説明

燃料電池装置

【課題】膜式加湿器の加湿性能を損なうことなく、しかもレイアウトが大きく制約されることのない燃料電池装置を提供する。
【解決手段】燃料電池10と、この燃料電池10から排出されるカソードオフガスから燃料電池10に供給される供給ガスに水分を与える加湿器32と、燃料電池10と加湿器32との間に配置され、内部に水蒸気透過膜を備え、当該水蒸気透過膜の一面および他面のうちの一方にカソードオフガスを、他方に液水をそれぞれ接触させることにより、カソードオフガスから熱を奪うことでカソードオフガスの温度を下げる冷却器33と、カソードオフガスが通流するオフガス流路上に配置される回収器35と、回収器35によって回収された回収水を液水として冷却器33に供給する回収水導入配管b9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜式加湿器を備えた燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子膜型の燃料電池では、燃料電池の膜(電解質膜)が乾燥し過ぎると発電性能が低下することから、膜を適度に加湿するため供給ガスに水分を与える膜式の加湿器を備えたものが種々提案されている。この種の加湿器は、例えば、燃料電池から排出されるオフガスを利用して、燃料電池に供給される供給ガスとオフガスとの間で水分交換させている。しかし、燃料電池の運転温度が高温になると、燃料電池から排出されるオフガスの相対湿度が100%を下回るため、加湿器の加湿性能が十分に発揮されなくなるおそれがある。そこで、燃料電池と加湿器との間のオフガス流路上に空冷式や水冷式の熱交換器を有する冷却器を備えて、オフガスの温度を下げて湿度を上げる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−152013号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の空冷式の冷却器を車両に搭載した場合、バンパ開口部等に設置する必要があり、レイアウトが制約されるという問題がある。また、水冷式の冷却器を搭載した場合においても、ラジエータの追加によってレイアウトが制約されるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するものであり、膜式加湿器の加湿性能を損なうことなく、しかもレイアウトが大きく制約されることのない燃料電池装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃料電池と、前記燃料電池から排出されるオフガスから水分を得て当該燃料電池に供給される供給ガスに水分を与える膜式加湿器と、前記燃料電池と前記膜式加湿器との間に配置され、内部に水蒸気透過膜を備え、当該水蒸気透過膜の一面および他面のうちの一方に前記オフガスを、他方に液水をそれぞれ接触させることにより、前記オフガスから熱を奪うことで当該オフガスの温度を下げる冷却器と、を備えることを特徴とする。
【0007】
これによれば、水蒸気透過膜の一面にオフガス、他面に液水を接触させることにより、液水が蒸発する際の潜熱(気化熱)を利用してオフガスの温度を下げることが可能になる。その結果、膜式加湿器に供給されるオフガスの温度を適正化することができる。
【0008】
つまり、燃料電池の運転温度が高温になると、オフガスの相対湿度が100%を下回り、膜式加湿器がドライアップ(膜式加湿器において加湿効率が過度に低下する状態)してしまい、十分な加湿性能を発揮できなくなるおそれがある。そこで、水蒸気透過膜による冷却器を燃料電池と膜式加湿器との間に配置することによって、オフガスを冷却することでオフガスの相対湿度を上げることができる。このようにしてオフガスの相対湿度が100%を下回らないようにすることができ、膜式加湿器のドライアップを防止することが可能になる。
【0009】
また、冷却器として水蒸気透過膜を含む構成とすることにより、水冷式や空冷式の熱交換器を備えた冷却器と比べて、冷却器自体のサイズを小型化することが可能になり、レイアウトが大きく制約されるのを防止することができる。また、冷却器を車両に搭載した場合、バンパ開口部等に配置したり、ラジエータなどの大型の熱交換器を追加したりする必要がないので、レイアウトが大きく制約されるのを防止できる。しかも、オフガスの湿度が100%以上のときには、水蒸気透過膜を透過した水分が蒸発することが無いため冷却機能が働かず、余計な冷却による加湿性能低下を招くおそれがない。これに対し空冷式等の熱交換器を備えた冷却器とした場合には、熱交換器をバイパスする構成が必要になるが、こうした構成部の追加を避けることができる。
【0010】
また、前記オフガスが通流するオフガス流路上に配置される凝縮水回収器と、前記凝縮水回収器によって回収された回収水を前記液水として前記冷却器に供給する回収水供給流路と、を備えることを特徴とする。
【0011】
これによれば、燃料電池から排出される液水(凝縮水、生成水)を凝縮水回収器で貯留することで、燃料電池から排出される液水を有効に利用してオフガスを冷却することができる。また、冷却器に液水を供給するための装置を別個に設ける必要がない。
【0012】
また、前記冷却器は、鉛直上下方向に延在する複数の中空糸状の水蒸気透過膜を備えることを特徴とする。
【0013】
これによれば、冷却器内の液水(水位)が上下に変動したとしても、それぞれの水蒸気透過膜に対して、液水を均等に接触させることができるので、冷却器に導入されたオフガスの熱が均等に奪われて、冷却効果を高めることができる。
【0014】
また、前記膜式加湿器に導入されるオフガスの温度を決定する温度センサと、予め設定された発電電力と前記膜式加湿器に導入されるオフガスの許容温度値との関係を用いて、前記発電電力から前記許容温度値を求め、前記許容温度値と前記温度センサの温度値との比較により発電電力を調整する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
