説明

燃料電池装置

【課題】水供給部の温度を精度よく測定する燃料電池装置を提供する。
【解決手段】燃料電池装置1は、燃料電池セルと、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成するとともに、燃料ガスを燃料電池セルに供給する改質器6と、改質器6の内部に配置される水供給部を有する水供給器11と、改質器6の内部で水供給部の温度を測定する温度測定部と、温度測定部により測定された温度情報に基づいて、水供給器11から改質器6に供給する水供給量を制御する制御部8とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料ガス(水素含有ガス)と酸素含有ガス(酸素含有ガス)とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルを複数個配列してなるセルスタックが知られている。そしてセルスタック上に配置された燃料ガスを生成するための改質器と、セルスタックとを収納容器内に収納してなる燃料電池モジュールや、燃料電池モジュールを外装ケース内に収納してなる燃料電池装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
改質器は、水供給器から供給される水と原燃料供給部から供給される原燃料とを用いて水蒸気改質を行ない燃料ガスを生成しており、内部に水供給部と所定間隔をおいて対向するように温度センサが設けられている。そして、この温度センサの温度を測定することにより、水供給部に水が供給されているか判定する燃料電池装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−059377号公報
【特許文献2】特開2008−243594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、温度センサを水供給部と所定間隔をおいて対向するように改質器の内部に設けた場合に、水供給部に供給される水供給量が少ないと水蒸気のみが温度センサに噴出されることとなる。その場合に、改質器に水が供給されているにも関わらず、改質器に水が供給されていないと判定してしまい、間違った制御がされることとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料電池装置は、燃料電池セルと、原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成するとともに、燃料ガスを燃料電池セルに供給する改質器と、改質器の内部に配置される水供給部を有する水供給器と、改質器の内部で水供給部の温度を測定する温度測定部と、温度測定部により測定された温度情報に基づいて、水供給器から改質器に供給する水供給量を制御する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水供給部に供給される水供給量が少ない場合においても、水供給部の温度を測定する温度測定部により測定された温度情報に基づき、改質器に水が供給されているか否かを正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態である燃料電池装置を示すブロック図である。
【図2】(a)は図1に示す燃料電池装置を構成する改質器の一部を拡大して示す縦断面図であり、(b)は改質器の変形例の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図3】図1に示す燃料電池装置を構成する燃料電池モジュールを示す概観斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態である燃料電池装置を示すブロック図である。
【図5】図4に示す燃料電池装置の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態である燃料電池装置1について図1を用いて説明する。
【0010】
燃料電池装置1は、燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電する燃料電池モジュール2(以下、モジュール2と略す場合がある。)と、モジュール2に原燃料を供給するための原燃料供給源3と、原燃料と凝縮水タンク5により供給される凝縮水とにより水蒸気改質をして燃料ガスを生成する改質器6と、改質器6から供給される燃料ガスと、酸素含有ガス供給源4から供給された酸素含有ガスとにより発電を行なうセルスタック7と、送られてきた各種情報に対して制御信号を供給する制御装置8を備えている。
【0011】
