説明

燃料電池用電極触媒層、この電極触媒層を備えた燃料電池用膜電極接合体、この膜電極接合体を備えた燃料電池および燃料電池用電極触媒層の製造方法

【課題】十分なプロトン伝導性とガス拡散性を確保し、反応活性点を増加させ出力性能を向上させた燃料電池用電極触媒層、この電極触媒層を備えた燃料電池用膜電極接合体、この膜電極接合体を備えた燃料電池および燃料電池用電極触媒層の製造方法を提供する。
【解決手段】燃料電池用電極触媒層21は、少なくとも表面に触媒物質1を備え、触媒物質1の表面が高分子電解質層3によって被覆されている複数の複合触媒粒子11と、高分子電解質が凝集することによって形成された複数の凝集体12とで構成される。複数の複合触媒粒子11を複数の凝集体12で連結するとともに、複数の凝集体12が、高分子電解質を溶かしてなる溶液を乾燥して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用電極触媒層、この電極触媒層を備えた燃料電池用膜電極接合体、この膜電極接合体を備えた固体高分子形の燃料電池および燃料電池用電極触媒層の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとを、触媒を含む電極で水の電気分解の逆反応を起こさせ、熱と同時に電気を生み出す発電システムである。この発電システムは、従来の発電方式と比較して高効率で低環境負荷、低騒音などの特徴を有し、将来のクリーンなエネルギー源として注目されている。用いるイオン伝導体の種類によってタイプがいくつかあり、プロトン伝導性高分子膜を用いたものは、固体高分子形燃料電池と呼ばれる。
【0003】
燃料電池の中でも固体高分子形燃料電池は、室温付近で使用可能なことから、車載用電源や家庭据置用電源などへの使用が有望視されており、近年、様々な研究開発が行われている。固体高分子形燃料電池は、高分子電解質膜の両面に一対の電極を配置させた接合体を、一対のセパレータ板で挟持してなる電池である。ここで、一対のセパレータ板は、前記電極の一方に水素を含有する燃料ガスを供給するためのガス流路を形成したセパレータ板と、前記電極の他方に酸素を含む酸化剤ガスを供給するためのガス流路を形成したセパレータ板とで構成される。一対の電極のうち燃料ガスを供給する電極を燃料極、酸化剤ガスを供給する電極を空気極と呼んでいる。これらの電極は、一般に、白金系の貴金属などの触媒物質を担持したカーボン粒子である触媒物質担持粒子と高分子電解質層とを積層した電極触媒層と、ガス通気性及び電子伝導性を兼ね備えたガス拡散層とからなっている。
なお、高分子電解質膜と、高分子電解質膜の一方の面に配置された空気極側の電極触媒層と、高分子電解質膜の他方の面に配置された燃料極側の電極触媒層とで膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;以下、MEAと称すことがある)と呼ばれる接合体を構成する。
【0004】
電極触媒層における燃料ガス、酸化剤ガスとの酸化還元反応の反応活性点は、電子伝導体とプロトン伝導体、および導入ガスが吸着しうる触媒の表面が接している三相界面と呼ばれる部分である。この三相界面の面積が大きく、かつ三相界面への電子、プロトン、導入ガスのそれぞれの供給パスを満足させることが、電極触媒層における酸化還元反応の円滑かつ効率よい進行へとつながる。このため、電極触媒層中の電子およびプロトン伝達経路、ガスの拡散経路などが充分に確保されることが必要である。
【0005】
従来、電極触媒層は、触媒とプロトン伝導性を有する高分子電解質と溶媒とを混合したインクを用いて基材上に形成することが多かった。
図3に、従来の形成法にて作製された燃料電池用電極触媒層の模式図を示す。
図3に示す電極触媒層121は、白金系の貴金属などの触媒物質101を表面に担持したカーボン粒子である触媒物質担持粒子102が複数凝集して形成され、触媒物質101及び触媒物質担持粒子102の表面がさらに高分子電解質層103で被覆された複数の複合触媒粒子111で構成される。触媒物質担持粒子102は電子伝導性を有し、その一方、高分子電解質層103はプロトン伝導性を有する。
【0006】
ここで、このような従来の形成法にて製作された電極触媒層121においては、触媒物質101の表面にある高分子電解質層103の量を調整しがたい。これは、触媒物質101が担持された触媒物質担持粒子102に1回の被覆により高分子電解質層103が形成されるため、高分子電解質層103の量の過不足が生じ、被覆過剰部分と被覆不足部分とが生じ、電極特性を向上させることができないということである。
即ち、図3に示すように触媒物質101近傍の高分子電解質層103が厚いとプロトン伝導性は確保できるが触媒物質101間の細孔の一部が閉塞しやすくガス拡散性の低下が起こりうる。また、逆に、触媒物質101近傍の高分子電解質層103が薄いとガス拡散性は確保できるが、プロトン伝導性が不十分になってしまうという問題がある。