これによれば、発電電力が高くて、温度センサの温度値(実際の温度)が許容温度値よりも高い場合には、発電電力が低下するように制御する。このように発電電力を低下させることで、許容温度値が上昇するので発電電力の制限(抑制制御)が緩和される。一方、発電電力が低くて、温度センサの温度値(実際の温度)が許容温度値よりも高い場合には、発電電力が上昇するように制御する。このように発電電力を上昇させることで、許容温度値が上昇するので、発電電力の制限(上昇制御)が緩和される。
【0016】
また、前記冷却器は、回収水の水位を検出する水位センサと、回収水を排出する排出弁とを備えることを特徴とする。
【0017】
これによれば、冷却器内の液水の水位を管理することで、冷却器としての能力を適正に保つことができる。
【0018】
また、予め設定された前記冷却器の水位と発電電力との関係を用いて、前記水位センサの水位に基づいて前記発電電力を制限する制御部を備えることを特徴とする。
【0019】
これによれば、冷却器の水位が低い場合には、発電電力を制限して(抑えて)、燃料電池を過飽和になり易くして、液水(凝縮水)をできるだけ確保することで、液水が不足するのを防止できる。
【0020】
また、前記燃料電池装置の運転を停止する際、前記冷却器の温度を検出する第2温度センサ、前記燃料電池装置の運転停止からの経過時間を計測するタイマの少なくともひとつの出力値を用いて、当該出力値が所定条件を満たした場合に前記排出弁を開成する制御部を備えることを特徴とする。
【0021】
これによれば、凍結による水蒸気透過膜の破損、または燃料電池装置の起動時において膜式加湿器に低い温度のオフガスが供給されることによる起動性の低下を防止することができる。なお、所定条件とは、第2温度センサにより検出される温度が所定温度を下回ったとき、またタイマにより計測される燃料電池装置の運転停止時からの経過時間が所定時間を経過したときなどである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、膜式の加湿器の加湿性能を損なうことなく、しかもレイアウトが大きく制約されることのない燃料電池装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る燃料電池装置を示す全体構成図である。
【図2】(a)は冷却器の構造を示す概略図、(b)は冷却器のオフガスと液水の流路を説明する断面図である。
【図3】発電電力の制御を示すフローチャートである。
【図4】冷却器出口のオフガスの許容温度と発電電力との関係を示すマップである。
【図5】発電電力の別の制御を示すフローチャートである。
【図6】冷却器の水位と発電電力の制限割合との関係を示すマップである。
【図7】運転停止時の排出弁の制御を示すフローチャートである。
【図8】運転停止時の排出弁の別の制御を示すフローチャートである。
【図9】本実施形態に係る燃料電池装置の変形例を示す全体構成図である。
【図10】本実施形態に係る燃料電池装置の他の変形例を示す全体構成図である。
【図11】本実施形態に係る燃料電池装置のさらに他の変形例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池装置について図面を参照して説明する。なお、本実施形態の燃料電池装置1A〜1Dは、四輪や二輪などの燃料電池車、船舶、航空機など移動式のもの、あるいは家庭用や業務用で定置式のものなど電気を必要とするあらゆるものに適用できる。なお、以下では、燃料電池車を例に挙げて説明する。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池装置1Aは、燃料電池10、アノード系20、カソード系30、冷却系40、制御系50を含んで構成されている。
【0026】
燃料電池10は、例えば、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:
PEFC)であり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)を一対のセ
パレータ(図示せず)で挟持してなる単セルを厚み方向に複数積層し、各単セルを電気的に直列に接続した燃料電池スタックである。
【0027】
MEAは、陽イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜(以下、電解質膜と略記する)をアノードとカソードとで挟んで構成されている。アノードおよびカソードは、例えば、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に塗布されて形成された電極触媒層とで構成される。
【0028】
セパレータは、カーボンなどの導電性の金属材料で形成され、水素(燃料ガス)が通流するアノード流路11、空気(酸化剤)が通流するカソード流路12、燃料電池10を冷却する冷媒が通流する冷媒流路13がそれぞれ形成されている。
【0029】
このように構成された燃料電池10では、アノードに水素が供給され、カソードに空気中の酸素が供給されることにより、アノードおよびカソードに含まれる触媒の作用により、燃料電池10が発電可能な状態となる。また、燃料電池10が発電することにより、カソード側で水が生成され、凝縮水や水蒸気としてこの生成水がカソード流路12の出口から排出され、また電解質膜を透過してアノード流路11の出口から排出される。
【0030】
また、燃料電池10は、外部負荷と電気的に接続され、外部負荷によって電流が取り出されると、燃料電池10が発電するようになっている。なお、外部負荷とは、後記するエアポンプ31、冷媒ポンプ43、高圧バッテリ(不図示)、走行モータ(不図示)などである。
【0031】
