説明

燃料電池発電装置

【課題】燃料電池の停止中のアノードおよびカソードの電位を常に低く維持することが可能とし、燃料電池の耐久性を向上できる燃料電池発電装置を提供すること。
【解決手段】停止時間計測手段17によって計測される停止時間が予め設定した許容停止時間よりも長くなった場合に、燃料ガス供給手段7によりアノード21に燃料ガスを供給することにより、容易にかつ確実に、停止中の燃料電池5のアノード21およびカソード22の電位上昇を防止することが可能となり、燃料電池の耐久性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起動停止による劣化の抑制または耐久性の向上を図った燃料電池発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な固体高分子電解質型燃料電池の構成および動作について図4を参照しながら説明する。図4において1は水素イオン伝導性を有するパーフルオロカーボンスルフォン酸からなる固体高分子電解質であり、電解質1の両面には電極であるアノード21およびカソード22が形成されている。アノード21およびカソード22は、多孔質カーボンに白金などの貴金属を担持した触媒および水素イオン伝導性を有する高分子電解質との混合物からなる触媒層と、触媒層の上に積層した通気性および電子伝導性を有するガス拡散層を備えている。また、アノード21およびカソード22の周囲にはガスの混合やリークを防止する一対のガスケット31および32がそれぞれ配置され、アノード21に少なくとも水素を含む燃料ガスを供給および排出し、カソード22に少なくとも酸素を含む酸化剤ガスを供給および排出するガス流路を有する一対の導電性のセパレータ板41および42で狭持されている。
【0003】
以上の構成からなる単セルを複数積層したものをスタックとし、単セルまたはスタックを総称して燃料電池5とする。
【0004】
アノード21およびカソード22にそれぞれ燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給して電子負荷を接続すると、アノード21に供給された燃料ガス中に含まれる水素はアノード21と電解質1の界面で電子を放って水素イオンとなる(化1)。
→ 2H + 2e (化1)
水素イオンは電解質1を通ってカソード22へと移動し、カソード22と電解質1の界面で電子を受け取り、カソード22に供給された酸化剤ガス中に含まれる酸素と反応し、水を生成する(化2)。
1/2O + 2H +2e → HO (化2)
全反応を(化3)に示す。
+ 1/2O → HO (化3)
このとき電子負荷を流れる電子の流れを直流の電気エネルギーとして利用することができる。また、一連の反応は発熱反応であるため、反応熱を熱エネルギーとして利用することができる。
【0005】
次に、燃料ガス供給手段7を備えた一般的な燃料電池発電装置の構成および動作について図4を参照しながら説明する。図4においてメタンなどの炭化水素を含む原料ガスは脱硫部6に供給され、付臭剤などに含まれる硫黄化合物が吸着除去される。そして、燃料ガス供給手段7で改質され水素を含む燃料ガスとなり、燃料電池5のアノード21に供給される。燃料ガス供給手段7は、メタンなどを改質する改質部71と、発生する一酸化炭素(CO)を変成するCO変成部72と、さらにCOを除去するCO除去部73を備えている。
【0006】
原料ガスにメタンを用いた場合、改質部71では、水蒸気を伴って(化4)で示した反応が起こり、水素とともに約10%のCOが発生する。
CH + HO → CO + 3H (化4)
その後、発生したCOは(化5)で示すようにCO変成部72で二酸化炭素に酸化され、約5000ppmまで減少する。後流のCO除去部73ではCOだけでなく、燃料ガス
の水素まで酸化してしまうので、CO変成部72でできるだけCO濃度を低下させる必要がある。
CO + HO → CO + H (化5)
さらに残ったCOは(化6)で示すようにCO除去器73で酸化され、その濃度は約10ppm以下まで低下する。
CO + 1/2O → CO (化6)
全反応式を(化7)に示す。
CH + 2HO → CO + 4H (化7)
燃料電池5の動作温度域においてアノード21に含まれる白金はCOにより被毒しその触媒活性が劣化するため、通常アノード21には、白金−ルテニウムなどの耐CO性を有する触媒が用いられる。しかし、耐CO性の触媒においても燃料ガス中に含まれるCO濃度は少なくとも10ppm以下に抑えなければならない。
【0007】
燃料電池発電装置は、主に前記した燃料電池5と燃料ガス供給手段7で構成されるが、家庭用としてメタンを主成分とする都市ガスなどの原料ガスを用いた場合、光熱費メリットを大きくするために、電気消費量の少ない時間帯は停止し、電気消費量の多い時間帯に運転する運転方法が有効である。一般に、昼間は運転して深夜は運転を停止するDSS(Daily Start−up & Stop)運転は光熱費メリットを大きくすることができ、燃料電池発電装置は、起動と停止を含む運転パターンに柔軟に対応できることが望ましい。
【0008】
