説明

燃料電池用インバータの逆流保護装置

【課題】 電流の逆流防止のため直列に挿入するダイオードを取り外した構成とし、インバータの変換効率を向上でき、燃料電池側へ電流が逆流することを防止できて燃料電池の過電圧動作を防止できる燃料電池用インバータの逆流保護装置を提供すること
【解決手段】 逆流保護制御部を備える。この制御部ではインバータの入力側における直流電流Idcと、出力側における交流電力Pとの2系統で逆電流の状態判定を行い、逆電流の状態と判定した際はインバータの制御を動作停止の制御にする。入力側では直流電流Idcをコンパレータ50の反転入力側に送り比較基準の0値と比較することで検出し、出力側では交流電圧Vac,交流電流Iacを乗算器51に取り込んで交流電力Pを演算し、この交流電力Pをコンパレータ52の反転入力側に送り比較基準の下限値Plowと比較することで検出し、これら検出信号をオア回路53へ送り検出を2重化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用インバータの逆流保護装置に関するもので、より具体的には、インバータの出力側は電力系統と接続して連系運転を行うような構成であり、電力源の燃料電池について逆電流および過電圧の検出とその保護を行う構成の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池を用いた電源システムに注目がある。例えば図1に示すように、燃料電池1にインバータ2を接続して交流電力に変換し、インバータ2は既存の電力系統3と接続して連系運転するようにした構成が知られている。この場合、燃料電池1とインバータ2との間にはダイオード4を直列に挿入し、インバータ2側から燃料電池1側へ向かう逆方向の電流を防ぐようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、係る従来の燃料電池用インバータでは以下に示すような問題がある。電流の逆流防止のためのダイオードはPN接合のエネルギ障壁のため順方向での電圧降下があり、これは電力損失になるためインバータ2の変換効率を低下させる原因になっている。また、電流の逆流により燃料電池1の電圧が過電圧になると、発電作用ではなく逆に水を電気分解する作用となり、このため燃料電池1の各セルを破損してしまう。
【0004】
この発明は上記した課題を解決するもので、その目的は、インバータの変換効率を向上でき、燃料電池側へ電流が逆流することを防止できるとともに、燃料電池の過電圧動作を防止できる燃料電池用インバータの逆流保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明に係る燃料電池用インバータの逆流保護装置は、インバータ側から燃料電池側へ向かう逆電流および過電圧を防止するものであって、
前記インバータの制御部に対して逆電流および過電圧の保護動作を指令する逆流保護制御部を備え、前記逆流保護制御部には前記インバータの入力側で検出した直流電圧および直流電流を入力するとともに、前記インバータの出力側で検出した交流電圧および交流電流を入力し、当該制御部は、前記インバータの出力側における交流電圧および交流電流から交流電力を演算し、当該交流電力が逆電流の状態を示すとき、あるいは前記インバータの入力側における直流電流が逆電流の状態を示すときは、前記インバータの制御部に対して動作の停止を指令する構成とした(請求項1)。
【0006】
また、前記逆流保護制御部は、前記交流電力が下限値Plowよりも小値となる際は逆電流の状態であると判定し、前記下限値Plowの設定は前記インバータの無負荷電力P0に関して、
Plow ≧ −P0
と設定するとよい(請求項2)。
【0007】
係る構成にすることにより本発明では、逆電流の状態の判定はインバータの入力側における直流電流と、出力側における交流電力との2系統で行うので、検出が2重となる。そして、逆電流の状態と判定した際は、インバータの制御を通常状態から切り替えて動作停止の制御を行うので、燃料電池側へ電流が逆流することを防止できるとともに、燃料電池の過電圧動作を防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る燃料電池用インバータの逆流保護装置では、逆電流の状態の判定はインバータの入力側における直流電流と、出力側における交流電力との2系統で行うので、検出が2重となり保護動作がより確実に行える。
【0009】
逆電流の状態と判定した際は、インバータの制御を通常状態から切り替えてオフ遮断の制御を行うので、燃料電池側へ電流が逆流することを防止できるとともに、燃料電池の過電圧動作を防止できる。これは、電流の逆流防止のため直列に挿入するダイオードを取り外した構成なのでインバータの変換効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2は、本発明の好適な一実施の形態を示している。本実施の形態において、燃料電池用インバータの逆流保護装置は、逆流保護制御部5を有する。この逆流保護制御部5には、インバータ2の入力側で検出した直流電圧Vdcおよび直流電流Idcを入力するとともに、インバータ2の出力側で検出した交流電圧Vacおよび交流電流Iacを入力し、これら入出力間の状態から判定動作を行い、インバータ2の制御部20に対して逆電流および過電圧の保護動作を指令する構成になっている。
【0011】
インバータ2は、電子スイッチ21と制御部20を有し、電子スイッチ21の入力側に燃料電池1を接続するとともに、出力側は電力系統3へ接続し、交流電力ラインとの連系運転を行うようになっている。また、電子スイッチ21の入力側,出力側の電線路には、それぞれ計器用変流器6(CT:Current Transformer)を配置し、電流の検出を行なう。
【0012】
