説明

燃料電池システム

【課題】水添脱硫器が寿命を迎えた後、従来よりも低コストで、燃料電池システムの使用を継続できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】原料中の硫黄化合物を除去する水添脱硫器と、水添脱硫器を通過した原料から水素含有ガスを生成するとともに該水素含有ガスを用いて発電する燃料電池ユニット1とを備え、水添脱硫器は、硫黄化合物を硫化水素に変換する変換部2と、変換部で生成された硫化水素を吸着する第1の吸着部3とを備え、第1の吸着部3は変換部2と分離して着脱可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。より詳しくは、原料中の硫黄成分を除去する脱硫器を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池ユニットは、一般的に、水蒸気改質法や部分酸化法により原料から水素含有ガスを生成する改質触媒を備えている。原料としては、都市ガス等が用いられるが、これらのガスには付臭成分等として硫黄化合物が含まれている。硫黄化合物は、改質触媒を被毒するため、何らかの方法で除去する必要がある。
【0003】
そこで、常温吸着により除去する方法(以下、常温吸着脱硫という;例えば、特許文献1参照)及び水素を用いて水添脱硫により除去する方法(例えば、特許文献2参照)を採用した燃料電池ユニットが提案されている。常温吸着脱硫は、加熱が不要であり、水素も必要としないため、取扱が簡便であるが、吸着容量は大きくない。一方、水添脱硫は、加熱と水素とを必要とし、取扱が簡便ではないが、吸着容量は大きい。そこで、水素を生成できない起動時には常温吸着脱硫を用い、水素を生成できるようになった後は水添脱硫を用いる水素生成装置が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0004】
水添脱硫器は、燃料電池ユニットと独立させて設置する方法(例えば、特許文献4参照)と、燃料電池ユニットと一体化させて設置する方法(例えば、特許文献5参照)とが提案されている。
【0005】
水添脱硫器を燃料電池ユニットと独立させて設置する場合、水添脱硫器を目標温度に保持するために、水添脱硫器を加熱する加熱器等の加熱手段が必要となる。また、燃料電池ユニットと水添脱硫器に各々断熱材を設ける必要がある。このように、水添脱硫器を単体として設置する場合には、燃料電池ユニットが巨大化する。
【0006】
一方、水添脱硫器を燃料電池ユニットと一体化させて設置する場合、改質触媒から放出される熱を利用して水添脱硫器を目標温度に保持することが可能となる。よって、加熱手段が不要となるなど、燃料電池ユニットを小型化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−228016号公報
【特許文献2】特開平1−275697号公報
【特許文献3】特許第4264791号公報
【特許文献4】特開平8−293315号公報
【特許文献5】特開2010−58995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2−5に記載の燃料電池システムでは、長期にわたって運転すると、水添脱硫器が寿命を迎える。水添脱硫器が寿命を迎えた後も、燃料電池システムの使用を継続する場合、未使用の水添脱硫器に交換する必要があるが、これにはコストがかかる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、水添脱硫器が寿命を迎えた後、従来よりも低コストで、燃料電池システムの使用を継続できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
【0011】
