説明

燃料電池用セパレータの製造方法及び製造装置

【課題】予備成形体を用いて燃料電池用セパレータを製造する方法を、予備成形体を成形型の設定位置に確実、迅速に供給できるようにして、燃料電池用セパレータの成型加工性と生産性とを改善する。
【解決手段】燃料電池用セパレータ4を、黒鉛粉末と熱硬化樹脂組成物とによる粉状の複合材を常温において押し固めて板状の予備成形体14を形成する一次成形工程と、得られた予備成形体14を、成形型15を用いてプレス成形する二次成形工程とによって作成する燃料電池用セパレータの製造方法において、一次成形工程によって得られる予備成形体14を、移送手段Bを用いて成形型15の設定位置に移送する移送工程を有し、この移送工程においては、移送手段Bにおける予備成形体支持部27を、これに予備成形体14をセットするための搬入位置Nから、成形型15に対する設定位置に対応した搬出位置Tに移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次成形品である予備成形体を二次成形することで燃料電池用セパレータを作成するようにした燃料電池用セパレータ製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用セパレータは、MEA(膜・電極接合体)を適切に燃料電池セル(燃料電池用セパレータの間にMEAを挟み込んだ単位体)内に保持するとともに、電気化学反応に必要な燃料(水素)及び空気(酸素)を供給する機能、及び電気化学反応により得られた電子を損失なく集電する機能等を担うものである。これらの機能を担う燃料電池用セパレータに要求される特性には、1.機械的強度、2.導電性、3.成形加工性(寸法精度、充填密度)、4.耐環境性等が挙げられる。
【0003】
燃料電池用セパレータの原材料に関しては、金属製燃料電池用セパレータと樹脂製燃料電池用セパレータの二つに大別され、樹脂製燃料電池用セパレータは金属製燃料電池用セパレータに比較して、前記要求特性1.〜4.のうち、特に3.成形加工性に優れている。燃料電池では、限定された空間内において十分な発電機構を実現することが重要であり、そのためには燃料及び空気を適切で大量に供給しなければならず、複雑な燃料流路溝を施した燃料電池用セパレータが必要とされるので、設計の自由度が高く成形加工性に富んでいる樹脂製燃料電池用セパレータを使用することが主流となっている。
【0004】
ここで、3.成形加工性について考えてみると、寸法精度や充填密度が不良になると燃料及び空気が適切にMEAに供給されず、出力電圧が低下するという問題を招くので、燃料電池用セパレータにおいては重要な要素である。寸法精度とは、金型寸法と実際に作成された燃料電池用セパレータの寸法との差の精度であり、充填密度とは、外観上目視により粗になっていると認識される状態を言う。
【0005】
さて、燃料電池用セパレータの一般的な製造方法は次のようなものである。即ち、黒鉛粉末、導電性フィラー等の導電性を有する添加材と、高分子樹脂等の樹脂組成物とを有する複合材を粉状のものとして作成し、その粉状の複合材を金型の所定位置に供給して加熱加圧成型することで樹脂製の燃料電池用セパレータが作製される。しかしながら、この製造方法では、複合材の金型への供給にある程度の時間を要するので、加圧する前に金型に供給された複合材がその金型の熱によって硬化反応を始めてしまい、硬化反応が均一に進行せず、結果として成形加工性に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
そこで、その成形加工性の問題を解決する製造方法として、予備成形体を用いる手段が採られている。即ち、導電材と樹脂組成物とを有する粉状の複合材を硬化反応されない温度条件において押し固めて板状の予備成形体を形成する一次成形工程と、この一次成形工程によって得られる予備成形体を、成形型を用いてプレス成形する二次成形工程と、によって燃料電池用セパレータを作成する製造方法であり、このような例としては特許文献1において開示されたものが知られている。
【0007】
予備成形体を使用した燃料電池用セパレータの製造方法を採用すると、板状の予備成形体を金型(成形型)に一挙に投入できるので、予め所定温度に加熱されている金型の設定位置に複合材を部分的に硬化反応をさせることなく供給することが可能になるとともに、取扱い性及び生産性向上(後述)に必要となる一定の機械的強度が確保されるようになる。従って、予備成形体を使用すれば、作業者の取扱い性が向上して複合材の供給を円滑にし、加熱加圧成形後の燃料電池用セパレータの特性、特に前述の「3.成形加工性」を満足させ、かつ、複合材供給時間の短縮に伴い生産性向上を図ることができる利点がある。
【0008】
尚、予備成形体の成形に関しては、燃料流路溝の複雑さ及び要求される寸法精度に起因し、さほど複雑でなければ複合材の供給量分布が面方向に均一な平板形状の予備成形体で十分である。燃料流路溝が複雑であれば、すなわち燃料流路溝の幅が狭く高低差が大きいほど、また要求される寸法精度が高ければ高いほど加熱加圧成形後の燃料電池用セパレータの複雑な形状に近似した、面方向に複合材の供給量の分布をさせた予備成形体を作製するのが望ましい。
【特許文献1】特開2004−216756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の「予備成形体を用いる製造方法」では、成形プレス等にて加熱加圧成型(二次成形)を行うための金型の設定位置への予備成形体の供給作業は、作業者が手で予備成形体を持って直接供給するという人為作業であった。この人為供給作業は、比較的接近している一対の金型間の狭いスペースから行うことになり、金型における予備成形体の載置面は斜め上方からしか見ることができず、作業し難いとともに正確な操作が行い難いものでもある。そのため、金型内の予備成形体供給位置が厳密には一定になり難く、加熱加圧成形後の燃料電池用セパレータの成型加工性(特に、寸法精度)が悪化し易いとともに、密度不良に伴うガス不透過性が悪化し易いという傾向があった。
