説明

燃料電池用燃料処理装置

【課題】 燃料電池システムにおける水素製造用の燃料処理装置(脱硫器、改質器、COシフト反応器、CO選択酸化器など)において、筒状の容器内に粒状物質を確実に保持する。
【解決手段】 筒状の触媒容器1内に充填される触媒7充填層の両端部に対する保持部のうち、少なくとも一方(下流側)を、立体メッシュ構造の弾性体(弾性メッシュ)6により構成し、触媒7の粉化による体積変化、触媒容器1の熱膨張による容積変化に対応可能とする。また、下流側の保持部を弾性メッシュ6により構成することで、フィルタ効果(触媒7の持ち去り防止)を発揮させる。ヒータ20を有する場合は、弾性メッシュ6をヒータ20の自由端側に、該自由端が突き当てられた状態で配置し、ヒータ20の熱膨張を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムにおける水素製造装置において、水素製造用燃料の、脱硫、改質、COシフト反応、CO選択酸化などの処理を行う燃料処理装置(脱硫器、改質器、COシフト反応器、CO選択酸化器など)に関し、特に、前記処理に用いる各種触媒や吸着剤などの粒状物質を容器内に保持するための保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用燃料処理装置では、一般に、筒状の容器に、触媒や吸着剤などの粒状物質を充填するが、特許文献1に記載の脱硫器では、縦置きの筒状の容器内の吸着剤充填層の両端に通気孔付きの隔壁を設け、これらの隔壁によって吸着剤を保持している。
また、特許文献2に記載の脱硫器では、横置きの筒状の容器内に燃料の流路をうねらせる複数の仕切板を設け、これらの仕切板によって脱硫触媒の動きを規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−117652号公報
【特許文献2】特開2007−273142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の脱硫器では、粒状物質(吸着剤)の粉化による体積減少や、容器の熱膨張による容積増大により、容器内に隙間が増えてしまう。
隙間が増えると、容器内で粒状物質が動いてしまい、粒状物質が動くことにより、更に粉化が進んでしまう。
また、設置前の運搬時などに容器内で粒状物質が動くことによっても、更に粉化が進んでしまう。
【0005】
また、特許文献2に記載の脱硫器では、粒状物質(脱硫触媒)の充填に手間がかかる他、隙間なく充填することが困難である。
本発明は、このような実状に鑑み、脱硫器などの燃料電池用燃料処理装置において、燃料処理に用いる触媒や吸着剤などの粒状物質を、粒状物質の体積変化や容器の容積変化にかかわらず、容器内に確実に保持するための保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、筒状の容器内の粒状物質充填層の両端部に対する保持部のうち、少なくとも一方を、立体メッシュ構造の弾性体により構成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粒状物質の体積変化や容器の容積変化に対応して、弾性体が変形(体積変化)することにより、粒状物質を常に確実に保持できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態を示す燃料処理装置(脱硫器)の概略断面図
【図2】本発明の第2実施形態を示す燃料処理装置(脱硫器)の概略断面図
【図3】本発明の第3実施形態を示す燃料処理装置(脱硫器)の概略断面図
【図4】本発明の第4実施形態を示す燃料処理装置(脱硫器)の概略断面図
【図5】ヒータの熱膨張に対する変形吸収作用の説明図
【図6】本発明の第5実施形態を示す燃料処理装置(脱硫器)の概略断面図
【図7】図6のA矢視図
【図8】図6のB−B断面図
【図9】本発明の第6実施形態を示す燃料処理装置の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
