説明

燃料電池発電モジュール

【課題】燃焼室全体で均一かつ経時的に安定な燃焼を促進し、一様かつ安定な燃焼室の温度分布を得ることができる燃料電池発電モジュールを提供する。
【解決手段】各燃料電池の電解質層の一方の面にアノードが配置され他方の面にカソードが配置され、前記アノードに供給される燃料と前記カソードに供給される空気とを用いて発電する複数の燃料電池1と、複数の燃料電池1において発電反応に使用されずにそれぞれのアノードを通過した余剰燃料とカソードを通過した余剰空気とが合流して燃焼反応を起こすようにした燃焼室8とを備える燃料電池発電モジュールにおいて、燃焼室8の内部、燃焼室8の入口側、および前記燃焼室の出口側の少なくとも1つに、前記余剰燃料と前記余剰空気との混合を促進させて燃焼反応を助長する燃料・空気混合促進手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の燃料電池を備える燃料電池発電モジュールに係わり、より詳細には、電解質、アノード(燃料極)、カソード(空気極)を有する燃料電池を用いる燃料電池発電モジュールにおいて、発電のための電気化学反応(電池反応)がなされずにアノードを通過した余剰燃料とカソードを通過した余剰空気とを混合させて、安定かつ均一に燃焼させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質を挟んで一方の側にアノード(燃料極)を備え、他方の側にカソード(空気極)を備えている。そして、アノード表面には燃料を、カソード表面には空気をそれぞれ流し、電解質を介してこの燃料と空気とが電気化学反応(電池反応)することによって発電する発電素子である。1つの燃料電池により得られる電圧は1V程度であるが、複数の燃料電池を電気的に接続することにより高電圧を得ることが可能である。実際の発電システムでは、複数の燃料電池を備えた発電モジュールが形成される。
【0003】
燃料電池発電モジュールでは、複数の燃料電池は発電室と呼ばれる空間に収納される。発電室内の燃料電池に供給された燃料および空気は、電気化学反応により消費されるが、一部は消費されずに発電室から排出される。燃料電池の種類の1つである固体酸化物形燃料電池は、700〜1000℃の高温で運転される。このような高温作動の燃料電池では、燃料電池周囲のガスシール部分で昇温時の熱膨張により応力が発生し、燃料電池セルの破損を招く可能性がある。
【0004】
そのため、発電室の出口はガスシールされずに燃料流路と空気流路とが設けられ、燃料と空気は発電室から燃焼室と呼ばれる別の空間へ導入される。発電室から燃焼室へ導入されて混合された高温の燃料と空気は、消費されなかった未反応分が自然発火し燃焼する。そして、燃焼室で発生した燃焼熱は、燃料電池の温度維持、燃料および空気の予熱、燃料の改質、蒸気および温水の発生などに利用される。
【0005】
燃焼室への燃料導入部付近は、空気導入部付近に比べて燃焼量が多く、局所的に高温になり易い。そして、発生した局所的な高温部は、燃料電池の破損、燃焼室構成部材の損傷、および計測線異常の原因となる。
【0006】
また、燃焼室の燃料導入部や空気導入部を含む断面における燃料や空気の流量の不均一分布によって、燃焼の不均一が発生し、燃焼室内に温度分布が生じる。燃焼室の温度分布は、近接する発電室にも温度分布を発生させ、燃料電池の発電性能低下の原因となっている。
【0007】
さらに、燃焼室に導入された燃料と空気は十分混合されず、また、燃焼室内では希薄燃料が燃焼するため、燃焼状態が経時的に変化しやすく、燃焼室の温度が不安定となる原因になっている。
【0008】
燃料電池セル近傍での局所的な高温部の発生を避ける方法としては、特許文献1に記載の技術が知られている。これは、燃焼室における燃焼を、燃焼室の外周部でのみ起こるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−77496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の技術では、発電モジュールの外周部でのみ燃焼が起こるため、燃焼室外周部に局所的な高温部が発生し、燃焼室内に温度分布が発生しやすい。さらに燃料と空気の混合が不十分なため、燃焼状態が不安定になりやすい。
【0011】