【0010】
とりわけ、燃料流路溝が複雑な燃料電池用セパレータを製造する際に、予備成形体が面方向のきめ細かい供給量分布を有している場合、予備成形体の金型の所定位置への供給にはより正確さが求められることからある程度の時間を要するので、全体として生産性を悪化させる原因となっていた。また、硬化反応を予備成形体に均一に進行させるために、作業者は金型の設定位置に予備成形体を俊敏に供給操作する必要があるが、その素早い操作をあせるあまり、予備成形体を破損するといったおそれもあった。この場合、正確な位置に予備成形体を人為供給するためのガイド等を金型に取付けることも考えられるが、加熱加圧成形を阻害する要因となるため実現は困難であった。
【0011】
本発明の目的は、種々の利点を有する「予備成形体を用いて燃料電池用セパレータを製造する方法」を採るにあたり、予備成形体を成形型の所定位置に確実に、かつ、迅速に供給できるようにして、燃料電池用セパレータの成型加工性を改善するとともに、生産性向上を図らんとする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、燃料電池用セパレータ4を、導電材と樹脂組成物とを有する粉状の複合材を硬化反応されない温度条件において押し固めて板状の予備成形体14を形成する一次成形工程と、前記一次成形工程によって得られる予備成形体14を、成形型15,19を用いてプレス成形する二次成形工程と、によって作成する燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記一次成形工程によって得られる予備成形体14を、移送手段Bを用いて前記成形型15の設定位置に移送する移送工程を有し、この移送工程においては、前記移送手段Bにおける予備成形体支持部27を、これに前記予備成形体14をセットするための搬入位置Nから、前記成形型15に対する設定位置に対応した搬出位置Tに移送することを特徴とするものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記予備成形体支持部27は吸着パッドを用いて前記予備成形体14を吸着支持するものであり、前記移送工程においては、前記搬入位置Nにセットされている予備成形体14を前記吸着パッド27の吸着によって持上げた状態で前記成形型15に移送させることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記移送工程においては、予備成形体14を0.2m/秒以下の速度で移送させることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記移送工程においては、予備成形体14を回動移動によって移送させることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記二次成形工程には、前記一次成形工程によって形成された1Mpa以上の曲げ強度を有する予備成形体が供給されるようにしてあることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法において、前記樹脂組成物として熱硬化性のものを用いるとともに、前記二次成形工程におけるプレス成形は加熱を伴うものであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項7に係る発明は、燃料電池用セパレータの製造装置Aにおいて、導電材と樹脂組成物とを有する粉状の複合材を硬化反応されない温度条件において押し固めて得られる板状の予備成形体14を、この予備成形体14を成形型15,19でプレス成形して燃料電池用セパレータ4に仕上げる二次成形機Cに移送させるための移送手段Bを有するとともに、
前記移送手段Bは、前記予備成形体14を支持する予備成形体支持部27を、これに前記予備成形体14をセットするための搬入位置Nと、前記二次成形機Cにおける成形型15の設定位置に対応した搬出位置Tとに亘って往復移動自在なものに構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の燃料電池用セパレータの製造装置Aにおいて、前記予備成形体支持部27は、前記予備成形体14を、これの上面14Aの複数箇所に作用する吸着パッドを用いて吸着支持するものに構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項9に係る発明は、請求項7又は8に記載の燃料電池用セパレータの製造装置Aにおいて、前記移送手段Bは、前記予備成形体14を0.2m/秒以下の速度で移送させるものに構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項10に係る発明は、請求項7〜9の何れか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造装置Aにおいて、前記移送手段Bは、前記予備成形体14を回動移動によって移送させるものに構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項11に係る発明は、請求項7〜10の何れか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造装置Aにおいて、前記二次成形機Cは、熱硬化性の前記樹脂組成物を用いて成る前記予備成形体14を、加熱を伴ってプレス成形するものに構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、一次成形工程によって得られる予備成形体を、成形型を用いてプレス成形する二次成形工程の成形型に対する設定位置に運ぶことを、移送手段を用いて行うから、人為操作によって移送する場合に比べて、予備成形体を成形型の設定位置に位置決めする精度を向上できて、その正確な位置決め状態を繰り返し実行させることが可能になるとともに、移送速度も迅速化することができる。