【0007】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1では、触媒物質の表面に有孔性の高分子電解質層を被覆することでプロトン伝導性とガス拡散性の確保できる複合触媒が提案されている。また、特許文献2では、プロトン伝導性をより確実に確保するために複合粒子に熱処理を行い、触媒表面に被覆した高分子電解質層の溶出を防ぐ方法を示している。
一方、特許文献3では、電極触媒層は、高分子電解質層で被覆された触媒群(複合触媒粒子)と、電解質の凝集体である電解質群とが互いに接続されて、絡み合って構成されている。このため、被覆されている高分子電解質層の量を調整しやすく、プロトン伝導性とガス拡散性を両立しやすい電極触媒層となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−300324号
【特許文献2】特開平7−254419号
【特許文献3】特開平11−126615号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1および2に記載の方法では、プロトン伝導の経路が触媒物質に被覆した高分子電解質層のみであり、高分子電解質層の量でガス拡散性や電極触媒層の強度を詳細に調整することが困難である。
また、特許文献3に記載の方法では、電解質の凝集体が析出するような貧溶媒にて触媒インクを調製することから、高分子電解質の凝集体が析出するのみでなく、複合触媒粒子の凝集も起こりうるため、触媒の表面を十分に利用できないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、十分なプロトン伝導性とガス拡散性を確保し、反応活性点を増加させ出力性能を向上させた燃料電池用電極触媒層、この電極触媒層を備えた燃料電池用膜電極接合体、この膜電極接合体を備えた燃料電池および燃料電池用電極触媒層の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のうち請求項1に係る燃料電池用電極触媒層は、少なくとも表面に触媒物質を備え、該触媒物質の表面が高分子電解質層によって被覆されている複数の複合触媒粒子と、高分子電解質が凝集することによって形成された複数の凝集体とで構成され、前記複数の複合触媒粒子を前記複数の凝集体で連結するとともに、前記複数の凝集体が、高分子電解質を溶かしてなる溶液を乾燥して形成されることを特徴としている。
【0012】
この請求項1に係る燃料電池用電極触媒層によれば、少なくとも表面に触媒物質を備え、該触媒物質の表面がさらに高分子電解質層によって被覆されている複数の複合触媒粒子と、高分子電解質が凝集することによって形成された複数の凝集体とで構成され、複数の複合触媒粒子を複数の凝集体で連結しているので、電極触媒層内のプロトン伝導性を高めるだけでなく、ガス拡散性も確保することで反応活性点を増加させ出力性能を向上させることができる。高分子電解質で被覆した複合触媒粒子を用いた従来の電極触媒層では、触媒物質の表面にある高分子電解質層の量を調整しがたく、触媒表面のプロトン伝導性とガス拡散性を同時に十分に確保することができない。
【0013】
また、請求項1に係る燃料電池用電極触媒層によれば、複数の凝集体が、高分子電解質を溶かしてなる溶液を乾燥して形成されるので、触媒インクの作製に際し、乾燥温度により凝集体中の高分子電解質の溶媒への溶出量を制御することができ、これにより、複合触媒粒子の凝集を回避でき、触媒物質の表面を十分利用することができる。
また、本発明のうち請求項2に係る燃料電池用電極触媒層は、請求項1記載の燃料電池用電極触媒層において、前記複数の複合触媒粒子の各々は、前記触媒物質、又は、前記触媒物質を表面に担持した触媒物質担持粒子が複数凝集して形成され、前記触媒物質、又は、前記触媒物質及び前記触媒物質担持粒子の表面が前記高分子電解質層によって被覆されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明のうち請求項3に係る燃料電池用膜電極接合体は、プロトン伝導性高分子電解質膜と、該プロトン伝導性高分子電解質膜を挟む一対の燃料電池用電極触媒層とで構成される燃料電池用膜接合体において、前記一対の燃料電池用電極触媒層のうち少なくとも一方が、請求項1又は2のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒層からなることを特徴としている。
更に、本発明のうち請求項4に係る燃料電池は、請求項3に記載の燃料電池用膜電極接合体と、該燃料電池用膜電極接合体を挟持する一対のガス拡散層と、該一対のガス拡散層を挟持する一対のセパレータ板とを具備していることを特徴としている。
【0015】
また、本発明のうち請求項5に係る燃料電池用電極触媒層の製造方法は、燃料電池用電極触媒層の製造方法であって、
触媒物質、又は、該触媒物質を担持した触媒物質担持粒子と、高分子電解質とを溶媒に分散させた混合物を乾燥させ、前記高分子電解質で、前記触媒物質、又は、前記触媒物質を担持した触媒物質担持粒子及び前記触媒物質の表面を被覆して複数の複合触媒粒子を形成する工程と、
高分子電解質を溶かした溶液を乾燥させ、複数の凝集体を形成する工程と、
