説明

燃料電池及びこれを用いた電子機器

【課題】高出力の発電を効率よく行うことが可能な小型の燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明に係る燃料電池200は、電解質膜14a及び該電解質膜の両面上に形成された一対の電極14b、14cを有する膜・電極接合体14と、該膜・電極接合体の表面に形成された流路11に沿って燃料流体及び酸化用流体の少なくとも何れかの流体を移送するための流体移送装置とを具え、該流体移送装置においては、流路11を挟んで両側に、音波を発生する振動板13と前記音波を反射する反射壁とが対向配備され、振動板13の振動によって流路11内に生じる音圧勾配により流体を移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路に沿って流体を移送する流体移送装置を具えた燃料電池、並びに燃料電池を用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電セラミックスなどの屈曲振動を利用した送風機が知られている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
図63は、従来の第1の例による屈曲振動を利用した送風機の構造を示している。図63を参照して、従来の第1の例による屈曲振動を利用した送風機1000の構造について説明する。該送風機1000においては、金属板からなる振動板101の一方の端部は、固定治具102に固定されている。振動板101の固定治具102付近の上面上及び下面上には、圧電セラミックス103及び104が配置されている。また、圧電セラミックス103及び104には交流電圧源105が接続されており、圧電セラミックス103及び104に交流電圧を印加することができる。このようにして、従来の第1の例による屈曲振動を利用した送風機1000が構成されている。
【0004】
上記送風機1000においては、振動板101の共振周波数に等しい周波数の交流電圧を圧電セラミックス103及び104に対してそれぞれ印加する。そして、一方の圧電セラミックス103が伸びるときは他方の圧電セラミックス104は縮むように制御することにより、交流電圧の極性に応じて、振動板101の他方の端部を大きく振動させることができる。これにより、振動板101をうちわ状に振動させて、空気の流れを作り出すことができる。
【0005】
図64は、従来の第2の例による屈曲振動を利用した送風機の構造及び動作原理を示している。図64を参照して、従来の第2の例による屈曲振動を利用した送風機1100の構造及び振動モードについて説明する。該送風機1100においては、平行に配置された一対の金属板からなる振動板111a及び111bの一方の端部は、それぞれ、固定治具112に固定されている。振動板111aの上面上には、隣り合うもの同士が逆極性となるように、圧電セラミックス113a〜113dが順次配置されている。また、振動板111bの下面上には、固定治具112からの距離が圧電セラミックス113a〜113dと等しい位置になると共に極性が一致するように、圧電セラミックス114a〜114dが配置されている。尚、図64では、各圧電セラミックス113a〜113d及び114a〜114dの極性の違いを“+”と“−”で示している。このようにして、従来の第2の例による屈曲振動を利用した送風機1100が構成されている。
【0006】
上記送風機1100においては、振動板111a及び111bの共振周波数に等しい周波数の交流電圧を圧電セラミックス113a〜113d及び114a〜114dに、それぞれ、同位相で印加することにより、圧電セラミックス113a、113c、114a、114cと圧電セラミックス113b、113d、114b、114dとを、それぞれ、同位相で伸縮させると共に、圧電セラミックス113a、113c、114a、114cと圧電セラミックス113b、113d、114b、114dとを互いに逆位相で伸縮させることができる。これにより、図64中のA、A’及びB、B’に示すように、交流電圧の極性の反転に応じて各振動板111a、111bには、定在波が発生するので、両振動板111a、111bの間の空隙において、上記定在波の腹に相当する各圧電セラミックス113a〜113d及び114a〜114dがそれぞれ対向する領域には、空気の放射圧が発生する。その結果、両振動板111a、111bの間の空隙に対して、周囲の開放空間から空気を流入させると共に、振動板111a及び111bの自由端である他方の端部より空気を流出させることにより、空気の流れを作り出すことができる。
【0007】
また、上記した従来の第1の例及び第2の例による送風機1000及び1100は、小型の電子機器内部のLSIやCPUなどの冷却用途以外に、小型の電子機器用の燃料電池への空気供給器としても期待されている(例えば特許文献3参照)。
【0008】
図65は、従来の小型の電子機器用の燃料電池の構造を示している。図65を参照して、従来の小型の電子機器用の燃料電池1200の構造について説明する。該燃料電池1200においては、電解質膜204aと、電解質膜204aの両面上にそれぞれ形成されたメッシュ状や多孔質状のカソード204b及びアノード204cとを具えた膜・電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)204が配備されている。
【0009】
カソード204bの上面には、天板205が配置されており、天板205とカソード204bとの間には、吸入口201aと排出口201bとを有する第1の流路201が形成されている。アノード204cの下面には、底板207が配置されており、底板207とアノード204cとの間には、吸入口206aと排出口206bとを有する第2の流路206が形成されている。
【0010】
上記燃料電池1200においては、第1の流路201の吸入口201aから排出口201bに向かって空気や酸素などの酸化用流体を供給すると共に、第2の流路206の吸入口206aから排出口206bに向かって水素やメタノールなどの燃料流体を供給する。これにより、MEA204のカソード204b側には酸化用流体が、アノード204c側には燃料流体がそれぞれ供給され、MEA204において電気化学的に反応することにより、カソード204b及びアノード204cから電気を外部に取り出すことができる。
【0011】
ここで、第1の流路201の吸入口201a付近や第2の流路206の吸入口206a付近などに従来の第1の例及び第2の例による送風機1000及び1100をそれぞれ配置することにより、それぞれ、燃料流体及び酸化用流体の供給能力を高めることができるので、燃料電池の高出力化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−186699号公報
【特許文献2】特開2000−120600号公報
【特許文献3】特開2004−214128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記した従来の第1の例及び第2の例による送風機1000及び1100では、何れも、大量の燃料流体及び酸化用流体を供給するためには振動板101及び111a、111bの振幅を大きくする必要があるので、装置が大きくなると共に、エネルギーロスが増加し、効率よく空気を供給することができないという問題点があった。また、上記した従来の小型の電子機器用の燃料電池1200に上記した従来の第1の例及び第2の例による送風機1000及び1100を用いた場合には、燃料流体及び酸化用流体の供給効率が低く、出力を十分大きくすることができないという問題点があった。更に、燃料流体及び酸化用流体の供給量が少なくなると、燃料流体及び酸化用流体が反応することにより生成されるCO及びHOがMEA204の表面に溜まりやすくなり、これにより、電解化学反応が阻害されるので、高出力が得られにくいという問題点があった。
【0014】
本発明の目的は、高出力の発電を効率よく行うことが可能な小型の燃料電池を提供することである。更に本発明の他の目的は、電力効率若しくは冷却性能の良好な電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る燃料電池に用いる流体移送装置においては、流体を移送すべき流路を挟んで両側に、音波を発生する振動板と前記音波を反射する反射壁とが対向配備され、前記振動板の振動によって前記流路内に生じる音圧勾配により前記流体を移送する。尚、音波とは、振動によって起こる媒体中を伝搬する波動のことである。
【0016】
音響流は、音場によって作り出される定常的な流体の流れであって、振動板と反射壁とを対向配備して、振動板に振動を加えて超音波域の定在波を発生させた場合には、振動板と反射壁の間に気柱共振が発生し、これに伴って、振動板と反射壁との間に渦状の音響流が生じる。
【0017】
音響流の発生原理については、幾つかの論文(例えば、“音響流と放射圧”電子情報通信学会TECHNICAL REPORT OF IEICE,US96-93,EA96-97(1997-01)、“音響流の発生機構について”電子情報通信学会論文誌A Vol.J80-A No.10 pp.1614-1620 1997年10月)で報告されているが、音響流を安定的に発生させて該音響流により流体を移送する技術については、未だ知られていない。
【0018】
上記流体移送装置においては、振動板で発生した音波が振動板と反射板との間の流路内で多重反射することにより、流路内の音圧が大きくなる。これにより、流路内には音響流が生じ、流路内の流体を移動させる力が発生する。この結果、流路に沿って流体が移送されることになる。尚、本発明において、“音響流”とは、音場の音圧勾配により生じる定常的な流体の流れを意味する概念である。
【0019】
本発明に係る燃料電池に用いる流体移送装置においては、流路内に音圧勾配を形成することにより、流路の入口から出口に向かう一様な音響流を発生させて、流体を移送することが出来るので、流路に接続すべき外部機器としての流体供給機構の装備は不要であり、流路を振動板と反射壁から構成して、単に振動板に、圧電素子等の振動付与部を設ければよい。従って、本発明に係る流体移送装置は、小型で、構造が単純であり、然も消費電力が小さく、小型電子機器に搭載すべき燃料電池の流体移送装置として好適である。また、燃料電池以外にも、電子回路、ソーラーパネルあるいはプロジェクションシステムのような装置の冷却手段、携帯用虫除け装置、加湿器あるいは吸入器のような装置の送風手段、センサ類に付着する物質を除去して感度を回復させるリフレッシュ手段、マイクロマシンの推進手段やラボオンチップの送液手段としても適用可能である。