燃料電池システムは、天然ガス由来の都市ガス、液化石油ガス(LPG)、あるいは灯油等の炭化水素燃料から水素(水素リッチな燃料ガス)を製造する水素製造装置と、この水素製造装置により製造した水素と空気中の酸素とを化学反応させることにより発電する燃料電池スタックと、を含んで構成される。
【0010】
前記水素製造装置は、燃料処理装置として、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を吸着剤を用いて吸着除去又は脱硫触媒を用いて変換除去する脱硫器と、脱硫された炭化水素燃料を改質触媒を用いて水蒸気供給下で水蒸気改質によりH2、CO2を含む水素リッチなガスに改質する改質器と、改質ガス中の副生COをシフト触媒により残留水蒸気と反応させてCO2とH2に変えるCOシフト反応器と、シフト反応後のガス中にわずかながら残存するCOを選択酸化(PROX;Preferencial Oxidation)触媒を用いて空気供給下で選択的に酸化してCO2に変えるCO選択酸化器と、を備える。
【0011】
ここで、燃料処理装置の1つである脱硫器は、筒状の容器内に吸着剤や脱硫触媒などの粒状物質を層状に充填したものであり、また必要により、加熱用のヒータ(熱源)が内蔵される。
改質器、COシフト反応器、及び、CO選択酸化器についても、粒状物質(触媒)の充填構造は、脱硫器とほぼ同じである。
【0012】
従って、以下の実施形態では、主に脱硫器を例にするが、容器内に充填される粒状物質について、吸着剤を含めて「触媒」と総称することにし、また、容器については「触媒容器」として、触媒容器内の触媒充填構造について、図面に基づいて、説明する。
但し、図面は概念図であり、触媒容器の置き方(縦置き、横置き)、燃料の入口部及び出口部の形状、触媒の形状などを図示の形態に限定する趣旨のものではない。
【0013】
図1は本発明の第1実施形態を示す燃料処理装置(脱硫器)の概略断面図である。
触媒容器1は、円筒状又は角筒状で、その両端に端壁1a、1bを有する。そして、触媒容器1の一端(端壁1a側)に燃料入口通路2が接続されて開口し、他端(端壁1b側)に燃料出口通路3が接続されて開口する。但し、燃料入口通路2及び燃料出口通路3の形状、接続位置、引き回し等は、図示のものに限定されない。
【0014】
触媒容器1内の一端側(上流側)には、端壁1aとの間に所定の間隔を開けて、多数の微細な連通孔を有する固定隔壁4を配置し、端壁1aと固定隔壁4との間に拡散空間5を形成してある。
また、触媒容器1内の他端側(下流側)には、端壁1bに当接させて、立体メッシュ構造の弾性体(以下弾性メッシュという)6を配置してある。
【0015】
弾性メッシュ6は、例えば、金属、炭素繊維複合材料又は高分子材料などからなるワイヤをウェーブ状に編み込んだものであり、触媒容器1内に圧入し得る外形で、所定の厚さを有する円形又は角形のプレート状に、成形して、厚さ方向と、外縁方向(容器1の内面に圧接する方向で、円形の場合の径方向外側)とに弾性を持たせてある。
そして、触媒容器1内の固定隔壁4と弾性メッシュ6との間に、粒状の触媒7を層状に充填し、触媒7充填層としてある。
【0016】
従って、触媒7充填層の両端部に対する保持部のうち、一方の保持部(下流側の保持部)を、弾性メッシュ6により構成している。本実施形態では、他方の保持部(上流側の保持部)は、固定隔壁4により構成している。
言い換えれば、弾性メッシュ6は、一方の面が触媒7充填層に当接し、他方の面が触媒容器1の端壁1bに当接することで、その弾性力により、触媒7充填層を押圧している。
【0017】
かかる構成において、燃料入口通路2から導かれる燃料は、拡散室5に流入して拡散し、固定隔壁4の連通孔から触媒7充填層へ流入し、ここを通流する。そして、触媒7充填層を抜けると、弾性メッシュ6内で収束し、燃料出口通路3から流出する。
ここにおいて、触媒充填層内の触媒7は、固定隔壁4と弾性メッシュ6との間に挟持されており、また、常に弾性メッシュ6の弾性力が作用しているので、触媒容器1を動かした際に、内部で触媒が偏ることを防止できる。従って、設置前の運搬時などにも触媒7の動きが規制され、動くことによる粉化が防止される。
