説明

燃料電池セル及び燃料電池スタック

【課題】長期の使用においても良好な電気的接続性が維持可能な燃料電池セル及び燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】一対のインターコネクタ(以下、IC)12,13と、IC12,13間に位置し電解質2の一方の面に空気極14が形成され他方の面に燃料極15が形成されたセル本体20と、空気極14及び燃料極15の少なくとも一方とIC12,13との間に配置され、空気極14及び/又は燃料極15とIC12,13とを電気的に接続する集電部材18,19とを備えた燃料電池セル3であって、集電部材18,19は、IC12,13に当接するコネクタ当接部19aと、セル本体20に当接するセル本体当接部19bと、コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bをつなぐ連接部19cとが一連に形成され、セル本体20とIC12,13の間において、コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bを隔てるように配置されるスペーサー58を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質層の両面に二つの極を設け、一方の極(以下燃料極という。)に燃料ガスを供給すると共にもう一方の極(以下空気極という。)に酸化剤ガスを供給して発電する燃料電池セルと、その燃料電池セルを複数個積層して固定した燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、一対のインターコネクタと、該インターコネクタ間に位置し電解質の一方の面に空気極が形成され他方の面に燃料極が形成されたセル本体と、空気極とインターコネクタ又は燃料極とインターコネクタとの間に配置されて空気極とインターコネクタ又は燃料極とインターコネクタとを電気的に接続する集電部材と、を備えた燃料電池セルがある。
【0003】
この燃料電池セルの集電部材は、平板状の集電プレートから爪状の弾性部材を切り起こした構造になっており、集電プレートの平坦面をインターコネクタに接合すると共に弾性部材の先端をセル本体に接触させて電気的接続を行わせるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−266533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のように、導電性を有する弾性部材の弾性でセル本体に接触させる集電部材は、長期の使用で塑性変形し、発電時の高熱で導電性を有する弾性部材の強度が低下し、さらには導電性を有する弾性部材がクリープ変形の影響を受ける、などして予定した電気的接続を得るための接触力が得られなくなる場合がある。そして、そうした場合には、導電性を有する弾性部材が温度サイクルや燃料圧・空気圧の変動などによるセル本体の変形に追従できなくなって接触が不確実になり、空気極とインターコネクタ又は燃料極とインターコネクタの電気的接続が不確実になるおそれがあった。
【0006】
また、上記した弾性部材の電気的接続を得るための接触力の低下要因が複合的に重なったとき、該弾性部材のセル本体に接触すべき部分が逆にインターコネクタ側に接触する場合がある。一方、集電部材は、平坦面をインターコネクタに接合することからインターコネクタとの接合性に優れた材料で形成されている場合が多い。このため、発電時の高温環境下で弾性部材がインターコネクタ側に接触すると焼結により接合してしまう場合がある。そうなるとその弾性部材はインターコネクタと一体になるからセル本体との接触が困難になり、空気極とインターコネクタ又は燃料極とインターコネクタの電気的接続が不確実になるおそれがあった。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、その目的は、長期の使用においても良好な電気的接続性が維持可能な燃料電池セル及び燃料電池スタックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明は、請求項1に記載したように、一対のインターコネクタと、
前記インターコネクタ間に位置し、電解質の一方の面に空気極が形成され他方の面に燃料極が形成されたセル本体と、
前記空気極及び前記燃料極の少なくとも一方と前記インターコネクタとの間に配置され、前記空気極及び/又は前記燃料極と前記インターコネクタとを電気的に接続する集電部材と、を備えた燃料電池セルであって、
前記集電部材は、前記インターコネクタに当接するコネクタ当接部と、前記セル本体に当接するセル本体当接部と、前記コネクタ当接部と前記セル本体当接部をつなぐ連接部とが一連に形成され、
前記セル本体と前記インターコネクタの間において、前記コネクタ当接部と前記セル本体当接部を隔てるように配置されるスペーサーを有する燃料電池セルを提供する。
【0009】
また、請求項2に記載したように、前記連接部が略180度に折り曲げられ、前記コネクタ当接部と前記セル本体当接部が前記スペーサーの両側に配置されている請求項1に記載の燃料電池セルを提供する。
【0010】
また、請求項3に記載したように、一対のインターコネクタと、
前記インターコネクタ間に位置し、電解質の一方の面に空気極が形成され他方の面に燃料極が形成されたセル本体と、
前記空気極及び前記燃料極の少なくとも一方と前記インターコネクタとの間に配置され、前記空気極及び/又は前記燃料極と前記インターコネクタとを電気的に接続する集電部材と、を備えた燃料電池セルであって、
前記集電部材は、前記インターコネクタに当接するコネクタ当接部と、前記セル本体に当接するセル本体当接部と、前記コネクタ当接部と前記セル本体当接部をつなぐ連接部とが一連に形成され、
前記セル本体と前記インターコネクタの間において、前記コネクタ当接部と前記セル本体を、及び、前記セル本体当接部と前記インターコネクタを、それぞれ隔てるように配置されるスペーサーを有する燃料電池セルを提供する。
【0011】
また、請求項4に記載したように、一対のインターコネクタと、
