説明

燃料電池発電システムおよび燃料電池の出力制御方法

【課題】燃料電池の起動時における電圧電流制御を自動で行うこと。
【解決手段】燃料電池1と、燃料電池1の出力電圧を検出する電圧検出器31と、燃料電池1の出力電圧と電流変化率とを関連付ける関連情報から、該電圧検出器31により検出された該出力電圧に対応する電流変化率を取得し、取得した該電流変化率に基づいて電流指令値を設定する制御装置35とを備え、該電流指令値に基づいて燃料電池1の出力を制御する燃料電池発電システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池によって発電を行う燃料電池発電システムおよび燃料電池の出力制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」という。)を利用した発電システムが提案されている。例えば、特許文献1には、SOFCによって発電するSOFC発電機と、ガスタービンによって発電するガスタービン発電機とを組み合わせたハイブリッド発電システムにおいて、SOFC発電機等に対する温度制約を維持しながらSOFC発電機への負荷要件を満たすようにSOFCを制御する制御方法が開示されている。より具体的には、ハイブリッド発電システムに要求される総合要求出力を、SOFCの温度制約を満たすように、SOFC発電機およびガスタービン発電機にうまく割り当て、それぞれに割り当てられた要求出力を満足するように各発電機を制御することが開示されている。SOFC発電機の出力は、需要電流だけでなく、燃料利用度、温度、および圧力をキーパラメータとして決定される。
【特許文献1】特開2006−294621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したSOFCの運転においては、温度に応じて電圧制限値、電流制限値が設定されている。このため、温度が徐々に上昇するSOFCの起動時においては、常に、温度を監視し、その温度に対応する電圧制限値および電流制限値を超えないように、両者をうまく制御しながら定格運転に至らしめなければならない。
従来、この作業は、熟練した作業員が温度、電圧、電流を監視しながら、それぞれの制限範囲を超えないように、電圧、電流を手動で制御していた。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、燃料電池の起動時における電圧電流制御を自動で行うことの可能な燃料電池発電システムおよび燃料電池の出力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、燃料電池と、前記燃料電池の出力電圧を検出する電圧検出手段と、前記燃料電池の出力電圧と電流変化率とを関連付ける関連情報から、該電圧検出手段により検出された該出力電圧に対応する電流変化率を取得し、取得した該電流変化率に基づいて電流指令値を設定する制御手段とを備え、該電流指令値に基づいて前記燃料電池の出力を制御する燃料電池発電システムを提供する。
【0006】
このような構成によれば、燃料電池の出力電圧と電流変化率とを関連付ける関連情報に基づいて、出力電圧に適した電流変化率が取得され、この電流変化率に基づいて電流指令値が設定される。これにより、この電流指令値に基づいて燃料電池の出力を制御することで、最適な出力制御を行うことが可能となる。
【0007】
上記燃料電池発電システムにおいて、前記所定の電圧閾値は、前記燃料電池の温度特性に基づいて設定されていてもよい。
【0008】
このように、所定の電圧閾値を燃料電池の温度特性に基づいて設定しているので、燃料電池の温度調節を適切に行いながら、電圧電流制御を行うことができる。
【0009】
上記燃料電池発電システムにおいて、前記関連情報は、前記燃料電池の出力電圧が所定の閾値以下となった場合に、前記電流変化率を減少させるように設定されているとよい。
【0010】
このように、燃料電池の出力電圧が所定の電圧閾値以下となった場合には、燃料電池の電流指令値の変化率を減少させる。これにより、燃料電池の出力電流の変化率が徐々に減少し、この電流変化率の減少を受けて出力電圧が徐々に上昇し、電圧閾値以上に回復する。このように電圧に応じて電流指令値の変化率を変化させることにより、出力電圧および出力電流を適切な電流電圧範囲内において自動で制御することができ、作業者等の負担を軽減することが可能となる。
【0011】
上記燃料電池発電システムにおいて、前記燃料電池は、固体酸化物型燃料電池である。
【0012】
本発明は、燃料電池の出力電圧を検出し、前記燃料電池の出力電圧と電流変化率とを関連付ける関連情報から、該燃料電池の出力電圧に対応する電流変化率を取得し、取得した該電流変化率に基づいて電流指令値を設定し、該電流指令値に基づいて前記燃料電池の出力を制御する燃料電池の出力制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料電池の起動時における電圧電流制御を自動で行うことができ、作業者の負担を軽減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る燃料電池発電システムおよびその運転制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池発電システムの概略構成を示す図である。図1に示すように、燃料電池発電システムは、燃料電池1、改質器2、空気予熱器3、燃焼器4、再循環ブロワ5、および予熱ヒータ6を備えて構成されている。
【0015】