【0018】
また、触媒7の粉化を一部で生じ、これにより触媒7の体積が減少したとしても、触媒7の粉化による体積減少に伴って、弾性メッシュ6がその弾性力で触媒7充填層を押して(弾性メッシュ6が体積増大側に変形して)、隙間の増大を防止するので、触媒7が動いて更なる粉化を生じるのを防止できる。
また、運転中の熱負荷により触媒容器1の熱膨張を生じ、触媒容器1の容積が増大したとしても、これに伴って、弾性メッシュ6がその弾性力で触媒7充填層を押して(弾性メッシュ6が体積増大側に変形して)、隙間の増大を防止するので、触媒7が動いて更なる粉化を生じるのを防止できる。
【0019】
従って、触媒7の粉化による体積変化や、触媒容器1の熱膨張による容積変化にかかわらず、これらに対応して、弾性メッシュ6が変形することにより、触媒7を常に確実に保持できるという効果を奏する。
また、触媒7充填層の、これを通流する燃料の流れ方向で見て、下流側の保持部を、弾性メッシュ6により構成しているので、この弾性メッシュ6がフィルタとして機能し、触媒、特に粉化した触媒が、燃料の流れによって、触媒容器1外に持ち去られるのを抑制できる。
【0020】
また、弾性メッシュ6の触媒7充填層との当接面と反対側の面は、触媒容器1の端壁1bに当接する構成としているので、弾性メッシュ6により燃料出口側での収束空間を確保しつつ、弾性メッシュ6の設置を容易化できる。
また、前記弾性メッシュ6は、金属ワイヤをウェーブ状に編み込んだものとしたので、熱負荷にも十分に耐えることができる。
【0021】
尚、本実施形態では、弾性メッシュ6を触媒7充填層の下流側にのみ設けたが、図1の左右(流れ方向)を逆にして、弾性メッシュ6を触媒7充填層の上流側にのみ設けるようにしてもよい。上流側に設ける場合は、弾性体メッシュ6により燃料入口側での拡散空間を確保でき、特に液体燃料の場合に十分な拡散効果を得ることができる。但し、フィルタ機能による触媒の持ち去り防止効果はなくなる。
【0022】
また、本実施形態では、触媒7充填層の弾性メッシュ6とは反対側の保持部を、固定隔壁4により構成しているが、この固定隔壁4を省略し、触媒7充填層の弾性メッシュ6とは反対側の保持部を、容器1の端壁1aとしてもよい。但し、固定隔壁4を設けて、拡散空間(又は収束空間)5を確保することで、触媒7充填層の利用効率を高めることができる。
【0023】
また、本実施形態に対する追加的構成として、固定隔壁4と同様な形状で、通気孔を有するが、触媒容器1内をスライド可能な隔壁を、触媒7充填層と弾性メッシュ6との間に、介在させてもよく、これによれば、触媒7充填層に対しより均一な押圧力を作用させることができる。
図2は本発明の第2実施形態を示す燃料処理装置(脱硫器)の概略断面図である。第2実施形態(図2)において第1実施形態(図1)と同一要素には同一符号を付して、異なる要素につき説明する。
【0024】
触媒容器1内の一端側(上流側)には、端壁1aに当接させて、弾性メッシュ11を配置してある。
また、触媒容器1内の他端側(下流側)にも、端壁1bに当接させて、弾性メッシュ12を配置してある。
そして、触媒容器1内の一端側(上流側)の弾性メッシュ11と他端側(下流側)の弾性メッシュ12との間に、粒状の触媒7を層状に充填し、触媒7充填層としてある。
【0025】
また、下流側の弾性メッシュ12は、燃料の流れ方向にメッシュ密度を変化させ、上流側が粗く,下流側が細かく形成され、この例では、低密度層12a、中密度層12b、高密度層12cの3層構造としている。ここで、中密度層12bのメッシュ密度が上流側の弾性メッシュ11のメッシュ密度に相当する。
