燃料電池用セパレータ
【課題】成形品同士を十分に接触もしくは接近して配置させることができ、かつ良好な精度で成形品を位置決めして積み重ねることができ、かつ複雑なバリ取り加工が不要な燃料電池用セパレータを提供する。
【解決手段】流路3とその流路3に接続されたマニホールド2bとを有し、マニホールド2bは燃料電池用セパレータ1Qの一方の面1A2で流路3と接続され、他方の面1B2で流路3と接続されていない。一方の面1A2において流路3とマニホールド2bとが接続される部分にバリはなく、他方の面1B2においてマニホールド2bの周縁部にはへこみ部5dが形成されている。へこみ部5dは、凹部6と、その凹部6の底面から突き出しかつ他方の面1B2から突き出ない凹部内バリ4cとを有している。
【解決手段】流路3とその流路3に接続されたマニホールド2bとを有し、マニホールド2bは燃料電池用セパレータ1Qの一方の面1A2で流路3と接続され、他方の面1B2で流路3と接続されていない。一方の面1A2において流路3とマニホールド2bとが接続される部分にバリはなく、他方の面1B2においてマニホールド2bの周縁部にはへこみ部5dが形成されている。へこみ部5dは、凹部6と、その凹部6の底面から突き出しかつ他方の面1B2から突き出ない凹部内バリ4cとを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応から電力を得る燃料電池においては、近年ポ−タブル機器、自動車等の種々の用途への適用が検討されている。燃料電池は、電解質膜、電極およびセパレータからなる基本構成単位、すなわち単位セルが通常直列に数十〜数百セル積層された構造を有する。一般的な燃料電池の製造方法では電解質膜および電極は予め電解質膜/電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)として形成され、これにセパレータが配置される。セパレータとしては、水素等の燃料と、空気または酸素からなる酸化剤と、セルを冷却するための冷媒とをそれぞれ供給するための流路を少なくとも片面に形成したものが用いられる。
【0003】
セパレータでは、隣接するMEAとの電気的な接続を確保して燃料電池の発電効率を高めるために十分な導電性を備えることが必要であるが、これに加えて、単位セルの積層構造を支えるために十分な機械的強度が必要とされる。また、燃料電池の小型化の要求に伴い近年ではセパレータの薄肉化も求められている。さらに、単位セルの積層構造における単位セル間の接触抵抗を低減するために厚み精度の向上も求められている。
【0004】
従来の燃料電池用セパレータは、樹脂と炭素材料とを含む成形材料を圧縮成形用金型内に投入し加圧することによって成形される。このような燃料電池用セパレータを形成するための成形用金型の構造は従来から各種提案されている(例えば特許文献1〜5参照)。
【0005】
この圧縮成形用金型には、(1)金型内および成形材料中の空気を効率よく金型外に排出できること、(2)金型内に余分に充填した成形材料を金型外に排出できることが求められる。
【0006】
一般的に、従来の圧縮成形用金型は、図24Aに示すように、凹部(キャビティ)101aを有する凹型101と、凸部(コア)102aを有する凸型102とから構成されている。そして、上記(1)、(2)を満たすために、凹部101aの側壁と凸部102aの側壁とを対向させたシェアエッジ(図中領域P)が設けられている。
【0007】
このような金型を用いて成形材料120aを成形すると、余剰分の成形材料は凹部101aからフローアウトして、シェアエッジの隙間(クリアランス)へ排出され、かつ金型内および成形材料中の空気も効率よく金型外へ排出され得る。
【0008】
また金型として、図25Aに示すように、凹部101aを有する金型101と、凹部102aを有する金型102とから構成される合わせ型の圧縮成形用金型もある。この合わせ型の金型では、構造が簡単で、金型全体の厚みを薄くすることもできる。
【特許文献1】特開2001−198921号公報
【特許文献2】特開2003−170459号公報
【特許文献3】特開2004−230788号公報
【特許文献4】特開2004−71334号公報
【特許文献5】特許第3751911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図24Aに示す従来のシェアエッジ構造の圧縮成形用金型では、図24Bに示すように成形品120の一方の面120Aに交差する方向に樹脂バリが生じる。また図25Aに示す従来の合わせ型の圧縮成形用金型では、図25Bに示すように成形品120の一方の面120Aに略平行な方向に樹脂バリが生じる。
【0010】
燃料電池において複数枚のセパレータ(成形品)を積み重ねるときには、成形品同士を十分に接触もしくは接近して配置させる必要がある。しかし、図24Bに示すように成形品120の一方の面120Aに交差する方向に樹脂バリが生じていると、成形品120同士を十分に接触もしくは接近して配置させることができないという問題がある。
【0011】
また複数枚のセパレータ(成形品)を積み重ねるときの位置決めの精度は成形品の外周形状により決定される。しかし、図25Bに示すように成形品120の一方の面120Aに略平行な方向に樹脂バリが生じていると、位置決め精度が悪化して精度よく成形品120を積み重ねることができないという問題がある。
【0012】
また成形品の外周部だけでなく、成形品面内の貫通孔等にも上記のような樹脂バリが生じる。よって、貫通孔部分に形成された樹脂バリによって、上記と同様に、成形品同士を十分に接触もしくは接近して配置させることができないという問題もある。
【0013】
また、これらの樹脂バリを取り除くためには、複雑なバリ取り加工工程が必要となる。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、成形品同士を十分に接触もしくは接近して配置させることができ、かつ良好な精度で成形品を位置決めして積み重ねることができ、かつ複雑なバリ取り加工が不要な燃料電池用セパレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の燃料電池用セパレータは、燃料電池用セパレータの一方の面の外周縁部からその一方の面に交差する方向に突き出したバリがあり、他方の面の外周縁部にバリを収容可能な形状のへこみ部が形成されている。
【0015】
本発明の一の燃料電池用セパレータによれば、へこみ部がバリを収容可能な形状で形成されている。このため、同一形状の燃料電池用セパレータを積み重ねた場合、一方の燃料電池用セパレータの一方の面に生じたバリは他方の燃料電池用セパレータの他方の面に形成されたへこみ部に収容される。これにより燃料電池用セパレータ同士を十分に接触もしくは接近して配置させることが可能となる。
【0016】
またバリは燃料電池用セパレータの一方の面に交差する方向に突き出しており、燃料電池用セパレータの側面から外周側へ突き出していないため、良好な精度で燃料電池用セパレータを位置決めして積み重ねることができる。
【0017】
またバリを取り除く必要がなくなるため、複雑なバリ取り加工が不要となる。
本発明の他の燃料電池用セパレータは、流路と、その流路に接続されていないマニホールドとを有している。燃料電池用セパレータの一方の面においては流路に接続されていないマニホールドの周縁部からその一方の面に交差する方向に突き出したバリがある。燃料電池用セパレータの他方の面においては流路に接続されていないマニホールドの周縁部にバリを収容可能な形状のへこみ部が形成されている。
【0018】
本発明の他の燃料電池用セパレータによれば、同一形状の燃料電池用セパレータを積み重ねた場合、一方の燃料電池用セパレータのマニホールドの周縁部に生じたバリを他方の燃料電池用セパレータのへこみ部に収容することができる。これにより燃料電池用セパレータ同士を十分に接触もしくは接近して配置させることが可能となる。
【0019】
上記一および他の燃料電池用セパレータにおいて好ましくは、へこみ部が段差を形成している。
【0020】
本発明の一の燃料電池は、上記一および他の燃料電池用セパレータのいずれか一方を1対と、その1対の燃料電池用セパレータと交互に積み重ねられた膜/電極接合体とを備えた燃料電池であって、1対の燃料電池用セパレータのうち一方の燃料電池用セパレータのバリが、1対の燃料電池用セパレータのうちの他方の燃料電池用セパレータのへこみ部に収納されていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の一の燃料電池によれば、一方の燃料電池用セパレータのバリが他方の燃料電池用セパレータのへこみ部に収容されるため、燃料電池用セパレータ同士を十分に接触させることが可能となる。
【0022】
本発明の他の燃料電池は、上記一および他の燃料電池用セパレータのいずれか一方と、その燃料電池用セパレータと交互に積み重ねられた膜/電極接合体とを備えた燃料電池であって、燃料電池用セパレータのバリが、膜/電極接合体を介して対向する燃料電池用セパレータのへこみ部に収納されていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の他の燃料電池によれば、一方の燃料電池用セパレータのバリが、膜/電極接合体を介して対向する他方の燃料電池用セパレータのへこみ部に収容されるため、燃料電池用セパレータ同士を十分に接近して配置することが可能となる。
【0024】
本発明のさらに他の燃料電池用セパレータは、流路とその流路に接続されたマニホールドとを有している。そのマニホールドは燃料電池用セパレータの一方の面で流路と接続され、他方の面で流路と接続されていない。一方の面において流路とマニホールドとが接続される部分にバリはない。他方の面においてマニホールドの周縁部にはへこみ部が形成されている。へこみ部は、凹部と、その凹部の底面から突き出しかつ他方の面から突き出ない凹部内バリとを有している。
【0025】
本発明のさらに他の燃料電池用セパレータによれば、凹部の底面から凹部内バリが生じるようにすることで、凹部内バリの先端を凹部内に留め、凹部内バリが第2の燃料電池用セパレータの第2の面から第1の燃料電池用セパレータ側へ突き出すことが防止できる。また凹部内に第1の燃料電池用セパレータのバリを収納することもできる。
【0026】
また一方の面において流路とマニホールドとが接続される部分にバリがないため、このバリが流路とマニホールドとの間のガスの流れを妨げることはない。
【0027】
またへこみ部がバリを収容可能な形状で形成されている。このため、マニホールドの周縁部にバリがある燃料電池用セパレータを本発明の燃料電池用セパレータと積み重ねた場合、一方の燃料電池用セパレータのマニホールド周縁部のバリは他方の燃料電池用セパレータのマニホールド周縁部のへこみ部に収容される。これにより燃料電池用セパレータ同士を十分に接触もしくは接近して配置させることが可能となる。
【0028】
またバリを取り除く必要がなくなるため、複雑なバリ取り加工が不要となる。
本発明のさらに他の燃料電池は、一の面の外周縁部からその一の面に交差する方向に突き出したバリを有する燃料電池用セパレータと、他の面の外周縁部にバリを収容可能な形状のへこみ部が形成された燃料電池用セパレータとが対向する1対の燃料電池用セパレータと、その1対の燃料電池用セパレータと交互に積み重ねられた膜/電極接合体とを備えた燃料電池であって、バリを有する燃料電池用セパレータのバリが、へこみ部が形成された燃料電池用セパレータのへこみ部に収納されていることを特徴とするものである。
【0029】
本発明のさらに他の燃料電池によれば、一の燃料電池用セパレータのバリが他の燃料電池用セパレータのへこみ部に収容されるため、燃料電池用セパレータ同士を十分に接触させることが可能となる。
【0030】
本発明のさらに他の燃料電池は、互いに対向する一方の面と他方の面とを有し、一方の面側から他方の面側へ向かって燃料電池用セパレータの幅が小さくなるように外周縁部がテーパ状の部分を有している。
【0031】
本発明のさらに他の燃料電池用セパレータによれば、外周縁部がテーパ状の部分を有しているため、このテーパ状の部分にバリを収納可能である。このため、このテーパ状の部分を有する燃料電池用セパレータをバリを有する燃料電池用セパレータと積み重ねた場合、テーパ状の部分にバリを収納可能であるため、燃料電池用セパレータ同士を十分に接触もしくは接近して配置させることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明によれば、バリを収納できるへこみ部を燃料電池用セパレータに設けたことにより、成形品同士を十分に接触もしくは接近して配置させることができ、かつ良好な精度で成形品を位置決めして積み重ねることができ、かつ複雑なバリ取り加工が不要な燃料電池用セパレータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1および図2は本発明の実施の形態1における燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す平面図および背面図であり、図3は図1および図2のIII−III線に沿う概略断面図である。図4は図3の領域Q1を拡大して示す概略断面図である。図5は図4の領域Q2のバリを拡大して示す概略断面図である。
【0034】
図1〜図3を参照して、燃料電池用セパレータ1は、矩形の平面形状を有し、かつ互いに対向する一方の面1Aと他方の面1Bとを有している。燃料電池用セパレータ1は、一方の面1Aと他方の面1Bとの間を貫通するマニホールド用の孔2a、2bを有している。また一方の面1Aと他方の面1Bとの各々には、ガスなどの流路3が孔2a、2bに連通するように形成されている。