本発明は、燃焼室全体で均一かつ経時的に安定な燃焼を促進し、一様かつ安定な燃焼室の温度分布を得ることができる燃料電池発電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による燃料電池発電モジュールは、基本的には次のような構成を備える。
【0013】
各燃料電池の電解質層の一方の面にアノードが配置され他方の面にカソードが配置され、前記アノードに供給される燃料と前記カソードに供給される空気とを用いて発電する複数の燃料電池と、前記複数の燃料電池において発電反応に使用されずにそれぞれのアノードを通過した余剰燃料とカソードを通過した余剰空気とが合流して燃焼反応を起こすようにした燃焼室とを備える燃料電池発電モジュールにおいて、前記燃焼室の内部、前記燃焼室の入口側、および前記燃焼室の出口側の少なくとも1つに、前記余剰燃料と前記余剰空気との混合を促進させて燃焼反応を助長する燃料・空気混合促進手段が設けられていることを特徴とする。
【0014】
前記燃料・空気混合促進手段は、前記燃焼室の内部、前記燃焼室の入口側、前記燃焼室の出口側の少なくとも1つにおいて、前記複数の燃料電池の配列方向の面に沿って分散配置されている複数の絞り流路により構成される。
【0015】
前記燃料・空気混合促進手段は、複数の孔が前記複数の燃料電池の配列方向の面に沿って全体に均等に分散配置されている板状部材とすることができる。
【0016】
また、前記燃料・空気混合促進手段は、前記燃焼室に前記余剰燃料が流入する流路および前記余剰空気が流入する流路の少なくとも一方の流路に、この流路の内部に向けて突出するように設けられ、前記燃焼室に流入する前記余剰燃料および前記余剰空気の少なくとも一方に乱流を生じさせる突出部材とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料・空気混合促進手段により燃料と空気の混合が促進されるため、燃料電池発電モジュールの燃焼室内で局所的な高温部が発生しない。さらに、燃焼室の水平断面の全体に分散して燃料・空気混合促進手段が設置されているため、燃焼室内で燃料と空気がより均一に分配されて燃焼量が一様になり、燃焼室の温度分布が一様化する。
【0018】
この燃焼均一化の効果に加えて、燃料・空気混合促進手段により燃料と空気の混合状態が経時的に変化しにくくなるため、燃料と空気の燃焼が安定し、経時的に安定な燃焼室の温度分布が得られるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1による燃料電池発電モジュールの垂直断面図である。
【図2】本発明の実施例1による燃料電池発電モジュールの水平断面図である。
【図3】本発明の実施例2による燃料電池発電モジュールの垂直断面図である。
【図4】本発明の実施例3による燃料電池発電モジュールの垂直断面図である。
【図5】本発明の実施例4による燃料電池発電モジュールの垂直断面図である。
【図6】本発明の実施例5による燃料電池発電モジュールの垂直断面図である。
【図7】本発明の実施例6による燃料電池発電モジュールの垂直断面図である。
【図8】本発明の実施例1による燃料電池発電モジュールの分散板の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による燃料電池発電モジュールは、固体酸化物形燃料電池を備えた発電システムに特に適している。固体酸化物形燃料電池は、その固体電解質の形状により円筒形と平板形とに大別されるが、本発明はどちらの形状においても適用可能である。以下、円筒形、特に円筒縦縞形の燃料電池を例にとって詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1に、本発明による燃料電池発電モジュールの垂直断面図を、図2に、本燃料電池発電モジュールの燃焼室の水平断面図を、それぞれ示す。本燃料電池発電モジュールは、円筒形(袋管形)の固体酸化物形燃料電池1を備えている。本実施例および以下の実施例において、燃料電池1は内表面にカソード、外表面にアノードを備えたものであるが、カソードとアノードの位置が逆転した燃料電池にも、本発明は適用可能である。カソードとアノードの位置が逆転した燃料電池の場合には、本実施例および以下の実施例において、燃料と空気とを入れ替えて適用すればよい。
