説明

燃料電池用超軽量バイポーラプレート

【課題】燃料電池に要求される強度、熱伝導度、電気伝導度、化学的安定性及びガス浸透性を満たし、重量及び体積を画期的に減少し、低単価及び単純な工程で製造されて、超微細加工性を有するバイポーラプレートを提供する。
【解決手段】燃料流動流路が形成された非伝導性燃料極膜30と、空気流動流路が形成された非伝導性空気極膜10と、前記燃料極膜30と空気極膜10との間に設けられて、前記燃料と前記空気が混合されないように分離させる非伝導性分離膜20と、前記燃料極膜30、分離膜20及び空気極膜10の順次積層時、前記燃料極膜30から前記分離膜20を経て前記空気極膜10に電流が移動するように、電流移動経路を提供する金属部60とから構成され、詳細には、前記燃料極膜30、空気極膜10及び分離膜20は、それぞれガラス、好ましくは、感光性ガラスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、詳細には、高分子電解質燃料電池用バイポーラプレートに関し、感光性ガラス及び金属から構成されて、加工性に非常に優れており、強度、熱伝導度及び電気伝導度が高く、ガス浸透性が低く、重量が極めて軽いバイポーラプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
産業の発展及び人口の増加により、全世界的にエネルギー需要が急増している趨勢であるが、主エネルギー源の石油/天然ガスなどは、約2020年を基点にその生産量が段々減少すると予測されている。このような化石燃料の枯渇と共に、環境を汚染しない代替清浄エネルギー源に関する研究開発が必要である。
【0003】
1997年温室ガスの減縮のための京都議定書が採択され、韓国を始めとした119ヶ国が批准して、温室ガス排出量の減縮の義務化及び温室ガス減縮の義務負担が進行している。
【0004】
太陽熱、風力、水素エネルギーなどの多様な天然資源をエネルギー源として使用する技術が研究開発されているが、既存の火力発電とは違って、燃焼過程や機械的な作業が不要な直接発電方式で、熱力学的な制限(Carnot効率)を受けず、発電効率が高く、大気汚染物質であるNOx、硫黄化合物(SOx)などを排出することがなく、CO排出量が低減でき、作動騒音/振動も極めて低く、環境親和的なエネルギー技術であり、分散型電力生産方式が可能であって、100kW〜数十MW級規模の中大型発電システム分野、1kW〜10kW級規模の家庭用小型発電システム及び自動車補助動力源用、数W〜数kW級規模の移動電源用など、発電容量を容易に調節可能なことなどから、燃料電池(Fuel Cell)技術が代替清浄エネルギーとして脚光を浴びている。
【0005】
燃料電池は、水素(H)などの燃料ガスと酸素(O)とを反応させて、化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換させる装置であって、一般的に燃料極と空気極が形成されている。
【0006】
前記燃料極では、触媒反応により水素カチオンと電子が生成されて、ここで生成された水素カチオンは、電解質を通過して空気極に移動し、電子は、外部回路に沿って燃料極から空気極に移動する。また、空気極では、電解質を通過して移動してきた水素カチオンと、外部回路に沿って移動してきた電子とが酸素と反応して水が生成される。この際、燃料極と空気極との間には、所定の電位差が発生する。
【0007】
このような燃料電池は、使用される電解質の種類と作動温度によって様々あるが、特に、100℃以下の比較的低温で作動し、水素を直接燃料に使用する高分子電解質燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)は、自動車用、家庭発電用、移動用電源として注目されている。
【0008】
高分子電解質燃料電池は、要求される出力を生成するために、多数の単位セル(Unit Cell)で構成されたスタック(Stack)の構造を有している。単位セルは、水素カチオンがイオン伝導できる高分子電解質、燃料と空気の酸化還元反応を起こす触媒層(Electrode)、及び燃料と空気を触媒層に均一に供給できるようになっているガス拡散層を含む膜−電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)と、膜−電極接合体の両側に配置されて、両側面に燃料と空気を供給する所定の流路チャネルが形成されたバイポーラプレート(Bipolar Plate)と、から構成される。
【0009】