【0035】
一方の面1Aには、燃料電池用セパレータ1の外周縁部および孔2aの周縁部の各々において一方の面1Aに交差する方向に突き出したバリ4、4aがある。また他方の面1Bには、燃料電池用セパレータ1の外周縁部および孔2aの周縁部の各々においてバリ4、4aの各々を収容可能な形状のへこみ部5aが形成されている。
【0036】
また他方の面1Bには、孔2bの周縁部において他方の面1Bに交差する方向に突き出したバリ4bがあり、また一方の面1Aには、孔2bの周縁部においてバリ4bを収容可能な形状のへこみ部5aが形成されている。
【0037】
バリ4、4a、4bの各々は、燃料電池用セパレータ1の外周縁部および孔2a、2bの周縁部の各々の全周にあってもよく、また一部において途切れていてもよい。またへこみ部5aは、燃料電池用セパレータ1の外周縁部および孔2a、2bの周縁部の各々の全周に形成されていることが好ましいが、一部において途切れていてもよい。
【0038】
なおマニホールド用の孔2aは他方の面1B側において流路3と接続されており、マニホールド用の孔2bは一方の面1A側において流路3と接続されている。孔2a、2bの各周縁部に生じるバリ4a、4bの各々は、孔2a、2bが流路3と接続される側と反対側の面に生じている。これにより、バリ4a、4bが孔2a、2bと流路3との間に位置することはなくなるため、流路−孔間における流体の流れがバリ4a、4bにより阻害されることはない。
【0039】
また図1および図2には示していないが、燃料電池用セパレータ1には、流路3に接続されないマニホールド用の孔があってもよい。図26および図27は、流路に接続されないマニホールドを有する燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す平面図および背面図である。図26および図27を参照して、燃料電池用セパレータ1は、流路3に接続されたマニホールド用の孔2a1、2b1以外に、流路3に接続されていないマニホールド用の孔2a2、2b2を有している。
【0040】
流路3に接続されていないマニホールド用の孔2a2の一方の面1A側の周縁部には、その一方の面1Aに交差する方向に突き出したバリ4aがある。また流路3に接続されていないマニホールド用の孔2a2の他方の面1B側の周縁部には、バリ4aを収容可能な形状のへこみ部5aが形成されている。
【0041】
また流路3に接続されていないマニホールド用の孔2b2の他方の面1B側の周縁部には、他方の面1Bに交差する方向に突き出したバリ4bがある。また流路3に接続されていないマニホールド用の孔2b2の一方の面1A側の周縁部には、バリ4bを収容可能な形状のへこみ部5aが形成されている。
【0042】
また流路3に接続されたマニホールド用の孔2a1、2b1と、それらの各々の周縁部に形成されたバリ4a、4bと、へこみ部5aとの各構成は、図1および図2に示すマニホールド用の孔2a、2bと、バリ4a、4bと、へこみ部5aとのそれぞれとほぼ同じ構成を有している。また図26および図27のIII−III線に沿う断面の構成は、図3に示す構成とほぼ同じである。
【0043】
また上記以外の図26および図27に示すセパレータ1の構成は、図1〜図3に示した構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図4を参照して、へこみ部5aは断面において段差を形成するようにセパレータ1の角部を切り取ることにより構成されている。つまり、図1および図2を参照して、燃料電池用セパレータ1の外周縁部に形成されたへこみ部5aは、燃料電池用セパレータ1の側面と他方の面1Bとのなす角部を切り取った形状を有している。また孔2aの周縁部に形成されたへこみ部5aは孔2aの壁面と他方の面1Bとのなす角部を切り取った形状を有している。また孔2bの周縁部に形成されたへこみ部5aは孔2bの壁面と一方の面1Aとのなす角部を切り取った形状を有している。
【0045】
図5を参照して、バリ4の一方の側面と燃料電池用セパレータ1の一方の面1Aとの境は、曲率半径rの丸みを帯びたラウンド形状となっている。バリ4の他方の側面はセパレータの側面に連続的に繋がる面よりなっている。このバリ4の曲率半径rは0.05mm以上0.15mm以下であり、バリ4の厚みtは0.02mm以上0.1mm以下であり、バリ4の高さhは0.05mm以上0.15mm以下である。
【0046】
バリ4の曲率半径rが0.05mm未満の場合には成形用金型の加工が困難となり、0.15mmを超える場合にはバリ4が大きくなりすぎる。またバリ4の厚みtが0.02mm未満の場合には成形材料中の空気の排出が難しくなり、成形品中にボイドなどが生じる場合がある。またバリ4の厚みtが0.1mmを超える場合には成形材料の漏れ出し量が多くなり、成形品の厚みの安定性が悪くなる。またバリ4の高さhは上述したバリ4の曲率半径rの大きさによって決まる。なおバリ4a、4bの形状も、上記のバリ4の形状と同様の形状を有している。
【0047】
また図4に示すへこみ部5aの大きさは、基本的にはバリ4、4a、4bを収納することができる大きさであればよい。本実施の形態のように、へこみ部5aが段差を形成するような形状である場合には、へこみ部5aの段差の大きさHがバリ4、4a、4bの高さh以上の大きさ(H≧h)で、かつへこみ部5aのセパレータ1の他方の面1Bに沿う方向の幅Tがバリ4、4a、4bの厚みtとバリ4、4a、4bの曲率半径rとの和以上の大きさ(T≧t+r)であればよい。なお寸法H、Tの上限は、成形品の形状と寸法安定性に影響しないような大きさに設定されることが好ましい。
【0048】
図6は図4に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図であり、図7は図6の領域Q3を拡大して示す概略断面図である。
【0049】
上記の燃料電池用セパレータ1を積み重ねる場合、図4に示すセパレータ1が複数個(たとえば2個)準備される。これらのセパレータ1が位置決めされた後に、図6に示すように互いに積み重ねられる。積み重ねられた状態においては、上述のようにへこみ部5aはバリ4、4a、4bが生じる位置に対応する位置に設けられており、かつバリ4、4a、4bの各々を収納できる大きさであるため、図6および図7に示すようにバリ4、4a、4bの各々はへこみ部5a内に収容される。
【0050】
次に、本実施の形態の燃料電池用セパレータ1を製造するための成形用金型について説明する。
【0051】
図8は、本発明の実施の形態1における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。また図9は、図8の領域Q4を拡大して示す概略断面図である。
【0052】
図8および図9を参照して、成形用金型10は、成形材料を成形するための成形用金型であって、金型部材11と、金型部材12とを有している。金型部材11は、金型部材12と対向する表面に凹部11aを有している。金型部材12は、金型部材11と対向する表面に、凹部11aに対応して設けられた凸部12aを有している。金型部材11および12を互いに重ね合わせたときに、金型部材11の凹部11aに金型部材12の凸部12aが嵌り込むように凹部11aおよび凸部12aは構成されている。
【0053】
金型部材11の凹部11aの底面11a1には、ガスなどの流路を形成するための流路形成用凸部11dと、マニホールド用の孔を形成するための孔形成用凸部11bおよび孔形成用凹部11cとを有している。
【0054】
金型部材12の凸部12aは、凹部11aの底面11a1と対向する上面12a1を有している。その上面12a1に、ガスなどの流路を形成するための流路形成用凸部12dと、マニホールド用の孔を形成するための孔形成用凹部12bおよび孔形成用凸部12cとを有している。
【0055】
金型部材11の孔形成用凸部11bは金型部材12の孔形成用凹部12bに対応して設けられており、金型部材11の孔形成用凹部11cは金型部材12の孔形成用凸部12cに対応して設けられている。
【0056】
金型部材11の凹部11aの外周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部11e1が設けられている。また孔形成用凸部11bの根元の外周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部11f1が設けられており、孔形成用凸部12cの根元の外周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部12f1が設けられている。これらのへこみ部形成用凸部11e1、11f1、12f1の各々は断面形状がたとえば角型の段部形状となっている。
【0057】
次に、上記の成形用金型10を用いた本実施の形態の燃料電池用セパレータ1の製造方法について説明する。
【0058】
まず成形材料が、例えば導電性炭素材料と樹脂バインダーとを少なくとも含むように準備される。樹脂バインダーは、例えば熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との少なくともいずれかを含んでいる。この成形材料は、粉末状、粒子状、ペレット状等であってもよく、またシート形状であってもよい。
【0059】
上記の炭素材料としては、例えば人造黒鉛、天然黒鉛、ガラス状カーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。これらの炭素材料は単独で、もしくは2種以上を組合せて用いることができる。これらの炭素材料の粉粒体の形状に特に制限はなく、箔状、鱗片状、板状、針状、球状、無定形等の何れであってもよい。また、黒鉛を化学処理して得られる膨張黒鉛も使用することができる。導電性を考慮すれば、より少量で高度の導電性を有するセパレータが得られるという点で、人造黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛が好ましい。
【0060】
熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができる。熱硬化性樹脂は1種類の樹脂からなるもののみではなく、2種類以上の樹脂を混合したものも使用することができる。
【0061】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素樹脂、全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエステル・ポリエステルエラストマー、ポリエステル・ポリエーテルエラストマー等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂と同様に、熱可塑性樹脂も1種類の樹脂からなるもののみではなく、2種類以上の樹脂を混合したものも使用することができる。さらに熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを複合したものも使用することができる。
【0062】
この成形材料が、図8に示す成形用金型10に投入され、金型部材11と金型部材12との間で加圧される。この際、金型部材11、12は熱盤(図示せず)により加熱されており、この金型部材11、12を介して成形材料が加熱される。この加熱加圧により、樹脂バインダーに熱硬化性樹脂が用いられている場合には、その熱硬化性樹脂が固化する。この後、金型10から図1〜図3に示す燃料電池用セパレータ(成形品)1が取り出される。また樹脂バインダーに熱可塑性樹脂が用いられている場合には、上記の加熱加圧により、その熱可塑性樹脂は溶融する。
【0063】
樹脂バインダーに熱可塑性樹脂が用いられている場合には、引き続いて、金型部材11、12が冷却盤(図示せず)により冷却される。この冷却の際にも、成形材料は金型部材11と金型部材12との間で加圧されている。この冷却加圧により溶融状態にあった熱可塑性樹脂が固化する。この後、金型10から図1〜図3に示す燃料電池用セパレータ(成形品)1が取り出される。
【0064】
上記のように樹脂バインダーが熱硬化性樹脂よりなる場合は、成形材料が成形用金型10で加熱加圧されて燃料電池用セパレータ(成形品)1が得られるが、樹脂バインダーが熱可塑性樹脂よりなる場合または熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂よりなる場合は、成形材料が成形用金型10で加熱加圧および冷却加圧されて燃料電池用セパレータ(成形品)1が得られる。
【0065】
上記の成形工程において、図8に示す成形用金型10においては、凹部11aの側面と凸部12aの側面との間(領域P1)、孔形成用凹部12bと孔形成用凸部11bとの間(領域P2)、および孔形成用凹部11cと孔形成用凸部12cとの間(領域P3)にバリが生じることになる。
【0066】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態の燃料電池用セパレータによれば、へこみ部5aは、バリ4、4a、4bの各々を収容可能な形状で形成されている。このため、同一形状の燃料電池用セパレータ1同士を積み重ねた場合、一方のセパレータ1に生じたバリ4、4a、4bは他方のセパレータ1に形成されたへこみ部5aに収容される。これによりセパレータ1同士を十分に接触もしくは接近して配置することが可能となる。
【0067】
またバリ4、4a、4bはセパレータ1の一方の面1Aまたは他方の面1Bに交差する方向に突き出しており、セパレータ1の側面から外周側へ突き出していないため、良好な精度でセパレータ1を位置決めして積み重ねることができる。
