説明

燃料電池システム

【課題】新たな抵抗やコイルを追加することによって消費電力を増加させることなく、電力供給経路上に設けられたリレーの溶着を防止することのできる燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】この燃料電池システム1のリレーR1は、FCコンバータ3に接続された第一固定端子61と、第一固定端子61とは離間して配置され、トラクションモータ4に接続された第二固定端子62と、リレーコイル64の励磁によって動作することで、第一固定端子61と第二固定端子62との間の電気的な接続及び遮断を切り換える可動端子631と、を備えるものであって、第一固定端子61と第二固定端子62とが電気的に接続されている状態において、第一固定端子61から可動端子631を経て第二固定端子62に至る電流が巻回する巻回経路の内側を貫くように、強磁性体からなるコア部材7が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用モータ等の負荷に対して燃料電池から電力を供給し駆動する、燃料電池システムが知られている。下記特許文献1には、燃料電池と負荷との間に電圧変換部としてのDC/DCコンバータが配置されており、当該DC/DCコンバータが、燃料電池から供給された直流電圧を昇圧してから負荷に電力を供給する構成の燃料電池システムが記載されている。また、下記特許文献1に記載の燃料電池システムにおいては、DC/DCコンバータから負荷に電力を供給する経路にリレーが配置され、当該経路の接続及び遮断を切り換えることが可能となっている。
【0003】
負荷に電力を供給する経路にリレーを配置した構成の燃料電池システムにおいては、例えば、リレーから見て負荷側と燃料電池側との間で高い電位差が生じている状態においてリレーが閉じられると、その瞬間、リレーには大電流が流れてしまうこととなる。このような大電流が流れると、リレーの内部における固定端子と可動端子との接触部がジュール熱によって溶融し互いに固着する、所謂溶着という現象が生じてしまう。
【0004】
リレーの溶着が生じると、リレー内部の電流経路は常に閉じた状態となるため、リレーとして動作することができなくなってしまう。溶着の発生を防止するための対策の一つとして、リレーの接圧が大きくなるように可動端子を付勢し、可動端子と固定端子とが接触した状態における接触抵抗を小さくするという方法が知られている。しかしこの場合、可動端子は付勢力に抗して動作する必要があるため、可動端子を動作させるためにリレーコイルに流す電流が増加してしまう。これは、電力の効率的な利用という観点からは望ましいものではない。
【0005】
そこで、下記特許文献1に記載の燃料電池システムでは、リレーが配置された電流経路の一部において、この電流経路の一部と並列に電流制限抵抗を配置し、当該電流制限抵抗を通過する電流経路、及び通過しない電流経路を、スイッチにて切り換え可能な構成としている。リレーから見て負荷側と燃料電池側とで高い電位差が生じている状態、すなわち、大電流によって溶着が生じる可能性がある状態においては、電流制限抵抗を通過する電流経路となるようにスイッチを切り替えてからリレーを閉じることで、大電流の発生を抑制し、溶着の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−288326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載されているような燃料電池システムでは、溶着が生じる可能性がある場合には電流制限抵抗によって大電流の発生を抑制する一方、溶着が生じる可能性がない場合(負荷側と燃料電池側との電位差が小さい場合)には電流制限抵抗を通過しない電流経路に切り替えるため、電流制限抵抗を電流が流れることによる無駄な消費電力の発生を抑制しうるものである。
【0008】
しかし、負荷側と燃料電池側との電位差を常に監視するための電位センサを必要とする上、切り替えスイッチの制御も行う必要があるため、これらを動作させるための電力を別途必要とするものであった。更に、例えば負荷の短絡によってリレーに大電流が流れるような場合には、切り替えスイッチの動作が間に合わないことがあり、溶着の発生を完全に防止できるものではなかった。
【0009】
尚、負荷の短絡による大電流を抑制するための構成としては、負荷に電力を供給する経路において、抵抗ではなくコイルを別途接続することも考えられる。コイルのインダクタンスによって電流の急激な変動が抑制されるため、負荷の短絡が生じた場合においても、リレーに大電流が流れることを確実に防止することができる。また、コイルのインダクタンスによる電力の損失は、負荷側の短絡が生じた際の過渡的な状態においてのみ発生し、電流が一定となった後は発生しない。