上述のように、高分子電解質燃料電池は、エネルギー出力と容量を制御するために、膜−電極接合体とバイポーラプレートを交互に積層して、直列または並列に連結したスタック構造を有している。このようなスタックは、膜−電極接合体とバイポーラプレートが交互に積層されて、両端部に金属やプラスチック材の板が設けられて、この板にボルトとナットが締結されて、両側から一定な圧力で加圧して密着された構造を有している。
【0010】
高分子電解質燃料電池に備えられるバイポーラプレートは、燃料電池スタックにおいて、水素のような燃料と空気(酸素)を反応領域に均一に分布させて、単位セル間に電気を伝達する重要な要素部品である。そのため、高い電気伝導度と熱伝導度、適切な機械的強度、耐腐食性、熱安定性などが要求される。
【0011】
しかしながら、一般的に燃料電池スタック内でバイポーラプレートが占める重量は80%以上で、厚さは85%以上であるため、同一出力時、燃料電池の小型化・軽量化のためには、バイポーラプレートの重量と容量を減らす必要がある。
【0012】
ところで、一般的にバイポーラプレートには、金属材、黒鉛または高分子樹脂が混合された複合材が使用されている。
【0013】
最もよく使用される黒鉛(炭素系)バイポーラプレートの場合、熱伝導度、電気伝導度及び耐食性に優れているが、機械的強度が弱いという問題点がある。物質密度が低いことは、軽量化には適しているが、機械的強度及び加工性が悪く、しかも流体の浸透性が高いため、数mm以上に厚く製作する必要があり、流体流動チャネルの大きさが制限される。
【0014】
黒鉛の次によく使用される金属系バイポーラプレートの場合、電気伝導度、熱伝導度及び機械的強度に優れており、気体浸透問題に関しては問題ないが、化学的安定性が低いという問題点があり、表面酸化膜により電気抵抗が高くなる問題点がある。また、小型化・軽量化という側面では、密度が高い金属は、必然的に燃料電池セルの重量を増加させてしまう。
【0015】
複合材料系バイポーラプレートの場合、耐腐食性は金属より優れているが、電気伝導度及び熱伝導度特性、並びに、加工性及び機械的強度特性を同時に実現することが難しいという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述の問題点を解決するための本発明の目的は、燃料電池に要求される強度、熱伝導度、電気伝導度、化学的安定性及びガス浸透性を満たし、重量及び体積を画期的に減少し、低単価及び単純な工程で製造されて、超微細加工性を有するバイポーラプレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のバイポーラプレートは、燃料流動流路が形成された非伝導性燃料極膜と、空気流動流路が形成された非伝導性空気極膜と、前記燃料極膜と空気極膜との間に設けられて、前記燃料と前記空気が混合されないように分離させる非伝導性分離膜と、前記燃料極膜、分離膜及び空気極膜の順次積層時、前記燃料極膜から前記分離膜を経て前記空気極膜に電流が移動するように、電流移動経路を提供する金属部とを備えている。
【0018】
ここで、前記燃料電池は、高分子電解質燃料電池であることが好ましい。
【0019】
前記燃料極膜、空気極膜及び分離膜は、燃料電池のバイポーラプレートに要求される強度、熱伝導度、化学的安定性、ガス浸透性、加工性、接合性、軽量性を満足する非伝導性物質から構成されている。前記金属部は、このような非伝導性物質から構成された膜間(燃料極膜、分離膜及び空気極膜間)電流移動経路を提供する。
【0020】
強度、熱伝導度及び化学的安定性が高く、ガス浸透性が低くて、非常に優れた加工性を有して、膜間(燃料極膜、分離膜及び空気極膜間)接合が容易であり、極めて軽いバイポーラプレートを構成するためには、前記燃料極膜、空気極膜及び分離膜は、それぞれガラスであり、好ましくは、感光性ガラス(photosensitive glass)、より好ましくは、感光性結晶化ガラスであることが望ましい。
【0021】
超微細加工を含む、さらに優れた加工性を有するために、前記燃料極膜、空気極膜及び分離膜は、それぞれ紫外線に感光する感光性ガラスであることが好ましい。
【0022】
前記燃料極膜、分離膜及び空気極膜の順次積層時、膜間の電流移動経路を提供する前記金属部は、前記燃料極膜、空気極膜及び分離膜を貫通する一つ以上の伝導性金属ロッドであることが好ましい。
【0023】