水添脱硫器には、硫黄化合物を硫化水素に変換する水素化触媒と、生成された硫化水素を吸着する吸着剤とを備える。本発明者らは、長期間運転した場合、吸着剤が飽和しても、水素化触媒は継続して使用可能であることを見出した。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、原料中の硫黄化合物を除去する水添脱硫器と、前記水添脱硫器を通過した原料から水素含有ガスを生成するとともに該水素含有ガスを用いて発電する燃料電池ユニットとを備え、前記水添脱硫器は、硫黄化合物を硫化水素に変換する変換部と、前記変換部で生成された硫化水素を吸着する第1の吸着部とを備え、前記第1の吸着部は前記変換部と分離して着脱可能に構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の燃料電池システムによれば、水添脱硫器が寿命を迎えた後、従来よりも低コストで、燃料電池システムの使用を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、第1実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、第2実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図3は、第3実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【図4】図4は、第4実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【図5】図5は、第4実施形態の変形例3にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかる燃料電池システムは、原料中の硫黄化合物を除去する水添脱硫器と、水添脱硫器を通過した原料から水素含有ガスを生成するとともに該水素含有ガスを用いて発電する燃料電池ユニットとを備え、水添脱硫器は、硫黄化合物を硫化水素に変換する変換部と、変換部で生成された硫化水素を吸着する第1の吸着部とを備え、第1の吸着部は変換部と分離して着脱可能に構成されている。
【0016】
従来の水素生成装置であれば、水添脱硫器が寿命を迎えると、水添脱硫器全体を交換していた。上記構成では、硫化水素を吸着する第1の吸着部のみの交換で燃料電池システムの使用を継続できる。つまり、水添脱硫器が寿命を迎えた後、従来よりも低コストで、燃料電池システムの使用を継続できる。
【0017】
[装置構成]
図1は、第1実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
図1に示す例では、本実施形態の燃料電池システム100は、燃料電池ユニット1と、変換部2と第1の吸着部3とを備える水添脱硫器とを備える。
【0019】
燃料電池ユニット1は、水添脱硫器を通過した原料から水素含有ガスを生成するとともに該水素含有ガスを用いて発電する。
【0020】
燃料電池ユニット1は、図示されない改質器を備える。改質器は、原料を用いて改質反応を進行させ、水素含有ガスを生成する。改質器は、改質触媒を備える。改質触媒としては、Ru触媒及びNi触媒等が例示される。
【0021】
原料は、少なくとも炭素及び水素を構成元素とする有機化合物を含み、具体的には、天然ガス、都市ガス、LPG、LNG等の炭化水素、及びメタノール、エタノール等のアルコールが例示される。都市ガスとは、ガス会社から配管を通じて各家庭等に供給されるガスをいう。改質反応は、いずれの改質反応でもよく、具体的には、水蒸気改質反応、オートサーマル反応及び部分酸化反応が例示される。原料供給源として、これらのガスのインフラストラクチャ、及び、これらのガスを貯蔵するボンベ等が例示される。
【0022】
燃料電池ユニット1が備える燃料電池は、いずれの種類の燃料電池であってもよく、例えば、高分子電解質形燃料電池(PEFC)、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、及び、りん酸形燃料電池等を用いることができる。高分子電解質形燃料電池の場合、燃料電池ユニット1において、改質器と燃料電池スタックとが別個に構成される。固体酸化物形燃料電池の場合、改質反応を実行する改質部と燃料電池部とをそれぞれ個別に有する間接内部改質型、及び、燃料電池本体内部で改質反応も行う内部改質型のいずれであってもよい。つまり、燃料電池に改質器が内蔵された形態が採用される場合があり、本発明の燃料電池ユニットは、そのような形態も含むものである。
【0023】
変換部2は、硫黄化合物を硫化水素に変換する。変換部2は、原料中の硫黄化合物を水素化(hydrogenation)して硫化水素に変換する水素化触媒を備える。水素化とは、水素ガスを還元剤として化合物に対して水素原子を付加する還元反応である。水素化触媒としては、例えば、CoMo系触媒及びNiMo系触媒の少なくともいずれか一方が用いられる。変換部2の耐久寿命は、第1の吸着部3の耐久寿命よりも長いことが好ましい。