【0020】
又、本発明に係る燃料電池に用いる流体移送装置では、音響流により流体を一定方向に移送することができるので、振動板の屈曲振動を用いる送風機などと異なり、振動板の振幅を大きくする必要がない。これにより、装置構成を容易に小型化することができると共に、効率よく流体を移送することができる。また、流路の容積が小さい場合であっても、大流量の流体を効率よく移送することができる。その結果、流体を大流量で効率よく移送することが可能な小型の流体移送装置を得ることができる。尚、本発明において用いられる音波としては、約20kHz〜約200kHzの周波数を有するいわゆる超音波が好ましい。この場合、音波の波長が数cm以下と小さいので、装置構成を小さくすることができると共に、効率よく音響流を発生させることができるので、低エネルギーで流体を移送することができる。又、音波の周波数が人体の可聴領域を超えるため、人体に対する音波の影響を抑制することが出来る。
【0021】
本発明に係る燃料電池に用いる流体移送装置において、流路内の流体を流路に沿って所定の一方向へ確実に移送するための音圧勾配発生機構の具体的な構成としては、次の5つの形態が採用される。
【0022】
第1の形態においては、音波を発生する振動板と前記音波を反射する反射壁とが、互いの間隔が前記流路の入口側より出口側の方が大きくなるように配置されている。該形態によれば、流路は、入口側より出口側の方が大きくなるように構成されているので、流路内の流体が入口側に向かって移動するよりも出口側に向かって移動する方が、圧力損失が小さくなる。その結果、流体は、流路の大きい出口側から排出されると共に、流路の小さい入口側から流路内に流体が吸入される。
【0023】
上記第1の形態を有する流体移送装置において、好ましくは、振動板は、反射板との間隔が入口側から出口側に向かって漸次大きくなるように配置されている。このように構成すれば、容易に流路の入口側より出口側の方が大きくなるように構成することができると共に、流路に沿って徐々に断面形状を変化させることができるので、圧力損失を小さくすることができるので、さらに効率よく流体を移送することができる。
【0024】
又、該流体移送装置において、好ましくは、流路内には音波の定在波が生じている。このように構成すれば、定在波の発生により流路内の音圧をさらに大きくすることができるので、さらに効率よく流路内の流体を移送することができる。
【0025】
又、該流体移送装置においては、流路内の流路の小さい入口側に定在波を発生させることが、より好ましい。このように構成すれば、流路の小さい入口側の音圧を流路の大きい出口側の音圧より大きくすることができるので、流路内には、入口側から出口に向かって音圧が小さくなる音圧勾配が生じる。その結果、さらに容易に、流路内の流体を入口側から出口に向かって移送することができる。
【0026】
又、該流体移送装置において、好ましくは、振動板は、振動板の共振周波数又はその近傍の周波数で励振されている。このように構成すれば、振動板は共振によりその振幅を大きくすることができるので、流路内の音圧をさらに大きくすることができる。
【0027】
好ましくは、流路内の気柱の音場共振周波数と振動板の共振周波数を同一とすることにより、効率よく空気流を発生できる。
又、該流体移送装置において、好ましくは、振動板の表面上に振動付与部が設けられている。このように構成すれば、振動板を容易に振動させて音波を発生させることができる。
【0028】
本発明の燃料電池に用いる流体移送装置の第2の形態において、前記振動板は、前記流路の入口側で小さな曲げこわさ及び/又は質量を有すると共に、前記流路の出口側で大きな曲げこわさ及び/又は質量を有している。尚、振動板の曲げこわさは、特定断面における断面二次モーメントIと弾性係数Eの積で定義される。
【0029】
具体的には、振動板は、流路の入口側で小さな断面二次モーメントを有すると共に、流路の出口側で大きな断面二次モーメントを有している。或いは、振動板は、流路の入口側で小さな弾性係数を有すると共に、流路の出口側で大きな弾性係数を有している。
【0030】
上記第2の形態を有する流体移送装置においては、振動板に超音波域の定在波が発生し、これによって、振動板と反射壁の間に気柱共振が発生する。ここで、振動板は、流路の入口側では曲げこわさ及び/又は質量が小さく、出口側では曲げこわさ及び/又は質量が大きいので、流路の入口側で大きな振幅、流路の出口側で小さな振幅で振動し、これによって、流路内の音圧は、入口側で高く、出口側で低くなる。この結果、流路の入口から出口に向かって低下する音圧勾配が形成され、これによって流路内には入口から出口に向かって音響流が発生し、流路内の流体は入口から出口に向かって流れることになる。
【0031】
本発明の燃料電池に用いる流体移送装置の第3の形態において、前記振動板は、前記流路の一方の端部側では、反射壁よりも外側へ突出して、反射壁と対向しない領域を有している。
【0032】
該第3の形態を有する流体移送装置においては、振動板に超音波域の定在波が発生し、これによって、振動板と反射壁の間に気柱共振が発生する。ここで、流路の出口側では、振動板が反射壁よりも外側へ突出して、反射壁と対向しない領域を有しているので、この領域によって形成される音場の音圧は、振動板の反射壁と対向する領域によって形成される音場の音圧よりも低くなる。この結果、流路の入口から出口に向かって低下する音圧勾配が形成され、これによって流路内には入口から出口に向かって音響流が発生し、流路内の流体は入口から出口に向かって流れることになる。
【0033】
本発明の燃料電池に用いる流体移送装置の第4の形態において、前記反射壁は、前記流路の入口側で大きな音響インピーダンスを有すると共に、前記流路の出口側で小さな音響インピーダンスを有している。
【0034】
該第4の形態を有する流体移送装置においては、前記反射壁が、前記流路の入口側で大きな音響インピーダンスを有すると共に、前記流路の出口側で小さな音響インピーダンスを有しているので、流路の入口側で大きな音圧、流路の出口側で小さな音圧が発生する。この結果、流路の入口から出口に向かって低下する音圧勾配が形成され、これによって流路内には入口から出口に向かって音響流が発生し、流路内の流体は入口から出口に向かって流れることになる。
【0035】
本発明の燃料電池に用いる流体移送装置の第5の形態において、前記反射壁の振動板との対向面は、前記流路の入口側で吸音率が低く、前記流路の出口側で吸音率が高くなる表面状態に形成されている。
【0036】
該第5の形態を有する流体移送装置においては、前記反射壁の振動板との対向面が、前記流路の入口側で吸音率が低く、前記流路の出口側で吸音率が高くなる表面状態に形成されているので、流路の入口側で反射波が強くなり、流路の出口側で反射波が弱くなる。この結果、流路の入口から出口に向かって低下する音圧勾配が形成され、これによって流路内には入口から出口に向かって音響流が発生し、流路内の流体は入口から出口に向かって流れることになる。
【0037】
本発明に係る燃料電池においては、電解質膜の両側にアノード及びカソードを配備して膜・電極接合体(MEA)が構成されており、MEAの表面に燃料流体及び酸化用流体の少なくとも何れかを移送する流体移送装置が配備されている。
【0038】
該燃料電池においては、MEAへの燃料流体及び酸化用流体の少なくとも何れかの移送に前記流体移送装置を用いているので、燃料電池を容易に小型化することができると共に、効率よく燃料流体及び酸化用流体を移送することができる。また、流路の容積が小さい場合であっても、大流量の燃料流体及び酸化用流体を効率よく移送することができる。その結果、高出力の発電を効率よく行うことが可能な小型の燃料電池を得ることができる。
【0039】
本発明に係る燃料電池において、好ましくは、振動板と反射壁とは、互いに対向する方向がMEAの表面に平行になるようにMEA上に配置されている。このように構成すれば、流路内の音圧は、振動板と反射壁との間隔と、振動板又は反射壁の面積とによって制御することができるので、MEAの表面に垂直な方向の流路の大きさ、即ち、MEAの膜厚方向の流路の大きさを自由に変えることができる。これにより、MEAの膜厚方向の流路の大きさを小さくすることができるので、流体移送装置の厚みを小さくすることができ、その結果、燃料電池をさらに小型化することができる。
【0040】
又、本発明に係る燃料電池において、好ましくは、振動板は、MEAに対向して配置されており、反射壁としてMEAの表面壁が用いられる。このように構成すれば、振動板とMEAとに挟まれた空間を流路として利用することができるので、燃料電池の構成をより簡単なものとすることができると共に、容易に小型化することができる。さらに、MEAの表面には音波が作用するので、燃料流体及び酸化用流体の電気化学反応により生成したCO及びHOをMEA表面に付着しにくくすることができる。これにより、燃料電池の出力低下を抑制することができる。
【0041】
本発明に係る電子機器は、電子回路部と、該電子回路部の表面に沿って形成された流路に沿って流体を移動させる流体移送装置とを具え、該流体移送装置として、前記本発明の流体移送装置が採用されている。
【0042】
又、本発明に係る他の電子機器は、電解質膜の両側にアノード及びカソードを配備して膜・電極接合体が構成されている燃料電池を具え、該燃料電池として、上記本発明の流体移送装置を具えた燃料電池が採用されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態による流体移送装置の平面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態による流体移送装置の側面図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態による流体移送装置の振動板が流体の移送方向に共振している状態を説明する側面図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態による第1構成例の燃料電池の一部破断平面図である。
【図5】図5は、該燃料電池を図4の矢印A方向から見た断面図である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態による第2構成例の燃料電池の断面図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態による流体移送装置の変形例を示す側面図である。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態による流体移送装置の他の変形例を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の第1実施形態による流体移送装置の更に他の変形例を示す一部破断正面図である。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態による流体移送装置を具えた第1構成例の燃料電池の斜視図である。
