説明

燃料電池用配線取付構造及び燃料電池用配線

【課題】正確な位置決め作業が不要で、かつ、寸法精度が低くても適切に電圧を測定することのできる燃料電池用配線取付構造及び燃料電池用配線を提供する。
【解決手段】複数の単セルが積層されて構成されるセルスタック10の側壁面にFPC50が取り付けられ、FPC50に設けられる複数の電極51aが各単セルに備えられるセパレータ12,13の側壁面にそれぞれ電気的に接続することで、単セル間の電圧を測定可能とする燃料電池用配線取付構造において、電極51aにおける単セルの積層方向の幅D1は隣り合うセパレータ12,13同士の間隔S2より小さく設定され、かつ、隣り合う電極51a同士の間隔D2がセパレータ12,13における積層方向の厚みS1より小さく設定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用配線取付構造及び燃料電池用配線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セルスタックにおける任意の単セル間の電圧を簡単に測定する方法として、フレキシブルプリントサーキット(以下、FPCと称する)に設けられる複数の電極を、各単セルに備えられるセパレータにそれぞれ電気的に接続させるものが知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
しかしながら、近年、燃料電池においては、金属製の厚みの薄い(例えば1mm以下)セパレータを用いるなどして、更なる薄型化が進む傾向にある。そのため、隣り合うセパレータ同士の間隔も狭くなる傾向にある。これにより、FPCに設けられる複数の電極を各単セルに備えられるセパレータに適切に電気的に接続させるのが難しくなってきている。この点について、図8を参照して説明する。図8は従来例に係るセパレータとFPCにおける電極との位置関係を示す模式図である。なお、図8に示すものは、特許文献1に開示された技術に相当するものである。
【0004】
図8に示すように、隣り合うセパレータ200間には所定の間隔が空けられている。また、FPCに備えられる複数の導電部材500もそれぞれ所定の間隔が空けられている。これら複数の導電部材500には、それぞれ電極部500aが備えられており、各電極部500aが各セパレータ200に電気的に接続するようにFPCが取り付けられる。
【0005】
このように、従来例においては、各セパレータ200に対応するようにそれぞれ電極部500aが設けられている。従って、各セパレータ200にそれぞれ電極部500aを適切に接続させるためには、隣り合うセパレータ200間の間隔と、隣り合う電極部500a間の間隔が等しくなるように設定し、かつ、FPCを取り付ける際に正確に位置決めする必要がある。
【0006】
しかし、薄型化が進むにつれて、FPCを取り付ける際の位置決めが難しくなり、また、隣り合うセパレータ200間の間隔のバラツキも無視できなくなってきている。
【特許文献1】特開2005−294154号公報
【特許文献2】特開2005−302372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、正確な位置決め作業が不要で、かつ、寸法精度が低くても適切に電圧を測定することのできる燃料電池用配線取付構造及び燃料電池用配線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明の燃料電池用配線取付構造は、
複数の単セルが積層されて構成されるセルスタックの側壁面に配線が取り付けられ、該配線に設けられる複数の電極が各単セルに備えられるセパレータの側壁面にそれぞれ電気的に接続することで、単セル間の電圧を測定可能とする燃料電池用配線取付構造において、
前記電極における単セルの積層方向の幅は隣り合うセパレータ同士の間隔より小さく設定され、かつ、隣り合う電極同士の間隔がセパレータにおける積層方向の厚みより小さく設定されることを特徴とする。
【0010】
なお、本発明においては、「積層」といっても、必ずしも上下方向に重ねられた状態で使用されることを意味するものではなく、たとえば水平方向に並べられた状態で使用される場合もある。
【0011】
本発明によれば、電極における単セルの積層方向の幅は隣り合うセパレータ同士の間隔より小さく設定され、かつ、隣り合う電極同士の間隔がセパレータにおける積層方向の厚みより小さく設定される。従って、配線をセルスタックに取り付ければ、寸法上、各セパレータに、必ず少なくとも一つの電極が接続することになる。また、一つの電極が2つのセパレータに接続してしまうこともない。従って、配線をセルスタックに取り付ける際に、位置決め作業をする必要がない。また、隣り合うセパレータ間の間隔のバラツキがあっても、各セパレータに電極をより確実に接続させることができる。
【0012】