【0024】
第1の吸着部3は、変換部2で生成された硫化水素を吸着する。第1の吸着部3は、硫化水素を化学吸着する吸着剤を備える。吸着剤としては、例えば、酸化亜鉛、銅−亜鉛触媒、活性炭、及び銀ゼオライトの少なくともいずれか一方が用いられる。銀ゼオライトは、ゼオライトに含まれるNa等の陽イオンを、イオン交換により銀に置換したものである。銀ではなく、他の金属を用いて陽イオンを置換したゼオライトを用いてもよい。
【0025】
水添脱硫器は、変換部2と第1の吸着部3とを備え、原料中の硫黄化合物を除去する。硫黄化合物は、付臭成分として人為的に原料へ添加されるものであってもよいし、原料自体に由来する天然の硫黄化合物であってもよい。具体的には、ターシャリブチルメルカプタン(TBM:tertiary-butylmercaptan)、ジメチルスルフィド(DMS:dimethyl sulfide)、テトラヒドロチオフェン(THT:tetrahydrothiophene)、硫化カルボニル(COS:carbonyl sulfide)、硫化水素(hydrogen sulfide)等が例示される。
【0026】
第1の吸着部3は、水素化後原料流路7及び脱硫後原料流路8に設けられた着脱機構4を介して変換部2及び燃料電池ユニット1と接続されることで、変換部2及び燃料電池ユニット1と分離して着脱可能に構成されている。
【0027】
着脱機構4としては、周知の任意の構成が採用でき、具体的には、ストップバルブ、クイックファスナー、シールクランプ等が例示される。
【0028】
例えば、第1の吸着部3の耐久保証年数が、例えば10年である場合、10年経過する頃には第1の吸着部3の吸着剤が飽和して、吸着能力が低下しうる。この場合でも、第1の吸着部3が変換部2と分離して燃料電池システム100から着脱可能であるため、第1の吸着部3のみを容易に交換できる。第1の吸着部3を新しいものに交換することで、水添脱硫器の能力を回復させ、燃料電池システムの運転を継続することができる。
【0029】
[動作]
以下、燃料電池システム100の動作について説明する。
【0030】
図示されない原料供給器から供給された原料は、原料供給流路6を介して変換部2に供給される。変換部2は、燃料電池ユニット1から供給された水素含有ガスを用いて、原料供給流路6から供給された原料中の硫黄化合物を水素化する。
【0031】
変換部2から排出された水素化後の原料ガスは、水素化後原料流路7を介して第1の吸着部3に供給される。第1の吸着部3は、変換部2から供給された水素化後の原料ガスに含まれる硫化水素を、吸着剤に吸着させることで除去する。
【0032】
第1の吸着部3から排出された脱硫後の原料ガスは、脱硫後原料流路8を介して燃料電池ユニット1に供給される。燃料電池ユニット1は、脱硫後の原料から水素含有ガスを生成するとともに該水素含有ガスを用いて発電する。燃料電池ユニット1は、生成した水素含有ガスの一部を、リサイクル流路9を介して変換部2へと供給する。これにより、水素化に必要な水素が変換部2に供給される。
【0033】
なお、燃料電池ユニット1内のいずれの箇所から水素含有ガスを取り出すかは特に限定されない。例えば、リサイクル流路9を介して供給される水素含有ガスは、燃料電池スタックに供給される前の水素含有ガスであってもよいし、燃料電池スタックから排出されたオフガスであってもよい。燃料電池として高分子電解質形燃料電池が用いられる場合において、改質器を通過後、CO低減器に導入される前の水素含有ガスが変換部2に供給されてもよいし、CO低減器において、変成器を通過後、選択酸化器に導入される前の水素含有ガスが変換部2に供給されてもよい。
【0034】
なお、リサイクル流路9に、リサイクルされるガスの露点を下げるための凝縮器(図示せず)が設けられてもよい。燃料電池ユニット1と変換部2と第1の吸着部3と着脱機構4とが、断熱材の内部に配置されていてもよい。
【0035】
[変形例1]
第1実施形態の変形例1の燃料電池システムは、第1の吸着部3の使用温度が、変換部2の使用温度よりも低い。
【0036】
従来の水素生成装置であれば、水添脱硫器が寿命を迎えると、水添脱硫器全体を交換するため、交換可能な温度に低温化するのに時間を要したが、かかる構成では、変換部よりも使用温度の低い第1の吸着部のみが交換可能な温度に低温化するまで待てばよい。つまり、従来の燃料電池システムに比べ、交換に着手するまでの待機時間を短縮することができる。