【0068】
またバリ4、4a、4bを取り除く必要がなくなるため、複雑なバリ取り加工が不要となる。
【0069】
(実施の形態2)
図10は本発明の実施の形態2における燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す一部破断断面図である。図11は図10に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図である。図12は図11の領域Q5を拡大して示す概略断面図である。
【0070】
本実施の形態の燃料電池用セパレータ1は、へこみ部の形状において実施の形態1の構成と異なる。図10〜図12を参照して、本実施の形態におけるセパレータ1の外周縁部に形成されたへこみ部5bは、セパレータ1の一方の面1A側から他方の面1B側へ向かって燃料電池用セパレータ1の幅が小さくなるようなテーパ状の切欠である。これにより図10に示すようにセパレータ1の一方の面1A側の幅W1よりも他方の面1B側の幅W2は小さくなっている。
【0071】
また孔2bの周縁部に形成されたへこみ部5bは、セパレータ1の他方の面1B側から一方の面1A側へ向かって孔2bの開口径が大きくなるようなテーパ状の切欠である。また図示していないが、孔2aの周縁部に形成されたへこみ部5bは、セパレータ1の一方の面1A側から他方の面1B側へ向かって孔2aの開口径が大きくなるようなテーパ状の切欠である。
【0072】
これらのテーパ状の切欠の各々は図10〜図12に示す断面において直線的に伸びた部分を有している。また、これらのへこみ部5bの各々の大きさは、基本的にはバリ4、4a、4bを収納することができる大きさであればよい。本実施の形態のように、セパレータ1の外周縁部に形成されたへこみ部5bがテーパ状の切欠であって、図12に示すテーパ角(他方の面1Bとテーパ面とのなす角度)αがたとえば45°である場合には、へこみ部5bの幅Tおよび高さHの各々は、図5に示すバリ4の厚みtとバリ4の曲率半径rとの和以上の大きさ(T≧t+r、H≧t+r)であればよい。このテーパ状の切欠よりなるへこみ部5bの幅Tはたとえば0.07mm以上0.25mm以下で、高さHはたとえば0.07mm以上である。孔2a、2bの各々の周縁部に形成されたへこみ部5bは、上記のセパレータ1の外周縁部に形成されたへこみ部5bと同様の形状を有している。なお寸法H、Tの上限は、成形品の形状と寸法安定性に影響しないような大きさに設定されることが好ましい。
【0073】
また上記のテーパ状の切欠は、図28に示すように一方の面1Aから他方の面1Bの全体にわたってテーパ状となっていてもよい。この場合、セパレータ1の外周縁部においてはセパレータ1の側面の全体がテーパ状の切欠になっており、またマニホールド用の孔2a、2bの各々においては孔2a、2bの壁面の全体がテーパ状の切欠になっている。
【0074】
なお、本実施の形態の燃料電池用セパレータの上記へこみ部5b以外の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
上記の燃料電池用セパレータ1を積み重ねる場合、図10に示すセパレータ1が複数個(たとえば2個)準備される。これらのセパレータ1が位置決めされた後に、図11および図12に示すように互いに積み重ねられる。積み重ねられた状態においては、上述のようにへこみ部5bはバリ4、4a、4bが生じる位置に対応する位置に設けられており、かつバリ4、4a、4bを収納できる大きさであるため、図11および図12に示すようにバリ4、4a、4bの各々はへこみ部5b内に収容される。
【0076】
次に、本実施の形態の燃料電池用セパレータ1を製造するための成形用金型について説明する。
【0077】
図13は、本発明の実施の形態2における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を、図8の領域Q4に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【0078】
本実施の形態の成形用金型10は、図8および図9に示す実施の形態1の成形用金型の構成と比較して、へこみ部を形成するためのへこみ部形成用凸部の形状が異なる。図13を参照して、本実施の形態の成形用金型10では、金型部材11の凹部11aの外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部11e2と、孔形成用凸部11bの根元の外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部(図示せず)と、孔形成用凸部12cの根元の外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部12f2との各々は断面形状がテーパ形状となっている。
【0079】
なお、本実施の形態の成形用金型10の上記以外の構成は、実施の形態1の成形用金型10の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、上記の成形用金型10を用いた本実施の形態の燃料電池用セパレータ1の製造方法も、実施の形態1の製造方法とほぼ同じであるため、その説明は省略する。
【0080】
本実施の形態の燃料電池用セパレータ1においても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
(実施の形態3)
図14は本発明の実施の形態3における燃料電池用セパレータの構成であって、図3の領域Q1に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。図15は図14に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図であり、図16は図15の領域Q6を拡大して示す概略断面図である。
【0082】
本実施の形態の燃料電池用セパレータ1は、へこみ部の形状において実施の形態1の構成と異なっている。図14〜図16を参照して、本実施の形態におけるへこみ部5cは、燃料電池用セパレータ1の外周縁部および孔2a、2bの周縁部の角部に曲率半径Rを有するように形成された切欠である。図1に示すように、このへこみ部5cの曲率半径Rは、バリ4の曲率半径rよりも大きい。
【0083】
このへこみ部5cの大きさは、基本的にはバリ4を収納することができる大きさであればよい。本実施の形態のように、へこみ部5cが曲率半径Rを有している場合には、図16に示すようにへこみ部5cの曲率半径Rは、バリ4の曲率半径rの3倍とバリ4の厚みtとの和以上の大きさ(R≧3×r+t)であればよい。なお曲率半径Rの上限は、成形品の形状と寸法安定性に影響しないような大きさに設定されることが好ましい。
【0084】
なお、本実施の形態の燃料電池用セパレータ1の上記以外の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
上記の燃料電池用セパレータ1を積み重ねる場合、図14に示すセパレータ1が複数個(たとえば2個)準備される。これらのセパレータ1が位置決めされた後に、図15および図16に示すように互いに積み重ねられる。積み重ねられた状態においては、上述のようにへこみ部5cはバリ4、4a、4bが生じる位置に対応する位置に設けられており、かつバリ4、4a、4bを収納できる大きさであるため、図15および図16に示すようにバリ4、4a、4bはへこみ部5c内に収容される。
【0086】
次に、本実施の形態の燃料電池用セパレータ1を製造するための成形用金型について説明する。
【0087】
図17は、本発明の実施の形態3における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を、図8の領域Q4に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【0088】
本実施の形態の成形用金型10は、図8および図9に示す実施の形態1の成形用金型の構成と比較して、へこみ部を形成するためのへこみ部形成用凸部の形状が異なる。図17を参照して、本実施の形態の成形用金型10では、金型部材11の凹部11aの外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部11e3と、孔形成用凸部11bの根元の外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部(図示せず)と、孔形成用凸部12cの根元の外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部12f3との各々は断面形状が曲率半径Rを有するラウンド形状(丸みを帯びた形状)となっている。
【0089】
なお、本実施の形態の成形用金型10の上記以外の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、上記の成形用金型10を用いた本実施の形態の燃料電池用セパレータ1の製造方法も、実施の形態1の製造方法とほぼ同じであるため、その説明は省略する。
【0090】
本実施の形態の燃料電池用セパレータ1においても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0091】
(実施の形態4)
複数個の燃料電池用セパレータを積み重ねる場合、図18に示すようにバリ4が生じた面同士を対面させてセパレータ1を積み重ねる場合も生じる。この場合、バリ4によりセパレータ1同士を十分に接触させ、もしくは十分に接近して配置することができなくなる。そこで本実施の形態においては、図19に示すようにバリ4の生じる部分に、凹部6が形成されている。以下、本実施の形態の燃料電池用セパレータの構成について具体的に説明する。
【0092】
図19は、本発明の実施の形態4における2つの燃料電池用セパレータを示す図であって、図3の領域Q1に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。図20は図19に示す2つの燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図であり、図21は、図20の領域Q7を拡大して示す概略断面図である。
【0093】
図19を参照して、第1および第2の燃料電池用セパレータ1P、1Qが、互いに積み重ねられる。これらの第1および第2の燃料電池用セパレータ1P、1Qの各々は、実施の形態1と同様、マニホールド用の孔2a(図示せず)、2bを有している。
【0094】
第1の燃料電池用セパレータ1Pの第2の燃料電池用セパレータ1Qと対向する面1B1には、第1の燃料電池用セパレータ1Pの外周縁部において面1B1に交差する方向に突き出したバリ4がある。第2の燃料電池用セパレータ1Qの第1の燃料電池用セパレータ1Pと対向する面1A2には、第2の燃料電池用セパレータ1Qの外周縁部においてバリ4を収容可能なへこみ部5dが形成されている。
【0095】
またセパレータ1Qの面1B2には、孔2bの周縁部においてバリ4を収容可能なへこみ部5dが形成されている。また図示していないが、セパレータ1Qの面1A2には、孔2aの周縁部においてバリ4を収容可能なへこみ部5dが形成されている。
【0096】
これらのへこみ部5dは、凹部6と、その凹部6の底面から突き出した凹部内バリ4cとにより構成されている。この凹部6の深さDは、凹部内バリ4cの高さh1とバリ4の高さhとの和以上の大きさ(D≧h1+h)である。つまり、凹部内バリ4cの高さh1は凹部6の深さDよりも小さく、ゆえに凹部6の外部に突き出すことはない(面1A2または面1B2から突き出すことはない)。また凹部6の幅Tは、凹部内バリ4cの幅tと凹部内バリ4cの曲率半径r1と反対側の曲率半径r2との和以上の大きさ(T≧t+r1+r2)である。
【0097】
第1の燃料電池用セパレータ1Pの面1A1には、バリや、バリ収納用のへこみ部はない。
【0098】
なお、本実施の形態の第1および第2の燃料電池用セパレータ1P、1Qのこれ以外の構成については、上述した実施の形態1のセパレータ1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0099】
図19に示す第1および第2の燃料電池用セパレータ1P、1Qは互いに位置決めされた後に、図20および図21に示すように互いに積み重ねられる。図20および図21に示す積み重ねられた状態においては、上述のようにへこみ部5dの凹部6はバリ4が生じる位置に対応する位置に設けられており、かつバリ4を収納できる大きさであるため、バリ4はへこみ部5dの凹部6内に収容される。
【0100】
なお、図29に示すように燃料電池用セパレータ1Qの片面(たとえば一方の面1A2)にのみ流路3が形成されており、他方の面1B2に流路3が形成されていない場合もある。この場合には、マニホールド用の孔2a(図示せず)、2bの各々が流路3と接続される面(一方の面1A2)とは反対側の面(他方の面1B2)において、マニホールド用の孔2a(図示せず)、2bの各々の周縁部にへこみ部5dが形成されている。またマニホールド用の孔2a(図示せず)、2bの各々と流路3とが接続される部分にバリはない。
【0101】
この図29は、マニホールド用の孔が一方の面側で流路と接続された箇所の断面を示す図である。
【0102】
次に、本実施の形態の第2の燃料電池用セパレータ1Qを製造するための成形用金型について説明する。
【0103】