その結果、予備成形体を用いる方法を踏襲しながらも、予備成形体を成形型の設定位置に確実に、かつ、迅速にセットできるようになり、成型加工性並びに生産性が改善される燃料電池用セパレータの製造方法を提供することができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、予備成形体を移送すべく持上げるための支持手段として吸着を用いるものであるから、比較的広い面積でもって持上げ力を作用させることができ、まだ硬化されておらず機械的強度に乏しい状態にある予備成形体を、型崩れしたり変形したりすることなく移送させることが可能になる。例えば、予備成形体の端を把持して持上げる手段では、その把持された部分が凹んだり曲がったりするおそれが強く、また予備成形体の下方に把持用の空間部を設ける対処が必要になるが、吸着による場合では、予備成形体の上方に空間部があれば良く、単に載置台に載せ付ける手段を採用できるので、構造のの簡単化や設備コストの抑制も可能となる利点がある。
【0025】
請求項3の発明によれば、予備成形体の移送速度を0.2m/秒以下としてあるので、移送中に移送手段による予備成形体の支持位置がズレたり、予備成形体が落下したりといった不都合が回避されるとともに、その移送速度への加減速中における同様の位置ズレや落下のおそれも回避されるようになり、移送手段を採用したことによる新たな不都合を招くことなく、正確な位置決め特性と良好な生産性を発揮し得る燃料電池用セパレータの製造方法を提供することができる。
【0026】
請求項4の発明によれば、予備成形体を回動移動によって成形型の設定位置に移送させるので、スライド移動等の他の移動方法を採る場合に比べて、移送手段の簡単化や、停止位置の制御手段の簡単化を図ることができ、それによって良好な位置決め精度や迅速な移送状態を得ることが可能になる。
【0027】
請求項5の発明によれば、二次成形工程に送る予備成形体を、その曲げ強度が1Mpa以上のものとしてあるので、移送手段による予備成形体の支持強度が改善され、移送工程における変形や落下といった不都合のおそれをより回避することでき、結果として、精度向上や生産性向上が可能な燃料電池用セパレータの製造方法を提供することができる。
【0028】
請求項6の発明によれば、予備成形体に用いる樹脂として熱硬化性のものを用いてあるので、常温において一次成形工程及び移送工程を行えば良く、高温室や低温室といった複合材が硬化しないための特別な温度条件を用意しなくても済むとともに、二次成形工程におけるプレス成形では、加熱加圧成形という至極一般的な成形方法を採れば良いものとなる。従って、一次成形工程、移送工程、及び二次成形工程のいずれもが、一般的に行われている手段で行うことができ、製造設備やコスト的に有利な燃料電池用セパレータの製造方法を提供することができる。
【0029】
請求項7の発明によれば、請求項1の方法を装置化したものであり、請求項1の方法による作用、効果と同等の作用、効果を得ることができる。
【0030】
請求項8の発明によれば、請求項2の方法を装置化したものであり、請求項2の方法による作用、効果と同等の作用、効果を得ることができる。
【0031】
請求項9の発明によれば、請求項3の方法を装置化したものであり、請求項3の方法による作用、効果と同等の作用、効果を得ることができる。
【0032】
請求項10の発明によれば、請求項4の方法を装置化したものであり、請求項4の方法による作用、効果と同等の作用、効果を得ることができる。
【0033】
請求項11の発明によれば、請求項6の方法を装置化したものであり、請求項6の方法による作用、効果と同等の作用、効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明による燃料電池用セパレータの製造装置及び製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1〜図3は、スタック構造の分解斜視図、セパレータの外観正面図、単セル要部の拡大断面図であり、図4〜図6は燃料電池用セパレータの製造装置を示す平面図、側面図、正面図である。図7〜図9は予備成形体を用いたセパレータの製造方法を示す各工程図、図10はセパレータの製造方法を示すフローチャート、図11は本発明製法等によるセパレータの特性比較表である。尚、簡単のため、以後において燃料電池用セパレータは、原則的に単にセパレータと称呼するものとする
【0035】
まず最初に、本発明のセパレータを備えた固体高分子電解質型燃料電池の構成及び動作について、図1〜図3を参照して簡単に説明する。固体高分子電解質型燃料電池Eは、例えばフッ素系樹脂より形成されたイオン交換膜である電解質膜1と、炭素繊維糸で織成したカーボンクロスやカーボンペーパーあるいはカーボンフェルトにより形成され、上記電解質膜1を両側から挟みサンドイッチ構造をなすガス拡散電極となるアノード2及びカソード3と、そのサンドイッチ構造をさらに両側から挟むセパレータ4,4とから構成される単セル5の複数組を積層し、その両端に図示省略した集電板を配置したスタック構造に構成されている。