本実施形態によれば、触媒容器1内の両端部に弾性メッシュ11、12を設けて、触媒7充填層の両端部を弾性メッシュ11、12により保持しているので、触媒7の体積変化や触媒容器1の容積変化に対する追従性が向上し、基本的な触媒保持効果をより確実なものとすることができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、下流側の保持部を構成する弾性メッシュ12は、流れ方向にメッシュ密度を変化させ、上流側が粗く、下流側が細かく形成されているので、上流側の粗い層では、粉化の程度が小さい比較的大粒径の触媒を捕集して持ち去り防止効果を発揮し、下流側の細かい層では、粉化の程度が大きい比較的小粒径の触媒を捕集して持ち去り防止効果を発揮することができる。従って、フィルタ機能を分担することができ、全体で捕集して、目詰まりを遅らせることにより、長寿命化を図ることができる。
【0027】
図3は本発明の第3実施形態を示す燃料処理装置(脱硫器)の概略断面図である。
第3実施形態(図3)は、基本構造は、第1実施形態(図1)と同じであるが、加熱用のヒータ20を備える。
ヒータ20は、触媒容器1の上流側の端部(端壁1a)から容器1内の中心部に沿って触媒7充填層を貫通する棒状のヒータであり、片持ち状態である。
【0028】
ここにおいて、弾性メッシュ6は、ヒータ20の自由端側に、該自由端が突き当てられた状態で配置する。
本実施形態によれば、図5に示すように、ヒータ20が熱膨張によりΔt伸長しても、弾性メッシュ6の圧縮変形により、熱膨張による変形を吸収でき、ヒータ20又は触媒容器1の破損を防止できる。
【0029】
また、ヒータ20を有する場合、触媒容器1の熱膨張がより大きくなるので、弾性メッシュ6の基本的な触媒保持効果に期待するところもより大きくなる。
図4は本発明の第4実施形態を示す燃料処理装置(脱硫器)の概略断面図である。
本実施形態(図4)は、基本構造は、第2実施形態(図2)と同じで、触媒容器1の両端部に弾性メッシュ11、12を備えるが、更に加熱用のヒータ30を備える。尚、図4では、下流側の弾性メッシュ12を1層にしているが、図2と同様な多層構造としてもよい。
【0030】
ヒータ30は、触媒容器1の下流側の端部(端壁1b)から容器1内の中心部に沿って触媒7充填層を貫通する棒状のヒータであり、片持ち状態である。
ここにおいて、弾性メッシュ11は、ヒータ30の自由端側に、該自由端が突き当てられた状態で配置する。
弾性メッシュ12は、ヒータ30の固定端側に、その固定端部を囲んで配置する。すなわち、弾性メッシュ12は環状に形成してある。
【0031】
本実施形態によれば、ヒータ30が熱膨張により伸長しても、弾性メッシュ11の圧縮変形により、熱膨張による変形を吸収でき、ヒータ30又は触媒容器1の破損を防止できる。
また、ヒータ30の自由端の突出による弾性メッシュ11の圧縮変形に引きずられる形で、隙間が発生することが考えられるが、これに対応して、反対側の弾性メッシュ12が膨出することにより、隙間の発生を防止でき、触媒保持効果を確実に発揮することができる。
【0032】
尚、ヒータ30は、第3実施形態(図3)と同様、触媒容器1の上流側の端部(端壁1a)から突出させるようにしても、同様の効果が得られる。
第3実施形態(図3)及び第4実施形態のヒータ20、30について更に述べれば、これらは、必ずしも触媒容器1の中心部に配置する必要はない。また棒状のヒータとする必要もなく、例えば螺旋状のヒータとしてもよい。
【0033】
また、第1〜第4実施形態での燃料入口通路2及び燃料出口通路3の引き回しについて述べれば、必ずしも触媒容器1の両端部に配置する必要はなく、触媒容器1の一端部側に集中させて、一方はそのまま触媒7充填層の一端側に開口させ、他方は触媒7充填層を貫通させた後、触媒7充填層の他端側で開口させるなどしてもよい。
また、第1〜第4実施形態での触媒容器1の置き方についても、図示のような横置きに限定するものではなく、縦置きにして、上下いずれの方向に燃料を流通させてもよい。
【0034】
図6は本発明の第5実施形態を示す燃料処理装置(脱硫器)の概略断面図、図7は図6のA矢視図、図8は図6のB−B断面図である。
触媒容器40は、互いに角筒状の外筒41と内筒42との間に角環断面の触媒収納部を形成するもので、その上下の端部に端壁43、44を有する。内筒42の内側は中空部となっている。そして、触媒容器40の下端(端壁44側)に燃料入口通路45が接続されて開口し、上端(端壁43側)に燃料出口通路46が接続されて開口する。
