説明

燃料電池用インバータの逆流保護装置

【課題】 電流の逆流防止のため直列に挿入するダイオードを取り外した構成とし、インバータの変換効率を向上でき、燃料電池側へ電流が逆流することを防止できて燃料電池の過電圧動作を防止できる燃料電池用インバータの逆流保護装置を提供すること
【解決手段】 逆流保護制御部5を備えて、この逆流保護制御部5にはインバータ2の入力側で検出した直流電圧Vdcおよび直流電流Idcを入力するとともに、インバータ2の出力側で検出した交流電圧Vacおよび交流電流Iacを入力し、これら入出力間の状態から判定動作を行い、インバータ2の制御部20に対して逆電流,過電圧の保護動作を指令する。入力側の直流電圧Vdcが所定値以下では電流指令に対して追従する定電流制御の動作を行い、直流電圧Vdcが制限値Vlimに上がってきたところでは定電圧制御に切り替えて、電圧の上昇を制限するリミッタ動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用インバータの逆流保護装置に関するもので、より具体的には、インバータの出力側は電力系統と接続して連系運転を行うような構成であり、電力源の燃料電池について逆電流および過電圧の検出とその保護を行う構成の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池を用いた電源システムに注目があり、例えば図1に示すように、燃料電池1にインバータ2を接続して交流電力に変換し、インバータ2は既存の電力系統3と接続して連系運転するようにした構成が知られている。この場合、燃料電池1とインバータ2との間にはダイオード4を直列に挿入し、インバータ2側から燃料電池1側へ向かう逆方向の電流を防ぐようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、係る従来の燃料電池用インバータでは以下に示すような問題がある。電流の逆流防止のためのダイオードは、PN接合のエネルギ障壁のため順方向での電圧降下がある。この電圧降下は、電力損失になるためインバータ2の変換効率を低下させる原因になっている。また、電流の逆流により燃料電池1の電圧が過電圧になると、発電作用ではなく逆に水を電気分解する作用となり、このため燃料電池1の各セルを破損してしまう。
【0004】
この発明は上述した課題を解決するもので、その目的は、インバータの変換効率を向上でき、燃料電池側へ電流が逆流することを防止できるとともに、燃料電池の過電圧動作を防止できる燃料電池用インバータの逆流保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明に係る燃料電池用インバータの逆流保護装置は、インバータ側から燃料電池側へ向かう逆電流および過電圧を防止するものであって、前記インバータの制御部に対して逆電流および過電圧の保護動作を指令する逆流保護制御部を備え、前記逆流保護制御部には前記インバータの入力側で検出した直流電圧および直流電流を入力するとともに、前記インバータの出力側で検出した交流電圧および交流電流を入力し、当該制御部は前記インバータの入力側における電圧−電流特性として、直流電圧が制限値Vlim以下では直流電流について要求値をそのまま指令値Icmdとする定電流特性を指令し、直流電圧が制限値Vlim以上に上昇するときは直流電圧について指令値Vcmdを制限値Vlimに制限する定電圧特性を指令する構成とした(請求項1)。
【0006】
また、前記逆流保護制御部は、直流電流の指令値Icmdが
Icmd ≦ 0
となる際は前記インバータの直流電流指令値を
Icmd > 0
に制限する構成とするとよい(請求項2)。
【0007】
また、前記制限値Vlimは、前記燃料電池の定格電圧最大値以上であり、
(燃料電池セルの直列数×水の電解電圧)
以下の値とするとよい(請求項3)。
【0008】
係る構成にすることにより本発明では、インバータの動作を、入力側の直流電圧が所定の電圧値以下では電流指令に対して追従する定電流制御の動作を行い、入力側の直流電圧が制限値Vlimに上がってきたところでは定電圧制御に切り替えるので、それ以上に直流電圧が上がらず、リミッタ動作となる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明に係る燃料電池用インバータの逆流保護装置では、燃料電池側に電流が流れ込むような逆流発生時には、インバータの制御を通常状態から切り替えてリミッタ動作の制御を行うので、燃料電池側へ電流が逆流することを防止できるとともに、燃料電池の過電圧動作を防止できる。そして、電流の逆流防止のため直列に挿入するダイオードを取り外した構成なのでインバータの変換効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2は、本発明の好適な一実施の形態を示している。本実施の形態において、燃料電池用インバータの逆流保護装置は逆流保護制御部5を有する。この逆流保護制御部5にはインバータ2の入力側で検出した直流電圧Vdcおよび直流電流Idcを入力するとともに、インバータ2の出力側で検出した交流電圧Vacおよび交流電流Iacを入力し、これら入出力間の状態から判定動作を行い、インバータ2の制御部20に対して逆電流および過電圧の保護動作を指令する構成になっている。
【0011】
インバータ2は、電子スイッチ21と制御部20を有し、電子スイッチ21の入力側に燃料電池1を接続するとともに、出力側は電力系統3へ接続し、交流電力ラインとの連系運転を行うようになっている。また、電子スイッチ21の入力側,出力側の電線路には、それぞれ計器用変流器6(CT:Current Transformer)を配置し、電流の検出を行なう。
【0012】
逆流保護制御部5は、インバータ2の入力側における電圧−電流特性として、直流電圧Vが制限値Vlim以下では直流電流について要求値をそのまま指令値Icmdとする定電流特性を指令し、直流電圧Vが制限値Vlim以上に上昇するときは直流電圧について指令値Vcmdを制限値Vlimに制限する定電圧特性を指令するようになっている。
