説明

燃料電池スタック

【課題】燃料電池の急速昇温によって発生する熱変位を確実に吸収することができ、セパレータの変形を可及的に阻止することを可能にする。
【解決手段】燃料電池スタック10を構成する第1セパレータ28aは、電解質・電極接合体26を挟持する挟持部88と、燃料ガス供給連通孔34が積層方向に形成される燃料ガス供給部84と、前記燃料ガス供給部84に設けられ、前記積層方向の荷重を緩和する第1荷重緩和機構96とを備える。第1荷重緩和機構96は、一対の第1セパレータ28aの各燃料ガス供給部84同士を連結し、且つ前記積層方向の荷重を緩和するばね性を有する連結部材100a、100bと、前記燃料ガス供給部84から燃料ガスが漏れることを阻止するシール部材110a〜110cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、第1セパレータ及び第2セパレータ間に配設される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層される燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、固体電解質型燃料電池(SOFC)は、電解質に酸化物イオン導電体、例えば、安定化ジルコニアを用いており、この電解質の両側にアノード電極及びカソード電極を配設した電解質・電極接合体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。この燃料電池は、通常、MEAとセパレータとが所定数だけ積層された燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
上記の燃料電池では、電解質・電極接合体を構成するアノード電極及びカソード電極に、それぞれ燃料ガス(例えば、水素ガス)及び酸化剤ガス(例えば、空気)を供給するとともに、各燃料電池毎に前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスを供給する必要がある。
【0004】
この種の燃料電池として、例えば、特許文献1に開示されている平板型固体酸化物形燃料電池が知られている。この燃料電池は、図13に示すように、セルスタック1aと、前記セルスタック1aの周囲に配設される各単セル2aに対して燃料ガス、酸化剤ガスの給排気を行う4つのマニホールドM1〜M4とを備えている。燃料電池では、セルスタック1aが第1の加圧機構3aにより加圧されるとともに、各マニホールドM1〜M4が第2の加圧機構4aにより加圧されている。
【0005】
セルスタック1aは、単セル2aとインターコネクタ5aとを交互に積層して構成されている。マニホールドM1は、セルスタック1aに燃料ガスを供給する燃料ガス供給マニホールドを構成し、マニホールドM2は、前記セルスタック1aから前記燃料ガスを排出する排気マニホールドを構成している。マニホールドM3は、セルスタック1aに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給マニホールドを構成し、マニホールドM4は、前記セルスタック1aから前記酸化剤ガスを排出する排気マニホールドを構成している。
【0006】
第1の加圧機構3aは、セルスタック1a上に設置される押さえ板6a及び圧縮ばね7aを備えている。第2の加圧機構4aは、各マニホールドM1〜M4上に設置される圧縮ばね8aを備えている。
【0007】
また、特許文献2に開示されている固体電解質形燃料電池スタックは、図14に示すように、固体電解質形燃料電池セル1bが複数個積層された積層体2bと、前記積層体2bの積層方向の両側に配置された一対の外縁保持部材3b、4bとを備えている。
【0008】
燃料電池スタックには、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給孔5bと、前記燃料ガスを排出するための燃料ガス排気孔6bとが設けられるとともに、空気を供給するための空気供給孔7bと、前記空気を排出するための空気排気孔8bとが設けられている。これらの燃料電池スタック内の各孔5b〜8bにより、内部マニホールドが構成されている。
【0009】
そして、各ボルト9bにナット(図示せず)が螺合して締め付けられることにより、外縁保持部材3b、4bは、積層方向の内側に締め付けられている。従って、この外縁保持部材3b、4bにより、積層体2bが内側に押圧されて、燃料電池スタックが一体に固定されている。
【0010】
さらに、特許文献3に開示されているシール構造体が知られている。この特許文献3は、金属を含むセラミック材料で構成された燃料極上に、順次、電解質膜及び空気極を積層し、且つ、前記電解質膜の縁周上面にステンレス鋼製セパレータを配置してなる低温作動の固体酸化物形燃料電池のシール構造体である。そして、燃料極の側周面の研磨により前記燃料極の側周面に燃料極自体の構成材料から金属を延伸、露出させ、該金属が延伸、露出した前記燃料極の側周面及び電解質膜の側周面とセパレータの下面との間を、金属ろう材でろう付けしてなることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4291299号公報
【特許文献2】特開2007−317490号公報
【特許文献3】特許第4087216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
SOFCは、運転温度が相当に高温であるため、定常時に発電できるまでの起動時間が長くかかってしまう。従って、起動時間を短縮することが望まれている。このため、特に起動時に、燃料電池を急速昇温させることが考えられるが、各部位に温度差が生じ、熱変位により急激な歪みや変形が発生し易い。
【0013】
その際、上記の特許文献1では、セルスタック1aは、第1の加圧機構3aにより拘束されるとともに、各マニホールドM1〜M4は、第2の加圧機構4aにより拘束されている。従って、インターコネクタ5a(セパレータ)やMEAが破損するおそれがある。
【0014】
また、上記の特許文献2では、燃料電池スタックの急速昇温時に、急激な変位が発生すると、各ボルト9bを介して外縁保持部材3b、4bにより積層体2bが内側に押圧されているため、歪みを緩和することができない。これにより、積層体2bが変形し易いという問題がある。
【0015】