前記インターコネクタ間に位置し、電解質の一方の面に空気極が形成され他方の面に燃料極が形成されたセル本体と、
前記空気極及び前記燃料極の少なくとも一方と前記インターコネクタとの間に配置され、前記空気極及び/又は前記燃料極と前記インターコネクタとを電気的に接続する集電部材と、を備えた燃料電池セルであって、
前記集電部材は、前記インターコネクタに当接するコネクタ当接部と、前記セル本体に当接するセル本体当接部と、前記コネクタ当接部と前記セル本体当接部をつなぐ連接部とが一連に形成され、
前記セル本体と前記インターコネクタの間において、前記コネクタ当接部と前記セル本体を、又は、前記セル本体当接部と前記インターコネクタを、隔てるように配置されるスペーサーを有する燃料電池セルを提供する。
【0012】
また、請求項5に記載したように、前記スペーサーは、前記セル本体と前記インターコネクタの間隔が変動することにより作用し得る荷重に対して前記集電部材よりも柔軟である請求項1〜4に記載の燃料電池セルを提供する。
【0013】
また、請求項6に記載したように、前記スペーサーは、マイカ、アルミナフェルト、バーミキュライト、カーボン繊維、炭化珪素繊維、シリカの少なくとも何れか1種とする請求項5に記載の燃料電池セルを提供する。
【0014】
また、請求項7に記載したように、前記インターコネクタと、前記セル本体と、前記集電部材とを積層して一体に締め付ける締め付け部材をさらに有し、
前記締め付け部材及び前記スペーサーにより、前記集電部材の前記セル本体当接部が前記セル本体に当接し、前記コネクタ当接部が前記インターコネクタに当接するように押圧されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池セルを提供する。
【0015】
また、請求項8に記載したように、前記スペーサーは、前記締め付け部材よりも締め付け方向の熱膨張率が高い請求項7に記載の燃料電池セルを提供する。
【0016】
また、請求項9に記載したように、前記集電部材は、多孔質金属又は金網又はワイヤー又はパンチングメタル製である請求項1〜8の何れか1項に記載の燃料電池セルを提供する。
【0017】
また、請求項10に記載したように、前記集電部材の前記セル本体当接部が、前記セル本体の前記空気極及び/又は前記燃料極の表面に接合されている請求項1〜9の何れか1項に記載の燃料電池セルを提供する。
【0018】
また、請求項11に記載したように、前記集電部材の前記コネクタ当接部が、前記インターコネクタに接合されている請求項1〜10の何れか1項に記載の燃料電池セルを提供する。
【0019】
また、請求項12に記載したように、前記集電部材は、前記燃料極と前記インターコネクタとの間に配置されて、Ni又はNi合金製である請求項1〜11の何れか1項に記載の燃料電池セルを提供する。
【0020】
また、請求項13に記載したように、請求項1〜12の何れか1項に記載の燃料電池セルを複数個積層し、前記締め付け部材により固定してなる燃料電池スタックを提供する。
【発明の効果】
【0021】
請求項1、2に記載の燃料電池セルによれば、コネクタ当接部とセル本体当接部の反接触方向(両者が当接しない方向)への変形がスペーサーによって抑制されるため塑性変形しにくく、また、発電時の高熱による強度低下の影響或はクリープ変形の影響等も受けにくい。また、スペーサーが集電部材のコネクタ当接部とセル本体当接部の間に入って両者の接触を妨げるため、発電時の高熱(燃料電池の作動温度領域)でコネクタ当接部とセル本体当接部が焼結により接合するおそれがない。したがって、コネクタ当接部とセル本体当接部の一体化(焼結による接合)及びそれに伴う電気的接続の不安定化が防止できる。
【0022】
また、請求項3に記載の燃料電池セルによれば、集電部材のコネクタ当接部とセル本体当接部のそれぞれについて、反接触方向(両者が当接しない方向)への変形がスペーサーに当たって抑制されるため塑性変形しにくく、また、発電時の高熱による強度低下の影響或はクリープ変形の影響等も受けにくい。また、スペーサーが集電部材のコネクタ当接部とセル本体及びセル本体当接部とインターコネクタの間に入って両者の接触を妨げるため、発電時の高熱でコネクタ当接部とセル本体及びセル本体当接部とインターコネクタが焼結により接合するおそれがない。したがって、コネクタ当接部とセル本体及びセル本体当接部とインターコネクタの一体化(焼結による接合)及びそれに伴う電気的接続の不安定化が防止できる。
【0023】
また、請求項4に記載の燃料電池セルによれば、集電部材のコネクタ当接部又はセル本体当接部について、反接触方向(両者が当接しない方向)への変形がスペーサーに当たって抑制されるため、集電部材の発電時の高熱による強度低下の影響或はクリープ変形の影響等を受けにくい。また、スペーサーが集電部材のコネクタ当接部とセル本体又はセル本体当接部とインターコネクタの間に入って両者の接触を妨げるため、発電時の高熱でコネクタ当接部とセル本体又はセル本体当接部とインターコネクタが焼結により接合するおそれがなく、したがってコネクタ当接部とセル本体又はセル本体当接部とインターコネクタの一体化(焼結による接合)及びそれに伴う電気的接続の不安定化が防止できる。
【0024】
また、請求項5に記載の燃料電池セルによれば、スペーサーを集電部材より柔軟にして荷重に対する反発力が弱くなるように設定したため、燃料電池の運転時や、燃料電池の組み立て時にスペーサーからの反発力が過度に作用してセル本体の割れを誘発するおそれがない。すなわち、スペーサーがクッション性を発揮し、運転時のセル本体の変形や組み立て時の締め付け力によって発生する(セル本体に対する)応力集中が抑制され、セル割れが軽減できる。なお、このようなスペーサーは、少なくとも請求項6に記載された材質を用いることにより形成することができる。
【0025】
また、請求項7に記載の燃料電池セルによれば、インターコネクタと、セル本体と、集電部材とを積層して締め付け部材で締め付けることで、スペーサーの押圧により集電部材のセル本体当接部がセル本体により確実に当接し、或はコネクタ当接部がインターコネクタにより確実に当接するため、集電部材による電気的接続が安定する。