図22は、本発明の実施の形態4における第2の燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。図22を参照して、成形用金型10は、成形材料を成形するための成形用金型であって、金型部材11と、金型部材12とを有している。金型部材11は、金型部材12と対向する表面に凹部11aを有している。金型部材12は、金型部材11と対向する表面に、凹部11aに対応して設けられた凸部12aを有している。金型部材11および12を互いに重ね合わせたときに、金型部材11の凹部11aに金型部材12の凸部12aが嵌り込むように凹部11aおよび凸部12aは構成されている。
【0104】
金型部材11の凹部11aは、底面11a1を有し、その底面11a1に、ガスなどの流路を形成するための流路形成用凸部11dと、マニホールド用の孔を形成するための孔形成用凸部11bおよび孔形成用凹部11cとを有している。
【0105】
金型部材12の凸部12aは、凹部11aの底面11a1と対向する上面12a1を有し、その上面12a1に、ガスなどの流路を形成するための流路形成用凸部12dと、マニホールド用の孔を形成するための孔形成用凹部12bおよび孔形成用凸部12cとを有している。
【0106】
金型部材11の孔形成用凸部11bは金型部材12の孔形成用凹部12bに対応して設けられており、金型部材11の孔形成用凹部11cは金型部材12の孔形成用凸部12cに対応して設けられている。
【0107】
金型部材12の凸部12aの外周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部12g1が上面12a1に設けられている。また孔形成用凹部12bの周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部12g2が上面12a1に設けられている。また孔形成用凹部11cの周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部11gが底面11a1に設けられている。これらのへこみ部形成用凸部12g1、12g2、11gの各々は断面形状が角型の段部形状となっている。
【0108】
上記の成形用金型10を用いた本実施の形態の第2の燃料電池用セパレータ1Qの製造方法は、実施の形態1におけるセパレータ1の製造方法とほぼ同じであるため、その説明は省略する。
【0109】
本実施の形態のセパレータ1P、1Qにおいても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0110】
上記の実施の形態のうち、一方の面にバリを有し他方の面にへこみ部を有する燃料電池用セパレータ(実施の形態1〜3が該当)が、一方の面にバリを有するセパレータとこれと対向する一方の面にこのバリを収納するへこみ部を有するセパレータとの1対のセパレータ(実施の形態4が該当)と比較して、1つの金型でセパレータを生産可能である点においては好ましい。
【0111】
(燃料電池)
上記のようにして得られた実施の形態1〜4の燃料電池用セパレータ1(または1P、1Q)を用いて燃料電池を製造することができる。図23(A)、図23(B)および図23(C)の各々は、それぞれ異なる燃料電池の構成を概略的に示す分解断面図である。図23(A)を参照して、この燃料電池は、実施の形態1〜3の燃料電池用セパレータ1を少なくとも1対備えており、その1対の燃料電池用セパレータ1、1と電解質膜/電極接合体とが交互に積み重ねられることで形成されている。電解質膜/電極接合体は、例えば固体高分子電解質膜21を燃料極および酸化剤極となる一対の電極22、22により挟み込むことにより構成されている。1対の燃料電池用セパレータ1、1のうち一方の燃料電池用セパレータ1のバリ4は、1対の燃料電池用セパレータ1、1のうちの他方の燃料電池用セパレータ1のへこみ部5a(または5b、5c)に収納されている。
【0112】
また図23(B)を参照して、この燃料電池は、実施の形態1〜3の燃料電池用セパレータ1を備えており、その燃料電池用セパレータ1と電解質膜/電極接合体とが交互に積み重ねられて形成されている。燃料電池用セパレータ1のバリ4は、電解質膜/電極接合体を介して対向する燃料電池用セパレータ1のへこみ部5a(または5b、5c)に収納されている。
【0113】
また図23(C)を参照して、この燃料電池は、実施の形態4の1対の燃料電池用セパレータ1P、1Qと電解質膜/電極接合体とが交互に積み重ねられて形成されている。1対の燃料電池用セパレータのうちの燃料電池用セパレータ1Pは、一方の面の外周縁部から一方の面に交差する方向に突き出したバリ4を有している。また、1対の燃料電池用セパレータのうちの燃料電池用セパレータ1Qは、一方の面の外周縁部にバリ4を収容可能な形状のへこみ部5dが形成されている。1対の燃料電池用セパレータ1P、1Qは、バリ4の形成された面とへこみ部5dが形成された面とが対向するように互いに積み重ねられ、これにより燃料電池用セパレータ1Pのバリ4は燃料電池用セパレータ1Qのへこみ部5dに収納されている。
【0114】
なお上記の図23(A)〜図23(C)の各々においてはマニホールド用の孔の図示は説明の便宜上省略されている。また図26および図27の燃料電池用セパレータ1が図23(A)に示す燃料電池用セパレータ1として積み重ねられてもよく、また図23(B)に示す燃料電池用セパレータ1として積み重ねられてもよい。また図28の燃料電池用セパレータ1が図23(A)に示す燃料電池用セパレータ1として積み重ねられてもよく、また図23(B)に示す燃料電池用セパレータ1として積み重ねられてもよい。また図29の燃料電池用セパレータ1Qが図23(C)に示す燃料電池用セパレータ1Qとして他の燃料電池用セパレータ1Pと積み重ねられてもよい。
【0115】
燃料電池は、発電性能を高める目的で燃料電池セルが複数個直列に配置された燃料電池スタックとされている。このように燃料電池スタックとされている場合には、燃料電池セル間には冷却水を流す場合があり、この場合には、図23(A)、図23(C)に示すように冷却水を通す冷却水路3がセパレータ1(または1P、1Q)に設けられている。また携帯電話等に使用する小型燃料電池においては、冷却水を通す冷却水路がない形態のスタック構造の燃料電池も存在し、この燃料電池は図23(B)に示すようにセパレータと電解質膜/電極接合体とが交互に積層された構造となる。
【0116】
図23(A)、図23(C)に示す構成において、冷却水の経路を挟む1対のセパレータ同士は互いに同電位となるため、バリをへこみ部に収納することで十分に接触させることが可能となる。また図23(B)に示すように電解質膜/電極接合体を挟む1対のセパレータ1同士は互いに逆電位(陽極側と陰極側)となるため、両者を接触させることはできないが、バリをへこみ部に収納することで十分に接近して配置させることが可能となる。
【0117】
このような燃料電池においては、水素ガスまたはメタノールなどが燃料極22でイオン化された後に固体高分子電解質膜21を通過して、酸化剤極22で空気中の酸素等と反応することで発電が生じる。
【0118】
本実施の形態で得られる燃料電池用セパレータは、上記の固体高分子型の燃料電池のほかに、ヒドラジン型、直接メタノール型、アルカリ型、リン酸型等の種々の燃料電池に対して好適に適用され得る。
【0119】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、電気自動車用電源、ポータブル電源、非常用電源等に対して適用されるリン酸型燃料電池、ダイレクトメタノ−ル型燃料電池、固体高分子型燃料電池等の燃料電池に対して使用可能な燃料電池用セパレータおよびそれを用いた燃料電池に特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す背面図である。
【図3】図1および図2のIII−III線に沿う概略断面図である。
【図4】図3の領域Q1を拡大して示す概略断面図である。
【図5】図4の領域Q2のバリを拡大して示す概略断面図である。
【図6】図4に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図である。
【図7】図6の領域Q3を拡大して示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図9】図8の領域Q4を拡大して示す概略断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2における燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す一部破断断面図である。
【図11】図10に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図である。
【図12】図11の領域Q5を拡大して示す概略断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を、図8の領域Q4に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態3における燃料電池用セパレータの構成であって、図3の領域Q1に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【図15】図14に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図である。
【図16】図15の領域Q6を拡大して示す概略断面図である。
【図17】本発明の実施の形態3における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を、図8の領域Q4に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【図18】バリが生じた面同士を対面させてセパレータ同士を積み重ねる様子を示す概略断面図である。
【図19】本発明の実施の形態4における2つの燃料電池用セパレータを示す図であって、図3の領域Q1に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【図20】図19に示す2つの燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図である。
【図21】図20の領域Q7を拡大して示す概略断面図である。
【図22】本発明の実施の形態4における第2の燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図23】燃料電池の3つの構成を概略的に示す分解断面図であり、1対の燃料電池用セパレータとMEAとを交互に積層した構成(A)と、1つの燃料電池用セパレータとMEAとを交互に積層した構成(B)と、1対の燃料電池用セパレータとMEAとを交互に積層した構成(C)とを示す図である。
【図24】従来のシェアエッジ構造の圧縮成形用金型の構成を示す断面図(A)と、従来のシェアエッジ構造の圧縮成形用金型により成形された成形品の構成を示す断面図(B)である。
【図25】従来の合わせ型の圧縮成形用金型の構成を示す断面図(A)と、従来の合わせ型の圧縮成形用金型により成形された成形品の構成を示す断面図(B)である。
【図26】流路に接続されないマニホールドを有する燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す平面図である。
【図27】流路に接続されないマニホールドを有する燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す背面図である。
【図28】外周縁部の一方表面から他方表面の全体にかけてテーパ状になった燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す断面図である。
【図29】流路に接続されたマニホールドにおいて流路に接続されない側にへこみ部を有する燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0122】
1,1P,1Q 燃料電池用セパレータ、2a,2b,2a1,2a2,2b1,2b2 マニホールド用の孔、3 流路、4,4a,4b バリ、5a,5b,5c,5d へこみ部、6 凹部、10 成形用金型、11,12 金型部材、21 固体高分子電解質膜、22 電極(燃料極、酸化剤極)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応から電力を得る燃料電池においては、近年ポ−タブル機器、自動車等の種々の用途への適用が検討されている。燃料電池は、電解質膜、電極およびセパレータからなる基本構成単位、すなわち単位セルが通常直列に数十〜数百セル積層された構造を有する。一般的な燃料電池の製造方法では電解質膜および電極は予め電解質膜/電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)として形成され、これにセパレータが配置される。セパレータとしては、水素等の燃料と、空気または酸素からなる酸化剤と、セルを冷却するための冷媒とをそれぞれ供給するための流路を少なくとも片面に形成したものが用いられる。
【0003】
セパレータでは、隣接するMEAとの電気的な接続を確保して燃料電池の発電効率を高めるために十分な導電性を備えることが必要であるが、これに加えて、単位セルの積層構造を支えるために十分な機械的強度が必要とされる。また、燃料電池の小型化の要求に伴い近年ではセパレータの薄肉化も求められている。さらに、単位セルの積層構造における単位セル間の接触抵抗を低減するために厚み精度の向上も求められている。