モジュール2は、収納容器(図示せず)内に備える燃料電池セル(図示せず)の複数個を電気的に直列に接続したセルスタック7により発電しており、発電に使用されなかった燃料ガスおよび酸素含有ガス(空気)はセルスタック7の上方で燃焼させ、水蒸気を含んだ排ガスを排出している。
【0012】
水蒸気を含んだ排ガスは、モジュール2から排出された後、途中に熱交換器9を通って燃料電池装置1の外部に排出される。排ガスは水素含有ガスを燃焼させることにより生じるため、排ガス中には水蒸気が含まれることとなる。熱交換器9は、排ガスに含まれる水蒸気を冷媒と熱交換することにより、排ガス中に含まれる水蒸気を凝縮させて凝縮水を生成している。熱交換器9を通すことにより生成された凝縮水は、燃料電池装置1における凝縮水ラインL3に供給され、凝縮水タンク5に貯水される。
【0013】
凝縮水ラインL3は、熱交換器9により生成された凝縮水を改質器6に供給するための供給ラインであり、水供給器11と、凝縮水タンク5と、凝縮水に含まれる不純物を除去するための凝縮水処理部10と、凝縮水ポンプ28とを備えている。
【0014】
凝縮水ラインL3から供給された凝縮水は、改質器6にて燃料ガスを生成する際に使用される。つまり、改質器6にて、原燃料供給源3から供給される原燃料と、凝縮水ラインL3から供給される凝縮水とにより、水蒸気改質を行ない燃料ガスを生成する。水蒸気改質は吸熱反応であることから、モジュール2による燃焼熱を利用して水蒸気改質を行なうことが好ましく、燃料電池装置1では、モジュール2の内部に改質器6を設けた例を示している。さらに図1に示すように、セルスタック7の上方に改質器6が配置されている。それにより、モジュール2の内部で行なわれる燃焼により生じる燃焼熱を効率よく水蒸気改質に利用することができる。
【0015】
熱交換器9にて排ガスと熱交換する冷媒は冷媒ラインL5を循環しており、冷媒ラインL5は冷媒供給源17と冷媒ポンプ18とにより構成されている。冷媒としては、例えば、水を利用することができ、その場合は冷媒供給源17として水タンクを利用することができる。また、冷媒として水以外に他の液体を用いてもよく、窒素ガス等の気体を用いることもできる。
【0016】
原燃料ラインL1には、原燃料供給源3と、原燃料ポンプ14と、改質器6とを有し、凝縮水ラインL3から供給された凝縮水を改質器6に供給することにより燃料ガスを生成し、モジュール2に供給している。原燃料としては、都市ガス等の炭化水素系ガスや、石油等の液体燃料を用いることができる。原燃料供給源3は、使用する原燃料にあわせてガスボンベやタンク等を使用することができる。原燃料供給部とは、原燃料供給源3と、原燃料ポンプ14とを含む原燃料を改質器6に供給するための部位である。
【0017】
原燃料として液体燃料を用いる場合、改質器6に液体の状態で原燃料が供給されると後述する改質触媒に悪影響を与えることがあるため、原燃料を気化させるための気化部を、改質器6よりも上流側に設けてもよい。それにより、改質器6に気体状態の原燃料(以下原燃料ガスと称する場合がある。)をモジュール2に供給することができる。また、原燃料として、都市ガス等の炭化水素系ガスを用いる場合においても、気化部にて温度の上昇した原燃料ガスとすることができ、改質器6にて効率のよい改質反応を生じさせることができる。さらに、凝縮水ラインL3から供給される凝縮水を改質器6に供給する必要があるが、凝縮水も気化部にて水蒸気に気化させて改質器6に供給してもよい。
【0018】
改質器6は、原燃料と水を気化させて生成した水蒸気とを、内部に充填された改質触媒(図示せず)に通して水蒸気改質させることにより燃料ガスを生成している。改質器6には、改質器6に凝縮水を供給するための水供給器11が接続されており、内部に温度センサ13を備えた温度測定管12が、水供給器11の表面上に接した状態で配置されて改質器6に接続されている。温度計測部とは、温度測定管12と温度センサ13とを含む水供給部22の温度を測定するための部位である。
【0019】
改質触媒としては、水蒸気改質するために一般的に用いられている改質触媒を用いることができる。例えば、PtやRb等の金属を担持したものを用いることができる。これらの改質触媒の活性化温度範囲は、300〜450℃付近で原燃料ガスと水蒸気とが反応し、燃料ガスを生成することができる。
【0020】
水蒸気改質とは、例えば、原燃料ガスとしてメタノールを使った場合には、CHOH+HO→CO+3Hの反応式により燃料ガスである水素を生成することができる。このようにメタノール1モルから水素を3モル生成することができるため、効率のよい改質方法として知られている。
【0021】
