説明

燃料電池車両

【課題】イグニッションオフ後、直ぐに再びイグニッションオンとされた場合、データ保存又はデータ読出しに起因した起動遅れによる違和感を運転者に与えることを防止することができる燃料電池車両を提供する。
【解決手段】 燃料電池車両10は、燃料電池12と、イグニッションオンのときに作動して燃料電池12に反応ガスを供給し、イグニッションオフに伴って停止するコンプレッサ16と、運転の際に得られるデータDを保存する揮発性記憶媒体72及び不揮発性記憶媒体70とを有するものであって、イグニッションオフに伴ってコンプレッサ16が停止したとき、揮発性記憶媒体72のデータDを不揮発性記憶媒体EEPROM70に保存し、データDの保存中に再度イグニッションオンにされたとき、不揮発性記憶媒体70へのデータDの保存に優先して、コンプレッサ16を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転の際に得られるデータを不揮発性記憶媒体に保存する燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
動力源としての燃料電池を搭載した燃料電池車両が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、今回のシステム起動時におけるガス圧力値(P1、P4)と、前回のシステム停止時のガス圧力値(P2、P3)とから圧力低下率を求め、当該圧力低下率に基づいて燃料ガスの漏洩を判定する(特許文献1の要約、図6、第11頁第48行〜第12頁第27行等参照)。
【0003】
前回のシステム停止時のガス圧力値(P2、P3)に関し、特許文献1では、システム停止時における燃料電池の配管系統のガス圧力値を不揮発性メモリ{EEPROM(29)}に記憶しておく(特許文献1の要約、図6、第13頁第2行〜第3行等参照)。より具体的には、システム停止指令を検出した後(S114:YES)、カソード電極側のガス圧が大気圧程度になると(S117:YES)、各圧力センサ(91〜95)のガス圧力値をEEPROM(29)に書き込む(S119)(特許文献1の図6及び第12頁第41行〜第13頁第3行等参照)。また、特許文献1では、今回のシステム起動時に、前回のシステム停止時のガス圧力値(P1)をEEPROM(29)から読み出す(特許文献1の図6のステップS101、S106、第11頁最終行〜第12頁第3行、第12頁第16行〜第20行等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−192919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1では、システム停止時に配管系統のガス圧力値をEEPROM(29)に書き込み、システム起動時に当該ガス圧力値を読み出すが、停止指令に伴うシステム停止後、直ぐに起動指令に伴ってシステムが再起動された場合におけるガス圧力値の取扱いについて何ら検討されていない。すなわち、特許文献1では、停止指令を検出した後(S114:YES)、ガス圧力値の書込み(S119)が終了して初めてシステムが停止される(S120)。このため、ガス圧力値の書込みを修了し、システムが停止されるまでシステムの再起動が認められず、また、当該再起動時にEEPROM(29)からガス圧力値を読み出す(S101)ことが必要となるため、システムの起動が遅くなり、運転者に違和感を与えてしまう。
【0006】
また、このような問題は、ガス圧力値のみならず、燃料電池システムの停止時に不揮発性記憶媒体に保存し、その後の処理に用いるその他のデータにも当て嵌まる。
【0007】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、イグニッションオフ後、直ぐに再びイグニッションオンとされた場合、データの保存又は読出しに起因した起動遅れによる違和感を運転者に与えることを防止することができる燃料電池車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る燃料電池車両は、燃料電池と、イグニッションオンのときに作動して前記燃料電池に反応ガスを供給し、イグニッションオフに伴って停止するコンプレッサと、運転の際に得られるデータを保存する揮発性記憶媒体及び不揮発性記憶媒体とを有するものであって、前記イグニッションオフに伴って前記コンプレッサが停止したとき、前記揮発性記憶媒体の前記データを前記不揮発性記憶媒体に保存し、前記データの保存中に再度イグニッションオンにされたとき、前記不揮発性記憶媒体への前記データの保存に優先して、前記コンプレッサを作動させることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、イグニッションオフに伴って揮発性記憶媒体のデータを不揮発性記憶媒体に保存している最中に再度イグニッションオンにされたとき、不揮発性記憶媒体へのデータの保存に優先して、コンプレッサを作動させる。