アノード系20は、燃料電池10のアノードに対して水素を給排するものであり、気液分離器21、ドレン弁22、パージ弁23を含んで構成されている。また、アノード系20は、図示しない高圧水素タンクから遮断弁および減圧弁を介して供給された水素が、アノード流路11の入口に対して配管a1を介して供給されるようになっている。アノード流路11の出口から排出された未反応の水素は、配管a2,気液分離器21、配管a3を介して配管a1に戻るようにして循環するように構成されている。図示していないが、水素を循環させる手段としては、エゼクタや回転式ポンプなどである。
【0032】
気液分離器21は、アノード流路11の出口から排出されたアノードオフガスに含まれる水分と未反応の水素とを分離する機能を有して、水分(液水)を貯留する貯留部(不図示)を備えている。
【0033】
気液分離器21は、例えば、アノードオフガスが気液分離器21内の壁面に衝突することで、そこに含まれる水分を重力の作用によって空間内で落下させ底部に貯留させるように構成している。なお、ここでの水分は、アノード流路11の出口から排出される凝縮水だけではなく、アノード流路11の出口から排出された水蒸気が、気液分離器21内の壁面などに当たることによって結露したものが含まれる。
【0034】
ドレン弁22は、例えば、常閉型のものであり、気液分離器21の貯留部と配管a4を介して接続され、後記する希釈器36と配管a5を介して接続されるように構成されている。また、ドレン弁22は、後記する制御部51によって開弁されることにより、貯留部に貯留された液水(凝縮水、結露水)が、配管a4,a5を介して希釈器36に排出される。なお、ドレン弁22を開弁するタイミングは、気液分離器21内の水位を検出する水位センサ(不図示)によって判断してもよく、または定期的に開弁するようにしてもよく、または発電量による生成水量を積算して、該積算値が所定値に到達することで開弁するようにしてもよい。
【0035】
パージ弁23は、例えば、常閉型のものであり、開弁することで発電時において水素循環流路(アノード流路11および配管a1〜a3の流路)に蓄積した不純物を車外(燃料電池装置1Aの外部)に排出する。また、パージ弁23は、配管a6を介して配管a3と接続され、配管a7を介して配管a5と接続されている。なお、パージ弁23は、制御部51によって、水素循環流路内の水素濃度の低下(発電性能の低下)に応じて、および/または定期的に開閉制御される。
【0036】
カソード系30は、燃料電池10のカソードに対して空気(酸素)を給排するものであり、エアポンプ(酸化剤ポンプ)31、加湿器(膜式加湿器)32、冷却器33、背圧弁34、回収器(凝縮水回収器)35、希釈器36を含んで構成されている。エアポンプ31は、配管b1、加湿器32、配管b2を介してカソード流路12の入口と接続されている。カソード流路12の出口は、配管b3、冷却器33、配管b4、加湿器32、配管b5、背圧弁34、配管b6、回収器35、配管b7、希釈器36、配管b8を介して車外と連通している。なお、本実施形態において、配管b3〜b8がオフガス流路に相当する。
【0037】
エアポンプ31は、例えば、モータ(不図示)で駆動される機械式の過給器(スーパーチャージャなど)であり、車外から取り込んだ空気を圧縮して燃料電池10のカソードに供給する。
【0038】
加湿器32は、エアポンプ31から供給される乾燥空気(供給ガス、酸化剤ガス)を加湿する膜式のものであり、例えば、水分交換膜である複数の中空糸膜が束ねられた中空糸膜束が収容されたケース(不図示)を有し、エアポンプ31からの乾燥空気の入口32aおよび出口32b、カソードオフガス(オフガス)の入口32cおよび出口32dがそれぞれ形成されているものである。
【0039】
このような加湿器32では、例えば、ケース内の中空糸膜の内側をエアポンプ31からの乾燥空気が通り、中空糸膜の外側を湿潤な空気を含むカソードオフガスが通ることで、中空糸膜に形成された細孔内にカソードオフガスに含まれる水蒸気が入り込み、中空糸膜の細孔内を水蒸気が膜の外側から内側に移動することで、水蒸気が乾燥空気(供給ガス)に渡されて乾燥空気が加湿される。なお、乾燥空気が中空糸膜の外側、カソードオフガスが中空糸膜の内側を通るようにしてもよい。また、加湿器32は、中空糸膜に限定されるものではなく、平膜などの他の種類の水分透過膜で形成されていてもよい。
【0040】
冷却器33は、燃料電池10のカソード流路12の出口から排出されたカソードオフガス(オフガス)を冷却する機能を有し、燃料電池10と加湿器32との間のオフガス流路(配管b3,b4)に設けられている。
【0041】
また、冷却器33には、カソードオフガスが導入される入口33aおよびカソードオフガスが導出される出口33bが形成されるとともに、カソードオフガスを冷却する冷媒としての液水(回収水、凝縮水)が導入される入口33cおよび液水が導出される出口33dが形成されている。冷却器33の入口33cは、回収水導入配管(回収水供給流路)b9を介して後記する回収器35と接続され、冷却器33の出口33dは、回収水導出配管b10を介して後記する希釈器36と接続されている。また、冷却器33には、この冷却器33に貯留された液水を排出する配管33eが接続され、配管33e上に常閉型の排出弁33fが設けられている。なお、冷却器33の具体的な構成については後記する。
【0042】
背圧弁34は、例えばバタフライ弁などの開度調節可能な弁で構成され、燃料電池10のカソードに供給される空気の圧力(カソード圧)を調節する機能を有する。
【0043】
回収器(凝縮水回収器)35は、カソード流路12の出口から冷却器33、加湿器32および背圧弁34を通って排出された液水(凝縮水)を回収する回収空間(貯留空間)を有している。また、回収空間の底部は、回収水導入配管b9の上流端と接続されている。なお、回収器35によって回収された液水は、カソード流路12の出口から凝縮水となって排出される水分だけではなく、カソード流路12から回収器35に至るまでの間に水蒸気が放熱され、カソードオフガスの温度が低下することで、カソードオフガスに含まれる水蒸気が凝縮(結露)してなる水分、また回収器35内の壁面に衝突、接触することによって放熱され、カソードオフガスの温度が低下することで、カソードオフガスに含まれる水蒸気が凝縮(結露)してなる水分も含まれる。