一般的に燃料電池5のアノード21、カソード22の耐久性を確保するためには、停止中にアノード21、カソード22の電位を低く保ち酸化や溶解析出を抑制することが望ましい。しかしながら、長期間の停止においては、燃料電池5の温度変化や内部での結露によって燃料電池内部が負圧となり、外部から空気が拡散することがあった。また、この現象は、経時的な気密性の低下などによって、より顕著になる傾向にある。この空気中の酸素によって、アノード21、カソード22の電位が上昇し、酸化劣化や溶解を起こすことが知られている。このような課題に対して、例えば、燃料を昇圧して貯蔵し、貯蔵した燃料と燃料電池中のガスとの間の起電力を電気化学セルを用いて検出し、燃料電池5側の水素濃度が低下したと判断した場合に、貯蔵している燃料を燃料電池5に補充し、常に燃料電池5のアノード21とカソード22の電位を低く保つ方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−73377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のように昇圧された燃料を貯蔵する方法では、長期間昇圧燃料を貯蔵する容器が必要となり、システム全体が複雑となる課題があった。
【0011】
また、電気化学セルの片側に常に昇圧した燃料を供給しているため、燃料中の水素が電解質を介して燃料電池側に透過するため、燃料電池側ガスの燃料残量を正確に検知することは困難という課題があった。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、燃料電池の停止中のアノードおよびカソードの電位を常に低く維持することが可能とし、燃料電池の耐久性を向上できる燃料電池発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の燃料電池発電装置は、電解質と、電解質を挟むアノードおよびカソードと、アノードに少なくとも水素を含む燃料ガスを供給および排出し、カソードに少なくとも酸素を含む酸化剤ガスを供給および排出するガス流路を有する一対のセパレータ板とからなる少なくとも一つのセルを備えた燃料電池と、カソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、アノードに少なくとも水素を含む燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、燃料電池発電装置の停止から再起動までの時間を計測する停止時間計測手段を有し、停止時間計測手段によって計測される停止時間が予め設定した許容停止時間よりも長くなった場合に、燃料ガス供給手段によりアノードに燃料ガスを供給することを特徴とする。これによって、容易にかつ確実に、停止中の燃料電池のアノードおよびカソードの電位上昇を防止することが可能となり、燃料電池の耐久性を向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃料電池発電装置によれば、燃料電池の停止中のアノードおよびカソードの電位を常に低く維持することが可能となり、燃料電池の耐久性を向上できる。また、燃料電池の起動時に、アノードの電位を測定することにより、アノードおよびカソードの電位上昇を検知し、電位が上昇しない範囲での許容停止時間を設定すること可能となる。これによって、アノードの電位上昇による劣化を抑制することが可能となり、容易にかつ確実に燃料電池の耐久性を向上できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池発電装置を示す構成図
【図2】同装置の第1の運転方法を示すフローチャート
【図3】同装置の第2の運転方法を示すフローチャート
【図4】従来の燃料電池発電装置を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、電解質と、電解質を挟むアノードおよびカソードと、アノードに少なくとも水素を含む燃料ガスを供給および排出し、カソードに少なくとも酸素を含む酸化剤ガスを供給および排出するガス流路を有する一対のセパレータ板とからなる少なくとも一つのセルを備えた燃料電池と、カソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、アノードに少なくとも水素を含む燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、燃料電池発電装置の停止から再起動までの時間を計測する停止時間計測手段を有し、停止時間計測手段によって計測される停止時間が予め設定した許容停止時間よりも長くなった場合に、燃料ガス供給手段によりアノードに燃料ガスを供給することにより、容易にかつ確実に、停止中の燃料電池のアノードおよびカソードの電位上昇を防止することが可能となり、燃料電池の耐久性を向上できる。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明において、セルの単一あるいは複数セル合計の電圧を検出する電圧検出手段を有し、燃料電池の起動時にアノードに燃料ガスが供給される前に、カソードに酸化剤ガスを供給し、発生する起動時電圧を電圧検出手段により検出し、起動時電圧が予め設定された許容電圧より小さい場合に、許容停止時間を停止時間から予め設定された差分時間を引いた値に再設定することにより、燃料電池発電装置の気密性が変化して許容停止時間内においてもアノードおよびカソードの電位が高くなる状況においても、許容停止時間を短縮していくことによって、確実にアノードおよびカソードの電位上昇を防止し、燃料電池の耐久性を向上できる。