前記複合触媒粒子と前記凝集体とを溶媒に分散させ、触媒インクを作製する工程と、
ガス拡散層、転写シートおよび高分子電解質膜のうちから選択される基材上に、前記触媒インクを塗布して電極触媒層を形成する工程と、
を備えることを特徴としている。
【0016】
この請求項5に係る燃料電池用電極触媒層の製造方法によれば、高分子電解質で、触媒物質、又は、前記触媒物質を担持した触媒物質担持粒子及び前記触媒物質の表面を被覆した複数の複合触媒粒子と、高分子電解質が凝集することによって形成された複数の凝集体とで構成され、複数の複合触媒粒子を複数の凝集体で連結した燃料電池用電極触媒層を得ることができる。このため、電極触媒層内のプロトン伝導性を高めるだけでなく、ガス拡散性も確保することで反応活性点を増加させ出力性能を向上させることができる。高分子電解質で被覆した複合触媒粒子を用いた従来の電極触媒層の製造方法では、触媒物質の表面にある高分子電解質層の量を調整しがたく、触媒表面のプロトン伝導性とガス拡散性を同時に十分に確保することができない。
【0017】
また、請求項5に係る燃料電池用電極触媒層の製造方法によれば、複数の凝集体が、高分子電解質を溶かした溶液を乾燥して形成されるので、触媒インクの作製に際し、乾燥温度により凝集体中の高分子電解質の溶媒への溶出量を制御することができ、これにより、複合触媒粒子の凝集を回避でき、触媒物質の表面を十分利用することができる。
また、本発明のうち請求項6に係る燃料電池用電極触媒層の製造方法は、請求項5記載の燃料電池用電極触媒層の製造方法において、前記複数の複合触媒粒子を形成する工程における乾燥温度が、前記複数の凝集体を形成する乾燥温度と等しいか高いことを特徴としている。
この請求項6に係る燃料電池用電極触媒層の製造方法によれば、複数の複合触媒粒子を形成する工程における乾燥温度が、複数の凝集体を形成する乾燥温度と等しいか高いことにより、複合触媒粒子中の高分子電解質よりも凝集体中の高分子電解質が溶媒に溶解しやすくすることができる。
【0018】
また、本発明のうち請求項7に係る燃料電池用電極触媒層の製造方法は、請求項5又は6記載の燃料電池用電極触媒層の製造方法において、前記複数の複合触媒粒子を形成する工程における乾燥温度が、50℃以上180℃以下の範囲内であることを特徴としている。
この請求項7に係る燃料電池用電極触媒層の製造方法によれば、複数の複合触媒粒子を形成する工程における乾燥温度を、50℃以上180℃以下の範囲内とすることにより、複合触媒粒子における高分子電解質のプロトン伝導性の阻害を回避でき、出力性能を向上させることができる。この乾燥温度が50℃に満たない場合には、触媒インクを作製する工程で、複合触媒粒子における高分子電解質の多くが溶媒に溶解し、形成した反応活性点の減少によって出力が向上しない場合がある。一方、この乾燥温度が180℃を超える場合には、複合触媒粒子における高分子電解質のプロトン伝導性が阻害され、出力性能が向上しない場合がある。
【0019】
更に、本発明のうち請求項8に係る燃料電池用電極触媒層の製造方法は、請求項5乃至7のうちいずれか一項に記載の燃料電池用電極触媒層の製造方法において、前記複数の凝集体を形成する工程における乾燥温度が、30℃以上140℃以下の範囲内であることを特徴としている。
この請求項8に係る燃料電池用電極触媒層の製造方法によれば、複数の凝集体を形成する工程における乾燥温度を、30℃以上140℃以下の範囲内とすることにより、電極触媒層内での凝集体の量が十分となり、プロトン伝導性の低下を抑制し、出力性能を向上させることができる。この乾燥温度が30℃に満たない場合には、触媒インクを作製する工程で、凝集体の多くが溶媒に溶解し、電極触媒層内で凝集体の量が不十分となり出力性能が向上しない場合がある。その一方、この乾燥温度が140℃を超える場合には、凝集体の触媒インクの溶媒への溶出がしがたくなり、電極触媒層内のプロトン伝導性が低下し、出力性能が向上しない場合がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電極触媒層が、複数の複合触媒粒子と、高分子電解質が凝集することによって形成された複数の凝集体とで構成され、複数の複合触媒粒子を複数の凝集体で連結しているので、電極触媒層内のプロトン伝導性を高めるだけでなく、ガス拡散性も確保することで反応活性点を増加させ出力性能を向上させた燃料電池用電極触媒層、この電極触媒層を備えた燃料電池用膜電極接合体、この膜電極接合体を備えた燃料電池および燃料電池用電極触媒層の製造方法を提供できる。
【0021】
また、本発明によれば、高分子電解質で被覆された複合触媒粒子および凝集体を分散させた触媒インク組成の自由度が高く、複合触媒粒子の凝集を防ぎ触媒の表面を十分に利用できるため、反応活性点を増加させ出力性能を向上させた燃料電池用電極触媒層、この電極触媒層を備えた燃料電池用膜電極接合体、この膜電極接合体を備えた燃料電池および燃料電池用電極触媒層の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る燃料電池用電極触媒層の構造を示す模式図である。