さらに、上記の特許文献3では、燃料電池の急速昇温時に、急激な変位が発生すると、歪みによって金属ろう材によるろう付け部が破損するおそれがある。
【0016】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、燃料電池の急速昇温によって発生する熱変位を確実に吸収することができ、セパレータの変形を可及的に阻止することが可能な燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、第1セパレータ及び第2セパレータ間に配設される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層される燃料電池スタックに関するものである。
【0018】
この燃料電池スタックでは、少なくとも第1セパレータは、電解質・電極接合体を挟持するとともに、電極面に沿って一方の反応ガスを供給する反応ガス通路が設けられる挟持部と、前記一方の反応ガスを前記反応ガス通路に供給するための反応ガス供給連通孔が積層方向に形成される反応ガス供給部と、前記反応ガス供給部に設けられ、前記積層方向の荷重を緩和する荷重緩和機構とを備えている。
【0019】
そして、荷重緩和機構は、積層方向に隣接し且つ一方の反応ガスを流通させる一対の反応ガス供給部同士を連結するとともに、前記積層方向の荷重を緩和するばね性を有する一対の連結部材と、前記反応ガス供給部から前記一方の反応ガスが漏れることを阻止するシール部材とを備えている。
【0020】
また、この燃料電池スタックでは、連結部材は、第1セパレータに結合されるセパレータ結合部位と、積層方向に隣接する前記連結部材同士を係合する係合部位と、前記セパレータ結合部位と前記係合部位とを繋ぎ且つばね性を有する連結部位とを備えることが好ましい。
【0021】
従って、連結部材は、実質的にベローズ形状を有する単一部材で構成されるため、連結部位に撓みが発生することにより、積層方向の変位量を吸収することができる。このため、連結部材は、簡単且つ経済的な構成で、歪みの緩和機能とシール機能とを確保することが可能になる。
【0022】
さらに、この燃料電池スタックでは、荷重緩和機構は、一対の連結部材を一体に結合させるための結合部材を備えるとともに、シール部材は、一対の前記連結部材同士が係合する領域及び一対の前記連結部材と前記結合部材とが係合する領域に介装されることが好ましい。これにより、一対の連結部材を確実且つ強固に固定するとともに、所望のシール性能を確保することができる。
【0023】
さらにまた、この燃料電池スタックでは、一対の連結部材を構成する一方の連結部材は、他方の前記連結部材よりも外形寸法が大きく設定され、一方の前記連結部材の外周縁部を、一対のシール部材間に介装される他方の前記連結部材の外周縁部を覆って折り曲げることにより、一対の前記連結部材同士を一対の前記シール部材と一体に結合することが好ましい。従って、一方の連結部材は、結合部材としての機能を兼用することが可能になり、部品点数の削減を図ることができ、経済的である。
【0024】
また、この燃料電池スタックでは、荷重緩和機構は、一対の連結部材の外周縁部同士を直接接合するとともに、前記連結部材と第1セパレータとの間に、シール部材が介装されることが好ましい。このため、一対の連結部材は、結合部材としての機能を兼用することが可能になるとともに、必要なシール部材の数を最小限に抑制することができる。これにより、部品点数の削減を図ることができ、経済的である。
【0025】
さらに、この燃料電池スタックでは、第1セパレータ及び第2セパレータは、同一形状を有するとともに、互いに接合される第1プレート及び第2プレートを備えることが好ましい。従って、第1セパレータと第2セパレータとに、それぞれ専用セパレータを用いる必要がなく、部品点数の削減を図ることが可能になり、経済的である。
【0026】
さらにまた、この燃料電池スタックでは、少なくとも第1セパレータは、挟持部と反応ガス供給部とを連結し、一方の反応ガスを反応ガス供給連通孔から反応ガス通路に供給するための反応ガス供給通路が形成される橋架部を備えることが好ましい。このため、橋架部は、挟持部の荷重と反応ガス供給部の荷重とを一層確実に分断することができる。
【0027】
また、この燃料電池スタックでは、第1セパレータは、一方の反応ガスである燃料ガスを流通させる反応ガス供給部である燃料ガス供給部を設けるとともに、第2セパレータは、他方の反応ガスである酸化剤ガスを流通させる酸化剤ガス供給部を設け、荷重緩和機構は、積層方向に隣接する一対の前記燃料ガス供給部同士を連結する燃料ガス側荷重緩和機構と、前記積層方向に隣接する一対の前記酸化剤ガス供給部同士を連結する酸化剤ガス側荷重緩和機構とを備えることが好ましい。これにより、燃料ガス供給部及び酸化剤ガス供給部の損傷を可及的に阻止することが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、荷重緩和機構は、積層方向に隣接する反応ガス供給部同士を、ばね性を有する連結部材によりシール部材と一体に結合するため、前記連結部材に撓みが発生することによって、積層方向の変位量が吸収される。従って、シール性能を確保するとともに、急速昇温時の急激な変位を有効に吸収することができるため、セパレータに歪みが発生することを抑制し、反応ガス供給部の損傷を可及的に阻止することが可能になる。
【0029】
しかも、積層方向の荷重は、連結部材の撓みにより緩和することができる。これにより、セパレータの積層方向に生じる寸法誤差を良好に吸収することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタックの分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池スタックを構成する燃料電池の分解斜視説明図である。
【図3】前記燃料電池スタックの反応ガスの流れ説明図である。
【図4】前記燃料電池スタックの、図1中、IV−IV線断面である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックを構成する燃料電池の分解斜視説明図である。
【図6】前記燃料電池スタックの断面説明図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタックを構成する燃料電池の分解斜視説明図である。