【0010】
しかし、負荷が短絡した場合に生じる程の大電流を流すことのできるコイルは体格が大きく、インダクタンスだけではなく直流抵抗成分も大きなものとなる。このため、溶着の発生は防止できるが、無駄な消費電力が増加するという問題は依然として生じてしまう。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、新たな抵抗やコイルを追加することによって消費電力を増加させることなく、電力供給経路上に設けられたリレーの溶着を防止することのできる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池システムは、燃料ガスおよび酸化ガスの供給を受けて、当該燃料ガスおよび酸化ガスの電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池からの電力を消費する電力消費装置と、前記燃料電池と前記電力消費装置との間に配置され、前記燃料電池から入力された電力を、その直流電圧を昇圧してから前記電力消費装置へと供給する電圧変換部と、前記電圧変換部から前記電力消費装置に電力を供給する経路を接続または遮断するリレー装置と、を備え、前記リレー装置は、前記電圧変換部に接続された第一固定端子と、前記第一固定端子とは離間して配置され、前記電力消費装置に接続された第二固定端子と、リレーコイルの励磁によって動作することで、前記第一固定端子と前記第二固定端子との間の電気的な接続及び遮断を切り換える可動端子と、を備えるものであって、前記第一固定端子と前記第二固定端子とが前記可動端子によって電気的に接続されている状態において、前記第一固定端子から前記可動端子を経て前記第二固定端子に至る電流が巻回する巻回経路の内側を貫くように、強磁性体からなるコア部材が配置されていることを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、リレーが従来から有していた構成部品である第一固定端子、可動端子、及び第二固定端子によって電流が巻回する巻回経路(すなわち、コイル)として形成されている既存の電流経路を利用し、この巻回経路(コイル)のインダクタンスを、強磁性体からなるコア部材によって大きなものとしている。このため、新たに抵抗やコイルを追加することなく、すなわち、リレーが配置された電流経路の電気抵抗を増加させることなく、インダクタンスのみを増加させるため、溶着の発生を確実に防止することができる。
【0014】
また本発明に係る燃料電池システムでは、前記第一固定端子と前記第二固定端子とが電気的に接続されている状態においては、前記巻回経路の巻き数が1以上となるように、前記第一固定端子と前記第二固定端子との少なくともいずれか一方が屈曲部を有していることも好ましい。
【0015】
この好ましい態様では、第一固定端子、可動端子、及び第二固定端子によって形成される巻回経路の巻き数が1以上となり、この巻回回路を貫くように強磁性体からなるコア部材が配置されている。巻回経路(コイル)のインダクタンスは、強磁性体からなるコア部材に対する電流経路の巻き数に比例して増加する。従って、第一固定端子と第二固定端子との少なくともいずれか一方に屈曲部を設けるという簡単な構成によりインダクタンスを増加させ、溶着の発生をより確実に防止することができる。
【0016】
また本発明に係る燃料電池システムでは、前記コア部材は、閉じた磁束路を形成するよう環状に形成されており、前記巻回経路と鎖交するように配置されていることも好ましい。
【0017】
この好ましい態様では、第一固定端子、可動端子、及び第二固定端子によって構成された巻回経路に電流が流れた際に生じる磁束が、環状の磁束路として形成されたコア部材の内部においてその大部分が発生し、コア部材の外部における漏れ磁束は殆ど生じなくなる。その結果、第一固定端子、可動端子、及び第二固定端子によって構成される巻回経路のインダクタンスが更に増加することとなるため、溶着の発生をより確実に防止することができる。
【0018】
また本発明に係る燃料電池システムでは、環状に形成された前記コア部材は、いずれも断面がE型で互いに対称な形状である第一コア部材、及び第二コア部材を組み合わせることによって形成されていることも好ましい。
【0019】