【0004】
従来の燃料電池用セパレータは、樹脂と炭素材料とを含む成形材料を圧縮成形用金型内に投入し加圧することによって成形される。このような燃料電池用セパレータを形成するための成形用金型の構造は従来から各種提案されている(例えば特許文献1〜5参照)。
【0005】
この圧縮成形用金型には、(1)金型内および成形材料中の空気を効率よく金型外に排出できること、(2)金型内に余分に充填した成形材料を金型外に排出できることが求められる。
【0006】
一般的に、従来の圧縮成形用金型は、図24Aに示すように、凹部(キャビティ)101aを有する凹型101と、凸部(コア)102aを有する凸型102とから構成されている。そして、上記(1)、(2)を満たすために、凹部101aの側壁と凸部102aの側壁とを対向させたシェアエッジ(図中領域P)が設けられている。
【0007】
このような金型を用いて成形材料120aを成形すると、余剰分の成形材料は凹部101aからフローアウトして、シェアエッジの隙間(クリアランス)へ排出され、かつ金型内および成形材料中の空気も効率よく金型外へ排出され得る。
【0008】
また金型として、図25Aに示すように、凹部101aを有する金型101と、凹部102aを有する金型102とから構成される合わせ型の圧縮成形用金型もある。この合わせ型の金型では、構造が簡単で、金型全体の厚みを薄くすることもできる。
【特許文献1】特開2001−198921号公報
【特許文献2】特開2003−170459号公報
【特許文献3】特開2004−230788号公報
【特許文献4】特開2004−71334号公報
【特許文献5】特許第3751911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図24Aに示す従来のシェアエッジ構造の圧縮成形用金型では、図24Bに示すように成形品120の一方の面120Aに交差する方向に樹脂バリが生じる。また図25Aに示す従来の合わせ型の圧縮成形用金型では、図25Bに示すように成形品120の一方の面120Aに略平行な方向に樹脂バリが生じる。
【0010】
燃料電池において複数枚のセパレータ(成形品)を積み重ねるときには、成形品同士を十分に接触もしくは接近して配置させる必要がある。しかし、図24Bに示すように成形品120の一方の面120Aに交差する方向に樹脂バリが生じていると、成形品120同士を十分に接触もしくは接近して配置させることができないという問題がある。
【0011】
また複数枚のセパレータ(成形品)を積み重ねるときの位置決めの精度は成形品の外周形状により決定される。しかし、図25Bに示すように成形品120の一方の面120Aに略平行な方向に樹脂バリが生じていると、位置決め精度が悪化して精度よく成形品120を積み重ねることができないという問題がある。
【0012】
また成形品の外周部だけでなく、成形品面内の貫通孔等にも上記のような樹脂バリが生じる。よって、貫通孔部分に形成された樹脂バリによって、上記と同様に、成形品同士を十分に接触もしくは接近して配置させることができないという問題もある。
【0013】
また、これらの樹脂バリを取り除くためには、複雑なバリ取り加工工程が必要となる。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、成形品同士を十分に接触もしくは接近して配置させることができ、かつ良好な精度で成形品を位置決めして積み重ねることができ、かつ複雑なバリ取り加工が不要な燃料電池用セパレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の燃料電池用セパレータは、燃料電池用セパレータの一方の面の外周縁部からその一方の面に交差する方向に突き出したバリがあり、他方の面の外周縁部にバリを収容可能な形状のへこみ部が形成されている。
【0015】
本発明の一の燃料電池用セパレータによれば、へこみ部がバリを収容可能な形状で形成されている。このため、同一形状の燃料電池用セパレータを積み重ねた場合、一方の燃料電池用セパレータの一方の面に生じたバリは他方の燃料電池用セパレータの他方の面に形成されたへこみ部に収容される。これにより燃料電池用セパレータ同士を十分に接触もしくは接近して配置させることが可能となる。
【0016】
またバリは燃料電池用セパレータの一方の面に交差する方向に突き出しており、燃料電池用セパレータの側面から外周側へ突き出していないため、良好な精度で燃料電池用セパレータを位置決めして積み重ねることができる。
【0017】
またバリを取り除く必要がなくなるため、複雑なバリ取り加工が不要となる。
本発明の他の燃料電池用セパレータは、流路と、その流路に接続されていないマニホールドとを有している。燃料電池用セパレータの一方の面においては流路に接続されていないマニホールドの周縁部からその一方の面に交差する方向に突き出したバリがある。燃料電池用セパレータの他方の面においては流路に接続されていないマニホールドの周縁部にバリを収容可能な形状のへこみ部が形成されている。
【0018】
本発明の他の燃料電池用セパレータによれば、同一形状の燃料電池用セパレータを積み重ねた場合、一方の燃料電池用セパレータのマニホールドの周縁部に生じたバリを他方の燃料電池用セパレータのへこみ部に収容することができる。これにより燃料電池用セパレータ同士を十分に接触もしくは接近して配置させることが可能となる。
【0019】
上記一および他の燃料電池用セパレータにおいて好ましくは、へこみ部が段差を形成している。
【0020】
本発明の一の燃料電池は、上記一および他の燃料電池用セパレータのいずれか一方を1対と、その1対の燃料電池用セパレータと交互に積み重ねられた膜/電極接合体とを備えた燃料電池であって、1対の燃料電池用セパレータのうち一方の燃料電池用セパレータのバリが、1対の燃料電池用セパレータのうちの他方の燃料電池用セパレータのへこみ部に収納されていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の一の燃料電池によれば、一方の燃料電池用セパレータのバリが他方の燃料電池用セパレータのへこみ部に収容されるため、燃料電池用セパレータ同士を十分に接触させることが可能となる。
【0022】
本発明の他の燃料電池は、上記一および他の燃料電池用セパレータのいずれか一方と、その燃料電池用セパレータと交互に積み重ねられた膜/電極接合体とを備えた燃料電池であって、燃料電池用セパレータのバリが、膜/電極接合体を介して対向する燃料電池用セパレータのへこみ部に収納されていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の他の燃料電池によれば、一方の燃料電池用セパレータのバリが、膜/電極接合体を介して対向する他方の燃料電池用セパレータのへこみ部に収容されるため、燃料電池用セパレータ同士を十分に接近して配置することが可能となる。
【0024】
本発明のさらに他の燃料電池用セパレータは、流路とその流路に接続されたマニホールドとを有している。そのマニホールドは燃料電池用セパレータの一方の面で流路と接続され、他方の面で流路と接続されていない。一方の面において流路とマニホールドとが接続される部分にバリはない。他方の面においてマニホールドの周縁部にはへこみ部が形成されている。へこみ部は、凹部と、その凹部の底面から突き出しかつ他方の面から突き出ない凹部内バリとを有している。
【0025】
本発明のさらに他の燃料電池用セパレータによれば、凹部の底面から凹部内バリが生じるようにすることで、凹部内バリの先端を凹部内に留め、凹部内バリが第2の燃料電池用セパレータの第2の面から第1の燃料電池用セパレータ側へ突き出すことが防止できる。また凹部内に第1の燃料電池用セパレータのバリを収納することもできる。
【0026】
また一方の面において流路とマニホールドとが接続される部分にバリがないため、このバリが流路とマニホールドとの間のガスの流れを妨げることはない。
【0027】
またへこみ部がバリを収容可能な形状で形成されている。このため、マニホールドの周縁部にバリがある燃料電池用セパレータを本発明の燃料電池用セパレータと積み重ねた場合、一方の燃料電池用セパレータのマニホールド周縁部のバリは他方の燃料電池用セパレータのマニホールド周縁部のへこみ部に収容される。これにより燃料電池用セパレータ同士を十分に接触もしくは接近して配置させることが可能となる。
【0028】
またバリを取り除く必要がなくなるため、複雑なバリ取り加工が不要となる。
本発明のさらに他の燃料電池は、一の面の外周縁部からその一の面に交差する方向に突き出したバリを有する燃料電池用セパレータと、他の面の外周縁部にバリを収容可能な形状のへこみ部が形成された燃料電池用セパレータとが対向する1対の燃料電池用セパレータと、その1対の燃料電池用セパレータと交互に積み重ねられた膜/電極接合体とを備えた燃料電池であって、バリを有する燃料電池用セパレータのバリが、へこみ部が形成された燃料電池用セパレータのへこみ部に収納されていることを特徴とするものである。
【0029】
本発明のさらに他の燃料電池によれば、一の燃料電池用セパレータのバリが他の燃料電池用セパレータのへこみ部に収容されるため、燃料電池用セパレータ同士を十分に接触させることが可能となる。
【0030】
本発明のさらに他の燃料電池は、互いに対向する一方の面と他方の面とを有し、一方の面側から他方の面側へ向かって燃料電池用セパレータの幅が小さくなるように外周縁部がテーパ状の部分を有している。
【0031】
本発明のさらに他の燃料電池用セパレータによれば、外周縁部がテーパ状の部分を有しているため、このテーパ状の部分にバリを収納可能である。このため、このテーパ状の部分を有する燃料電池用セパレータをバリを有する燃料電池用セパレータと積み重ねた場合、テーパ状の部分にバリを収納可能であるため、燃料電池用セパレータ同士を十分に接触もしくは接近して配置させることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明によれば、バリを収納できるへこみ部を燃料電池用セパレータに設けたことにより、成形品同士を十分に接触もしくは接近して配置させることができ、かつ良好な精度で成形品を位置決めして積み重ねることができ、かつ複雑なバリ取り加工が不要な燃料電池用セパレータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1および図2は本発明の実施の形態1における燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す平面図および背面図であり、図3は図1および図2のIII−III線に沿う概略断面図である。図4は図3の領域Q1を拡大して示す概略断面図である。図5は図4の領域Q2のバリを拡大して示す概略断面図である。
【0034】
図1〜図3を参照して、燃料電池用セパレータ1は、矩形の平面形状を有し、かつ互いに対向する一方の面1Aと他方の面1Bとを有している。燃料電池用セパレータ1は、一方の面1Aと他方の面1Bとの間を貫通するマニホールド用の孔2a、2bを有している。また一方の面1Aと他方の面1Bとの各々には、ガスなどの流路3が孔2a、2bに連通するように形成されている。
【0035】
一方の面1Aには、燃料電池用セパレータ1の外周縁部および孔2aの周縁部の各々において一方の面1Aに交差する方向に突き出したバリ4、4aがある。また他方の面1Bには、燃料電池用セパレータ1の外周縁部および孔2aの周縁部の各々においてバリ4、4aの各々を収容可能な形状のへこみ部5aが形成されている。
【0036】
また他方の面1Bには、孔2bの周縁部において他方の面1Bに交差する方向に突き出したバリ4bがあり、また一方の面1Aには、孔2bの周縁部においてバリ4bを収容可能な形状のへこみ部5aが形成されている。
【0037】
バリ4、4a、4bの各々は、燃料電池用セパレータ1の外周縁部および孔2a、2bの周縁部の各々の全周にあってもよく、また一部において途切れていてもよい。またへこみ部5aは、燃料電池用セパレータ1の外周縁部および孔2a、2bの周縁部の各々の全周に形成されていることが好ましいが、一部において途切れていてもよい。
【0038】
なおマニホールド用の孔2aは他方の面1B側において流路3と接続されており、マニホールド用の孔2bは一方の面1A側において流路3と接続されている。孔2a、2bの各周縁部に生じるバリ4a、4bの各々は、孔2a、2bが流路3と接続される側と反対側の面に生じている。これにより、バリ4a、4bが孔2a、2bと流路3との間に位置することはなくなるため、流路−孔間における流体の流れがバリ4a、4bにより阻害されることはない。
【0039】
また図1および図2には示していないが、燃料電池用セパレータ1には、流路3に接続されないマニホールド用の孔があってもよい。図26および図27は、流路に接続されないマニホールドを有する燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す平面図および背面図である。図26および図27を参照して、燃料電池用セパレータ1は、流路3に接続されたマニホールド用の孔2a1、2b1以外に、流路3に接続されていないマニホールド用の孔2a2、2b2を有している。
【0040】
流路3に接続されていないマニホールド用の孔2a2の一方の面1A側の周縁部には、その一方の面1Aに交差する方向に突き出したバリ4aがある。また流路3に接続されていないマニホールド用の孔2a2の他方の面1B側の周縁部には、バリ4aを収容可能な形状のへこみ部5aが形成されている。