【図11】図11は、該燃料電池の流路と平行な断面図である。
【図12】図12は、第2構成例の燃料電池の断面図である。
【図13】図13は、第3構成例の燃料電池における種々の振動板の平面図である。
【図14】図14は、第4構成例の燃料電池における流体移送装置を示す断面図である。
【図15】図15は、第5構成例の燃料電池における流体移送装置を示す斜視図である。
【図16】図16は、該流体移送装置の流路と平行な断面図である。
【図17】図17は、第6構成例の燃料電池における流体移送装置を示す断面図である。
【図18】図18は、第7構成例の燃料電池における流体移送装置を示す平面図である。
【図19】図19は、第5構成例の燃料電池における流体移送装置に含まれる振動板の変位量の分布と、従来の振動板の変位量の分布を示すグラフである。
【図20】図20は、第1構成例の燃料電池における流体移送装置の変形例を示す斜視図である。
【図21】図21は、本発明の第3実施形態による流体移送装置を具えた第1構成例の燃料電池の斜視図である。
【図22】図22は、該流体移送装置の流路と平行な断面図である。
【図23】図23は、第2構成例の燃料電池における流体移送装置を示す斜視図である。
【図24】図24は、該流体移送装置の流路と直交する断面図である。
【図25】図25は、第3構成例の燃料電池における流体移送装置の分解斜視図である。
【図26】図26は、該流体移送装置の流路と直交する断面図である。
【図27】図27は、第4構成例の燃料電池における流体移送装置を示す斜視図である。
【図28】図28は、該流体移送装置の流路と平行な断面図である。
【図29】図29は、第1構成例の燃料電池における流体移送装置の変形例を示す斜視図である。
【図30】図30は、本発明の第4実施形態による流体移送装置を具えた燃料電池の断面図である。
【図31】図31は、本発明の第5実施形態による流体移送装置を具えた燃料電池の断面図である。
【図32】図32は、振動板の支持構造を示す分解斜視図である。
【図33】図33は、振動板の支持構造を示す断面図である。
【図34】図34は、振動板の支持位置と振動状態の関係を説明する図である。
【図35】図35は、振動板の他の支持構造を示す断面図である。
【図36】図36は、該支持構造における振動板の平面図である。
【図37】図37は、振動板の他の支持構造を示す断面図である。
【図38】図38は、該支持構造における振動板の平面図である。
【図39】図39は、振動板の他の支持構造を示す断面図である。
【図40】図40は、該支持構造における振動板の平面図である。
【図41】図41は、振動板の他の支持構造を示す断面図である。
【図42】図42は、該支持構造における振動板の平面図である。
【図43】図43は、振動板の更に他の支持構造を示す断面図である。
【図44】図44は、本発明に係る燃料電池を内蔵した携帯電話機の閉じ状態を示す斜視図である。
【図45】図45は、該携帯電話機の開き状態を示す斜視図である。
【図46】図46は、本発明に係る燃料電池を筐体の外側に取り付けた携帯電話機を示す斜視図である。
【図47】図47は、本発明に係る他の燃料電池を筐体の外側に取り付けた携帯電話機を示す斜視図である。
【図48】図48は、該携帯電話機を異なる方向から見た斜視図である。
【図49】図49は、携帯電話機に取り付けるべき燃料電池の分解斜視図である。
【図50】図50は、該燃料電池を他の方向から見た同上の分解斜視図である。
【図51】図51は、該燃料電池内の空気の流れを示す断面図である。
【図52】図52は、該燃料電池を構成する排水部の斜視図である。
【図53】図53は、該燃料電池の他の構成における空気の流れを示す断面図である。
【図54】図54は、該他の構成における排水部の斜視図である。
【図55】図55は、振動板の支持部の拡大斜視図である。
【図56】図56は、本発明に係る燃料電池を内蔵した他の携帯電話機の斜視図である。
【図57】図57は、該携帯電話機を背面側から見た斜視図である。
【図58】図58は、本発明に係る燃料電池を内蔵した更に他の携帯電話機の斜視図である。
【図59】図59は、該携帯電話機を背面側から見た斜視図である。
【図60】図60は、本発明に係る燃料電池を具えた携帯電話機の構成を示すブロック図である。
【図61】図61は、該携帯電話機における振動周波数の制御を表わすフローチャートである。
【図62】図62は、該携帯電話機における振動板の駆動ON/OFF制御を表わすフローチャートである。
【図63】図63は、従来の第1の例による屈曲振動を利用した送風機の構造を説明する断面図である。
【図64】図64は、従来の第2の例による屈曲振動を利用した送風機の構造及び動作原理を説明する断面図である。
【図65】図65は、従来の小型の電子機器用の燃料電池の構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(第1実施形態)
流体移送装置
図1及び図2を参照して、以下に本発明の燃料電池に用いる第1実施形態による流体移送装置100の構造について説明する。
【0045】
第1実施形態による流体移送装置100では、図1及び図2に示すように、流路1を挟んで上下両側に、アクリル板から構成される平板状の反射板2と、Al板(A5052)から構成される平板状の振動板3a上にPZT素子3b(富士セラミックス社製“C203”)を配置してなる振動体3とが、互いに対向するように配置されている。ここで、PZT素子3bは、本発明の“振動付与部”の一例である。
【0046】
反射板2及び振動板3aは、図1及び図2に示すように、それぞれ、約50mmの長さL1、L2、約30mmの幅W1、W2、及び、約1mmの厚さt1、t2を有している。また、振動板3aは、後述する振動体が縞モードで振動する場合に節となる振動板3aの端辺において図示しない支持部材で支持されることにより、振動板3aは、長さL1方向に反射板2との間隔(以下、流路1の高さという)が漸次大きくなるように配置されており、吸入口1a側で約2mmの間隔d1、排出口1b側で約4mmの間隔d2になるように約2°の角度θだけ傾斜して配置されている。ここで、吸入口1a及び排出口1bは、それぞれ、本発明の“入口”及び“出口”の一例である。
【0047】
また、振動体3において、PZT素子3bは、約3mmの長さL3、約30mmの幅W2及び約1mmの厚さt3の短冊状の形状を有しており、振動板3a上に振動板3aの排出口1b側の端部から約7mmの距離L4を隔てて形成されている。このようにして、本発明の第1実施形態による流体移送装置100が構成されている。
【0048】
第1実施形態による流体移送装置100では、まず、交流電源(図示せず)を用いてPZT素子3bに約70kHzの交流電圧を印加することにより、PZT素子3bを長さL3方向に伸縮させ、振動板3aを励振することができる。これにより、振動板3aより音波が発生すると共に、この音波は、反射板2と振動板3aとの間の流路1内で多重反射するので、流路1内の音圧が大きくなる。その結果、流路1内には音響流が生じ、流路1内の空気を移動させる力が発生する。尚、空気は、本発明の“流体”の一例である。ここで、流路1は、吸入口1a側より排出口1b側の方が高さが大きくなるように構成されているので、流路1内の空気が吸入口1a側に向かって移動するよりも排出口1b側に向かって移動する方が、圧力損失が小さくなる。これにより、空気は、流路1の高さが大きい排出口1b側から排出されると共に、流路1の高さが小さい吸入口1aから流路1内に空気が供給される。
【0049】
また、振動板3aより発生した音波は、反射板2と振動板3aとの間の流路1内で多重反射するので、流路1の高さと音波の波長とが共振条件を満たす場合には、音波は共振することができる。ここで、振動板3aを反射板2に対して水平に配置し、さらに、流路1の高さを変える以外は上記の流体移送装置100と同様の条件で、流路1内の音波が共振する反射板2と振動板3aとの間隔を調べた。その結果、反射板2と振動板3aとの間隔が約3mmの場合に音波が共振することがわかった。従って、本発明の第1実施形態のように、流路1の高さが長さL1方向に大きくなる条件では、流路1の高さが約3mmである流路1の吸入口1a側において音波が共振していると考えられる。この場合、上記した流路1の吸入口1a側の領域には、音波の定在波が発生しており、これにより、流路1の吸入口1a側の音圧はさらに大きくなる。その結果、さらに効率よく空気を流路1に沿って、吸入口1aから排出口1bに向かって移送することができる。
【0050】
さらに、第1実施形態では、PZT素子3bに印加する交流電圧の周波数を変えることにより、様々な振動モードで振動体を励振することができる。ここで、約20kHz〜約200kHzの周波数で振動板3aを励振した場合の共振周波数と振動モードとの関係を調べた。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示すように、振動板3aは、約20kHz〜約200kHzの範囲において、複数の共振周波数及び共振モードで共振することができる。このように、振動板3aを共振周波数で励振した場合には、振動板3aの振幅をさらに大きくすることができるので、流路1内の音圧をさらに大きくすることができる。これにより、さらに効率よく空気を流路1に沿って吸入口1aから排出口1bに向かって移送することができる。尚、振動板3aの振幅は、共振周波数に近づくほど大きくなるが、共振周波数に対して約500Hzの範囲の周波数で振動板3aを励振することにより、振動板3aの振幅が顕著に増加し、流路1内の音圧を大きくすることができるので、効率よく空気を移送することができる。
【0053】
次に、図3を用いて、第1実施形態による流体移送装置100の振動板3aが流体の移送方向である長さL1方向に共振している状態について説明する。
【0054】
