説明

燃料電池装置及び2次電池型燃料電池システム

【課題】過熱を防止することができる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】燃料電池と、前記燃料電池を収納する二重壁容器とを備え、前記二重壁容器の二重壁内の空間に接触部材(バイメタル11)を設け、前記接触部材が前記二重壁容器の内壁8と外壁9の両方に接触している第1の状態と、前記接触部材が前記二重壁容器の内壁8と外壁9のいずれか一方のみに接触している第2の状態との切り替えが可能であり、前記第1の状態の方が前記第2の状態よりも前記二重壁容器の二重壁間の熱伝導率が高い燃料電池装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置及び発電動作だけでなく充電動作も行える2次電池型燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯型情報端末、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯型オーディオ、携帯型ビジュアル機器等の携帯用電子機器の多機能化、高性能化が進展するに伴い、その駆動用電池の大容量化に対する要求が高まってきている。従来、このような携帯用電子機器の駆動用電池としては、リチウム電池やニッカド電池が用いられているが、その容量は、限界に近づいており飛躍的な増大は望めない。そこで、リチウム電池やニッカド電池に代わりエネルギー密度が高く大容量化が可能な燃料電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
燃料電池は、水素と酸素から水を生成した際に電力を取り出すものであり、原理的に取り出せる電力エネルギーの効率が高いため、省エネルギーになるだけでなく、発電時の排出物が水のみであるため、環境に優れた発電方式であり、地球規模でのエネルギーや環境問題解決の切り札として期待されている。
【0004】
このような燃料電池は、典型的には、固体ポリマーイオン交換膜を用いた固体高分子電解質膜、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いた固体酸化物電解質膜等を燃料極(アノード)と酸化剤極(カソード)とで両側から挟み込み、その外側を一対のセパレータで挟持して形成されたものを1つのセル構成としている。そして、このような構成のセルには、燃料極に燃料ガス(例えば水素ガス)を供給する燃料ガス流路と、酸化剤極に酸化剤ガス(例えば酸素や空気)を供給する酸化剤ガス流路とが設けられ、これらの流路を介して燃料ガス、酸化剤ガスがそれぞれ燃料極、酸化剤極に供給される。
【0005】
ところが、外部から燃料が供給される燃料電池装置では、燃料(例えば水素)を供給するためのインフラ整備が必要である。また、燃料として比較的入手が容易なメタノールを用いる場合においてもその流通には年月を要するといった問題がある。
【0006】
このような問題を解決するためのシステムとして、再生可能な燃料発生装置と、その燃料発生装置から供給される燃料を用いて発電を行う燃料電池装置とを備える2次電池型燃料電池システムが考えられる。
【0007】
再生可能な燃料発生装置としては、化学反応により水素を含む燃料を発生し、前記化学反応の逆反応により再生可能な燃料発生装置が挙げられる。そして、化学反応により水素を含む燃料を発生し、前記化学反応の逆反応により再生可能な燃料発生装置としては、例えば基材料(主成分)が鉄であって、水との酸化反応により水素を発生し水素との還元反応により再生可能な水素発生装置が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010―151136号公報(段落0021、0023)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
基材料(主成分)が鉄である水素発生装置は、下記の(1)式に示す酸化反応により、水素を発生することができる。
3Fe+4HO→Fe+4H …(1)
【0010】