【0044】
また、回収器35と冷却器33とを接続する回収水導入配管b9には、オリフィス35aが設けられている。このオリフィス35aは、回収器35から冷却器33に供給される液水の流量を一定にすることができ、また冷却器33の水蒸気透過膜33j(図2(a)参照)を介してカソードオフガスが回収器35に逆流するのを防止するようになっている。回収器35によって回収された(貯留された)液水は、回収器35に導入されるカソードオフガスの圧力によって回収水導入配管b9に押し出されることで、冷却器33に向けて圧送される。なお、液水を、回収水導入配管b9を介して回収器35から冷却器33に供給する際の圧力が不足する場合には、圧送用のポンプを回収水導入配管b9上に配置してもよい。
【0045】
希釈器36は、アノード流路11の出口から排出されたアノードオフガスに含まれる水素とカソード流路12の出口から排出されるカソードオフガス(主に空気)とを混合し、規定の水素濃度を下回るように希釈する機能を有している。希釈後のガスは配管b8、図示しない消音器等を介して車外に排出される。
【0046】
冷却系40は、燃料電池10に冷媒を循環させて燃料電池10を冷却する機能を有し、冷媒流路13の出口が配管c1を介してラジエータ41の入口と接続され、ラジエータ41の出口が配管c2、サーモスタット弁42、配管c3、冷媒ポンプ43、配管c4を介して冷媒流路13の入口と接続されている。また、冷却系40は、ラジエータ41をバイパスするバイパス配管c5を有し、バイパス配管c5の上流側の一端が配管c1に接続され、下流側の他端がサーモスタット弁42と接続されている。
【0047】
このような冷却系40では、燃料電池装置1Aの起動時にはサーモスタット弁42がバイパス配管c5側に切り替えられて燃料電池10の暖機が促進され、燃料電池10の運転温度が所定温度を超えたときに、ラジエータ41を通る流路が拡大するようにサーモスタット弁42が切り替えられる。
【0048】
制御系50は、制御部51、IG52、タイマ53、電圧制御器54、冷却器入口温度センサS1、冷却器出口温度センサS2、冷媒温度センサS3、冷却器内温度センサS4、水位センサS5などで構成されている。
【0049】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、プログラムが記録されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成され、エアポンプ31および冷媒ポンプ43の各モータ(不図示)の回転速度を制御し、IG52からの起動信号、タイマ53によって計測される時間(出力値)、冷却器入口温度センサS1、冷却器出口温度センサS2、冷媒温度センサS3からの温度値、冷却器内温度センサS4からの温度(出力値)、水位センサS5からの水位をそれぞれ取得し、ドレン弁22、パージ弁23、排出弁33fを開閉制御する。
【0050】
また、制御部51は、冷却器33の出口33bにおけるカソードオフガスの許容温度(加湿器32に導入されるカソードオフガスの許容温度)に応じて燃料電池10の発電電力を制限(抑制、上昇)する。また、制御部51は、水位センサS5による水位に応じて発電電力を制御、つまり水位が低くなるにつれて発電電力の制限割合を高くして、発電電力を小さくする。
【0051】
ところで、冷却器33内に水が残留していると凍結によって水蒸気透過膜33jが破損したり、また燃料電池装置1Aの次回起動時(IG−ON時)において、冷却器33によって冷やされたカソードオフガス(オフガス)が加湿器32に供給される。このため、エアポンプ31から燃料電池10に供給される供給ガス(乾燥空気)が冷やされてしまい、燃料電池装置1Aの暖機が損なわれることになる。
【0052】
そこで、制御部51は、燃料電池装置1Aの運転停止時に(IG−OFF)、冷却器内温度センサS4により検出される冷却器33内の温度に応じて排出弁33fを開成するか否かを判断して、必要に応じて冷却器33内に貯留された液水を排出するようにしてもよい。
【0053】
また、制御部51は、燃料電池装置1Aの運転停止時(IG−OFF)、運転停止から所定時間経過後に冷却器33内に貯留された液水を排出するか否かを判断するようにしてもよい。ここでの所定時間は、例えば、冷却器内温度センサS4により検出される温度値に基づいて変更することができる。つまり、冷却器内温度が低い場合には所定時間(排出弁33fを開成するまでの時間)を短く設定し、冷却器内温度が高い場合には所定時間(排出弁33fを開成するまでの時間)を長く設定する。
【0054】
電圧制御器54は、昇降圧コンバータなどを備えて構成され、制御部51から出力される電圧(電流)指令値つまり燃料電池10に対する発電指令に基づいて、燃料電池10から出力される発電電力を制御する機能を有する。この電圧制御器54が制御部51によって制御されることにより、燃料電池10から取り出される発電電力を上下させることができる。なお、本実施形態では、電圧制御部54と制御部51とで特許請求の範囲に記載の制御部が構成されている。
【0055】
図2に示すように、冷却器33は、例えば、円筒形状のケース33gを有し、このケース33gの鉛直上下方向の下部にカソードオフガス(オフガス)が導入される空間を有する下カバー33hが形成され、鉛直上下方向の上部にカソードオフガスが導出される空間を有する上カバー33iが形成されている。また、ケース33g内には、ポリイミド等から形成された中空糸状の水蒸気透過膜33jが複数本束ねられ中空糸膜束33kとされて収容されている。中空糸膜束33kは、鉛直上下方向に延在するように配置され、その鉛直上下方向の両端部がエポキシ樹脂等で形成されたポッティング部材33l,33m(封止部)を介して、ケース33gの内壁に固着されている。これにより、各水蒸気透過膜33jの外周面間、水蒸気透過膜33jの外周面とケース33gの内壁面との間が、それぞれ閉塞されるようになっている。