【0041】
また流路3に接続されていないマニホールド用の孔2b2の他方の面1B側の周縁部には、他方の面1Bに交差する方向に突き出したバリ4bがある。また流路3に接続されていないマニホールド用の孔2b2の一方の面1A側の周縁部には、バリ4bを収容可能な形状のへこみ部5aが形成されている。
【0042】
また流路3に接続されたマニホールド用の孔2a1、2b1と、それらの各々の周縁部に形成されたバリ4a、4bと、へこみ部5aとの各構成は、図1および図2に示すマニホールド用の孔2a、2bと、バリ4a、4bと、へこみ部5aとのそれぞれとほぼ同じ構成を有している。また図26および図27のIII−III線に沿う断面の構成は、図3に示す構成とほぼ同じである。
【0043】
また上記以外の図26および図27に示すセパレータ1の構成は、図1〜図3に示した構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図4を参照して、へこみ部5aは断面において段差を形成するようにセパレータ1の角部を切り取ることにより構成されている。つまり、図1および図2を参照して、燃料電池用セパレータ1の外周縁部に形成されたへこみ部5aは、燃料電池用セパレータ1の側面と他方の面1Bとのなす角部を切り取った形状を有している。また孔2aの周縁部に形成されたへこみ部5aは孔2aの壁面と他方の面1Bとのなす角部を切り取った形状を有している。また孔2bの周縁部に形成されたへこみ部5aは孔2bの壁面と一方の面1Aとのなす角部を切り取った形状を有している。
【0045】
図5を参照して、バリ4の一方の側面と燃料電池用セパレータ1の一方の面1Aとの境は、曲率半径rの丸みを帯びたラウンド形状となっている。バリ4の他方の側面はセパレータの側面に連続的に繋がる面よりなっている。このバリ4の曲率半径rは0.05mm以上0.15mm以下であり、バリ4の厚みtは0.02mm以上0.1mm以下であり、バリ4の高さhは0.05mm以上0.15mm以下である。
【0046】
バリ4の曲率半径rが0.05mm未満の場合には成形用金型の加工が困難となり、0.15mmを超える場合にはバリ4が大きくなりすぎる。またバリ4の厚みtが0.02mm未満の場合には成形材料中の空気の排出が難しくなり、成形品中にボイドなどが生じる場合がある。またバリ4の厚みtが0.1mmを超える場合には成形材料の漏れ出し量が多くなり、成形品の厚みの安定性が悪くなる。またバリ4の高さhは上述したバリ4の曲率半径rの大きさによって決まる。なおバリ4a、4bの形状も、上記のバリ4の形状と同様の形状を有している。
【0047】
また図4に示すへこみ部5aの大きさは、基本的にはバリ4、4a、4bを収納することができる大きさであればよい。本実施の形態のように、へこみ部5aが段差を形成するような形状である場合には、へこみ部5aの段差の大きさHがバリ4、4a、4bの高さh以上の大きさ(H≧h)で、かつへこみ部5aのセパレータ1の他方の面1Bに沿う方向の幅Tがバリ4、4a、4bの厚みtとバリ4、4a、4bの曲率半径rとの和以上の大きさ(T≧t+r)であればよい。なお寸法H、Tの上限は、成形品の形状と寸法安定性に影響しないような大きさに設定されることが好ましい。
【0048】
図6は図4に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図であり、図7は図6の領域Q3を拡大して示す概略断面図である。
【0049】
上記の燃料電池用セパレータ1を積み重ねる場合、図4に示すセパレータ1が複数個(たとえば2個)準備される。これらのセパレータ1が位置決めされた後に、図6に示すように互いに積み重ねられる。積み重ねられた状態においては、上述のようにへこみ部5aはバリ4、4a、4bが生じる位置に対応する位置に設けられており、かつバリ4、4a、4bの各々を収納できる大きさであるため、図6および図7に示すようにバリ4、4a、4bの各々はへこみ部5a内に収容される。
【0050】
次に、本実施の形態の燃料電池用セパレータ1を製造するための成形用金型について説明する。
【0051】
図8は、本発明の実施の形態1における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。また図9は、図8の領域Q4を拡大して示す概略断面図である。
【0052】
図8および図9を参照して、成形用金型10は、成形材料を成形するための成形用金型であって、金型部材11と、金型部材12とを有している。金型部材11は、金型部材12と対向する表面に凹部11aを有している。金型部材12は、金型部材11と対向する表面に、凹部11aに対応して設けられた凸部12aを有している。金型部材11および12を互いに重ね合わせたときに、金型部材11の凹部11aに金型部材12の凸部12aが嵌り込むように凹部11aおよび凸部12aは構成されている。
【0053】
金型部材11の凹部11aの底面11a1には、ガスなどの流路を形成するための流路形成用凸部11dと、マニホールド用の孔を形成するための孔形成用凸部11bおよび孔形成用凹部11cとを有している。
【0054】
金型部材12の凸部12aは、凹部11aの底面11a1と対向する上面12a1を有している。その上面12a1に、ガスなどの流路を形成するための流路形成用凸部12dと、マニホールド用の孔を形成するための孔形成用凹部12bおよび孔形成用凸部12cとを有している。
【0055】
金型部材11の孔形成用凸部11bは金型部材12の孔形成用凹部12bに対応して設けられており、金型部材11の孔形成用凹部11cは金型部材12の孔形成用凸部12cに対応して設けられている。
【0056】
金型部材11の凹部11aの外周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部11e1が設けられている。また孔形成用凸部11bの根元の外周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部11f1が設けられており、孔形成用凸部12cの根元の外周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部12f1が設けられている。これらのへこみ部形成用凸部11e1、11f1、12f1の各々は断面形状がたとえば角型の段部形状となっている。
【0057】
次に、上記の成形用金型10を用いた本実施の形態の燃料電池用セパレータ1の製造方法について説明する。
【0058】
まず成形材料が、例えば導電性炭素材料と樹脂バインダーとを少なくとも含むように準備される。樹脂バインダーは、例えば熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との少なくともいずれかを含んでいる。この成形材料は、粉末状、粒子状、ペレット状等であってもよく、またシート形状であってもよい。
【0059】
上記の炭素材料としては、例えば人造黒鉛、天然黒鉛、ガラス状カーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。これらの炭素材料は単独で、もしくは2種以上を組合せて用いることができる。これらの炭素材料の粉粒体の形状に特に制限はなく、箔状、鱗片状、板状、針状、球状、無定形等の何れであってもよい。また、黒鉛を化学処理して得られる膨張黒鉛も使用することができる。導電性を考慮すれば、より少量で高度の導電性を有するセパレータが得られるという点で、人造黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛が好ましい。
【0060】
熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができる。熱硬化性樹脂は1種類の樹脂からなるもののみではなく、2種類以上の樹脂を混合したものも使用することができる。
【0061】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素樹脂、全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエステル・ポリエステルエラストマー、ポリエステル・ポリエーテルエラストマー等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂と同様に、熱可塑性樹脂も1種類の樹脂からなるもののみではなく、2種類以上の樹脂を混合したものも使用することができる。さらに熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを複合したものも使用することができる。
【0062】
この成形材料が、図8に示す成形用金型10に投入され、金型部材11と金型部材12との間で加圧される。この際、金型部材11、12は熱盤(図示せず)により加熱されており、この金型部材11、12を介して成形材料が加熱される。この加熱加圧により、樹脂バインダーに熱硬化性樹脂が用いられている場合には、その熱硬化性樹脂が固化する。この後、金型10から図1〜図3に示す燃料電池用セパレータ(成形品)1が取り出される。また樹脂バインダーに熱可塑性樹脂が用いられている場合には、上記の加熱加圧により、その熱可塑性樹脂は溶融する。
【0063】
樹脂バインダーに熱可塑性樹脂が用いられている場合には、引き続いて、金型部材11、12が冷却盤(図示せず)により冷却される。この冷却の際にも、成形材料は金型部材11と金型部材12との間で加圧されている。この冷却加圧により溶融状態にあった熱可塑性樹脂が固化する。この後、金型10から図1〜図3に示す燃料電池用セパレータ(成形品)1が取り出される。
【0064】
上記のように樹脂バインダーが熱硬化性樹脂よりなる場合は、成形材料が成形用金型10で加熱加圧されて燃料電池用セパレータ(成形品)1が得られるが、樹脂バインダーが熱可塑性樹脂よりなる場合または熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂よりなる場合は、成形材料が成形用金型10で加熱加圧および冷却加圧されて燃料電池用セパレータ(成形品)1が得られる。
【0065】
上記の成形工程において、図8に示す成形用金型10においては、凹部11aの側面と凸部12aの側面との間(領域P1)、孔形成用凹部12bと孔形成用凸部11bとの間(領域P2)、および孔形成用凹部11cと孔形成用凸部12cとの間(領域P3)にバリが生じることになる。
【0066】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態の燃料電池用セパレータによれば、へこみ部5aは、バリ4、4a、4bの各々を収容可能な形状で形成されている。このため、同一形状の燃料電池用セパレータ1同士を積み重ねた場合、一方のセパレータ1に生じたバリ4、4a、4bは他方のセパレータ1に形成されたへこみ部5aに収容される。これによりセパレータ1同士を十分に接触もしくは接近して配置することが可能となる。
【0067】
またバリ4、4a、4bはセパレータ1の一方の面1Aまたは他方の面1Bに交差する方向に突き出しており、セパレータ1の側面から外周側へ突き出していないため、良好な精度でセパレータ1を位置決めして積み重ねることができる。
【0068】
またバリ4、4a、4bを取り除く必要がなくなるため、複雑なバリ取り加工が不要となる。
【0069】
(実施の形態2)
図10は本発明の実施の形態2における燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す一部破断断面図である。図11は図10に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図である。図12は図11の領域Q5を拡大して示す概略断面図である。
【0070】
本実施の形態の燃料電池用セパレータ1は、へこみ部の形状において実施の形態1の構成と異なる。図10〜図12を参照して、本実施の形態におけるセパレータ1の外周縁部に形成されたへこみ部5bは、セパレータ1の一方の面1A側から他方の面1B側へ向かって燃料電池用セパレータ1の幅が小さくなるようなテーパ状の切欠である。これにより図10に示すようにセパレータ1の一方の面1A側の幅W1よりも他方の面1B側の幅W2は小さくなっている。
【0071】
また孔2bの周縁部に形成されたへこみ部5bは、セパレータ1の他方の面1B側から一方の面1A側へ向かって孔2bの開口径が大きくなるようなテーパ状の切欠である。また図示していないが、孔2aの周縁部に形成されたへこみ部5bは、セパレータ1の一方の面1A側から他方の面1B側へ向かって孔2aの開口径が大きくなるようなテーパ状の切欠である。
【0072】
これらのテーパ状の切欠の各々は図10〜図12に示す断面において直線的に伸びた部分を有している。また、これらのへこみ部5bの各々の大きさは、基本的にはバリ4、4a、4bを収納することができる大きさであればよい。本実施の形態のように、セパレータ1の外周縁部に形成されたへこみ部5bがテーパ状の切欠であって、図12に示すテーパ角(他方の面1Bとテーパ面とのなす角度)αがたとえば45°である場合には、へこみ部5bの幅Tおよび高さHの各々は、図5に示すバリ4の厚みtとバリ4の曲率半径rとの和以上の大きさ(T≧t+r、H≧t+r)であればよい。このテーパ状の切欠よりなるへこみ部5bの幅Tはたとえば0.07mm以上0.25mm以下で、高さHはたとえば0.07mm以上である。孔2a、2bの各々の周縁部に形成されたへこみ部5bは、上記のセパレータ1の外周縁部に形成されたへこみ部5bと同様の形状を有している。なお寸法H、Tの上限は、成形品の形状と寸法安定性に影響しないような大きさに設定されることが好ましい。