【0035】
触媒容器40内の上端側(下流側)には、端壁43に当接させて、触媒容器40の断面形状に合わせて成形した弾性メッシュ47を配置してある。
すなわち、弾性メッシュ47は、触媒容器40内に圧入し得る外形で、所定の厚さを有する角環状に、成形して、厚さ方向と、外縁及び内縁方向(外筒41及び内筒42の内面に圧接する方向)とに弾性を持たせてある。
【0036】
そして、触媒容器40内の下端側の端壁44と上端側の弾性メッシュ47との間に、粒状の触媒48を層状に充填し、触媒48充填層としてある。
従って、触媒48充填層の両端部に対する保持部のうち、一方の保持部(下流側の保持部)を、弾性メッシュ47により構成している。
また、触媒容器40内に複数本(例えば2本)の加熱用のヒータ49を備える。ヒータ49は、触媒容器40の下端側(上流側)の端壁44から立上がって容器40内の触媒48充填層を貫通する棒状のヒータであり、片持ち状態である。
【0037】
ここにおいて、弾性メッシュ47は、ヒータ49の自由端側に、該自由端が突き当てられた状態で配置する。
このような構成としても、第1〜第4実施形態で述べた作用効果を発揮させることができる。また、脱硫器の他、改質器、COシフト反応器及びCO選択酸化器の触媒容器としても使用できる。
【0038】
尚、本実施形態では、触媒容器40を縦置きとして、燃料が下から上へ流れる構成としたが、上から下へ流れる構成として、下端側(下流側)に弾性メッシュを配置する構成としてもよい。また、上流側にも弾性メッシュを設けたり、拡散室を形成するようにしてもよい。もちろん、触媒容器40を横置きとしてもよい。
図9は本発明の第6実施形態を示す燃料処理装置の概略図である。
【0039】
この実施形態は、燃料処理装置を構成する複数(ここでは3つ)の燃料処理部を一体化した実施形態である。
触媒容器50は、外筒51と中筒52と内筒53との3重筒構造である。内筒53は中筒52内の上部にのみ設けられ、中筒52の上部と内筒53との間に、第1の触媒充填部54が形成される。そして、中筒52の下部の内側に、第2の触媒充填部55が形成される。そして、外筒51と中筒52との間に、第3の触媒充填部56が形成される。
【0040】
第1の触媒充填部54に対し、その上部に燃料入口通路57が接続される。従って、燃料は環状の第1の触媒充填層54を上から下へ流れる。
第1の触媒充填層54とその下側の第2の触媒充填層55とは隔壁58により仕切られているが、隔壁58の中央部には連通孔59がある。従って、第1の触媒充填層54を通過した燃料は更に第2の触媒充填層55を上から下へ流れる。
【0041】
第2の触媒充填層55とその外側の第3の触媒充填層56とは下部の連通孔60により連通している。従って、第2の触媒充填層55を通過した燃料は更に環状の第3の触媒充填層56を下から上へ流れる。
第3の触媒充填層56に対し、その上部に燃料出口通路61が接続される。従って、第3の触媒充填層56を通過した燃料は燃料出口通路61より次工程へ向かう。
【0042】
ここにおいて、第1の触媒充填層54の上流側と下流側に、その保持部として、弾性メッシュ62、63を設ける。また、第2の触媒充填層55の下流側に、その保持部として、弾性メッシュ64を設ける。また、第3の触媒充填層56の下流側に、その保持部として、弾性メッシュ65を設ける。
かかる構成によれば、3段の触媒充填層54、55、56を、弾性メッシュ62、63、64、65により、触媒の体積変化や容器の容積変化にからわらず、確実に保持することができる。
【0043】
尚、ここでは、第1の触媒充填層54には上流側及び下流側に弾性メッシュ62、63を設け、第2及び第3の触媒充填層55、56には下流側にのみ弾性メッシュ64、65を設けているが、これに限らず、これまで説明してきたものと同様に、弾性メッシュは触媒充填層の上流側、下流側の少なくとも一方に設けることができ、また多層構造としてもよい。隔壁58は多数の微細な連通孔を有するものであってもよい。
【0044】