この好ましい態様では、環状に構成されたコア部材を、いずれも断面がE型で互いに対称な形状である第一コア部材、及び第二コア部材を組み合わせるという簡単な構成によって容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、新たな抵抗やコイルを追加することによって消費電力を増加させることなく、電力供給経路上に設けられたリレーの溶着を防止することのできる燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態である燃料電池システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】図1に示したリレーの内部構造を示す断面図である。
【図3】図1に示したリレーの内部における、第一固定端子、第二固定端子、可動端子、コア部材の配置の一例を示す図である。
【図4】図1に示したリレーの内部における、第一固定端子、第二固定端子、可動端子、コア部材の配置の別の例を示す図である。
【図5】図1に示したリレーの内部における、第一固定端子、第二固定端子、可動端子、コア部材の配置の更に別の例を示す図である。
【図6】図5に示したコア部材の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0023】
まず、図1を参照して、本発明に係る燃料電池システムの好適な実施形態について説明する。実施形態では、本発明に係る燃料電池システムを燃料電池車両の車載発電システムとして用いた場合について説明する。なお、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池車両以外の各種移動体(ロボット、船舶、航空機等)にも適用することができ、さらに、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システムにも適用することができる。
【0024】
図1は、本発明の実施形態である燃料電池システムの構成を模式的に示す図である。同図に示すように、燃料電池システム1は、反応ガスである酸化ガスと燃料ガスの電気化学反応により電力を発生する燃料電池2と、燃料電池用のDC/DCコンバータであるFCコンバータ3と、負荷としてのトラクションモータ4(電力消費装置)、システム全体を統括制御する制御部5とを有する。
【0025】
燃料電池2は、例えば、高分子電解質型燃料電池であり、多数の単セルを積層したスタック構造となっている。単セルは、イオン交換膜からなる電解質膜の一方の面に空気極を有し、他方の面に燃料極を有し、さらに空気極および燃料極を両側から挟み込むように一対のセパレータを有する構造となっている。この場合、一方のセパレータの水素ガス通路に水素ガスが供給され、他方のセパレータの酸化ガス通路に酸化ガスが供給され、これらの反応ガスが化学反応することで電力が発生する。
【0026】
FCコンバータ3は、直流の電圧変換器であり、燃料電池2から入力された電力を、その直流電圧を昇圧してからトラクションモータ4に出力(供給)する機能を有する。FCコンバータ3によって、燃料電池2の出力電圧が制御される。FCコンバータ3の出力側には、FCコンバータ3の出力電圧を検出する電圧センサV1と、トラクションモータ4に電力を供給する電力供給経路を接続または遮断するリレーR1とが配置されている。
【0027】
制御部5は、燃料電池車両に設けられた加速操作部材(例えば、アクセル)の操作量を検出し、加速要求値(例えば、トラクションモータ4等の電力消費装置からの要求発電量)等の制御情報を受けて、システム内の各種機器の動作を制御する。なお、電力消費装置には、トラクションモータ4の他に、例えば、燃料電池2を作動させるために必要な補機装置、車両の走行に関与する各種装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、懸架装置等)で使用されるアクチュエータ、乗員空間の空調装置(エアコン)、照明、オーディオ等が含まれる。
【0028】
制御部5は、物理的には、例えば、CPUと、メモリと、入出力インターフェースとを有する。メモリは、CPUで処理される制御プログラムや制御データを記憶するROMと、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAMとを有する。これらの要素は、互いにバスを介して接続されている。入出力インターフェースには、電圧センサ等の各種センサが接続されているとともに、トラクションモータ4等を駆動させるための各種ドライバが接続されている。
【0029】