第1実施形態による流体移送装置100の振動体は、表1に示すように複数の共振周波数で共振することができるが、いくつかの共振周波数(約70kHz、約117kHz、約134kHz)では、図3の破線で示すように、流路1の高さが大きくなる方向に共振する振動モード(縞モード)で共振することができる。この場合、振動板3aには、図1を参照して、定在波の腹と節とが、それぞれ、幅W2方向に伸びると共に、長さL2方向に交互に配列した縞状に形成される。これにより、定在波の腹の位置では、振動板3aの振幅は大きくなるので、流路1内の音圧は大きくなり、流路1内には、振動板3aに生じる定在波に対応するように音圧の大きい領域(A)と音圧の小さい領域(B)とが交互に配列すると共に、全体として、流路1の高さが大きくなる方向に音圧が小さくなる音圧分布が生じる。この場合、図3に示すように、流路1の側面である流路1の高さが大きくなる方向に平行な側の反射板2と振動板3aとの端部には、音圧の大きい領域(A)と音圧の小さい領域(B)とが交互に配列していることにより流路1に向かって流体を吸引する力が生じる。その結果、流路1に対して、吸入口1a以外にこの側面からも空気が吸引され、排出口1bに向かって空気を移送することができる。これにより、さらに大流量の空気の移送を行うことができる。
【0055】
また、第1実施形態では、上記のように、振動板3aは、反射板2との間隔が吸入口1a側から排出口1b側に向かって漸次大きくなるように配置されているので、容易に流路1の吸入口1a側より排出口1b側の方が大きくなるように構成することができると共に、流路1に沿って徐々に断面形状を変化させることができるので、圧力損失を小さくすることができるので、さらに効率よく空気を移送することができる。
【0056】
尚、第1実施形態による流体移送装置100では、振動板3aと反射板2との傾斜角度θは、約2°に設定されていたが、この角度θは反射板2及び振動板3aの形状や励振周波数に応じて適宜変更することができ、約0.1°〜約5°の範囲が好ましい。また、振動板3aと反射板2との間隔は、約0.1mm〜約5mmの範囲とするのが好ましい。
【0057】
尚、第1実施形態による流体移送装置100では、流路1の高さが吸入口1a側から排出口1b側に向かって漸次大きくなるように反射板2と振動板3aとが傾斜して配置されているので、流路1内を音波は、反射板2と振動板3aとの間を反射しながら、吸入口1a側から排出口1b側に向かって移動する。これにより、さらに効率よく音響流を活用できるので、さらに効率よく空気を移送することができる。
【0058】
また、第1実施形態による流体移送装置100では、振動板3aは、縞モードで振動する場合に節となる振動板3aの端辺において支持されているので、振動板3aの振動が減衰しにくい。これにより、効率よく空気を移送することができる。
【0059】
燃料電池の第1構成例
図4は、第1実施形態による流体移送装置を具えた本発明の燃料電池における第1構成例の構造を示している。図5は、図4の燃料電池を矢印A方向から見た断面図である。図4及び図5を参照して、以下に本発明の第1構成例の燃料電池200の構造について説明する。
【0060】
第1構成例の燃料電池200では、ナフィオンなどからなる電解質膜14aの上面上及び下面上に、それぞれ、メッシュ状や多孔質状の金属材料などからなるカソード14b及びアノード14cが形成されたMEA14を有している。ここで、燃料電池200は複数のMEA14を積層したスタックタイプものに限らず、平面的に配置した平面モジュールタイプものも好適である。そして、カソード14bの上面上には、第1の流路11を形成するように、ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂などの樹脂材料などからなる反射板12と振動板13とが、互いに対向する方向がMEA14の上面に平行になるように配置されていると共に、カソード14b、反射板12及び振動板13を覆うように、ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂などの樹脂材料などからなる天板15が配置されている。尚、振動板13は、第1実施形態による流体移送装置100で用いた振動体と同様の構成を有しているが、図4では、PZT素子については図示を省略している。また、反射板12と振動板13とは、吸入口11a側でd1、排出口11b側でd2の間隔になるように角度θだけ傾斜して配置されている。
【0061】
MEA14の下面には、吸入口16aと排出口16bとを有する第2の流路16を形成するように、ABS樹脂またはポリカーボネート樹脂などの樹脂材料などからなる底板17が配置されており、図示しない支持部材によりMEA14及び底板17はそれぞれ固定されている。このようにして、本発明の第1実施形態による第1構成例の燃料電池200が構成されている。
【0062】
第1構成例の燃料電池200では、MEA14のカソード側に配置されている反射板12及び振動板13により、第1実施形態による流体移送装置110を構成している。これにより、空気や酸素などの酸化用流体を第1の流路11に沿って、吸入口11aから吸引すると共に排出口11bに向かって排出することができる。
【0063】
ここで、第1の流路11に酸化用流体を供給すると共に、第2の流路16に沿って、図示しない構成により水素流体やメタノールなどの燃料流体を吸入口16aから供給することにより、MEA14において酸化用流体と燃料流体とを電気化学的に反応させることができるので、カソード14b及びアノード14cから電気を外部に取り出すことができる。
【0064】
第1構成例の燃料電池では、上記のように、第1実施形態の流体移送装置110を有しているので、装置構成を容易に小型化することができると共に、効率よく酸化用流体を移送することができる。また、流路11の容積が小さい場合であっても、大流量の酸化用流体を効率よく移送することができる。その結果、高出力の発電を効率よく行うことが可能な小型の燃料電池を得ることができる。
【0065】
また、第1構成例の燃料電池では、上記のように、流体移送装置110の振動板13と反射板12とは、互いに対向する方向がMEA14の上面に平行になるようにMEA14上に配置されている。このように構成すれば、流路内の音圧は振動板13と反射板12との間隔で制御することができるので、MEA14上の上面に垂直な方向の流路の大きさ、即ち、MEA14の膜厚方向の第1の流路11の高さを自由に変えることができる。これにより、MEA14の膜厚方向の流路の高さを小さくすることができるので、流体移送装置110の厚みを小さくすることができ、その結果、燃料電池200を小型化することができる。
【0066】
燃料電池の第2構成例
図6は、第1実施形態による流体移送装置を具えた本発明の燃料電池における第2構成例の構造を説明している。図6を参照して、本発明の第2構成例の燃料電池300の構造について説明する。尚、図6では、図2及び図5と同一の部分には同一番号を付して説明を省略する。
【0067】
本発明の第2構成例の燃料電池300では、MEA14の上部には、流路21を形成するように、振動体がMEA14に対して角度θだけ傾斜して対向するように配置されており、振動体とMEA14との間隔は、吸入口21a側でd1、排出口21b側でd2である。尚、振動体は、第1実施形態による流体移送装置100で用いた振動体と同様の構成を有しているが、図6では、PZT素子については図示を省略している。
【0068】
第2構成例の燃料電池300では、振動体3を励振すると、振動板3aから発生した音波は、MEA14により反射されるので、振動体3と、反射板の代わりに用いるMEA14とにより、流体移送装置120を構成することができる。これにより、流路21内を振動体3とMEA14の間隔が大きくなる方向に酸化用流体を移送することができる。
【0069】
ここで、第1構成例の燃料電池200と同様に、MEA14の下面側に第2の流路16より燃料流体を供給することにより、MEA14において酸化用流体と燃料流体とを電気化学的に反応させることができるので、カソード14b及びアノード14cから電力を外部に取り出すことができる。
【0070】
第2構成例では、MEA14を反射板の代わりに用いて、振動体とMEA14とで挟まれた空間(流路21)を流路として利用することができるので、燃料電池300の構成をより簡単なものとすることができると共に、容易に小型化することができる。
【0071】
また、第2構成例では、MEA14の表面には、音波が作用するので、上記した電気化学反応により生成したCO及びHOをMEA14の表面に付着しにくくすることができる。これにより、燃料電池300の出力低下を抑制することができる。
【0072】
尚、上記第1実施形態では、振動体の励振は、非圧電材料である振動板3aに取り付けた振動付与部であるPZT素子3bの励振により行われていたが、本発明はこれに限らず、PZT、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、四ホウ酸リチウム(Li)などの圧電セラミックスや水晶などの圧電材料からなる弾性板を直接振動させてもよい。この場合、圧電材料の分極方向に電圧を印加することにより、圧電材料からなる弾性板を直接励振することができる。あるいは、高周波フィルタなどに用いられるSAWデバイスと同様に、圧電材料からなる弾性板の表面に一対の櫛型電極を形成するなど圧電材料の表面に電極を形成することにより圧電材料の表面に表面弾性波を発生させてもよい。
【0073】
また、上記第1実施形態による流体移送装置では、反射板2と振動板3aは、ともに平板状であって振動板3aは、反射板2に対して角度θだけ傾斜して配置されていたが、本発明はこれに限らず、例えば、反射板2及び振動板3aの少なくとも何れかをステップ状に形成して、配置させてもよい。
【0074】
図7は、第1実施形態による流体移送装置の変形例の構造を示している。図7を参照して、以下に第1実施形態による流体移送装置の変形例の構造について説明する。尚、図7では、図2と同一の部分には同一番号を付して説明を省略する。また、振動体3は、第1実施形態による流体移送装置100で用いた振動体と同様の構成を有しているが、図7では、PZT素子については図示を省略している。
【0075】
図7に示す流体移送装置400では、反射板32は、ステップ状に形成されていると共に、ステップを構成する各面A、Bは、それぞれ、振動体に平行に対向してd1及びd2の間隔を有するように配置されている。これにより、反射板32と振動体3とに挟まれるように流路31が形成されており、流路31は、吸入口31a側でd1、排出口31b側でd2の高さに形成されている。
【0076】
この流体移送装置400においても、振動体3の励振により流路31内には、第1実施形態の流体移送装置と同様に音響流が生じると共に、吸入口31a側よりも排出口31b側の方が圧力損失が小さくなるので、流路31内を吸入口31aから排出口31bに向かう方向に流体を供給することができる。
【0077】