前記配線はフレキシブルプリントサーキットであるとよい。
【0013】
前記配線をセルスタックの側壁面に向けて押し付ける押付部材と、
該押付部材と配線との間を埋めるように設けられる弾性部材と、
を備えるとよい。
【0014】
これにより、押付部材によって配線を押し付けることで、電極をセパレータの側壁面により確実に接続させることができる。また、弾性部材を押付部材と配線との間に埋めるように設けることで、各種部材に寸法バラツキがあっても、各電極のセパレータに対する押圧力を均等にすることができる。
【0015】
前記電極は配線本体表面から突出する突出部を有するとよい。
【0016】
これにより、電極をセパレータの側壁面に対してより確実に接続させることができる。
【0017】
前記電極とセルスタックの側壁面との間を埋めるように、異方性導電材料からなる異方性導電材が設けられるとよい。
【0018】
これにより、電極とセルスタックの側壁面とをより確実に電気的に接続させることができる。
【0019】
また、本発明の燃料電池用配線は、
複数の単セルが積層されて構成されるセルスタックの側壁面に取り付けられ、各単セルに備えられるセパレータの側壁面にそれぞれ電極を電気的に接触させることで、単セル間の電圧を測定可能とする燃料電池用配線において、
前記電極における単セルの積層方向の幅は隣り合うセパレータ同士の間隔より小さく設定され、かつ、隣り合う電極同士の間隔がセパレータにおける積層方向の厚みより小さく設定されることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、電極における単セルの積層方向の幅は隣り合うセパレータ同士の間隔より小さく設定され、かつ、隣り合う電極同士の間隔がセパレータにおける積層方向の厚みより小さく設定される。従って、配線をセルスタックに取り付ければ、寸法上、各セパレータに、必ず少なくとも一つの電極が接続することになる。また、一つの電極が2つのセパレータに接続してしまうこともない。従って、配線をセルスタックに取り付ける際に
、位置決め作業をする必要がない。また、隣り合うセパレータ間の間隔のバラツキがあっても、各セパレータに電極をより確実に接続させることができる。
【0021】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、正確な位置決め作業が不要で、かつ、寸法精度が低くても適切に電圧を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0024】
(実施例1)
図1〜図6を参照して、本発明の実施例1に係る燃料電池用配線取付構造及び燃料電池用配線について説明する。図1は本発明の実施例1に係る燃料電池における配線が取り付けられた状態を示す平面図の一部である。図2は本発明の実施例1に係る燃料電池における配線が取り付けられた状態を示す側面図(一部断面図)の一部である。図3及び図4は本発明の実施例1に係るセルスタックと配線との配置関係を説明する配置関係図である。なお、図3は平面的に見た配置関係図であり、図4は断面(FPCにおける導電部材が伸びる方向に対して垂直な断面)で見た配置関係図である。図5は図3中Aで示す部分の拡大図である。図6は図4中Bで示す部分の拡大図である。
【0025】
<燃料電池>
特に、図1及び図2を参照して、燃料電池について説明する。燃料電池100は、複数の単セルが積層されて構成されるセルスタック10を備える。そして、本実施例では、セルスタック10の両側にそれぞれ絶縁体21,22を配置させた状態で一対の固定プレート31,32がボルト41とナット42により固定されることで、積層された各単セルが固定されている。
【0026】
なお、単セルは、MEA(membrane Electrode Assembly)11と、このMEA11の両面に配置されるセパレータ12,13とから構成される(図3〜図6参照)。なお、MEA11については公知技術であるので、その詳細説明は省略するが、電解質膜と、この電解質膜を挟むように設けられる一対の電極(触媒層とガス拡散層とからなる)とから構成される。ここで、一対の電極のうちの一方がアノード電極となり他方がカソード電極となる。そして、これら一対の電極間で電解質膜によってイオンの交換が行われることにより発電する仕組みである。
【0027】
このように構成された単セルの発電力は、一般的に0.7V程度である。そして、この単セルが複数積層されることで、導電材料からなるセパレータ12,13を介して、複数の単セルが直列に接続されるような構造となり、セルスタック全体で大きな発電力が得られる。
【0028】
<燃料電池用配線取付構造及び燃料電池用配線>
図1〜図6を参照して燃料電池用配線取付構造及び燃料電池用配線について説明する。本実施例では、配線として、FPC50が用いられている。FPC50は、一対の柔軟性を有するフィルム52,53と、これら一対のフィルム52,53内に配置される複数の導電部材(電線)51とから構成される。そして、FPC50は、薄く、かつ可撓性を有
するという特徴を有する。また、各導電部材51の先端に、FPC本体表面から突出する(フィルム53表面から突出する)突出部51bを有する電極51aがそれぞれ設けられている。なお、FPC50における電極51aが設けられている側とは反対側は、コネクタ55が備えられている。
【0029】
以上のように構成されるFPC50は、電極51a側がセルスタック10の側壁面に接触するように、セルスタック10に取り付けられる。本実施例では、FPC50をセルスタック10の側壁面に向けて押し付ける押付部材としてのクリップ60によって、FPC50はセルスタック10に取り付けられる。
【0030】
このクリップ60は、先端に係止爪を有するアーム61が4つ設けられている。そして、これらのアーム61先端の係止爪を、絶縁体21,22にそれぞれ設けられた係止部21a,22aに係止させることによって、クリップ60はセルスタック10に固定される。また、本実施例においては、クリップ60とFPC50との間を埋めるように、ゴムやエラストマーからなる弾性部材70が設けられている。
【0031】
そして、本実施例においては、電極51aにおける単セルの積層方向の幅D1は、隣り合うセパレータ12,13同士の間隔S2より小さく設定されている。また、隣り合う電極51a同士の間隔D2は、セパレータ12,13における積層方向の厚みS1より小さく設定されている。また、本実施例においては、電極51aにおける単セルの積層方向の幅D1は、セパレータ12,13における積層方向の厚みS1以下に設定されている。更に、隣り合う電極51a同士の間隔D2は、隣り合うセパレータ12,13同士の間隔S2より小さく設定されている。
【0032】
<電圧の測定方法>
上記のように構成されたFPC50をセルスタック10に固定することで、各セパレータ12,13には、少なくとも1つの電極51aがそれぞれ電気的に接続(本実施例の場合には接触)する。図6に示すものの場合、電極51Xと電極51Yが、セパレータ12,13にそれぞれ電気的に接続する。そして、本実施例の場合には、セパレータ12,13に電気的に接続されない電極51aも複数ある。
【0033】
電圧を測定するにあたっては、まず、複数の導電部材50の中から電圧出力のあるものを特定する。つまり、電圧出力があるものは、電極51aがセパレータ12,13に電気的に接続されたものであり、電圧出力のないものは、電極51aがセパレータ12,13に電気的に接続されないものである。
【0034】
そして、電圧出力のあるもののうち、適宜の2つの導電部材50を選べば、任意の単セル間の電圧を測定することができる。
【0035】
<本実施例の優れた点>
本実施例によれば、電極51aにおける単セルの積層方向の幅D1は隣り合うセパレータ12,13同士の間隔S2より小さく設定され、かつ、隣り合う電極51a同士の間隔D2がセパレータ12,13における積層方向の厚みS1より小さく設定される。
【0036】
従って、FPC50をセルスタック10に取り付ければ、寸法上、各セパレータ12,13に、必ず少なくとも一つの電極51aが電気的に接続(本実施例の場合には接触)することになる。また、一つの電極51aが2つのセパレータ12,13に接続してしまうこともない。従って、FPC50をセルスタック10に取り付ける際に、位置決め作業をする必要がない。また、隣り合うセパレータ12,13間の間隔S2のバラツキがあっても、各セパレータ12,13に電極51aをより確実に接続させることができ、電圧を適
切に測定することができる。
【0037】
また、本実施例においては、押付部材としてのクリップ60によってFPC50を押し付けることで、電極51aをセパレータ12,13の側壁面により確実に接続させることができる。また、弾性部材70をクリップ60とFPC50との間に埋めるように設けることで、各種部材に寸法バラツキ(MEA11やセパレータ12,13の寸法バラツキやセルスタック10の表面に凹凸があるような場合)があっても、各電極51aのセパレータ12,13に対する押圧力を均等にすることができる。
【0038】
また、本実施例においては、電極51aはFPC本体表面から突出する突出部51bを有するので、電極51a(の突出部51bの先端)をセパレータ12,13の側壁面に対してより確実に接続させることができる。
【0039】
(実施例2)
図7には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、上記実施例1の構成に加え、電極とセルスタックの側壁面との間を埋めるように、異方性導電材料からなる異方性導電材が設けられる場合の構成を説明する。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0040】