【図2】本発明に係る燃料電池の分解模式図である。
【図3】従来の形成法にて作製された燃料電池用電極触媒層の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態に係る燃料電池用電極触媒層について説明する。なお、本発明の実施の形態は、以下に記載する実施の形態に限定されうるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の実施の形態の範囲に含まれうるものである。
【0024】
図1に示す燃料電池用電極触媒層(以下、単に電極触媒層という)21は、固体高分子形燃料電池に用いられるものであり、複数の複合触媒粒子11と、高分子電解質が凝集することによって形成された複数の凝集体12とを備え、複数の複合触媒粒子11を複数の凝集体12で連結して構成される。
ここで、各複合触媒粒子11は、白金系の貴金属などの触媒物質1を表面に担持したカーボン粒子である触媒物質担持粒子2が複数凝集して形成され、触媒物質1及び触媒物質担持粒子2の表面がさらに高分子電解質層3で被覆されている。触媒物質担持粒子2は電子伝導性を有し、その一方、高分子電解質層3はプロトン伝導性を有する。
【0025】
なお、各複合触媒粒子11は、高分子電解質層3で触媒物質1のみを被覆し、電子伝導性を有する触媒物質担持粒子2を含まなくてもよい。この場合、後に述べる触媒インクの調製において、電子伝導性物質を混合する必要がある。即ち、各複合触媒粒子11は、少なくとも表面に触媒物質1を備え、触媒物質1の表面がさらに高分子電解質層3によって被覆されていればよい。
【0026】
各複合触媒粒子11における触媒物質1としては、白金が好適に使用されるが、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属又はこれらの合金、または酸化物、複酸化物等を用いても何ら問題はない。
【0027】
また、複合触媒粒子における触媒担持粒子2は、電子伝導性を有する物質であり、炭素粒子が好適に使用される。炭素粒子の種類は、微粒子状で導電性を有し、触媒におかされないものであればどのようなものでも構わないが、カーボンブラックやグラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンが使用できる。
炭素粒子の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると電極触媒層21のガス拡散性が低下したり、触媒の利用率が低下したりするので、10〜1000nm程度が好ましい。更に好ましくは、10〜100nmが良い。
【0028】
各複合触媒粒子11に含まれる高分子電解質層3、および各凝集体12を形成する高分子電解質としては、プロトン伝導性を有するものであれば良く、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質を用いることができる。なお、電極触媒層21内の密着性を考慮すると、各複合触媒粒子11に含まれる高分子電解質粗3と凝集体を形成する高分子電解質には同様の材料を用いることが好ましい。
【0029】
次に、本発明の実施の形態に係る燃料電池用膜電極接合体及びこの膜電極接合体を備えた燃料電池について説明する。図2は、本発明に係る燃料電池の分解模式図である。
図2に示す燃料電池40は、固体高分子形燃料電池であり、高分子電解質膜23の両面に一対の電極26,27を配置させた接合体を、一対のセパレータ板30a,30bで挟持して構成される。ここで、一対の電極26,27のうち酸素を含む酸化剤ガスを供給する電極26を空気極(カソード)、水素を含有する燃料ガスを供給する電極27を燃料極(アノード)と呼んでいる。
【0030】
ここで、空気極である電極26は、高分子電解質膜23の上面に配置された電極触媒層21と、電極触媒層21の上面に配置されたガス拡散層24とで構成されている。電極触媒層21は、図1に示した電極触媒層21と同様の構成のものである。
また、燃料極である電極27は、高分子電解質膜23の下面に配置された電極触媒層22と、電極触媒層22の下面に配置されたガス拡散層25とで構成されている。電極触媒層22は、図1に示した電極触媒層21と同様の構成のものである。
一対の電極触媒層21,22は高分子電解質膜23を挟持している。
【0031】
本発明の実施の形態に係る燃料電池用膜電極接合体(以下、単に膜電極接合体という)31は、高分子電解質膜23と、この高分子電解質膜23を挟持する一対の電極触媒層21,22とで構成されている。ここで、一対の電極触媒層21,22のうち少なくとも一方が図1に示した構造を有すればよく、他方は図3に示す電極触媒層120と同様の構成であってもよい。
【0032】
そして、膜電極接合体31を備えた燃料電池40は、膜電極接合体31と、膜電極接合体31を挟持する前記した一対のガス拡散層24,25と、一対のガス拡散層24,25を挟持する前記した一対のセパレータ板30a,30bとで構成される。