【0036】
両セパレータ4は、図2に示すように、その周辺部に、水素を含有する燃料ガス孔6,7と酸素を含有する酸化ガス孔8,9と冷却水孔10とが形成されており、前記単セル5の複数組を積層した時、各セパレータ4の各孔6,7、8,9、10がそれぞれ燃料電池E内部をその長手方向に貫通して燃料ガス供給マニホールド、燃料ガス排出マニホールド、酸化ガス供給マニホールド、酸化ガス排出マニホールド、冷却水路を形成するようになされている。また、前記両セパレータ4の表面には、所定形状のリブ部11が形成されており、そのリブ部11とアノード2の表面との間に燃料ガス流路12が形成されているとともに、リブ部11とカソード3の表面との間に酸化ガス流路13が形成されている。
【0037】
前記構成の固体高分子電解質型燃料電池Eにおいては、外部に設けられた燃料ガス供給装置から燃料電池Eに対して供給された水素を含有する燃料ガスが上記燃料ガス供給マニホールドを経由して各単セル5の燃料ガス流路12に供給されて各単セル5のアノード2側において電気化学反応を呈し、その反応後の燃料ガスは各単セル5の燃料ガス流路12から燃料ガス排出マニホールドを経由して外部に排出される。同時に、外部に設けられた酸化ガス供給装置から燃料電池Eに対して供給された酸素を含有する酸化ガス(空気)が上記酸化ガス供給マニホールドを経由して各単セル5の酸化ガス流路13に供給されて各単セル5のカソード3側において電気化学反応を呈し、その反応後の酸化ガスは各単セル5の酸化ガス流路13から上記酸化ガス排出マニホールドを経由して外部に排出される。
【0038】
前述の電気化学反応に伴い、燃料電池E全体としての電気化学反応が進行して、燃料が有する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換することで、所定の電池性能が発揮される。なお、この燃料電池Eは、電解質膜1の性質から約80〜100℃の温度範囲で運転されるために発熱を伴う。そこで、燃料電池Eの運転中は、外部に設けられた冷却水供給装置から燃料電池Eに対して冷却水を供給し、これを前記冷却水路に循環させることによって、燃料電池E内部の温度上昇を抑制している。
【0039】
次に、予備成形体1について説明する。予備成形体14は、図7等に示すように、図示しない一次成形機を用いて、黒鉛粉末(導電材の一例)とエポキシ系の高分子樹脂組成物とを有する粉状の複合材(以下、コンパウンドと呼ぶ)を、硬化反応されない温度条件(常温等の低温)において押し固める一次成形工程を実行することで得られる板状のものであり、ほぼセパレータSとしての形状に予備形成されている。
【0040】
本発明に用いられる予備成形体14の材料は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂及び黒鉛粉末からなるコンパウンドである。熱願化性樹脂はエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等の汎用熱硬化性樹脂であればよく、前記熱硬化性樹脂を単独で使用してもよいし、複数の樹脂を混合して使用してもよい。熱可塑性樹脂に関しては塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、飽和ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、フッ素樹脂等が挙げられるが、機械的強度を要求するためPPS(ポリフェニレンスルフイド)樹脂やPPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂等の比較的モノマー分子量の大きなものが好ましい。
【0041】
黒鉛粉末は天然黒鉛、人造黒鉛、球状化黒鉛、メソフェースカーボン等の一般的に市販されているものであればよく、黒鉛粉末を単独で使用してもよいし、要求特性に応じて複数の黒鉛粉末を混合して使用してもよい。さらに黒鉛の粒径に関しては燃料電池用セパレータの2.導電性、3.成形加工性を考慮した結果、5〜300μm程度であることが好ましい。熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂と黒鉛粉末とを混合してコンパウンドを作製する際の混合方法に関しても特に制限されるものではなく、樹脂の性状や粘度によって選択され、通常ヘンシェルミキサーや二ーダー等で適当な時間、混合して作製する。
【0042】
前記コンパウンドを用いて予備成形体14を作製するに際しても特に方法を限定するものではなく、所定量のコンパウンドを電子天秤等にて秤量し、予備成形体用金型に供給後室温又は熱願化性樹脂が硬化反応を進行させない温度で、成形プレスを用いて一定時間荷重を加え予備成形体14を得る。複雑な燃料流路溝を施した燃料電池用セパレータを作製する際に使用する予備成形体14を作製する場合、加熱加圧成形の面方向にある程度のコンパウンドの供給量分布を施さなければならず、コンパウンドの供給量分布を設定する場合は各部分に相当する量のコンパウンドを供給した後、一定荷重を加え予備成形体14を作製する。
【0043】
予備成形体14への押圧時、成形プレスに予備成形体14が固着して予備成形体14を成形プレスから離脱するのが困難な場合は、成形プレスの金型の面に離型剤を塗布した後、成形してもよい。予備成形体14の要求特性については一定の機械的強度を有する必要がある。予備成形体14が一定の機械的強度を有しないと、作業者の取扱い性が良好とならないばかりか、後述する吸盤にて保持、アームにて持ち上げることが困難となってしまうからである。ここで、要求される予備成形体14の機械的強度は予備成形体14の大きさや形状、コンパウンドを構成する材料特性、吸盤での保持状態等に起因する。