CPUは、ROMに記憶された制御プログラムに従って、入出力インターフェースを介して各種センサでの検出結果を受信し、RAM内の各種データ等を用いて処理することで、燃料電池システム1における各種制御処理を実行する。また、CPUは、入出力インターフェースを介して各種ドライバに制御信号を出力することにより、燃料電池システム1全体を制御する。
【0030】
制御部5は、上記の他、リレーR1のON(閉状態)/OFF(開状態)を制御する。具体的には、以下のように制御する。制御部5は、燃料電池システム1の起動時(このとき、リレーR1は開状態である)において、FCコンバータ3の開回路電圧(OCV)が徐々に上昇し所定値以上となるまでの間、リレーR1を開状態に維持する。尚、この間のトラクションモータ4等の負荷に対する電力の供給は、図示しないバッテリシステムよって行われる。
【0031】
FCコンバータ3の開回路電圧(OCV)が所定位置以上まで上昇すると、制御部5はリレーR1を閉状態となるように制御する。これにより、燃料電池2からトラクションモータ4への電力供給が開始される。以降、トラクションモータ4への電力供給は、燃料電池2及びバッテリシステムの両方から行われることとなる。尚、バッテリシステムは、トラクションモータ4への電力供給を行う他、トラクションモータ4の要求電力が急減した場合における燃料電池2からの余剰電力を貯える役割や、ブレーキシステムからの回生エネルギーを貯える役割をも果たしている。
【0032】
次に、リレーR1の具体的な構造について、図2を参照しながら説明する。図2は、リレーR1の内部構造を示す断面図である。リレーR1は、第一固定端子61、第二固定端子62、可動部材63、リレーコイル64を有している。
【0033】
第一固定端子61は、棒状に形成された金属からなり、FCコンバータ3に接続されている電極端子である。第一固定端子61は、リレーR1の天板65を貫通し、天板65から下方に向けて突出した状態で固定されている。第一固定端子61と天板65とは、電気的に絶縁されている。
【0034】
第二固定端子62は、第一固定端子61と同形状に形成された金属からなり、トラクションモータ4に接続されている電極端子である。第二固定端子62は、第一固定端子61と同様にリレーR1の天板65を貫通し、天板65から下方に向けて突出した状態で固定されている。第二固定端子62と天板65とは、電気的に絶縁されている。
【0035】
可動部材63は、可動端子631、シャフト部632、可動鉄芯633とから構成されており、図2において上下に移動可能に配置されている。可動端子631は、導電性の部材により構成された平板状の端子である。可動部材63が上方に移動すると、第一固定端子61と第二固定端子62の両方に対して可動端子631が接触し、第一固定端子61と第二固定端子62とが電気的に接続された状態となる。一方、可動部材63が下方に移動すると、第一固定端子61と第二固定端子62のいずれに対しても可動端子631が非接触の状態となるため、第一固定端子61と第二固定端子62とが電気的に遮断された状態となる。
【0036】
シャフト部632は、その上端が可動端子631に対して固定された棒状の部材であり、リレーR1の内部を上下二室に分けるように形成された隔壁67を貫通した状態で配置されている。隔壁67の下方において、シャフト部632の下端には可動鉄芯633が固定されている。
【0037】
可動端子631と隔壁67との間には、シャフト部632に貫通された状態で接圧バネ8が配置されている。接圧バネ8は、上端が可動端子631に接し、下端が隔壁67に接しており、可動端子631を上方に向けて付勢している。
【0038】
可動端子631の上方で、且つ第一固定端子61と第二固定端子62との間には、棒状のコア部材7が配置されている。即ち、コア部材7は、第一固定端子61、第二固定端子62、及び可動端子631によって区画される面を貫くように配置されている。換言すると、第一固定端子61と第二固定端子62とが可動端子631によって電気的に接続されている状態において、第一固定端子61から可動端子631を経て第二固定端子62に至るコの字形状の電流経路(巻き数が0.5の巻回経路)が形成されており、コア部材7はこの巻回経路の内側を貫くように配置されている(図3)。コア部材7は、強磁性体であるパーマロイによって形成されている。このように、強磁性体によって形成されたコア部材7を配置することの効果については、後に説明する。
【0039】