上記燃料電池1は、例えば、SOFCである。燃料電池1には、改質器2から出力された燃料ガスが流入する燃料流入部21と、燃料電池1内を流通した燃料ガスが排出される燃料排出部22、空気予熱器3からの空気が流入する空気流入部23、および燃料電池1内を流通した空気が排出される空気排出部24とが設けられている。
【0016】
改質器2は、燃料電池1の空気排出部24から排出された高温の空気が内部を流通するように構成されており、この高温の空気によって、外部から供給される燃料ガス(例えば、都市ガスや天然ガスなど)を加熱して燃料電池1に供給する。また、改質器2は、燃料ガスを改質する機能も有している。
空気予熱器3は、改質器2を流通した高温の空気が供給されるように構成されている。空気予熱器3は、改質器2から供給される高温の空気によって、外部から供給される空気(酸化剤ガス)を予熱し、燃料電池1に供給するとともに、予熱に用いた高温の空気を燃焼器4に供給する。
燃焼器4は、燃料排出部22から排出された燃料排ガスが供給されるとともに、空気予熱器3から予熱利用済みの空気が供給されるようになっている。燃焼器4は、燃料電池1の燃料排出部22から排出された燃料排ガス中に含まれる未燃の燃料ガスと空気予熱器3から供給された高温の空気とを混合し、燃焼させる。
【0017】
再循環ブロワ5は、燃料電池1の燃料排出部22から排出された燃料排ガスの一部を分岐して、改質器2に再度流通させ、燃料排ガス中に含まれる未燃の燃料ガスを再利用する。
予熱ヒータ6は、燃料電池1内に設置され、電力の供給を受けて熱を発生させるヒータであり、燃料電池1の起動時において、空気と昇温用燃料ガスとが燃料電池1内の燃焼触媒において反応を起こす所定の温度に達するまで、燃料電池1内の燃料電池セルを加熱するものである。
なお、本実施形態では、予熱ヒータ6を燃料電池1内に設置し、電力によって熱を発生する構成としたが、燃料電池1に供給される空気を燃料電池1の外部で種々の方法により加熱する構成としてもよく、また、燃料電池1内の燃料電池セルを加熱できるならば、どのような手段を用いてもよい。また、本実施形態では改質器2を燃料電池1の外部に設置する構成としたが、燃料電池1の内部に改質器2を設置してもよい。
【0018】
次に、上記構成を備える燃料電池発電システムの基本的な動作について説明する。
まず、燃料電池1の起動時においては、燃料電池1内において、予熱ヒータ6により燃料電池1内の燃料電池セルを加熱する。そして、燃料電池セルが自己発電可能な温度(例えば600℃)まで加熱されると、燃料ガスが改質器2を介して燃料電池1の燃料供給部21へ供給され、燃料電池1内において燃料電池セルによる発電が開始される。燃料電池セルは、発電するとともに発熱(自己発電発熱)することによって、加熱される。また、自己発電発熱が開始されると、予熱ヒータ6は停止される。
【0019】
燃料電池セルによる発電の開始後において、改質器2に外部から供給される燃料ガスは、燃料電池1の空気排出部24から排出された高温空気の熱により、水素および一酸化炭素に改質された後、燃料電池1の燃料供給部21を介して燃料電池1内部に流入する。
更に、改質器2において燃料ガスの予熱に利用された高温空気は、空気予熱器3に送られ、空気予熱器3において、この高温空気を用いた空気(酸化剤ガス)の加熱が行われる。加熱された空気(酸化剤ガス)は、空気予熱器3から燃料電池1の空気流入部23を経由して燃料電池1内部に流入する。
燃料電池1内に流入した燃料ガスおよび加熱空気は、燃料電池セルに供給され、燃料電池セルにおける発電に用いられる。
【0020】
発電に用いられた後の燃料排ガスは、燃料電池1の燃料排出部22を経由して燃料電池1から排出される。排出された燃料排ガスの一部は再循環ブロワ5を介して、改質器2に再度導入されて未燃の燃料ガスが再利用され、また、残りは燃焼器4に導かれ、この燃焼器4において、空気予熱器3から供給される高温空気と混合されて未燃分が燃焼される。
【0021】
一方、上述したように、燃料電池1の起動時において発電された電力は、図2に示すように、電力線を介して接続される系統30に供給される。なお、ここでは、電力供給先として系統30が示されているが、系統に代えて負荷が接続されていてもよい。燃料電池1と系統30との間には、燃料電池1により発生した直流電力を3相交流電力に変換して出力する電力変換装置36が設けられている。
系統30に供給される電力、具体的には、燃料電池1から出力される電圧および電流は、それぞれ電圧検出器31、電流検出器32によって検出され、制御装置(制御手段)35に入力される。
【0022】
制御装置35は、電圧検出器31によって検出された出力電圧及び電流検出器32によって検出された出力電流に基づいて電流指令を電力変換装置36に出力することにより、燃料電池1の出力電圧及び出力電流を制御する。
以下、制御装置35によって実現される燃料電池1の起動時における出力制御処理について図3を参照して説明する。
【0023】
まず、燃料電池1の起動時において、ユーザによって目標負荷が入力されると、この目標負荷を保持する(ステップSA1)。続いて、電圧検出器31及び電流検出器32から入力された各検出値から実負荷を算出し(ステップSA2)、この実負荷が目標負荷に達したか否かを判定する(ステップSA3)。この結果、実負荷が目標負荷に達していなかった場合には(ステップSA3において「NO」)、1周期あたりにおける電流指令を設定する(ステップSA4)。電流指令の設定は以下の方法により行われる。
【0024】
制御装置35は、図4に示すように、電圧と電流変化率とが対応付けられているテーブルを有している。このテーブルは、燃料電池1の温度特性を加味して作成されたものであり、電圧がある閾値Vth以下となった場合に、電流変化率を小さくするように設定されている。このように、電圧が小さくなった場合には、電流変化率を小さくすることにより、電流の増加を抑制し、これにより燃料電池1の温度を回復させることができる。
なお、電圧と電流変化率とを対応付ける情報は、上記テーブルに限定されることなく、例えば、電圧、電流変化率をパラメータとする演算式等として記憶されていてもよい。
【0025】
制御装置35は、電圧検出器31から入力された電圧検出値に対応する電流変化率をテーブルから求め、この電流変化率に基づいて電流指令値を設定し、設定した電流指令値を電力変換装置36に出力する(ステップSA5)。
これにより、電力変換装置36を電流指令値に基づいて駆動することで、燃料電池1の出力電流及び出力電圧が制御され、実負荷が目標負荷に向けて上昇することとなる。
制御装置35は、上記ステップSA2からSA5の処理を繰り返し行い、ステップSA3において、実負荷が目標負荷に達したと判断すると(ステップSA3において「YES」)、上記起動時における出力制御処理を終了する。
【0026】
上述のように、電圧が所定の閾値Vth以下となった場合には、電圧に応じて電流変化率を減少させる制御を行うことにより、燃料電池1の出力電流の増加を抑制させて、出力電圧を徐々に回復させることが可能となる。そして、電圧が閾値Vth以上まで回復すると、制御装置35は、電流指令値の変化率を通常値とする。これにより、例えば、燃料電池1が約900から1000℃の状態(=定格運転状態)となって起動が完了するまで、自動で出力電圧を一定値以上に保ちながら適切な変化率で電流を制御することが可能となる。
【0027】
図5に上記制御を行った場合の電流密度と電圧との関係の一例を示す。このように、本実施形態における燃料電池の運転制御方法では、出力電圧が所定の閾値Vthよりも大幅に低下することを回避することが可能となる。
【0028】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る燃料電池発電システムおよびその運転制御方法によれば、燃料電池1の出力電圧をモニタし、この出力電圧の値に応じて出力電流を制御するので、出力電圧および出力電流を適切な電流電圧範囲内において自動で制御することが可能となる。これにより、温度上昇や電圧低下等によって燃料電池内の素子が破壊されることを未然に防ぐことができるとともに、作業者等の負担を軽減することができる。また、負荷上昇時における燃料電池の電力制御を円滑に行うことが可能となり、起動に要する時間を短縮することが可能となる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池発電システムの概略構成の一例を示した図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る燃料電池発電システムの電気系統の一例を示した図である。
【図3】燃料電池の起動時における出力制御の処理を示したフローチャートである。
【図4】出力電圧と電流変化率との対応関係を示したテーブルの一例を示した図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る燃料電池の出力制御方法を実施した場合に得られる電圧−電流特性の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0031】
1 燃料電池
2 改質器
3 空気予熱器
4 燃焼器
5 再循環ブロワ
6 予熱ヒータ
21 燃料流入部
22 燃料排出部
23 空気流入部
24 空気排出部
30 電気負荷
31 電圧検出器
32 電流検出器
35 制御装置
36 電力変換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池の出力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記燃料電池の出力電圧と電流変化率とを関連付ける関連情報から、該電圧検出手段により検出された該出力電圧に対応する電流変化率を取得し、取得した該電流変化率に基づいて電流指令値を設定する制御手段と
を備え、
該電流指令値に基づいて前記燃料電池の出力を制御する燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記関連情報は、前記燃料電池の温度特性に基づいて設定されている請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記関連情報は、前記燃料電池の出力電圧が所定の閾値以下となった場合に、前記電流変化率を減少させるように設定されている請求項1または請求項2に記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記燃料電池が固体酸化物型燃料電池である請求項1から請求項3のいずれかに記載の燃料電池発電システム。
【請求項5】
燃料電池の出力電圧を検出し、
前記燃料電池の出力電圧と電流変化率とを関連付ける関連情報から、該燃料電池の出力電圧に対応する電流変化率を取得し、取得した該電流変化率に基づいて電流指令値を設定し、
該電流指令値に基づいて前記燃料電池の出力を制御する燃料電池の出力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−62032(P2010−62032A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227371(P2008−227371)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】