上記説明では、反射板32がステップ状に成形されていたが、本発明はこれに限らず、図8に示す様に、振動板3aがステップ状に形成されていてもよい。又、流路の入口側よりも出口側の方が互いの間隔が大きくなるように配置されていれば、振動板及び反射板がともにステップ状に形成されていてもよい。また、上記ステップの段数も複数段であってもよい。
【0078】
また、上記第1実施形態では、振動板は、流路1の高さが大きくなる方向に共振する振動モード(縞モード)で振動していたが、本発明はこれに限らず、流路1の一方から他方に向かって音圧勾配が生じさえすれば、振動板は、どのようなモードで振動していてもよい。
【0079】
また、上記第1実施形態では、流路1に沿って空気を移送したが、本発明はこれに限らず、他の気体または液体の移送を行うことができる。また、流体中に粉末などの固形物を分散させることにより、その固形物を移送することもできる。
【0080】
また、上記燃料電池の第1構成例及び第2構成例では、流体移送装置110及び120は、MEA14のカソード14b側に酸化用流体を供給するのに用いられているが、本発明はこれに限らず、アノード14c側に燃料流体を供給するのに用いてもよく、MEA14の両側にそれぞれの流体を供給するのに用いてもよい。
【0081】
また、上記燃料電池の第1構成例及び第2構成例では、1つのMEA14に対して1つの流体移送装置110または120が配置されていたが、本発明はこれに限らず、図9に示す様に、1つのMEA14に対して複数の流体移送装置を配置してもよい。複数の流路31を形成するように複数の流体移送装置を並列に配置した場合には、MEA14の上面または下面の面方向の流量を制御することができるので、MEA14の平面方向の発電ムラなどを抑制することができる。また、1つの流路に沿って直列に複数の流体移送装置を配置した場合には、流路1を長くしても十分な流量の流体を移送することができる。
【0082】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態による流体移送装置を具えた燃料電池における第1構成例を示している。該燃料電池において、流体移送装置4は、音響流の原理によってMEA14の表面に沿う空気の流れを発生させるものであって、第1構成例においては図11及び図12に示す如く、MEA14の表面に沿って空気の流路40が形成されている。
【0083】
図10に示す様に、流路40の両側には、MEA14の表面に対して垂直の姿勢で流路40に沿って伸びる一対の流路壁41、41が立設されると共に、両流路壁41、41に跨って、流路40を覆う振動板42が設置され、該振動板42の上面には、圧電振動子43が設置されている。これによって、図11に示す様に、振動板42とMEA14の表面とが間隔をおいて互いに対向し、振動板42の振動によって発生する音波がMEA14の表面と振動板42との間の流路40内で反射される構成となる。
【0084】
ここで、振動板42は、流路40の入口側の端部42a(図11の左方端部)で最小厚さT1を有すると共に、流路40の出口側の端部42b(図11の右方端部)で最大厚さT2を有する断面楔状に形成されている。
【0085】
上記流体移送装置4において、振動板42とMEA14の表面との間隔を気柱共振の発生する共振高さ(例えば0.1〜5mm)に設定し、圧電振動子43によって振動板42に超音波域の定在波を発生させることにより、振動板42とMEA14の表面の間に気柱共振が発生することになる。ここで、振動板42は、流路40の入口側では厚さが小さいために曲げこわさが小さく、出口側では厚さが大きいために曲げこわさが大きいので、図中に破線の矢印で示すように、流路40の入口側で大きな振幅、流路40の出口側で小さな振幅で振動し、これによって、流路40内の音圧は、入口側で高く、出口側で低くなる。
【0086】
斯くして、流路40の入口から出口に向かって低下する音圧勾配が形成され、これによって流路40内には入口から出口に向かって音響流が発生し、流路40内の空気は入口から出口に向かって一様に流れることになる。この結果、MEA14に対して空気が供給されて、MEA14に発電反応が生じるのである。
【0087】
尚、図10に示す第1構成例の燃料電池に対して、図20に示す如く、流路壁41、41にそれぞれ第2の入口49、49を開設することにより、流路40の側方からも矢印Bで示す様に流体吸入を行なうことが出来る。
【0088】
図12は、第2構成例の燃料電池を表わしている。図示の如く、該燃料電池において、流体移送装置4には、MEA14の表面に沿って流路40が形成され、該流路40を覆う振動板42は、流路40の入口側に小さな厚さT1の薄板部42cを有すると共に、流路40の出口側に大きな厚さT2の厚板部42dを有している。
【0089】
上記第2構成例においても、第1構成例と同様に、圧電振動子43によって振動板42を駆動することにより、振動板42は、流路40の入口側では大きな振幅、出口側では小さな振幅で振動し、これによって、流路40の入口から出口に向かって低下する音圧勾配が形成される。この結果、流路40内には入口から出口に向かって音響流が発生し、流路40内の空気は入口から出口に向かって一様に流れることになる。
【0090】
図13(a)(b)(c)はそれぞれ、燃料電池の第3構成例における流体移送装置を表わしている。図示の如く、該流体移送装置において、振動板42は、その平面形状を流路に沿って変化させることによって、流路の入口側(図6の左側)で小さな曲げこわさ、流路の出口側(図6の右側)で大きな曲げこわさを実現している。該構成においても同様に、流路の入口から出口に向かって音響流が発生し、流路内の空気は入口から出口に向かって一様に流れることになる。
【0091】
図14は、燃料電池の第4構成例における流体移送装置を表わしている。図示の如く、MEA14の表面に沿って空気の流路40が形成され、該流路40を覆って振動板42が設置されている。振動板42は、流路40の入口側に弾性係数の小さな材質からなる第1振動板部42eを有すると共に、流路40の出口側に弾性係数の大きな材質からなる第2振動板部42fを有している。
【0092】
上記構成において、振動板42は、流路40の入口側では弾性係数が小さいために曲げこわさが小さく、出口側では弾性係数が大きいために曲げこわさが大きいので、流路40の入口側で大きな振幅、流路40の出口側で小さな振幅で振動し、これによって、流路40内の音圧は入口側で高く、出口側で低くなる。この結果、流路40内には入口から出口に向かって音響流が発生し、図中に矢印Aで示す様に、流路40内の空気は入口から出口に向かって一様に流れることになる。
【0093】
図15及び図16は、第5構成例の燃料電池における流体移送装置を表わしている。図示の如く、該流体移送装置4においては、MEA14の表面に沿って流路40が形成され、該流路40の両側に、一対の流路壁41、41が立設され、両流路壁41、41に跨ってカバー5が設置されている。カバー5の中央部には、中央開口44を有する円形の振動板42が設置され、該振動板42の表面に、中央開口44を包囲するリング状の圧電振動子43が取り付けられている。
【0094】
該流体移送装置4において、振動板42は円板状を呈しているため、その外周部における曲げこわさは中央部における曲げこわさがよりも小さくなる。従って、圧電振動子43を駆動することによって、振動板42の外周部には大きな振幅の振動が生じ、中央部には小さな振幅の振動が生じることになる。この結果、流路40には、振動板42の外周部から中央部に向かって低下する音圧勾配が発生し、外周部から中央部に向かう音響流が発生する。これに伴って、図中に矢印Aで示す様に、カバー5の両側の開口を入口として空気が流入し、この空気は、振動板42の中央開口44を出口として外部へ流出することになる。
【0095】
又、図17に示す如くMEA14に中央開口10を開設して、カバー5の両側の開口から流入した空気をMEA14の中央開口10から外部へ流出させる構成(第6構成例)も採用可能である。
【0096】
更に又、図18に示す如く、カバー5の2箇所にそれぞれ、図16に示す振動板42及び圧電振動子43を設置して、カバー5の両側から流入した空気を両振動板42、42の中央開口44、44から流出させる構成(第7構成例)も採用可能である。
【0097】
第2実施形態による流体移送装置の効果を実証するべく、図12に示す第2構成例における流体移送装置(以下、本発明例という)と、振動板が均一厚さからなることを除いて本発明例と同様の流体移送装置(以下、比較例という)とを試作し、石松子を含む空気の流れを観察した。尚、比較例においては、振動板として、幅30mm×長さ30mm×厚さ1mmのアルミニウム板(A5052)、圧電振動子43として、幅7mm×長さ30mm×厚さ1mmのPZT素子(富士セラミックス社製“C203”)、反射板として、幅30mm×長さ30mm×厚さ1mmのアクリル板を用い、本発明例においては、振動板42の薄板部42cの厚さを0.5mm、厚板部42dの厚さを1.0mmとした。そして、流路40の高さHを0.5mmに設定した。又、圧電振動子43は、約36kHzの周波数で振動させた。
【0098】
比較例では、圧電振動子43に対する電圧の印加前後で石松子は移動するものの、空気の流れは一様でなく、空気の流れ方向を制御することは困難である。これに対し、本発明例では、圧電振動子43に対する電圧の印加前後で石松子は流路40の入口から出口に向かって一様に流れ、流れ方向の制御が容易であることが確認された。
【0099】
又、本発明例の振動板と比較例の振動板とをそれぞれ振動させたときの変位量を測定し、両振動板の変位量の分布を比較した。尚、比較例の振動板としては、幅30mm×長さ20mm×厚さ1mmのアルミニウム板(A5052)を用いたのに対し、本発明例の振動板としては、厚板部の厚さが1mm、薄板部の厚さが0.5mmであり、長さ方向に10mmの位置で厚さが1mmから0.5mmになっていることを除いて同様のアルミニウム板(A5052)を用いた。又、圧電振動子43は、約36kHzの周波数で振動させた。
【0100】
この結果、本発明例の振動板においては、図19(a)に示す如く、厚板部と薄板部で変位量に約1.1μmの大きな差が生じたのに対し、比較例の振動板においては、図19(b)に示す如く、長さ方向における変位量の差が0.05μm程度の小さなものとなった。尚、図19の横軸は長さ方向の位置を示しており、縦軸は長さ方向の位置における振動板の厚さ方向の変位量を示している。特に図19(a)の横軸においては振動板の厚さが厚い方の端を基準としている。従って、図12に示す流体移送装置4によれば、振動板42の薄板部42cの大きな振動によって大きな音圧を発生させて、流路40内に充分な音圧勾配の形成が可能であることが実証された。他の構成例においても同様の効果が得られるものと考えられる。