ここで、前記金属ロッドは、前記燃料極膜、空気極膜及び分離膜の縁の領域、即ち、前記流路が形成されていない領域を貫通することが好ましく、前記金属ロッドの数は、前記燃料極膜、空気極膜及び分離膜の形状によって決定されることが好ましい。一例として、 前記燃料極膜、空気極膜及び分離膜が全体的に四角の形状である場合、四角形の四つの縁のそれぞれを貫通するように、四つの金属ロッドが設けられることが好ましい。
【0024】
前記燃料極膜、分離膜及び空気極膜の順次積層時、膜間の電流移動経路を提供する前記金属部は、前記燃料極膜、空気極膜及び分離膜のそれぞれの表面に蒸着された金属蒸着層であってもよい。
【0025】
前記バイポーラプレートは、前記燃料極膜、分離膜及び空気極膜が順次積層及び熱接合された単位体と、前記金属部、好ましくは前記金属ロッドとから構成されており、前記単位体の表面に設けられた金属蒸着層をさらに含むことが好ましい。好ましくは、前記金属部は、前記金属ロッド及び前記単位体表面に設けられた金属蒸着層から構成される。
【0026】
前記単位体の上部及び下部表面のそれぞれに設けられた金属蒸着層は、燃料電池を構成する膜−電極複合体(MEA、Membrane Electrode Assembly)で発生する電子を効果的に集めて(collecting)、前記金属ロッドを通じて膜間(燃料極膜、分離膜及び空気極膜間)移動されるようにする。
【0027】
前記金属ロッドまたは前記金属蒸着層の金属は、電気伝導度、製造費用、蒸着及び成形の容易性、化学的安定性、ガラスとの界面接合特性、及び低い金属密度の面から、銀、金、白金、ニッケル、クロム、チタニウム及びアルミニウムからなる群から一つ以上選択された物質であることが好ましい。
【0028】
前記燃料極膜または空気極膜の流路は、燃料極膜または空気極膜の原材である感光性ガラス板にマスクパターンにより選択的に光が照射された領域が除去されて流路が形成される。
【0029】
詳細には、前記流路は、熱処理により前記光の照射領域を再結晶(recrystallization)した後、前記再結晶された領域をエッチングして形成されるか、前記光照射領域を直ちにエッチングして形成される。前記エッチングは、フッ酸(HF)を含むエッチング溶液によるウェットエッチングである。
【0030】
前記流路を形成するために照射される光は、紫外線であり、前記原材である感光性ガラス板は、紫外線感光されるガラス板である。
【0031】
前記流路は、前記原材である感光性ガラス板の厚さ方向に貫通された流路であることが好ましい。
【0032】
前記分離膜には、冷却流体の流路が設けられていることが好ましい。詳細には、前記燃料極膜に設けられた燃料流動流路の一側を密閉する上部分離膜と、冷却流体流路の隔壁が形成された冷却流路膜と、前記空気極膜に設けられた空気流動流路の一側を密閉する下部分離膜とを含んで構成されて、好ましくは、前記上部分離膜、冷却流路膜、及び下部分離膜が順に積層されて熱結合された構造であることが好ましい。
【0033】
前記上部分離膜は、前記燃料流動流路と前記冷却流体流路とを物理的に分離して、前記下部分離膜は、前記空気流動流路と前記冷却流体流路とを物理的に分離する。
【発明の効果】
【0034】
本発明のバイポーラプレートは、燃料電池に要求される強度、熱伝導度、電気伝導度、化学的安定性、ガス浸透性を満たし、重量及び体積を画期的に減少させることができて、簡単な工程で超微細構造の流路、高度の複雑性を有する流路を設けることができ、超小型/超軽量燃料電池単位セルを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明によるバイポーラプレートの分解斜視図の例である。
【図2】本発明によるバイポーラプレートの斜視図の例である。
【図3】本発明によるバイポーラプレートが設けられる燃料電池スタックの一例である。
【図4】本発明によるバイポーラプレートに備えられる燃料極膜、空気極膜及び分離膜の製造工程を示した工程図の例である。
【図5】本発明によるバイポーラプレートに備えられる燃料極膜、空気極膜及び分離膜の構造を示した断面図の例である。
【図6】本発明による単位体の断面図の例である。
【図7】本発明によるバイポーラプレートの断面図の例である。
【図8】本発明によるバイポーラプレートの、金属蒸着層が設けられた燃料極膜、空気極膜及び分離膜の構造を示した断面図の例である。
【図9】本発明によるバイポーラプレートを示した断面図の他の例である。
【図10】本発明による金属蒸着層が設けられた単位体の断面図の例である。
【図11】本発明によるバイポーラプレートを示した断面図のまた他の例である。