酸素含有ガスラインL2には、酸素含有ガス供給源4と、酸素含有ガスポンプ15とを有している。そして、酸素含有ガスはモジュール2に供給され、セルスタック7にて発電に使用されている。酸素含有ガス供給部とは、酸素含有ガス供給源4と、酸素含有ガスポンプ15とを含み、モジュール2に酸素含有ガスを供給するための部位である。酸素含有ガスとしては、酸素や空気を用いることができ、酸素を用いる場合には酸素含有ガス供給部としてガスボンベを用いることができる。また、空気を用いる場合には酸素含有ガス供給部として外気を用いることができる。
【0022】
排ガスラインL4には、排ガス中に含まれる場合がある有害成分を処理するための排ガス処理部16を有している。上述したように、モジュール2に供給され発電に使用されなかった燃料ガスと、酸素含有ガスとを混合し燃焼させることにより排ガスを生成している。そのため、排ガスは、燃焼により生じた水蒸気と、燃焼されなかった燃料ガス、不完全燃焼により生じたCOおよび酸素含有ガスとを含んでいる。排ガスラインL4は、熱交換器9の内部を通って、温度の低い状態とされ、燃料電池装置1の外部に排出されており、温度の高い排ガスに含まれる水蒸気は凝縮され、凝縮水として凝縮水ラインL3に供給される。
【0023】
排ガス処理部16は、有害成分として排ガスに含まれる燃料ガスやCO等の可燃性のガスを燃料電池装置1の外部に排出しないように、排ガスラインL4の下流側に設けられており、燃焼触媒等により構成することができる。燃焼触媒としては、一般的に知られているものを使用することができ、例えば、PtやRb等の金属が担持したものを用いることができる。
【0024】
制御部8としては、例えば、CPU,ROM,RAM,入出力インターフェースを主体に構成されるマイクロコンピュータを用いることができる。そして、制御部8は、システムの各部を制御することにより、燃料電池装置1の運転を制御している。
【0025】
また、燃料電池装置1としては、発電効率のよい固体酸化物形燃料電池装置を用いることができる。固体酸化物形燃料電池装置は、通常350〜750℃の高温下で発電しており、燃焼により生じた熱を吸熱反応である水蒸気改質反応に利用している。また、燃焼により発生した温度の高い排ガスの有する熱は、熱交換器9にて冷媒として設けられた給湯用の水と熱交換することにより、水を温めることができ、発電により生じた熱を効率よく利用することができる。
【0026】
図2、3を用いて、燃料電池装置1を構成する改質器6について詳細に説明する。
【0027】
図2(a)に示すように、水供給器11の上面上に温度測定管12が接した状態で改質器6に配置されている。温度測定管12の内部には温度センサ13が設けられており、それにより、水を改質器6に供給する開口を含む水供給部22の温度を測定する温度測定部を構成している。水供給器11および温度測定管12は供給する水や水蒸気および原燃料が改質器6の外部に流出することを抑えるために、改質器6にろう付けや溶接等の方法により接続されている。そして、原燃料供給管21の内部に水供給器11が配置された2重構造となっている。
【0028】
温度センサ13は、水供給部22の温度を測定するために、温度測定管12の水供給部22に対応する部位、つまり温度測定管12の水供給部22上に位置する部位に配置されている。
【0029】
水供給器11および温度測定管12の先端から所定の距離をあけて触媒保持部20が設けられており、触媒保持部20を挟んで水供給器11および温度測定管12と反対側(図2においては右側)に改質触媒19が充填されている。図2に示すように改質触媒19は、球状または粒子状の多孔質体により形成されており、触媒金属が担持されている。
【0030】
触媒保持部20は、改質触媒19が水供給器11および温度測定管12側に移動しないように保持するための部材であり、かつ水蒸気や原燃料は通過させる必要がある。そのため、触媒保持部20は、金属製のメッシュ等により作製することができる。
【0031】
つまり、触媒保持部20は改質器6の内部を仕切る部材でもあり、触媒保持部20よりも原燃料の流れ方向における上流側が気化部となっており、触媒保持部20よりも原燃料の流れ方向における下流側が、改質触媒19が充填された改質部となっている。触媒保持部20を水供給器11および温度測定管12と改質部との間にもう1つ設けて、触媒保持部20同士に囲まれた領域に多孔質なセラミックボール等の部材を設けて、この領域を気化部として構成してもよい。その場合においては、水を水蒸気に効率よく気化させることができる。
【0032】
水供給器11に供給された水は、水供給部22から水または水蒸気の状態で排出される。また、原燃料供給管21に供給された原燃料は、原燃料として液体燃料を用いた場合は原燃料または原燃料ガスの状態で排出され、原燃料として気体燃料を用いた場合は原燃料ガスとして排出される。
