説明

燃料電池モジュール

【課題】発電室内部に生じる空気流れの不均一を解消し、発電室内部の空気流れ及び温度分布を均一にして効率よく発電することができる燃料電池モジュールを提供すること。
【解決手段】発電室12内に並列に設置された複数のカートリッジ20が燃料及び空気の供給を受けて発電する固体酸化物形の燃料電池モジュール10Aにおいて、カートリッジ20の周囲を囲むようにして、カードリッジ20内に設置されているセルチューブ21と略平行な方向に仕切壁50を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池の燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料の化学エネルギを直接電気エネルギに変換して発電を行う燃料電池が知られている。この燃料電池は、燃料側の電極である燃料極と、空気側の電極である空気極と、これらの間にありイオンのみを通す電解質とにより構成されており、電解質の種類によって様々な形式が開発されている。
このうち、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」と呼ぶ)は、電解質としてジルコニアセラミクッスなどのセラミックスが用いられ、天然ガス,石油,メタノール,石炭ガス化ガスなどを燃料として運転される燃料電池である。このSOFCは、イオン伝導率を高めるために作動温度が約900〜1000℃程度と高く、用途の広い高効率な高温型燃料電池として知られている
【0003】
図2に示す従来の燃料電池モジュール10は、中空の容器11と、容器11に形成された内部空間の発電室12に設置された複数のカートリッジ20と、容器11の壁面を形成する肉厚部13に収納設置されたリフォーマ30及び空気予熱器40とを具備して構成される。
容器11には、後述するリフォーマ30に燃料を供給する燃料入口14と、未燃の燃料を排出する燃料出口15と、空気予熱器40に空気を供給する空気入口16と、発電室12を通過して温度上昇した空気を排出する空気出口17とが設けられている。
【0004】
カートリッジ20は、略円筒形に形成されたセルチューブ(燃料電池セル筒)21を複数本集め、各セルチューブ21の上下両端を燃料供給ヘッダ22及び燃料排出ヘッダ25内に開口した状態で、燃料供給ヘッダ22、燃料排出ヘッダ25及び空気供給ヘッダ23により支持した構成とされる。なお、図中の符号24は、燃料供給ヘッダ22の内部のセルチューブ21中央側の面及び空気供給ヘッダ23の内部のセルチューブ21中央側の面に配設された断熱材である。
また、カートリッジ20は、空気供給ヘッダ23の下方に配設された燃料排出ヘッダ25及び空気分配ヘッダ26を備えている。
【0005】
このように構成された燃料電池モジュール10では、温度等の諸条件が満たされることにより、外部から燃料及び空気の供給を受けたセルチューブ21に形成された燃料電池セル(不図示)が発電室12内で発電する。
発電中の燃料電池モジュール10において、燃料は、燃料入口14からリフォーマ30に供給されて改質された後、燃料供給ヘッダ22により各セルチューブ21へ分配され、空気は、空気入口16から空気予熱器40に供給されて熱交換により予熱された後、空気分配ヘッダ26により各カートリッジ20へ分配される。
【0006】
上述した燃料電池モジュールの関連技術としては、燃料電池セル管と管板とを結合する部分のシール性を向上させたものが提案されている。(たとえば、特許文献1参照)
また、円筒縦縞型の固体電解質燃料電池セルと円筒型セラミックチューブとを用いてずれ方向に強い集合体とし、集合体の製作及び設置を容易にした固体電解質燃料電池セルの集合体が提案されている。(たとえば、特許文献2参照)
また、反応容器内に燃料室仕切板と燃料ガス室仕切板とを設けることにより、燃料室、反応室及び燃料ガス室を形成した固体電解質形燃料電池が開示されている。(たとえば、特許文献3参照)
【特許文献1】特開2006−196315号公報(図1及び図13参照)
【特許文献2】特開平5−299112号公報(図1及び図2参照)
【特許文献3】特開2001−43887号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来構造の燃料電池モジュールにおいては、次のような問題が指摘されている。
空気分配ヘッダ26から各カートリッジ20毎の空気供給ヘッダ23に分配された空気は、発電室12内でセルチューブ21の周囲を上昇し、発電室12の上部壁面に開口している空気出口開口18からリフォーマ30へ流出する。このとき、空気出口開口18が側壁上面に配置されているため、空気の流れは不均一になる。すなわち、図示の発電室12内を流れる空気は、図中に矢印19で示すように、流れが上昇するにつれて空気出口開口18側へ向きを変えるため、特に、発電室12の上部中央付近においては、周囲の空気出口開口18に向けて逃げるため十分に行き渡らなくなる。このため、発電室12の上部中央付近は空気不足になりやすく、このような空気不足を生じた領域は、十分な温度上昇が得られなくなる。従って、発電室12内の温度分布が不均一になり、高温で発電する燃料電池モジュールの発電効率に悪影響を及ぼすこととなる。
【0008】