【図12】本発明による一単位体の光学写真である。
【図13】本発明による分離膜の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付の図面を参照し、本発明のバイポーラプレートについて詳細に説明する。添付の図面は、当業者に本発明の思想が十分伝われるように、例として提供されるものである。したがって、本発明は、これらの図面に限定されるものではなく、他の形態に具体化され得る。また、本明細書において、同一な参照番号は、同一な構成要素を示す。
【0037】
本明細書で使用する技術用語及び科学用語において、特に定義がなければ、この発明の属する技術分野で通常の知識を有した者が通常的に理解している意味を有し、下記の説明及び添付図面において、本発明の要旨を曖昧にする公知機能及び構成に対する説明は省く。
【0038】
下記の説明において、本発明の非伝導性空気極膜、非伝導性分離膜、非伝導性燃料極膜を構成する非伝導性物質は、本発明の特徴によって電気伝導度を考慮せず、純粋に化学的反応性、強度、加工の容易性、低密度、ガス浸透性、接合性など、燃料電池用バイポーラプレートに要求される物理的性質を満足する非伝導性物質が使用されて、このような本発明の特徴により、本発明の他の特徴である金属部が備えられて、最終的にバイポーラプレートに要求される電気伝導度をも充足させる特徴的構造を有する。
【0039】
化学的反応性、強度、加工の容易性、低密度、ガス浸透性、接合性側面で、本発明の非伝導性空気極膜、非伝導性分離膜、非伝導性燃料極膜を構成する非伝導性物質は、ガラス、詳細には、ナトリウム石灰ガラス、カリウム石灰ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはリン酸塩ガラスである。
【0040】
さらに、本発明は、超微細構造パターニング及び加工の容易性の面で、本発明の非伝導性空気極膜、非伝導性分離膜、非伝導性燃料極膜を構成する非伝導性物質が感光性ガラスである特徴的構成を有している。これにより、本発明のバイポーラプレートの加工性及び加工結果物が、半導体のフォトリソグラフィーと類似した性能及び効果を得ることができる。
【0041】
下記の図面に基づいて、本発明の特徴的構成をより明確にするために、感光性ガラスが空気極膜、分離膜及び燃料極膜を構成する物質である場合を詳述する。
【0042】
図1は、本発明による燃料電池用バイポーラプレートの分解斜視図の一例である。図1に示されたように、本発明の燃料電池用バイポーラプレートは、水素を含む燃料の流動流路が形成された非伝導性燃料極膜30、酸素を含有する空気の流動流路が形成された非伝導性空気極膜10、前記燃料極膜30と空気極膜10との間に設けられる非伝導性分離膜20、及び、前記空気極膜10と分離膜20と燃料極膜30の膜間電流移動経路を形成する金属部60から構成される。
【0043】
図1の例は、金属部60が、前記空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30を貫通する金属ロッド60である例である。前記金属ロッド60は、図1に示されたように、前記空気極膜10または燃料極膜30に形成された流路に影響を及ぼさないように、空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30の縁を貫通することが好ましい。
【0044】
前記金属ロッド60は、高い電気伝導度、化学的安定性、加工の容易性、酸化皮膜形成抑制特性を有して、黒鉛とほぼ等しい程度の低い物質密度を有する銀、金、白金、ニッケル、クロム、チタニウム及びアルミニウムからなる群から一つ以上選択された物質からなることが好ましい。
【0045】
図2は、本発明により、前記空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30が順に積層されて、膜間を貫通する金属ロッド60が備えられた本発明のバイポーラプレート4000の斜視図の一例である。
【0046】
本願発明によるバイポーラプレート4000は、膜−電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly、図3のMEA)と交互に積層されて結合することにより、燃料電池スタック(図3参照)を構成する。
【0047】
非伝導性材料から構成される前記空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30は、ガラス、好ましくは感光性ガラス、より好ましくは、感光性結晶化ガラスである。