【0101】
上述の如く、第2実施形態による流体移送装置を具えた本発明の燃料電池においては、流体移送装置4が、MEA14に沿って設けられた流路40内の空気を音響流の原理により移送する構造を有しているので、流路40に接続すべき外部機器としての流体供給機構は不要であり、振動板42と反射壁から流路40自体を構成して、単に振動板42に圧電振動子43を設置した単純な構造に過ぎない。従って、流体移送装置4の小型化と消費電力の節減が可能であり、小型電子機器用の燃料電池の流体移送装置として好適である。
【0102】
特に燃料電池に第2実施形態による流体移送装置を採用した構成においては、振動板42の振動に伴ってMEA14の表面壁に音波が作用するので、カソード14bの表面に付着した水や、アノード14cの表面に付着した二酸化炭素を流路40側へ拡散させることが可能であり、これによって燃料電池の性能が向上することになる。
【0103】
(第3実施形態)
図21は、第3実施形態による流体移送装置を具えた本発明の燃料電池における第1構成例を示している。該燃料電池において、流体移送装置4は、音響流の原理によってMEA14の表面に沿う空気の流れを発生させるものであって、第1構成例においては図21及び図22に示す如く、MEA14の表面に沿って空気の流路40が形成されている。流路40の両側には、MEA14の表面に対して垂直の姿勢で流路40に沿って伸びる一対の流路壁41、41が立設されると共に、両流路壁41、41に跨って、流路40を覆う振動板42が設置され、該振動板42の上面には、圧電振動子43が設置されている。
【0104】
これによって、図22に示す様に、振動板42とMEA14の表面とが所定間隔Hをおいて互いに対向し、振動板42の振動によって発生する音波がMEA14の表面と振動板42との間の流路40内で反射される構成となる。ここで、振動板42は、流路40の出口側(図22の右側)では、MEA14よりも外側(図22の右方)へ所定距離Sだけ突出して、MEA14の表面と対向しない領域48を有している。
【0105】
上記流体移送装置4において、振動板42とMEA14の表面との間隔Hを気柱共振の発生する共振高さ(例えば0.1〜5mm)に設定し、圧電振動子43によって振動板42に超音波域の定在波を発生させることにより、振動板42とMEA14の表面との間に気柱共振が発生することになる。
【0106】
又、振動板42の端部領域48の突出距離Sを、例えば振動板42に生じる定在波の2分の1波長程度の適切な距離(例えば0.5〜5mm)に設定することにより、流路40の入口から出口に向かって低下する音圧勾配が形成され、これによって流路40内には入口から出口に向かって音響流が発生し、流路40内の空気は矢印Aで示す様に入口から出口に向かって一様に流れることになる。この結果、MEA14に対して空気が供給されて、MEA14に発電反応が生じるのである。
【0107】
尚、図21に示す第1構成例における流体移送装置4に対して、図29に示す如く、流路壁41、41にそれぞれ第2の入口49、49を開設することにより、流路40の側方からも矢印Bで示す様に流体吸入を行なうことが出来る。
【0108】
図23及び図24は、本発明に係る燃料電池の第2構成例を表わしている。図示の如く、流体移送装置4において、MEA14の表面には複数列の流路40a〜40aが平行に設けられており、これらの流路40a〜40aは、MEA14の表面に対して垂直の流路壁41によって互いに仕切られている。そして、各流路40aを覆って複数の振動板42a〜42aが設置され、各振動板42aに圧電振動子43aが取り付けられている。これらの振動板42a〜42aはそれぞれ、流路40aの出口側では、MEA14よりも外側へ所定距離だけ突出して、MEA14の表面と対向しない領域48を有している。
【0109】
上記第2構成例においても、第1構成例と同様に、圧電振動子43aによって振動板42aに超音波域の定在波を発生させることにより、各流路40a内には入口から出口に向かって音響流が発生し、各流路40a内の空気は入口から出口に向かって一様に流れることになる。
【0110】
図25及び図26は、本発明に係る燃料電池の第3構成例を表わしている。図示の如く、MEA14の表面に沿って互いに平行な2本の空気流路40b、40bが形成されており、両流路40b、40bは出口付近で合流している。両流路40b、40bはMEA14の表面と平行なカバー47によって覆われている。両流路40b、40bの両側には、MEA14の表面に対して垂直の姿勢を有して流路40b、40bと平行に伸びる一対の振動板45、45が設置され、各振動板45には圧電振動子43bが取り付けられている。
【0111】
又、両流路40b、40b間には、MEA14の表面に対して垂直の姿勢を有する反射板46が立設されている。該反射板46は、流路出口付近で途切れており、これによって各振動板42bは反射板46よりも所定距離Sだけ突出し、反射板46と対向しない領域48が形成されている。斯くして、図26に示す如く各振動板45と反射板46とが所定間隔をおいて互いに対向し、各振動板45の振動によって発生する音波が反射板46によって反射される構成となる。
【0112】
上記流体移送装置4において、両圧電振動子43b、43bによって振動板45、45に超音波域の定在波を発生させることにより、各振動板45と反射板46の間に気柱共振が発生し、音響流が生じる。ここで、流路40b、40b内には、流路40b、40bの入口から出口に向かって低下する音圧勾配が形成されるため、流路40b、40b内の空気は矢印Aで示す様に入口から出口に向かって一様に流れることになる。この結果、MEA14に対して空気が供給されて、MEA14に発電反応が生じるのである。
【0113】
図27及び図28は、本発明に係る燃料電池の第4構成例を表わしている。図示の如く、流体移送装置4には、MEA14の表面に沿って空気の流路40cが形成されている。流路40cの両側には、MEA14の表面に対して垂直の姿勢で流路40cに沿って伸びる一対の流路壁41、41が立設されると共に、両流路壁41、41に跨って、流路40cを覆う2枚の振動板51、51が互いに間隔をおいて設置され、各振動板51の上面には、圧電振動子43cが設置されている。該構成によって、両振動板51、51の間に流路40cの入口が形成され、両振動板51、51の両端部に2つの出口が形成されることになる。
【0114】
ここで両振動板51、51は、流路40cの出口側(図28の左右両側)では、MEA14よりも外側へ所定距離Sだけ突出して、各振動板51はMEA14の表面と対向しない領域48を有している。
【0115】
上記流体移送装置4において、圧電振動子43c、42cによって振動板51、51に超音波域の定在波を発生させることにより、各振動板51とMEA14の表面の間に気柱共振が発生することになる。ここで、両振動板51、51はそれぞれMEA14と対向しない領域48を有しているため、流路40cの入口から両出口に向かって低下する音圧勾配が形成され、これによって流路40c内には入口から両出口に向かって音響流が発生し、矢印Aで示す様に流路40cの入口から流入した空気は分流して、両出口に向かって一様に流れることになる。この結果、MEA14に対して空気が供給されて、MEA14に発電反応が生じるのである。
【0116】
第3実施形態による流体移送装置の効果を実証するべく、図21及び図22に示す第1構成例と同様の流体移送装置(以下、本発明例という)と、振動板42がMEA14から突出していないことを除いて本発明例と同様の流体移送装置(以下、比較例という)とを試作し、石松子を含む空気の流れを観察した。
【0117】
尚、試作した流体移送装置4においては、振動板42として、幅30mm×長さ30mm×厚さ1mmのアルミニウム板(A5052)、圧電振動子43として、幅7mm×長さ30mm×厚さ1mmのPZT素子(富士セラミックス社製「C203」)、反射板として、幅30mm×長さ30mm×厚さ1mmのアクリル板を用い、流路40の高さHを0.5mm、振動板42の端部領域48の突出距離Sを2.5mmに設定した。又、圧電振動子43は、約34kHzの周波数で振動させた。
【0118】
比較例では、圧電振動子43に対する電圧の印加前後で石松子は移動するものの、空気の流れは一様でなく、その流れ方向を制御することは困難である。これに対し、本発明例では、圧電振動子43に対する電圧の印加前後で石松子は流路40の入口から出口に向かって一様に流れ、流れ方向の制御が容易であることが確認された。
【0119】
上述の如く、第2実施形態による流体移送装置4を具えた燃料電池においては、流体移送装置4が、MEA14に沿って設けられた流路40内の空気を音響流の原理により移送する構造を有しているので、流路40に接続すべき外部機器としての流体供給機構は不要であり、振動板42と反射壁から流路40自体を構成して、単に振動板42に圧電振動子43を設置した単純な構造に過ぎない。従って、流体移送装置4の小型化と消費電力の節減が可能であり、小型電子機器用の燃料電池の流体移送装置として好適である。
【0120】
特に上記流体移送装置を採用した燃料電池においては、振動板42の振動に伴ってMEA14の表面壁が振動するので、MEA14のアノード14cの表面に付着した水や、カソード14bの表面に付着した二酸化炭素を流路40側へ拡散させることが可能であり、これによって燃料電池の性能が向上することになる。
【0121】
(第4実施形態)
図30は、第4実施形態の流体移送装置を具えた本発明の燃料電池を示している。該流体移送装置4において、振動板42と対向するMEA14の表面壁18は、流路40の入口側の壁部18aが大きな音響インピーダンスを有する材質で形成されると共に、前記流路の出口側の壁部18bが小さな音響インピーダンスを有する材質で形成されている。ここで、音響インピーダンスは、反射壁の質量と音速の積によって定義される。
【0122】
第4実施形態の流体移送装置4においては、音波を反射すべきMEA14の表面壁18が、流路40の入口側で大きな音響インピーダンスを有すると共に、前流路40の出口側で小さな音響インピーダンスを有しているので、流路40の入口側で大きな音圧、流路40の出口側で小さな音圧が発生する。この結果、流路40の入口から出口に向かって低下する音圧勾配が形成され、これによって流路40内には入口から出口に向かって音響流が発生し、流路40内の流体は入口から出口に向かって流れることになる。
【0123】
(第5実施形態)
図31は、第5実施形態の流体移送装置を具えた本発明の燃料電池を示している。該流体移送装置4において、振動板42と対向するMEA14の表面壁の内、流路40の出口側の領域には複数の凹部14が形成されており、これによって、反射壁となるMEA14の表面壁は、流路40の入口側で吸音率が低く、流路40の出口側で吸音率が高くなっている。