【0018】
第3の発明は、特に、第2の発明において、燃料ガス供給手段として化石燃料を改質して水素を含む燃料ガスを生成する燃料処理装置を用いることによって、複雑な追加装置を
用いることなく、容易にかつ確実に、アノードへの燃料ガスの追加供給を可能とできる。
【0019】
第4の発明は、特に、第2の発明において、
起動時電圧はカソードに酸化剤ガスが供給されてから発生する電圧の最大値を計測することによって、より正確にアノードの電位を検知することが可能となり、燃料電池の劣化を防止することが可能となる。
【0020】
第5の発明は、特に、第4の発明において、起動時電圧はカソードに酸化剤ガスが供給されてから少なくとも1分以内に計測されることによって、アノード側の残留水素や酸化剤ガス中の酸素が電解質を透過することによる電位の変化に影響されることなく、正確にアノード電位を検出することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の燃料電池発電装置の構成図を示すものである。
【0023】
図1において、1は水素イオン伝導性を有するパーフルオロカーボンスルフォン酸ポリマからなる膜状の固体高分子電解質であり、電解質1の両面には一対の電極、アノード21およびカソード22が形成されている。電解質1は、水分を取り込むことにより、電解質1内のスルフォン酸基の水素イオンが解離して電荷担体となり、スルフォン酸基がいくつか凝集して形成される逆ミセル構造の中を通過することで水素イオン伝導性を示す。含水率が下がると電解質1の導電率が低下するため、ガスを加湿して供給し、膜の乾燥を防ぐ方法をとった。
【0024】
また、発電時、水素イオンがカソード22へ移動する際、アノード21側の水を伴って移動するため、電解質1の含水率はカソード22側で高く、アノード21側で低くなる分布を有する。これを是正するために電解質1の膜厚を薄くし、水が逆拡散するようにした。これにより、導電率は高くなるが、燃料ガスである水素や、酸化剤ガスである酸素の透過も増大し、ガスが電解質1を通して直接反応してしまい、電流効率が低下することが判っている。
【0025】
アノード21およびカソード22は、多孔質カーボンに白金などの貴金属を担持した触媒および水素イオン伝導性を有する高分子電解質との混合物からなる触媒層と、触媒層の上に積層した通気性および電子伝導性を有するガス拡散層からなる。アノード21には、耐CO性を有する白金−ルテニウムなどの合金触媒を用いた。また、ガス拡散層には撥水処理を施したカーボンペーパーあるいはカーボンクロスを用いた。
【0026】
そして、アノード21およびカソード22の周囲にガスの混合やリークを防止する一対のガスケット31および32をそれぞれ配置し、さらに、アノード21およびカソード22にそれぞれ燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給および排出するガス流路を有する一対の導電性のセパレータ板41および42を用いて狭持した。以上のように構成される単セルが発生する電圧は約0.75Vであり、必要とする電圧分の複数の単セルを直列に積層してスタックを形成することができる。
【0027】
また、セパレータ板41および42の両端には集電板と、絶縁板および端板を配置し、締結ロッドで固定した。そして、集電板に電子負荷8および電圧検出部9を接続し、一定電流を流したときの燃料電池5の電圧を検出した。
【0028】
図1において、6は脱硫部であり、原料ガスに付臭剤として含まれる硫黄化合物を吸着除去(脱硫)することができる。本実施の形態では、原料ガスとしてメタン、エタン、プロパンおよびブタンを主成分とする都市ガス13Aを用いた。脱硫された原料ガスは、水とともに燃料ガス供給手段7へ供給され、改質反応により水素を含む燃料ガスが生成される。燃料ガス供給手段7は、メタンなどを改質する改質部71と、発生するCOを変成するCO変成部72およびCOを除去するCO除去部73からなる。
【0029】
生成された燃料ガスは、流量制御部101により所定の流量で燃料電池5のアノード21に供給される。また、酸化剤ガスは、大気からファンなどの酸化剤ガス供給手段15により取り込まれ、流量制御部102により所定の流量で燃料電池5のカソード22に供給される。また、燃料ガスおよび酸化剤ガスが膜を乾燥させないようそれぞれ加湿して供給した。
【0030】
また、111a、111b、112aおよび112bは燃料電池5の停止時に、それぞれアノード21およびカソード22を封止する遮断弁である。
【0031】