【0037】
変換部2の使用温度、すなわち、変換部2が備える水素化触媒において水素化反応を進行させる好適な温度範囲は、例えば、水素化触媒がCoMo系触媒及びNiMo系触媒等の場合には、摂氏300度以上摂氏400度以下である。
【0038】
第1の吸着部3の使用温度は、吸着剤が酸化亜鉛の場合には、摂氏250度以上摂氏400度以下であり、吸着剤が銅−亜鉛触媒である場合には、摂氏200度以上摂氏300度以下であり、吸着剤が活性炭である場合には、摂氏0度以上摂氏100度以下であり、吸着剤が銀ゼオライトである場合には、摂氏0度以上摂氏100度以下である。
【0039】
「第1の吸着部3の使用温度が、変換部2の使用温度よりも低い」には、第1の吸着部3の使用温度範囲の中心値が、変換部2の使用温度範囲の中心値よりも低い場合も含まれる。
【0040】
よって、水素化触媒がCoMo系触媒及びNiMo系触媒のいずれの場合においても、吸着剤として酸化亜鉛、銅−亜鉛触媒、活性炭、及び銀ゼオライト等を使用するのが好ましい。
【0041】
[変形例2]
第1実施形態の変形例2の燃料電池システムは、第1の吸着部3は、常温で硫化水素と異なる硫黄化合物を吸着する吸着剤を備える。
【0042】
かかる構成では、常温吸着脱硫器を水添脱硫器と別個に設けなくても、起動時に、原料中の硫黄化合物を除去することができる。
【0043】
硫化水素と異なる硫黄化合物としては、ターシャリブチルメルカプタン(TBM)、ジメチルスルフィド(DMS)、テトラヒドロチオフェン(THT)、硫化カルボニル(COS)等が例示される。
【0044】
常温で硫化水素と異なる硫黄化合物を吸着する吸着剤としては、銀ゼオライトが例示される。銀ゼオライトは、硫化水素と異なる硫黄化合物である付臭剤等と硫化水素との両方を吸着する。よって、室温または常温の吸着脱硫剤としても利用できるし、硫化水素の吸着剤としても利用できる。
【0045】
第1の吸着部3が備える吸着剤は一種類である必要はなく、複数種類の吸着剤を備えていてもよい。この場合、硫化水素を吸着する吸着剤と、常温で硫化水素と異なる硫黄化合物を吸着する吸着剤とが、互いに異なる種類であってもよい。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかる燃料電池システムは、第1実施形態及びその変形例の少なくとも1つにかかる燃料電池システムにおいて、変換部をその内部に含む断熱材を備え、第1の吸着部は、断熱材の外部に設けられている。
【0047】
かかる構成では、変換部を高温に維持しやすくなる一方で、第1の吸着部を変換部と分離して着脱しやすくなる。
【0048】
図2は、第2実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。図2に示す例では、本実施形態の燃料電池システム200は、断熱材10を備えている。断熱材10は、変換部2をその内部に含む。第1の吸着部3は、断熱材10の外部に設けられている。断熱材10としては、例えば、セラミックファイバー、ガラスファイバーを使用することができる。
【0049】
本実施形態において、第1の吸着部3が備える吸着剤は、常温で吸着反応が好適に進行する吸着剤である。具体的には、吸着剤が活性炭及び銀ゼオライトの少なくとも一方であることが好ましい。
【0050】
第2実施形態の燃料電池システム200において、上記以外の構成は、第1実施形態及びその変形例のいずれか1つと同様に構成できる。よって、図1と図2とで共通する構成要素については、同一の符号及び名称を付して詳細な説明を省略する。また、燃料電池システム200の動作は燃料電池システム100の動作と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0051】
本実施形態では、変換部2及び第1の吸着部3の使用温度が異なることから、変換部2を断熱材10の内部に配置し、第1の吸着部3を断熱材10の外部に配置することで、燃料電池システム200の運転時において、水素化触媒及び吸着剤の温度を好適な範囲に維持することができる。
【0052】
また、第1の吸着部3は断熱材10の外部に配置されるため、第1の吸着部3を断熱材10の内部に配置する場合に比べ、第1の吸着部3を着脱可能に構成しやすくなる。
【0053】