【0056】
ちなみに、冷却器33内に中空糸膜束33kが水平方向に延在するよう配置した場合、冷却器33内の液水の水位(水面)が上下に変動した場合には、水面よりも上側に配置される水蒸気透過膜33jでは液水と接する部分がなくなってしまい、各水蒸気透過膜33jに対して液水を均等に接触させることができなくなる。しかし、本実施形態では、中空糸膜束33kが鉛直上下方向に延在するように配置されることで、図2においてドットで示すように、冷却器33に回収された液水(回収水)の水面が上下に変動したとしても、それぞれの水蒸気透過膜33jに対して液水を均等に接触させることができる。
【0057】
また、冷却器33は、下カバー33hに配管b3が接続され、上カバー33iに配管b4が接続されている。これにより、配管b3を介して下カバー33に導入されたカソードオフガスは、水蒸気透過膜33jの内側を上方に向かって流れ、そして上カバー33i、配管b4を介して冷却器33の外部に排出される。
【0058】
また、冷却器33は、ケース33gの周面に、液水(回収水)が導入される回収水導入配管b9と、液水(回収水)が導出される回収水導出配管b10とが接続されている。回収水導入配管b9および回収水導出配管b10は、ケース33gのポッティング部材33l,33mの間の回収空間P(図2(b)参照)と連通し、かつ、該回収空間Pの上部に位置するように接続されている。これにより、回収水導入配管b9から導入された液水は、回収空間Pに溜まり、また回収空間Pが満水になったときに回収水導出配管b10を介して希釈器36に排出されるように構成されている。
【0059】
このように構成された冷却器33では、水蒸気透過膜33jの中空糸の内側(一面)にカソードオフガスが接触し、水蒸気透過膜33jの中空糸の外側(他面)に液水が接触することにより、液水が蒸発する際の潜熱を利用して、液水によってカソードオフガスから熱を奪うことでカソードオフガスが冷却される。
【0060】
次に、本実施形態に係る燃料電池装置1Aにおける発電制御について図3および図4を参照して説明する。図3は発電電力の制御を示すフローチャート、図4は冷却器出口のオフガスの許容温度と発電電力との関係を示すマップである。
【0061】
図3に示すように、制御部51は、燃料電池10の起動時、ステップS101において、図4に示すマップに基づいて燃料電池10の発電電力から求まる冷却器33の出口のカソードオフガスの許容温度が、実際(現在)の冷却器33の出口33bにおけるカソードオフガスの温度未満であるか否かを判断する。なお、実際の冷却器33の出口33bにおけるカソードオフガスの温度は、冷却器出口温度センサS2によって検出される。
【0062】
また、図4に示すマップは、発電電力と、冷却器33の出口33bにおける許容温度との関係を示し、実験やシミュレーションなどによって予め決定されたものである。すなわち、ある発電電力よりも低い領域R1では、発電電力が低くなるにつれて許容温度が低下する領域を有し、燃料電池10の状態を優先する領域であり、一方、ある発電電力よりも高い領域R2では、発電電力が高くなるにつれて許容温度が低下する領域を有し、加湿器32の状態を優先する領域である。なお、領域R1において発電電力が上昇するにつれて許容温度が高くなるのは、燃料電池10の発電電力が高くなるにつれて液水が多く生成されるようになるので、燃料電池10内の液水が過剰になってフラッディングが発生するのを防止するためである。また、領域R2において発電電力が上昇するにつれて許容温度が低くなるのは、燃料電池の温度が高くなり過ぎて、カソードオフガスの相対湿度が100%を下回ってしまい、加湿器32がドライアップするのを防止するためである。
【0063】
ステップS101において、制御部51は、許容温度が実際の冷却器33の出口のカソードオフガスの温度未満ではないと判断した場合には(No)、実際のカソードオフガスの温度が図4に示すマップの許容温度を超えていないので、ステップS101の処理を繰り返す。また、制御部51は、許容温度が実際のカソードオフガスの温度未満と判断した場合には(Yes)、ステップS102に進み、図4のマップにしたがって、電圧制御器54を制御して、燃料電池10から取り出す発電電力を上昇または低下するように制御する。
【0064】
例えば、図4の領域R2において符号Q1で示すように、発電電力が高く、発電電力W1における実際のカソードオフガスの温度Tsが、このマップに基づく許容温度Taを超えている場合には、発電電力をW1からW2まで低下させる。このように発電電力を低下させることにより、燃料電池10の温度が低下し、カソードオフガスの温度が下がるので、燃料電池10から排出されるカソードオフガスの湿度が高まり、相対湿度100%のカソードオフガスが生成されるようになる。許容温度Taは、発電電力の制限(低下)により上昇するので、実際のカソードオフガスの温度Tsが許容温度の範囲内となり(S101、No)、発電電力の制限(抑制制御)が解消される。
【0065】
また、図4の領域R1において符号Q2で示すように、発電電力が低く、発電電力W3における実際のカソードオフガスの温度Tsが、マップに基づく許容温度Tbを超えている場合には、発電電力をW3からW4まで上昇させる。このように発電電力を上昇させることにより、燃料電池10の温度が高くなり、過飽和でフラッディング気味だったカソードオフガスの湿度が低下し、相対湿度100%の安定した冷却器33の出口ガス(カソードオフガス)が生成される。許容温度Tbは、発電電力の上昇により上昇するので、実際のカソードオフガスの温度Tsが許容温度の範囲内となり(S101、No)、発電電力の制限(上昇制御)が解消される。