また、基材料(主成分)が鉄である水素発生装置は、下記の(2)式に示す還元反応により、再生することができる。
Fe+4H→3Fe+4HO …(2)
【0011】
燃料電池装置としては、例えば、図1に示す通り、O2−を透過する固体電解質1を挟み、両側にそれぞれ酸化剤極2と燃料極3が形成されているMEA(Membrane Electrode Assembly;膜・電極接合体)構造をなす固体酸化物燃料電池を用いることができる。固体酸化物燃料電池では、発電動作時に、燃料極3において下記の(3)式の反応が起こる。
+O2−→HO+2e …(3)
【0012】
上記の(3)式の反応によって生成された電子は、外部負荷4を通って、酸化剤極2に到達し、酸化剤極2において下記の(4)式の反応が起こる。
1/2O+2e→O2− …(4)
【0013】
そして、上記の(4)式の反応によって生成された酸素イオンは、固体電解質1を通って、燃料極3に到達する。上記の一連の反応を繰り返すことにより、固体酸化物燃料電池が発電動作を行うことになる。また、上記の(3)式から分かるように、発電動作時には、燃料極3側においてHが消費されHOが生成されることになる。
【0014】
一方、固体酸化物燃料電池では、電気分解器として作動する場合、上記の(3)式及び(4)式の逆反応が起こり、燃料極3側においてHOが消費されHが生成される。
【0015】
上記の(3)式の反応では、ΔSが負の値を取るため、反応熱TΔSも負の値を取る(S:エントロピー、T:絶対温度)。つまり、上記の(3)式の反応では、反応により発熱が起こる。また、固体電解質1に電流が流れるため、固体電解質1においてジュール熱も発生する。したがって、固体酸化物燃料電池では発電動作時に高温になる。また、固体酸化物燃料電池以外の燃料電池装置においても一般的に発電動作時に高温になる。
【0016】
燃料電池装置は、高温になることで、材料自体の劣化、酸化剤極と電解質あるいは燃料極と電解質の熱膨張係数の違いによる熱応力の発生、起動停止サイクルによる熱疲労の増大、燃料ガスを封止する封止材料の劣化などによるクラックが発生してしまうという問題を有している。
【0017】
また、上記の(1)式の反応では、ΔSが負の値を取るため、反応熱TΔSも負の値を取る(S:エントロピー、T:絶対温度)。つまり、上記の(1)式の反応では、反応により発熱が起こる。したがって、基材料(主成分)が鉄である水素発生装置では水素発生時に高温になる。また、基材料(主成分)が鉄である水素発生装置以外の化学反応により水素を含む燃料を発生し、前記化学反応の逆反応により再生可能な燃料発生装置においても燃料発生時と再生時のいずれか一方で必ず発熱反応が起こり高温になる。
【0018】
燃料発生装置では、一般的に、反応速度を上げるために燃料発生部材を微粒子にしているが、高温になることで、粒子同士が凝集(シンタリング)して燃料発生部材の表面積が減少してしまい反応速度が下がってしまうという問題があった。
【0019】
なお、特許文献1には、熱伝導率を大きく変化させることができる熱伝導構造が開示されているが、当該熱伝導構造の適用例としては、車両のエンジンと排気パイプや水冷ラジエータとの間あるいは保温ポットの内壁と外壁との間に設けることしか示されておらず、上述した燃料電池装置や燃料発生装置での問題点やその問題点を解決する手段は開示も示唆もされていない。
【0020】
本発明は、上記の状況に鑑み、過熱を防止することができる燃料電池装置及び2次電池型燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明に係る燃料電池装置は、燃料電池と、前記燃料電池を収納する二重壁容器とを備え、前記二重壁容器の二重壁内の空間に接触部材を設け、前記接触部材が前記二重壁容器の内壁と外壁のいずれか一方のみに接触している第1の状態と、前記接触部材が前記二重壁容器の内壁と外壁の両方に接触している第2の状態との切り替えが可能であり、前記第2の状態の方が前記第1の状態よりも前記二重壁容器の二重壁間の熱伝導率が高い構成とする。
【0022】
このような構成によると、第2の状態にすることで、燃料電池の過熱を防止することができる。
【0023】