即ち、集電体部材の弾性力低下(即ち、高温時に金属集電部材のクリープ変形による影響)に対して、スペーサーの弾性力が補うことでセル本体もしくはインタコネクタに対する押圧作用が維持される。よって、接点が良好な状態に維持される。
【0026】
また、請求項8に記載の燃料電池セルによれば、締め付け部材よりもスペーサーの締め付け方向の熱膨張率が高いため、発電時の熱で締め付け部材が熱膨張し、それがインターコネクタとセル本体と集電部材を締め付ける締付力の低下要因になっても、スペーサーがそれ以上に熱膨張するから集電部材に対する押圧作用が維持される。
【0027】
また、請求項9に記載したように、集電部材を多孔質金属又は金網又はワイヤー又はパンチングメタルで形成すれば、単純な板材で形成する場合に比べて燃料ガスや酸化剤ガスの拡散性が向上する。
【0028】
また、請求項10に記載したように、セル本体当接部を、セル本体の空気極及び/又は燃料極の表面に接合した場合には、温度サイクルや燃料圧・空気圧の変動などによるセル本体の変形に対してセル本体当接部が一体になって追従するため、安定した電気的接続が得られる。
【0029】
また、請求項11に記載したように、集電部材のコネクタ当接部をインターコネクタに接合しておけば、温度サイクルや燃料圧・空気圧の変動などによりセル本体に変形が生じても、コネクタ当接部とインターコネクタの電気的接続は、安定的に継続し得る。
【0030】
また、請求項12に記載したように、集電部材を前記燃料極と前記インターコネクタとの間に配置してNi又はNi合金で形成すれば、燃料電池セルを組み立てた後に加熱するだけで集電部材のセル本体当接部やコネクタ当接部を燃料極側のセル本体(燃料極)やインターコネクタに接合することができる。
すなわち、Ni又はNi合金は、材質上、燃料極側のセル本体(燃料極)やインターコネクタとの接合性に優れており、しかも集電部材のセル本体当接部やコネクタ当接部は、集電部材自体の弾性とスペーサーの押圧によってセル本体やインターコネクタに確実に接触しているから、組み立て完了後に加熱すればセル本体当接部がセル本体の燃料極中のNiと拡散接合し、或はコネクタ当接部がインターコネクタに拡散接合して一体になる。このようにセル本体当接部やコネクタ当接部がそれぞれセル本体やインターコネクタに接合して一体になると、セル本体とインターコネクタの電気的接続が安定する。
なお、燃料電池の発電時の温度は700℃前後〜1000℃に達するため、発電時の熱でセル本体当接部やコネクタ当接部を燃料極側のセル本体やインターコネクタに接合することができる。したがって、加熱のための工程を省略してエネルギーを節約することができる。
【0031】
また、請求項13に記載した燃料電池スタックは、請求項1〜12の何れか1項に記載の燃料電池セルを複数個積層して締め付け部材で固定したものであるため、長期の使用においても良好な電気的接続性が維持可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】燃料電池の斜視図である。
【図2】燃料電池セルの斜視図である。
【図3】燃料電池セルの分解斜視図である。
【図4】分解パーツを絞った燃料電池セルの分解斜視図である。
【図5】燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図6】図5を分解して示す縦断面図である。
【図7】図5のA−A線断面図である。
【図8】図5のB−B線断面図である。
【図9】集電部材の斜視図である。
【図10】(a)はスペーサーの斜視図、(b)は集電部材のスペーサー装着前の斜視図である。
【図11】図10(b)の変形例を示す集電部材の斜視図である。
【図12】他の形態に係る燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図13】他の形態に係る燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図14】他の形態に係る燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図15】他の形態に係る燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
現在、燃料電池には電解質の材質により大別して、高分子電解質膜を電解質とする固体高分子形燃料電池(PEFC)と、リン酸を電解質とするリン酸形燃料電池(PAFC)と、Li−Na/K系炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)と、例えばZrO系セラミックを電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)の4タイプがある。各タイプは、作動温度(イオンが電解質中を移動できる温度)が異なるのであって、現時点において、PEFCは常温〜約90℃、PAFCは約150℃〜200℃、MCFCは約650℃〜700℃、SOFCは約700℃〜1000℃である。
【0034】
[実施形態1]
図1〜図11に示した実施形態1の燃料電池1は、例えばZrO系セラミックを電解質2とするSOFCである。この燃料電池1は、発電の最小単位である燃料電池セル3と、該燃料電池セル3に空気を供給する空気供給流路4と、その空気を外部に排出する空気排気流路5と、同じく燃料電池セル3に燃料ガスを供給する燃料供給流路6と、その燃料ガスを外部に排出する燃料排気流路7と、該燃料電池セル3を複数セット積層してセル群となし該セル群を固定して燃料電池スタック8となす固定部材9と、燃料電池スタック8を納める容器10と、燃料電池スタック8で発電した電気を出力する出力部材11と、から概略構成される。
【0035】
[燃料電池セル]