【0066】
なお、前記したステップS101では、温度センサとして、冷却器出口温度センサS2の場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、冷却器入口温度センサS1、冷媒温度センサS3を用いて判断してもよい。あるいは、図示していないが、アノード流路11の出口における配管a2のアノードオフガス(オフガス)の温度、燃料電池10の温度を直接に検出する温度に基づいて判断してもよい。なお、冷却器入口温度センサS1、冷媒温度センサS3等による温度については、検出された温度を補正して、補正後の温度値と、許容温度値とを比較するようにしてもよい。
【0067】
また、本実施形態に係る燃料電池装置1Aにおける他の発電制御について図5および図6を参照して説明する。図5は他の発電電力の制御を示すフローチャート、図6は冷却器の水位と発電電力の制限割合との関係を示すマップである。
【0068】
図5に示すように、ステップS201において、制御部51は、冷却器33の水位を水位センサS5によって検出する。
【0069】
そして、ステップS202に進み、制御部51は、検出された水位に基づいて、燃料電池10の発電電力を制限する必要があるか否かを判断する。制御部51は、発電電力の制限が必要ないと判断した場合には(S202、No)、ステップS201に戻り、発電電力の制限が必要あると判断した場合には(S202、Yes)、ステップS203に進む。
【0070】
ステップS203において、制御部51は、図6に示すマップに基づいて発電電力を制限する。なお、図6に示すマップは、冷却器33の水位と発電電力の制限割合との関係を示したものであり、冷却器33の水位が所定の水位L1より低い場合に発電電力の制限を開始し、冷却器33の水位が低くなるにつれて、発電電力の制限割合を高くする。つまり、発電電力を抑制することにより、燃料電池の温度が低下し、カソードオフガスの温度が低下して、カソードオフガスの湿度が高まることで凝縮し易くなり、冷却器33に液水(凝縮水)が溜まるようになる。なお、所定の水位L1は、例えば、必要なときに冷却性能を発揮することができ、かつ、無駄に発電電力を制限することのない水位に設定される。
【0071】
次に、本実施形態に係る燃料電池装置1Aの運転停止時の制御について図7および図8を参照して説明する。図7は冷却器の温度に基づく排出弁の制御を示すフローチャート、図8はタイマに基づく排出弁の制御を示すフローチャートである。なお、図8に示すステップS401およびS403における処理は、図7に示すステップS301およびS303と同様であるので説明を省略する。
【0072】
図7に示すように、ステップS301において、制御部51は、イグニッションのオフ信号(IG−OFF信号)、つまり燃料電池装置1Aの運転を停止する信号を取得したか否かを判断し、IG−OFF信号を取得していない場合には(No)、ステップS301の処理に戻り、IG−OFF信号を取得した場合には(Yes)、ステップS302に進む。
【0073】
ステップS302において、制御部51は、冷却器内温度センサS4により冷却器33内部の温度(冷却器内温度)を検出し、冷却器内温度が所定温度未満であるか否かを判断する。なお、所定温度とは、冷却器33内の回収水(貯留水)が凍結するおそれがあると判断される温度であり、例えば3℃に設定される。
【0074】
ステップS302において、制御部51は、冷却器内温度が所定温度未満ではないと判断した場合には(No)、ステップS302の処理を繰り返し、冷却器内温度が所定温度未満であると判断した場合(出力値が所定条件を満たした場合)には(Yes)、ステップS303に進む。
【0075】
ステップS303において、制御部51は、排出弁33fを開弁(開成)する。これにより、冷却器33内に貯留された液水が配管33eを介して外部(車外)に排出される。
【0076】
また、図8に示すように、ステップS402において、制御部51は、IG−OFF時にタイマ53の作動を開始して、所定時間が経過したか否かを判断する。なお、所定時間は、冷却器内温度センサS4による温度に応じて設定することができ、例えば、冷却器内温度センサS4による温度が低ければ低いほど所定時間が短くなるように設定される。
【0077】
ステップS402において、制御部51は、所定時間が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS402の処理を繰り返し、所定時間が経過したと判断した場合(出力値が所定条件を満たした場合)には(Yes)、排出弁33fを開弁(開成)する(S403)。なお、冷却器内温度センサS4に替えて、燃料電池装置1Aの周囲の外気温度を検出する外気温度センサに基づいて判断してもよい。
【0078】
以上説明したように、第1実施形態に係る燃料電池装置1Aは、燃料電池10と、燃料電池10から排出されるカソードオフガス(オフガス)から当該燃料電池10に供給される供給ガス(空気)に水分を与える加湿器32と、燃料電池10と加湿器32との間に配置され、内部に水蒸気透過膜33jを備えて当該水蒸気透過膜33jの内側(一面)にカソードオフガスを、外側(他面)に液水(回収水)をそれぞれ接触させることにより、カソードオフガスから熱を奪うことで当該カソードオフガスの温度を下げる冷却器33と、を備えている。これによれば、液水が蒸発する際の潜熱(気化熱)を利用してカソードオフガスの温度を下げることができ、その結果加湿器32に供給されるカソードオフガスの相対湿度を上げることが可能になる。
【0079】