また、上記目的を達成するために本発明に係る2次電池型燃料電池システムは、再生可能な燃料発生装置と、前記燃料発生装置から供給される燃料を用いて発電を行う燃料電池とを備え、前記燃料発生装置及び前記燃料電池の少なくとも一方を二重壁容器に収納し、前記二重壁容器の二重壁内の空間に接触部材を設け、前記接触部材が前記二重壁容器の内壁と外壁のいずれか一方のみに接触している第1の状態と、前記接触部材が前記二重壁容器の内壁と外壁の両方に接触している第2の状態との切り替えが可能であり、前記第2の状態の方が前記第1の状態よりも前記二重壁容器の二重壁間の熱伝導率が高い構成とする。
【0024】
このような構成によると、第2の状態にすることで、燃料発生装置及び燃料電池の少なくとも一方の過熱を防止することができる。
【0025】
また、上記構成の燃料電池装置または上記構成の2次電池型燃料電池システムにおいて、前記接触部材が、温度によって形状が変化する形状変化部材を有するようにしてもよい。この場合、前記形状変化部材をバイメタルまたは形状記憶合金にしてもよい。
【0026】
また、上記構成の燃料電池装置または上記構成の2次電池型燃料電池システムにおいて、前記接触部材が球状部材であり、前記二重壁容器の二重壁間の間隔が少なくとも2種類あるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、過熱を防止することができる燃料電池装置及び2次電池型燃料電池システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】固体酸化物型燃料電池の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。
【図3】一般的な二重壁容器の概略構成を断面図である。
【図4】平板の定常熱伝導を説明するための図である。
【図5】本発明に用いる二重壁容器の第1実施形態の概略構成を断面図である。
【図6】本発明に用いる二重壁容器の第2実施形態の概略構成を断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。尚、本発明は、後述する実施形態に限られない。
【0030】
<<2次電池型燃料電池システムの構成>>
図2は、本発明の一実施形態に係る2次電池型燃料電池システムの全体構成を示す図である。図2に示す本発明の一実施形態に係る2次電池型燃料電池システムは、化学反応により水素を含む燃料を発生し、前記化学反応の逆反応により再生可能な燃料発生器を少なくとも一つ有する燃料発生装置5と、酸素を含む酸化剤と燃料発生装置5から供給される水素を含む燃料との反応により発電を行う燃料電池装置6と、燃料発生装置5と燃料電池装置6との間でガスを循環させる循環経路7とを備えている。さらに、図2に示す本発明の一実施形態に係る2次電池型燃料電池システムの燃料発生装置5、燃料電池装置6、及び循環経路7には必要に応じて、温度を調節するヒーター、循環経路7内のガスを循環させるためのポンプ、水素を含む燃料ガスの漏洩を検知するセンサー、各燃料発生器へのガス流量を個別に制御する流量制御器等を設けてもよい。なお、本実施形態では、燃料電池装置6を固体酸化物燃料電池とし、1つの燃料電池装置6が発電も水の電気分解も行っているが、燃料発生装置5が、燃料電池(例えば発電専用の固体酸化物燃料電池)と水の電気分解器(例えば水の電気分解専用の固体酸化物燃料電池)それぞれにガス循環経路上並列に接続される構成にしてもよい。また、図1では、MEAを1つだけ設けた構造を図示しているが、MEAを複数設けたり、さらに複数のMEAを積層構造にしたりしてもよい。
【0031】
本実施形態では、燃料電池装置6を固体酸化物燃料電池としているので、燃料極3側で消費されたり生成されたりするガス(水素ガス、水蒸気ガス)が、燃料電池装置6の燃料極3側と燃料発生装置5との間を循環することになる。
【0032】
また、本実施形態では、燃料発生装置5に鉄の微粒子圧縮体を収容しているので、上述した(1)式に示す酸化反応により、水素を発生することができる。
【0033】