【0022】
複数の燃料電池1が発電室容器2の内部の発電室に収められており、発電室容器2は、発電室内で燃料電池1の外側を流れる燃料をシールする役割も果たしている。発電室容器2には、側壁部に電気絶縁材16が、底辺部には整流板17が、それぞれ設けられている。燃料電池1は、互いに集電材3で電気的に接続されており、最終端の集電端子4から電流が外部に取り出される。集電端子4は、発電モジュールの出口で絶縁シール材18によりシールされている。
【0023】
燃料電池1の上部には仕切り板7が設けられており、下方の発電室と上方の燃焼室8とを別の空間に分けている。仕切り板7としては、多孔質体や多孔板が使用される。
【0024】
また、燃料電池1の電圧と温度をそれぞれ計測する電圧計側線5と熱電対6は、仕切り板7を通り、燃焼室8に設けられた計測線ポート15から外部に取り出される。発電モジュールの外表面には、断熱材14が設置され、放熱を低減している。
【0025】
燃料電池1の外側空間は、燃料流路として利用される。燃料は、燃料電池1の下方から供給され、燃料電池1の外表面のアノードで反応する。未反応分の燃料、すなわち、発電反応に使用されずにアノードを通過した余剰の燃料は、上方の仕切り板7を通り、燃焼室8へ導入される。
【0026】
燃料電池1の内側空間は、空気流路として利用される。空気は、燃料電池1の上方にある空気ヘッダ9から空気導入管10を通って燃料電池1の底部に導入され、そこで反転して上方へ流れて燃料電池1の内表面のカソードで反応する。発電反応に使用されずにカソードを通過した余剰の空気は、燃料電池1の上端の開口部11から燃焼室8に導入される。なお、空気は、燃料電池1での反応を促進させるために、予熱されて発電モジュールに導入される。
【0027】
仕切り板7の上方には、燃焼室8内に分散板12が設置されている。分散板12は、複数の孔を備えており、燃焼室8を上下2つの空間に分けている。複数の孔を備えた分散板12が、燃料と空気の燃料・空気混合促進手段となる。
【0028】
なお、以下では、燃焼室8へ導入される発電反応に使用されなかった余剰の燃料と空気に対し、単に燃料または空気と称する。
【0029】
ここで、図8を用いて分散板12の説明をする。図8は、分散板12の上面図である。分散板12に設けられた孔13は、分散板12の全体に均一に分散しており、燃料と空気の絞り流路となる。空気導入管10は、この孔13を貫通して、空気ヘッダ9から燃料電池1の底部まで達する。空気導入管10と孔13とは、中心軸が一致するように配置するのが望ましい。分散板12と空気導入管10との間は、ガスシールされておらず、燃料と空気の絞り流路となるギャップを有する。
【0030】
分散板12には、耐熱性の金属やセラミックが使用される。分散板12の母材は、必ずしも緻密体である必要はなく、孔13を大部分のガスが通過する程度に流動抵抗が高いものであればよい。孔13の大きさは、流れる燃料と空気の流量や流速などを考慮して決定される。孔13は、大きすぎると燃料や空気の分布に不均一が発生し、小さすぎると圧損が生じる。分散板12の外周部と燃焼室8の外壁との間は、ガスシールされている。
【0031】
図1に戻って、本燃料電池発電モジュールの説明を続ける。
【0032】
燃焼室8に導入されて合流した燃料と空気は、分散板12の孔13を通って分散板12の上方の空間へ流れる。燃焼室8の温度は燃料の自然発火温度より高いため、燃焼室8内で混合された燃料と空気は燃焼反応を起こし、燃焼室8から排出される。
【0033】
燃料と空気は、燃焼室8の空間と比較して十分狭い孔13を通ることで十分に混合されて燃焼室8に流入するので、燃焼反応の経時的変化が小さくなるとともに、局所的に燃料濃度が高いことによる燃焼室8内の局所的な高温部の発生が抑制される。また、分散板12の全体に均一に分散して多数の孔13があけられているため、燃料や空気は、孔13を通るために分散板12の下方の空間で細かく配分される。したがって、燃焼室8に導入された時点で燃料や空気に流量分布があった場合にも、分散板12の孔13を通るときには流量が一様になるように分配され、燃焼量も燃焼室8全体で一様になる。
【0034】
さらに、燃料と空気の燃焼ガスが孔13により空気導入管10の近傍を通るので、燃焼ガスと空気導入管10内の空気の熱交換が促進される。このため、空気を発電モジュールに導入するときの予熱を少なくすることができる。