【0048】
本発明の好ましい非伝導性材料である前記感光性ガラスは、感光性金属元素がイオン状態として含有されたガラスであり、光の照射(光の照射後に行われる熱処理を含む)により物質特性または結晶特性が変わるガラスである。前記感光性金属元素は、Cu、Ag、Au、Se、Cd、Cs、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Ti、Ce、Mo、W及びU群から一つ以上選択された元素であり、前記感光性ガラスは、ガラスを構成する主物質を基準に、ナトリウム石灰ガラス、カリウム石灰ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはリン酸塩ガラスであり、一例として、SiOを主物質として、LiO、Li、KO、Al、NaO、ZnO、Sb、AgO及びCeOからなる群から選択された一つ以上の添加物質をさらに含有する通常の感光性ガラスである。
【0049】
特徴として、前記感光性ガラスは、紫外線感光性を有するガラスであって、好ましくは、感光曇りガラス、感光結晶化ガラスを含む、化学切削加工用感光ガラスである。
【0050】
前記空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30を構成する感光性ガラスは、気体浸透性が黒鉛に比べて著しく低いため、それ自体のみで気体の混合及び漏出を防ぐことができる。また、半導体リソグラフィーと類似した光照射及びエッチングを通じて、非常に微細で且つ複雑な流路を形成することができる。また、ガラス自体の強度が黒鉛に比べて著しく優れており、流路及び空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30の厚さを任意的に調節することができ、高分子電解質燃料電池の作動温度範囲で熱的化学的に非常に安定して、物質密度が黒鉛とほぼ等しい、非常に低い密度を有する特徴がある。
【0051】
上述した本発明のバイポーラプレートの特徴により、超軽量、超小型燃料電池が実現でき、燃料電池スタックの動力密度を向上させることができる。
【0052】
ガラス、好ましくは感光ガラスが、燃料電池用バイポーラプレートに要求される物理的/化学的特性を満足する、優れた物質であるものの、黒鉛に比べて、電気伝導度(Electrical conductivity)が大きく劣る絶縁性物質である。本発明は、このような電気伝導度を解決するための特徴的構成として、膜間電流移動経路を形成する前記金属部が備えられている。
【0053】
下記の表1は、通常のバイポーラプレートに使用される黒鉛と、本願発明のバイポーラプレートの重量、体積及び電気伝導度をまとめて、比較した表である。
【0054】
【表1】

【0055】
本願発明の特徴的な構成である感光性ガラス、好ましくは、紫外線に感光する感光性ガラスにより、図4に示したように、半導体リソグラフィーと類似した簡単な工程を通じて、超微細流路を含む高度に複雑な形状の微細構造が、空気極膜10、分離膜20、または燃料極膜30に設けられる。
【0056】
詳細には、図4に示したように、前記空気極膜10、分離膜20または燃料極膜30の原材である感光性ガラス板200に、加工しようとするパターンを有するマスク100を位置させて、前記パターンにしたがって選択的に前記感光性ガラス板200に光が照射されるようにする。その後、光の照射された領域が再結晶化201されるように熱処理を行って、ウェットエッチングにより、再結晶化された領域を選択的に除去する工程を通じて、前記ガラス板200に、流路を含む微細構造301を形成することができる。
【0057】
これにより、前記空気極膜10、分離膜20または燃料極膜30は、流路を含む微細構造301及び光が照射されなかった領域のガラスから構成される。
【0058】
前記光は、超微細加工が可能な紫外線であることが好ましく、前記ガラス板の厚さは、製造しようとする燃料電池スタックの出力及びその用途を考慮して決定するが、超軽量バイポーラプレートの実質的な一例として、0.1mm〜2mmであることが好ましい。前記熱処理温度は、感光性ガラス物質によって適宜調節するが、実質的な一例として、500℃〜600℃で行うことができる。
【0059】
図4の例では、ガラス板の厚さを貫通する微細構造が形成される例を示したが、エッチング時間などを制御し、ガラス板の一厚さだけエッチングされるようにして、ガラス板の表面凹凸(陰刻による凹凸)のような微細構造を形成することもできる。