空気極である電極26側のガス拡散層24上に配置されるセパレータ板30aの下面には、ガス流通用のガス流路28が形成され、その一方、セパレータ板30aの上面には、冷却水流通用の冷却水水路29が形成される。セパレータ板30aは、導電性でかつ不透過性の材料で作製される。
一方、燃料極である電極27側のガス拡散層25下に配置されるセパレータ板30bの上面には、ガス流通用のガス流路28が形成され、その一方、セパレータ板30bの下面には、冷却水流通用の冷却水水路29が形成される。セパレータ板30bは、導電性でかつ不透過性の材料で作製される。
【0033】
そして、燃料電池40においては、燃料極である電極27側のセパレータ板30のガス流路28からは燃料ガスとして、例えば水素ガスが供給される。一方、空気極である電極26側のセパレータ板30のガス流路28からは、酸化剤ガスとして、例えば酸素を含むガスが供給される。そして、燃料ガスの水素と酸素ガスとを触媒の存在下で電極反応させることにより、燃料極である電極27と空気極である電極26の間に起電力を生じることができる。
【0034】
図2に示した燃料電池40は、一対のセパレータ板30a,30bによって高分子電解質膜23、電極触媒層21、22、ガス拡散層24、25が狭持された、いわゆる単セル構造の固体高分子形燃料電池である。但し、本発明にあっては、セパレーター板30a,30bを介して複数のセルを積層して燃料電池とすることもできる。
また、膜電極接合体31に用いられる高分子電解質膜23としては、プロトン伝導性を有するものであればよく、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質を用いることができる。なお、電極触媒層21,22と高分子電解質膜23との密着性を考慮すると、高分子電解質膜23は、電極触媒層21,22と同一の材料を用いることが好ましい。
【0035】
次に、図1に示す電極触媒層21の製造方法について説明する。
電極触媒層21は、以下に述べる複合触媒粒子11の形成工程、凝集体12の形成工程、触媒インクの作製工程、及び電極触媒層の形成工程により製造される。
電極触媒層21の製造に際し、先ず、触媒物質1を担持した触媒物質担持粒子2と、高分子電解質膜3を構成する高分子電解質とを溶媒に分散させた混合物を乾燥させ、触媒物質1を担持した触媒物質担持粒子2及び触媒物質1の表面を高分子電解質で被覆して複数の複合触媒粒子11を形成する(複合触媒粒子の形成工程)。
【0036】
ここで、触媒物質1のみと高分子電解質とを溶媒に分散させた混合物を乾燥させ、高分子電解質で触媒物質1の表面を被覆して複数の複合触媒粒子11を形成してもよい。
この複合触媒粒子11の形成工程にあっては、複合触媒粒11子中の触媒物質1もしくは触媒物質1を担持した触媒物質担持粒子2と高分子電解質との重量比を溶媒に分散させた混合物の組成で制御することができる。また、複合触媒粒子11を形成する工程にあっては、乾燥温度により複合触媒粒子11中の高分子電解質の溶媒への溶出量を制御することができる。
【0037】
この複合触媒粒子11の形成工程にあっては、乾燥温度が50℃以上180℃以下であることが好ましい。乾燥温度が50℃に満たない場合にあっては、触媒インクを作製する工程で、複合触媒粒子11における高分子電解質の多くが溶媒に溶解し、形成した反応活性点の減少によって出力性能が向上しない場合がある。また、乾燥温度が180℃を超える場合にあっても、複合触媒粒子11における高分子電解質のプロトン伝導性が阻害され、出力性能が向上しない場合がある。
【0038】
複合触媒粒子11の形成工程の後、高分子電解質を溶かした溶液を乾燥させ、複数の凝集体12を形成する(凝集体の形成工程)。
凝集体12の形成工程にあっては、乾燥温度により、凝集体中の高分子電解質の溶媒への溶出量を制御することができる。
この凝集体12の形成工程にあっては、乾燥温度が30℃以上140℃以下であることが好ましい。乾燥温度が30℃に満たない場合にあっては、触媒インクを作製する工程で、凝集体12の多くが溶媒に溶解し、電極触媒層21内で凝集体12の量が不十分となり出力性能が向上しない場合がある。また、乾燥温度が140℃を超える場合にあっては、触媒インクの溶媒への溶出がしがたくなり、電極触媒層21内のプロトン伝導性が低下し、出力性能が向上しない場合がある。
【0039】
複合触媒粒子11の形成工程における乾燥温度と凝集体12の形成工程における乾燥温度にあっては、複合触媒粒子11の形成工程における乾燥温度が、凝集体12の形成工程における乾燥温度よりも高いか、等しくても構わないが、複合触媒粒子11中の高分子電解質よりも凝集体12が溶媒に溶解しやすい乾燥温度であることが好ましい。
凝集体12の形成工程の後、複合触媒粒子11と凝集体12とを溶媒に分散させ、触媒インクを作製する(触媒インクの作製工程)。この触媒インクの作製工程においては、電極触媒層21中の複合触媒粒子11と凝集体12との重量比を触媒インクの組成で制御することができる。
【0040】