【0035】
さらに、燃料と空気の混合ガスは、十分に狭い孔13から広い燃焼室8へ噴出するので、流速が十分速くなって燃焼する。このために安定な火炎が形成され、経時的に安定な燃焼状態が得られる。
【0036】
また、計測線ポート15を分散板12より下方に設置することで、電圧計側線5や熱電対6が燃料と空気の燃焼ガスにさらされる可能性が低減され、計測エラーや計測線へのダメージを減らすことができる効果もある。
【0037】
なお、本実施例では、分散板12の全ての孔13において、分散板12と空気導入管10との間にガスが流れるギャップを設けている。しかし、燃焼室8内で燃料と空気が均一に分散可能となる限りでは、全ての孔13において、分散板12と空気導入管10との間にガスの流路となるギャップを設ける必要はない。
【実施例2】
【0038】
本発明の実施例2による燃料電池発電モジュールを、図3に示す。実施例2は、実施例1の変形例である。図3は、本実施例の燃料電池発電モジュールの垂直断面図である。図3において、実施例1(図1)と同一の符号は、実施例1と同一または対応する要素を示す。
【0039】
本実施例の燃料電池発電モジュールには、燃料電池1の開口部11に開口部ノズル21が設置されている。開口部ノズル21は、燃料電池1の内側空間を流れる空気を、燃料と混ざらないようにして分散板12の孔13の近傍まで導くためのものである。開口部ノズル21は、下端が開口部11の外表面に密着して空気が外に漏れないようになっており、先端(上端)が孔13の近傍に達するように設置される。したがって、燃料と空気は孔13の近傍で混合する。開口部ノズル21の先端の直径は、孔13の内径よりも小さく、開口部11の内径よりも小さい。すなわち、開口部ノズル21は、図3に示すように、燃料電池1から分散板12に向かって細くなっていく形状をもつ。開口部ノズル21には、耐熱性の金属やセラミックが使用される。
【0040】
この開口部ノズル21により、燃料と空気は孔13の近傍で混合し、分散板12の下方で混ざることが防止されているので、開口部11近傍で燃焼反応が起こることによる燃料電池1の破損を抑制できる。また、開口部ノズル21が分散板12に向かって細くなっていく形状であるため、開口部ノズル21の内部を流れる空気の流速が増加され、かつ、開口部11から燃料と空気とが混合する場所までの距離が離れているので、燃料が逆流して燃料電池1の内側に入ることによる燃料電池1の破損を防止することができる。
【0041】
本実施例では、以上のように燃料電池1の破損を防止することができ、したがって、燃料電池1の発電状態の不均一を防ぐことができる。このようにして、燃焼室8の温度分布や燃焼状態がさらに均一になり安定となる効果が得られる。
【実施例3】
【0042】
本発明の実施例3による燃料電池発電モジュールを、図4に示す。実施例3は、実施例1の変形例である。図4は、本実施例の燃料電池発電モジュールの垂直断面図である。図4において、実施例1(図1)と同一の符号は、実施例1と同一または対応する要素を示す。
【0043】
本実施例の燃料電池発電モジュールでは、空気導入管10に対して、燃焼室8内の分散板12より上方の空間にある部分の表面に、燃焼触媒31が塗布されている。空気導入管10に燃焼触媒31を塗布することで、空気と燃料の燃焼反応が促進され、燃焼をさらに安定させることができる。また、燃焼ガスと空気導入管10内の空気の熱交換をより高めることができ、発電モジュールに導入するときの空気の予熱を少なくすることができる効果もある。
【実施例4】
【0044】
本発明の実施例4による燃料電池発電モジュールを、図5に示す。実施例4は、実施例1の変形例である。図5は、本実施例の燃料電池発電モジュールの垂直断面図である。図5において、実施例1(図1)と同一の符号は、実施例1と同一または対応する要素を示す。
【0045】
本実施例の燃料電池発電モジュールは、実施例1の分散板12の孔13を埋めるように、分散板12と空気導入管10との間に多孔質体からなる表面燃焼バーナ材41を設置したものである。表面燃焼バーナ材41としては、流動抵抗が分散板12の母材より十分に低く耐熱性の金属の多孔質体やセラミック多孔質体が使用される。
【0046】