なお、変換部2を加熱する加熱手段は、燃料電池ユニット1であってもよいし、燃料電池ユニット1と別個に設けられ、電源を用いて加熱する加熱器であってもよいし、両者が併用されてもよい。
【0054】
なお、図2の例では、燃料電池ユニット1の全体が断熱材10の内部に配置されている。しかしながら、燃料電池として例えば高分子電解質形燃料電池を用いる場合には、燃料電池ユニット1のうち、水素生成装置のみ、又は、水素生成装置の改質器のみ、が断熱材10の内部に配置されていてもよい。
【0055】
(第3実施形態)
第3実施形態にかかる燃料電池システムは、第1実施形態及び第2実施形態及びそれらの変形例のいずれか1つにかかる燃料電池システムにおいて、変換部が、燃料電池ユニットから受熱可能に構成され、第1の吸着部は、燃料電池ユニットと断熱されている。
【0056】
かかる構成では、変換部を燃料電池ユニットから供給される熱で高温に維持でき、かつ、第1の吸着部を変換部と分離して着脱しやすくなる。
【0057】
図3は、第3実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0058】
変換部2は燃料電池ユニット1から受熱可能に構成されている。図3の例では、燃料電池ユニット1と変換部2とが互いに隣接するように一体的に配置されることで、燃料電池ユニット1と変換部2とが互いに熱交換可能に配置されている。なお、燃料電池ユニット1と変換部2とが伝熱材を介して熱交換可能に構成される等、他の構成により変換部2が燃料電池ユニット1から受熱可能とされてもよい。
【0059】
第1の吸着部3は燃料電池ユニット1と断熱されている。図3の例では、燃料電池システム300が断熱材10を備え、燃料電池ユニット1と変換部2とが断熱材10の内部に配置され、第1の吸着部3が断熱材10の外部に配置されている。なお、燃料電池ユニット1と第1の吸着部3との間に断熱材を配置するなど、他の構成により第1の吸着部3が燃料電池ユニット1から断熱されていてもよい。
【0060】
第3実施形態の燃料電池システム300において、上記以外の構成は、第1実施形態及び第2実施形態及びそれらの変形例のいずれか1つと同様に構成できる。よって、図2と図3とで共通する構成要素については、同一の符号及び名称を付して詳細な説明を省略する。また、燃料電池システム300の動作は燃料電池システム100の動作と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0061】
燃料電池ユニット1の温度は、例えば改質器において摂氏650度程度であり、変換部2の使用温度よりも高い。燃料電池ユニット1から拡散する熱により変換部2を加熱することで、独立した加熱器が不要となり、かつ、エネルギー効率を向上できる。一方、第1の吸着部3は燃料電池ユニット1から断熱されており、第1の吸着部3の使用温度が低い場合に第1の吸着部3を好適な温度範囲に維持しやすくなる。
【0062】
また、第1の吸着部3を燃料電池ユニット1と断熱することで、燃料電池ユニット1と変換部2とが一体化している場合でも、第1の吸着部3を変換部2と分離して着脱しやすくなる。
【0063】
(第4実施形態)
第4実施形態にかかる燃料電池システムは、第1実施形態ないし第3実施形態及びそれらの変形例のいずれか1つにかかる燃料電池システムにおいて、第1の吸着部の下流に設けられた第2の吸着部と、変換部及び第2の吸着部をその内部に含む断熱材とを備え、第1の吸着部は、断熱材の外部に設けられている。
【0064】
かかる構成では、変換部と第2の吸着部を高温に維持しやすくなる一方で、第1の吸着部を変換部及び第2の吸着部と分離して着脱しやすくなる。
【0065】
図4は、第4実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0066】
図4に示すように、第1の吸着部3の下流には、第2の吸着部5が設けられている。また、燃料電池システム400は断熱材10を備える。変換部2と第2の吸着部5とは断熱材10の内部に配置されている。第1の吸着部3は断熱材10の外部に配置されている。
【0067】
第2の吸着部5は、変換部2で生成され、第1の吸着部3で原料中から除去されずに通過した硫化水素を吸着する。第2の吸着部5は、硫化水素を化学吸着する吸着剤を備える。
【0068】
本実施形態において、第1の吸着部3が備える吸着剤、すなわち第1の吸着剤は、常温で吸着反応が好適に進行する吸着剤である。具体的には、吸着剤が活性炭及び銀ゼオライトの少なくとも一方であることが好ましい。