燃料電池セル3は平面視正方形であり、図3に示したように、四角い板形態で導電性を有するフェライト系ステンレス等で形成された上(※ここでの「上」又は「下」は図面の記載を基準とするが、これはあくまでも説明の便宜上のものであって絶対的な上下を意味しない。以下同じ。)のインターコネクタ12と、同じく四角い板形態で導電性を有するフェライト系ステンレス等で形成された下のインターコネクタ13と、上下のインターコネクタ12,13のほぼ中間に位置すると共に電解質2の上のインターコネクタ12の内面(下面)に対向する面に空気極14を形成すると共に下のインターコネクタ13の内面(上面)に対向する面に燃料極15を形成したセル本体20と、上のインターコネクタ12と空気極14との間に形成された空気室16と、下のインターコネクタ13と燃料極15との間に形成された燃料室17と、空気室16の内部に配置され空気極14と上のインターコネクタ12とを電気的に接続する空気極14側の集電部材18と、前記燃料室17の内部に配置され燃料極15と下のインターコネクタ13とを電気的に接続する燃料極15側の集電部材19と、を有し、正方形のコーナー部分に前記固定部材9の後述する締め付け部材46a〜46dを通すコーナー通孔47,47…を貫通状態に形成したものである。
【0036】
[電解質]
前記電解質2は、ZrO系セラミックの他、LaGaO系セラミック、BaCeO系セラミック、SrCeO系セラミック、SrZrO系セラミック、CaZrO系セラミック等で形成される。
【0037】
[燃料極]
前記燃料極15の材質は、Ni及びFe等の金属と、Sc、Y等の希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたジルコニア等のZrO系セラミック、CeO系セラミック等のセラミックのうちの少なくとも1種との混合物が挙げられる。また、燃料極15の材質は、Pt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru、Rh、Ni及びFe等の金属でもよく、これらの金属は1種のみでもよいし、2種以上の合金にしてもよい。さらに、これらの金属及び/又は合金と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物(サーメットを含む。)が挙げられる。また、Ni及びFe等の金属の酸化物と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物等が挙げられる。
【0038】
[空気極]
前記空気極14の材質は、例えば各種の金属、金属の酸化物、金属の複酸化物等を用いることができる。前記金属としてはPt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。さらに、金属の酸化物としては、La、Sr、Ce、Co、Mn及びFe等の酸化物(La、SrO、Ce、Co、MnO及びFeO等)が挙げられる。また、複酸化物としては、少なくともLa、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe及びMn等を含有する複酸化物(La1−XSrCoO系複酸化物、La1−XSrFeO系複酸化物、La1−XSrCo1−yFeO系複酸化物、La1−XSrMnO系複酸化物、Pr1−XBaCoO系複酸化物及びSm1−XSrCoO系複酸化物等)が挙げられる。
【0039】
[燃料室]
前記燃料室17は、図3〜図5に示したように、集電部材19の周りを囲う状態にして下のインターコネクタ13の上面に設置された額縁形態の燃料極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「燃料極絶縁フレーム」ともいう。)21と、額縁形態であって前記燃料極絶縁フレーム21の上面に設置される燃料極フレーム22と、によって四角い部屋状に形成されている。
【0040】
[燃料室側の集電部材]
燃料室17側の集電部材19は、例えばNiの板材で形成されており、下のインターコネクタ13に当接するコネクタ当接部19aと、セル本体20の燃料極15に当接するセル本体当接部19bと、コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bとをつなぐU字状の連接部19cとが一連に形成され、該連接部19cのU字に曲がった部分の弾性力によりコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bがそれぞれインターコネクタ13とセル本体20に向けて付勢され、なおかつ、温度サイクルや燃料圧・空気圧などの変動によるセル本体20の変形に柔軟に追従し得る。
【0041】
なお、燃料室17側の集電部材19は、前記のように板材で形成する場合の他、例えばNi製の多孔質金属又は金網又はワイヤー又はパンチングメタルで形成するようにしてもよい。また、燃料室17側の集電部材19は、Niの他、Ni合金やステンレス鋼など酸化に強い金属で形成するようにしてもよい。
【0042】
この集電部材19は、燃料室17に数十〜百個程度(もちろん燃料室の大きさにより異なる。)設けられており、それらを個々にインターコネクタ13上に並べて溶接(例えばレーザー溶接や抵抗溶接)するようにしてもよいが、好ましくは図10(b)に示したように前記板材を燃料室17に整合する四角い平板19pに加工し、この平板19pにセル本体当接部19bと連接部19cに対応する切込線19dを形成し、そうして図9の拡大部に示したように連接部19cをU字状に曲げてセル本体当接部19bがコネクタ当接部19aの上方に間隔t(図5拡大部参照)を空けて被さるようにしてある。したがって、セル本体当接部19bを曲げ起こして残った穴あき状態の平板19pがコネクタ当接部19aの集合体であり、実施形態では平板19pのコネクタ当接部19aが下のインターコネクタ13にレーザー溶接や抵抗溶接により接合されている。
【0043】
なお、集電部材19の前記切込線19dは、図11に示したように、セル本体当接部19bと連接部19cを列単位で纏めた形にしてもよい。こうすることによりセル本体当接部19bと連接部19cの加工が効率よく行える。
【0044】
[スペーサー]