本実施例のように表面燃焼バーナ材41を設置すると、空気と燃料は混合されて表面燃焼バーナ材41を通って燃焼室8の上方の空間に流れる。このとき、表面燃焼バーナ材41では、分散板12の上方側の表面において表面燃焼が起こる。
【0047】
表面燃焼の火炎は、燃料濃度の高い分散板12の下方に向かって移動するが、空気と燃料の混合ガスにより分散板12の上方側へ押し流される。空気と燃料の混合ガスの流速が気相での燃焼速度より小さい場合、火炎は表面燃焼バーナ材41の表面(分散板12の上方側)から内部へ移動するが、表面燃焼バーナ材41の熱容量により火炎温度は低下し、燃焼速度が低下する。燃焼速度が空気と燃料の混合ガスの流速以下になると、火炎は、それ以上、表面燃焼バーナ材41の内部へと進めず、その場所に安定に保持される。
【0048】
このようにして、表面燃焼バーナ材41により安定な火炎が形成され、燃焼状態がさらに安定化する。
【実施例5】
【0049】
本発明の実施例5による燃料電池発電モジュールを、図6に示す。図6は、本実施例の燃料電池発電モジュールの垂直断面図である。図6において、実施例1(図1)と同一の符号は、実施例1と同一または対応する要素を示す。
【0050】
本実施例の燃料電池発電モジュールでは、仕切り板として、燃料電池1との間にギャップができるように仕切り板孔51が設けられた仕切り板70を使用している。仕切り板70は、上端の位置が燃料電池1の開口部11より上方にくるように配置され、この位置では空気導入管10との間にギャップができている。仕切り板孔51は、燃料の流路となっている。燃料は、仕切り板孔51を通ることにより燃料電池1の極めて近傍を流れ、燃焼室8へ放出される。
【0051】
仕切り板70には耐熱性の金属やセラミックが使用されるが、必ずしも母材が緻密体である必要はなく、仕切り板孔51を大部分の燃料が通過する程度に流動抵抗が高いものであればよい。仕切り板孔51の大きさは、実施例1で説明した孔13の大きさと同様に、流れる燃料の流量や流速などを考慮して決定される。
【0052】
さらに、本実施例の燃料電池発電モジュールには、燃料電池1の開口部11近傍において、仕切り板孔51の内側と空気導入管10の外表面とに乱流素子52を設けている。乱流素子52が、燃料と空気の燃料・空気混合促進手段となる。乱流素子52は、仕切り板孔51の内側に設けられたものは空気導入管10の方に向けて、空気導入管10の外表面に設けられたものは仕切り板70の方に向けて、それぞれ突出するように設けられる部材である。すなわち、乱流素子52は、開口部11に向かって流れる燃料および空気の流路に設けられ、この流路の内部に向けて突出して流路の幅を狭める部材である。このようにして、乱流素子52が設けられた燃料および空気の流路は、絞り流路となる。乱流素子52は、仕切り板孔51の内側と空気導入管10の外表面を連続的に一周するように設けてもよいし、断続的に一周するように設けてもよい。乱流素子52には、仕切り板70と同様の材料を使用することができる。
【0053】
燃料は、仕切り板孔51が設けられた仕切り板70により均一に分配され、発電室から仕切り板孔51を通り開口部11近傍へ流れる。開口部11近傍に達した燃料と開口部11から流れ出る空気は、開口部11上方で乱流素子52によって流れの向きが変えられるとともに、乱流素子52によって狭くなった流路から広い空間である燃焼室8に流れ出ることにより流れの状態が大きく変わり、乱流が生じてさらに混合が促進される。これにより、燃焼室8内では、燃焼量が均一化して温度分布が一様化されるので局所的な高温部ができず、さらに経時的に安定な燃焼反応が起こる。
【0054】
なお、乱流素子52の形状は、図6では断面形状が三角形であるが、これに限るものではない。乱流素子52の形状や大きさは、流れる燃料や空気の流量や流速などを考慮し、燃料と空気の流れの状態を変えることができるように決定する。本実施例では、乱流素子52を、仕切り板孔51の内側と空気導入管10の外表面との両方に設けたが、どちらか一方だけに設けてもよい。
【0055】
なお、実施例2と同様に、燃料電池1の開口部11に開口部ノズル21を設置して、燃料の燃料電池1内側への逆流や燃料電池1近傍での燃焼を防止してもよい。この場合、開口部ノズル21の先端は、乱流素子52の下方近傍に達するように設置され、乱流素子52が開口部ノズル21から流れ出る空気の流れ状態を変えられるようにする。