このため、イグニッションオフ後、直ぐに再度イグニッションオンにされても、遅滞なくコンプレッサの作動を開始することが可能となる。従って、不揮発性記憶媒体に対してデータを保存するためにコンプレッサの作動が遅れることで運転者に違和感を与えることを防止することができる。
【0010】
前記データの保存中に再度イグニッションオンにされたとき、前記データの保存を中断し、前記揮発性記憶媒体に残存する前記データを用いてもよい。
【0011】
前記運転の際に得られるデータは、例えば、カソード電極側の背圧制御弁の動作回数とすることができる。
【0012】
また、酸化剤ガスの圧力に応じて燃料ガスの流量を決定する場合、前記運転の際に得られるデータは、前記燃料ガスの供給路に配置された弁の動作回数であってもよい。
【0013】
さらに、前記コンプレッサに連動して前記燃料電池用の冷媒を循環させるポンプを駆動する場合、前記運転の際に得られるデータは、前記冷媒の循環路に配置されたイオン交換器の動作時間であってもよい。
【0014】
前記運転の際に得られるデータは、イグニッションオフ時における燃料ガス又は酸化剤ガスの圧力であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、揮発性記憶媒体のデータを不揮発性記憶媒体に保存している最中に再度イグニッションオンにされたとき、不揮発性記憶媒体へのデータの保存に優先して、コンプレッサを作動させる。このため、イグニッションオフ後、直ぐに再度イグニッションオンにされても、遅滞なくコンプレッサの作動を開始することが可能となる。従って、不揮発性記憶媒体に対してデータを保存するためにコンプレッサの作動が遅れることで運転者に違和感を与えることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態に係る燃料電池車両の概略全体構成図である。
【図2】前記燃料電池車両の運転の際に得られるデータをEEPROMとRAMとの間で送受信する通常の様子を簡易的に示す説明図である。
【図3】イグニッションスイッチをオフにした後、直ぐにオンにした場合にEEPROMとRAMとの間でデータを送受信する様子を簡易的に示す説明図である。
【図4】図3の様子に対応するタイミングチャートである。
【図5】EEPROMに対するデータの保存及びこれに関連する処理のフローチャートである。
【図6】EEPROMにおけるデータの読出しと保存について上記実施形態と比較例とを簡易的に比較したタイミングチャートである。
【図7】イグニッションスイッチのオンオフと、燃料電池の発電制御と、データとしての燃料電池の発電時間の積算値と、EEPROMの読出し動作及び保存動作との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.一実施形態
1.構成
図1は、この発明の一実施形態に係る燃料電池車両10(燃料電池システム)の概略全体構成図を示している。
【0018】
この燃料電池車両10(以下「FC車両10」ともいう。)は、燃料電池12(以下「FC12」ともいう。)と、水素タンク14と、エアコンプレッサ16と、冷却装置18と、希釈ボックス20と、電子制御装置22(以下「ECU22」ともいう。)と、イグニッションスイッチ24(以下「IGSW24」ともいう。)と、動作電源26と、バックアップ電源28とを備える。
【0019】
FC12は、水素タンク14から供給される水素ガス(燃料ガス)と、エアコンプレッサ16から供給される空気(酸化剤ガス)とに基づいて発電を行う。
【0020】
FC12のアノード電極側には、水素タンク14に加え、遮断弁32と、レギュレータ34と、エゼクタ36と、ドレン弁38と、水素パージ弁40と、圧力センサ42、44、46とが設けられている。FC12のカソード電極側には、エアコンプレッサ16に加え、背圧制御弁50と、圧力センサ52、54とが設けられている。
【0021】
レギュレータ34は、エアコンプレッサ16から供給された空気の圧力(信号圧)に基づいて水素ガスの流量を調節する。レギュレータ34の構成及び動作に関しては、例えば、特開2007−149496号公報に記載のものを用いることができる。