前記集電部材19には、図5に示したようにスペーサー58が併設されている。該スペーサー58は、セル本体20と下のインターコネクタ13の間の燃料室17内において、コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bを隔てるように両者の間に配置され、少なくとも燃料電池作動温度域での該スペーサー58の熱膨張によってセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aをそれぞれの当接方向、すなわちセル本体当接部19bをセル本体20に向けて、一方、コネクタ当接部19aをインターコネクタ13に向けて押圧し得るようにするべく、燃料電池作動温度域である700℃〜1000℃において、熱膨張によって拡大する前記間隔tをさらなる熱膨張によって上回る厚みと材質で形成されている。
【0045】
なお、スペーサー58の厚みは、燃料電池作動温度域での状態でセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aの間隔tを上回るものであればよいが、好ましくは燃料電池非作動時の常温状態で少なくともセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aの間隔tとほぼ同じにするかまたは若干大きく設定するのがよい。そうすることにより発電開始から作動温度域に達するまでの間においても、スペーサー58によってコネクタ当接部19aとインターコネクタ13及びセル本体当接部19bとセル本体20の電気的接触を安定的にすることができる。
【0046】
また、スペーサー58は、集電部材19より柔軟な材質、つまり集電部材19より弾性量の小さい材質や構造が選定されており、温度サイクルや燃料圧・空気圧の変化による燃料室17の間隔の変動に対し集電部材19の動きに追従して該集電部材19の機敏な動きを妨げないようにしてある。
【0047】
また、スペーサー58は、燃料電池作動温度域で集電部材19と焼結しない性質を持った材料で形成されており、したがって、セル本体当接部19bとコネクタ当接部19aとが直接触れ合って焼結するおそれがないことはもちろん、セル本体当接部19bとコネクタ当接部19aがスペーサー58を介して焼結するおそれもない。
【0048】
以上の条件を満たすスペーサー58の材質としては、マイカ、アルミナフェルト、バーミキュライト、カーボン繊維、炭化珪素繊維、シリカの何れか1種か、或は複数種を組み合わせたものでもよい。また、これらを例えばマイカのような薄い板状体の積層構造にしておけば、積層方向への荷重に対し適度な弾性が付与されるため好ましい。これらの材質により形成されるスペーサー58は、厚さ方向(積層方向)の熱膨張率が、後述する締め付け部材46a〜46dの締め付け方向の熱膨張率より高い。
【0049】
このように、集電部材19(連結部材)に加えてスペーサー58にも弾性力を持たせることで、接点の保持状態が一層良好に維持される。
【0050】
なお、実施形態の集電部材19は、前記のようにコネクタ当接部19aの集合体である平板19pでつながった一体構造になっており、これに合わせてスペーサー58も図10(a)に示したように、平板19pとほぼ同幅で平板19pより若干短い(具体的には、1つの(セル本体当接部19b+連接部19c)の長さ相当分短い)四角形にした1枚の材料シートから、セル本体当接部19bと連接部19cに対応する部分を横1列分ずつ纏めて切り抜いて横格子状に形成されている。
そして、このスペーサー58を集電部材19の加工前の図10(b)に示した平板19pに重ね、その状態で図9拡大部に示したように連接部19cをU字状に曲げるようにすれば、予めスペーサー58を組み込んだ集電部材19ができる。
ところで、図9拡大部では、セル本体当接部19bが左角部に位置するものから右に向かって段階的に曲げられる状態になっているが、これは専ら加工手順を説明するために描いたものであり、セル本体当接部19bの曲げ加工は全部を一斉に行ってもよいし、加工上都合の良い部分から順に行ってもよい。
【0051】
[空気室]
前記空気室16は、図3〜図5に示したように、四角い額縁形態であって下面に前記電解質2が取着された導電性を有する薄い金属製のセパレータ23と、該セパレータ23と上のインターコネクタ12との間に設置されて集電部材18の周りを囲う額縁形態の空気極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「空気極絶縁フレーム」ともいう。)24と、によって四角い部屋状に形成されている。
【0052】
[空気室側の集電部材]
空気室16側の集電部材18は、細長い角材形状で、緻密な導電部材である例えばステンレス材で形成され、電解質2の上面の空気極14と上のインターコネクタ12の下面(内面)に当接する状態にして複数本を平行に且つ一定の間隔をおいて配設されている。なお、空気室16側の集電部材18は、燃料室17側の集電部材19と同じ構造(後述する実施形態2を含む。)にしてもよい。
【0053】
以上のように燃料電池セル3は、下のインターコネクタ13と、燃料極絶縁フレーム21と、燃料極フレーム22と、セパレータ23と、空気極絶縁フレーム24と、上のインターコネクタ12と、の組合せによって燃料室17と空気室16を形成し、その燃料室17と空気室16を電解質2で仕切って相互に独立させ、さらに、燃料極絶縁フレーム21と空気極絶縁フレーム24で燃料極15側と空気極14側を電気的に絶縁している。
【0054】
また、燃料電池セル3は、空気室16の内部に空気を供給する空気供給流路4を含む空気供給部25と、空気室16から空気を外部に排出する空気排気流路5を含む空気排気部26と、燃料室17の内部に燃料ガスを供給する燃料供給流路6を含む燃料供給部27と、燃料室17から燃料ガスを外部に排出する燃料排気流路7を含む燃料排気部28と、を備えている。
【0055】
[空気供給部]
空気供給部25は、四角い燃料電池セル3の一辺側中央に上下方向に開設した空気供給通孔29と、該空気供給通孔29に連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の空気供給連絡室30と、該空気供給連絡室30と空気室16の間を仕切る隔壁31の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した空気供給連絡部32と、前記空気供給通孔29に挿通して外部から前記空気供給連絡室30に空気を供給する前記空気供給流路4と、を備えている。