【図8】前記燃料電池スタックの断面説明図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池スタックを構成する燃料電池の分解斜視説明図である。
【図10】前記燃料電池のガス流れ状態を示す一部分解斜視説明図である。
【図11】前記燃料電池を構成する第2プレートの説明図である。
【図12】前記燃料電池の、図11中、XII−XII線断面図である。
【図13】特許文献1の平板型固体酸化物形燃料電池の断面説明図である。
【図14】特許文献2の固体電解質形燃料電池スタックの斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタック10は、複数の燃料電池12が矢印A方向に積層される。燃料電池スタック10は、定置用の他、車載用等の種々の用途に用いられている。
【0032】
燃料電池12は、固体電解質型燃料電池であり、この燃料電池12は、図1〜図3に示すように、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質(電解質板)20の両面に、カソード電極22及びアノード電極24が設けられた電解質・電極接合体(MEA)26を備える。電解質・電極接合体26は、円板状に形成されるとともに、少なくとも外周端面部には、発電反応後の酸化剤ガス及び燃料ガスからなる排ガス(オフガス)の進入を阻止するためにバリアー層(図示せず)が設けられている。
【0033】
燃料電池12は、第1セパレータ28a及び第2セパレータ28b間に1個の電解質・電極接合体26が挟持される。第1セパレータ28a及び第2セパレータ28bは、同一形状のセパレータ構造体を互いに180°反転させることにより構成される。
【0034】
第1セパレータ28aは、例えば、ステンレス等の板金で構成される第1プレート30a及び第2プレート32aを有する。第1プレート30a及び第2プレート32aは、互いに拡散接合、レーザー溶接又はろう付け等により接合される。
【0035】
第1プレート30aは、略平板状に形成されるとともに、積層方向(矢印A方向)に沿って燃料ガス(一方の反応ガス)を供給するための燃料ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)34が形成される第1燃料ガス供給部(反応ガス供給部)36を有する。この第1燃料ガス供給部36から外方に延在する第1橋架部38を介して第1挟持部40が一体に設けられる。
【0036】
第1挟持部40は、電解質・電極接合体26と同じ寸法もしくは電解質・電極接合体26よりも大径な寸法に設定されるとともに、前記第1挟持部40のアノード電極24に接する面には、複数の凸部42が設けられる。凸部42は、アノード電極24の電極面に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス通路(反応ガス通路)44を形成するとともに、集電機能を有する。第1挟持部40の中央部には、アノード電極24の中央部に向かって燃料ガスを供給するための燃料ガス供給孔46が形成される。
【0037】
第2プレート32aは、燃料ガス供給連通孔34が形成される第2燃料ガス供給部(反応ガス供給部)48を有する。この第2燃料ガス供給部48から外方に延在する第2橋架部50を介して第2挟持部52が一体に設けられる。第2プレート32aの外周を周回して第1プレート30a側に突出する周回凸部54が設けられ、この周回凸部54に前記第1プレート30aが接合される。
【0038】
第2燃料ガス供給部48、第2橋架部50及び第2挟持部52の第1プレート30aに向かう面には、前記第1プレート30aに接して積層方向の荷重に対する潰れ防止機能を有する複数の突起部56が形成される。
【0039】
第1及び第2橋架部38、50間には、燃料ガス供給連通孔34に連通する燃料ガス供給通路58が形成される。燃料ガス供給通路58は、第1及び第2挟持部40、52間に形成される燃料ガス充填室60を介して燃料ガス供給孔46に連通する。
【0040】
第2セパレータ28bは、第1セパレータ28aと同一形状に構成されており、第1プレート30a及び第2プレート32aに対応する第1プレート30b及び第2プレート32bを有する。第1プレート30b及び第2プレート32bは、積層方向に沿って酸化剤ガス(他方の反応ガス)を供給するための酸化剤ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)62が形成される第1及び第2酸化剤ガス供給部(反応ガス供給部)64、66を有する。
【0041】
第1プレート30b及び第2プレート32bは、第1及び第2酸化剤ガス供給部64、66から外方に突出する第1及び第2橋架部68、70を介して第1及び第2挟持部72、74が一体に設けられる。
【0042】
第1挟持部72のカソード電極22に接触する面には、複数の凸部42を介し前記カソード電極22の電極面に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路(反応ガス通路)76が形成される。第1挟持部72の中央部には、カソード電極22の中央部に向かって酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給孔78が形成される。
【0043】
第2プレート32b内には、第1プレート30bが接合されることにより酸化剤ガス供給連通孔62に連通する酸化剤ガス供給通路80が、第1及び第2橋架部68、70間に対応して形成される。第2挟持部74内には、酸化剤ガス供給連通孔62と酸化剤ガス供給通路80を介して連通する酸化剤ガス充填室(反応ガス充填室)82が形成される。
【0044】
図1に示すように、第1セパレータ28aは、第1及び第2燃料ガス供給部36、48により燃料ガス供給部(反応ガス供給部)84を構成し、第1及び第2橋架部38、50により橋架部86を構成し、第1及び第2挟持部40、52により挟持部88を構成する。第2セパレータ28bは、第1及び第2酸化剤ガス供給部64、66により酸化剤ガス供給部(反応ガス供給部)90を構成し、第1及び第2橋架部68、70により橋架部92を構成し、第1及び第2挟持部72、74により挟持部94を構成する。
【0045】