【0022】
冷却装置18は、エアコンプレッサ16に連動してFC12のアノード電極側に冷媒を循環させるポンプ60と、前記冷媒の循環路に配置されるイオン交換器62とを有する。冷却装置18の構成及び動作に関しては、例えば、特開2003−173790号公報に記載のものを用いることができる。
【0023】
圧力センサ42、44、46は、燃料ガスの圧力を各経路において検出し、圧力センサ52、54は、酸化剤ガスの圧力を各経路において検出する。各圧力センサ42、44、46、52、54の検出値は、特許文献1と同様、燃料ガスや酸化剤ガスの漏洩検出に用いることができる。
【0024】
背圧制御弁50は、エアコンプレッサ16からFC12に供給される空気の圧力を調整するための弁であり、例えば、特開2007−141812号公報に記載のものを用いることができる。
【0025】
ECU22は、FC12の発電全般を制御するものであり、本実施形態では、例えば、エアコンプレッサ16、冷却装置18、遮断弁32、ドレン弁38、水素パージ弁40、圧力センサ42、44、46、52、54、背圧制御弁50等を制御する。また、ECU22は、不揮発性記憶媒体としてのEEPROM70(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)と、揮発性記憶媒体としてのRAM72(Random Access Memory)とを有する。RAM72は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)である。
【0026】
EEPROM70及びRAM72は、例えば、FC車両10(燃料電池システム)の動作に伴って変化するデータDを記憶(保存)する。当該データDとしては、例えば、遮断弁32、レギュレータ34及び背圧制御弁50の動作回数[回]、イオン交換器62の動作時間[s]、IGSW24がオフにされたときの燃料ガス及び酸化剤ガスの圧力(圧力センサ42、44、46、52、54の検出値)がある。イオン交換器62の動作時間は、例えば、ポンプ60の動作時間により判定することができる。本実施形態において、IGSW24がオンにされてFC車両10が動作している間は、RAM72にデータDを一時的に記憶しておき、IGSW24がオフにされてFC車両10が停止するときは、RAM72に一時的に記憶しておいたデータDをEEPROM70に記憶(保存)する。
【0027】
動作電源26及びバックアップ電源28は、ECU22の動作用の電源である。ECU22と動作電源26との間には第1スイッチ80が設けられ、この第1スイッチ80のオンオフはIGSW24により切り替えられる。また、ECU22とバックアップ電源28との間には第2スイッチ82が設けられ、この第2スイッチ82のオンオフはECU22により切り替えられる。
【0028】
2.データDの読出し及び保存
図2には、本実施形態において、FC車両10の動作に伴って変化するデータDをEEPROM70とRAM72との間で送受信する通常の様子が簡易的に示されている。なお、図2において、括弧で囲まれた数字は、動作の順番を示す。
【0029】
図2に示すように、IGSW24がオンにされると、ECU22は、EEPROM70からRAM72にデータD(便宜的に「データD1」という。)を読み出す(転送する)。そして、ECU22は、FC車両10の動作に伴ってRAM72におけるデータDを随時取得(更新)する。IGSW24がオフにされ、FC車両10の動作を停止すると、ECU22は、その時点におけるRAM72のデータD(便宜的に「データD2」という。)をEEPROM70に保存(転送)する。ここでの保存は、EEPROM70に対するデータDの書込み処理に加え、EEPROM70の消去処理を含んでもよい。
【0030】
図3には、IGSW24をオフにした後、直ぐにオンにした場合にEEPROM70とRAM72との間でデータDを送受信する様子が簡易的に示されている。なお、図3において、括弧で囲まれた数字は、動作の順番を示す。
【0031】
図3に示すように、IGSW24がオンにされると、ECU22は、EEPROM70からRAM72にデータD(データD1)を読み出す。そして、ECU22は、FC車両10の動作に伴ってRAM72におけるデータDを随時更新する。IGSW24がオフにされ、FC車両10の動作を停止すると、ECU22は、EEPROM70に対し、FC車両10の動作停止時におけるRAM72のデータD(データD2)の保存を開始する。データD2の保存が完了しない時点でIGSW24が再度オンにされると、ECU22は、当該保存を中断し、エアコンプレッサ16の動作を再開する。それと共に、RAM72に記憶されているデータD2を用いてデータDの更新を継続する。その後、IGSW24が再度オフにされ、FC車両10の動作が再び停止されると、ECU22は、その時点におけるRAM72のデータD(便宜的に「データD3」という。)をEEPROM70に保存する。