【0056】
[空気排気部]
空気排気部26は、燃料電池セル3の空気供給部25の反対側の一辺側中央に上下方向に開設した空気排気通孔33と、該空気排気通孔33に連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の空気排気連絡室34と、該空気排気連絡室34と空気室16の間を仕切る隔壁35の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した空気排気連絡部36と、前記空気排気通孔33に挿通して空気排気連絡室34から外部に空気を排出する管状の前記空気排気流路5と、を備えている。
【0057】
[燃料供給部]
燃料供給部27は、四角い燃料電池セル3の残り二辺のうちの一辺側中央に上下方向に開設した燃料供給通孔37と、該燃料供給通孔37に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の燃料供給連絡室38と、該燃料供給連絡室38と燃料室17の間を仕切る隔壁39の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した燃料供給連絡部40と、前記燃料供給通孔37に挿通して外部から前記燃料供給連絡室38に燃料ガスを供給する管状の前記燃料供給流路6と、を備えている。
【0058】
[燃料排気部]
燃料排気部28は、燃料電池セル3の燃料供給部27の反対側の一辺側中央に上下方向に開設した燃料排気通孔41と、該燃料排気通孔41に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の燃料排気連絡室42と、該燃料排気連絡室42と燃料室17の間を仕切る隔壁43の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した燃料排気連絡部44と、前記燃料排気通孔41に挿通して燃料排気連絡室42から外部に燃料ガスを排出する管状の燃料排気流路7と、を備えている。
【0059】
[燃料電池スタック]
燃料電池スタック8は、前記燃料電池セル3を複数セット積層してセル群となし、該セル群を固定部材9で固定して構成される。なお、燃料電池セル3を複数セット積層した場合において、下に位置する燃料電池セル3の上のインターコネクタ12と、その上に載る燃料電池セル3の下のインターコネクタ13は、一体にしてその一枚を上下の燃料電池セル3,3同士で共有する。
前記固定部材9は、セル群の上下を挟む一対のエンドプレート45a,45bと、該エンドプレート45a,45bとセル群をエンドプレート45a,45bのコーナー孔(図示せず)とセル群の前記コーナー通孔47にボルトを通してナットで締め付ける四組の締め付け部材46a〜46dと、を組み合わせたものである。締め付け部材46a〜46dの材質は、例えばインコネル601である。
【0060】
この燃料電池スタック8に対し前記空気供給流路4は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)とセル群の前記空気供給通孔29を上下に貫く状態にして取り付けられており、管状流路の端部を閉じ前記空気供給連絡室30毎に対応させて図7に示したように横孔48を設けることにより、該横孔48を介して空気供給連絡室30に空気が供給されるようになっている。
【0061】
同様に空気排気流路5は空気排気連絡室34毎に対応させた横孔49から空気を取り込んで外部に排出し、燃料供給流路6は図8に示したように燃料供給連絡室38毎に対応させた横孔50から燃料ガスを供給し、燃料排気流路7は燃料排気連絡室42毎に対応させた横孔51から燃料ガスを取り込んで外部に排出する。
【0062】
[容器]
燃料電池スタック8を収める容器10は、耐熱且つ密閉構造であって、図1に示したように、開口部にフランジ52a,52bを有する二個の半割体53a,53bを向かい合わせにして接合したものである。この容器10の頂部から前記締め付け部材46a〜46dのボルトが外部に突出しており、この締め付け部材46a〜46dの突出部分にナット54を螺合させて燃料電池スタック8を容器10内に固定する。また、容器10の頂部から前記空気供給流路4、空気排気流路5、燃料供給流路6、燃料排気流路7も外部に突出しており、その突出部分に空気や燃料ガスの供給源等が接続されている。
【0063】
[出力部材]
燃料電池スタック8で発電した電気を出力する出力部材11は、燃料電池スタック8のコーナー部分に位置する前記締め付け部材46a〜46dと前記エンドプレート45a,45bであって、対角線上で向かい合う一対の締め付け部材46a,46cを正極である上のエンドプレート45aに電気的に接続し、また、他の一対の締め付け部材46b,46dを負極である下のエンドプレート45bに電気的に接続する。もちろん正極に接続した締め付け部材46a,46dや負極に接続した締め付け部材46b,46cは、他極のエンドプレート45a(45b)に対しては絶縁座金55(図1参照)を介在させ、また、燃料電池スタック8に対してはコーナー通孔47との間に隙間を設けるなどして絶縁されている。よって、固定部材9の締め付け部材46a,46cは、上のエンドプレート45aにつながった正極の出力端子としても機能し、また、他の締め付け部材46b,46dは、下のエンドプレート45bにつながった負極の出力端子としても機能する。
【0064】
[発電]
上記燃料電池1の空気供給流路4に空気を供給すると、その空気は、図7の右側から左側に流れ、右側の空気供給流路4と、空気供給連絡室30と、空気供給連絡部32とからなる空気供給部25を通って空気室16に供給され、この空気室16の集電部材18同士の間のガス流路56を通り抜け、さらに空気排気連絡部36と、空気排気連絡室34と、空気排気流路5とからなる空気排気部26を通って外部に排出される。
【0065】
