ400にて、外側水位センサ55によって、フィルタ外液面高さ(タンク内液面高さ)h1を検出する。
【0082】
続くステップ410では、内側水位センサ51によって、フィルタ内液面高さh2を検出する。
続くステップ420では、フィルタ内液面高さh2からフィルタ外液面高さh1を引いて、その水位差Δh(=h2−h1)を求める。
【0083】
続くステップ430では、フィルタ外液面高さh2とフィルタ外液面高さh1との水位差Δhが、閾値ΔhTH以上か否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ440に進み、一方否定判断されるとステップ400に戻る。
【0084】
ステップ440では、水位差Δhが、閾値ΔhTHを連続して超過する超過時間が所定時間閾値Ta以上か否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ450に進み、一方否定判断されるとステップ400に戻る。
ステップ450では、超過時間が大きいで、目詰まり等の程度が大きく、フィルタ19の交換時期(或いは清掃時期)であるとみなして、その旨の警報を出し、一旦本処理を終了する。
【実施例2】
【0085】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例の燃料電池システムでは、水タンクの構成に特徴があるので、水タンクの構成について説明する。
【0086】
図7(a)に示す様に、本実施例の燃料電池システム71は、前記実施例1と同様に、凝縮水は、熱交換器73から導入管路75を介して水タンク77に供給されるように構成されている。
【0087】
特に本実施例では、水タンク77の内部に、有底円筒のフィルタ79が配置されるとともに、水タンク77の底部81の上面には、フィルタ79の底部の周囲を囲むように環状に突出するガイド83が設けられている。これにより、フィルタ79は水タンク77に対して着脱可能となっている。なお、分散して3箇所以上にガイドを設けてもよい。
【0088】
また、水タンク77の側壁85の上部には、板状で且つ環状のリング部材87が配置されるとともに、リング部材87の上部には、水タンク77の上部の開口部89を覆うように、円盤状の蓋91が配置されている。なお、水タンク77の底部81及び側壁85からなる容器を本体78と称する。
【0089】
更に、リング部材87と蓋91との間には、環状のシール部材93が配置され、水タンク77の本体78とリング部材87と蓋91とは、図示しないネジ部材によって一体に固定されている。
【0090】
また、図7(b)に示す様に、熱交換器73の底部95と水タンク77の蓋91とは、導入管路75によって接続されており、導入管路75は、上パイプ97と下パイプ99とが互いのフランジ101、103にて、ボルト105及びナット107によって結合されている。なお、下パイプ99の下端は、フィルタ79の上端より下方に位置している。
【0091】
本実施例によっても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
また、本実施例では、水タンク77の蓋91を開けて、フィルタ79を着脱可能に交換できるので、メンテナンスが容易である。
【0092】
更に、水タンク77の内部にはガイド83が設けてあるので、フィルタ79の位置決めや固定が容易であり、フィルタ79の転倒を防止することができる。
その上、下パイプ99の下端は、フィルタ79の上端より下方に位置しているので、熱交換器73から供給される凝縮水を確実にフィルタ79内に供給することができる。
【実施例3】
【0093】
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例の燃料電池システムでは、水タンクの構成に特徴があるので、水タンクの構成について説明する。
【0094】
図8に示す様に、本実施例の燃料電池システム111は、前記実施例1と同様に、凝縮水は、熱交換器113から導入管路115を介して水タンク117に供給されるように構成されている。
【0095】
また、本実施例では、水タンク117の内部に、有底円筒のフィルタ119が着脱可能に配置されている。
更に、前記実施例2と同様に、水タンク117の側壁121の上部には、環状のリング部材123と円盤状の蓋125とが、環状のシール部材127を介して、図示しないネジ部材によって一体に固定されている。
【0096】
特に本実施例では、蓋125の内側に、フィルタ119の上部が嵌り込む円盤状の凹部129が形成されている。
なお、導入管路115は、蓋125を貫通してフィルタ119内に到るように構成されており、第2排ガスライン131も、蓋125を貫通してフィルタ119内に到るように構成されている。
【0097】
本実施例によっても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
また、本実施例では、蓋125を閉めることにより、フィルタ119を固定できるので、固定作業が容易であるという利点がある。
【0098】
更に、構造上、常にフィルタ119の上端は満水時の液面高さより高い位置にあるので、フィルタ119の上部から凝縮水が溢れにくいという利点がある。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【符号の説明】
【0099】
1、71、111…燃料電池システム
3…燃料電池
5…改質器
15、73、113…熱交換器
17、77、117…水タンク
19、79、119…フィルタ
21、75、115…導入管路
25…改質水ライン
47…給水弁
51…内側水位センサ
55…外側水位センサ
59…電子制御装置(コントローラ)
83…ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤ガスと燃料ガスとを用いて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池から排出される排ガスから凝縮水を取り出す熱交換器と、
前記凝縮水を含む水を貯める水タンクと、
前記水タンクに貯められた水を前記燃料電池に供給するポンプと、
を備えた燃料電池システムにおいて、
前記水タンク内に配置され、内側に前記凝縮水を一旦収容し、底面または側面を濾過面として前記収容された水を前記水タンク内に濾過して排出する有底筒状のフィルタと、
前記フィルタの内側に前記熱交換器から前記凝縮水を導入する導入管路と、
前記フィルタの内側の水位を検出する内側検出手段と、
前記フィルタの外側の水位を検出する外側検出手段と、
を備えており、
前記内側検出手段によって検出された内側の水位と、前記外側検出手段によって検出された外側の水位とに基づき、前記フィルタの前記内側と前記外側の水位差が検知されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
さらに、前記内側の水位と前記外側の水位とを比較し、前記内側と前記外側の水位差が所定閾値を超えるか否かを監視する水位差監視手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記水位差監視手段は、
前記内側と前記外側の水位差が前記所定閾値を超えた場合に、前記水位差が前記所定閾値を超過する超過時間が所定時間閾値を超えるか否かを監視する時間監視手段を、更に備えることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記水位差監視手段は、警報を発信する警報発信手段を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記水タンクの内部には、前記フィルタを位置決めするガイドを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記フィルタは、多孔質体又は網状体の構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記フィルタの多孔質体又は網状体の部分において、前記凝縮水を含む水が透過する透孔の径は、10μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記フィルタの材質は、金属又はセラミックであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
さらに、前記フィルタの内側に水道水を供給する水道水供給手段を備え、
前記外側検出手段によって検出された前記フィルタの外側の水位が、第1の閾値以下になった場合には、前記水道水供給手段によって、前記フィルタの内側に水道水を供給することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記外側検出手段によって検出された前記フィルタの外側の水位が、前記第1の閾値を上回る第2の閾値以上になった場合には、前記水道水供給手段による前記フィルタの内側への水道水の供給を停止することを特徴とする請求項9に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記内側検出手段によって検出された前記フィルタの内側の水位が、前記第2の閾値を上回る第3の閾値以上となった場合には、前記水道水供給手段による前記フィルタの内側への水道水の供給を停止することを特徴とする請求項9又は10に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−73682(P2013−73682A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209583(P2011−209583)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】