【0032】
図4は、図3の様子に対応するタイミングチャートである。時点t1において、IGSW24がオンにされると、第1スイッチ80がオンとなり、動作電源26からECU22に対し電力の供給が開始される(動作電源26もオンとなる)。これに伴って、ECU22は、EEPROM70からデータDを読み出し、RAM72に書き込む。なお、ECU22がEEPROM70からデータDの読出しを開始するのは、ECU22における他の処理を考慮して、動作電源26がオンになってから所定時間遅れてからでもよい。
【0033】
時点t2において、EEPROM70からRAM72へのデータDの転送が終了すると、ECU22は、FC12等を動作させると共に、データDの取得を随時行い、RAM72におけるデータDを継続的に更新する。
【0034】
時点t3において、IGSW24がオフにされると、第1スイッチ80がオフとなり、動作電源26からECU22に対する電力の供給が停止される。この際、ECU22は、図示しないコンデンサに蓄積しておいた電力等を用いて第2スイッチ82をオンにする。これにより、バックアップ電源28からECU22への電力供給が開始される(バックアップ電源28がオンになる)。そして、ECU22は、バックアップ電源28からの電力を用いながら、EEPROM70に対してデータDの保存を開始する。ここでのデータDは、その時点においてRAM72に蓄積されているものである。なお、バックアップ電源28からの電力は、RAM72に記憶されているデータDの保持(DRAMのリフレッシュ動作等)にも用いられる。
【0035】
当該保存中に時点t4においてIGSW24がオンにされると、第1スイッチ80のオンに伴って動作電源26からECU22への電力供給が再開される。これに伴って、ECU22は、RAM72に記憶されているデータDを用いて、データDの更新を再開する。また、ECU22は、エアコンプレッサ16に対して動作指令を行って、エアコンプレッサ16の作動を再開させる。
【0036】
時点t5において、IGSW24がオフにされると、第2スイッチ82がオフとなり、動作電源26からECU22に対する電力の供給が停止される。この際、ECU22は、第2スイッチ82をオンにし、バックアップ電源28からECU22への電力供給を開始させる。そして、ECU22は、バックアップ電源28からの電力を用いながら、EEPROM70に対してデータDの保存を開始する。
【0037】
時点t6において、EEPROM70に対するデータDの保存が完了すると、ECU22は、第2スイッチ82をオフにし、バックアップ電源28からの電力供給を終了させる。なお、図4では、IGSW24がオフにされると、その直後に、EEPROM70に対するデータDの保存を開始したが、後述するように、停止のためのその他の処理を完了した後、当該保存を行ってもよい。
【0038】
図5は、EEPROM70に対するデータDの保存及びこれに関連する処理のフローチャートである。ステップS1において、ECU22は、IGSW24がオフになったかどうかを判定する。IGSW24がオフでない場合(S1:NO)、ステップS1を繰り返す。IGSW24がオフになった場合(S1:YES)、ステップS2において、IGSW24のオフに伴って第1スイッチ80がオフとなり動作電源26からECU22への電力供給が停止される。ステップS3において、ECU22は、第2スイッチ82をオンにしてバックアップ電源28からECU22への電力供給を開始させる。ステップS4において、ECU22は、EEPROM70に対してRAM72に記憶されているデータDの保存を行う(開始する)。
【0039】
続くステップS5において、ECU22は、EEPROM70へのデータDの保存が完了したかどうかを判定する。データDの保存が完了していない場合(S5:NO)、ステップS6において、ECU22は、IGSW24が再度オンにされたかどうかを判定する。IGSW24が再度オンにされていない場合(S6:NO)、ステップS4に戻り、EEPROM70へのデータDの保存を継続する。
【0040】
ステップS5においてEEPROM70へのデータDの保存が完了した場合(S5:YES)、ステップS7において、ECU22は、その他の停止処理(例えば、FC12の掃気処理)を実行する。ステップS8において、ECU22は、第2スイッチ82をオフにしてバックアップ電源28からの電力供給を停止する。
【0041】
ステップS6に戻り、IGSW24が再度オンにされた場合(S6:YES)、ステップS9において、ECU22は、FC車両10を再度起動するための処理(FC再起動処理)へ移行する。
【0042】
図6は、EEPROM70におけるデータDの読出しと保存について本実施形態と比較例とを簡易的に比較したタイミングチャートである。ここでの比較例は、IGSW24がオンになると、常に、EEPROM70からRAM72に対してデータDの転送を行い、IGSW24がオフになると、常に、その時点においてEEPROM70に対するデータDの保存を行うものである。
【0043】
時点t11においてIGSW24がオンにされると、本実施形態及び比較例のいずれにおいても、ECU22は、EEPROM70からデータDの読出しを開始し、時点t12においてEEPROM70からのデータDの読出しを完了する。
【0044】
時点t13においてIGSW24がオフにされると、本実施形態及び比較例のいずれにおいても、ECU22は、EEPROM70へのデータDの保存(RAM72からの転送)を開始する。
【0045】
時点t14においてデータDの保存が完了する前にIGSW24が再度オンにされると、比較例では、EEPROM70へのデータDの保存を継続し、時点t15において当該保存を完了する。続いて、EEPROM70からRAM72へのデータDの読出しを開始し、時点t16において当該読出しを完了する。そして、その後、当該読出しによりEEPROM70からRAM72に新たに書き込まれたデータDを用いてデータDの更新を再開する。
【0046】
一方、本実施形態では、時点t14においてデータDの保存が完了する前にIGSW24が再度オンにされると、その時点でデータDの保存を中断し、その時点でRAM72に残存しているデータDを用いてデータDの更新を再開する。
【0047】
以上のように、本実施形態では、IGSW24がオフにされた後、直ぐにオンにされると、EEPROM70に対するデータDの保存を中断し、エアコンプレッサ16の動作を再開し、直ぐにRAM72におけるデータDの更新を再開することができる。換言すると、本実施形態と比較例とを比較すると、本実施形態は、時点t14から時点t16までの期間Pcだけ比較例よりも早くエアコンプレッサ16の動作及びRAM72におけるデータDの更新を再開することが可能となる。
【0048】
図7には、IGSW24のオンオフと、ECU22によるFC12の発電制御と、データDとしてのFC12の発電時間の積算値(積算値Pfc)[s]と、EEPROM70の読出し動作及び保存動作との関係を示す説明図である。
【0049】
時点t21においてIGSW24がオンにされると、時点t22までの間、ECU22は、EEPROM70からデータDの読出しを行う。時点t22から時点t23までは、FC12の発電準備(例えば、各種センサの出力値を用いた異常検出や、FC12の出力電圧を動作開始電圧まで上昇させること)を行う。そして、時点t23からFC12の発電(負荷への電力供給)を開始する。これに伴って、積算値Pfcが増加していく。
【0050】
時点t24においてIGSW24がオフにされると、ECU22は、FC12の停止準備(例えば、FC12の放電、燃料ガス及び酸化剤ガスの放出並びに燃料ガス及び酸化剤ガスの経路の掃気処理)を開始する。
【0051】
FC12の停止準備中である時点t25にIGSW24がオンにされると、ECU22は、EEPROM70へのデータDの保存及びEEPROM70からデータDの読出しを行わずに上述した発電準備を行う。そして、時点t27からFC12の発電を再開する。
【0052】
時点t28において再度IGSW24がオフにされると、ECU22は、上述したFC12の停止準備を開始し、時点t29において当該停止準備が終了すると、続いてRAM72からEEPROM70に対してデータDの転送を行う。
【0053】
3.本実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態によれば、IGSW24のオフに伴ってRAM72のデータDをEEPROM70に保存中に再度IGSW24がオンにされたとき、EEPROM70へのデータDの保存に優先して、エアコンプレッサ16を作動させる。このため、IGSW24のオフ後、直ぐに再度IGSW24がオンにされても、遅滞なくエアコンプレッサ16の作動を開始することが可能となる。従って、EEPROM70に対してデータDを保存するためにエアコンプレッサ16の作動が遅れることで運転者に違和感を与えることを防止することができる。