積層方向(矢印A方向)に互いに隣接する一対の第1セパレータ28aを構成する各燃料ガス供給部84には、積層方向の荷重を緩和する第1荷重緩和機構(燃料ガス側荷重緩和機構)96が設けられるとともに、前記積層方向に互いに隣接する一対の第2セパレータ28bを構成する各酸化剤ガス供給部90には、積層方向の荷重を緩和する第2荷重緩和機構(酸化剤ガス側荷重緩和機構)98が設けられる。
【0046】
図2及び図4に示すように、第1荷重緩和機構96は、第1セパレータ28aを構成する第1及び第2プレート30a、32aにおいて、第1及び第2燃料ガス供給部36、48の突起部56とは反対の面に、例えば、溶接により固着される連結部材100a、100bを備える。連結部材100a、100bは、積層方向に隣接する一対の第1セパレータ28aの燃料ガス供給部84同士を連結し、且つ前記積層方向の荷重を緩和するばね性を有する。連結部材100a、100bは、例えば、ステンレス等の金属薄板により構成され、実質的にベローズ形状を有する。
【0047】
連結部材100aは、図4に示すように、第1プレート30aの第1燃料ガス供給部36に溶接(結合)されるセパレータ結合部位102aと、積層方向に隣接する連結部材100a、100b同士を係合する係合部位104aと、前記セパレータ結合部位102aと前記係合部位104aとを繋ぎ且つばね性を有する連結部位106aとを備える。連結部位106aは、第1燃料ガス供給部36から離間する方向に傾斜する一方、係合部位104aは、水平方向に延在する。
【0048】
連結部材100bは、第2プレート32aの第2燃料ガス供給部48に溶接(結合)されるセパレータ結合部位102bと、積層方向に隣接する連結部材100a、100b同士を係合する係合部位104bと、前記セパレータ結合部位102bと前記係合部位104bとを繋ぎ且つばね性を有する連結部位106bとを備える。連結部位106bは、第2燃料ガス供給部48から離間する方向に傾斜する一方、係合部位104bは、水平方向に延在する。
【0049】
第1荷重緩和機構96は、図2に示すように、一対の連結部材100a、100bを一体に結合させるための結合部材108を備えるとともに、前記連結部材100a、100b同士が係合する領域及び前記連結部材100a、100bと前記結合部材108とが係合する領域に対応して、3つのシール部材110a、110b及び110cが介装される。
【0050】
結合部材108は、断面コ字状を有し、例えば、3つの前記結合部材108が、全体としてリング状に配置される。図4に示すように、各結合部材108は、内周側が開口しており、この内周側からシール部材110b、連結部材100aの係合部位104a、シール部材110a、連結部材100bの係合部位104b及びシール部材110cからなる積層体が挿入され、前記結合部材108がかしめられる。
【0051】
シール部材110a〜110cは、リング形状を有し、ガスシール機能及び絶縁機能、さらに好適には、耐熱性及び柔軟性を有する材料で構成される。具体的には、シール部材110a〜110cは、粘土鉱物及び有機高分子が複合化された粘土膜を備える薄膜状シールにより構成されるが、これに限定されるものではない。例えば、ガラス系シール部材も用いることができる。
【0052】
第2荷重緩和機構98は、第2セパレータ28bを構成する第2及び第1プレート32b、30bにおいて、第2及び第1酸化剤ガス供給部66、64の突起部56とは反対の面に、例えば、溶接により固着される連結部材112a、112bを備える。連結部材112a、112bは、積層方向に隣接する一対の第2セパレータ28bの酸化剤ガス供給部90同士を連結し、且つ前記積層方向の荷重を緩和するばね性を有する。
【0053】
連結部材112aは、図4に示すように、第2プレート32bの第2酸化剤ガス供給部66に溶接(結合)されるセパレータ結合部位114aと、積層方向に隣接する連結部材112a、112b同士を係合する係合部位116aと、前記セパレータ結合部位114aと前記係合部位116aとを繋ぎ且つばね性を有する連結部位118aとを備える。連結部位118aは、第2酸化剤ガス供給部66から離間する方向に傾斜する一方、係合部位116aは、水平方向に延在する。
【0054】
連結部材112bは、第1プレート30bの第1酸化剤ガス供給部64に溶接(結合)されるセパレータ結合部位114bと、積層方向に隣接する連結部材112a、112b同士を係合する係合部位116bと、前記セパレータ結合部位114bと前記係合部位116bとを繋ぎ且つばね性を有する連結部位118bとを備える。連結部位118bは、第1酸化剤ガス供給部64から離間する方向に傾斜する一方、係合部位116bは、水平方向に延在する。
【0055】
第2荷重緩和機構98は、図2に示すように、一対の連結部材112a、112bを一体に結合させるための結合部材120を備えるとともに、前記連結部材112a、112b同士が係合する領域及び前記連結部材112a、112bと前記結合部材120とが係合する領域に対応して、3つのシール部材122a、122b及び122cが介装される。
【0056】
結合部材120は、断面コ字状を有し、例えば、3つの前記結合部材120が、全体としてリング状に配置される。図4に示すように、各結合部材120は、内周側が開口しており、この内周側からシール部材122b、連結部材112aの係合部位116a、シール部材122a、連結部材112bの係合部位116b及びシール部材122cからなる積層体が挿入され、前記結合部材120がかしめられる。
【0057】
シール部材122a〜122cは、リング形状を有し、ガスシール機能及び絶縁機能、さらに好適には、耐熱性及び柔軟性を有する材料で構成される。具体的には、シール部材122a〜122cは、粘土鉱物及び有機高分子が複合化された粘土膜を備える薄膜状シールにより構成されるが、これに限定されるものではない。例えば、ガラス系シール部材も用いることができる。
【0058】
このように構成される燃料電池スタック10の動作について、以下に説明する。
【0059】
先ず、図1及び図3に示すように、燃料ガス(水素ガス)が燃料電池スタック10の燃料ガス供給連通孔34に供給されるとともに、酸化剤ガス(空気)が前記燃料電池スタック10の酸化剤ガス供給連通孔62に供給される。
【0060】
燃料ガスは、積層方向(矢印A方向)に移動しながら各燃料電池12を構成する第1セパレータ28aに形成された燃料ガス供給通路58に導入される。この燃料ガスは、第1及び第2橋架部38、50間を燃料ガス供給通路58に沿って移動し、一旦、燃料ガス充填室60に充填される。
【0061】
さらに、燃料ガスは、燃料ガス供給孔46から燃料ガス通路44に導入される。その際、燃料ガス供給孔46は、各電解質・電極接合体26のアノード電極24の中央位置に設定されている。このため、燃料ガスは、アノード電極24の中心から燃料ガス通路44に沿って前記アノード電極24の外周部に向かって移動する。
【0062】
一方、酸化剤ガス供給連通孔62に供給された酸化剤ガスは、第2セパレータ28bを構成する第1及び第2橋架部68、70間に形成された酸化剤ガス供給通路80に沿って移動し、一旦、酸化剤ガス充填室82に充填される。さらに、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給孔78から酸化剤ガス通路76に導入される。
【0063】
酸化剤ガス供給孔78は、各電解質・電極接合体26のカソード電極22の中央位置に設定されている。このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス通路76に沿ってカソード電極22の中央位置から外周部に向かって移動する。
【0064】
これにより、電解質・電極接合体26では、アノード電極24の電極面の中心側から周端部側に向かって燃料ガスが供給されるとともに、カソード電極22の電極面の中心側から周端部側に向かって酸化剤ガスが供給される。その際、酸化物イオンが電解質20を通ってアノード電極24に移動し、化学反応により発電が行われる。
【0065】
燃料ガス通路44を移動した使用済みの燃料ガス、及び酸化剤ガス通路76を移動した使用済みの酸化剤ガスは、各電解質・電極接合体26の外周部から導出され、この外周部周辺で混合されて比較的高温の排ガスとして排出される。
【0066】
この場合、第1の実施形態では、第1荷重緩和機構96は、積層方向に隣接する第1セパレータ28aの燃料ガス供給部84同士を、ばね性を有する連結部材100a、100bによりシール部材110a〜110cと一体に結合している。このため、連結部材100a、100bに撓みが発生することによって、積層方向の変位量が吸収される。
【0067】
従って、第1荷重緩和機構96では、燃料ガスのシール性能を確保するとともに、特に起動時に急速昇温する際の急激な変位を有効に吸収することができる。これにより、第1セパレータ28aに歪みが発生することを抑制し、燃料ガス供給部84の損傷を可及的に阻止することが可能になるという効果が得られる。
【0068】
しかも、積層方向の荷重は、連結部材100a、100bの撓みにより緩和することができる。このため、第1セパレータ28aの積層方向の寸法誤差を良好に吸収することが可能になる。
【0069】
また、連結部材100a、100bは、第1セパレータ28aに結合されるセパレータ結合部位102a、102bと、積層方向に隣接する前記連結部材100a、100b同士を係合する係合部位104a、104bと、前記セパレータ結合部位102a、102bと前記係合部位104a、104bとを繋ぎ且つばね性を有する傾斜形状の連結部位106a、106bとを備えている。
【0070】
従って、連結部材100a、100bは、実質的に、それぞれベローズ形状を有する単一部材で構成されるため、低剛性部位である連結部位106a、106bに撓みが発生することにより、積層方向の変位量を吸収することができる。これにより、連結部材100a、100bは、簡単且つ経済的な構成で、歪みの緩和機能とシール機能とを確保することが可能になる。
【0071】
さらに、第1荷重緩和機構96は、一対の連結部材100a、100bを一体に結合させるための結合部材108を備えるとともに、前記連結部材100a、100b同士が係合する領域及び前記連結部材100a、100bと前記結合部材108とが係合する領域に対応して、3つのシール部材110a、110b及び110cが介装されている。このため、一対の連結部材100a、100bを確実且つ強固に固定するとともに、所望のシール性能を確保することができる。
【0072】
しかも、結合部材108は、断面コ字状を有し、例えば、3つの前記結合部材108が、全体としてリング状に配置されている。従って、第1荷重緩和機構96の組立作業性が向上するとともに、シール性能及び絶縁性能の向上が図られる。なお、結合部材108は、複数に分割されていればよく、例えば、4つに分割形成されていてもよい。
【0073】
さらに、第1セパレータ28a及び第2セパレータ28bは、同一形状を有するとともに、互いに接合される第1プレート30a、30b及び第2プレート32a、32bを備えている。これにより、第1セパレータ28aと第2セパレータ28bとに、それぞれ専用セパレータを用いる必要がなく、部品点数の削減を図ることが可能になり、経済的である。
【0074】
さらにまた、第1セパレータ28aは、挟持部88と燃料ガス供給部84とを連結し、燃料ガスを燃料ガス供給連通孔34から燃料ガス通路44に供給するための燃料ガス供給通路58が形成される橋架部86を備えている。これにより、橋架部86は、挟持部88の荷重と燃料ガス供給部84の荷重とを一層確実に分断することができる。
【0075】
一方、第2セパレータ28bにおいても、上記の第1セパレータ28aと同様である。また、第2荷重緩和機構98では、上記の第1荷重緩和機構96と同様の効果が得られる。
【0076】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタック140を構成する燃料電池142の分解斜視説明図である。
【0077】
なお、第1の実施形態に係る燃料電池スタック10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0078】
燃料電池スタック140では、積層方向(矢印A方向)に互いに隣接する一対の第1セパレータ28aを構成する各燃料ガス供給部84には、積層方向の荷重を緩和する第1荷重緩和機構144が設けられるとともに、前記積層方向に互いに隣接する一対の第2セパレータ28bを構成する各酸化剤ガス供給部90には、積層方向の荷重を緩和する第2荷重緩和機構146が設けられる。
【0079】