本実施の形態において、燃料電池5の停止時には遮断弁111a、111b、112aおよび112bを全て閉止し、燃料電池5のアノード21およびカソード22を封止する。この状態で、アノード21に残留する水素が電解質1を介してカソード22に拡散し、残留している酸素と反応して酸素を消費する。これによって、アノード21の水素の残留量が十分多ければ、アノード21およびカソード22の電位を水素の電位まで下げることが出来る。このような状態で燃料電池5を長期間停止した場合、外部の温度変化や内部の結露などで燃料電池5の内部が負圧になることや、経時的に燃料電池5の気密性が低下するなどの理由により、外気より徐々に空気が進入してくる。このため、アノード21およびカソード22の電位は酸素濃度の上昇に伴って上昇し、いずれはアノード21中の触媒が溶解する電位に到達する。ここで、触媒の溶解する電位とは、たとえばアノード21触媒にルテニウムを含むものでは、0.685Vであることが知られている。
【0032】
また、燃料電池発電装置はコントローラ16を有し、コントローラ16内部では燃料電池の停止時間を測定する停止時間計測手段17を有している。コントローラ16は停止時間計測手段17で計測された停止時間が、予め設定された許容停止時間を超えた場合に、燃料ガス供給手段7に対して起動の指令を出し、アノード21に燃料ガス供給手段7により生成された水素を供給する。これによって、一定時間毎にアノード21に水素が追加供給されるため、常にアノード21およびカソード22の電位を低く維持することができる。
【0033】
上記構成の燃料電池発電装置を用い、停止時にアノード21に定期的に水素を追加供給し、常にアノード21の電位を低く維持する運転方法について検討した。
【0034】
まず、アノード21に燃料ガス、カソード22に酸化剤ガスを所定量供給し、セル温度約70℃、燃料ガス利用率約75%、酸化剤ガス利用率約40%とし、電子負荷8により電極面積に対して約0.2A/cmの一定電流を流した。このとき燃料電池5に接続した電圧検出部9で検出した電池電圧は約0.75Vであった。なお、燃料ガスおよび酸化剤ガスは露点がそれぞれ65℃、70℃となるように加湿して供給した。
【0035】
図2は、本実施の形態1における燃料電池発電装置の第1の運転方法を示すフローチャートである。燃料電池5の停止時において、まず、STEP1において発電装置が停止中かどうかを判断し、停止継続でなければ発電装置をSTEP7として起動する。停止継続であれば、STEP2において停止時間を計測する。次に、STEP3において、停止時間と予め設定された許容停止時間を比較する。ここで、許容停止時間とは、燃料電池発電
装置を正常な状態で長期停止した際に、アノード21への経時的な外部空気の流入が十分少なく、アノード21の電位が上昇しない時間に設定されており、例えば数十時間の数値が設定されている。STEP3において、停止時間が許容停止時間より短い場合は、STEP1に戻り停止を継続する。また、停止時間が許容停止時間より長い場合は、STEP4において、燃料ガス供給手段7に対して起動を指示する。次に、STEP5において燃料ガス供給手段7よりアノード21に燃料ガスを供給する。さらに、STEP6において、停止時間を0にリセットして、STEP1に戻り、停止を継続する。
【0036】
本実施の形態では、燃料電池5の停止中に燃料電池5内部に経時的に空気が進入し、アノード21の電位が上昇する時間に達する前に、燃料ガス供給手段7を起動し、アノード21に水素を追加供給できるものである。これによって、燃料電池5が長期停止した場合においても、アノード21の電位を低く維持することが可能となり、容易にかつ確実に燃料電池5の耐久性を向上することができるものである。
【0037】
図3は、本実施の形態1における燃料電池発電装置の第2の運転方法を示すフローチャートである。燃料電池5の起動時において、アノード21に燃料ガスを供給する前にSTEP2においてカソード22に酸化剤ガスを供給する。次に、STEP3において、その時の起動時電圧を計測する。次にSTEP4において、予め設定されている許容電圧と起動時電圧を比較する。ここで、許容電圧はアノード21の触媒が、酸化・溶解する電位を1Vから引いた値より大きい値が設定されている。具体的にはアノード21にルテニウムを含む場合は、ルテニウムの酸化電位が0.68Vであるため、1−0.68=0.32となるため、例えば許容電圧としては0.4Vが設定される。すなわち起動時電圧が許容電圧(0.4V)よりも大きい場合は、アノード21の電位は0.6V以下であり、アノード21の劣化には影響しないと判断される。この場合は、STEP6にジャンプしてアノード21へ燃料ガスの供給を行い、STEP7において、発電を開始する。
【0038】
また、STEP4において、起動時電圧が許容電圧(0.4V)より小さい場合は、アノード21の電位は0.6Vを超えていると判断でき、アノード21が劣化している電位に近づいていると判断できる。この場合は、STEP5において、現時点での停止時間を計測し、STEP6において、許容停止時間を停止時間から予め設定した差分時間だけ減じた値に再設定する。ここで、差分時間とは、例えば許容停止時間の1%〜10%程度の時間で設定されることが望ましい。許容停止時間再設定の後は、STEP7以降で通常の発電操作に入るものである。
【0039】
このように、本実施の形態では許容停止時間の間に、アノード21の電位が上昇し、アノード21の酸化電位に接近したことを検知し、許容停止時間を短縮していく運転方法である。これによって、次回停止時には、アノード21の電位が上昇する前に、燃料ガス供給手段7を起動し、アノード21への燃料ガスの追加供給を可能とするものである。これにより、容易にかつ確実に燃料電池5のアノード21の劣化を抑制することが可能となり、燃料電池5の耐久性を向上できるものである。