このような背景から、燃料電池モジュールにおいては、発電室内部に生じる空気流れの不均一により空気不足となる領域が形成されることを防止し、発電室内部の空気流れ及び温度分布を均一にして効率よく発電することが望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発電室内部に生じる空気流れの不均一を解消し、発電室内部の空気流れ及び温度分布を均一にして効率よく発電することができる燃料電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料電池モジュールは、発電室内に並列に設置された複数のカートリッジが燃料及び空気の供給を受けて発電する固体酸化物形の燃料電池モジュールにおいて、前記カートリッジの周囲を囲むようにして、前記カートリッジ内に設置されているセルチューブと略平行な方向に仕切壁を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
このような燃料電池モジュールによれば、カートリッジの周囲を囲むようにして、カートリッジ内に設置されているセルチューブと略平行な方向に仕切壁を設けたので、発電室内に供給されてカートリッジの下方から上昇する空気流れを整流して上端部付近まで均一化することができる。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明の燃料電池モジュールによれば、発電室内に供給されてカートリッジの下方から上昇する空気流れの不均一を解消し、発電室内部の空気流れ及び温度分布を均一にして効率よく発電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る燃料電池モジュールの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す実施形態では、燃料電池モジュール10Aは、発電室12内に並列に設置された複数のカートリッジ20が燃料(天然ガス、石油、メタノール、石炭ガス化ガス等)及び空気の供給を受けて発電する固体酸化物形燃料電池(SOFC)であり、カートリッジ20の周囲を囲むようにして、カードリッジ20内に設置されているセルチューブ21と略平行な上下方向の仕切壁50を備えている。
【0013】
燃料電池モジュール10Aは、中空の容器11に形成された内部空間が発電室12とされ、この発電室12には、複数のカートリッジ20が軸線を上下方向にして設置されている。発電室12内に設置された各カートリッジ20は、互いに略平行となるように所定の隙間を設けて配置されている。
なお、図示の例では、発電室12内の紙面左右方向へ一列に配置した4つのカートリッジ20を設けてあるが、この数や配列に限定されることはなく、たとえば紙面の前後・左右両方向にそれぞれ複数列を配置してもよい。
【0014】
容器11には、発電に必要な燃料及び空気の供給・排出用配管を接続するため、燃料入口14、燃料出口15、空気入口16及び空気出口17が設けられている。また、容器11の側壁面を形成する肉厚部13には、リフォーマ30及び空気予熱器40が収納設置されている。
カートリッジ20は、略円筒形に形成されたセルチューブ21を複数本集めたもので、各セルチューブ21の上下両端部は燃料供給ヘッダ22及び空気供給ヘッダ23により支持されている。セルチューブ21は、セラミックから形成された略円筒状の管であり、長手方向における中央部には発電を行う燃料電池セル(不図示)が設けられている。すなわち、この燃料電池セルは、セルチューブ21が発電室12内に位置する部分にのみ配置されている。
【0015】
このように構成されたセルチューブ21は、上下両端部が燃料供給ヘッダ22及び燃料排出ヘッダ25内に開口した状態で、燃料供給ヘッダ22、燃料排出ヘッダ25及び空気供給ヘッダ23に支持されている。そして、セルチューブ21の端部を支持する燃料供給ヘッダ22の内部のセルチューブ21中央側の面及び空気供給ヘッダ23の内部のセルチューブ21中央側の面には、断熱材24が取り付けられている。
【0016】
燃料供給ヘッダ22及び空気供給ヘッダ23は、上述した燃料入口14及び空気入口16に連通する空間である。
一方の燃料供給ヘッダ22は、各セルチューブ21の上端部から改質された燃料を分配して供給する。セルチューブ21の上端部からチューブ内に供給された燃料は、チューブ内を流下して燃料電池セルで発電を行った後、発電に使用された排ガス及び未燃の燃料が空気供給ヘッダ23の下方に設けられた燃料排出ヘッダ25に排出されて集められる。こうして燃料排出ヘッダ25に集められた未燃の燃料は、燃料出口15から容器11の外部へ排出される。
【0017】
空気供給ヘッダ23は、空気予熱器40で加熱された高温の空気を発電室12内に供給する。空気予熱器40で熱交換により予熱された高温の空気は、空気分配ヘッダ26を介して各カートリッジ毎の空気供給ヘッダ23に分配された後、各空気供給ヘッダ23から発電室12内に流出して上昇する。このとき、高温の空気は、カートリッジ20間に形成された隙間及びセルチューブ21間の隙間を通って発電室12内を上昇し、発電室12の上部壁面に開口する空気出口開口18を通って外部へ流出する。
発電室12を通過することでさらに温度上昇した高温の空気は、空気出口開口18からリフォーマ30及び空気予熱器40の順に通過して流れた後、空気出口17から容器11の外部へ流出する。
【0018】