【0044】
次に、本発明によるセパレータの製造装置について説明する。セパレータの製造装置Aは、図4〜図6に示すように、人為操作によって供給されてくる予備成形体14を、成形プレス機(二次成形機の一例)Cに自動的に移送して供給する予備成形体供給機(移送手段の一例)Bと、供給されてきた予備成形体14を加熱及び加圧してセパレータ4に仕上げる成形プレス機Cとを有して構成されている。予備成形体14を用いてセパレータ4を作成する製造方法においては、予備成形体14を成形プレス機Cの下金型(成形型)15の設定位置に正しく、かつ、迅速にセットすることが、形状、品質その他の要求特性を備えたセパレータの実現において重要なポイントであり、本発明による製造装置Aはその点を満足させるべく構成されている。
【0045】
最初に、図7〜図9を参照して、本製造装置Aを用いてセパレータ4を作成する工程について簡単に説明する。まず、予め作成された予備成形体14を人為操作で予備成形体供給機Bの載置台16に正しくセットし、稼動ボタン17を押す。すると、予備成形体供給機Bが起動されて支持アーム18が予備成形体14を吸着して持上げてから右方向に90度回動移動し、成形プレス機Bの下金型15における設定位置の上方に予備成形体14を移送する。次いで、支持アーム18を若干下降させてから(下降しなくても可)吸着を解除して、予備成形体14を下金型15の設定位置に正しくセットし、支持アーム18が成形プレス機Bの領域外に退くと、上金型19が下降移動して予備成形体14を加熱加圧して所定形状のセパレータ4に仕上げる、というものである。次に、各部の構造について説明する。
【0046】
予備成形体供給機Bは、図4〜図6に示すように、平面視で矩形形状(正方形や長方形等)を呈する予備成形体14を吸着支持自在な略梯子状の支持アーム18と、この支持アーム18を縦軸心P回りに駆動回動自在な移送機構20と、予備成形体14を載置する載置台16とを備えて構成されている。移送機構20は機台22に載置固定されるとともに、載置台16は桁フレーム21を介して機台22の上方位置に配設されている。
【0047】
載置台16は、予備成形体14が搭載される載置面23Aを上面に有する載せ板23と、予備成形体14の長辺側の側面を当て付けるためのガイド壁24と、予備成形体14の短辺側の側面を当て付けるためのガイド片25とから成り、機台22上に立設固定されている桁フレーム21の上端に取付けられている。予備成形体14を載置台16に載せ付けてセットするには、予備成形体14の何れかの長辺14aをガイド壁14に当接させ、かつ、何れかの短片4bをガイド片25に当接させるようにする。この位置決めセット操作により、移送機構20によって成形プレス機Cに移送された予備成形体14は下金型15における設定位置に正確に位置決めされる状態となるように構成されている。尚、予備成形体14が正方形である場合には、上述の長辺と短辺とは、隣合う辺どうしとなる。
【0048】
支持フレーム18は、左右一対の縦部材18a,18aとこれら両者を連結する複数の横部材18bとから成り、各縦部材18a,18aの先端側の外側の2箇所ずつの計4箇所には、縦部材18aに突設された支持ブロック26に支持される状態の吸着パッド(予備成形体14を支持する予備成形体支持部の一例)27が装備されている。吸着パッド27はゴム等の弾性材による釣鐘形状のものであり、それら各吸着パッド27の上端部には、吸引ポンプ装置(図示省略)から延設された減圧用の吸引チューブ28が接続されている。つまり、4箇所の吸着パッド27を予備成形体14の上面14Aに軽く圧接させた状態で減圧することにより、予備成形体14を支持フレーム18の先端側部位に吸着支持することができる。
【0049】
この場合、支持アーム18に取付ける吸着パッド27の数、大きさ、減圧量等の条件は予備成形体14の形状、大きさ、重量、機械的強度に起因するが、保持が可能であれば前記条件に対しては特に制限はない。但し、減圧量が必要以上であると予備成形体14におけるこれと吸着パッド27とが接触している部分が損傷するおそれがあり、その部分の成形加工性を悪化させる原因となるため、吸着パッド27内における減圧量は、予備成形体14を持上げて移動させるに足りる必要最低限の値に設定することが好ましい。
【0050】
移送機構20は、支持フレーム18の付根部分を支持してこの支持フレーム18を若干距離で駆動昇降自在で、かつ、縦軸心P回りに駆動回動自在なものに構成されている。例えばエアシリンダで昇降駆動を行い、電動モータで回動駆動を行うといった手段や、その他種々の具体構造が可能である。この移送機構20は、載置台16に予備成形体14を人為操作によってセットするための搬入位置N(図4,7参照)と、成形プレス機Bにおける下金型15の設定位置に対応する搬出位置T(図4,9参照)とに亘って吸着パッド27を、つまりは支持フレーム18を駆動往復回動移動自在なものに構成されている。この場合、支持アーム18に吸着支持された予備成形体14の中心位置(図心位置地)の回動移動軌跡での移動速度(周速度)が0.2m/秒以下となるように設定されている。
【0051】
成形プレス機Cは、図4〜図6に示すように、下金型15を上端に固定装備する固定側機台29と、駆動昇降自在であり、かつ、上金型19を下端部に固定装備する移動側機台30とから構成されている。成形プレス機Cの稼動時には、上下の金型19,14は共にコンパウンドを硬化させるに十分な温度に昇温されており、移送機構20によって下金型15の設定位置に供給されて来る予備成形体14を、移動側機台30の下降移動によって上下の金型19,14間において加熱及び加圧し、強度十分に硬化され、かつ、所定形状に成形されたセパレータ4に仕上げることができる。