リレーコイル64は、リレーR1の内部において隔壁67の下方に配置されたコイルである。リレーコイル64は、その軸方向がシャフト部632の軸方向と一致するボビン66に導線を巻き付けることによって形成されている。このため、リレーコイル64に電流を流すと、ボビン66の中空部661を上下方向に貫く磁束が発生する。
【0040】
ボビン66は、中空部661に可動部材63の可動鉄芯633が位置するように配置されている。また、中空部661においては、可動鉄芯633の下方に固定鉄芯68が配置されている。固定鉄芯68は、その下端がリレーR1の底板69に対して固定されている。
【0041】
可動鉄芯633、固定鉄芯68はいずれも、強磁性体である鉄により形成されている。このため、リレーコイル64に電流を流し中空部661を上下方向に貫く磁束が発生すると、可動鉄芯633と固定鉄芯68との間には吸引力が働くこととなる。
【0042】
引き続き図2を参照しながら、リレーR1の動作について説明する。リレーコイル64に電流が流れていない状態においては、可動部材63は接圧バネ8の付勢力によって上方に移動し、可動端子631が、第一固定端子61及び第二固定端子62のそれぞれの下端に対して押しつけられた状態となっている。すなわち、リレーコイル64に電流が流れていない状態においては、第一固定端子61と第二固定端子62とが電気的に接続された状態(閉状態)であるため、リレーR1はノーマリクローズタイプのリレーである。
【0043】
制御部5がリレーR1をOFF(開状態)となるように制御すると、リレーコイル64には図示しない電流供給部から電流が供給され、中空部661を上下方向に貫く磁束が発生する。その結果、可動鉄芯633と固定鉄芯68との間に働く吸引力によって、可動部材63は下方に向けて力を受ける。この力は、可動端子631が接圧バネ8から上方に向けて受ける力よりも大きいため、可動部材63は下方に移動する。
【0044】
可動部材63が下方に移動すると、第一固定端子61と第二固定端子62のいずれに対しても可動端子631が非接触の状態となるため、第一固定端子61と第二固定端子62とが電気的に遮断された状態(開状態)となる。以上に説明したように、リレーR1の開閉動作自体は、一般的なリレーの動作と同様の原理にて行われる。
【0045】
本実施形態のリレーR1は、可動端子631の上方で且つ第一固定端子61と第二固定端子62との間に、コア部材7が配置されている点が従来のリレーと異なっている。図3に示したように、可動端子631が第一固定端子61及び第二固定端子62と接触した状態においては、第一固定端子61から可動端子631を経て第二固定端子62に至るコの字形状の電流経路(巻き数が0.5の巻回経路)が形成されており、コア部材7はこの巻回経路の内側を貫くように配置されている。
【0046】
上記コの字形状の電流経路は、図3で明らかなように、強磁性体であるコア部材7の周囲に形成された、巻き数0.5のコイルということができる。当該コイルのインダクタンスは、巻き数、及びコア部材7の透磁率の両方に比例する。本実施形態においては、巻き数は0.5と比較的小さいが、コア部材7が非常に大きい透磁率を有するパーマロイにより形成されている。このため、上記コイルのインダクタンスは、負荷の短絡が生じた際において第一固定端子61、可動端子631、第二固定端子62を流れる電流が急増することを抑制し、溶着を防止するのに十分な大きさとなっている。
【0047】
このように、本実施形態のリレーR1は、リレーが従来から有していた構成部品である第一固定端子61、第二固定端子62、及び可動端子631によって形成されている既存の電流経路を利用し、この電流経路によって形成されるコイルのインダクタンスを、強磁性体からなるコア部材7によって大きなものとしている。このため、新たに抵抗やコイルを追加することなく、すなわち、リレーR1が配置された電流経路の電気抵抗を増加させることなく、インダクタンスのみを増加させ、溶着の発生を確実に防止することができる。
【0048】
続いて、リレーの内部における第一固定端子、第二固定端子、可動端子、コア部材の配置について、上記とは別の実施形態を説明する。その他の構成については、上記の実施形態と同様であるため、以下では説明を省略する。
【0049】
図4に示したように、この実施形態に係るリレーR1aにおいては、第一固定端子61a及び第二固定端子62aが、いずれも屈曲部を有するように形成されている。第一固定端子61aは、第一上部端子611aと、第一水平バスバー612aと、第一下部端子613aとから構成されている。
【0050】