【0033】
燃料電池装置1は、水供給器11の上面上に接した状態で温度測定管12が設けられており、温度測定管12の内部に設けられた温度測定部にて水供給器11の水供給部22の温度を測定することにより、水供給器11に水が流れているか否かを判定している。その
ため、水の供給量が少ない場合においても、水供給部22の温度を測定していることから、水が供給されていないと制御部8にて誤認が生じることを抑えることができる。
【0034】
さらに、水供給部22の温度を測定することにより、改質器6に水が供給されていることを確認することができるため、凝縮水ポンプ28と改質器6との間に流量計を設ける必要がなく、燃料電池装置1の製造コストを下げることができる。
【0035】
水供給器11は、金属製の管などにより作製することができ、一端が凝縮水ラインL3と接続されており、他端が改質器6の内部に配置されている。つまり、他端は水を改質器6内に供給するための開口を含む水供給部22となっている。
【0036】
温度測定管12も金属製の管などにより作製することができ、一端は温度センサ13を挿入するための開口を有しており、他端は封止されており、他端部が改質器6の内部に配置されている。そのため、温度センサ13が水、水蒸気および原燃料に曝されてない構成となる。それにより、温度センサ13が水蒸気に曝されることなく水供給部22の温度を測定することができるため、温度センサ13の劣化を抑えることができる。
【0037】
また、温度測定管12を水供給器11に沿わせるように配置することで、改質器6との接合箇所を減らすことができ、燃料電池装置1の製造コストを下げることができる。また、温度測定管12の改質器6と接続されていない側を開口させておくことで、温度センサ13を交換することが容易となりメンテナンス性の向上した燃料電池装置1とすることができる。
【0038】
温度センサ13は熱電対やサーミスタを使用することができる。熱電対やサーミスタは測定する温度域に応じて、適宜選択すればよい。
【0039】
図2(b)は、改質器6の変形例である改質器6´を示している。
【0040】
改質器6´は、温度測定部としての温度供給管12および温度センサ13が、水供給器11の下面に接した状態で配置されている。その他の構成は図2の改質器6と同じである。なお、温度センサ13は、温度測定管12の水供給部22の下に位置する部位に配置されている。
【0041】
水供給器11に供給される水供給量が少ない場合に、水供給器11の下面近傍にのみ水が流れる場合があるが、温度供給管12が水供給器11の下面に接するように配置されているため、水供給器11に供給される水供給量が非常に少ない場合においても、水供給器11の水供給部22の温度を測定して、測定された温度情報に基づき水の供給の有無を判定することができる。
【0042】
なお、温度測定部としての温度供給管12および温度センサ13を用いた場合を示したが、温度センサ13のみを用いてもよい。その場合は、水供給器11の表面に温度センサ13が直接設けられるように配置すればよい。
【0043】
図3を用いてモジュール2の構造について説明する。
【0044】
モジュール2は、直方体状の収納容器26の内部に、燃料電池セル23を電気的に直列に接続してなるセルスタック7を収納してなる。セルスタック7は、それぞれの燃料電池セル23の下端部を固定するとともに、燃料電池セル23に燃料ガスを供給するためのガスタンク25と、ガスタンク25に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給管24とを有している。
【0045】
改質器6は、平面視してUの字型の形状を有しており、改質器6の一端に原燃料供給管21が接続されており、他端に燃料ガス供給管24が接続されている。原燃料供給管21により供給された原燃料は、燃料ガスに改質されながら、燃料電池セル23の配列方向に沿って流れ、折り返して燃料ガス供給管24に流れることとなる。
【0046】
なお、図3においては、収納容器26の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されているセルスタック7および改質器6を後方に取り出した状態を示している。ここで、図3に示した燃料電池モジュール2においては、セルスタック7を、収納容器26内にスライドして収納することが可能である。
【0047】