【0052】
さて、図4〜図6に示すように、載置台16を含む移送機構Bは、金型14,19を取り付けた成形プレス機Cの横側方における成形プレス機Cによる加熱加圧成型を阻害しない位置に配置されており、成型プレス機Cに他物が入り込む等の不都合が生ぜず、かつ、正確で俊敏に作業者が予備成形体14を載置台16の所定位置に載置セットすることができる。前述のように、載置台16における予備成形体14の正規のセット位置は、載置段16に装備されているガイド壁24とガイド片25とにより、操作容易でありながら正確に位置決めできるようになっている。尚、予備成形体14の載置台16への位置決め手段としては、ガイド壁24等のほか、罫書き線を施すことによっても可能である。
【0053】
次に、上述の製造装置Aによるセパレータ4の製造工程を、図7〜図9に示す作用図と、図10に示すフローチャートを参照して説明する。まず、図7に示すように、予備成形体14を、移送機構20の載置台16に正しくセットする。即ち、前述したように、予備成形体14の長辺14aと短辺14bとをガイド壁24とガイド片25とに当て付けた状態で載置面23Aに載置する(ステップ#1)。
【0054】
このとき、支持アーム18は、予備成形体14のセット操作をし易くすべく、昇降移動範囲における最上昇した上昇位置Uに移動されている。尚、図7に仮想線で示すように、載せ板23のガイド壁24の反対側に、予備成形体14が横側方にズレ動かないようにするための第2ガイド壁31を設けても良い。予備成形体14を載置台16にセットした後に、稼動ボタン17(図6参照)を押す(ステップ#2)。
【0055】
すると、図8に示すように、上昇位置Uにある支持アーム18が一定距離下降して吸着位置Dに移動され、支持アーム18の支持ブロック26に支持されている4箇所の吸着パッド(吸盤)27が、予備成形体14の上面14Aに軽く接触する。吸着パッド27が予備成形体14に接触したら吸引ポンプ(減圧装置)が作動し、減圧チューブ28を通して吸着パッド27内の空気が減圧される(ステップ#3)。
【0056】
減圧による負圧により、4箇所の吸着パッド27によって予備成形体14を保持することが可能となる。予備成形体14を吸着パッド27にて保持した後に、支持アーム18を上昇位置Uに上昇移動させて予備成形体14を持ち上げる(ステップ#4)。
【0057】
その後、搬入位置N(図7参照)にある支持アーム18が縦軸心Pを中心として駆動回動されて、図9に示すように、下金型15の設定位置のやや上側となる搬出位置T(図4参照)に予備成形体14が到達する(ステップ#5)。このとき、支持アーム18を若干下降させて予備成形体14を下金型15の設定位置の直上位置に上下移動させても良い。このステップ#5においては、下金型15と移送機構Bとの位置関係によって移動距離(回動角度)及び方向(回動方向)が決定される。また、必要に応じて支持アーム18を伸縮又は上下動させて下金型15内において前後左右又は上下に移動させることも可能である。移送機構20による回動移動や伸縮移動の速度が急速であると、予備成形体14が重い場合には慣性力によって予備成形体14の吸着保持が解除され、予備成形体14が落下して破損するおそれがあるため、必要以上に回動移動や伸縮移動、上下動の各速度を上げないことが肝要である。
【0058】
予備成形体14が設定位置まで回動移動されたら、減圧されている吸着パッド27内に減圧チューブ28を通じて空気を送り込み、減圧を解除する(ステップ#6)。これにより予備成形体14の吸着支持が解除され、下金型15内の設定位置に正確に予備成形体14が供給される(図9の仮想線を参照)。この場合、予備成形体14を急激に吸着解除すると、落下して破損するおそれがあるため、支持アーム18を下降移動させてから吸着解除する等、できるだけ下金型15に近接した状態で吸着を解除することが好ましい。尚、平面視においては、下金型15の設定位置と搬出位置Tとは互いに同じ位置である。
【0059】
減圧解除によって予備成形体14が下金型15内に供給されたなら、支持アーム18はその後の加熱加圧成形を阻害しないよう、搬出位置Tから復帰移動(逆方向の回動移動、又は、若干の上昇移動と逆方向の回動移動)して元の搬入位置Nまで自動的に戻る(ステップ#7)。
【0060】
上記ステップ#7において支持アーム18が、その復帰移動によって成形プレス機Cのの稼動を不能とするための所定の作動停止領域(図示省略)外に出ると、そのことをもって成形プレス機Cの作動が開始される。即ち、移動側機台30が下降移動され、下金型15内の設定位置に供給されている予備成形体14が、上下の金型19,14間において加熱加圧成形される(ステップ#8)。この成形プレス機Cの作動条件には特に制限はなく、所定時間、所定温度にて加熱加圧成形される。
【0061】
成形プレス機Cによる加熱加圧成形が終了すると、移動側機台30が上昇移動されて元の待機位置に戻り、所定の強度、形状等の緒元を有する状態に仕上げられた樹脂製のセパレータ4を下金型15から取出すのである(ステップ#9)。尚、成形プレス機Cによる加熱加圧成形(二次成形)中に、作業者は次に加熱加圧成形される予備成形体14を載置台16にセットしておくことにより、ステップ#1の準備工程に要する時間が短縮されるので、生産性の一層の向上を図ることが可能である。
【0062】
このように、本製造装置Aによる製造方法においては、一次成形工程によって得られる予備成形体14を、移送手段Bを用いて成形型15の設定位置に移送する移送工程を有し、この移送工程においては、移送手段Bにおける吸着パッド(予備成形体支持部)27を、これに予備成形体14をセットするための搬入位置Nから、二次成形機Cにおける成形型15の設定位置に対応する搬出位置Tに移送するのである。次に、セパレータの製造装置Aによって作成されるセパレータ4の幾つかの実施例、及び幾つかの比較的について述べる。