第一上部端子611aは、棒状に形成された金属からなり、リレーR1aの天板65を貫通し、天板65から下方に向けて突出した状態で固定されている。第一上部端子611aと天板65とは、電気的に絶縁されている。
【0051】
第一水平バスバー612aは、水平に配置された金属製の板である。第一水平バスバー612aの一端は第一上部端子611aの下端に固定されており、他端は第一下部端子613aの上端に固定されている。
【0052】
第一下部端子613aは、第一上部端子611aと同形状に形成された金属からなり、第一水平バスバー612aから下方に向けて突出した状態で固定されている。第一下部端子613aの下端は、可動部材63が上方に移動した際に、可動端子631と接触する部分である。このように、第一固定端子61aは、第一上部端子611aと第一下部端子613aとの間に、屈曲部である第一水平バスバー612aを有している。
【0053】
第二固定端子62aは、第二上部端子621aと、第二水平バスバー622aと、第二下部端子623aとから構成されている。第二上部端子621aは、棒状に形成された金属からなり、リレーR1aの天板65を貫通し、天板65から下方に向けて突出した状態で固定されている。第二上部端子621aと天板65とは、電気的に絶縁されている。
【0054】
第二水平バスバー622aは、水平に配置された金属製の板である。第二水平バスバー622aの一端は第二上部端子621aの下端に固定されており、他端は第二下部端子623aの上端に固定されている。
【0055】
第二下部端子623aは、第二上部端子621aと同形状に形成された金属からなり、第二水平バスバー622aから下方に向けて突出した状態で固定されている。第二下部端子623aの下端は、可動部材63が上方に移動した際に、可動端子631と接触する部分である。このように、第二固定端子62aは、第二上部端子621aと第二下部端子623aとの間に、屈曲部である第二水平バスバー622aを有している。
【0056】
図4に示したように、第一水平バスバー612aと第二水平バスバー622aとは、同一の高さで、且つ互いに平行に配置されている。また、第一上部端子611aから第一水平バスバー612aが延びる方向は、第二上部端子621aから第二水平バスバー622aが延びる方向とは逆方向である。その結果、第一固定端子61a、可動端子631、第二固定端子62aが電気的に接続されている状態においては、これらによって形成される巻回経路の巻き数が1となっている。すなわち、巻き数が1のコイルが形成された状態となっている。
【0057】
また、パーマロイによって形成させたコア部材7は、第一下部端子613aと第二下部端子623aとの間に配置されている。すなわち、第一固定端子61a、可動端子631、及び第二固定端子62aによって形成された巻き数が1の上記コイルを、コア部材7が貫くように配置されている。
【0058】
このように、本実施形態のリレーR1aにおいては、第一固定端子61a及び第二固定端子62aが屈曲部を有することによって、第一固定端子61a、可動端子631、及び第二固定端子62aによって形成されたコイルの巻き数が0.5から1に増加している。先に述べたように、コイルのインダクタンスは巻き数に比例する。従って、リレーR1aのインダクタンスは、第一固定端子61a及び第二固定端子62aに屈曲部を設けるという簡単な構成により倍増しており、溶着の発生をより確実に防止することができるものとなっている。
【0059】
尚、本実施形態のリレーR1aでは、第一固定端子61a及び第二固定端子62aにそれぞれ一か所ずつの屈曲部を設け、コイルの巻き数を1とした例を紹介した。本発明ではこれに限らず、屈曲部を複数設けることによって、コア部材7の周囲における電流経路の巻き数を1よりも大きなものとしてもよい。この場合、巻き数の増加に比例して、第一固定端子61a、可動端子631、第二固定端子62aによって形成されたコイルのインダクタンスを更に増加させ、溶着の発生をより確実に防止することができる。
【0060】
また、以上に説明したリレーR1、及びリレーR1aにおいては、コア部材7の形状はいずれも棒状とした例を説明した。本発明ではこれに限らず、コア部材を環状に形成してもよい。このような形状のコア部材7aの例を、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0061】
図5は、図4に示したリレーR1aの構成において、コア部材7を環状のコア部材7aに置き換えたものである。また、図6は、コア部材7aの構造を示す図である。図6に示したように、コア部材7aは断面がE型で対称な形状である第一コア部材71a、及び第二コア部材72aを組み合わせることによって形成されており、二つの開口部73、74を有している。換言すると、コア部材7aは、二つの環状部75、76を有するように形成されている。