つまり、燃料電池10の運転温度が高温になると、カソードオフガスの相対湿度が100%未満となって、中空糸膜に形成された細孔内の水蒸気が蒸発して細孔内において水蒸気の受け渡しが損なわれる。これにより、加湿器32がドライアップし、十分な加湿性能を発揮できなくなるおそれがある。そこで、水蒸気透過膜33jを備えた冷却器33を、燃料電池10と加湿器32との間のオフガス流路上に配置することによって、カソードオフガスを冷却して相対湿度を上げることにより、加湿器32に供給されるカソードオフガスの相対湿度を100%未満とならないようにすることができ、加湿器32のドライアップを防止することが可能になる。
【0080】
ちなみに、本実施形態に係る冷却器33では、相対湿度100%未満のカソードオフガスに対しては水分が水蒸気透過膜33jを透過してカソードオフガスと接触し蒸発するので、相対湿度が100%に上昇するように冷却機能が発揮され、しかも相対湿度がすでに100%となっている場合には、水蒸気が水蒸気透過膜33jを透過してカソードオフガスと接触し蒸発することがないので、潜熱(気化熱)が生じることはなく、冷却機能が発揮されることがない。
【0081】
このようにして加湿器32のドライアップを防止することができるので、加湿器32の長期の稼動を確保することができる。また、加湿器32のドライアップを防止できるので、燃料電池に対する加湿不足を防止し、燃料電池装置1A〜1Dにおいて最適な系内湿度を保って燃料電池10の長期の稼動も確保することができる。
【0082】
また、第1実施形態によれば、冷却器33として水蒸気透過膜33jを採用することにより冷却器33自体を小さくすることができ、水冷式や空冷式の熱交換器を備えた冷却器と比べて、レイアウトが大きく制約されるのを防止できる。また、冷却器33を車両に搭載した場合、バンパ開口部等に配置したり、ラジエータのような熱交換器を追加したりする必要がないので、レイアウトが大きく制約されるのを防止できる。
【0083】
また、第1実施形態によれば、カソードオフガスが通流するオフガス流路上に配置される回収器35と、回収器35によって回収された回収水を液水として冷却器33に供給する回収水導入配管b9と、を備えることにより、燃料電池10から排出される液水(凝縮水、生成水)を回収器35で回収することで、燃料電池10から排出される液水を利用してカソードオフガスを冷却することができる。その結果、液水を有効に利用することができ、また冷却器33に液水を供給するための装置を別個に設ける必要がない。
【0084】
また、第1実施形態によれば、中空糸状の水蒸気透過膜33jが鉛直上下方向に延在する冷却器33を備えることにより、それぞれの中空糸状の水蒸気透過膜33jに対して、液水を均等に接触させることができる。よって、冷却器33に導入されるカソードオフガスの熱が均等に奪われることになり、冷却効果を高めることができる。
【0085】
また、第1実施形態によれば、回収水の水位を検出する水位センサS5と、回収水を排出する排出弁33fとを備えることにより、冷却器33内の液水の水位を管理することができ、冷却機能を適正に保つことができる。
【0086】
また、第1実施形態では、冷却器33から導出されるカソードオフガスの温度を検出する冷却器出口温度センサS2が備えられ、図4のマップに示すように、予め設定された発電電力と冷却器33の出口におけるカソードオフガスの許容温度値との関係を用いて、発電電力から許容温度値を求め、許容温度値と冷却器出口温度センサS2の温度値との大小を比較により発電電力を制限(抑制、上昇)するかどうかを判断する。
【0087】
これによれば、発電電力が高く、冷却器出口温度センサS2の温度(実際の温度)が許容温度値よりも高い場合には、発電電力を抑制するように制御することで、許容温度値の範囲内に調整することができ、加湿器32がドライアップするのを防止することができる。また、発電電力が低く、冷却器出口温度センサS2の温度(実際の温度)が許容温度値よりも高い場合には、発電電力を上昇するように制御することで、燃料電池10の低温状態が緩和され、フラッディングを抑制して相対湿度100%の安定したカソードオフガスを生成できる。
【0088】
また、第1実施形態によれば、予め設定された冷却器33の水位と発電電力との関係を用いて、水位センサS5の水位に基づいて発電電力を制限する制御部を備えるので、冷却器33の水位が低い場合には、発電電力を制限して(抑えて)過飽和となり易くして、液水(凝縮水)をできるだけ確保しておき、液水が不足するのを防止できるようになる。
【0089】
また、第1実施形態によれば、燃料電池装置1Aの運転を停止する際、冷却器33の温度を検出する冷却器内温度センサS4の温度値(出力値)が所定温度未満となったときに(所定条件を満たしたときに)、排出弁33fを開弁して冷却器33内の液水(回収水)を排出することにより、液水の凍結による冷却器33内の水蒸気透過膜33jの破損を防止することができる。また、第1実施形態によれば、燃料電池装置1Aの次回起動時に、加湿器32に供給される供給ガス(乾燥ガス)が冷却され、この冷えた供給ガスが燃料電池10に供給されて、燃料電池10の暖機が損なわれるのを防止することができる。
【0090】
また、第1実施形態によれば、燃料電池装置1Aの運転を停止する際、タイマ53により計測される時間(出力値)が所定時間を超えたときに(所定条件を満たしたときに)、排出弁33fを開弁して、冷却器33内の液水(回収水)を排出することにより、液水の凍結による水蒸気透過膜33jの破損を防止でき、しかも燃料電池装置1Aの次回起動時における燃料電池10の暖機が損なわれるのを防止することができる。
【0091】
(本実施形態に係る変形例)
図9は本実施形態に係る燃料電池装置の変形例を示す全体構成図である。この燃料電池装置1Bは、第1実施形態に係る燃料電池装置1Aの回収器35と希釈器36を入れ替えたものであり、回収器35を希釈器36の下流側に配置した構成である。なお、その他の構成は、同一の符号を付して重複した説明を省略する(他の実施形態についても同様)。
【0092】