【0063】
〔実施例1〕
始めに、コンパウンドを作製する。コンパウンドは、天然黒鉛とフェノール樹脂とをヘンシェルミキサーで10分間混合したものを使用した。天然黒鉛とフェノール樹脂の配合比率は重量比率で85wt%/15wt%であった。次に、予備成形体14を作製する。予備成形体14は、100mmx100mmx3mmの平板形状で面方向に重量分布のないものを、成形温度は30℃、成形圧力40M:paで作製した。得られた予備成形体14の曲げ強度は1Mpaであった。得られた予備成形体14及び移動機構20を用いて燃料電池用セパレータ4を作製した。
【0064】
まず、載置第16に予備成形体14を取付ける。移送機構20は、前述したように、支持アーム18、載置台16、減圧装置(吸引ポンプ)、制御装置(図示省略)等から構成されている。支持アーム18における左右一対の縦部材18a,18aには吸着パッド27が各2個装備されており、合計4個の吸着パッド27によって予備成形体14を吸着支持(保持)する。制御装置には、支持アーム18の動作や吸着パッド27の減圧等が制御できるようプログラムが組み込まれている。予備成形体14を載置台16にセット後、稼動ボタン17を押すと支持アーム18が下方向に移動し、吸着パッド27が予備成形体14に接触する位置で停止する。停止後、減圧装置により減圧チューブ28を通じて吸着パッド27内及びチューブ内の空気が減圧され、予備成形体14が吸着支持(保持)される。支持アーム18による予備成形体14の下金型15の設定位置まで回転移動させる際の移動速度は0.1m/秒であった。
【0065】
上記回動移動後、吸着パッド27に減圧チューブ28を通じて空気を送り込み、吸着パッド27による保持を解除することにより、予備成形体14を下金型15に供給する。予備成形体14を下金型15に供給後、成形プレス機Cにおいて加熱加圧成型を行う。成形プレス機Cによる加熱加圧成形は、成形温度165℃、成形圧力500Mpa、成形時間5分間で行った。加熱加圧成型を行った後、下金型15から成形品を取り出し、実施例1によるセパレータ4を得た。
【0066】
予本製造装置Aにおいて、支持アーム18の回動移動や作業者の取扱等により予備成形体が落下等して破損する等、適切に供給されない枚数、即ち予備成形体破損枚数を、予備成形体14の10枚当たりに対する数として図11に示す特性比較表に記載した。また、得られたセパレータ4のうち、マイクロメーターで各測定点の厚さ寸法を測定し、交差±100μm以上のものを寸法精度不良枚数、目視により明らかに粗となっている部分を有するものを充填密度不良枚数、寸法精度、充填密度いずれもが良好なものを良品枚数として数え、図11の特性比較表に記載した。さらに、セパレータ4の1枚当たりの予備成形体供給に要する時間を測定し、図11の特性比較表に記載した。
【0067】
〔実施例2〕
実施例2によるセパレータ4は、予備成形体14の成形圧力を変更して、曲げ強度が5Mpaである予備成形体14を用いて、実施例1と同様の製造方法によって製造されたものである。
【0068】
〔実施例3〕
実施例3によるセパレータ4は、予備成形体14を吸着支持した支持アーム18を、下金型15の設定位置まで回転移動させる際の移動速度を0.2m/秒としたものであり、それ以外の条件は実施例1と同様の製造方法により製造されたものである。
【0069】
〔比較例1〕
比較例1によるセパレータ4は、本発明による製造装置Aを、即ち移送機構Bを使用せず、作業者が手で予備成形体14を成形プレス機Cに供給する手段が採られており、それ以外は実施例1と同様の製造方法により製造されたものである。
【0070】
〔比較例2〕
比較例2によるセパレータ4は、予備成形体の成形圧力を変更し、曲げ強度が0.5Mpaである予備成形体14を用いて、実施例1と同様の製造方法により製造されたものである。
【0071】
〔比較例3〕
比較例3によるセパレータ4は、予備成形体14を吸着支持する支持アーム18を、下金型15の設定位置まで回転移動させる際の移動速度を0.1m/秒としたものであり、それ以外の条件は実施例1と同様の製造方法により製造されたものである。
【0072】
図11に示す比較表からは以下のことが理解できる。実施例1、2による製造方法では、1枚当たりの供給時間が5秒と短く、かつ、得られたセパレータ4の10枚当たりの良品数が10枚(全数合格)であった。実施例3においては、1枚あたりの供給時間が4秒とさらに短く、かつ、得られたセパレータ4の10枚当たりの良品数も10枚(全数合格)であった。
【0073】
これに対して、比較例1による製造方法では、1枚当たりの予備成形体供給時間が10秒と長く、しかも、予備成形体破損枚数が3枚で、寸法精度不良及び充填密度不良枚数が3枚であり、10枚当たりの良品数は4枚しかなかった。比較例2による製造方法では、1枚当たりの予備成形体供給時間が5秒であり、この点では実施例1,2のものと同等であるが、予備成形体破損枚数が9枚、寸法精度不良及び充填密度不良枚数が1枚あり、結局、10枚当たりの良品数はO枚(全数不合格)であった。比較例3による製造方法では、1枚当たりの予備成形体供給時間が3秒であり、この点では実施例1〜3のものと比較して短かいが、予備成形体破損枚数が8枚で、寸法精度不良及び充填密度不良枚数が2枚あり、結局この比較例3においても10枚当たりの良品数が0枚(全数不合格)であった。
【0074】
〔製造方法、製造装置の別構造例〕