上述した(1)式に示す鉄の酸化反応が進むと、鉄から酸化鉄への変化が進んで鉄残量が減っていくが、上述した(2)式に示す還元反応(上述した(1)式に示す酸化反応の逆反応)により、燃料発生装置5を再生することができ、システムを充電することができる。
【0034】
<<二重壁容器の構成>>
図2に示す本発明の一実施形態に係る2次電池型燃料電池システムでは、燃料発生装置5と燃料電池装置6がそれぞれ二重壁容器に収容されている。なお、燃料発生装置5が複数の燃料発生器を有する場合は、燃料発生器毎に別個の二重壁容器を設けることが好ましい。
【0035】
<一般的な二重壁容器>
まず、一般的な二重壁容器の構成を図3に示す。図3に示す二重壁容器は、内壁8と外壁9とを有しており、二重壁内を熱伝導率の低い状態にすることによって断熱性能を高めている。また、図3に示す二重壁容器は、二重壁構造を固定するために内壁8を支持する支持部10も有している。
【0036】
二重壁内を熱伝導率の低い状態にする方法としては、二重壁内の空間を気密空間にして真空状態にする方法、二重壁内の空間を気密空間にして熱伝導率の低い気体を充填する方法、二重壁内の空間にガラスウールなどの熱伝導率の低い部材を充填する方法などが挙げられる。熱伝導率をできるだけ低くするという観点から、二重壁内の空間を気密空間にして真空状態にする方法が好ましい。
【0037】
内壁8及び外壁9の材料には、耐高温の材料であるガラスや金属などを用いるとよい。また、支持部10の材料には、耐高温であり尚かつ熱伝導率が低い材料であるガラスなどを用いるとよい。
【0038】
内壁8から外壁9への熱の伝達は主として支持部10を経由して起こる。ここで、図4を参照して平板の定常熱伝導について考える。平板(熱伝導率k、長さL、断面積A)の両端間に温度差ΔTがある場合、平板内の伝熱量Qは、下記の(5)式で表わされる。
Q=kAΔT/L ・・・(5)
したがって、図3に示す二重壁容器の断熱性能を高めるためには、支持部10の材料に熱伝導率を小さい材料を用いる、支持部10の断面積を小さくする、支持部10の長さ(内壁8と外壁9との距離)を長くするなどの方法がある。
【0039】
<本発明に用いる二重壁容器の第1実施形態>
次に、図2に示す本発明の一実施形態に係る2次電池型燃料電池システムで用いる二重壁容器の第1実施形態の構成を図5に示す。
【0040】
図5に示す第1実施形態に係る二重壁容器は、図3に示す一般的な二重壁容器にバイメタル11を追加した構成である。図5に示す構成において、バイメタル11は、内壁8には固定されているが、外壁9には固定されていない。なお、バイメタル11を外壁9に固定し内壁8に固定しないようにする構成も考えられるが、外壁9よりも内壁9の方が容器内の温度変化に追随する速度が速いため、バイメタル11を固定するのは内壁8の方が好ましい。
【0041】
図5に示す第1実施形態に係る二重壁容器では、バイメタル11が所定の温度未満である場合は、バイメタル11と外壁9とが非接触状態であり、容器内が高温になりバイメタル11が所定の温度以上になっている場合は、バイメタル11の変形によってバイメタル11と外壁9とが接触状態になるように、バイメタル11の形状を設計しておく。バイメタル11の形状としては、例えば、立方体、U字型、らせん状などが挙げられる。バイメタル11と外壁9とが接触状態になることで、バイメタル11と外壁9とが非接触状態である場合よりも、二重壁間の熱伝導率が高くなり、容器内の過熱を防止することができる。
【0042】
バイメタル11は、線膨張係数の異なる2種類の導電性材料が接合された構造を有している。例えば、線膨張係数が17×10―6/℃であるステンレス材料と、線膨張係数が9×10―6/℃であるチタン合金とが接合された構造を有するバイメタルを用いることができる。線膨張係数の異なる2種類の導電性材料が接合された構造を有するバイメタルは、加熱されると、線膨張係数の大きい金属材料側に凸状に湾曲する。
【0043】
ここで、金属材料の線膨張係数の参考値を小さい順に示す。上述した設計条件を満たすように、下記に列挙された金属あるいはその他の金属から線膨張係数の異なる2種を選択すればよい。