この燃料電池装置1Bは、アノード系20の気液分離器21を、液水(凝縮水)を回収する凝縮水回収器として機能させ、気液分離器21で回収された(貯留された)液水を、配管a5を介して希釈器36に導入するものである。これにより、燃料電池10のカソード流路12から排出された液水だけではなく、燃料電池10のアノード流路11から排出された液水を回収器35によって回収することができ、燃料電池装置1B内で生成される液水をさらに有効に利用することができる。また、燃料電池装置1Bにすでに備えられている気液分離器21を流用することができるので、装置を別個に設ける必要がない。なお、その他の効果については、第1実施形態と同様である。
【0093】
(本実施形態に係る他の変形例)
図10は本実施形態に係る燃料電池装置の他の変形例を示す全体構成図である。この燃料電池装置1Cは、回収器35を燃料電池10と冷却器33との間のオフガス流路上に設けた構成である。なお、図10では、冷却器33に接続される回収水導出配管b10がオフガス流路の配管b7に合流するように接続しているが、第1実施形態や第2実施形態のように、希釈器36に接続するようにしてもよい。
【0094】
この燃料電池装置1Cによれば、燃料電池10から排出されたばかりの圧力の高いカソードオフガスが回収器35に導入されるので、回収器35で回収された液水(凝縮水、回収水)を冷却器33に圧送用のポンプを用いることなく圧送することが容易になる。
【0095】
(本実施形態に係るさらに他の変形例)
図11は本実施形態に係る燃料電池装置のさらに他の変形例を示す全体構成図である。この燃料電池装置1Dは、第3実施形態の冷却器33と回収器35とを入れ替えた構成であり、燃料電池10と回収器35との間に冷却器33を配置した構成である。
【0096】
この燃料電池装置1Dによれば、冷却器33から排出された比較的圧力の高いカソードオフガスが回収器35に導入されるので、回収器35で回収された液水(凝縮水、回収水)を冷却器33に圧送するためのポンプを用いることなく圧送することが容易になる。
【0097】
本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、いずれの実施形態においても回収器35にて凝縮水を回収する構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、希釈器36に液水(凝縮水)を回収させて、希釈器36から回収水導入配管b9を介して冷却器33に供給するようにしてもよい。これにより、回収器35を新たに設ける必要がなくなる。
【符号の説明】
【0098】
1A,1B,1C,1D 燃料電池装置
10 燃料電池
32 加湿器(膜式加湿器)
33 冷却器
33j 水蒸気透過膜
33f 排出弁
35 回収器(凝縮水回収器)
51 制御部
53 タイマ
54 電圧制御器
b3,b4,b5,b6,b7,b8 配管(オフガス流路)
b9 回収水導入配管(回収水供給流路)
b10 回収水排出配管
S1 冷却器入口温度センサ(温度センサ)
S2 冷却器出口温度センサ(温度センサ)
S3 冷媒温度センサ(温度センサ)
S4 冷却器内温度センサ(第2温度センサ)
S5 水位センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池から排出されるオフガスから水分を得て当該燃料電池に供給される供給ガスに水分を与える膜式加湿器と、
前記燃料電池と前記膜式加湿器との間に配置され、内部に水蒸気透過膜を備え、当該水蒸気透過膜の一面および他面のうちの一方に前記オフガスを、他方に液水をそれぞれ接触させることにより、前記オフガスから熱を奪うことで当該オフガスの温度を下げる冷却器と、を備えることを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
前記オフガスが通流するオフガス流路上に配置される凝縮水回収器と、
前記凝縮水回収器によって回収された回収水を前記液水として前記冷却器に供給する回収水供給流路と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記冷却器は、鉛直上下方向に延在する中空糸状の水蒸気透過膜を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記膜式加湿器に導入されるオフガスの温度を決定する温度センサと、
予め設定された前記燃料電池の発電電力と前記膜式加湿器に導入されるオフガスの許容温度値との関係を用いて、求められた発電電力から前記許容温度値を求め、前記許容温度値と前記温度センサの温度値との比較により発電電力を調整する制御部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記冷却器は、回収水の水位を検出する水位センサと、回収水を排出する排出弁とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
予め設定された前記冷却器の水位と発電電力との関係を用いて、前記水位センサの水位に基づいて前記発電電力を制限する制御部を備えることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池装置。
【請求項7】
前記燃料電池装置の運転を停止する際、前記冷却器の温度を検出する第2温度センサ、前記燃料電池装置の運転停止からの経過時間を計測するタイマの少なくともひとつの出力値を用いて、当該出力値が所定条件を満たした場合に前記排出弁を開成する制御部を備えることを特徴とする請求項5または請求項6のいずれか1項に記載の燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−151062(P2012−151062A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10637(P2011−10637)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】