同時に燃料電池1の燃料供給流路6に燃料ガスとして例えば水素を供給すると、その燃料ガスは、図8の上側から下側に流れ、上側の燃料供給流路6と、燃料供給連絡室38と、燃料供給連絡部40とからなる燃料供給部27を通って燃料室17に供給され、この燃料室17の集電部材19,19…の間、厳密にはセル本体当接部19b,19b…同士の間のガス流路57(図8において、燃料室17内の非斜線部参照)を拡散しながら通り抜け、さらに燃料排気連絡部44と、燃料排気連絡室42と、燃料排気流路7とからなる燃料排気部28を通って外部に排気される。
なお、このとき集電部材19が前記のように多孔質金属又は金網又はワイヤー又はパンチングメタルで形成されていると、ガス流路57の表面が凸凹になるため燃料ガスの拡散性が向上する。
【0066】
このような空気と燃料ガスの供給・排気を行いつつ前記容器10内の温度を700℃〜1000℃にまで上昇させると、空気と燃料ガスが空気極14と電解質2と燃料極15を介して反応を起こすため、空気極14を正極、燃料極15を負極とする直流の電気エネルギーが発生する。なお、燃料電池セル3内で電気エネルギーが発生する原理は周知であるため説明を省略する。
【0067】
前記のように空気極14は、集電部材18を介して上のインターコネクタ12に電気的に接続され、一方、燃料極15は、集電部材19を介して下のインターコネクタ13に電気的に接続されており、また、燃料電池スタック8は複数の燃料電池セル3を積層して直列に接続された状態であるから、上のエンドプレート45aが正極で、下のエンドプレート45bが負極になり、その電気エネルギーが出力端子としても機能する締め付け部材46a〜46dを介して外部に取り出せる。
【0068】
以上のように燃料電池は、発電時に温度が上昇し、発電停止により温度が下降する、という温度サイクルを繰り返す。したがって、燃料室17や空気室16を構成する全ての部材や前記締め付け部材46a〜46dについて熱膨張と収縮が繰り返され、それに伴い燃料室17や空気室16の間隔も拡大と縮小が繰り返される。
また、燃料圧や空気圧も変動する場合があり、その圧力の変動でセル本体20が変形することによっても燃料室17や空気室16の間隔が拡大又は縮小する。
このような燃料室17や空気室16の拡大方向の変化に対して、実施形態では燃料室17側の集電部材19が、連接部19cの弾性力と、スペーサー58の積層方向の弾性力と同方向の熱膨張によってセル本体20を押圧するため電気的接続が安定的に維持される。この集電部材19によるセル本体20の押圧は空気室16側にも影響するため、空気室16の電気的接続も安定的に維持される。
また、燃料室17や空気室16の縮小方向の変化に対して、燃料室17側の集電部材19の連接部19cの弾性力と、スペーサー58の収縮によってセル本体20に加わる応力が緩和される。
一方、集電部材19の連結部19cに十分な弾性力を持たせたこと、及び、スペーサー58に弾性力を持たせたことで、金属である集電部材19の弾性力が温度上昇や高温などの状況(例えば、発電昇温時)下で、クリープの影響を受けたとしても、接点の状態を良好に保つことができる。
そこで、集電部材19をNiで、スペーサー58をマイカで形成して実験用の燃料電池を製造し、その燃料電池で発電して集電部材19およびスペーサー58の弾性と接点の保持状態の関係について確認した。
その結果、集電部材19は、スペーサー58を構成するマイカよりも十分な弾性力を持たせたことにより、スタックの組み立て時もしくは(発電後などの)降温時に燃料室17や空気室16が縮小方向に変形しても、接点の状態が良好に維持された。
一方、(発電開始などの)昇温時では、集電部材19が熱によりクリープの影響を受けて弾性力が弱くなってもスペーサー58の熱膨張により補強されてトータルで電気的接続を得るための十分な接触力が維持されるため、燃料室17や空気室16の拡大方向の変形に対しても接点の状態は良好に保たれた。
【0069】
また、燃料極15側の集電部材19がNiか又はNi合金であると、発電時の高温環境下でセル本体当接部19bが燃料極15中のNiと拡散接合して一体になる。したがって集電部材19による電気的接続がより安定的に維持される。
なお、好ましくは燃料極15にNiOペーストを塗布して接合層を形成しておくとよい。そうすることによりH中の通電でNiOがNiになるから集電部材19と燃料極15の接合性がさらに向上する。前記接合層は、燃料極15にPtペーストを塗布することによって形成してもよい。
【0070】
また、実施形態1では下のインターコネクタ13にコネクタ当接部19aの集合体である平板19pを溶接して接合するようにしたが、該インターコネクタ13と平板19pの材質を発電時の高温環境下で拡散接合し得る組み合わせ(例えばCrofer22HとNi)にするか、或は下のインターコネクタ13の内面側に前記のような接合層を形成するようにしておけば、発電時の高温環境下でインターコネクタ13と集電部材19を接合して一体にすることができる。
【0071】
[実施形態2]
図12〜図15は実施形態2を示す燃料電池セル3の中間省略縦断面図である。実施形態1は、集電部材19の連接部19cをU字状に曲げてコネクタ当接部19aの上方にセル本体当接部19bを配置すると共にコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの間にスペーサー58を介在させるようにしたが、実施形態2では連接部19cを斜めにして、図12のようにコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの上下位置を完全に異ならせるか又は図13のように集電部材19を断面略Z字状にしてコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの一部が上下位置を違えて重なるように配置し、そうしてコネクタ当接部19aとセル本体20及びセル本体当接部19bとインターコネクタ13を隔てるように前記スペーサー58を配置したものである。また、図14のようにスペーサー58をコネクタ当接部19aとセル本体20を隔てるように介在させるか、或は図15のようにスペーサー58をセル本体当接部19bとインターコネクタ13を隔てるように介在させるようにすることもできる。