Cr:6.5×10―6/℃,Ti:8.9×10―6/℃,Pt:9.0×10―6/℃,SUS430:10.4×10―6/℃,Co:12.5×10―6/℃,Ni:13.3×10―6/℃,Au:14.1×10―6/℃,SUS310:15.8×10―6/℃,Mo:16.0×10―6/℃,SUS316:16.0×10―6/℃,SUS301:16.9×10―6/℃,Cu:17.0×10―6/℃,SUS304:17.3×10―6/℃,Ag:19.1×10―6/℃,Mn:23.0×10―6/℃,Pb:29.0×10―6/℃
【0044】
なお、バイメタル11の代わりに、バイメタル以外の温度によって形状が変化する形状変化部材(例えば形状記憶合金)を用いてもよい。
【0045】
<本発明に用いる二重壁容器の第2実施形態>
次に、図2に示す本発明の一実施形態に係る2次電池型燃料電池システムで用いる二重壁容器の第2実施形態の構成を図6に示す。
【0046】
図6に示す第2実施形態に係る二重壁容器は、図3に示す一般的な二重壁容器に熱伝導球12を追加し、二重壁間の間隔を面によって変えている構成である。熱伝導球12の材料には、耐高温であり尚かつ熱伝導率が高い材料である金属などを用いるとよい。なお、図6に示す第2実施形態に係る二重壁容器は、支持部10があっても熱伝導球12が二重壁間の間隔がaである場所と二重壁間の間隔がbである場所とを相互に移動可能な構造にしておく。
【0047】
図6(a)に示す状態では、二重壁間の間隔がaである場所に熱伝導球12が位置しており、熱伝導球12が内壁8には接触しているが、外壁9には接触していない。一方、図6(a)に示す状態から90°回転している図6(b)に示す状態では、二重壁間の間隔がbである場所に熱伝導球12が位置しており、熱伝導球12が内壁8にも外壁9にも接触している。図6(a)に示す状態と図6(b)に示す状態との切り替えは、例えば図6に示す第2実施形態に係る二重壁容器のみの回転あるいは図6に示す第2実施形態に係る二重壁容器を含む燃料電池システム全体の回転などによって実現することができる。なお、二重壁間の間隔a、bと熱伝導球12の直径φとが次の関係を満たすようにすればよい。
a>b≒φ
【0048】
図6(b)に示す状態になることで、図6(a)に示す状態である場合よりも、二重壁間の熱伝導率が高くなり、容器内の過熱を防止することができる。したがって、燃料電池システムの運転状態や図6に示す第2実施形態に係る二重壁容器の内部状態に応じて、図6(a)に示す状態と図6(b)に示す状態とを切り替えるようにし、図6に示す第2実施形態に係る二重壁容器内の過熱を防止する必要があるときに、図6(b)に示す状態に切り替わるようにすればよい。
【0049】
<本発明に用いる二重壁容器が奏する効果>
本発明に用いる二重壁容器が奏する効果について、(比較例1)、(実施例1)、(比較例2)、(比較例2)、(実施例3)の5種類のサンプルを作製して検証した。
【0050】
(比較例1)
比較例1で用いる二重壁容器は、図3に示す構成であり、内壁8及び外壁9にはステンレス板を用い、支持部10にはガラスを用い、内壁8と外壁9との間隔を5mmとし、二重壁間の空間を気密空間にして真空にひいた。また、内壁8の内側は金属被膜により熱線反射構造とした。ガラスを用いた支持部10とステンレス板を用いた内壁8及び外壁9とは陽極接合で接続し、真空状態を維持できるよう気密性を高めた。
【0051】
上記のような構成である二重壁容器内に、固体酸化物燃料電池とヒーターを配置した。ヒーターにより二重壁容器内を200℃まで加温し、固体酸化物燃料電池の燃料極側に水素を供給し、固体酸化物燃料電池の空気極側に空気を供給することで、固体酸化物燃料電池を起動させ、発電反応を開始させた。低温時には発電効率が低いため、大きなジュール熱が発生し、固体酸化物燃料電池の温度が上昇した。600℃以上の高温になると、発電効率が上がりジュール熱は少なくなったが、発電反応自体が発熱反応であるため、固体酸化物燃料電池の温度は上昇し続け、最高温度は1070℃に達した。起動・停止サイクルを3回繰り返したのち、二重壁容器内から固体酸化物燃料電池を取り出して観察したところ、クラックが12箇所で発生していた。
【0052】