図7は本発明の実施例2に係るセルスタックと配線との配置関係を説明する、断面で見た配置関係図の一部拡大図である。なお、この図7は上記実施例1における図6に相当する図である。
【0041】
本実施例においては、電極51aとセルスタックの側壁面との間を埋めるように、異方性導電材料からなる異方性導電材80が設けられている。この異方性導電材80としては、ACF(異方性導電膜)やACP(異方性導電ペースト)を好適例として挙げることができる。この異方性導電材80は、押圧した方向に導電性を示す特性を有するので、セパレータ12,13の側壁面と、各セパレータ12,13に対応した少なくとも一つの電極51aとの導通をより確実にすることができる。
【0042】
(その他)
上記実施例においては、FPCをセルスタックの側壁面に向けて押し付ける押付部材としてクリップを例にして説明したが、当該押付部材はクリップに限定されるものではない。例えば、クランプなど適宜のものを適用できる。また、図示の例においては、一つのセパレータに対して一つの電極が電気的に接続する場合の例を示したが、一つのセパレータに対して2つ以上の電極が電気的に接続しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る燃料電池における配線が取り付けられた状態を示す平面図の一部である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係る燃料電池における配線が取り付けられた状態を示す側面図(一部断面図)の一部である。
【図3】図3は本発明の実施例1に係るセルスタックと配線との配置関係を説明する配置関係図である。
【図4】図4は本発明の実施例1に係るセルスタックと配線との配置関係を説明する配置関係図である。
【図5】図5は図3中Aで示す部分の拡大図である。
【図6】図6は図4中Bで示す部分の拡大図である。
【図7】図7は本発明の実施例2に係るセルスタックと配線との配置関係を説明する、断面で見た配置関係図の一部拡大図である。
【図8】図8は従来例に係るセパレータとFPCにおける電極との位置関係を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
10 セルスタック
11 MEA
12,13 セパレータ
21,22 絶縁体
21a,22a 係止部
31,32 固定プレート
41 ボルト
42 ナット
50 導電部材
51a 電極
51b 突出部
52,53 フィルム
55 コネクタ
60 クリップ
61 アーム
70 弾性部材
80 異方性導電材
100 燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単セルが積層されて構成されるセルスタックの側壁面に配線が取り付けられ、該配線に設けられる複数の電極が各単セルに備えられるセパレータの側壁面にそれぞれ電気的に接続することで、単セル間の電圧を測定可能とする燃料電池用配線取付構造において、
前記電極における単セルの積層方向の幅は隣り合うセパレータ同士の間隔より小さく設定され、かつ、隣り合う電極同士の間隔がセパレータにおける積層方向の厚みより小さく設定されることを特徴とする燃料電池用配線取付構造。
【請求項2】
前記配線はフレキシブルプリントサーキットであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用配線取付構造。
【請求項3】
前記配線をセルスタックの側壁面に向けて押し付ける押付部材と、
該押付部材と配線との間を埋めるように設けられる弾性部材と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用配線取付構造。
【請求項4】
前記電極は配線本体表面から突出する突出部を有することを特徴とする請求項1,2または3に記載の燃料電池用配線取付構造。
【請求項5】
前記電極とセルスタックの側壁面との間を埋めるように、異方性導電材料からなる異方性導電材が設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の燃料電池用配線取付構造。
【請求項6】
複数の単セルが積層されて構成されるセルスタックの側壁面に取り付けられ、各単セルに備えられるセパレータの側壁面にそれぞれ電極を電気的に接続させることで、単セル間の電圧を測定可能とする燃料電池用配線において、
前記電極における単セルの積層方向の幅は隣り合うセパレータ同士の間隔より小さく設定され、かつ、隣り合う電極同士の間隔がセパレータにおける積層方向の厚みより小さく設定されることを特徴とする燃料電池用配線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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