【0069】
本実施形態において、第2の吸着部5が備える吸着剤、すなわち第2の吸着剤は、第1の吸着剤よりも高温で吸着反応が好適に進行する吸着剤である。具体的には、吸着剤が酸化亜鉛及び銅−亜鉛触媒の少なくとも一方であることが好ましい。かかる構成では、第2の吸着部5の使用温度は、第1の吸着部3の使用温度よりも高くなる。なお、「第2の吸着部5の使用温度が、第1の吸着部3の使用温度よりも高い」には、第2の吸着部5の使用温度範囲と第1の吸着部3の使用温度範囲の一部が重なっており、第2の吸着部5の使用温度範囲の中心値が第1の吸着部3の使用温度範囲の中心値よりも大きい場合も含まれる。
【0070】
第2の吸着部5は、第1の吸着部3で除去しきれず、数ppb程度の濃度で残留した原料中の硫化水素を、例えば、1ppb程度の低濃度まで除去することが可能な構成であることが好ましい。これにより、原料中の硫化水素濃度を、燃料電池ユニット1の改質器内の改質触媒が被毒されない程度にまで低くすることが容易となる。
【0071】
第4実施形態の燃料電池システム400において、上記以外の構成は、第1実施形態ないし第3実施形態及びそれらの変形例のいずれか1つと同様に構成できる。よって、図2と図4とで共通する構成要素については、同一の符号及び名称を付して詳細な説明を省略する。また、燃料電池システム400の動作は、第1の吸着部3で十分に除去しきれない硫化水素がある場合に、かかる硫化水素が第2の吸着部5で除去される点を除けば、燃料電池システム100の動作と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0072】
本実施形態では、変換部2及び第2の吸着部5の使用温度は比較的近い一方で、第1の吸着部3の使用温度は前2者より低い。よって、変換部2と第2の吸着部5とを断熱材10の内部に配置し、第1の吸着部3を断熱材10の外部に配置することで、燃料電池システム200の運転時において、水素化触媒及び各吸着剤の温度を好適な範囲に維持することができる。
【0073】
また、第1の吸着部3は断熱材10の外部に配置されるため、第1の吸着部3を断熱材10の内部に配置する場合に比べ、第1の吸着部3を着脱可能に構成しやすくなる。
【0074】
なお、変換部2と第2の吸着部5とを加熱する加熱手段は、燃料電池ユニット1であってもよいし、燃料電池ユニット1と別個に設けられ、電源を用いて加熱する加熱器であってもよいし、両者が併用されてもよい。
【0075】
[変形例1]
第4実施形態の変形例1の燃料電池システムは、第1の吸着部3の使用温度が、変換部2及び第2の吸着部5の使用温度よりも低い。
【0076】
従来の水素生成装置であれば、水添脱硫器が寿命を迎えると、水添脱硫器全体を交換するため、交換可能な温度に低温化するのに時間を要したが、かかる構成では、変換部及び第の吸着部よりも使用温度の低い第1の吸着部のみが交換可能な温度に低温化するまで待てばよい。つまり、従来の燃料電池システムに比べ、交換に着手するまでの待機時間を短縮することができる。
【0077】
変換部2の使用温度、及び、吸着剤において吸着反応を進行させるのに好適な温度については、第1実施形態の変形例1及び第2実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0078】
「第1の吸着部3の使用温度が、変換部2及び第2の吸着部5の使用温度よりも低い」には、第1の吸着部3の使用温度範囲の中心値が、変換部2及び第2の吸着部5のそれぞれの使用温度範囲の中心値よりも低い場合も含まれる。
【0079】
本変形例では、水素化触媒と吸着剤とを適切に選択することで、第1の吸着部3の使用温度を、変換部2及び第2の吸着部5の使用温度よりも低くすることができる。
【0080】
具体的には例えば、水素化触媒としてCoMo系触媒及びNiMo系触媒のいずれの場合にも、第1の吸着剤として活性炭または銀系ゼオライト、第2の吸着剤として銅−亜鉛系触媒を使用することができる。
【0081】
[変形例2]
第4実施形態の変形例2の燃料電池システムは、第1の吸着部3及び第2の吸着部5の少なくともいずれか一方が、常温で硫化水素と異なる硫黄化合物を吸着する吸着剤を備える。
【0082】
かかる構成では、常温吸着脱硫器を水添脱硫器と別個に設けなくても、起動時に、原料中の硫黄化合物を除去することができる。