【0124】
第5実施形態の流体移送装置4においては、音波を反射すべきMEA14の表面壁18の表面が、流路40の入口側で吸音率が低く、流路40の出口側で吸音率が高くなる表面状態に形成されているので、流路40の入口側で反射波が強くなり、流路40の出口側で反射波が弱くなる。この結果、流路40の入口から出口に向かって低下する音圧勾配が形成され、これによって流路40内には入口から出口に向かって音響流が発生し、流路40内の流体は入口から出口に向かって流れることになる。
【0125】
(振動板の支持構造)
図32及び図33は、上述の各実施形態の流体移送装置における振動板の支持構造を示している。図示の如く、MEA14の両側部に一対の流路壁41、41が立設され、両流路壁41、41に跨ってカバー6が設置される。該カバー6の裏面には、4つのフック状支持部材61〜61が取り付けられており、これら4つの支持部材61〜61によって振動板3aが支持されている。
【0126】
PZT素子3bの駆動によって振動板3aが高次共振モードで振動した場合、振動板3aの振動には図34(b)(c)に示す如く複数箇所に腹と節が形成される。前記4つの支持部材61は、図34(a)(b)に示す如く最初の節の位置と最後の節の位置に対応させて配置されており、これによって振動板3aは2つの節の位置で両側から支持されることになる。この様に振動板3aを節の位置で支持することにより、振動板3aはその固有の振動数で共振し、効率的に音波を発することになる。
【0127】
図35及び図36は、振動板の他の支持構造を示している。該支持構造においては、両流路壁41、41上に振動板3aが設置され、最初の節の位置と最後の節の位置に対応する4つの位置で、接着剤62を用いて固定されている。
【0128】
図37及び図38は、振動板の他の支持構造を示している。該支持構造においては、カバー6の裏面に、4つのピン状の支持部材63〜63が取り付けられており、これら4つの支持部材63〜63の先端が振動板3aの両側面に連結されて、振動板3aが前後2つの節の位置で支持されている。
【0129】
図39及び図40は、振動板の他の支持構造を示している。該支持構造において、振動板3aの両側面には、図40(a)に示す如く最初の節の位置と最後の節の位置に対応する4つの位置に、4本の脚片64〜64が外向きに突設されており、これらの脚片64〜64が図39の如く両流路壁41、41に連結されている。これによって、振動板3aは前後2つの節の位置で支持されることになる。
【0130】
尚、図40(a)に示す4本の脚片64〜64に代えて、図40(b)の如く前後2つの脚片64、64を連結部65により連結し、両側の連結部65、65を両流路壁41、41によって支持することも可能である。
【0131】
図41及び図42は、振動板の更に他の支持構造を示している。該支持構造において、振動板3aには、図42に示す如く最初の節の位置と最後の節の位置に対応する4つの位置にねじ部材66〜66が上向きに突設されており、これらのねじ部材66〜66をカバー6にねじ込んで固定している。これによって、振動板3aは前後2つの節の位置で支持されることになる。
【0132】
尚、図43に示す様に、振動板3aに4つの孔を開設して、これらの孔に支持部材67〜67を取り付け、これらの支持部材67〜67をカバー6の裏面に連結することも可能である。
【0133】
(各種電子機器への応用例)
図44及び図45は、本発明に係る燃料電池を搭載した折り畳み式携帯電話機を示している。該携帯電話機は、表示側筐体71と操作側筐体72とをヒンジ機構73によって互いに開閉可能に連結したものであって、表示側筐体71の内面にはメインディスプレイ71b、外面にはサブディスプレイ71cが配備されている。又、表示側筐体71と操作側筐体72の開閉を検知するために、図45に示す様に、表示側筐体71の内面には突起71aが配備される一方、操作側筐体72の内面には、前記突起71aによってオン/オフされるべき開閉検知スイッチ72aが配備されている。
【0134】
該携帯電話機においては、表示側筐体71若しくは操作側筐体72の内部に本発明に係る燃料電池が内蔵され、或いは、図46に示す如く表示側筐体71の背面に、本発明に係る燃料電池9が取り付けられている。該燃料電池9は、図49及び図50に示す様に、カバー76の内部に、燃料供給部及び燃料カートリッジを具えた基板74、後述の制御回路等を具えた回路部75、MEA14、排水部77、振動板3a及びPZT素子3b等が配備され、該燃料電池から電話機本体に対して電力が供給される。カバー76には、空気を吸入すべき吸入口76aと、空気を排出すべき排出口76bとが形成されている。
【0135】
ここで、図44に示すヒンジ機構73側に流体移送装置の高圧側(吸入口側)を配置した構成を採用すれば、筐体71、72はヒンジ機構73の近傍領域で高い構造強度を有しているので、流体移送装置のヒンジ機構側の音圧を高く設定することが可能である。
【0136】
図51に示す様に、吸入口76a及び排出口76bはそれぞれ、カバー76の振動板3aとの対向領域の外側に配置されている。従って、吸入口76aから吸入された空気は、振動板3aによって遮られることなく流路に流れ込み、その後、振動板3aによって遮られることなく、排出口76bから排出される。この結果、効率のよい空気の移動が実現される。又、図52に示す如く蓄水部77aを具えた排水部77を、図51の如く空気流路の終端部に対向させて配置すれば、燃料電池のカソード側で生成された水(不要物)が、空気と共に排水部77へ向かって流れるので、排水口77bから効率よく水を排出することができる。尚、排水部77では、空気と共に流れてきた水が蓄水部77aに一旦蓄えられ、その後、蒸発によって排水口77bから排出されることになる。
【0137】
排水部77として、図53及び図54に示す様に、蓄水部77aが空気流路側に突出した構成を採用すれば、燃料電池のカソード側で生成された水を効率的に排水部77の蓄水部77aへ送り込むことが出来る。又、排水部77の排水口77bは、メッシュ構造となっていてもよい。更には、排水部77を着脱式とすることで、蓄水部77aに貯まった水を除去することが可能となる。
【0138】
同様にアノード側に流体移送装置を用いた場合においても、排出口に向かって流体を流すようにすることで、燃料電池のアノード側で生成された二酸化炭素(不要物)を効率よく排出することが出来る。
【0139】
又、図47及び図48に示す如く、表示側筐体71の背面に燃料電池91が取り付けられている携帯電話機において、カバー76の側面や上下の端面に吸入口76a及び排出口76bを開設することも可能である。
【0140】
更に、図56及び図57に示すストレートタイプの携帯電話機においては、筐体70の背面に吸入口76a及び排出口76bが開設されており、吸入口76aは、筐体70の背面下部に配置され、排出口76bは、筐体70の背面上部に配置される。又、図58及び図59に示すストレートタイプの携帯電話機においては、筐体70の側面及び底面に吸入口76a及び排出口76bが開設されており、吸入口76aは、筐体70の底面、及び側面下部に配置され、排出口76bは、筐体70の側面上部に配置される。
【0141】
この様に、通常の使用状態(通話状態)において下方(重力作用方向)に吸入口76a、上方に排出口76bが位置することとなる構成においては、流路内の空気がMEAにより加熱されて流路内を浮力によって上昇するので、吸入口76aから排出口76bへ向かって効率良く空気を移動させることが出来る。従って、通話中の大きな消費電力を燃料電池の発生電力によって十分に賄うことが出来る。尚、一対の筐体をスライド機構により互いに連結したスライド式携帯電話機においても同様に、吸入口及び排出口は、通常の使用状態において何れか一方の筐体の下方に吸入口、上方に排出口が位置するように配置される。
【0142】
ところで、図55に示す如く、カバー76には、上述の支持構造(図32〜図43参照)を用いて振動板3aが支持されているが、例えば振動板3aに突設した各脚片64とカバー76との間に、硬質ゴム、シリコン、アクリル、テフロン材等、防振効果を有する材料からなる部材69を挟み込むことによって、振動板3aから筐体への振動の伝搬を抑制し、筐体の振動に起因する騒音を減少させることが出来る。或いは、支持部材自体(支持部材61、支持部材63、脚片64、連結部65、ねじ部材66、支持部材67)の材質として、硬質ゴム、シリコン、アクリル、テフロン材等、防振効果を有する材料を採用することによっても、同様の効果が得られる。
【0143】
又、カバー76の内面に、振動板3aと対向させて、ウレタンスポンジ、ウレタンフォーム等からなる吸音シートを貼り着けることによって、カバー76と振動板3aによって挟まれた空間等、前記流路以外の空間における空気の振動を吸収し、筐体の振動に起因する騒音を減少させることが出来る。
【0144】
図60は、該燃料電池の構成を表わすブロック図である。マイクロコンピュータやDC/ACコンバータ等から構成される制御回路8とPZT素子3bを含む本発明の流体移送装置においては、制御回路8からPZT素子3bへ駆動信号が供給されてPZT素子3bが駆動され、これに伴ってPZT素子3bから制御回路8へ電流値や振動変位量等の情報がフィードバックされる。
【0145】
PZT素子3bの駆動によってMEA14へガスの供給が行なわれ、これによって得られる電力によって二次電池81が充電され、該二次電池81を電源として電話機本体80が動作することになる。ここで、MEA14の発電量は制御回路8へフィードバックされる。尚、MEA14から得られる電力を直接に電話機本体80へ供給することも可能である。
【0146】
図61は、上述の燃料電池において、振動板を共振点で振動させるための制御回路の電流制御の手続きを表わしている。該電流制御においては、PZT素子から得られる電流値を山登り法により極大化することによって、振動板の振動数を共振周波数に設定する。
【0147】
先ず図61のステップS1にて、振動板の周波数fに初期値(例えば70kHz)を設定すると共に、電流値を測定し、その結果をそれぞれ電流現在値Ii及び電流過去値Ioldに代入する。そして、アップモードでは、ステップS2にて電流現在値Iiと電流過去値Ioldを比較し、Ii≧Ioldであれば、ステップS3に移行して、周波数fと所定の最大周波数fmaxとを比較し、f<fmaxであれば、ステップS4にて周波数をインクリメントする。
【0148】