【実施例6】
【0056】
本発明の実施例6による燃料電池発電モジュールを、図7に示す。実施例6は、実施例1の変形例である。図7は、本実施例の燃料電池発電モジュールの垂直断面図である。図7において、実施例1(図1)と同一の符号は、実施例1と同一または対応する要素を示す。
【0057】
本実施例の燃料電池発電モジュールでは、仕切り板7に複数の孔があけられており、この孔を貫通するように燃料排気ノズル61が設置されている。燃料排気ノズル61は燃料の流路となり、各燃料電池1に燃料が均一に分配されて流れるように、仕切り板7全体に分散して多数設置されている。また、燃料排気ノズル61の上端は、分散板12の下方近傍に達するように設置されている。燃料は、燃料排気ノズル61を通って発電室から燃焼室8へ流れる。燃料排気ノズル61は、燃料の絞り流路となる。
【0058】
分散板12には、発電モジュールの上方から見て燃料排気ノズル61に対応する位置に、複数の孔13があけられている。すなわち、各燃料排気ノズル61の上端は、孔13の下方近傍に達する。分散板12と空気導入管10との間は、シール材62によりガスシールされている。
【0059】
燃料電池1の開口部11を出た空気は、燃料排気ノズル61上方の孔13に向かって流れ、燃料排気ノズル61から流れ出た燃料と孔13の近傍で混合されて、燃焼室8内に流入する。このようにして燃料と空気は十分に混合されるので、燃焼室8内で局所的な高温部は発生せず、燃焼状態の経時的変化も抑制される。また、燃料は多数の燃料排気ノズル61により均一に分散され、空気は分散板12により均一に分散されるので、燃焼室8の温度分布は一様化される。
【0060】
さらに、燃料は、燃料排気ノズル61を通るので開口部11へ近づく流れが存在せず、開口部11へ逆流することはない。したがって、開口部11近傍で燃料と空気が燃焼して燃料電池1を破損することもない。このように、本実施例でも、燃料電池1の破損を防止して燃料電池1の発電状態の不均一を防ぐことができるので、燃焼室8の温度分布や燃焼状態がさらに均一になり安定となる効果を得ることができる。
【0061】
以上の実施例において、複数の孔を備えた分散板や乱流素子という燃料・空気混合促進手段(絞り流路)は、燃焼室の内部または前記燃焼室の入口側に設けられているが、燃焼室の出口側に設けることも可能である。燃料・空気混合促進手段を燃焼室の出口側に設けることによっても燃料や空気の流路の幅を狭めることができ、これによって、燃料や空気は、流れの状態が大きく変わり混合が促進される。
【符号の説明】
【0062】
1…燃料電池、2…発電室容器、3…集電材、4…集電端子、5…電圧計側線、6…熱電対、7,70…仕切り板、8…燃焼室、9…空気ヘッダ、10…空気導入管、11…開口部、12…分散板、13…孔、14…断熱材、15…計測線ポート、16…電気絶縁材、17…整流板、18…絶縁シール材、21…開口部ノズル、31…燃焼触媒、41…表面燃焼バーナ材、51…仕切り板孔、52…乱流素子、61…燃料排気ノズル、62…シール材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各燃料電池の電解質層の一方の面にアノードが配置され他方の面にカソードが配置され、前記アノードに供給される燃料と前記カソードに供給される空気とを用いて発電する複数の燃料電池と、
前記複数の燃料電池において発電反応に使用されずにそれぞれのアノードを通過した余剰燃料とカソードを通過した余剰空気とが合流して燃焼反応を起こすようにした燃焼室と、を備える燃料電池発電モジュールにおいて、
前記燃焼室の内部、前記燃焼室の入口側、および前記燃焼室の出口側の少なくとも1つに、前記余剰燃料と前記余剰空気との混合を促進させて燃焼反応を助長する燃料・空気混合促進手段を設けることを特徴とする燃料電池発電モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記燃料・空気混合促進手段は、前記燃焼室の内部、前記燃焼室の入口側、前記燃焼室の出口側の少なくとも1つにおいて、前記複数の燃料電池の配列方向の面に沿って分散配置されている複数の絞り流路により構成されている燃料電池発電モジュール。
【請求項3】