【0060】
また、図4の例において、感光性結晶化ガラスのように、光照射により選択的エッチング特性(再結晶化のような)を有する場合は、熱処理をせずに、直ちにウェットエッチングして、光が照射された領域を除去することもできる。
【0061】
図5は、図4のような光の照射及びエッチングにより製造された本願発明の空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30の断面図の一例である。
【0062】
本願発明の空気極膜10は、厚さ方向に貫通された空気流動流路12、金属ロッドが備えられる貫通気孔13、及び感光性ガラス11から構成されて、膜−電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly、図3のMEA)と本願発明のバイポーラプレートとを結合する結合部材(例えば、ボルトとナット)の経路を提供する結合気孔14を含む。
【0063】
前記結合気孔14に備えられる結合部材は、単位セルを構成する要素を結合して固定すると同時に、多数の単位セルを結合して固定する。
【0064】
本願発明の燃料極膜30は、厚さ方向に貫通された燃料流動流路32と、前記空気極膜10の貫通気孔13に対応する位置に形成されて、同一な金属ロッドが備えられる貫通気孔33と、感光性ガラス31とから構成されて、空気極膜10の結合気孔13に対応する位置に形成されて、前記結合部材の経路を提供する結合気孔33を含む。
【0065】
本願発明の分離膜20は、前記空気極膜10の貫通気孔13に対応する位置に形成されて、同一な金属ロッドが備えられる貫通気孔23と、前記空気極膜10の結合気孔13に対応する位置に形成された結合気孔23と、感光性ガラス21とから構成されて、前記空気極膜10の空気流動経路12と前記燃料極膜30の燃料流動経路32とが感光性ガラス21により物理的に分離される構造を有する。
【0066】
図4のような光の照射及びエッチングにより、図5のような構造を有するように製造された空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30は、順に積層されて、熱処理により各膜10、20、30が熱結合され、図6のような単位体1000を形成することが好ましい。
【0067】
順に積層された空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30の熱結合は、ガラス転移温度(感光性ガラス11、21、31のガラス転移温度)以上の熱処理による接合であることが好ましく、実質的な一例として、500℃以上の熱処理による熱結合である。
【0068】
これにより、前記単位体1000は、空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30の感光性ガラスと、分離膜20により物理的に分離された燃料流動流路32と空気流動流路12、空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30の貫通気孔23が結合されて単一な金属ロッドが備えられる貫通気孔40と、空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30の結合気孔23が結合されて単一な結合部材が備えられる結合気孔50と、を有する。
【0069】
図7に示したように、本発明によるバイポーラプレート2000は、前記単位体1000と、前記貫通気孔40に備えられる金属ロッド60とから構成される。前記金属ロッド60は、空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30の膜間及びスタックを構成する燃料電池セル間の電流移動経路となるとともに、外部回路との電気的連結に利用される。
【0070】
前記金属ロッド60の最小面積は、製造しようとする燃料電池スタックの出力、製造しようとする燃料電池単位セルのディメンション(dimension)及び燃料電池の用途を考慮して決定されるが、バイポーラプレートの体積減少及び安定的な電流移動経路の提供の面から、前記金属ロッド60は、100μm〜5000mmの断面積を有することが好ましい。
【0071】
図5〜図7は、本発明の金属部が金属ロッド60である場合を示したものであり、図8及び図9は、前記金属部が金属蒸着層71、72、73、70である場合を示したものである。
【0072】