【0073】
また上記のテーパ状の切欠は、図28に示すように一方の面1Aから他方の面1Bの全体にわたってテーパ状となっていてもよい。この場合、セパレータ1の外周縁部においてはセパレータ1の側面の全体がテーパ状の切欠になっており、またマニホールド用の孔2a、2bの各々においては孔2a、2bの壁面の全体がテーパ状の切欠になっている。
【0074】
なお、本実施の形態の燃料電池用セパレータの上記へこみ部5b以外の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
上記の燃料電池用セパレータ1を積み重ねる場合、図10に示すセパレータ1が複数個(たとえば2個)準備される。これらのセパレータ1が位置決めされた後に、図11および図12に示すように互いに積み重ねられる。積み重ねられた状態においては、上述のようにへこみ部5bはバリ4、4a、4bが生じる位置に対応する位置に設けられており、かつバリ4、4a、4bを収納できる大きさであるため、図11および図12に示すようにバリ4、4a、4bの各々はへこみ部5b内に収容される。
【0076】
次に、本実施の形態の燃料電池用セパレータ1を製造するための成形用金型について説明する。
【0077】
図13は、本発明の実施の形態2における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を、図8の領域Q4に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【0078】
本実施の形態の成形用金型10は、図8および図9に示す実施の形態1の成形用金型の構成と比較して、へこみ部を形成するためのへこみ部形成用凸部の形状が異なる。図13を参照して、本実施の形態の成形用金型10では、金型部材11の凹部11aの外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部11e2と、孔形成用凸部11bの根元の外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部(図示せず)と、孔形成用凸部12cの根元の外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部12f2との各々は断面形状がテーパ形状となっている。
【0079】
なお、本実施の形態の成形用金型10の上記以外の構成は、実施の形態1の成形用金型10の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、上記の成形用金型10を用いた本実施の形態の燃料電池用セパレータ1の製造方法も、実施の形態1の製造方法とほぼ同じであるため、その説明は省略する。
【0080】
本実施の形態の燃料電池用セパレータ1においても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
(実施の形態3)
図14は本発明の実施の形態3における燃料電池用セパレータの構成であって、図3の領域Q1に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。図15は図14に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図であり、図16は図15の領域Q6を拡大して示す概略断面図である。
【0082】
本実施の形態の燃料電池用セパレータ1は、へこみ部の形状において実施の形態1の構成と異なっている。図14〜図16を参照して、本実施の形態におけるへこみ部5cは、燃料電池用セパレータ1の外周縁部および孔2a、2bの周縁部の角部に曲率半径Rを有するように形成された切欠である。図1に示すように、このへこみ部5cの曲率半径Rは、バリ4の曲率半径rよりも大きい。
【0083】
このへこみ部5cの大きさは、基本的にはバリ4を収納することができる大きさであればよい。本実施の形態のように、へこみ部5cが曲率半径Rを有している場合には、図16に示すようにへこみ部5cの曲率半径Rは、バリ4の曲率半径rの3倍とバリ4の厚みtとの和以上の大きさ(R≧3×r+t)であればよい。なお曲率半径Rの上限は、成形品の形状と寸法安定性に影響しないような大きさに設定されることが好ましい。
【0084】
なお、本実施の形態の燃料電池用セパレータ1の上記以外の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
上記の燃料電池用セパレータ1を積み重ねる場合、図14に示すセパレータ1が複数個(たとえば2個)準備される。これらのセパレータ1が位置決めされた後に、図15および図16に示すように互いに積み重ねられる。積み重ねられた状態においては、上述のようにへこみ部5cはバリ4、4a、4bが生じる位置に対応する位置に設けられており、かつバリ4、4a、4bを収納できる大きさであるため、図15および図16に示すようにバリ4、4a、4bはへこみ部5c内に収容される。
【0086】
次に、本実施の形態の燃料電池用セパレータ1を製造するための成形用金型について説明する。
【0087】
図17は、本発明の実施の形態3における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を、図8の領域Q4に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【0088】
本実施の形態の成形用金型10は、図8および図9に示す実施の形態1の成形用金型の構成と比較して、へこみ部を形成するためのへこみ部形成用凸部の形状が異なる。図17を参照して、本実施の形態の成形用金型10では、金型部材11の凹部11aの外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部11e3と、孔形成用凸部11bの根元の外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部(図示せず)と、孔形成用凸部12cの根元の外周縁部を取り囲むへこみ部形成用凸部12f3との各々は断面形状が曲率半径Rを有するラウンド形状(丸みを帯びた形状)となっている。
【0089】
なお、本実施の形態の成形用金型10の上記以外の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、上記の成形用金型10を用いた本実施の形態の燃料電池用セパレータ1の製造方法も、実施の形態1の製造方法とほぼ同じであるため、その説明は省略する。
【0090】
本実施の形態の燃料電池用セパレータ1においても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0091】
(実施の形態4)
複数個の燃料電池用セパレータを積み重ねる場合、図18に示すようにバリ4が生じた面同士を対面させてセパレータ1を積み重ねる場合も生じる。この場合、バリ4によりセパレータ1同士を十分に接触させ、もしくは十分に接近して配置することができなくなる。そこで本実施の形態においては、図19に示すようにバリ4の生じる部分に、凹部6が形成されている。以下、本実施の形態の燃料電池用セパレータの構成について具体的に説明する。
【0092】
図19は、本発明の実施の形態4における2つの燃料電池用セパレータを示す図であって、図3の領域Q1に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。図20は図19に示す2つの燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図であり、図21は、図20の領域Q7を拡大して示す概略断面図である。
【0093】
図19を参照して、第1および第2の燃料電池用セパレータ1P、1Qが、互いに積み重ねられる。これらの第1および第2の燃料電池用セパレータ1P、1Qの各々は、実施の形態1と同様、マニホールド用の孔2a(図示せず)、2bを有している。
【0094】
第1の燃料電池用セパレータ1Pの第2の燃料電池用セパレータ1Qと対向する面1B1には、第1の燃料電池用セパレータ1Pの外周縁部において面1B1に交差する方向に突き出したバリ4がある。第2の燃料電池用セパレータ1Qの第1の燃料電池用セパレータ1Pと対向する面1A2には、第2の燃料電池用セパレータ1Qの外周縁部においてバリ4を収容可能なへこみ部5dが形成されている。
【0095】
またセパレータ1Qの面1B2には、孔2bの周縁部においてバリ4を収容可能なへこみ部5dが形成されている。また図示していないが、セパレータ1Qの面1A2には、孔2aの周縁部においてバリ4を収容可能なへこみ部5dが形成されている。
【0096】
これらのへこみ部5dは、凹部6と、その凹部6の底面から突き出した凹部内バリ4cとにより構成されている。この凹部6の深さDは、凹部内バリ4cの高さh1とバリ4の高さhとの和以上の大きさ(D≧h1+h)である。つまり、凹部内バリ4cの高さh1は凹部6の深さDよりも小さく、ゆえに凹部6の外部に突き出すことはない(面1A2または面1B2から突き出すことはない)。また凹部6の幅Tは、凹部内バリ4cの幅tと凹部内バリ4cの曲率半径r1と反対側の曲率半径r2との和以上の大きさ(T≧t+r1+r2)である。
【0097】
第1の燃料電池用セパレータ1Pの面1A1には、バリや、バリ収納用のへこみ部はない。
【0098】
なお、本実施の形態の第1および第2の燃料電池用セパレータ1P、1Qのこれ以外の構成については、上述した実施の形態1のセパレータ1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0099】
図19に示す第1および第2の燃料電池用セパレータ1P、1Qは互いに位置決めされた後に、図20および図21に示すように互いに積み重ねられる。図20および図21に示す積み重ねられた状態においては、上述のようにへこみ部5dの凹部6はバリ4が生じる位置に対応する位置に設けられており、かつバリ4を収納できる大きさであるため、バリ4はへこみ部5dの凹部6内に収容される。
【0100】
なお、図29に示すように燃料電池用セパレータ1Qの片面(たとえば一方の面1A2)にのみ流路3が形成されており、他方の面1B2に流路3が形成されていない場合もある。この場合には、マニホールド用の孔2a(図示せず)、2bの各々が流路3と接続される面(一方の面1A2)とは反対側の面(他方の面1B2)において、マニホールド用の孔2a(図示せず)、2bの各々の周縁部にへこみ部5dが形成されている。またマニホールド用の孔2a(図示せず)、2bの各々と流路3とが接続される部分にバリはない。
【0101】
この図29は、マニホールド用の孔が一方の面側で流路と接続された箇所の断面を示す図である。
【0102】
次に、本実施の形態の第2の燃料電池用セパレータ1Qを製造するための成形用金型について説明する。
【0103】
図22は、本発明の実施の形態4における第2の燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。図22を参照して、成形用金型10は、成形材料を成形するための成形用金型であって、金型部材11と、金型部材12とを有している。金型部材11は、金型部材12と対向する表面に凹部11aを有している。金型部材12は、金型部材11と対向する表面に、凹部11aに対応して設けられた凸部12aを有している。金型部材11および12を互いに重ね合わせたときに、金型部材11の凹部11aに金型部材12の凸部12aが嵌り込むように凹部11aおよび凸部12aは構成されている。
【0104】
金型部材11の凹部11aは、底面11a1を有し、その底面11a1に、ガスなどの流路を形成するための流路形成用凸部11dと、マニホールド用の孔を形成するための孔形成用凸部11bおよび孔形成用凹部11cとを有している。
【0105】
金型部材12の凸部12aは、凹部11aの底面11a1と対向する上面12a1を有し、その上面12a1に、ガスなどの流路を形成するための流路形成用凸部12dと、マニホールド用の孔を形成するための孔形成用凹部12bおよび孔形成用凸部12cとを有している。
【0106】
金型部材11の孔形成用凸部11bは金型部材12の孔形成用凹部12bに対応して設けられており、金型部材11の孔形成用凹部11cは金型部材12の孔形成用凸部12cに対応して設けられている。
【0107】
金型部材12の凸部12aの外周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部12g1が上面12a1に設けられている。また孔形成用凹部12bの周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部12g2が上面12a1に設けられている。また孔形成用凹部11cの周縁部を取り囲むようにへこみ部形成用凸部11gが底面11a1に設けられている。これらのへこみ部形成用凸部12g1、12g2、11gの各々は断面形状が角型の段部形状となっている。
【0108】
上記の成形用金型10を用いた本実施の形態の第2の燃料電池用セパレータ1Qの製造方法は、実施の形態1におけるセパレータ1の製造方法とほぼ同じであるため、その説明は省略する。
【0109】
本実施の形態のセパレータ1P、1Qにおいても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0110】