図5及び図6に示すように、第1荷重緩和機構144は、第1プレート30aに結合される連結部材148aと、第2プレート32aに結合される連結部材148bとを備える。連結部材148aは、連結部材148bよりも大径に構成されるとともに、前記連結部材148a、148bは、第1セパレータ28aに結合されるセパレータ結合部位150a、150bと、積層方向に隣接する前記連結部材148a、148b同士を係合する係合部位152a、152bと、前記セパレータ結合部位150a、150bと前記係合部位152a、152bとを繋ぎ且つばね性を有する傾斜形状の連結部位154a、154bとを備える。
【0080】
連結部材148aの外周縁部には、連結部位154aから外方に延在して折り返し部位156が一体に設けられる。折り返し部位156には、外周端部から内方に切り欠いて複数のスリット158が形成される。
【0081】
図6に示すように、連結部材148bを構成する係合部位152bの両面に、リング状のシール部材110a、110cが配設された状態で、連結部材148aの折り返し部位156が、前記係合部位152bを覆って折り曲げられる。これにより、一対の連結部材148a、148b同士は、シール部材110a、110cと一体にかしめられる。
【0082】
なお、第2荷重緩和機構146は、上記の第1荷重緩和機構144と同様に構成されており、同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0083】
このように、第2の実施形態では、連結部材148aに設けられた折り返し部位156は、結合部材としての機能を兼用することが可能になるとともに、シール部材110bが不要になる。これにより、部品点数の削減を図ることができ、経済的であるという効果が得られる。
【0084】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタック170を構成する燃料電池172の分解斜視説明図である。
【0085】
燃料電池スタック170では、積層方向(矢印A方向)に互いに隣接する一対の第1セパレータ28aを構成する各燃料ガス供給部84には、積層方向の荷重を緩和する第1荷重緩和機構174が設けられるとともに、前記積層方向に互いに隣接する一対の第2セパレータ28bを構成する各酸化剤ガス供給部90には、積層方向の荷重を緩和する第2荷重緩和機構176が設けられる。
【0086】
図7及び図8に示すように、第1荷重緩和機構174は、第1プレート30aに絶縁性をかねたシール部材178aを介装して配置される連結部材180aと、第2プレート32aに絶縁性をかねたシール部材178bを介装して配置される連結部材180bとを備える。
【0087】
連結部材180a、180bは、シール部材178a、178bに当接支持されるセパレータ結合部位182a、182bと、積層方向に隣接する前記連結部材180a、180b同士を係合して直接溶接される係合部位184a、184bと、前記セパレータ結合部位182a、182bと前記係合部位184a、184bとを繋ぎ且つばね性を有する傾斜形状の連結部位186a、186bとを備える。
【0088】
シール部材178a、178bは、上記のシール部材110a等と同様の材料で構成されるとともに、セパレータ結合部位182a、182bと略同一の径寸法に設定される。シール部材178a、178bは、燃料電池スタック170に積層方向の荷重が付与された際、面圧により第1セパレータ28aと連結部材180a、180bとに接着される。
【0089】
なお、第2荷重緩和機構176は、上記の第1荷重緩和機構174と同様に構成されており、同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0090】
このように、第3の実施形態では、一対の連結部材180a、180bは、それぞれの外周縁部である係合部位184a、184b同士が直接溶接されるため、前記連結部材180a、180b間をシールするためのシール部材が不要になる。しかも、連結部材180a、180bと第1セパレータ28aとの間にのみ、面圧により接着されるシール部材178a、178bが介装されている。
【0091】
このため、一対の連結部材180a、180bは、結合部材としての機能を兼用することが可能になるとともに、必要なシール部材数を最小限(シール部材178a、178bのみ)に抑制することができる。これにより、部品点数の削減を図ることができ、経済的であるという効果が得られる。
【0092】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池スタック200を構成する燃料電池210の分解斜視説明図である。
【0093】
図9及び図10に示すように、燃料電池210は、例えば、矩形状の電解質(電解質板)212の両面に、カソード電極214及びアノード電極216が設けられた電解質・電極接合体(MEA)218を備える。
【0094】
燃料電池210は、一組のセパレータ(第1及び第2セパレータ)220間に単一の電解質・電極接合体218を挟んで構成される。セパレータ220は、第1プレート222及び第2プレート224を備え、前記第1プレート222及び前記第2プレート224は、例えば、ステンレス合金等の板金で構成され、ろう付け、拡散接合やレーザ溶接等により互いに接合される。
【0095】
セパレータ220は、中央部に燃料ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)226を形成する燃料ガス供給部(反応ガス供給部)228を有する。この燃料ガス供給部228から外方に延在する橋架部230を介して矩形状の挟持部232が一体的に設けられる。挟持部232は、電解質・電極接合体218と略同一寸法に設定される。
【0096】
挟持部232のカソード電極214に接する面には、前記カソード電極214の電極面に沿って酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路(反応ガス通路)234が形成される。挟持部232のアノード電極216の接する面には、前記アノード電極216の電極面に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス通路(反応ガス通路)236が形成される(図9参照)。橋架部230には、燃料ガスを燃料ガス供給連通孔226から燃料ガス通路236に供給するための燃料ガス供給通路238が形成される。