【0054】
B.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0055】
上記実施形態では、不揮発性記憶媒体としてEEPROM70を用いたが、これに限られず、例えば、フラッシュメモリを用いることもできる。また、揮発性記憶媒体としてDRAMであるRAM72を用いたが、これに限られず、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)を用いてもよい。
【0056】
上記実施形態では、FC車両10の運転の際に得られる(燃料電池システムの動作に伴って変化する)データDとして、遮断弁32、レギュレータ34及び背圧制御弁50の動作回数、イオン交換器62の動作時間、IGSW24がオフにされたときの燃料ガス及び酸化剤ガスの圧力(圧力センサ42、44、46、52、54の検出値)、FC12の発電時間の積算値Pfcを挙げたが、これに限られない。例えば、その他の弁(ドレン弁38や水素パージ弁40等)の動作回数、エアコンプレッサ16及びポンプ60の作動時間をデータDとしてEEPROM70に記憶してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…燃料電池車両 12…燃料電池
14…水素タンク 16…エアコンプレッサ
18…冷却装置 20…希釈ボックス
22…ECU 24…イグニッションスイッチ
26…動作電源 28…バックアップ電源
32…遮断弁 50…背圧制御弁
60…ポンプ 62…イオン交換器
70…EEPROM(不揮発性記憶媒体)
72…RAM(揮発性記憶媒体) D…データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
イグニッションオンのときに作動して前記燃料電池に反応ガスを供給し、イグニッションオフに伴って停止するコンプレッサと、
運転の際に得られるデータを保存する揮発性記憶媒体及び不揮発性記憶媒体と
を有する燃料電池車両であって、
前記イグニッションオフに伴って前記コンプレッサが停止したとき、前記揮発性記憶媒体の前記データを前記不揮発性記憶媒体に保存し、
前記データの保存中に再度イグニッションオンにされたとき、前記不揮発性記憶媒体への前記データの保存に優先して、前記コンプレッサを作動させる
ことを特徴とする燃料電池車両。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池車両において、
前記データの保存中に再度イグニッションオンにされたとき、前記データの保存を中断し、前記揮発性記憶媒体に残存する前記データを用いる
ことを特徴とする燃料電池車両。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池車両において、
前記運転の際に得られるデータは、カソード電極側の背圧制御弁の動作回数である
ことを特徴とする燃料電池車両。
【請求項4】
請求項2又は3記載の燃料電池車両において、
酸化剤ガスの圧力に応じて燃料ガスの流量を決定し、
前記運転の際に得られるデータは、前記燃料ガスの供給路に配置された弁の動作回数である
ことを特徴とする燃料電池車両。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料電池車両において、
前記コンプレッサに連動して前記燃料電池用の冷媒を循環させるポンプを駆動し、
前記運転の際に得られるデータは、前記冷媒の循環路に配置されたイオン交換器の動作時間である
ことを特徴とする燃料電池車両。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の燃料電池車両において、
前記運転の際に得られるデータは、イグニッションオフ時における燃料ガス又は酸化剤ガスの圧力である
ことを特徴とする燃料電池車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−268591(P2010−268591A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117522(P2009−117522)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】