実施形態1と実施形態2の構成の相違は以上のとおりであり、それ以外の点については実施形態1と同じであるため詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0072】
1 …燃料電池
2 …電解質
3 …燃料電池セル
8 …燃料電池スタック
12,13 …インターコネクタ
14 …空気極
15 …燃料極
18,19 …集電部材
19a …コネクタ当接部
19b …セル本体当接部
19c …連接部
20 …セル本体
46a〜46d …締め付け部材
58 …スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のインターコネクタと、
前記インターコネクタ間に位置し、電解質の一方の面に空気極が形成され他方の面に燃料極が形成されたセル本体と、
前記空気極及び前記燃料極の少なくとも一方と前記インターコネクタとの間に配置され、前記空気極及び/又は前記燃料極と前記インターコネクタとを電気的に接続する集電部材と、を備えた燃料電池セルであって、
前記集電部材は、前記インターコネクタに当接するコネクタ当接部と、前記セル本体に当接するセル本体当接部と、前記コネクタ当接部と前記セル本体当接部をつなぐ連接部とが一連に形成され、
前記セル本体と前記インターコネクタの間において、前記コネクタ当接部と前記セル本体当接部を隔てるように配置されるスペーサーを有することを特徴とする燃料電池セル。
【請求項2】
前記連接部が略180度に折り曲げられ、前記コネクタ当接部と前記セル本体当接部が前記スペーサーの両側に配置されている請求項1に記載の燃料電池セル。
【請求項3】
一対のインターコネクタと、
前記インターコネクタ間に位置し、電解質の一方の面に空気極が形成され他方の面に燃料極が形成されたセル本体と、
前記空気極及び前記燃料極の少なくとも一方と前記インターコネクタとの間に配置され、前記空気極及び/又は前記燃料極と前記インターコネクタとを電気的に接続する集電部材と、を備えた燃料電池セルであって、
前記集電部材は、前記インターコネクタに当接するコネクタ当接部と、前記セル本体に当接するセル本体当接部と、前記コネクタ当接部と前記セル本体当接部をつなぐ連接部とが一連に形成され、
前記セル本体と前記インターコネクタの間において、前記コネクタ当接部と前記セル本体を、及び、前記セル本体当接部と前記インターコネクタを、それぞれ隔てるように配置されるスペーサーを有することを特徴とする燃料電池セル。
【請求項4】
一対のインターコネクタと、
前記インターコネクタ間に位置し、電解質の一方の面に空気極が形成され他方の面に燃料極が形成されたセル本体と、
前記空気極及び前記燃料極の少なくとも一方と前記インターコネクタとの間に配置され、前記空気極及び/又は前記燃料極と前記インターコネクタとを電気的に接続する集電部材と、を備えた燃料電池セルであって、
前記集電部材は、前記インターコネクタに当接するコネクタ当接部と、前記セル本体に当接するセル本体当接部と、前記コネクタ当接部と前記セル本体当接部をつなぐ連接部とが一連に形成され、
前記セル本体と前記インターコネクタの間において、前記コネクタ当接部と前記セル本体を、又は、前記セル本体当接部と前記インターコネクタを、隔てるように配置されるスペーサーを有することを特徴とする燃料電池セル。
【請求項5】
前記スペーサーは、前記セル本体と前記インターコネクタの間隔が変動することにより作用し得る荷重に対して前記集電部材よりも柔軟であることを特徴とする請求項1〜4に記載の燃料電池セル。
【請求項6】
前記スペーサーは、マイカ、アルミナフェルト、バーミキュライト、カーボン繊維、炭化珪素繊維、シリカの少なくとも何れか1種とすることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池セル。
【請求項7】
前記インターコネクタと、前記セル本体と、前記集電部材とを積層して一体に締め付ける締め付け部材をさらに有し、
前記締め付け部材及び前記スペーサーにより、前記集電部材の前記セル本体当接部が前記セル本体に当接し及び/又は前記コネクタ当接部が前記インターコネクタに当接するように押圧されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池セル。
【請求項8】
前記スペーサーは、前記締め付け部材よりも締め付け方向の熱膨張率が高いことを特徴とする請求項7に記載の燃料電池セル。
【請求項9】
前記集電部材は、多孔質金属又は金網又はワイヤー又はパンチングメタル製であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の燃料電池セル。
【請求項10】
前記集電部材の前記セル本体当接部が、前記セル本体の前記空気極及び/又は前記燃料極の表面に接合されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の燃料電池セル。
【請求項11】
前記集電部材の前記コネクタ当接部が、前記インターコネクタに接合されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の燃料電池セル。
【請求項12】
前記集電部材は、前記燃料極と前記インターコネクタとの間に配置されて、Ni又はNi合金製であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の燃料電池セル。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の燃料電池セルを複数個積層し、前記締め付け部材により固定してなることを特徴とする燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−55042(P2013−55042A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166609(P2012−166609)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】