ここで、分散媒として使用される溶媒は、触媒物質1や高分子電解質を浸食することがなく、高分子電解質を流動性の高い状態で溶解または微細ゲルとして分散できるものあれば特に制限はない。しかし、揮発性の有機溶媒が少なくとも含まれることが望ましく、特に限定されるものではないが、アルコール類やケトン系溶剤、エーテル系溶剤、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジアセトンアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどの極性溶剤などが使用される。また、これらの溶剤のうち二種以上を混合させたものも使用できる。
【0041】
また、触媒物質1の分散媒として低級アルコールを用いる場合には発火の危険性が高く、このような溶媒を用いる際は水との混合溶媒にするのが好ましい。高分子電解質となじみがよい水が含まれていてもよい。水の添加量は、高分子電解質が分離して白濁を生じたり、ゲル化したりしない程度であれば特に制限はない。
複合触媒粒子11の形成工程及び凝集体12の形成工程にあっては、必要に応じて分散処理がおこなわれる。複合触媒粒子11および凝集体12の粒子サイズは、それぞれの工程における分散処理の条件によって制御することができる。また、触媒インクの作製にあっても必要に応じて分散処理が行われる。触媒インクの粘度、粒子のサイズは、触媒インクの分散処理の条件によって制御することができる。
【0042】
分散処理は、様々な装置を用いておこなうことができる。例えば、分散処理としては、ボールミルやロールミルによる処理、超音波分散処理などが挙げられる。
触媒インク中の固形分含有量は、多すぎると触媒インクの粘度が高くなるため電極触媒層21の表面にクラックが入りやすくなり、また逆に少なすぎると成膜レートが非常に遅く、生産性が低下してしまうため、1〜50質量%であることが好ましい。
固形分は触媒物質および電子伝導性物質と高分子電解質からなるが、電子伝導性物質多くすると、電子伝導性物質は嵩高い物質が好適に用いられるため、同じ固形分含有量でも粘度は高くなり、少なくすると粘度は低くなる。また、このときの触媒インクの粘度は、0.1〜500cP程度が好ましく、さらに好ましくは5〜100cPが良い。また触媒インクの分散時に分散剤を添加することで、粘度の制御をすることもできる。
【0043】
また、触媒インクに造孔剤が含まれても良い。
造孔剤は、電極触媒層21の形成後に除去することで、細孔を形成することができる。
酸やアルカリ、水に溶ける物質や、ショウノウなどの昇華する物質、熱分解する物質などを挙げることができる。温水で溶ける物質であれば、発電時に発生する水で取り除いても良い。
そして、触媒インクの作製工程の後、ガス拡散層、転写シートおよび高分子電解質膜のうちから選択される基材上に、触媒インクを塗布し、乾燥工程を経て電極触媒層21を形成する(電極触媒層の形成工程)。これにより、電極触媒層21が完成する。
【0044】
ここで、基材として、ガス拡散層もしくは転写シートを用いた場合には、接合工程によって高分子電解質膜の両面に電極触媒層21は接合される。また、本発明の膜電極接合体31にあっては、基材として高分子電解質膜を用い、高分子電解質膜の両面に直接触媒インクを塗布し、高分子電解質膜両面に直接電極触媒層を形成することもできる。
このとき、触媒インクの塗布方法としては、ドクターブレード法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などを用いることができる。
【0045】
電極触媒層の作製工程で用いられる基材としては、ガス拡散層、転写シートもしくは高分子電解質膜を用いることができる。ガス拡散層としては、ガス拡散性と導電性とを有する材質のものを用いることができる。また転写シートとしては、転写性がよい材質であればよく、例えばフッ素樹脂製のフィルムを用いることができる。
基材として転写シートを用いた場合には、高分子電解質膜23に電極触媒層21,22を接合後に転写シートを剥離し、高分子電解質膜23の両面に電極触媒層21,22を備える膜電極接合体31とすることができる。基材としてガス拡散層を接合工程後にガス拡散層である基材を剥離する必要は無い。
【0046】
以上述べた電極触媒層21の製造方法により、触媒物質1を表面に担持した触媒物質担持粒子2が複数凝集して形成され、触媒物質1及び触媒物質担持粒子2の表面が高分子電解質層3によって被覆されている複数の複合触媒粒子11と、高分子電解質が凝集することによって形成された複数の凝集体12とで構成され、複数の複合触媒粒子11を複数の凝集体12で連結した電極触媒層21が得られる。この電極触媒層21によれば、電極触媒層21内のプロトン伝導性を高めるだけでなく、ガス拡散性も確保することで反応活性点を増加させ出力性能を向上させることができる。高分子電解質で被覆した複合触媒粒子を用いた従来の電極触媒層及びその製造方法では、触媒物質の表面にある高分子電解質層の量を調整しがたく、触媒表面のプロトン伝導性とガス拡散性を同時に十分に確保することができない。また、高分子電解質層3で触媒物質1を被覆したのみでは、高分子電解質の量でガス拡散性や電極触媒層の強度を詳細に調整することが困難である。
【0047】