【0062】
図5に示したように、リレーR1aの内部においてコア部材7aは、第一下部端子613aが開口部73を貫き、第二下部端子623aが開口部74を貫くように配置されている。その結果、第一固定端子61a、可動端子631、第二固定端子62aによって形成されたコイルは、コア部材7aの環状部75、76の両方と鎖交した状態となっている。
【0063】
環状のコア部材7aをこのように配置することによって、第一固定端子61a、可動端子631、及び第二固定端子62aによって構成された電流経路に電流が流れた際に生じる磁束が、環状の磁束路として形成されたコア部材7aの内部においてその大部分が発生し、コア部材7aの外部における漏れ磁束は殆ど生じなくなる。その結果、第一固定端子61a、可動端子631、及び第二固定端子62aによって構成される電流経路のインダクタンスが更に増加することとなるため、溶着の発生をより確実に防止することができる。
【0064】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0065】
1:燃料電池システム
2:燃料電池
3:FCコンバータ
4:トラクションモータ
5:制御部
7,7a:コア部材
8:接圧バネ
61,61a:第一固定端子
611a:第一上部端子
612a:第一水平バスバー
613a:第一下部端子
62,62a:第二固定端子
621a:第二上部端子
622a:第二水平バスバー
623a:第二下部端子
63:可動部材
631:可動端子
632:シャフト部
633:可動鉄芯
64:リレーコイル
65:天板
66:ボビン
661:中空部
67:隔壁
68:固定鉄芯
69:底板
71a:第一コア部材
72a:第二コア部材
73,74:開口部
75,76:環状部
R1,R1a:リレー
V1:電圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスおよび酸化ガスの供給を受けて、当該燃料ガスおよび酸化ガスの電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池からの電力を消費する電力消費装置と、
前記燃料電池と前記電力消費装置との間に配置され、前記燃料電池から入力された電力を、その直流電圧を昇圧してから前記電力消費装置へと供給する電圧変換部と、
前記電圧変換部から前記電力消費装置に電力を供給する経路を接続または遮断するリレー装置と、を備え、
前記リレー装置は、
前記電圧変換部に接続された第一固定端子と、
前記第一固定端子とは離間して配置され、前記電力消費装置に接続された第二固定端子と、
リレーコイルの励磁によって動作することで、前記第一固定端子と前記第二固定端子との間の電気的な接続及び遮断を切り換える可動端子と、を備えるものであって、
前記第一固定端子と前記第二固定端子とが前記可動端子によって電気的に接続されている状態において、前記第一固定端子から前記可動端子を経て前記第二固定端子に至る電流が巻回する巻回経路の内側を貫くように、強磁性体からなるコア部材が配置されていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記第一固定端子と前記第二固定端子とが電気的に接続されている状態においては、前記巻回経路の巻き数が1以上となるように、前記第一固定端子と前記第二固定端子との少なくともいずれか一方が屈曲部を有していることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記コア部材は、閉じた磁束路を形成するよう環状に形成されており、前記巻回経路と鎖交するように配置されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
環状に形成された前記コア部材は、いずれも断面がE型で互いに対称な形状である第一コア部材、及び第二コア部材を組み合わせることによって形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−90411(P2013−90411A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227937(P2011−227937)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】