(実施例1)
実施例1で用いる二重壁容器は、図5に示す構成であり、内壁8及び外壁9にはステンレス板を用い、支持部10にはガラスを用い、内壁8と外壁9との間隔を5mmとし、二重壁間の空間を気密空間にして真空にひいた。また、内壁8の内側は金属被膜により熱線反射構造とした。ガラスを用いた支持部10とステンレス板を用いた内壁8及び外壁9とは陽極接合で接続し、真空状態を維持できるよう気密性を高めた。さらに、バイメタル11の形状をU字形とし、高温となった時に端部の間隔が開いて、バイメタル11と外壁9とが接触するように構成した。
【0053】
上記のような構成である二重壁容器内に、固体酸化物燃料電池とヒーターを配置した。ヒーターにより二重壁容器内を200℃まで加温し、固体酸化物燃料電池の燃料極側に水素を供給し、固体酸化物燃料電池の空気極側に空気を供給することで、固体酸化物燃料電池を起動させ、発電反応を開始させた。低温時には発電効率が低いため、大きなジュール熱が発生し、固体酸化物燃料電池の温度が上昇した。600℃以上の高温になると、発電効率が上がりジュール熱は少なくなったが、発電反応自体が発熱反応であるため、固体酸化物燃料電池の温度は上昇し続けた。バイメタル11の温度が700℃に達すると、バイメタル11と外壁9とが接触し、二重壁容器内の熱がバイメタル11を経由して容器外部へ放熱され始めた。これにより、固体酸化物燃料電池は700℃を大きく上回ることがなかった。起動・停止サイクルを3回繰り返したのち、二重壁容器内から固体酸化物燃料電池を取り出して観察したところ、クラックは発生していなかった。
【0054】
(実施例2)
実施例2で用いる二重壁容器は、図6に示す構成であり、内壁8及び外壁9にはステンレス板を用い、支持部10にはガラスを用い、内壁8と外壁9との間隔を5mmと7mmの2種類とし、二重壁間の空間を気密空間にして真空にひいた。また、内壁8の内側は金属被膜により熱線反射構造とした。ガラスを用いた支持部10とステンレス板を用いた内壁8及び外壁9とは陽極接合で接続し、真空状態を維持できるよう気密性を高めた。さらに、熱伝導球12の直径を5mmとした。
【0055】
上記のような構成である二重壁容器内に、固体酸化物燃料電池とヒーターを配置した。二重壁間の間隔が7mmである場所に熱伝導球12が位置するようにし、ヒーターにより二重壁容器内を200℃まで加温し、固体酸化物燃料電池の燃料極側に水素を供給し、固体酸化物燃料電池の空気極側に空気を供給することで、固体酸化物燃料電池を起動させ、発電反応を開始させた。低温時には発電効率が低いため、大きなジュール熱が発生し、固体酸化物燃料電池の温度が上昇した。600℃以上の高温になると、発電効率が上がりジュール熱は少なくなったが、発電反応自体が発熱反応であるため、固体酸化物燃料電池の温度は上昇し続けた。固体酸化物燃料電池の温度が700℃に達した時点で、二重壁容器を90°回転させて、二重壁間の間隔が5mmである場所に熱伝導球12を移動させた。これにより、固体酸化物燃料電池は700℃を大きく上回ることがなかった。起動・停止サイクルを3回繰り返したのち、二重壁容器内から固体酸化物燃料電池を取り出して観察したところ、クラックは発生していなかった。
【0056】
上記(比較例1)、(実施例1)、(実施例2)の評価結果をまとめると、以下の表1のようになる。
【0057】
【表1】

【0058】
(比較例2)
比較例2で用いる二重壁容器は、比較例1で用いた二重壁容器と同一である。比較例2では、二重壁容器内に、鉄の微粒子圧縮体とヒーターを配置した。
【0059】
ヒーターにより二重壁容器内を120℃まで加温したところで、二重壁容器内に水蒸気を供給し、水素の発生を開始させた。その後、鉄の酸化反応での発熱によって二重壁容器内の温度は上昇し続け、最高温度は280℃に達した。起動・停止サイクルを3回繰り返したのち、二重壁容器内から鉄の微粒子圧縮体を取り出して表面積を測定したところ、初期状態の表面積に比べて50%も減少してしまった。
【0060】
(実施例3)