その後、ステップS5では、電流現在値Iiを電流過去値Ioldに代入すると共に、新しい電流現在値Iiを取得し、ステップS2に戻って電流現在値Iiと電流過去値Ioldの比較を行なう。これによって、ステップS2でIi<Ioldと判断され、或いはステップS3でf≧fmaxと判断されたときは、ダウンモードに移行する。
【0149】
ダウンモードでは、ステップS7にて電流現在値Iiと電流過去値Ioldを比較し、Ii>Ioldであれば、ステップS8に移行して、周波数fと所定の最小周波数fminとを比較し、f>fminであれば、ステップS9にて周波数をデクリメントする。
【0150】
その後、ステップS10では、電流現在値Iiを電流過去値Ioldに代入すると共に、新しい電流現在値Iiを取得し、ステップS7に戻って電流現在値Iiと電流過去値Ioldの比較を行なう。これによって、ステップS7でIi≦Ioldと判断され、或いはステップS8でf≦fminと判断されたときは、アップモードに移行する。
【0151】
この様にアップモードとダウンモードで動作させることで共振周波数で動作させることが出来る。
この様な制御によれば、振動板の発熱、不純物の付着等によって振動板の周波数がずれた場合にも、常に振動板を共振点で振動させて、大きな音響流を発生させることが出来る。又、バースト駆動により更に消費電力を抑えることが可能である。
【0152】
ところで、上述の如き携帯電話機においては、待ち受け状態で消費電力が少なく、ディスプレイの画面表示やバックライトの点灯が行われる状態では、消費電力が増大する。そこで、図62に示す振動板駆動制御を採用することによって、消費電力が大きくなる場合に限って振動板を振動させて流体を移送する構成を採用することが出来る。
【0153】
例えば図44及び図45に示す折り畳み式携帯電話機においては、先ず図62のステップS11にて、開閉検知スイッチ72aにオン/オフ状態の変化があったかどうかを判断する。ここでオン/オフ状態の変化があったときは、ステップS12に移行して、開閉検知スイッチがオンに変化したか、オフに変化したかを判断する。携帯電話機が開かれて開閉検知スイッチがオンに変化した場合は、ステップS13にてディスプレイによる表示画面を行なうと共にバックライトを点灯し、操作可能状態を設定した後、ステップS14に移行して、流体移送装置の振動板を駆動する。これに対し、携帯電話機が閉じられて開閉検知スイッチがオフに変化した場合は、ステップS15にてディスプレイによる表示画面を停止すると共にバックライトを消灯し、スリープ状態を設定した後、ステップS16に移行して、流体移送装置の振動板の駆動を停止する。尚、図44に示す如くサブディスプレイ71cを具えた携帯電話機において、筐体を閉じた後に一定時間が経過してから、サブディスプレイのバックライトを消灯する制御では、バックライトが消灯した後に振動板の振動を停止させてもよい。
【0154】
又、図56〜図59に示す如きストレートタイプの携帯電話機において、操作ボタンの操作によってバックライトを点灯させ、一定時間に亘ってボタン操作がない場合にはバックライトを消灯する制御では、ボタン操作又はバックライトの点灯/消灯に合わせて、振動板の駆動をオン/オフすることも可能である。
【0155】
尚、上記した各実施形態並びに各構成例は、すべての点において例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態並びに構成例の説明ではなく請求の範囲によって規定され、さらに請求の範囲と均等の意味及び範囲内におけるすべての変更が含まれる。
【0156】
例えば、本発明に係る燃料電池は、携帯電話機に限らず、携帯電話機等を充電するための充電器、ビデオカメラ等のAV機器、携帯用ゲーム機、ナビゲーション装置、ハンディクリーナ、業務用発電器、ロボット等、あらゆる電子機器の電源として用いることが出来る。
【0157】
又、流体移送装置の流路の終端部(振動板とMEAが向かい合って形成された流路の終端の部分)に対向する位置に排水部77を設けたが、この位置に限らず、終端部付近、例えば排出口76bとの間の何れの位置に設けても同様の排水効果が得られる。
【0158】
又、通常の使用状態(通話状態)と記載しているが、これは本実施例記載の携帯電話機での一例であり、ビデオカメラ等のAV機器では、静止画や動画を撮影する状態や、撮影した静止画や動画を閲覧する状態、携帯用ゲーム機であればゲームを実行している状態、ナビゲーション装置や業務用発電器などの据え置き型の電子機器については設置状態が通常の使用状態に該当する。この様に、機器によって通常の使用状態は異なるため、通話状態に限定するものではない。
【符号の説明】
【0159】
100 流体移送装置
1 流路
1a 吸入口
1b 排出口
2 反射板
3 振動体
3a 振動板
3b PZT素子
200 燃料電池
11 流路
11a 吸入口
11b 排出口
12 反射板
13 振動板
14 MEA
14a 電解質膜
14b カソード
14c アノード
15 天板
16 流路
16a 吸入口
16b 排出口16b
17 底板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜及び該電解質膜の両面上に形成された一対の電極を有する膜・電極接合体と、該膜・電極接合体の表面に形成された流路に沿って燃料流体及び酸化用流体の少なくとも何れかの流体を移送するための流体移送装置とを具え、該流体移送装置においては、前記流路を挟んで両側に、音波を発生する振動板と前記音波を反射する反射壁とが対向配備され、前記振動板の振動によって前記流路内に生じる音圧勾配により前記流体を移送する、燃料電池。
【請求項2】
前記膜・電極接合体の表面に沿って前記流路が形成され、該流路を流体が流れる過程で、前記膜・電極接合体に対する流体の供給が行なわれる、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記流体移送装置の振動板と反射壁は、前記膜・電極接合体の前記表面に対して垂直となる姿勢で配置されている、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記流体移送装置の振動板は、前記膜・電極接合体に対向して配置されており、前記反射壁として前記膜・電極接合体の表面壁が用いられる、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記流体移送装置の振動板は、前記膜・電極接合体の表面と直交して前記流路の両側に配備されると共に、前記反射壁は、前記膜・電極接合体の表面と直交して前記流路の中央部に配備されている、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の燃料電池。
【請求項6】
前記流路は、その中央部に入口若しくは出口を有すると共に、その両端部にそれぞれ出口若しくは入口を有している、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の燃料電池。
【請求項7】
流体を吸入すべき吸入口と、流体を排出すべき排出口とを有し、該吸入口及び排出口はそれぞれ、前記振動板と対向する領域の外側に配置されている、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の燃料電池。
【請求項8】
前記流体移送装置の流路の終端部付近に、前記膜・電極接合体で生成された生成物を排出するための排出部が設けられている、請求項1乃至請求項7の何れかに記載の燃料電池。
【請求項9】
前記振動板は、振動に伴って形成される複数の節の内、少なくとも1つの節の位置で支持されている、請求項1乃至請求項8の何れかに記載の燃料電池。
【請求項10】
電解質膜の両側にアノード及びカソードを配備して膜・電極接合体が構成されている燃料電池を具え、該燃料電池は、前記膜・電極接合体を構成するアノード及び/又はカソードに流体を供給する流体移送装置を具え、該流体移送装置においては、前記流体の流路を挟んで両側に、音波を発生する振動板と前記音波を反射する反射壁とが対向配備され、前記振動板の振動によって前記流路内に生じる音圧勾配により前記流体を移送する、電子機器。
【請求項11】
電子機器本体は、一対の筐体をヒンジ機構により互いに連結して構成され、何れか一方の筐体に前記流体移送装置が内蔵され、或いは何れか一方の筐体の背面に前記燃料電池が取り付けられ、該燃料電池は、ヒンジ機構側に流体移送装置の高圧側を向けて配置されている請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
電子機器本体の筐体には、流体を吸入すべき吸入口と流体を排出すべき排出口とが開設され、該吸入口と排出口は、電子器本体の通常の使用状態で吸入口よりも排出口が上方に位置する様に配置されている、請求項10又は請求項11に記載の電子機器。
【請求項13】
電子機器本体の消費電力が増大するとき、前記流体移送装置の振動板の駆動をオンとする、請求項10乃至請求項12の何れかに記載の電子機器。
【請求項14】
電子機器本体の消費電力が減少するとき、前記流体移送装置の振動板の駆動をオフとする、請求項10乃至請求項13の何れかに記載の電子機器。
【請求項15】
前記振動板は、振動に伴って形成される複数の節の内、少なくとも1つの節の位置で支持されている、請求項10乃至請求項14の何れかに記載の電子機器。
【請求項16】
電子回路部と、該電子回路部の表面に沿って形成された流路に沿って流体を移動させる流体移送装置とを具え、該流体移送装置においては、前記流体の流路を挟んで両側に、音波を発生する振動板と前記音波を反射する反射壁とが対向配備され、前記振動板の振動によって前記流路内に生じる音圧勾配により前記流体を移送する、電子機器。
【請求項17】
前記流体移送装置によって移動させるべき流体は、前記電子回路部を冷却するための流体である請求項16に記載の電子機器。
【請求項18】
前記振動板は、振動に伴って形成される複数の節の内、少なくとも1つの節の位置で支持されている、請求項16又は請求項17に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【公開番号】特開2012−212674(P2012−212674A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119456(P2012−119456)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【分割の表示】特願2007−542694(P2007−542694)の分割
【原出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】