図8の空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30の構成は、図5に基づいて詳述した構造と類似しているが、各膜10、20、30に貫通気孔13、23、33が設けられておらず、各膜10、20、30を構成する感光性ガラス11、21、31表面に金属蒸着層71、72、73が設けられている。
【0073】
好ましくは、前記金属蒸着層は、前記空気極膜10の表面全体、前記分離膜20の表面全体、及び、前記燃料極膜30の表面全体に設けられることが好ましい。
【0074】
前記金属蒸着層71、72、73は、銀、金、白金、ニッケル、クロム、チタニウム及びアルミニウムからなる群から一つ以上選択される物質であることが好ましく、通常の電子ビーム(E-beam)蒸着器、スパッタ装置(sputter)、熱的/物理的蒸発器(evaporator)などを利用して蒸着を行うことができる。
【0075】
前記金属蒸着層71、72、73は、上述の金属ロッドのように、膜間と燃料電池セル間、燃料電池セルと外部回路間の電流移動経路となり、膜−電極接合体で発生する電子を効果的に集めることができる。
【0076】
面抵抗、耐久性、及び、本発明の特徴としてバイポーラプレートに備えられる超微細構造の維持の面から、前記金属蒸着層71、72、73の厚さは、10nm〜100μmであることが好ましい。
【0077】
図8のように、金属部が金属蒸着層である場合も、各膜10、20、30間の熱結合により、図9のような単位体構造を有することが好ましい。
【0078】
図10は、前記図6に基づいて詳述した単位体1000の表面に金属蒸着層80が設けられた場合を示したもので、前記金属蒸着層80は、銀、金、白金、ニッケル、クロム、チタニウム及びアルミニウムからなる群から一つ以上選択された物質であることが好ましく、面抵抗、耐久性、及び、本発明の特徴によりバイポーラプレートに備えられる超微細構造の維持の面から、前記単位体1000に設けられる金属蒸着層の厚さは、10nm〜100μmであることが好ましく、この際、単位体1000表面全体に金属蒸着層80が設けられることが好ましい。
【0079】
図11は、本発明の好ましいバイポーラプレート4000の断面図の一例であって、単位体1000の表面に設けられた金属蒸着層80及び金属ロッド60が金属部を構成している。このような構造により、バイポーラプレート4000が膜−電極接合体で発生する電子を効果的に集めると同時に、安定的に空気極膜10、分離膜20及び燃料極膜30の膜間及びスタックを構成する燃料電池セル間の電流移動経路となるとともに、外部回路との電気的連結に利用される。
【0080】
図12は、本発明によるバイポーラプレートの構成要素の中、上述した単位体1000の光学写真であり、図12の単位体の左/右両側面に設けられた貫通気孔に、本願発明による金属ロッドが設けられるようになる。
【0081】
図13は、本発明によるバイポーラプレートの構成要素の中、分離膜20のまた他の例であって、詳細には、前記燃料極膜30に備えられた燃料流動流路32と、空気極膜10に備えられた空気流動流路12とを分離させると同時に、冷却流体の流路25が備えられた分離膜20の一例である。
【0082】
図13(a)に示されたように、前記分離膜20は、前記燃料極膜30に備えられた燃料流動流路32の一側を密閉する上部分離膜20(i)と、冷却流体流路の隔壁21′(ii)が形成された冷却流路膜20(ii)と、前記空気極膜10に備えられた空気流動流路12の一側を密閉する下部分離膜20(iii)とから構成されて、好ましくは、図13(b)のように、前記上部分離膜20(i)、冷却流路膜20(ii)、及び、下部分離膜20(iii)が順に積層されて熱結合された構造である。
【0083】
前記上部分離膜20(i)は、前記燃料流動流路32と前記冷却流体流路25とを物理的に分離して、前記下部分離膜20(iii)は、前記空気流動流路12と前記冷却流体流路25とを物理的に分離する。
【0084】
上部分離膜20(i)、冷却流路膜20(ii)、及び下部分離膜20(iii)は、それぞれ図4に基づいて詳述したマスクを利用した紫外線露光、選択的に行われる熱処理、及び、露光された領域の部分的エッチングにより製造され、これにより、前記分離膜20に備えられる冷却流体の流路も、非常に微細な隔壁構造を有することができ、非常に微細な流路が設けられて、流路の形状においても、高度に複雑な形状が可能になる。
【0085】