請求項1記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記燃料・空気混合促進手段は、複数の孔が前記複数の燃料電池の配列方向の面に沿って全体に均等に分散配置されている板状部材である燃料電池発電モジュール。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記板状部材は、前記孔の内部に多孔質体を備える燃料電池発電モジュール。
【請求項5】
請求項1記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記燃料・空気混合促進手段は、前記燃焼室に前記余剰燃料が流入する流路および前記余剰空気が流入する流路の少なくとも一方の流路に、この流路の内部に向けて突出するように設けられ、前記燃焼室に流入する前記余剰燃料および前記余剰空気の少なくとも一方に乱流を生じさせる突出部材である燃料電池発電モジュール。
【請求項6】
請求項3記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記燃料電池に燃料または空気を供給するための導入管が燃料電池ごとに備えられ、前記導入管のそれぞれは、前記複数の孔のそれぞれに貫通する燃料電池発電モジュール。
【請求項7】
請求項6記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記燃料電池に燃料または空気を供給するための導入管が燃料電池ごとに備えられ、前記導入管は、前記燃焼室の内部を通って前記燃料電池に燃料または空気を導入し、前記燃焼室の内部では前記導入管の外表面に燃焼触媒が塗布されている燃料電池発電モジュール。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記燃料電池は円筒形である燃料電池発電モジュール。
【請求項9】
請求項8記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記燃料電池は、開口部に開口部ノズルを備え、前記開口部ノズルの先端は、前記燃料・空気混合促進手段の近傍に位置する燃料電池発電モジュール。
【請求項10】
請求項9記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記開口部ノズルの先端の内径は、前記燃料電池の開口部の内径よりも小さい燃料電池発電モジュール。
【請求項11】
請求項8記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記燃料電池を格納する発電室と前記燃焼室とを仕切る仕切り板を備え、前記仕切り板は、前記発電室から前記燃焼室へ前記余剰燃料または前記余剰空気を通す複数の排気ノズルを備え、前記複数の排気ノズルは、前記仕切り板の全体に均等に分散配置され、前記複数の排気ノズルの前記燃焼室側の端部は、前記燃料・空気混合促進手段の近傍に位置する燃料電池発電モジュール。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか1項記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記燃料電池は、円筒形の内側がカソードであり、外側がアノードである燃料電池発電モジュール。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項記載の燃料電池発電モジュールにおいて、前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池である燃料電池発電モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−232042(P2010−232042A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78956(P2009−78956)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 固体酸化物形燃料電池システム技術開発 コジェネレーションシステム開発 湿式円筒形20kW級システムの開発(継続研究)委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】