【0083】
硫化水素と異なる硫黄化合物、及び、これを吸着する吸着剤については、第1実施形態の変形例2と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0084】
第1の吸着部3及び第2の吸着部5において、各吸着部が備える吸着剤は一種類である必要はなく、複数種類の吸着剤を備えていてもよい。また、単一の脱硫部が、硫化水素を吸着する吸着剤と、常温で硫化水素と異なる硫黄化合物を吸着する吸着剤とを備える場合において、2つの吸着剤は同一種類であってもよいし、互いに異なる種類であってもよい。
【0085】
[変形例3]
第4実施形態の変形例3の燃料電池システムは、上記燃料電池システムにおいて、変換部及び第2の吸着部は、燃料電池ユニットから受熱可能に構成され、第1の吸着部は、燃料電池ユニットと断熱されている。
【0086】
かかる構成では、変換部と第2の吸着部を燃料電池ユニットから供給される熱で高温に維持でき、かつ、第1の吸着部を変換部と分離して着脱しやすくなる。
【0087】
図5は、第4実施形態の変形例3にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0088】
変換部2及び第2の吸着部5は燃料電池ユニット1から受熱可能に構成されている。図5の例では、燃料電池ユニット1と変換部2及び第2の吸着部5とが互いに隣接するように一体的に配置されることで、燃料電池ユニット1と変換部2と第2の吸着部5とが互いに熱交換可能に配置されている。なお、燃料電池ユニット1と変換部2と第2の吸着部5とが伝熱材を介して熱交換可能に構成される等、他の構成により変換部2及び第2の吸着部5が燃料電池ユニット1から受熱可能とされてもよい。
【0089】
第1の吸着部3は燃料電池ユニット1と断熱されている。図5の例では、燃料電池システム500が断熱材10を備え、燃料電池ユニット1と変換部2と第2の吸着部5とが断熱材10の内部に配置され、第1の吸着部3が断熱材10の外部に配置されている。なお、燃料電池ユニット1と第1の吸着部3との間に断熱材を配置するなど、他の構成により第1の吸着部3が燃料電池ユニット1から断熱されていてもよい。
【0090】
第4実施形態の変形例3の燃料電池システム500において、上記以外の構成は、第1実施形態ないし第4実施形態及びそれらの変形例のいずれか1つと同様に構成できる。よって、図5と図4とで共通する構成要素については、同一の符号及び名称を付して詳細な説明を省略する。また、燃料電池システム500の動作は燃料電池システム400の動作と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0091】
燃料電池ユニット1の温度は、例えば改質器において摂氏650度程度であり、上述した変換部2及び第2の吸着部5の使用温度よりも高い。燃料電池ユニット1から拡散する熱により変換部2及び第2の吸着部5を加熱することで、独立した加熱器が不要となり、かつ、エネルギー効率を向上できる。一方、第1の吸着部3は燃料電池ユニット1から断熱されており、第1の吸着部3の使用温度が低い場合に第1の吸着部3を好適な温度範囲に維持しやすくなる。
【0092】
また、第1の吸着部3を燃料電池ユニット1と断熱することで、燃料電池ユニット1と変換部2とが一体化している場合でも、第1の吸着部3を変換部2と分離して着脱しやすくなる。
【0093】
(実験例)
本実験例では、電気炉を備えた固定床流通反応装置に水素化触媒としてCoMo触媒を6g設置し、その後段に第1の吸着部として活性炭5gを室温となるように設置し、最後段には上述の電気炉を備えた固定床流通反応装置の内部に、第2の吸着部のクリーンアップ用の吸着剤として銅−亜鉛触媒を10g設置した実験を行った。
【0094】
原料には、ゼオライト系の吸着脱硫剤で硫黄成分を吸着除去した13Aガス(都市ガス:メタンを主成分とするガス)に、硫黄成分として、ターシャリブチルメルカプタン(TBM)とジメチルサルファイド(DMS)とを、それぞれの濃度が5ppmとなるように添加したガスを用いた。
【0095】