尚、ここでは、燃料処理装置を構成する3つの燃料処理部を一体化した例を示したが、具体的には、改質器とCOシフト反応器とCO選択酸化器とを3段に一体化してもよいし、脱硫器と改質器とCOシフト反応器とを3段に一体化してもよい。もちろん、これに限らないし、3段の他、2段に一体化(例えば、改質器とCOシフト反応器とを一体化)してもよいし、4段に一体化してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 触媒容器
1a、1b 端壁
2 燃料入口通路
3 燃料出口通路
4 連通孔を有する固定隔壁
5 拡散室
6 弾性メッシュ
7 触媒
11 弾性メッシュ
12(12a、12b、12c) 弾性メッシュ
20、30 ヒータ
40 触媒容器
41 外筒
42 内筒
43、44 端壁
45 燃料入口通路
46 燃料出口通路
47 弾性メッシュ
48 触媒
49 ヒータ
50 触媒容器
51 外筒
52 中筒
53 内筒
54 第1の触媒充填層
55 第2の触媒充填層
56 第3の触媒充填層
57 燃料入口通路
58 隔壁
59 連通孔
60 連通孔
61 燃料出口通路
62、63、64、65 弾性メッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の容器内に粒状物質を充填してなる燃料電池用燃料処理装置において、
粒状物質充填層の両端部に対する保持部のうち、少なくとも一方を、立体メッシュ構造の弾性体により構成することを特徴とする燃料電池用燃料処理装置。
【請求項2】
少なくとも、前記粒状物質充填層の、これを通流する燃料の流れ方向で見て、下流側の保持部を、前記弾性体により構成することを特徴とする請求項1記載の燃料電池用燃料処理装置。
【請求項3】
前記下流側の保持部を構成する前記弾性体は、流れ方向にメッシュ密度を変化させ、上流側が粗く、下流側が細かく形成されていることを特徴とする請求項2記載の燃料電池用燃料処理装置。
【請求項4】
少なくとも、前記粒状物質充填層の、これを通流する燃料の流れ方向で見て、上流側の保持部を、前記弾性体により構成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の燃料電池用燃料処理装置。
【請求項5】
前記容器の一端部から前記容器内の前記粒状物質充填層を貫通する片持ち状態のヒータを有し、
前記弾性体は、少なくとも、前記ヒータの自由端側に、該自由端が突き当てられた状態で、配置することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の燃料電池用燃料処理装置。
【請求項6】
前記容器の一端部から前記容器内の前記粒状物質充填層を貫通する片持ち状態のヒータを有し、
前記弾性体は、前記ヒータの自由端側に、該自由端が突き当てられた状態で配置すると共に、前記ヒータの固定端側に、その固定端部を囲んで配置することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の燃料電池用燃料処理装置。
【請求項7】
前記弾性体の前記粒状物質充填層との当接面と反対側の面は、前記容器の端壁に当接することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の燃料電池用燃料処理装置。
【請求項8】
前記弾性体は、金属、炭素繊維複合材料又は高分子材料のいずれかの材料からなるワイヤをウェーブ状に編み込んだものであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の燃料電池用燃料処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−76850(P2011−76850A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226886(P2009−226886)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】