【0097】
図9に示すように、第1プレート222は、中央部に燃料ガス供給連通孔226が形成される第1円板部240と、前記第1円板部240に一体に設けられる第1長板部242と、前記第1長板部242に一体に設けられる第1矩形状部244とを有する。第1矩形状部244には、第1プレート222のカソード電極214に向かう面222a側に、酸化剤ガス通路234を形成するための複数の突起部246が形成される。
【0098】
第2プレート224は、中央部に燃料ガス供給連通孔226が形成される第2円板部248と、前記第2円板部248に一体に設けられる第2長板部250と、前記第2長板部250に一体に設けられる第2矩形状部252とを有する。第1プレート222に接合される面224a側において、第2円板部248には、円環状に配列される複数の凸部254間にスリット256が形成され、このスリット256は、周溝258を介して燃料ガス供給通路238の一端側に連通する。燃料ガス供給通路238は、第2長板部250から第2矩形状部252の途上で延在して終端する。
【0099】
第2矩形状部252には、燃料ガス供給通路238の周端部近傍に位置して燃料ガス供給孔260が形成される。燃料ガス供給孔260は、後述する酸化剤ガスの流れ方向(矢印B方向)上方側に近接し、すなわち、第2長板部250側に近接した位置に設定される。
【0100】
図11に示すように、第2プレート224のアノード電極216に接触する面224bには、燃料ガス通路236を形成するための複数の突起部262が形成される。面224bには、燃料ガス通路236を周回し、アノード電極216の外周縁部に接触する外縁周回用凸部265が形成される。
【0101】
面224bには、燃料ガス通路236を通って使用された燃料ガスを排出する燃料ガス排出孔264に連通する貫通孔266が形成される。貫通孔266は、第2長板部250(橋架部230)の延長線と交差する方向に複数配列される。各貫通孔266に連通する各燃料ガス排出孔264は、挟持部232の一辺232aに橋架部230の延長線と直交する方向(矢印C方向)に配列される(図9参照)。
【0102】
図11に示すように、面224bには、アノード電極216に接触するとともに、燃料ガス供給孔260と貫通孔266(燃料ガス排出孔264)との間に且つ前記燃料ガス供給孔260側にV字状に折曲し、燃料ガスが前記燃料ガス供給孔260から前記貫通孔266に直線状に流れることを阻止するための迂回路形成用壁部268が設けられる。迂回路形成用壁部268は、V字状の内部領域Sを形成し内部領域Sに燃料ガス供給孔260が配設される。迂回路形成用壁部268は、両端268a、268bの延長線が挟持部232の両頂部に向かうように設定される。
【0103】
図9及び図10に示すように、橋架部230の両側には、酸化剤ガスを矢印A方向に流通させるための酸化剤ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)270が設けられる。酸化剤ガス供給連通孔270は、鉛直方向に酸化剤ガスを流通させるとともに、各燃料電池210を構成する酸化剤ガス通路234に沿って前記酸化剤ガスを矢印B方向に供給する。
【0104】
電解質・電極接合体218を挟んで配設される一対のセパレータ220を構成する各燃料ガス供給部228には、積層方向の荷重を緩和する荷重緩和機構272が設けられる。
【0105】
荷重緩和機構272は、第1の実施形態の第1荷重緩和機構96と同様に構成されており、一方のセパレータ(第1セパレータ)220の燃料ガス供給部228を構成する第1円板部240に固着される連結部材100aと、他方のセパレータ(第2セパレータ)220の燃料ガス供給部228を構成する第2円板部248に固着される連結部材100bとを備える。
【0106】
荷重緩和機構272は、一対の連結部材100a、100bを一体に結合させるための結合部材108を備えるとともに、前記連結部材100a、100b同士が係合する領域及び前記連結部材100a、100bと前記結合部材108とが係合する領域に対応して、3つのシール部材110a、110b及び110cが介装される。
【0107】
なお、荷重緩和機構272は、第1の実施形態の第1荷重緩和機構96を採用しているが、これに限定されるものではない。例えば、荷重緩和機構272として、第2の実施形態の第1荷重緩和機構144や第3の実施形態の第1荷重緩和機構174を採用してもよい。
【0108】
燃料電池210は、挟持部232の矢印B方向外方に位置して、排ガス排出連通孔274が形成される。この排ガス排出連通孔274は、電解質・電極接合体218に供給されて反応に使用された燃料ガス及び酸化剤ガスを、排ガスとして積層方向に排出する。
【0109】
このように構成される燃料電池210では、燃料ガス供給連通孔226に燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス供給連通孔270には、酸化剤ガスが供給される。図9及び図10に示すように、燃料ガス供給連通孔226に供給された燃料ガスは、各燃料電池210を構成するセパレータ220において、スリット256から周溝258を通って、橋架部230に形成されている燃料ガス供給通路238に導入される。燃料ガスは、燃料ガス供給通路238から燃料ガス供給孔260を通って、燃料ガス通路236に導入される。
【0110】
図11に示すように、燃料ガス供給孔260は、橋架部230側に近接して設けられるとともに、迂回路形成用壁部268の内部領域Sに配置されている。このため、燃料ガス供給孔260から燃料ガス通路236に導入された燃料ガスは、迂回路形成用壁部268の案内作用下に前記燃料ガス通路236を通って、電解質・電極接合体218のアノード電極216に供給される。使用済みの燃料ガスは、複数の貫通孔266から各燃料ガス排出孔264を通って排ガス排出連通孔274に排出される。
【0111】
一方、酸化剤ガス供給連通孔270に供給された空気は、図10に示すように、各電解質・電極接合体218のカソード電極214とセパレータ220の面222aとの間に形成されている酸化剤ガス通路234に導入される。酸化剤ガス通路234では、酸化剤ガスは矢印B方向に移動しながら、電解質・電極接合体218のカソード電極214に供給された後、排ガス排出連通孔274に排出される。
【0112】