また、複数の凝集体12が、高分子電解質を溶かしてなる溶液を乾燥して形成されるので、触媒インクの作製に際し、乾燥温度により凝集体12中の高分子電解質の溶媒への溶出量を制御することができ、これにより、複合触媒粒子11の凝集を回避でき、触媒物質1の表面を十分利用することができる。触媒インクの分散溶媒として高分子電解質の凝集体を析出させる様な貧溶媒を用いる製造方法では、高分子電解質の凝集体が析出するのみでなく、複合触媒粒子の凝集も起こりうるため、触媒の表面を十分に利用できない。
【0048】
燃料電池40におけるガス拡散層24,25およびセパレータ板30a,30bとしては、通常の燃料電池に用いられているものを用いることができる。具体的にはガス拡散層24,25としてはカーボンクロス、カーボンペーパー、不織布などのポーラスカーボン材を用いることができる。セパレータ板30a,30bとしては、カーボンタイプあるいは金属タイプのものなどを用いることができる。燃料電池40としては、ガス供給装置、冷却装置などその他付随する装置を組み立てることにより製造される。
【実施例】
【0049】
本発明における燃料電池用電極触媒層、この電極触媒層を備えた燃料電池用膜電極接合体、この膜電極接合体を備えた燃料電池および燃料電池用電極触媒層の製造方法について、以下に具体的な実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明は下記実施例によって制限されるものではない。
【0050】
(実施例)
〔複合触媒粒子の形成方法〕
図1において、触媒物質1を担持した触媒物質担持粒子2と、高分子電解質層3を構成する高分子電解質溶液(Nafion:登録商標、デュポン社製)とを加えた溶媒に分散処理を行い、当該触媒物質担持粒子2と高分子電解質層3の混合物を作製した。続いて、ドクターブレードにより混合物を基材上に塗布し、大気雰囲気中120℃で5分間乾燥させた。その後、複合触媒粒子11を基材上から回収した。
【0051】
〔凝集体の形成方法〕
高分子電解質溶液(Nafion:登録商標、デュポン社製)を加えた溶媒に分散処理を行い、ドクターブレードにより基材上に塗布し、大気雰囲気中70℃で5分間乾燥させた。その後、凝集体12を基材上から回収した。
〔触媒インクの作製〕
基材上から回収した複合触媒粒子11と基材上から回収した凝集体12を溶媒中で混合し、分散処理を行った。
【0052】
〔電極触媒層の形成方法〕
作製された触媒インクをドクターブレードにより転写シートに塗布し、大気雰囲気中80℃で5分間乾燥させ、これにより電極触媒層21を形成した。電極触媒層21の厚さは、触媒物質1の量が0.3mg/cmになるように調節し、電極触媒層21を形成した。
【0053】
(比較例)
〔複合触媒粒子の形成方法〕
実施例と同様の手法で、複合触媒粒子の形成を行った。
〔凝集体の形成方法〕
高分子電解質溶液(Nafion:登録商標、デュポン社製)を有機溶媒に少量ずつ添加し、分散処理を行い、電解質の凝集体を含む溶液を得た。
【0054】
〔触媒インクの作製〕
複合触媒粒子と電解質の凝集体を含む溶液を溶媒中で混合し、分散処理を行った。
〔電極触媒層の形成方法〕
実施例と同様の手法で、転写シートに触媒インクを塗布し、乾燥させ、これにより電極触媒層121を形成した。電極触媒層121の厚さは触媒物質101の量が0.3mg/cmになるように調節し、電極触媒層121を形成した。
【0055】
〔膜電極接合体及び燃料電池の作製〕
(実施例)および(比較例)において作製した電極触媒層21,121が形成された基材を5cmの正方形に打ち抜き、図2における高分子電解質膜(Nafion212:登録商標、デュポン社製)23の両面に対面するように転写シートを配置し、130℃でホットプレスを行い、膜電極接合体31を得た。得られた膜電極接合体31の両面に、ガス拡散層24,25として目処め層が形成されたカーボンクロスを配置し、更に、一対のセパレータ板30で挟持し、単セルの固体高分子形燃料電池40を作製した。
【0056】
〔発電特性〕
(評価条件)
東陽テクニカ社製GFT−SG1の燃料電池測定装置を用いて、セル温度80℃で発電特性評価を行った。燃料ガスとして水素ガス、酸化剤ガスとして空気ガスを用い、流量一定による流量制御を行った。
(測定結果)
発電評価を行ったところ、実施例の固体高分子形燃料電池は、プロトン伝導性が高まるとともにガス拡散性を十分に保つことができたため、比較例に比べて高出力でフラッディングが抑制され、良好な発電特性を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る燃料電池用電極触媒層は、少なくとも表面に触媒物質を備え、該触媒物質の表面が高分子電解質層によって被覆されている複数の複合触媒粒子と、高分子電解質が凝集することによって形成された複数の凝集体とで構成され、前記複数の複合触媒粒子を前記複数の凝集体で連結するとともに、前記複数の凝集体が、高分子電解質を溶かしてなる溶液を乾燥して形成されることを特徴としている。
【0058】