また収納容器26の内部に設けられた酸素含有ガス導入部材27は、酸素含有ガスが、燃料ガスの流れに合わせて、燃料電池セル23の側方を下端部側から上端部側に向かって流れるように、燃料電池セル23の下端部側に酸素含有ガスを供給するように構成されている。そして、発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスとをセルスタック7の上方で燃焼させることにより、セルスタック7の温度を効果的に上昇させることができ、燃料電池装置1の起動を早めることができる。また、セルスタック7の上方にて、燃焼させることにより、セルスタック7の上方に配置された改質器6を温めることができる。それにより、改質器6で効率よく改質反応を行うことができる。
【0048】
次に、図1を参照して燃料電池装置1の作動中における改質器6への水の供給の有無の判定について説明する。改質器6への水の供給の有無の判定は、温度測定部(温度センサ13)により所定の温度範囲に該当するか判定する。温度測定部により測定された温度情報が所定の温度範囲に含まれる場合は、水供給部22まで水が供給されていると判定し、所定の温度範囲に含まれない場合は、水供給部22まで水が供給されていないと判定する。所定の温度範囲とは、水供給器11の内部を水が流れることから、50℃以上120℃未満とすることができる。
【0049】
水供給部22まで水が供給されていない場合は、温度測定部にて測定された温度情報が高い温度を示すこととなる。そのため、所定の温度範囲よりも高い第1の所定値を超えた場合は、水供給部22まで水が供給されていないと判定し、補機(図示せず)を緊急停止するように制御部8が制御する。ここで、補機とは、燃料電池装置1を作動させるための装置であり、具体的には、原燃料ポンプ14や酸素含有ガスポンプ15や冷媒ポンプ18や凝縮水ポンプ28等のことである。
【0050】
第1の所定値として、例えば、120℃〜130℃の温度範囲における特定の温度あるいは温度範囲として設定することができる。温度測定部により測定された温度情報が、第1の所定値を超えると、改質器6の内部に配置された水供給部22に水が存在しないこととなり、改質器6の内部の温度が上昇し、改質器6の内部に設けられた改質触媒19が劣化する場合がある。そのため、制御部8により、補機を緊急停止させ、燃料電池装置1を緊急停止させる。
【0051】
燃料電池装置1の緊急停止とは、いわゆるシャットダウン処理のことであり、補機を緊急停止させることにより燃料電池装置1の作動を緊急停止させることができる。
【0052】
また、所定の温度範囲の中で、第1の温度範囲と該第1の温度範囲よりも低い第2の温度範囲とを設けることができる。つまり、第1の温度範囲が高温側となり、第2の温度範囲が低温側となる。例えば、100℃以上120℃未満の温度範囲を第1の温度範囲として、50℃以上100℃未満の温度範囲を第2の温度範囲とすることができる。
【0053】
そして、制御部8は、温度測定部により測定された温度情報が、第1の温度範囲に含まれるとき、第2の温度範囲に含まれるときに水供給器11から改質器6に供給される水供給量よりも多くなるように制御することができる。
【0054】
つまり、温度測定部により測定された温度情報に基づいて、改質器6に供給される水供給量を可変させている。また、第1の温度範囲と第2の温度範囲においてのみ改質器6に供給される水供給量を制御するのではなく、他の温度範囲を設定し、その温度範囲においても改質器6に供給される水供給量を制御するようにしてもよい。その際においても、温度測定部により測定された温度情報に基づいて、制御部8が温度範囲のいずれに該当するか判定を行ない、当該判定結果に基づいた信号を凝縮水ポンプ28に送り、改質器6に供給される水供給量を制御すればよい。
【0055】
水供給器11から改質器6に供給する水供給量は、実験やシミュレーションによりデータテーブルを作成し、データテーブルに基づいて制御すればよい。例えば、水供給器11から改質器6に供給する水供給量と、燃料電池装置1の発電出力との関係のデータテーブルを作成し、制御部8が、要求される発電出力に基づき、データテーブルを参照して水供給器11から改質器6に供給する水供給量を決定する制御を行なえばよい。なお、制御部8が改質器6に供給される水供給量を温度範囲ごとに段階的に可変させている例を示しているが、所定の計算式を用いて、セルスタック7に供給される水素含有ガスの量から、改質器6に供給する水供給量を算出して、それに従い水を供給してもよい。
【0056】
さらに、所定時間、凝縮水ポンプ28を制御部8が水供給器11から改質器6に供給する水供給量が多くなるように制御した後に、温度測定部にて測定された温度情報が第1の温度範囲となった場合に、制御部8が水供給器11から改質器6に供給する量を通常作動時に供給する量に制御してもよい。それにより、燃料電池装置1を緊急停止させることなく、作動させることができる。
【0057】
図4を用いて、本発明の他の実施形態である燃料電池装置30を説明する。
【0058】