実施例3で用いる二重壁容器は、実施例1で用いた二重壁容器とほぼ同一であるが、バイメタル11の温度が160℃に達すると、バイメタル11と外壁9とが接触する点のみが実施例1で用いた二重壁容器と異なっている。実施例3では、二重壁容器内に、鉄の微粒子圧縮体とヒーターを配置した。
【0061】
ヒーターにより二重壁容器内を120℃まで加温したところで、二重壁容器内に水蒸気を供給し、水素の発生を開始させた。その後、鉄の酸化反応での発熱によって二重壁容器内の温度は上昇した。バイメタル11の温度が160℃に達すると、バイメタル11と外壁9とが接触し、二重壁容器内の熱がバイメタル11を経由して容器外部へ放熱され始めた。そのとき、別途準備した固体酸化物燃料電池を収納している二重壁容器と実施例3で用いる二重壁容器とを接触させ、実施例3で用いる二重壁容器からの放熱を固体酸化物燃料電池の加温に利用した。これにより、鉄の微粒子圧縮体は160℃を大きく上回ることがなかった。起動・停止サイクルを3回繰り返したのち、二重壁容器内から鉄の微粒子圧縮体を取り出して表面積を測定したところ、初期状態の表面積に比べて5%しか減少していなかった。
【0062】
上記(比較例2)、(実施例3)の評価結果をまとめると、以下の表2のようになる。
【0063】
【表2】

【符号の説明】
【0064】
1 固体電解質
2 酸化剤極
3 燃料極
4 外部負荷
5 燃料発生装置
6 燃料電池装置
7 循環経路
8 内壁
9 外壁
10 支持部
11 バイメタル
12 熱伝導球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池を収納する二重壁容器とを備え、
前記二重壁容器の二重壁内の空間に接触部材を設け、
前記接触部材が前記二重壁容器の内壁と外壁のいずれか一方のみに接触している第1の状態と、前記接触部材が前記二重壁容器の内壁と外壁の両方に接触している第2の状態との切り替えが可能であり、
前記第2の状態の方が前記第1の状態よりも前記二重壁容器の二重壁間の熱伝導率が高いことを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
前記接触部材が、温度によって形状が変化する形状変化部材を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記形状変化部材が、バイメタルまたは形状記憶合金であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記接触部材が球状部材であり、
前記二重壁容器の二重壁間の間隔が少なくとも2種類あることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
再生可能な燃料発生装置と、
前記燃料発生装置から供給される燃料を用いて発電を行う燃料電池とを備え、
前記燃料発生装置及び前記燃料電池の少なくとも一方を二重壁容器に収納し、
前記二重壁容器の二重壁内の空間に接触部材を設け、
前記接触部材が前記二重壁容器の内壁と外壁のいずれか一方のみに接触している第1の状態と、前記接触部材が前記二重壁容器の内壁と外壁の両方に接触している第2の状態との切り替えが可能であり、
前記第2の状態の方が前記第1の状態よりも前記二重壁容器の二重壁間の熱伝導率が高いことを特徴とする2次電池型燃料電池システム。
【請求項6】
前記接触部材が、温度によって形状が変化する形状変化部材を有することを特徴とする請求項5に記載の2次電池型燃料電池システム。
【請求項7】
前記形状変化部材が、バイメタルまたは形状記憶合金であることを特徴とする請求項6に記載の2次電池型燃料電池システム。
【請求項8】
前記接触部材が球状部材であり、
前記二重壁容器の二重壁間の間隔が少なくとも2種類あることを特徴とする請求項5に記載の2次電池型燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−84366(P2012−84366A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229153(P2010−229153)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】