逆流保護制御部5は、インバータ2の出力側における交流電圧Vacおよび交流電流Iacから交流電力Pを演算し、当該交流電力Pが逆電流の状態を示すとき、あるいはインバータ2の入力側における直流電流Idcが逆電流の状態を示すときは、インバータ2の制御部20に対して動作の停止を指令するようになっている。つまり、この逆流保護制御部5では、インバータ2の出力側については交流電力Pが下限値Plowよりも小値となる際は逆電流の状態であると判定し、下限値Plowの設定はインバータ2の無負荷電力P0に関して、
Plow ≧ −P0
と設定する。そして、インバータ2の入力側については直流電流Idcの正負を監視する構成を採り、直流電流Idcの検出が極性を反転した際は逆電流の状態と言える。
【0013】
逆電流の状態の判定は、具体的には図3に示すように、コンパレータ50により直流電流Idcについて判定を行い、乗算器51,コンパレータ52により交流電力Pについて判定を行い、これらの判定出力はオア回路53に送り、逆電流の状態判定を2重に行う構成にしている。インバータ2の入力側については、直流電流Idcをコンパレータ50の反転入力側に送り、非反転入力側は比較基準として0値を加えておき、コンパレータ50の出力信号をオア回路53へ送る。そして、インバータ2の出力側については、交流電圧Vac,交流電流Iacを乗算器51に取り込んで交流電力Pを演算し、当該交流電力Pをコンパレータ52の反転入力側に送り、非反転入力側は比較基準として交流電力の下限値Plowを加えておき、コンパレータ52の出力信号をオア回路53へ送る。
【0014】
インバータ2では変換動作において損失が生じ、その損失は無負荷運転時に、ある最小値(無負荷電力P0)を示す。したがって例えば、演算した交流電力Pが0値程度では当該インバータ2において無負荷損失を生じている状況であり、マイナス側で下限値Plowよりも小値になる状況ではじめて無負荷損失を下回るので、このとき電力系統3から燃料電池1側に逆に電力を供給してしまい、逆電力の状況になる。この逆電力の状況ではコンパレータ52がH出力となり、オア回路53から逆電流の検出信号を出力し、燃料電池1にとっては逆電流,過電圧の状況なので、インバータ2の制御を通常状態から切り替えて動作停止(オフ遮断)の制御を行う。
【0015】
このように、燃料電池1側に電流が流れ込むような逆流発生時には、インバータ2の制御を通常状態から切り替えて動作停止の制御を行うので、燃料電池1側へ電流が逆流することを防止できるとともに、燃料電池1の過電圧動作を防止できる。そして、電流の逆流防止のため直列に挿入するダイオードを取り外した構成なのでインバータ2の変換効率を向上できる。
【0016】
本発明にあっては逆電流の状態の判定は、インバータ2の入力側における直流電流Idcと、出力側における交流電力Pとの2系統で行うので、検出が2重となり保護動作がより確実に行える。例えば、インバータ2の入力側について直流の定電流制御を行うものでは、その入力側(直流側)に計器用変流器6および継電器を配置して、計器用変流器6により逆電流を検出した際は継電器をオフ遮断させるようにした保護機能を備えるものがある。そうした場合、直流側に設けた計器用変流器6が故障すると逆電流の検出ができなくなり、制御系が不能になって保護機能が使えなくなる。これに対し、本発明ではインバータ2の入力側(直流側)および出力側(交流側)との2系統で逆電流の状態判定を行うので、直流側の測定系が故障したときでも交流側で確実に検出できる。したがって、インバータ2の動作停止が確実に行えて保護動作の信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】燃料電池用インバータの従来の一例を示す構成図である。
【図2】本発明に係る逆流保護装置の一実施の形態を示し、これを適用した燃料電池用インバータの構成図である。
【図3】逆電流の状態判定に係る回路を示す構成図である。
【符号の説明】
【0018】
1 燃料電池
2 インバータ
3 電力系統
5 逆流保護制御部
6 計器用変流器
20 電子スイッチ
21 制御部
50,52 コンパレータ
51 乗算器
53 オア回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ側から燃料電池側へ向かう逆電流および過電圧を防止するものであって、
前記インバータの制御部に対して逆電流および過電圧の保護動作を指令する逆流保護制御部を備え、
前記逆流保護制御部には前記インバータの入力側で検出した直流電圧および直流電流を入力するとともに、前記インバータの出力側で検出した交流電圧および交流電流を入力し、当該制御部は、前記インバータの出力側における交流電圧および交流電流から交流電力を演算し、当該交流電力が逆電流の状態を示すとき、あるいは前記インバータの入力側における直流電流が逆電流の状態を示すときは、前記インバータの制御部に対して動作の停止を指令することを特徴とする燃料電池用インバータの逆流保護装置。
【請求項2】
前記逆流保護制御部は、前記交流電力が下限値Plowよりも小値となる際は逆電流の状態であると判定し、前記下限値Plowの設定は前記インバータの無負荷電力P0に関して、
Plow ≧ −P0
と設定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用インバータの逆流保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−149374(P2007−149374A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338608(P2005−338608)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】