移送機構B(移送手段)は、予備成形体14を電磁吸着やその他の手段によって支持するとか、スライド移動やこれと回動移動とが合さった複合移動によって成形体15に移送する構成としても良い。載置台16は、平面視が矩形形状の予備成形体14の四つの角部のうち、2以上の角部が位置決めされる構造であれば、その構造は問わない良い。因みに、上述(図4等参照)の載置台16は、二辺挟角が位置決めされており、実質的に二つの角部が位置決めされる構造となっている。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】固体高分子電解質型燃料電池のスタック構造を示す分解斜視図
【図2】固体高分子電解質型燃料電池のセパレータを示す正面図
【図3】単セルの構成を示す要部の拡大断面図
【図4】燃料電池用セパレータの製造装置を示す平面図
【図5】燃料電池用セパレータの製造装置を示す側面図
【図6】燃料電池用セパレータの製造装置を示す正面図
【図7】予備成形体を載置台にセットする状態を示す作用図
【図8】予備成形体を吸着した状態を示す作用図
【図9】予備成形体を成形プレス機の搬出位置に回動移動した状態を示す作用図
【図10】本発明の製造方法によるセパレータの作成工程を示すフローチャート
【図11】一次成形による各種予備成形体の各項目に関する特性比較表
【符号の説明】
【0076】
4 燃料電池用セパレータ
14 予備成形体
14A 上面
15,19 成形型
27 予備成形体支持部(吸着パッド)
A 燃料電池用セパレータの製造装置
B 移送手段
C 二次成形機
N 搬入位置
T 搬出位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用セパレータを、導電材と樹脂組成物とを有する粉状の複合材を硬化反応されない温度条件において押し固めて板状の予備成形体を形成する一次成形工程と、前記一次成形工程によって得られる予備成形体を、成形型を用いてプレス成形する二次成形工程と、によって作成する燃料電池用セパレータの製造方法であって、
前記一次成形工程によって得られる予備成形体を、移送手段を用いて前記成形型の設定位置に移送する移送工程を有し、この移送工程においては、前記移送手段における予備成形体支持部を、これに前記予備成形体をセットするための搬入位置から、前記成形型に対する設定位置に対応した搬出位置に移送する燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項2】
前記予備成形体支持部は吸着パッドを用いて前記予備成形体を吸着支持するものであり、前記移送工程においては、前記搬入位置にセットされている予備成形体を前記吸着パッドの吸着によって持上げた状態で前記成形型に移送させる請求項1に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項3】
前記移送工程においては、予備成形体を0.2m/秒以下の速度で移送させる請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項4】
前記移送工程においては、予備成形体を回動移動によって移送させる請求項1〜3の何れか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項5】
前記二次成形工程には、前記一次成形工程によって形成された1Mpa以上の曲げ強度を有する予備成形体が供給される請求項1〜4の何れか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂組成物として熱硬化性のものを用いるとともに、前記二次成形工程におけるプレス成形は加熱を伴うものである請求項1〜5の何れか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項7】
導電材と樹脂組成物とを有する粉状の複合材を硬化反応されない温度条件において押し固めて得られる板状の予備成形体を、この予備成形体を成形型でプレス成形して燃料電池用セパレータに仕上げる二次成形機に移送させるための移送手段を有するとともに、
前記移送手段は、前記予備成形体を支持する予備成形体支持部を、これに前記予備成形体をセットするための搬入位置と、前記二次成形機における成形型の設定位置に対応した搬出位置とに亘って往復移動自在なものに構成されている燃料電池用セパレータの製造装置。
【請求項8】
前記予備成形体支持部は、前記予備成形体を、これの上面の複数箇所に作用する吸着パッドを用いて吸着支持するものに構成されている請求項7に記載の燃料電池用セパレータの製造装置。
【請求項9】
前記移送手段は、前記予備成形体を0.2m/秒以下の速度で移送させるものに構成されている請求項7又は8に記載の燃料電池用セパレータの製造装置。
【請求項10】
前記移送手段は、前記予備成形体を回動移動によって移送させるものに構成されている請求項7〜9の何れか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造装置。
【請求項11】
前記二次成形機は、熱硬化性の前記樹脂組成物を用いて成る前記予備成形体を、加熱を伴ってプレス成形するものに構成されている請求項7〜10の何れか一項に記載の燃料電池用セパレータの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−228607(P2006−228607A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42013(P2005−42013)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】