リフォーマ30は、燃料入口14から供給される天然ガス等の燃料を改質する装置である。リフォーマ30での改質反応は本来吸熱反応であるので、リフォーマ30は、発電室12から導入した高温の空気がリフォーマ30の外管を通過するように構成されており、これを熱源として燃料を加熱し、燃料が改質されるようになっている。なお、リフォーマ30による燃料の改質とは、たとえば高温空気により加熱された燃料ガスが水素及び一酸化炭素を生成することを意味している。
空気予熱器40は、リフォーマ30で燃料の改質に使用された高温の空気を導入し、空気入口16から供給される空気を予熱して温度上昇させる熱交換器である。
【0019】
この実施形態では、燃料電池モジュール10Aが、カートリッジ20の周囲を囲むようにして隙間Sに設けられ、カードリッジ20内に設置されているセルチューブ21と略平行な上下方向の仕切壁50を備えている。この仕切壁50は、燃料排出ヘッダ25の上面から燃料供給ヘッダ22の下面付近まで設けられている断熱材の壁であり、空気供給ヘッダ23から発電室12内に流出した空気は、カートリッジ20毎に分割されて独立した空間を上昇する。なお、仕切壁50の上端部と燃料供給ヘッダ22の下面との間には、発電後の空気を空気出口開口18へ導くための上端出口開口51が設けられている。
【0020】
次に、上述した構成の燃料電池モジュール10Aの作用(発電)について、燃料及び空気の流れを中心に説明する。
通常、SOFCの起動時においては、セルチューブ21内の燃料電池セルが高温空気により自己発電可能な温度(たとえば600℃程度)に上昇するまで起動準備運転が行われる。そして、燃料電池セルが高温空気により自己発電可能な温度まで加熱されると、燃料入口14から導入した燃料がリフォーマ30を介して燃料供給ヘッダ22へ供給され、燃料電池セルによる発電が開始される。燃料電池セルは発電するとともに発熱(自己発電発熱)し、燃料電池セルは、高温空気の熱と自己発熱とにより加熱される。
【0021】
燃料電池セルによる発電の開始後に燃料供給ヘッダ22に供給される燃料は、リフォーマ30において、発電室12から排出された高温ガスまたは高温空気の熱により、水素および一酸化炭素に改質される。こうして燃料供給ヘッダ22に供給された燃料は、燃料供給ヘッダ22からセルチューブ21の開口端を通じてセルチューブ21の内側に流入して燃料電池セルに供給される。
【0022】
また、空気供給ヘッダ23に供給される空気は、空気予熱器40において、発電室12から排出されてリフォーマ30で改質に利用した後の高温ガスまたは高温の排出空気の熱により加熱される。加熱された空気は空気供給ヘッダ23から発電室12に流入して、各カートリッジ20間に形成された隙間及びセルチューブ21間の隙間を上昇して燃料電池セルにおける発電に用いられる。
【0023】
このとき、上述した仕切壁50は、発電室12内を上昇する空気の流路をカートリッジ20毎に区画して整流する機能を有している。このため、発電室12内に供給されてカートリッジ20の下方から上昇する空気流れは、カートリッジ20毎に上端出口開口51まで略真っ直ぐに上昇する。このため、発電室12内における空気の流れは、仕切壁50により整流されて均一化したものとなる。
このように、仕切壁50により空気流路をカートリッジ20毎に区画した構成により、仕切壁50が空気の流れを略まっすぐ上昇させる整流板として機能するので、発電室12内に生じる空気流れの不均一が解消され、発電室12内の空気流量を均一化することで温度分布も均一化される。
【0024】
こうして発電が行われた後、空気は燃料供給ヘッダ22の下面付近まで上昇し、発電室12を形成する側壁面の空気出口開口18からリフォーマ30へ向けて流出する。
一方、セルチューブ21から燃料排出ヘッダ25に流入した燃料(以下、「排出燃料」と呼ぶ)の中には、燃料電池セルにおいて発電に用いられた排ガスとともに、発電に用いられなかった未燃の燃料が含まれている。そのため、排出燃料は燃料排出ヘッダ25から燃料出口15を通って容器11の外部へ排出され、たとえば空気予熱器40において空気を予熱した後の高温排出空気と混合されて燃焼される。
【0025】
以上説明したように、本発明の燃料電池モジュール10Aによれば、発電室12内に供給されてカートリッジ20の下方から上昇する空気流れの不均一が軽減または解消されるので、発電室12の内部における空気流れ及び温度分布を均一にして効率よく発電することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る燃料電池モジュールの他の実施形態を示す構成図である。
【図2】従来の燃料電池モジュールを示す構成図である。
【符号の説明】
【0027】
10,10A 燃料電池モジュール
11 容器
12 発電室(内部空間)
13 肉厚部
14 燃料入口
15 燃料出口
16 空気入口
17 空気出口
18 空気出口開口
20 カートリッジ
21 セルチューブ
22 燃料供給ヘッダ
23 空気供給ヘッダ
24 断熱材
25 燃料排出ヘッダ
26 空気分配ヘッダ
30 リフォーマ(改質器)
40 空気予熱器
50 仕切壁
51 上端部開口
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電室内に並列に設置された複数のカートリッジが燃料及び空気の供給を受けて発電する固体酸化物形の燃料電池モジュールにおいて、
前記カートリッジの周囲を囲むようにして、前記カードリッジ内に設置されているセルチューブと略平行な方向に仕切壁を設けたことを特徴とする燃料電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate