燃料電池用セパレータおよび燃料電池
【課題】本発明の目的は、ガス流路の増大とセパレータと電極の接触抵抗の低減を両立する燃料電池用セパレータを提供することである。
【解決手段】本発明は、ガスが注入されるガス注入口と、複数のリブで流路を構成した流路部と、ガスが排出されるガス排出口とを備える燃料電池用セパレータにおいて、前記リブは高さ方向の中央部にくびれ部を有し、前記ガス注入口またはガス排出口に向かって前記リブのくびれ部の断面積または形状が変化していることを特徴とする。また、前記リブが、第一の凸部と第二の凸部の凸部頂点同士が接続された構造であることを特徴とする。
【解決手段】本発明は、ガスが注入されるガス注入口と、複数のリブで流路を構成した流路部と、ガスが排出されるガス排出口とを備える燃料電池用セパレータにおいて、前記リブは高さ方向の中央部にくびれ部を有し、前記ガス注入口またはガス排出口に向かって前記リブのくびれ部の断面積または形状が変化していることを特徴とする。また、前記リブが、第一の凸部と第二の凸部の凸部頂点同士が接続された構造であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスの化学反応により電気エネルギーを発生する燃料電池に係わり、特に燃料電池用セパレータの流路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料ガスと酸化剤ガスを電気化学反応により電気を供給するものである。燃料電池の重要な構成要素にセパレータがある。セパレータは、燃料ガスと酸化剤ガスを分離し、ガスが均等に電極に行き渡るように工夫された流路構造を持ち、膜・電極接合体(MEA)で発電された電気を誘電する電気誘導性をもつものである。セパレータは黒鉛材料と金属材料のものがあり、切削加工を要する従来の黒鉛材料に比べ、金属材料のセパレータは、金属材料をプレス成形にて流路を形成したものであり、コスト低減化や薄型化・軽量化が可能である反面、腐食への対策が必要になる。燃料電池の高出力密度化を図るために、流路に多孔質部材を用いたセパレータや、黒鉛粉末を樹脂に混ぜペースト化したものを射出成型や印刷などの手段により微細化した流路をもつセパレータが登場している。流路を微細化することにより、電極に供給するガスを細かく均等化することで電気化学反応を活性化させ、小さな容積で大きな電気エネルギーを生成しようとするものである。
【0003】
セパレータの流路構造に関する先行技術としては以下のようなものがある。
【0004】
特許文献1には、ダイスを用い伸線加工を経て金属ワイヤをプレート上に多列に固定しリブを形成する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−43453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス流路を微細化し電極に供給するガス容積を増加させることは、同時に流路領域におけるリブの占める体積が小さくなり、リブと電極とが接触する部分が減少することを意味する。このため、リブと電極との間に生じる電気的接触抵抗が大きくなり、発電性能が低下する。導電体の抵抗Rは、長さLに比例し、断面積Aに反比例する。導電体の抵抗率をρとすると、導電体の抵抗Rは次の式で表せる。
【0007】
R=ρL/A (1)
この式からも分かるように、抵抗を小さくするには、断面積A、すなわち接触面積を大きくすることが有効である。
【0008】
また、電気化学反応は次の化学式に示すように、燃料ガスに純水素、酸化剤ガスに空気を用いた場合、燃料極側では燃料ガスが消費され、空気極側では、空気中の一つの酸素分子が電気化学反応により2つの水蒸気分子になる。仮に空気中の酸素濃度が20%として、電気化学反応により全ての酸素が水蒸気に変化した場合、出口で酸化剤ガスの体積は1.2倍に増加する。また、燃料利用率を60%で燃料電池を運転した場合、出口で燃料ガスの体積は0.4倍に減少する。つまり、燃料ガスはセパレータ流路を流れるに従い消費されガス流量が減少していく一方、酸化剤ガスはセパレータ流路を流れるに従い水蒸気が生成しガス流量が増加していく。この結果、燃料極側流路では、下流に従い減少し流れが失速し、流れの淀みや斑が生じ性能低下や電解質膜を含む電極部材の劣化の原因となる。一方、空気極側流路では、下流に従い流れが速くなり。また相対的に酸素濃度が小さくなるので、電気化学反応が難しくなる。
【0009】
[燃料極(酸化)]2H2→4H++4e-
[空気極(還元)]O2+4H++4e-→2H2O
このように電気化学反応にともない、流路の下流に向かうに従って、ガス流量や組成が変化するのでガスの流れ領域を調整する必要がある。すなわち、燃料極側流路では、徐々に流路を狭め、局所的なガス圧力の低下を防止し、ガスの淀みや斑を改善する必要がある。また、空気極側流路では、徐々に流路を広め、流速が早くなるのを防いで、ガス流量増に伴う流れ難さの低減や、未反応酸素ガスが電極に接触する機会を増やし効率を高める必要がある。
【0010】
特許文献1に開示されたダイスに「エ」の形のものを用いれば、流路におけるガス容積を増加しつつ、リブと電極の接触部を拡大させ、電気抵抗を軽減することができる。しかしながら、流れ領域を徐々に増やすためには、流路を構成するリブまたは多孔質体の間隔(空隙率)を増やすことになり、この結果、リブまたは多孔質体と電極の接触面積が小さくなることによる発電領域の縮小や接触抵抗の増加については考慮されていない。さらに、上流部と下流部ではリブまたは多孔質体が電極に接する面積が異なると、電極全域に均等な面圧で当たらなくなり、発電斑を引き起こすばかりでなく、電解質膜を含む電極部材に局所的な疲労をまねき、電極部材の寿命に影響が懸念される。
【0011】
本発明の目的は、ガス流路の増大とセパレータと電極の接触抵抗の低減を両立する燃料電池用セパレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ガスが注入されるガス注入口と、複数のリブで流路を構成した流路部と、ガスが排出されるガス排出口とを備える燃料電池用セパレータにおいて、前記リブは高さ方向の中央部にくびれ部を有し、前記ガス注入口またはガス排出口に向かって前記リブのくびれ部の断面積または形状が変化していることを特徴とする。
【0013】
また、前記リブが、第一の凸部と第二の凸部の凸部頂点同士が接続された構造であることを特徴とする。
【0014】
これにより、リブ中央部をくびらせることができ、接触面を維持したままガス流路領域を拡大させることができる。また、第一の凸部および第二の凸部において、凸部上面の面積aと、凸部下面の面積bとの比k(=a/b)が、ガス流路の出口または入口に向かって、小さくなるように設定する。この結果、凸形状下面の面積bを固定した場合を考えると、ガス流路の出口または入口に向かって電極との接触面積が一定のまま、ガスの流れ領域が拡大され、電気化学反応に伴うセパレータ流路を流れるガス流量の変化に応じて上流と下流でガスの流れ領域を調整することができる。さらに、第一の凸部および第二の凸部を楕円状の円錐台で構成し、楕円の長軸の向きを調整することで、ガスの流れ方向を変えることができ、流配を改善する手段を提供することができる。
【0015】
一方、前記リブは、黒鉛粉末を熱硬化性樹脂で結合させた複合体を金型に押し付けて第一の凸部および第二の凸部を別々に成型し、第一の凸部および前記第二の凸部を接合して形成する。これにより、一つの金型から作成する場合よりも、複雑な形状を作成することができる。またリブ部の形状は、ガス流の方向を誘導するブレード形状のリブであっても良い。こうすることで、ガスの流れを制御可能になり、たとえば羽を傾けて電極面にガスが当たるように流れを向けてやれば、電気化学反応が効率よく行われ性能が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、燃料電池用セパレータのガス流路の増大とセパレータと電極の接触抵抗の低減の両立が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に関する第1の実施の形態を示した燃料電池用セパレータ。
【図2】従来のリブ形状を示した図。
【図3】本発明の第1の実施形態を示したリブ形状を説明する図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示したリブ形状を説明する図。
【図5】本発明の第1の実施形態を示したリブ形状を用いた場合の効果を説明する図。
【図6】くびれ具合をパラメータ化したリブ形状を説明する図。
【図7】パラメータ化したリブ形状を用いて作成する燃料電池用セパレータを説明する図。
【図8】パラメータ化したリブ形状とセパレータ流路領域上の配置との関係を説明する図。
【図9】パラメータ化したリブ形状を用いてセパレータ流路構造を決めるための処理フローを示した図。
【図10】本発明の燃料電池用セパレータの作成手法を説明する図。
【図11】本発明の燃料電池用セパレータの作成手法を説明する図。
【図12】本発明のセパレータを用いて燃料電池の作成を説明する図。
【図13】本発明のセパレータを用いて作成した燃料電池の断面を説明する図。
【図14】本発明のセパレータを用いて作成した燃料電池の効果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明に関する第1の実施の形態を示した燃料電池用セパレータの概念図である。セパレータ100は、燃料ガスと酸化剤ガスを分離し、ガスが均等に行き渡るように工夫された流路構造を持ち、後で述べる膜・電極接合体(MEA)で発電された電気を誘電する。セパレータ100は、例えば、幅100mm,長さ180mm,厚さ0.3mmとする黒鉛製の材料を用いて形成したもので、ガスが注入される入口102と、流路全域にガスが均等に流れるようにガス流を振り分けるために、複数のリブで流路を構成した流路部101、ガスが排出される出口103をもつ。セパレータ100は、流路部101上にMEAが設置され、MEAで発電した電気を誘電する。流路部101は複数のリブ部104で構成され、流路部101でMEAに接するリブ部104の接触面105の部分である。したがって接触面105の面積が大きければ大きいほど接触抵抗が小さくなり、発電した電気を効率よく誘電することができる。
【0020】
しかしながら、従来技術にあるように、例えばリブ形状を、図2に示す円柱形のリブ形状201を用いた場合、円柱は基板の根元202から電極に接触する先端の接触面203に向かって、垂直に伸びているか、または、金型などの制約から、基板の根元から電極に接触する先端の面に向かってテーパーを付けざるを得ない形状となる。このため、接触抵抗を小さくするためにMEAに接するリブ部201の接触面203の面積を大きくすれば、リブ自体の体積が多くなり、ガス流路に占めるリブ体積の割合が多くるので、ガスの流れる領域が狭まる。この結果、ガスが流れにくくなり、圧力損失の増加などの不具合が生ずる。本発明におけるリブ形状の一例を図3に示す。
【0021】
図3に示す本発明のリブ形状301は、円柱形のリブ形状201に対し、円柱の中央部でくびれた形になっている。このため、円柱形のリブ形状201と比べ、MEAに接するリブ部の接触面の面積が同じであっても、リブの体積を小さくすることができる。例えば、円柱形のリブ形状201を直径0.5mm,高さ0.5mmとし、本発明のリブ形状301を、図3にあるように、上下の直径を0.5mm、中央部の直径を0.3mm、高さを0.5mmとした場合、円柱形のリブ形状201の体積は0.098mm3、本発明のリブ形状301の体積は0.064mm3となり約35%の体積削減となる。
【0022】
この結果、従来のような円柱形リブ形状201に対し、MEAに接するリブ部の接触面を大きくしても、ガスの流れ領域を確保することができるので、接触抵抗を削減でき燃料電池の性能を向上させることができる。
【0023】
図1にある本発明のセパレータ100では、流路を構成する流路部101に、図3にしめした円柱の中央部でくびれたリブ形状301を用いており、流路部101におけるMEAと接する流路部101の接触面積を確保しながら、リブのくびれ部でガスの流れ領域を拡大しているところを特徴としている。
【0024】
図5は、流路を構成するリブ部に、図2にある従来の円柱形のリブ形状201を用いて流路を構成した場合と、図3に示した円柱の中央部でくびれたリブ形状301を用いて流路を構成した場合について、流路領域とリブ−電極接触面積を試算し比較した結果をまとめたものである。図5にある形状モデルNo.01は、長さ25mm,高さ25mm,厚さ0.5mmの流路領域に、図2にある直径0.5mmの円柱形リブ形状201を、0.75mm間隔で格子状に配列したものである。この時の流路領域に占めるガスの流れ領域は65.8%ととなり、リブ−電極接触面積は6.48mm2となった。一方、形状モデルNo.02は、長さ25mm,高さ25mm,厚さ0.5mmの同じ流路領域に、形状モデルNo.01と同じ図2にある直径0.5mmの円柱形リブ形状201を用いて、0.575mmの間隔で格子状に配列して流路を構成した。この場合、流路領域に占めるガスの流れ領域は41.9%となり、リブ−電極接触面積は8.44mm2となった。形状モデルNo.01における流路領域に占めるガスの流れ領域を1とした場合、形状モデルNo.02における流路領域に占めるガスの流れ領域は0.64となり、約40%縮小されるが、形状モデルNo.01におけるリブ−電極接触面積を1とした場合、形状モデルNo.02におけるリブ−電極接触面積は1.3となり、約30%拡大される。このように、リブとリブの間隔を狭めれば、リブと電極との接触面積が拡大し(1)式から接触抵抗が小さくなり、発電性能は向上するが、ガスの流れ領域が約40%縮小されるため、ガスが流れにくくなり圧力損失が増加し、発電の効率が悪くなる。
【0025】
そこで、本発明の図3に示した円柱の中央部でくびれたリブ形状301を用いて、形状モデルNo.02に対し、流路を構成した。その結果、流路領域に占めるガスの流れ領域が48%拡大し、形状モデルNo.01における流路領域に占めるガスの流れ領域を1とした場合、0.95となった。一方、中央部がくびれただけなのでリブ−電極接触面積は変らず、形状モデルNo.01におけるリブ−電極接触面積を1とした場合、形状モデルNo.02におけるリブ−電極接触面積は1.3になる。すなわち、形状モデルNo.02におけるリブ−電極接触面積を維持したまま、おおよそ、形状モデルNo.01におけるガスの流れ領域を実現できたことになる。
【0026】
図4は、本発明のリブ形状に関する第2の実施の形態を示した燃料電池用セパレータのリブ形状を示す概念図である。図4にあるリブ形状401は、高さの半分の所で、上部形状402と下部形状403がそれぞれ別の形状を持っている。たとえば、図4に示すように、下部形状403は、上面が直径0.3mmの円で下面が直径0.5mmの円で高さが0.25mmである円錐台に対し、上部形状402は、一片が0.5mmで高さが0.25mmの直方体に、中心から0.15mmの所で左右に斜めに切り込んだ形状をしている。リブ形状401は、見取り図410を見ると、円錐台に左右に三角形の翼が付いたような形状をしており、矢印の方向からガスが流れて三角形の翼に当たると、ガスの流れは下方向に向きを変える。本リブ形状401の下側にMEAで構成される電極を、上側にセパレータの基板が来るように配置すれば、ガスは電極に向かって流れることになり、電気化学反応に必要なガスの供給が活発に行われ、効率が向上される。
【0027】
図6に示したリブ形状601は、図3に示した本発明の円柱の中央部でくびれたリブ形状301について、くびれ具合をパラメータ化したものである。例えば、本発明の円柱の中央部でくびれたリブ形状301を、リブ形状601のように2つの同じ円錐台を上下対象に接続することで構成した場合、円錐台602において、上面の円の直径をa、下面の円の直径をbとし、この円錐台のくびれ比kをk=a/bとする。また、円錐台603のように、上面の円を、一方向に縮小したときの長さcとなるような楕円にした場合、楕円比dをd=c/aとする。さらに、円錐台604において、楕円の長軸の向きをdrとする。
【0028】
このように、本発明の円柱の中央部でくびれたリブ形状301をパラメータ化し、セパレータ流量領域に配置するリブの位置により、くびれ比k,楕円比d,長軸の向きdrを設定することで、流れ領域を変化するガス流量に合わせて調整することができる。
【0029】
図7は、図6で説明した、くびれ比k,楕円比d,長軸の向きdrでパラメータ化したリブ形状601を用いて流路構成したセパレータに関する実施例を示したものである。図図7(b)はセパレータ701を真上から見た図である。図7(b)に示すように、セパレータ701は、横が10mm、縦が8mm、厚さ0.5mmの流路領域をもち、入口702,出口703をもつ。流路領域には、高さが0.5mmのパラメータ化したリブ形状601が格子状に1mmピッチの間隔で、8行×9列で配置されている。図6で説明した下面の円の直径bを0.5mmに固定し、真上から見た場合、図7(b)のように、電極と接する面が、直径0.5mmの円の格子配列で、電極と均等に接することが分かる。
【0030】
リブ形状のくびれ比k,楕円比d,長軸の向きdr操作して、出口703側に向かってガスの流れ領域を拡大した場合のくびれ部における流路断面図は図7(c)のようになる。図7(c)は、セパレータ701を真横から見た図7(a)において、上面から0.25mmの位置705、すなわちリブ形状の中央部に位置する位置の断面を見た図である。図7(c)に示すように、流路の出口に向かって、徐々にリブ形状のくびれ具合が強まって、流路領域におけるリブ体積の占める割合が減少し、変わりにガスの流れる領域が大きくなっているとともに、出口に向かって楕円状にくびれた形状になっているので流れ抵抗が軽減され、流れやすくなっていることが分かる。したがって、図7に示すセパレータ701を空気極側に用いれば、電気化学反応に伴い、流路の下流域でガス流量が増え圧力増加に伴う流れ難さを解消でき、さらに、流れ領域が徐々に広まるので、くびれ形状を持たない場合に比べ流れが緩やかになり、未反応酸素が電極に触れる確立が高くなって発電効率が向上される。リブと電極が接する面が全域で均等であるため、加圧斑や発電斑による性能低下、および電解質膜を含む電極部の劣化を低減することができる。
【0031】
図8は、図7に説明したように、くびれ比k,楕円比d,長軸の向きDrでパラメータ化したリブ形状601を用いて流路を構成する場合、流路領域におけるリブ位置ごとにパラメータ値を設定する手法を説明するものである。ここでは図7の実施例にあるように、流路領域において、リブ形状601は、下面の円の直径bを0.5mmに固定し、格子状に1mmピッチの間隔で、8行×9列で配置した場合について考え、リブ毎に、リブ形状のくびれ比k,楕円比d,長軸の向きdrの値を設定し、出口側に向かってガスの流れ領域を拡大する例について説明する。まず、リブ形状601のパラメータと、セパレータの流路領域を関連付けるために、図8(a)に示す基準点Aを設定する。図8(a)は、図7において、セパレータ701をリブ形状の中央部で切断した時の断面図、図7(c)と同じものである。基準点Aは、例えば図8(a)のように入口802から出口803に向かってガスが流れるとすると、流路領域の中央線801と流路領域の最上位との交点804と、出口803と流路領域が接する右上の点805とで引ける補助線806と、流路領域の最下位の位置する返の延長線807との交点であるとする。
【0032】
そこで、リブ形状601の長軸の向きdrを、リブが配置された中心位置と基準点Aとを結ぶ線に沿って、基準点Aを向くように、リブ形状の長軸の向きdrを設定する。たとえば、図8(a)において、流路領域における任意のリブ810について、その中心位置と基準点Aとを結ぶ線811にそって、基準点Aを向くようにリブ810の長軸の向きdr812を設定する。
【0033】
また、図8(b)において、リブが配置された中心位置と基準点Aとの距離815を、図8(b)に示すように入口802の領域の中心位置813と基準点Aとの距離814で割った値hを元にくびれ比kを算出する。くびれ比kが決まれば、セパレータ701の実施例では、下面の円の直径bを0.5mmに固定してあるので、上面の円の直径aが求められる。同様にしてhを基にして、楕円比dを決めれば、上面の円の直径a(楕円の長軸の長さに等しい)からcが求められる。hを元にくびれ比kおよび楕円比dを算出する方法には、例えば、圧力損失つまりガスの流れ難さは流速の二乗に比例することから、指数的要素を取り入れ、kおよびd=M・hN(MおよびNは定数)としても良い。本実施例では、M=2,N=1.1を用い、但し、kおよびd>1の場合はkおよびd=1とした。
【0034】
図9は、図6で説明した、くびれ具合をパラメータ化したリブ形状において、セパレータの流路領域中に配置される位置からリブ形状のパラメータ化を決める処理をフローチャートにまとめたものである。まず、ステップ(以下Sと記述)1において、図6で説明した、パラメータ化したリブ形状の下面の直径bを決める。この値は、電極と接する面積を決める値であり重要である。この値が決まれば、セパレータの限られた流路領域に配置できるリブの上限が決まる。次に、S2において、リブを配置する方式、すなわち格子状か千鳥状か、あるいは、出口または入口付近で配置ピッチを広げまたは狭めるなどのレイアウトを実施するのかを決め、具体的な配置ピッチを決める。次にS3において、セパレータ流路領域の形状に基づき基準点Aを設定する。基準点Aは、リブ形状を決めるパラメータと流路領域中のリブの位置との関係をリンクさせる点であり、例えば、流路の出口に向かってリブ形状のくびれ具合を調整する場合は、基準点Aは流路の出口付近に設定する。次にS4において、流路中に配置されたリブに対して、楕円状のくびれをつけた場合、楕円の長軸の向きdrを基準点Aに向かせる処置を行うものである。このことにより、流れがよりスムーズになり燃料電池の性能を向上させる。S5およびS6では、流路中に配置されたリブに対して、図6で説明した、くびれ比kおよび楕円比dを基準点Aとの距離の比に基づいて算出し、この値から、リブ形状を決める上面の円の直径および、上面の円を一方向に縮小したときの長さcを決めるものである。
【0035】
図10は、図1で説明した本発明のセパレータ100の製造方法を示したものである。セパレータ100に用いるリブ形状301およびリブ形状401およびリブ形状601は、従来の金型による成型や切削加工では作成ができず、2つの要素を別々に作成し接続する手段により作成することにした。ずなわち、図10にあるように、リブ部1およびリブ部2を別々に作成し図11のように、リブ部1およびリブ部2をそれぞれのリブ結合面で結合させ、セパレータを作成するものである。
【0036】
例えば、本発明に関する第1の実施の形態を示したセパレータ100においては、リブ部1は凸形状をもつ第一のリブ部として、凸形状の先端面に凸また凹のあわせ部分1102を持たせ、リブ部2は凸形状をもつ第二のリブ部として、凸形状の先端面にも凹また凸のあわせ部分1103を持ち、それぞれのあわせ部分で接合しセパレータのリブを形成する。このように第一のリブ部および第二のリブ部にあわせ部分を持たせることで、接合が容易になり、第一のリブ部と第二のリブ部における接合部分での機械的強度や電気的接続性の不具合を回避できる。ここで、第一のリブ部および第二のリブ部にあわせ部分をそれぞれ凹計上にし、接続用の支柱を用いても良い。
【0037】
凸形状をもつ第一のリブ部は、黒鉛粉末を熱硬化性樹脂で結合させた複合体を金型に押し付けて成型し、強度や作り易さを考慮して、凸形状のリブ同士はそれぞれ接続され、図10のリブ部1に示すように一つの部材で構成されていても良い。
【0038】
凸形状をもつ第二のリブ部は、黒鉛製の基板上に、金型に充填した黒鉛粉末を熱硬化性樹脂で結合させた複合体を押し付けて成型し、作成する。
【0039】
複合体の組成は、例えば、成形性および強度に大きく関与する熱硬化性樹脂の組成割合を10〜40重量%の範囲に設定し、接触抵抗に大きく関与する黒鉛粉末として平均粒径が15〜125μmの範囲にし、成形材料である複合体の流動性を確保し、成形性を実現するとともに、振動等による損傷を生じない強度を確保しながら、誘電性を持たせた燃料電池用セパレータを製造することが可能である。本発明で用いられる熱硬化性樹脂としては、たとえば黒鉛粉末との濡れ性に優れたフェノール樹脂がよく、そのほか、ポリカルボジイミド樹脂,エポキシ樹脂,フルフリルアルコール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,アルキド樹脂などのように、加熱時に熱硬化反応を起こし、燃料電池の運転温度及び供給ガス成分に対して安定なものであればよい。また、本発明で用いられる黒鉛粉末としては、天然黒鉛,人造黒鉛,カーボンブラック、等があり、コストなどの条件により選択することができる。
【0040】
次に、黒鉛粉末を金型に充填した後、金型を150〜200℃に加熱し昇温するとともに、プレスを用いて10〜100MPaの範囲で面圧を加え、所定形状に樹脂成形されたリブ部を作成する。
【0041】
図12は、本発明のセパレータを用いて作成した燃料電池セルを説明する図である。セパレータには、図1で説明したセパレータ100が使われている。燃料電池セルは発電の基本ユニットで、膜・電極接合体(MEA)1202を、燃料極側セパレータ1201と、空気極側セパレータ1203とで両側から挟むようにして作成される。膜・電極接合体(MEA)1202は、セパレータ1201の流路領域をカバーする広さを持つ必要がある。例えば、流路の領域を幅10mm、高さ8mmとすると、膜・電極接合体(MEA)1202も幅10mm、高さ8mmとなる。それぞれの極でセパレータとMEAの間にガスケット1211および1212を挟み、ガスが漏れないようにしてある。組みあがった燃料電池セルを横から見ると1205のようになる。
【0042】
図13は、燃料電池セルを切断したときの断面図を厚さ方向に拡大して示したものである。図13において、燃料極側セパレータ1301と空気極側セパレータ1302がMEA1303を挟み込むように構成されており、燃料極側セパレータ1301において、流路の断面1305を燃料ガスが通り、リブ部の断面1307は、MEA1303に接触し、MEA1303で発電した電気を伝導する。同様に、空気極側セパレータ1302の流路の断面1306は、空気などの酸化剤ガスが通り、リブ部の断面1308は、MEA1303に接触し、MEA1303で発電された電気を誘電する。中央両側に見える断面1309,1310は、電気化学反応に関連するガスが外にもれ出ないためのガスシールの断面である。
【0043】
次に、膜・電極接合体(MEA)1303について説明する。MEAは、固体高分子電解質膜の両側にカソード側電極およびアノード側電極が挟み込む形で構成され、固体高分子電解質膜には、プロトン伝導性を有するイオン交換膜、例えば、ナフィオン117(Nafion117,175μm、Du pont社製)等を用いたフッ素系イオン交換膜が用いられ、カソード側電極およびアノード側電極は、それぞれ触媒反応層と拡散層とで形成される。カソード側拡散層およびアノード側拡散層は、燃料ガスまたは酸化剤ガスの拡散性を高め、発電により発生した反応生成水の排出機能、および電子伝導性を併せ持つ必要があり、例えば、カーボンペーパ,カーボンクロス等の導電性多孔質材料に撥水処理を施したものを適用することができる。ここでは、導電性多孔質材料に厚さ0.2mmのカーボン不織布(東レ社製TGP−H060)を用い、撥水処理を施すためフッ素系撥水剤のエマルジョン液(ダイキン製D1)に浸し、乾燥後350℃で10分間熱処理し、拡散層を形成した。
【0044】
触媒反応層は、触媒金属を担持した導電性炭素粒子と高分子電解質を主成分とした厚さ0.005mm程度の薄膜である。アノード側触媒反応層には、平均一次粒子径30nmを持つ導電性炭素粒子であるケッチェンブラック(AKZOChemie社製)に、白金とルテニウムを、それぞれ25重量%担持させたアノード用触媒担持粒子を使用した。また、カソード側触媒反応層には、ケッチェンブラックに、白金を50重量%担持させたカソード用触媒担持粒子を使用した。カソード側触媒反応層およびアノード側触媒反応層は、それぞれの触媒担持粒子をイソプロパノール水溶液に分散させた溶液と、高分子電解質、例えばナフィオン117をエタノールに分散させた溶液とを、触媒担持粒子と高分子電解質との重量比を1:1になるように混合した後、ビーズミルで高分散させることによりカソード用とアノード用のスラリーを作製し、先に作成したカソード側拡散層およびアノード側拡散層にスプレークオーターを用いて塗布し、これを大気中常温で6時間乾燥させることで形成させた。このようにして、それぞれの拡散層上にカソード側触媒反応層およびアノード側触媒反応層を形成させることで、カソード側電極とアノード側電極を作成した。
【0045】
図14はセパレータに、本発明のくびれをもつリブ形状601で流路構成したセパレータ701を用いた燃料電池セルと、くびれを持たないリブ形状201を使用したセパレータを用いた場合の2つの燃料電池セルを作成し、性能を比較したものである。ここでは、空気極側に空気を、燃料極側に純水素を、それぞれポンプを用いて注入し、電子負荷装置を用いて性能特性を計測した。酸素利用率が60%、水素利用率が80%になるように、注入する空気および水素の流量を調整し、電子負荷装置の電流密度I[A/cm2]を徐々に増加させ、その時々の燃料電池用セルの電圧E[V]を測定し、電流密度Iと電圧Eの積を電力W[W/cm2]とし、算出した。図14において、上側の曲線1401は本発明のくびれをもつリブ形状601で流路構成した燃料電池用セルの特性であり、下側の曲線1402は比較に用いた、くびれを持たないリブ形状201で流路構成した燃料電池用セルの特性である。図14から、本発明に関する実施の形態を示した燃料電池用セルの方が、くびれを持たないリブ形状201で流路構成した燃料電池用セルよりも、高い電力を発生させることができ、くびれをもつリブ形状601で流路構成の効果が検証できた。
【符号の説明】
【0046】
100 セパレータ
101 流路部
102 ガスが注入される入口
103 ガスが排出される出口
104 リブ部
105,203,303 MEAに接するリブ部の接触面
201,301,401 リブ形状
202,302 根元
402 上部形状
403 下部形状
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスの化学反応により電気エネルギーを発生する燃料電池に係わり、特に燃料電池用セパレータの流路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料ガスと酸化剤ガスを電気化学反応により電気を供給するものである。燃料電池の重要な構成要素にセパレータがある。セパレータは、燃料ガスと酸化剤ガスを分離し、ガスが均等に電極に行き渡るように工夫された流路構造を持ち、膜・電極接合体(MEA)で発電された電気を誘電する電気誘導性をもつものである。セパレータは黒鉛材料と金属材料のものがあり、切削加工を要する従来の黒鉛材料に比べ、金属材料のセパレータは、金属材料をプレス成形にて流路を形成したものであり、コスト低減化や薄型化・軽量化が可能である反面、腐食への対策が必要になる。燃料電池の高出力密度化を図るために、流路に多孔質部材を用いたセパレータや、黒鉛粉末を樹脂に混ぜペースト化したものを射出成型や印刷などの手段により微細化した流路をもつセパレータが登場している。流路を微細化することにより、電極に供給するガスを細かく均等化することで電気化学反応を活性化させ、小さな容積で大きな電気エネルギーを生成しようとするものである。
【0003】
セパレータの流路構造に関する先行技術としては以下のようなものがある。
【0004】
特許文献1には、ダイスを用い伸線加工を経て金属ワイヤをプレート上に多列に固定しリブを形成する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−43453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス流路を微細化し電極に供給するガス容積を増加させることは、同時に流路領域におけるリブの占める体積が小さくなり、リブと電極とが接触する部分が減少することを意味する。このため、リブと電極との間に生じる電気的接触抵抗が大きくなり、発電性能が低下する。導電体の抵抗Rは、長さLに比例し、断面積Aに反比例する。導電体の抵抗率をρとすると、導電体の抵抗Rは次の式で表せる。
【0007】
R=ρL/A (1)
この式からも分かるように、抵抗を小さくするには、断面積A、すなわち接触面積を大きくすることが有効である。
【0008】
また、電気化学反応は次の化学式に示すように、燃料ガスに純水素、酸化剤ガスに空気を用いた場合、燃料極側では燃料ガスが消費され、空気極側では、空気中の一つの酸素分子が電気化学反応により2つの水蒸気分子になる。仮に空気中の酸素濃度が20%として、電気化学反応により全ての酸素が水蒸気に変化した場合、出口で酸化剤ガスの体積は1.2倍に増加する。また、燃料利用率を60%で燃料電池を運転した場合、出口で燃料ガスの体積は0.4倍に減少する。つまり、燃料ガスはセパレータ流路を流れるに従い消費されガス流量が減少していく一方、酸化剤ガスはセパレータ流路を流れるに従い水蒸気が生成しガス流量が増加していく。この結果、燃料極側流路では、下流に従い減少し流れが失速し、流れの淀みや斑が生じ性能低下や電解質膜を含む電極部材の劣化の原因となる。一方、空気極側流路では、下流に従い流れが速くなり。また相対的に酸素濃度が小さくなるので、電気化学反応が難しくなる。
【0009】
[燃料極(酸化)]2H2→4H++4e-
[空気極(還元)]O2+4H++4e-→2H2O
このように電気化学反応にともない、流路の下流に向かうに従って、ガス流量や組成が変化するのでガスの流れ領域を調整する必要がある。すなわち、燃料極側流路では、徐々に流路を狭め、局所的なガス圧力の低下を防止し、ガスの淀みや斑を改善する必要がある。また、空気極側流路では、徐々に流路を広め、流速が早くなるのを防いで、ガス流量増に伴う流れ難さの低減や、未反応酸素ガスが電極に接触する機会を増やし効率を高める必要がある。
【0010】
特許文献1に開示されたダイスに「エ」の形のものを用いれば、流路におけるガス容積を増加しつつ、リブと電極の接触部を拡大させ、電気抵抗を軽減することができる。しかしながら、流れ領域を徐々に増やすためには、流路を構成するリブまたは多孔質体の間隔(空隙率)を増やすことになり、この結果、リブまたは多孔質体と電極の接触面積が小さくなることによる発電領域の縮小や接触抵抗の増加については考慮されていない。さらに、上流部と下流部ではリブまたは多孔質体が電極に接する面積が異なると、電極全域に均等な面圧で当たらなくなり、発電斑を引き起こすばかりでなく、電解質膜を含む電極部材に局所的な疲労をまねき、電極部材の寿命に影響が懸念される。
【0011】
本発明の目的は、ガス流路の増大とセパレータと電極の接触抵抗の低減を両立する燃料電池用セパレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ガスが注入されるガス注入口と、複数のリブで流路を構成した流路部と、ガスが排出されるガス排出口とを備える燃料電池用セパレータにおいて、前記リブは高さ方向の中央部にくびれ部を有し、前記ガス注入口またはガス排出口に向かって前記リブのくびれ部の断面積または形状が変化していることを特徴とする。
【0013】
また、前記リブが、第一の凸部と第二の凸部の凸部頂点同士が接続された構造であることを特徴とする。
【0014】
これにより、リブ中央部をくびらせることができ、接触面を維持したままガス流路領域を拡大させることができる。また、第一の凸部および第二の凸部において、凸部上面の面積aと、凸部下面の面積bとの比k(=a/b)が、ガス流路の出口または入口に向かって、小さくなるように設定する。この結果、凸形状下面の面積bを固定した場合を考えると、ガス流路の出口または入口に向かって電極との接触面積が一定のまま、ガスの流れ領域が拡大され、電気化学反応に伴うセパレータ流路を流れるガス流量の変化に応じて上流と下流でガスの流れ領域を調整することができる。さらに、第一の凸部および第二の凸部を楕円状の円錐台で構成し、楕円の長軸の向きを調整することで、ガスの流れ方向を変えることができ、流配を改善する手段を提供することができる。
【0015】
一方、前記リブは、黒鉛粉末を熱硬化性樹脂で結合させた複合体を金型に押し付けて第一の凸部および第二の凸部を別々に成型し、第一の凸部および前記第二の凸部を接合して形成する。これにより、一つの金型から作成する場合よりも、複雑な形状を作成することができる。またリブ部の形状は、ガス流の方向を誘導するブレード形状のリブであっても良い。こうすることで、ガスの流れを制御可能になり、たとえば羽を傾けて電極面にガスが当たるように流れを向けてやれば、電気化学反応が効率よく行われ性能が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、燃料電池用セパレータのガス流路の増大とセパレータと電極の接触抵抗の低減の両立が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に関する第1の実施の形態を示した燃料電池用セパレータ。
【図2】従来のリブ形状を示した図。
【図3】本発明の第1の実施形態を示したリブ形状を説明する図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示したリブ形状を説明する図。
【図5】本発明の第1の実施形態を示したリブ形状を用いた場合の効果を説明する図。
【図6】くびれ具合をパラメータ化したリブ形状を説明する図。
【図7】パラメータ化したリブ形状を用いて作成する燃料電池用セパレータを説明する図。
【図8】パラメータ化したリブ形状とセパレータ流路領域上の配置との関係を説明する図。
【図9】パラメータ化したリブ形状を用いてセパレータ流路構造を決めるための処理フローを示した図。
【図10】本発明の燃料電池用セパレータの作成手法を説明する図。
【図11】本発明の燃料電池用セパレータの作成手法を説明する図。
【図12】本発明のセパレータを用いて燃料電池の作成を説明する図。
【図13】本発明のセパレータを用いて作成した燃料電池の断面を説明する図。
【図14】本発明のセパレータを用いて作成した燃料電池の効果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明に関する第1の実施の形態を示した燃料電池用セパレータの概念図である。セパレータ100は、燃料ガスと酸化剤ガスを分離し、ガスが均等に行き渡るように工夫された流路構造を持ち、後で述べる膜・電極接合体(MEA)で発電された電気を誘電する。セパレータ100は、例えば、幅100mm,長さ180mm,厚さ0.3mmとする黒鉛製の材料を用いて形成したもので、ガスが注入される入口102と、流路全域にガスが均等に流れるようにガス流を振り分けるために、複数のリブで流路を構成した流路部101、ガスが排出される出口103をもつ。セパレータ100は、流路部101上にMEAが設置され、MEAで発電した電気を誘電する。流路部101は複数のリブ部104で構成され、流路部101でMEAに接するリブ部104の接触面105の部分である。したがって接触面105の面積が大きければ大きいほど接触抵抗が小さくなり、発電した電気を効率よく誘電することができる。
【0020】
しかしながら、従来技術にあるように、例えばリブ形状を、図2に示す円柱形のリブ形状201を用いた場合、円柱は基板の根元202から電極に接触する先端の接触面203に向かって、垂直に伸びているか、または、金型などの制約から、基板の根元から電極に接触する先端の面に向かってテーパーを付けざるを得ない形状となる。このため、接触抵抗を小さくするためにMEAに接するリブ部201の接触面203の面積を大きくすれば、リブ自体の体積が多くなり、ガス流路に占めるリブ体積の割合が多くるので、ガスの流れる領域が狭まる。この結果、ガスが流れにくくなり、圧力損失の増加などの不具合が生ずる。本発明におけるリブ形状の一例を図3に示す。
【0021】
図3に示す本発明のリブ形状301は、円柱形のリブ形状201に対し、円柱の中央部でくびれた形になっている。このため、円柱形のリブ形状201と比べ、MEAに接するリブ部の接触面の面積が同じであっても、リブの体積を小さくすることができる。例えば、円柱形のリブ形状201を直径0.5mm,高さ0.5mmとし、本発明のリブ形状301を、図3にあるように、上下の直径を0.5mm、中央部の直径を0.3mm、高さを0.5mmとした場合、円柱形のリブ形状201の体積は0.098mm3、本発明のリブ形状301の体積は0.064mm3となり約35%の体積削減となる。
【0022】
この結果、従来のような円柱形リブ形状201に対し、MEAに接するリブ部の接触面を大きくしても、ガスの流れ領域を確保することができるので、接触抵抗を削減でき燃料電池の性能を向上させることができる。
【0023】
図1にある本発明のセパレータ100では、流路を構成する流路部101に、図3にしめした円柱の中央部でくびれたリブ形状301を用いており、流路部101におけるMEAと接する流路部101の接触面積を確保しながら、リブのくびれ部でガスの流れ領域を拡大しているところを特徴としている。
【0024】
図5は、流路を構成するリブ部に、図2にある従来の円柱形のリブ形状201を用いて流路を構成した場合と、図3に示した円柱の中央部でくびれたリブ形状301を用いて流路を構成した場合について、流路領域とリブ−電極接触面積を試算し比較した結果をまとめたものである。図5にある形状モデルNo.01は、長さ25mm,高さ25mm,厚さ0.5mmの流路領域に、図2にある直径0.5mmの円柱形リブ形状201を、0.75mm間隔で格子状に配列したものである。この時の流路領域に占めるガスの流れ領域は65.8%ととなり、リブ−電極接触面積は6.48mm2となった。一方、形状モデルNo.02は、長さ25mm,高さ25mm,厚さ0.5mmの同じ流路領域に、形状モデルNo.01と同じ図2にある直径0.5mmの円柱形リブ形状201を用いて、0.575mmの間隔で格子状に配列して流路を構成した。この場合、流路領域に占めるガスの流れ領域は41.9%となり、リブ−電極接触面積は8.44mm2となった。形状モデルNo.01における流路領域に占めるガスの流れ領域を1とした場合、形状モデルNo.02における流路領域に占めるガスの流れ領域は0.64となり、約40%縮小されるが、形状モデルNo.01におけるリブ−電極接触面積を1とした場合、形状モデルNo.02におけるリブ−電極接触面積は1.3となり、約30%拡大される。このように、リブとリブの間隔を狭めれば、リブと電極との接触面積が拡大し(1)式から接触抵抗が小さくなり、発電性能は向上するが、ガスの流れ領域が約40%縮小されるため、ガスが流れにくくなり圧力損失が増加し、発電の効率が悪くなる。
【0025】
そこで、本発明の図3に示した円柱の中央部でくびれたリブ形状301を用いて、形状モデルNo.02に対し、流路を構成した。その結果、流路領域に占めるガスの流れ領域が48%拡大し、形状モデルNo.01における流路領域に占めるガスの流れ領域を1とした場合、0.95となった。一方、中央部がくびれただけなのでリブ−電極接触面積は変らず、形状モデルNo.01におけるリブ−電極接触面積を1とした場合、形状モデルNo.02におけるリブ−電極接触面積は1.3になる。すなわち、形状モデルNo.02におけるリブ−電極接触面積を維持したまま、おおよそ、形状モデルNo.01におけるガスの流れ領域を実現できたことになる。
【0026】
図4は、本発明のリブ形状に関する第2の実施の形態を示した燃料電池用セパレータのリブ形状を示す概念図である。図4にあるリブ形状401は、高さの半分の所で、上部形状402と下部形状403がそれぞれ別の形状を持っている。たとえば、図4に示すように、下部形状403は、上面が直径0.3mmの円で下面が直径0.5mmの円で高さが0.25mmである円錐台に対し、上部形状402は、一片が0.5mmで高さが0.25mmの直方体に、中心から0.15mmの所で左右に斜めに切り込んだ形状をしている。リブ形状401は、見取り図410を見ると、円錐台に左右に三角形の翼が付いたような形状をしており、矢印の方向からガスが流れて三角形の翼に当たると、ガスの流れは下方向に向きを変える。本リブ形状401の下側にMEAで構成される電極を、上側にセパレータの基板が来るように配置すれば、ガスは電極に向かって流れることになり、電気化学反応に必要なガスの供給が活発に行われ、効率が向上される。
【0027】
図6に示したリブ形状601は、図3に示した本発明の円柱の中央部でくびれたリブ形状301について、くびれ具合をパラメータ化したものである。例えば、本発明の円柱の中央部でくびれたリブ形状301を、リブ形状601のように2つの同じ円錐台を上下対象に接続することで構成した場合、円錐台602において、上面の円の直径をa、下面の円の直径をbとし、この円錐台のくびれ比kをk=a/bとする。また、円錐台603のように、上面の円を、一方向に縮小したときの長さcとなるような楕円にした場合、楕円比dをd=c/aとする。さらに、円錐台604において、楕円の長軸の向きをdrとする。
【0028】
このように、本発明の円柱の中央部でくびれたリブ形状301をパラメータ化し、セパレータ流量領域に配置するリブの位置により、くびれ比k,楕円比d,長軸の向きdrを設定することで、流れ領域を変化するガス流量に合わせて調整することができる。
【0029】
図7は、図6で説明した、くびれ比k,楕円比d,長軸の向きdrでパラメータ化したリブ形状601を用いて流路構成したセパレータに関する実施例を示したものである。図図7(b)はセパレータ701を真上から見た図である。図7(b)に示すように、セパレータ701は、横が10mm、縦が8mm、厚さ0.5mmの流路領域をもち、入口702,出口703をもつ。流路領域には、高さが0.5mmのパラメータ化したリブ形状601が格子状に1mmピッチの間隔で、8行×9列で配置されている。図6で説明した下面の円の直径bを0.5mmに固定し、真上から見た場合、図7(b)のように、電極と接する面が、直径0.5mmの円の格子配列で、電極と均等に接することが分かる。
【0030】
リブ形状のくびれ比k,楕円比d,長軸の向きdr操作して、出口703側に向かってガスの流れ領域を拡大した場合のくびれ部における流路断面図は図7(c)のようになる。図7(c)は、セパレータ701を真横から見た図7(a)において、上面から0.25mmの位置705、すなわちリブ形状の中央部に位置する位置の断面を見た図である。図7(c)に示すように、流路の出口に向かって、徐々にリブ形状のくびれ具合が強まって、流路領域におけるリブ体積の占める割合が減少し、変わりにガスの流れる領域が大きくなっているとともに、出口に向かって楕円状にくびれた形状になっているので流れ抵抗が軽減され、流れやすくなっていることが分かる。したがって、図7に示すセパレータ701を空気極側に用いれば、電気化学反応に伴い、流路の下流域でガス流量が増え圧力増加に伴う流れ難さを解消でき、さらに、流れ領域が徐々に広まるので、くびれ形状を持たない場合に比べ流れが緩やかになり、未反応酸素が電極に触れる確立が高くなって発電効率が向上される。リブと電極が接する面が全域で均等であるため、加圧斑や発電斑による性能低下、および電解質膜を含む電極部の劣化を低減することができる。
【0031】
図8は、図7に説明したように、くびれ比k,楕円比d,長軸の向きDrでパラメータ化したリブ形状601を用いて流路を構成する場合、流路領域におけるリブ位置ごとにパラメータ値を設定する手法を説明するものである。ここでは図7の実施例にあるように、流路領域において、リブ形状601は、下面の円の直径bを0.5mmに固定し、格子状に1mmピッチの間隔で、8行×9列で配置した場合について考え、リブ毎に、リブ形状のくびれ比k,楕円比d,長軸の向きdrの値を設定し、出口側に向かってガスの流れ領域を拡大する例について説明する。まず、リブ形状601のパラメータと、セパレータの流路領域を関連付けるために、図8(a)に示す基準点Aを設定する。図8(a)は、図7において、セパレータ701をリブ形状の中央部で切断した時の断面図、図7(c)と同じものである。基準点Aは、例えば図8(a)のように入口802から出口803に向かってガスが流れるとすると、流路領域の中央線801と流路領域の最上位との交点804と、出口803と流路領域が接する右上の点805とで引ける補助線806と、流路領域の最下位の位置する返の延長線807との交点であるとする。
【0032】
そこで、リブ形状601の長軸の向きdrを、リブが配置された中心位置と基準点Aとを結ぶ線に沿って、基準点Aを向くように、リブ形状の長軸の向きdrを設定する。たとえば、図8(a)において、流路領域における任意のリブ810について、その中心位置と基準点Aとを結ぶ線811にそって、基準点Aを向くようにリブ810の長軸の向きdr812を設定する。
【0033】
また、図8(b)において、リブが配置された中心位置と基準点Aとの距離815を、図8(b)に示すように入口802の領域の中心位置813と基準点Aとの距離814で割った値hを元にくびれ比kを算出する。くびれ比kが決まれば、セパレータ701の実施例では、下面の円の直径bを0.5mmに固定してあるので、上面の円の直径aが求められる。同様にしてhを基にして、楕円比dを決めれば、上面の円の直径a(楕円の長軸の長さに等しい)からcが求められる。hを元にくびれ比kおよび楕円比dを算出する方法には、例えば、圧力損失つまりガスの流れ難さは流速の二乗に比例することから、指数的要素を取り入れ、kおよびd=M・hN(MおよびNは定数)としても良い。本実施例では、M=2,N=1.1を用い、但し、kおよびd>1の場合はkおよびd=1とした。
【0034】
図9は、図6で説明した、くびれ具合をパラメータ化したリブ形状において、セパレータの流路領域中に配置される位置からリブ形状のパラメータ化を決める処理をフローチャートにまとめたものである。まず、ステップ(以下Sと記述)1において、図6で説明した、パラメータ化したリブ形状の下面の直径bを決める。この値は、電極と接する面積を決める値であり重要である。この値が決まれば、セパレータの限られた流路領域に配置できるリブの上限が決まる。次に、S2において、リブを配置する方式、すなわち格子状か千鳥状か、あるいは、出口または入口付近で配置ピッチを広げまたは狭めるなどのレイアウトを実施するのかを決め、具体的な配置ピッチを決める。次にS3において、セパレータ流路領域の形状に基づき基準点Aを設定する。基準点Aは、リブ形状を決めるパラメータと流路領域中のリブの位置との関係をリンクさせる点であり、例えば、流路の出口に向かってリブ形状のくびれ具合を調整する場合は、基準点Aは流路の出口付近に設定する。次にS4において、流路中に配置されたリブに対して、楕円状のくびれをつけた場合、楕円の長軸の向きdrを基準点Aに向かせる処置を行うものである。このことにより、流れがよりスムーズになり燃料電池の性能を向上させる。S5およびS6では、流路中に配置されたリブに対して、図6で説明した、くびれ比kおよび楕円比dを基準点Aとの距離の比に基づいて算出し、この値から、リブ形状を決める上面の円の直径および、上面の円を一方向に縮小したときの長さcを決めるものである。
【0035】
図10は、図1で説明した本発明のセパレータ100の製造方法を示したものである。セパレータ100に用いるリブ形状301およびリブ形状401およびリブ形状601は、従来の金型による成型や切削加工では作成ができず、2つの要素を別々に作成し接続する手段により作成することにした。ずなわち、図10にあるように、リブ部1およびリブ部2を別々に作成し図11のように、リブ部1およびリブ部2をそれぞれのリブ結合面で結合させ、セパレータを作成するものである。
【0036】
例えば、本発明に関する第1の実施の形態を示したセパレータ100においては、リブ部1は凸形状をもつ第一のリブ部として、凸形状の先端面に凸また凹のあわせ部分1102を持たせ、リブ部2は凸形状をもつ第二のリブ部として、凸形状の先端面にも凹また凸のあわせ部分1103を持ち、それぞれのあわせ部分で接合しセパレータのリブを形成する。このように第一のリブ部および第二のリブ部にあわせ部分を持たせることで、接合が容易になり、第一のリブ部と第二のリブ部における接合部分での機械的強度や電気的接続性の不具合を回避できる。ここで、第一のリブ部および第二のリブ部にあわせ部分をそれぞれ凹計上にし、接続用の支柱を用いても良い。
【0037】
凸形状をもつ第一のリブ部は、黒鉛粉末を熱硬化性樹脂で結合させた複合体を金型に押し付けて成型し、強度や作り易さを考慮して、凸形状のリブ同士はそれぞれ接続され、図10のリブ部1に示すように一つの部材で構成されていても良い。
【0038】
凸形状をもつ第二のリブ部は、黒鉛製の基板上に、金型に充填した黒鉛粉末を熱硬化性樹脂で結合させた複合体を押し付けて成型し、作成する。
【0039】
複合体の組成は、例えば、成形性および強度に大きく関与する熱硬化性樹脂の組成割合を10〜40重量%の範囲に設定し、接触抵抗に大きく関与する黒鉛粉末として平均粒径が15〜125μmの範囲にし、成形材料である複合体の流動性を確保し、成形性を実現するとともに、振動等による損傷を生じない強度を確保しながら、誘電性を持たせた燃料電池用セパレータを製造することが可能である。本発明で用いられる熱硬化性樹脂としては、たとえば黒鉛粉末との濡れ性に優れたフェノール樹脂がよく、そのほか、ポリカルボジイミド樹脂,エポキシ樹脂,フルフリルアルコール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,アルキド樹脂などのように、加熱時に熱硬化反応を起こし、燃料電池の運転温度及び供給ガス成分に対して安定なものであればよい。また、本発明で用いられる黒鉛粉末としては、天然黒鉛,人造黒鉛,カーボンブラック、等があり、コストなどの条件により選択することができる。
【0040】
次に、黒鉛粉末を金型に充填した後、金型を150〜200℃に加熱し昇温するとともに、プレスを用いて10〜100MPaの範囲で面圧を加え、所定形状に樹脂成形されたリブ部を作成する。
【0041】
図12は、本発明のセパレータを用いて作成した燃料電池セルを説明する図である。セパレータには、図1で説明したセパレータ100が使われている。燃料電池セルは発電の基本ユニットで、膜・電極接合体(MEA)1202を、燃料極側セパレータ1201と、空気極側セパレータ1203とで両側から挟むようにして作成される。膜・電極接合体(MEA)1202は、セパレータ1201の流路領域をカバーする広さを持つ必要がある。例えば、流路の領域を幅10mm、高さ8mmとすると、膜・電極接合体(MEA)1202も幅10mm、高さ8mmとなる。それぞれの極でセパレータとMEAの間にガスケット1211および1212を挟み、ガスが漏れないようにしてある。組みあがった燃料電池セルを横から見ると1205のようになる。
【0042】
図13は、燃料電池セルを切断したときの断面図を厚さ方向に拡大して示したものである。図13において、燃料極側セパレータ1301と空気極側セパレータ1302がMEA1303を挟み込むように構成されており、燃料極側セパレータ1301において、流路の断面1305を燃料ガスが通り、リブ部の断面1307は、MEA1303に接触し、MEA1303で発電した電気を伝導する。同様に、空気極側セパレータ1302の流路の断面1306は、空気などの酸化剤ガスが通り、リブ部の断面1308は、MEA1303に接触し、MEA1303で発電された電気を誘電する。中央両側に見える断面1309,1310は、電気化学反応に関連するガスが外にもれ出ないためのガスシールの断面である。
【0043】
次に、膜・電極接合体(MEA)1303について説明する。MEAは、固体高分子電解質膜の両側にカソード側電極およびアノード側電極が挟み込む形で構成され、固体高分子電解質膜には、プロトン伝導性を有するイオン交換膜、例えば、ナフィオン117(Nafion117,175μm、Du pont社製)等を用いたフッ素系イオン交換膜が用いられ、カソード側電極およびアノード側電極は、それぞれ触媒反応層と拡散層とで形成される。カソード側拡散層およびアノード側拡散層は、燃料ガスまたは酸化剤ガスの拡散性を高め、発電により発生した反応生成水の排出機能、および電子伝導性を併せ持つ必要があり、例えば、カーボンペーパ,カーボンクロス等の導電性多孔質材料に撥水処理を施したものを適用することができる。ここでは、導電性多孔質材料に厚さ0.2mmのカーボン不織布(東レ社製TGP−H060)を用い、撥水処理を施すためフッ素系撥水剤のエマルジョン液(ダイキン製D1)に浸し、乾燥後350℃で10分間熱処理し、拡散層を形成した。
【0044】
触媒反応層は、触媒金属を担持した導電性炭素粒子と高分子電解質を主成分とした厚さ0.005mm程度の薄膜である。アノード側触媒反応層には、平均一次粒子径30nmを持つ導電性炭素粒子であるケッチェンブラック(AKZOChemie社製)に、白金とルテニウムを、それぞれ25重量%担持させたアノード用触媒担持粒子を使用した。また、カソード側触媒反応層には、ケッチェンブラックに、白金を50重量%担持させたカソード用触媒担持粒子を使用した。カソード側触媒反応層およびアノード側触媒反応層は、それぞれの触媒担持粒子をイソプロパノール水溶液に分散させた溶液と、高分子電解質、例えばナフィオン117をエタノールに分散させた溶液とを、触媒担持粒子と高分子電解質との重量比を1:1になるように混合した後、ビーズミルで高分散させることによりカソード用とアノード用のスラリーを作製し、先に作成したカソード側拡散層およびアノード側拡散層にスプレークオーターを用いて塗布し、これを大気中常温で6時間乾燥させることで形成させた。このようにして、それぞれの拡散層上にカソード側触媒反応層およびアノード側触媒反応層を形成させることで、カソード側電極とアノード側電極を作成した。
【0045】
図14はセパレータに、本発明のくびれをもつリブ形状601で流路構成したセパレータ701を用いた燃料電池セルと、くびれを持たないリブ形状201を使用したセパレータを用いた場合の2つの燃料電池セルを作成し、性能を比較したものである。ここでは、空気極側に空気を、燃料極側に純水素を、それぞれポンプを用いて注入し、電子負荷装置を用いて性能特性を計測した。酸素利用率が60%、水素利用率が80%になるように、注入する空気および水素の流量を調整し、電子負荷装置の電流密度I[A/cm2]を徐々に増加させ、その時々の燃料電池用セルの電圧E[V]を測定し、電流密度Iと電圧Eの積を電力W[W/cm2]とし、算出した。図14において、上側の曲線1401は本発明のくびれをもつリブ形状601で流路構成した燃料電池用セルの特性であり、下側の曲線1402は比較に用いた、くびれを持たないリブ形状201で流路構成した燃料電池用セルの特性である。図14から、本発明に関する実施の形態を示した燃料電池用セルの方が、くびれを持たないリブ形状201で流路構成した燃料電池用セルよりも、高い電力を発生させることができ、くびれをもつリブ形状601で流路構成の効果が検証できた。
【符号の説明】
【0046】
100 セパレータ
101 流路部
102 ガスが注入される入口
103 ガスが排出される出口
104 リブ部
105,203,303 MEAに接するリブ部の接触面
201,301,401 リブ形状
202,302 根元
402 上部形状
403 下部形状
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが注入されるガス注入口と、複数のリブで流路を構成した流路部と、ガスが排出されるガス排出口とを備える燃料電池用セパレータにおいて、
前記リブは高さ方向の中央部にくびれ部を有し、前記ガス注入口またはガス排出口に向かって前記リブのくびれ部の断面積または形状が変化していることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
請求項1において、前記ガス注入口またはガス排出口に向かって前記リブのくびれ部の断面積が小さくなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
請求項1において、前記くびれ部の断面が楕円形状であり、楕円の長軸の向きを前記ガス注入口またはガス排出口に向かう方向としたことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
ガスが注入されるガス注入口と、複数のリブで流路を構成した流路部と、ガスが排出されるガス排出口とを備える燃料電池用セパレータにおいて、
前記リブが、第一の凸部と第二の凸部の凸部頂点同士が接続された構造であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
請求項4において、前記第一の凸部の上面の面積aと下面の面積bとの比kが、前記ガス注入口またはガス排出口に向かって小さくなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項6】
請求項4において、前記第一の凸部または第二の凸部の形状が楕円状の円錐台であり、楕円の長軸の向きを、前記ガス注入口またはガス排出口に向かう方向としたことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項7】
請求項4において、前記第一の凸部または第二の凸部の形状が楕円状の円錐台であり、楕円の長軸の向きを変えることで、流れ方向を制御することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項8】
請求項4において、前記リブが、黒鉛粉末を熱硬化性樹脂で結合させた複合体を金型に押し付けて前記第一の凸部および前記第二の凸部を別々に成型し、前記第一の凸部および前記第二の凸部を接合して形成されていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項9】
燃料極側セパレータと空気極側セパレータで膜電極接合体を挟み込んだ構造を有する燃料電池であって、前記燃料極側セパレータ及び空気極側セパレータに請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池用セパレータを用いたことを特徴とする燃料電池。
【請求項1】
ガスが注入されるガス注入口と、複数のリブで流路を構成した流路部と、ガスが排出されるガス排出口とを備える燃料電池用セパレータにおいて、
前記リブは高さ方向の中央部にくびれ部を有し、前記ガス注入口またはガス排出口に向かって前記リブのくびれ部の断面積または形状が変化していることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
請求項1において、前記ガス注入口またはガス排出口に向かって前記リブのくびれ部の断面積が小さくなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
請求項1において、前記くびれ部の断面が楕円形状であり、楕円の長軸の向きを前記ガス注入口またはガス排出口に向かう方向としたことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
ガスが注入されるガス注入口と、複数のリブで流路を構成した流路部と、ガスが排出されるガス排出口とを備える燃料電池用セパレータにおいて、
前記リブが、第一の凸部と第二の凸部の凸部頂点同士が接続された構造であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
請求項4において、前記第一の凸部の上面の面積aと下面の面積bとの比kが、前記ガス注入口またはガス排出口に向かって小さくなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項6】
請求項4において、前記第一の凸部または第二の凸部の形状が楕円状の円錐台であり、楕円の長軸の向きを、前記ガス注入口またはガス排出口に向かう方向としたことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項7】
請求項4において、前記第一の凸部または第二の凸部の形状が楕円状の円錐台であり、楕円の長軸の向きを変えることで、流れ方向を制御することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項8】
請求項4において、前記リブが、黒鉛粉末を熱硬化性樹脂で結合させた複合体を金型に押し付けて前記第一の凸部および前記第二の凸部を別々に成型し、前記第一の凸部および前記第二の凸部を接合して形成されていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項9】
燃料極側セパレータと空気極側セパレータで膜電極接合体を挟み込んだ構造を有する燃料電池であって、前記燃料極側セパレータ及び空気極側セパレータに請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池用セパレータを用いたことを特徴とする燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−181187(P2011−181187A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41237(P2010−41237)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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