【0013】
また、逆流保護制御部5は、直流電流の指令値Icmdが
Icmd ≦ 0
となる際はインバータ2の直流電流の指令値を
Icmd > 0
に制限する動作を行うようになっている。
【0014】
そして、制限値Vlimは、燃料電池1の定格電圧最大値以上であり、
(燃料電池セルの直列数×水の電解電圧)
以下の値とする。
【0015】
燃料電池1の最大電圧は、無負荷状態における解放電圧であり、取り出す電流がゼロのときの電圧である。燃料電池1の電圧が過電圧になると、発電作用ではなく逆に水を電気分解する作用となり、燃料電池1を破損してしまうことから、制限値Vlimは水の電解電圧よりも小さい値に設定する。
【0016】
燃料電池1の特性上、取り出す電流の増減に伴う電圧変動が特に大きく、これはインバータ2側でその変換動作を適宜に制御することにより、入力側の直流電圧Vdcが過電圧にならないようにしている。
【0017】
燃料電池1には動作電圧の最大値が定格にあり、そこまでは正常に動作し得るが、この定格電圧の最大値は物理化学的には水の電解電圧よりも上にはできない。そこで本発明では、インバータ2の動作を、図3に示すように、入力側の直流電圧Vが所定の電圧値以下では電流指令に対して追従する定電流制御の動作を行い、入力側の直流電圧Vが制限値Vlimに上がってきたところでは定電圧制御に切り替えている。したがって、直流電圧Vがそれ以上には上がらず、電圧の上昇を制限するリミッタ動作となる。制限値Vlimは、上述した理由から「電池セルの直列数×水の電解電圧」以下であり、定電圧制御の下限は燃料電池1の定格電圧最大値とすることになる。
【0018】
通常、インバータ2の入力側では直流電流I(Icmd)が一定であり、逆流し始めると直流電圧Vが上がる。実際に直流電圧Vが上がり始めるというのは、直流電流Iが、ほぼゼロまで落ちたときとなる。燃料電池1から大電流を放出させている状況、つまり著しくたくさん放電するように放電指令が出されているときには逆方向からの電流がなく、燃料電池1の電圧が高くは上がらず、これは燃料電池1から電流がまさしく出力している状況である。
【0019】
しかし例えば、計器用変流器6が故障したとき、途中の電流計測回路が故障しているときには、電流がほとんどゼロなのに流れているように見えることがある。その際は、電流がほぼゼロになり逆流し始めると燃料電池1の電圧が上がる。ここで、本発明の構成によればインバータ2の制御を通常状態から切り替えてリミッタ動作の制御を行うことになるが、従来の構成ではインバータ2は正常状態であると誤解しているので通常の制御をそのまま続行しようとする。
【0020】
また、制御系の故障時には、電流指令がマイナス側つまり燃料電池1へ充電せよという電流指令になることがあり、そうした場合も本発明の構成によればインバータ2の制御を通常状態から切り替えてリミッタ動作の制御を行うことができる。
【0021】
このように、燃料電池1側に電流が流れ込むような逆流発生時には、インバータ2の制御を通常状態から切り替えてリミッタ動作の制御を行うので、燃料電池1側へ電流が逆流することを防止できるとともに、燃料電池1の過電圧動作を防止できる。そして、電流の逆流防止のため直列に挿入するダイオードを取り外した構成なのでインバータ2の変換効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】燃料電池用インバータの従来の一例を示す構成図である。
【図2】本発明に係る逆流保護装置の一実施の形態を示し、これを適用した燃料電池用インバータの構成図である。
【図3】インバータの入力側における電圧−電流特性を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0023】
1 燃料電池
2 インバータ
3 電力系統
5 逆流保護制御部
6 計器用変流器
20 電子スイッチ
21 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ側から燃料電池側へ向かう逆電流および過電圧を防止するものであって、
前記インバータの制御部に対して逆電流および過電圧の保護動作を指令する逆流保護制御部を備え、
前記逆流保護制御部には前記インバータの入力側で検出した直流電圧および直流電流を入力するとともに、前記インバータの出力側で検出した交流電圧および交流電流を入力し、当該制御部は前記インバータの入力側における電圧−電流特性として、直流電圧が制限値Vlim以下では直流電流について要求値をそのまま指令値Icmdとする定電流特性を指令し、直流電圧が制限値Vlim以上に上昇するときは直流電圧について指令値Vcmdを制限値Vlimに制限する定電圧特性を指令することを特徴とする燃料電池用インバータの逆流保護装置。
【請求項2】
前記逆流保護制御部は、直流電流の指令値Icmdが
Icmd ≦ 0
となる際は前記インバータの直流電流の指令値を
Icmd > 0
に制限することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用インバータの逆流保護装置。
【請求項3】
前記制限値Vlimは、前記燃料電池の定格電圧最大値以上であり、
(燃料電池セルの直列数×水の電解電圧)
以下の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用インバータの逆流保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−149373(P2007−149373A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338607(P2005−338607)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】