以上のように、本発明では、特定の事項と、限定された実施例及び図面を参照して説明したが、これらは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたもので、本発明がこれらに限定されるものではなく、本発明の属する分野で通常の知識を有する者なら、このような記載から多様な修正及び変形が可能である。
【0086】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に局限して定められてはならず、添付の特許請求の範囲と共に、この特許請求の範囲と均等なあるいは等価的な変形のある全てのものは、本発明の思想の範疇に属する。
【符号の説明】
【0087】
10 空気極膜
11、21、31 感光性ガラス
12 空気流動流路
20 分離膜
25 冷却流体流路
30 燃料極膜
32 燃料流動流路
60 金属ロッド
70、80 金属蒸着層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料流動流路が形成された非伝導性燃料極膜と、
空気流動流路が形成された非伝導性空気極膜と、
前記燃料極膜と前記空気極膜との間に設けられて、燃料と空気が混合されないように分離させる非伝導性分離膜と、
前記燃料極膜、前記分離膜及び前記空気極膜の順次積層時、前記燃料極膜から前記分離膜を経て前記空気極膜に電流が移動するように、電流移動経路を提供する金属部と、
を含むことを特徴とする燃料電池用バイポーラプレート。
【請求項2】
前記燃料極膜、前記空気極膜及び前記分離膜は、それぞれガラスであることを特徴とする、請求項1に記載のバイポーラプレート。
【請求項3】
前記燃料極膜、前記空気極膜及び前記分離膜は、それぞれ感光性ガラスであることを特徴とする、請求項2に記載のバイポーラプレート。
【請求項4】
前記燃料極膜、前記空気極膜及び前記分離膜は、それぞれ感光性結晶化ガラスであることを特徴とする、請求項2に記載のバイポーラプレート。
【請求項5】
前記燃料極膜、前記空気極膜及び前記分離膜は、紫外線に感光する感光性ガラスであることを特徴とする、請求項3に記載のバイポーラプレート。
【請求項6】
前記金属部は、前記燃料極膜、前記空気極膜及び前記分離膜を貫通する一つ以上の伝導性金属ロッドであることを特徴とする、請求項2に記載のバイポーラプレート。
【請求項7】
前記金属部は、前記燃料極膜、前記空気極膜及び前記分離膜のそれぞれの表面に蒸着された金属蒸着層であることを特徴とする、請求項2に記載のバイポーラプレート。
【請求項8】
前記バイポーラプレートは、前記燃料極膜、前記分離膜及び前記空気極膜が順次積層及び熱接合された単位体と前記金属部とから構成されていることを特徴とする、請求項2に記載のバイポーラプレート。
【請求項9】
前記バイポーラプレートは、前記単位体の表面に設けられた金属蒸着層をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載のバイポーラプレート。
【請求項10】
前記金属は、銀、金、白金、ニッケル、クロム、チタニウム及びアルミニウムからなる群から一つ以上選択されていることを特徴とする、請求項6、7または9に記載のバイポーラプレート。
【請求項11】
前記燃料極膜または前記空気極膜の原材である感光性ガラス板にマスクパターンにより選択的に光が照射された領域が除去されて、前記燃料極膜または空気極膜の流路が形成されていることを特徴とする、請求項5に記載のバイポーラプレート。
【請求項12】
前記流路は、前記感光性ガラス板の厚さ方向に貫通された流路であることを特徴とする、請求項11に記載のバイポーラプレート。
【請求項13】
前記流路は、熱処理により前記光の照射領域を再結晶した後、前記再結晶された領域をエッチングして形成されていることを特徴とする、請求項11に記載のバイポーラプレート。
【請求項14】
前記分離膜には、冷却流体の流路が備えられていることを特徴とする、請求項13に記載のバイポーラプレート。


【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−244744(P2010−244744A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89770(P2009−89770)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(596071752)コリア アドバンスト インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (60)
【Fターム(参考)】