【0040】
また、ここでは、アノード21にルテニウムを含む場合の例を示したが、ルテニウムを含まない場合やその他の元素を含む場合においては、それぞれ最も低電位において劣化する元素に着目し、許容停止時間を設定することによって、同様にアノード21の劣化を抑制することが可能となる。
【0041】
また、燃料ガス供給手段7としては、化石燃料を改質して水素を含む燃料ガスを生成する燃料処理装置を用いている。ここで、化石燃料とはメタン、プロパン、ブタン、石油、ガソリン、灯油などを主成分とするガスあるいは液体燃料を指す。このような、燃料ガス供給手段7を用いることによって、通常の燃料電池発電装置に装置を追加することなく、
容易に燃料電池の耐久性を向上することが出来る。
【0042】
さらに、本実施の形態においては、起動時電圧はカソード22に酸化剤ガスが供給されてから発生する電圧の最大値を計測している。カソード22に酸化剤ガスを供給すると、アノード21との電位差によって電圧が発生するが、そのままの状態では、水素、酸素が電解質1を介して透過するため、アノード21とカソード22の電位は等しくなり、時間とともに電圧は低下していく。すなわち、より正確にアノード21の電位を計測するためには、発生する電圧の最大値を計測することが望ましい。これによって、より正確にアノード21の電位を検知することが可能となり、燃料電池5の劣化を防止することが可能となる。
【0043】
さらに、多くの燃料電池5を用いて、アノード電位測定を行った結果、起動時電圧の最大値は、カソード22に酸化剤ガスが供給されてから少なくとも1分以内に発生することは解った。このため、本実施の形態では、起動時電圧はカソード22に酸化剤ガスが供給されてから少なくとも1分以内に計測することが望ましい。これにより、容易にかつ正確にアノード21の電位を検出することが可能となり、燃料電池5の劣化を防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の燃料電池発電装置は、燃料電池の停止中の劣化の抑制または耐久性の向上という効果を有し、高分子型固体電解質膜を用いた発電装置、デバイスに有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 電解質
21 アノード
22 カソード
41、42 セパレータ板
5 燃料電池
6 脱硫部
7 燃料ガス供給手段
8 電子負荷
9 電圧検出部
111a、111b、112a、112b 遮断弁
15 酸化剤ガス供給手段
17 停止時間計測手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質と、前記電解質を挟むアノードおよびカソードと、前記アノードに少なくとも水素を含む燃料ガスを供給および排出し、前記カソードに少なくとも酸素を含む酸化剤ガスを供給および排出するガス流路を有する一対のセパレータ板とからなる少なくとも一つのセルを備えた燃料電池と、
前記カソードに前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、
前記アノードに少なくとも水素を含む前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、
前記燃料電池の停止から再起動までの時間を計測する停止時間計測手段を有し、
前記停止時間計測手段によって計測される停止時間が予め設定した許容停止時間よりも長くなった場合に、前記燃料ガス供給手段により前記アノードに前記燃料ガスを供給することを特徴とする燃料電池発電装置。
【請求項2】
前記セルの単一あるいは複数セル合計の電圧を検出する電圧検出部を有し、
前記燃料電池の起動時に前記アノードに前記燃料ガスが供給される前に、前記カソードに前記酸化剤ガスを供給し、発生する起動時電圧を前記電圧検出部により検出し、前記起動時電圧が予め設定された許容電圧より小さい場合に、前記許容停止時間を前記停止時間から予め設定された差分時間を引いた値に再設定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電装置。
【請求項3】
前記燃料ガス供給手段は化石燃料を改質して水素を含む燃料ガスを生成する燃料処理装置であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池発電装置。
【請求項4】
前記起動時電圧は前記カソードに前記酸化剤ガスが供給されてから発生する電圧の最大値であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池発電装置。
【請求項5】
前記起動時電圧は前記カソードに前記酸化剤ガスが供給されてから少なくとも1分以内に計測されることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−59659(P2012−59659A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204165(P2010−204165)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】