上記の実施の形態のうち、一方の面にバリを有し他方の面にへこみ部を有する燃料電池用セパレータ(実施の形態1〜3が該当)が、一方の面にバリを有するセパレータとこれと対向する一方の面にこのバリを収納するへこみ部を有するセパレータとの1対のセパレータ(実施の形態4が該当)と比較して、1つの金型でセパレータを生産可能である点においては好ましい。
【0111】
(燃料電池)
上記のようにして得られた実施の形態1〜4の燃料電池用セパレータ1(または1P、1Q)を用いて燃料電池を製造することができる。図23(A)、図23(B)および図23(C)の各々は、それぞれ異なる燃料電池の構成を概略的に示す分解断面図である。図23(A)を参照して、この燃料電池は、実施の形態1〜3の燃料電池用セパレータ1を少なくとも1対備えており、その1対の燃料電池用セパレータ1、1と電解質膜/電極接合体とが交互に積み重ねられることで形成されている。電解質膜/電極接合体は、例えば固体高分子電解質膜21を燃料極および酸化剤極となる一対の電極22、22により挟み込むことにより構成されている。1対の燃料電池用セパレータ1、1のうち一方の燃料電池用セパレータ1のバリ4は、1対の燃料電池用セパレータ1、1のうちの他方の燃料電池用セパレータ1のへこみ部5a(または5b、5c)に収納されている。
【0112】
また図23(B)を参照して、この燃料電池は、実施の形態1〜3の燃料電池用セパレータ1を備えており、その燃料電池用セパレータ1と電解質膜/電極接合体とが交互に積み重ねられて形成されている。燃料電池用セパレータ1のバリ4は、電解質膜/電極接合体を介して対向する燃料電池用セパレータ1のへこみ部5a(または5b、5c)に収納されている。
【0113】
また図23(C)を参照して、この燃料電池は、実施の形態4の1対の燃料電池用セパレータ1P、1Qと電解質膜/電極接合体とが交互に積み重ねられて形成されている。1対の燃料電池用セパレータのうちの燃料電池用セパレータ1Pは、一方の面の外周縁部から一方の面に交差する方向に突き出したバリ4を有している。また、1対の燃料電池用セパレータのうちの燃料電池用セパレータ1Qは、一方の面の外周縁部にバリ4を収容可能な形状のへこみ部5dが形成されている。1対の燃料電池用セパレータ1P、1Qは、バリ4の形成された面とへこみ部5dが形成された面とが対向するように互いに積み重ねられ、これにより燃料電池用セパレータ1Pのバリ4は燃料電池用セパレータ1Qのへこみ部5dに収納されている。
【0114】
なお上記の図23(A)〜図23(C)の各々においてはマニホールド用の孔の図示は説明の便宜上省略されている。また図26および図27の燃料電池用セパレータ1が図23(A)に示す燃料電池用セパレータ1として積み重ねられてもよく、また図23(B)に示す燃料電池用セパレータ1として積み重ねられてもよい。また図28の燃料電池用セパレータ1が図23(A)に示す燃料電池用セパレータ1として積み重ねられてもよく、また図23(B)に示す燃料電池用セパレータ1として積み重ねられてもよい。また図29の燃料電池用セパレータ1Qが図23(C)に示す燃料電池用セパレータ1Qとして他の燃料電池用セパレータ1Pと積み重ねられてもよい。
【0115】
燃料電池は、発電性能を高める目的で燃料電池セルが複数個直列に配置された燃料電池スタックとされている。このように燃料電池スタックとされている場合には、燃料電池セル間には冷却水を流す場合があり、この場合には、図23(A)、図23(C)に示すように冷却水を通す冷却水路3がセパレータ1(または1P、1Q)に設けられている。また携帯電話等に使用する小型燃料電池においては、冷却水を通す冷却水路がない形態のスタック構造の燃料電池も存在し、この燃料電池は図23(B)に示すようにセパレータと電解質膜/電極接合体とが交互に積層された構造となる。
【0116】
図23(A)、図23(C)に示す構成において、冷却水の経路を挟む1対のセパレータ同士は互いに同電位となるため、バリをへこみ部に収納することで十分に接触させることが可能となる。また図23(B)に示すように電解質膜/電極接合体を挟む1対のセパレータ1同士は互いに逆電位(陽極側と陰極側)となるため、両者を接触させることはできないが、バリをへこみ部に収納することで十分に接近して配置させることが可能となる。
【0117】
このような燃料電池においては、水素ガスまたはメタノールなどが燃料極22でイオン化された後に固体高分子電解質膜21を通過して、酸化剤極22で空気中の酸素等と反応することで発電が生じる。
【0118】
本実施の形態で得られる燃料電池用セパレータは、上記の固体高分子型の燃料電池のほかに、ヒドラジン型、直接メタノール型、アルカリ型、リン酸型等の種々の燃料電池に対して好適に適用され得る。
【0119】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、電気自動車用電源、ポータブル電源、非常用電源等に対して適用されるリン酸型燃料電池、ダイレクトメタノ−ル型燃料電池、固体高分子型燃料電池等の燃料電池に対して使用可能な燃料電池用セパレータおよびそれを用いた燃料電池に特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す背面図である。
【図3】図1および図2のIII−III線に沿う概略断面図である。
【図4】図3の領域Q1を拡大して示す概略断面図である。
【図5】図4の領域Q2のバリを拡大して示す概略断面図である。
【図6】図4に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図である。
【図7】図6の領域Q3を拡大して示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図9】図8の領域Q4を拡大して示す概略断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2における燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す一部破断断面図である。
【図11】図10に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図である。
【図12】図11の領域Q5を拡大して示す概略断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を、図8の領域Q4に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態3における燃料電池用セパレータの構成であって、図3の領域Q1に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【図15】図14に示す燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図である。
【図16】図15の領域Q6を拡大して示す概略断面図である。
【図17】本発明の実施の形態3における燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を、図8の領域Q4に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【図18】バリが生じた面同士を対面させてセパレータ同士を積み重ねる様子を示す概略断面図である。
【図19】本発明の実施の形態4における2つの燃料電池用セパレータを示す図であって、図3の領域Q1に対応する部分を拡大して示す概略断面図である。
【図20】図19に示す2つの燃料電池用セパレータを積み重ねた状態を示す概略断面図である。
【図21】図20の領域Q7を拡大して示す概略断面図である。
【図22】本発明の実施の形態4における第2の燃料電池用セパレータを成形するための成形用金型の構成を概略的に示す断面図である。
【図23】燃料電池の3つの構成を概略的に示す分解断面図であり、1対の燃料電池用セパレータとMEAとを交互に積層した構成(A)と、1つの燃料電池用セパレータとMEAとを交互に積層した構成(B)と、1対の燃料電池用セパレータとMEAとを交互に積層した構成(C)とを示す図である。
【図24】従来のシェアエッジ構造の圧縮成形用金型の構成を示す断面図(A)と、従来のシェアエッジ構造の圧縮成形用金型により成形された成形品の構成を示す断面図(B)である。
【図25】従来の合わせ型の圧縮成形用金型の構成を示す断面図(A)と、従来の合わせ型の圧縮成形用金型により成形された成形品の構成を示す断面図(B)である。
【図26】流路に接続されないマニホールドを有する燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す平面図である。
【図27】流路に接続されないマニホールドを有する燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す背面図である。
【図28】外周縁部の一方表面から他方表面の全体にかけてテーパ状になった燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す断面図である。
【図29】流路に接続されたマニホールドにおいて流路に接続されない側にへこみ部を有する燃料電池用セパレータの構成を概略的に示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0122】
1,1P,1Q 燃料電池用セパレータ、2a,2b,2a1,2a2,2b1,2b2 マニホールド用の孔、3 流路、4,4a,4b バリ、5a,5b,5c,5d へこみ部、6 凹部、10 成形用金型、11,12 金型部材、21 固体高分子電解質膜、22 電極(燃料極、酸化剤極)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性炭素材料と樹脂バインダーとを含む燃料電池用セパレータにおいて、
流路(3)と前記流路に接続されたマニホールド(2b)とを有し、
前記マニホールドは燃料電池用セパレータ(1Q)の一方の面(1A2)で前記流路と接続され、他方の面(1B2)で前記流路と接続されておらず、
前記一方の面において前記流路と前記マニホールドとが接続される部分にバリはなく、前記他方の面において前記マニホールドの周縁部にはへこみ部(5d)が形成されており、
前記へこみ部は、凹部(6)と、前記凹部の底面から突き出しかつ前記他方の面から突き出ない凹部内バリ(4c)とを有している、燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
導電性炭素材料と樹脂バインダーとを含む燃料電池用セパレータにおいて、燃料電池用セパレータ(1Q)の一方の面(1A2)の外周縁部にはへこみ部(5d)が形成されており、前記へこみ部は、凹部(6)と、前記凹部の底面から突き出しかつ前記一方の面から突き出ない凹部内バリ(4c)とを有しており、前記一方の面に対する他方の面(1B2)の外周縁部に凹部を有さない、燃料電池用セパレータ。
【請求項1】
導電性炭素材料と樹脂バインダーとを含む燃料電池用セパレータにおいて、
流路(3)と前記流路に接続されたマニホールド(2b)とを有し、
前記マニホールドは燃料電池用セパレータ(1Q)の一方の面(1A2)で前記流路と接続され、他方の面(1B2)で前記流路と接続されておらず、
前記一方の面において前記流路と前記マニホールドとが接続される部分にバリはなく、前記他方の面において前記マニホールドの周縁部にはへこみ部(5d)が形成されており、
前記へこみ部は、凹部(6)と、前記凹部の底面から突き出しかつ前記他方の面から突き出ない凹部内バリ(4c)とを有している、燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
導電性炭素材料と樹脂バインダーとを含む燃料電池用セパレータにおいて、燃料電池用セパレータ(1Q)の一方の面(1A2)の外周縁部にはへこみ部(5d)が形成されており、前記へこみ部は、凹部(6)と、前記凹部の底面から突き出しかつ前記一方の面から突き出ない凹部内バリ(4c)とを有しており、前記一方の面に対する他方の面(1B2)の外周縁部に凹部を有さない、燃料電池用セパレータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
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【図22】
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【図26】
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【図28】
【図29】
【公開番号】特開2008−300369(P2008−300369A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235435(P2008−235435)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【分割の表示】特願2008−506837(P2008−506837)の分割
【原出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【分割の表示】特願2008−506837(P2008−506837)の分割
【原出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
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