燃料電池装置30は、モジュール2の内部に改質器6を加熱するための加熱部31が設けられており、その他の構成は燃料電池装置1と同様である。なお、第1の実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0059】
燃料電池装置30は、セルスタック7の上方に加熱部31が配置されており、燃料電池装置30の起動時において、加熱部31を作動させて、燃料ガスと酸素含有ガスとを燃焼させている。それにより、燃焼により生じた熱を用いて、セルスタック7および改質器6を温めることができ、燃料電池装置30の起動時間を短縮することができる。加熱部31としては、電流を流すことで発熱するヒータ等を用いることができる。
【0060】
燃料電池装置30の起動方法について図5を用いて説明する。
【0061】
燃料電池装置30は、外部からの信号として起動スイッチ等の入力が確認されると、起動を開始する。起動が開始すると制御部8は、酸素含有ガスポンプ15を起動させ、まず、酸素含有ガスポンプ21が作動し、燃料電池装置30(より詳しくはモジュール2)の内部に酸素含有ガス供給源4から酸素含有ガスが供給される。酸素含有ガスポンプ15は、起動開始後1分程度は、燃料電池装置30内に酸素含有ガスを充填させるために、例えば60〜100L/分で作動させ、その後は30〜50L/分で作動させてもよく、常時30〜50L/分で作動させてもよい。
【0062】
次に、制御部8は、加熱部31を作動させる(S101)。そして、原燃料ガスポンプ
14を作動させ、モジュール2に原燃料を供給する。加熱部31により改質器6が温められ、モジュール2内の温度が上昇していくこととなる。そして、制御部8はモジュール2が着火されたかどうか判定する(S102)。
【0063】
制御部8は、温度測定部により測定された温度情報の昇温速度がしきい値を超えた場合に着火したと判定する。着火すると燃焼により生じる燃焼熱により、加熱部31による昇温よりも早い速度でモジュール2内が温められるからである。また、着火の判定は、温度測定部により測定された温度情報に基づいてすることもできる。この際に、着火が判定された温度情報のしきい値としては、例えばモジュール2内の起動初期の温度より100℃高い温度と設定することができる。
【0064】
また、モジュール3の内部にモジュール温度測定部(図示せず)を設けて、モジュール温度測定部により測定された温度情報に基づいて判断することもでき、その場合においても、着火が判定されるしきい値は、例えば、モジュール2内の起動初期の温度より100℃高い温度と設定することができる。モジュール温度測定部により測定された温度情報の昇温速度が速くなった場合に、加熱部31によりモジュール3の内部で着火されたと判断してもよい。
【0065】
次に、温度測定部により測定された温度情報が、所定の設定温度以上か否か判定する(S103)。
【0066】
制御部8は、温度測定部により測定された温度情報が、所定の設定温度以上、例えば100℃以上の場合には、制御部8は、水供給部22まで水が充填されていないと判定し、凝縮水ポンプ28を作動させ、水供給器11に水を供給する(S104)。そして、温度測定部により測定された温度情報が、所定の設定温度以上か否か判定する(S105)。所定の設定温度としては、上述したように、例えば、50℃以上120℃未満の温度範囲にある特定の温度あるいは温度範囲として設定することができる。
【0067】
次に、温度測定部により測定された温度情報が、所定の設定温度以上か否か判定する(S105)。温度測定部により測定された温度情報が、所定の設定温度以上の場合には、S105にて、温度測定部により測定された温度情報が、所定の設定温度よりも低くなるまで繰り返し判定を続ける。
【0068】
そして、S105にて温度測定部により測定された温度情報が、所定の設定温度よりも低くなった場合には、水供給部22まで水が充填されていると判定し、凝縮水ポンプ28の作動を停止させ(S106)、燃料電池装置30の起動を続ける。
【0069】
S106後の起動は、例えば、モジュール温度測定部にて測定される温度情報が、水蒸気改質が可能な350℃以上となった場合に、凝縮水ポンプ28を作動させ、水供給器11から改質器6に水の供給を開始して、セルスタック7に水素含有ガスを供給する。そして、セルスタック7の上方にて水素含有ガスを燃焼させて、モジュール2の温度をさらに上昇させる。そして、モジュール温度測定部にて測定される温度情報が、セルスタック7の発電可能な温度である750℃となると、燃料電池装置30と外部負荷とを接続して、燃料電池装置30が発電を開始する。つまり、燃料電池装置30が発電を開始するまでを燃料電池装置30の起動時と称することができる。
【0070】
また、制御部8は、S103にて温度測定部により測定された温度情報が、所定の設定温度よりも低い場合およびS105にて温度測定部により測定された温度情報が、所定の設定温度よりも低くなった場合には、制御部8は、水供給部22まで水が充填されたと判定する。そして、制御部8が水供給部22まで水が充填されたと判定した場合、上述した
通常の起動方法による燃料電池装置30の起動を続ける。
【0071】
これらの制御を行い燃料電池装置30は、通常の作動運転に移ることとなる。通常の作動運転とは、燃料電池装置30が外部負荷と接続され、外部負荷に追従して発電する運転方法である。
【0072】
つまり、制御部8は、燃料電池装置30の起動時に、温度測定部により測定された温度情報が、所定の設定温度以上の場合に、水供給器11から改質器6に水を供給させる制御を行なう。
【0073】
このような制御を行なうことで、水供給部22まで水が充填された状態で燃料電池装置30の起動を行なうことができる。それにより、改質器6に水を供給するように制御部8から信号が送られると、すぐに水供給器11から改質器6に水が供給されることとなる。それにより、改質器6にすぐに水が供給されずに改質器6の温度が上昇することを低減することができ、改質触媒19に炭素析出が生じることを抑えることができる。
【0074】
また、制御部8は、水供給器11から改質器6に水を供給させた後、温度測定部により測定された温度情報が、所定の設定温度よりも低くなった場合に、水供給器11から改質器6への水の供給を停止させる制御を行うため、水供給部22まで水を充填させた状態で燃料電池装置30の起動を行なうことができるとともに、余分な水蒸気の発生を抑えることができる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0076】
例えば、循環ラインL3を設けず改質器に凝縮水を供給せず、直接水を供給する構成でもよい。その場合においても、水供給器の温度を温度測定部により測定された温度情報に基づいて制御部が制御することにより、改質器に供給する水ラインに不具合が生じた場合も精度よく不具合を検知することができる。
【符号の説明】
【0077】
1、30:燃料電池装置
2:燃料電池モジュール
3:原燃料供給源
4:酸素含有ガス供給源
5:貯水タンク
6:改質器
7:セルスタック
8:制御部
9:熱交換器
10:凝縮水処理部
11:水供給器
12:温度測定管
13:温度センサ
14:原燃料ポンプ
15:酸素含有ガスポンプ
16:排ガス処理部
17:冷媒供給源
18:冷媒ポンプ
22:水供給部
28:凝縮水ポンプ
31:加熱部
L1:原燃料ライン
L2:酸素含有ガスライン
L3:凝縮水ライン
L4:排ガスライン
L5:冷媒ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セルと、
原燃料を水蒸気改質して燃料ガスを生成するとともに、該燃料ガスを前記燃料電池セルに供給する改質器と、
該改質器の内部に配置される水供給部を有する水供給器と、
前記改質器の内部で前記水供給部の温度を測定する温度測定部と、
該温度測定部により測定された温度情報に基づいて、前記水供給器から前記改質器に供給する水供給量を制御する制御部とを有する燃料電池装置。
【請求項2】
前記燃料電池セルを作動させる補機をさらに備え、
前記制御部は、前記温度測定部により測定された温度情報が第1の所定値よりも高い場合に、前記補機を緊急停止させる請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記温度測定部が、複数の温度範囲のいずれに該当するかを判定するとともに、当該判定結果に基づいて前記水供給量を前記温度範囲ごとに段階的に可変させる請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記複数の温度範囲は高温側に設定された第1の温度範囲と低温側に設定された第2の温度範囲とを有しており、前記水供給量は、前記温度情報が前記第1の温度範囲に含まれるとき、前記第2の温度範囲に含まれるときよりも多くなるように制御される請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記制御部は、起動時に、前記温度情報が第1の設定温度以上のとき、前記水供給器から前記改質器に水を供給させ、前記温度情報が前記第1の設定温度によりも低いとき、前記水供給器から前記改質器に水を供給しないように制御する請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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