そして、この原料に水素含有ガスを供給しながらCoMo触媒を摂氏350度、銅−亜鉛触媒を摂氏250度に加熱して水添脱硫を行った。活性炭の温度は室温とした。室温は摂氏25度とした。活性炭を通過後の原料ガス中の硫化水素濃度は、当初20ppb以下(検出限界以下)であったが、100時間運転を継続すると、200ppbになった。この段階において、活性炭において硫化水素が飽和し、硫化水素がほとんど吸着されずに吸着部を通過し始めたと考えられる。その後、運転を停止し、活性炭を交換し、水添脱硫を再開した。その結果、活性炭を通過後の原料ガス中の硫化水素濃度は20ppb以下(検出限界以下)へと低下した。以上より、吸着部の機能が低下しても、吸着部の吸着剤を交換することで、水添脱硫を継続できることが確認された。
【0096】
以上のように、本実施例により、上記の実施の形態において、吸着剤のみを交換することで、水添脱硫触媒(水素化触媒およびクリーンアップ用の吸着剤)を交換することなく燃料電池システムの運転を継続することが可能であることが裏づけされた。
【0097】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の燃料電池システムは、水添脱硫器が寿命を迎えた後、従来よりも低コストで、燃料電池システムの使用を継続できる燃料電池システムとして有用である。
【符号の説明】
【0099】
1 燃料電池ユニット
2 変換部
3 第1の吸着部
4 着脱機構
5 第2の吸着部
6 原料供給流路
7 水素化後原料流路
8 脱硫後原料流路
9 リサイクル流路
10 断熱材
100 燃料電池システム
200 燃料電池システム
300 燃料電池システム
400 燃料電池システム
500 燃料電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料中の硫黄化合物を除去する水添脱硫器と、
前記水添脱硫器を通過した原料から水素含有ガスを生成するとともに該水素含有ガスを用いて発電する燃料電池ユニットとを備え、
前記水添脱硫器は、硫黄化合物を硫化水素に変換する変換部と、前記変換部で生成された硫化水素を吸着する第1の吸着部とを備え、
前記第1の吸着部は前記変換部と分離して着脱可能に構成されている燃料電池システム。
【請求項2】
前記変換部をその内部に含む断熱材を備え、前記第1の吸着部は、前記断熱材の外部に設けられている、請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記第1の吸着部の使用温度が、前記変換部の使用温度よりも低い、
請求項1または2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1の吸着部は、常温で硫化水素と異なる硫黄化合物を吸着する吸着剤を備える、請求項1−3のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記変換部は、前記燃料電池ユニットから受熱可能に構成され、前記第1の吸着部は、前記燃料電池ユニットと断熱されている、請求項1−4のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記第1の吸着部の下流に設けられた第2の吸着部と、前記変換部及び前記第2の吸着部をその内部に含む断熱材とを備え、前記第1の吸着部は、前記断熱材の外部に設けられている、請求項1−5のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記第1の吸着部の使用温度が、前記変換部及び前記第2の吸着部の使用温度よりも低い、請求項6記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記第1の吸着部及び前記第2の吸着部の少なくともいずれか一方が、常温で硫化水素と異なる硫黄化合物を吸着する吸着剤を備える、請求項6または7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記変換部及び前記第2の吸着部は、前記燃料電池ユニットから受熱可能に構成され、前記第1の吸着部は、前記燃料電池ユニットと断熱されている、請求項6−8のいずれか記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−8536(P2013−8536A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140049(P2011−140049)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】