従って、電解質・電極接合体218では、アノード電極216に燃料ガスが供給される一方、カソード電極214に空気が供給される。これにより、酸化物イオンは、電解質212を通ってアノード電極216に移動し、化学反応により発電が行われる。
【0113】
この場合、第4の実施形態では、電解質・電極接合体218を挟んで配設される一対のセパレータ220を構成する各燃料ガス供給部228に、積層方向の荷重を緩和する荷重緩和機構272が設けられている。この荷重緩和機構272は、第1荷重緩和機構96を採用している。
【0114】
これにより、燃料ガスのシール性能を確保するとともに、特に起動時に急速昇温する際の急激な変位を有効に吸収することができ、燃料ガス供給部228の損傷を可及的に阻止することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0115】
10、140、170、200…燃料電池スタック
12、142、172、210…燃料電池
20、212…電解質
22、214…カソード電極 24、216…アノード電極
26、218…電解質・電極接合体 28a、28b、220…セパレータ
30a、32a、222、224…プレート
34、226…燃料ガス供給連通孔 36、48、84、228…燃料ガス供給部
38、50、68、70、86、92、230…橋架部
40、52、72、74、88、94、232…挟持部
42…凸部 44、236…燃料ガス通路
46…燃料ガス供給孔 54…周回凸部
56…突起部 58、238…燃料ガス供給通路
62…酸化剤ガス供給連通孔 64、66、90…酸化剤ガス供給部
76、234…酸化剤ガス通路 78…酸化剤ガス供給孔
80…酸化剤ガス供給通路
96、98、144、146、174、176、272…荷重緩和機構
100a、100b、112a、112b、148a、148b、180a、180b…連結部材
102a、102b、114a、114b、150a、150b、182a、182b…セパレータ結合部位
104a、104b、116a、116b、152a、152b、184a、184b…係合部位
106a、106b、118a、118b、154a、154b、186a、186b…連結部位
108、120…結合部材
110a、110b、110c、122a、122b、122c、178a、178b…シール部材
156…折り返し部位 158…スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、第1セパレータ及び第2セパレータ間に配設される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層される燃料電池スタックであって、
少なくとも前記第1セパレータは、前記電解質・電極接合体を挟持するとともに、電極面に沿って一方の反応ガスを供給する反応ガス通路が設けられる挟持部と、
前記一方の反応ガスを前記反応ガス通路に供給するための反応ガス供給連通孔が積層方向に形成される反応ガス供給部と、
前記反応ガス供給部に設けられ、前記積層方向の荷重を緩和する荷重緩和機構と、
を備え、
前記荷重緩和機構は、前記積層方向に隣接し且つ前記一方の反応ガスを流通させる一対の前記反応ガス供給部同士を連結するとともに、前記積層方向の荷重を緩和するばね性を有する一対の連結部材と、
前記反応ガス供給部から前記一方の反応ガスが漏れることを阻止するシール部材と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、前記連結部材は、前記第1セパレータに結合されるセパレータ結合部位と、
前記積層方向に隣接する前記連結部材同士を係合する係合部位と、
前記セパレータ結合部位と前記係合部位とを繋ぎ且つ前記ばね性を有する連結部位と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池スタックにおいて、前記荷重緩和機構は、一対の前記連結部材を一体に結合させるための結合部材を備えるとともに、
前記シール部材は、一対の前記連結部材同士が係合する領域及び一対の前記連結部材と前記結合部材とが係合する領域に介装されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1又は2記載の燃料電池スタックにおいて、一対の前記連結部材を構成する一方の前記連結部材は、他方の前記連結部材よりも外形寸法が大きく設定され、
一方の前記連結部材の外周縁部を、一対の前記シール部材間に介装される他方の前記連結部材の外周縁部を覆って折り曲げることにより、一対の前記連結部材同士を一対の前記シール部材と一体に結合することを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1又は2記載の燃料電池スタックにおいて、前記荷重緩和機構は、一対の前記連結部材の外周縁部同士を直接接合するとともに、
前記連結部材と前記第1セパレータとの間に、前記シール部材が介装されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータは、同一形状を有するとともに、
互いに接合される第1プレート及び第2プレートを備えることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、少なくとも前記第1セパレータは、前記挟持部と前記反応ガス供給部とを連結し、前記一方の反応ガスを前記反応ガス供給連通孔から前記反応ガス通路に供給するための反応ガス供給通路が形成される橋架部を備えることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、前記第1セパレータは、前記一方の反応ガスである燃料ガスを流通させる前記反応ガス供給部である燃料ガス供給部を設けるとともに、
前記第2セパレータは、他方の反応ガスである酸化剤ガスを流通させる酸化剤ガス供給部を設け、
前記荷重緩和機構は、前記積層方向に隣接する一対の前記燃料ガス供給部同士を連結する燃料ガス側荷重緩和機構と、
前記積層方向に隣接する一対の前記酸化剤ガス供給部同士を連結する酸化剤ガス側荷重緩和機構と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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