また、本発明に係る燃料電池用電極触媒層の製造方法は、燃料電池用電極触媒層の製造方法であって、触媒物質、又は、該触媒物質を担持した触媒物質担持粒子と、高分子電解質とを溶媒に分散させた混合物を乾燥させ、前記高分子電解質で、前記触媒物質、又は、前記触媒物質を担持した触媒物質担持粒子及び前記触媒物質の表面を被覆して複数の複合触媒粒子を形成する工程と、高分子電解質を溶かした溶液を乾燥させ、複数の凝集体を形成する工程と、前記複合触媒粒子と前記凝集体とを溶媒に分散させ、触媒インクを作製する工程と、ガス拡散層、転写シートおよび高分子電解質膜のうちから選択される基材上に、前記触媒インクを塗布して電極触媒層を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
これにより、触媒表面への十分なプロトン伝導性とガス拡散性を確保することで、反応活性点を増加させ出力性能を向上させた燃料電池を提供することができる。したがって、従来の製造方法よりも発電特性が良好な燃料電池を提供でき、さらには触媒使用量の削減にも繋がることからコスト削減の可能性を有するため、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0059】
1 触媒物質
2 触媒物質担持粒子
3 高分子電解質層
11 複合触媒粒子
12 凝集体
21,22 電極触媒層
23 高分子電解質膜
24,25 ガス拡散層
26 電極(空気極)
27 電極(燃料極)
28 ガス流路
29 冷却水流路
30a セパレータ板
30b セパレータ板
31 膜電極接合体
40 燃料電池
101 触媒物質
102 触媒物質担持粒子
103 高分子電解質層
111 複合触媒粒子
121 電極触媒層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面に触媒物質を備え、該触媒物質の表面が高分子電解質層によって被覆されている複数の複合触媒粒子と、高分子電解質が凝集することによって形成された複数の凝集体とで構成され、
前記複数の複合触媒粒子を前記複数の凝集体で連結するとともに、前記複数の凝集体が、高分子電解質を溶かしてなる溶液を乾燥して形成されることを特徴とする燃料電池用電極触媒層。
【請求項2】
前記複数の複合触媒粒子の各々は、前記触媒物質、又は、前記触媒物質を表面に担持した触媒物質担持粒子が複数凝集して形成され、前記触媒物質、又は、前記触媒物質及び前記触媒物質担持粒子の表面が前記高分子電解質層によって被覆されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用電極触媒層。
【請求項3】
プロトン伝導性高分子電解質膜と、該プロトン伝導性高分子電解質膜を挟む一対の燃料電池用電極触媒層とで構成される燃料電池用膜接合体であって、
前記一対の燃料電池用電極触媒層のうち少なくとも一方が、請求項1又は2記載の燃料電池用電極触媒層からなることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池用膜電極接合体と、該燃料電池用膜電極接合体を挟持する一対のガス拡散層と、該一対のガス拡散層を挟持する一対のセパレータ板とを具備していることを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
燃料電池用電極触媒層の製造方法であって、
触媒物質、又は、該触媒物質を担持した触媒物質担持粒子と、高分子電解質とを溶媒に分散させた混合物を乾燥させ、前記高分子電解質で、前記触媒物質、又は、前記触媒物質を担持した触媒物質担持粒子及び前記触媒物質の表面を被覆して複数の複合触媒粒子を形成する工程と、
高分子電解質を溶かした溶液を乾燥させ、複数の凝集体を形成する工程と、
前記複合触媒粒子と前記凝集体とを溶媒に分散させ、触媒インクを作製する工程と、
ガス拡散層、転写シートおよび高分子電解質膜のうちから選択される基材上に、前記触媒インクを塗布して電極触媒層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする燃料電池用電極触媒層の製造方法。
【請求項6】
前記複数の複合触媒粒子を形成する工程における乾燥温度が、前記複数の凝集体を形成する乾燥温度と等しいか高いことを特徴とする請求項5記載の燃料電池用電極触媒層の製造方法。
【請求項7】
前記複数の複合触媒粒子を形成する工程における乾燥温度が、50℃以上180℃以下の範囲内であることを特徴とする請求項5又は6記載の燃料電池用電極触媒層の製造方法。
【請求項8】
前記複数の凝集体を形成する工程における乾燥温度が、30℃以上140℃以下の範囲内であることを特徴とする請求項5乃至7のうちいずれか一項に記載の燃料電池用電極触媒層の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−204605(P2011−204605A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73071(P2010−73071)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】