説明

燃料電池電源システムおよびその制御方法

【課題】燃料電池装置と蓄電池を併用するバックアップ用の燃料電池電源システムの運転効率を向上する。
【解決手段】交流電力を変換して直流電力を得る整流器と、蓄電装置と、燃料電池装置をそれぞれ負荷に並列接続し負荷に電力を供給する電源システムにおいて、蓄電装置は前記整流器の出力低下時に前記負荷に電力を供給し、燃料電池装置は前記蓄電装置の出力電圧が所定の値に低下したときに前記蓄電装置の電圧以下の出力電圧で起動し、起動後に燃料電池装置出力電圧を上昇させて燃料電池装置の出力電力を調整可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックアップ電源等に用いられる蓄電池を含む燃料電池電源システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池(PEFC)は、水素を主成分とする燃料ガスと酸化剤ガスを電気化学的に反応させて起電力を得る燃料電池であり、発電電力および排熱を利用するコージェネレーションシステムのほか、停電など系統電力の異常時に通信インフラやデータサーバなどの基幹産業機器へバックアップ給電を行う電源システムへの利用が検討されている。
【0003】
バックアップ電源システムとして、例えば特許文献1のように蓄電池を並列接続した整流器出力部に逆流防止ダイオードを介して非常用電源装置として燃料電池を設け、停電発生時は整流器出力よりも低い電圧で燃料電池を運転することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3872020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら蓄電池と燃料電池を並列接続した電源システムにおいて、燃料電池の出力電圧よりも蓄電池の電圧が高い場合は、蓄電池から優先的に負荷への電力供給が行われるため、燃料電池を同時に起動しても燃料電池の出力電力が小さくなる。特に燃料電池は発電の継続のため内部のポンプやブロア等の補器を動作させる補器電力が必要であり、出力電力が小さい場合は運転効率が低下する傾向がある。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、バックアップ電源等に用いられる燃料電池と蓄電池を併用する燃料電池電源システムの運転効率の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、 交流電力を変換して直流電力を得る整流器と、整流器の出力低下時に前記負荷に電力を供給する蓄電装置と、燃料電池装置をそれぞれ負荷に並列接続して負荷に電力を供給する燃料電池電源システムにおいて、燃料電池装置は前記蓄電装置の出力電圧が所定値に低下したときに蓄電装置の電圧以下の出力電圧で燃料電池装置を起動させる起動停止演算手段と、燃料電池装置の起動後にその出力電圧を上昇させ燃料電池装置の出力量を調整する電圧設定手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、電圧設定手段は、燃料電池装置の出力電力が予め設定された目標出力電力に一致するように前記燃料電池装置の出力電圧を調整する電圧指令値を出力することを特徴とする。
【0009】
また、燃料電池装置は燃料電池装置の出力電流および出力電圧を検出する出力検出手段を備え、電圧設定手段は前記出力検出手段で検出された出力情報に基づき前記燃料電池装置への電圧指令値を変更することを特徴とする。
【0010】
また、燃料電池装置は燃料電池装置の出力電流を検出する出力電流検出手段と、負荷消費電流を検出する負荷電流検出手段とを備え、電圧設定手段は出力電流検出手段の検出電流と負荷電流検出手段の検出電流の差が所定の閾値以下となるように前記電圧指令値を変更することを特徴とする。
【0011】
また、燃料電池装置は、前記蓄電装置の充放電電流を検出する充放電電流検出手段を備え、電圧設定手段は、充放電電流検出手段の検出電流が所定の閾値以下となるよう前記電圧指令値を変更することを特徴とする。
【0012】
また、燃料電池装置は燃料電池装置の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、出力電圧検出手段の検出電圧より前記蓄電装置の残容量を推定する残容量推定手段と、残容量推定手段の推定結果に従い前記蓄電装置の開放電圧を推定する開放電圧推定手段とを備え、電圧設定手段は、前記出力電圧検出手段の検出する電圧と前記開放電圧推定手段の推定する開放電圧の差が所定の閾値以下となるように前記電圧指令値を変更することを特徴とする。
【0013】
また、燃料電池装置は、複数台の燃料電池装置の出力を並列接続して成り、前記燃料電池装置は出力電圧に応じて個別に起動判断可能としたことを特徴とする。
【0014】
さらに、燃料電池装置は、蓄電装置の出力電圧が所定値に低下したときに蓄電装置の電圧以下の出力電圧で燃料電池装置を起動させる起動停止演算手段と、燃料電池装置の起動後にその出力電圧を上昇させ燃料電池装置の出力量を調整する電圧設定手段を有することを特徴とする燃料電池電源システムにおいて、整流器の所定の制御直流電圧をV1とするとき、燃料電池装置は起動直後に出力電圧V2を出力した後、出力電圧を所定の電圧V3まで変化させ、各電圧をV1>V3>V2の関係としたことを特徴とする。
【0015】
さらに、燃料電池装置はV2からV3への到達時間が所定の時間以上となるように変化率を調整することを特徴とする。
【0016】
さらに、燃料電池装置は出力電圧が上限の閾値電圧V4に到達した場合に停止し、各電圧をV1>V4>V3の関係としたことを特徴とする。
【0017】
さらに、燃料電池装置は、複数台の燃料電池装置の出力を並列接続して成り、燃料電池装置は出力電圧に応じて個別に起動判断可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃料電池と蓄電池を併用するバックアップ用の燃料電池電源システムの運転効率が向上でき、燃料電池の燃料消費量を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1の燃料電池電源システムの概要を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1の起動停止演算手段の説明図である。
【図3】本発明の実施形態1の出力電圧演算手段の説明図である。
【図4】本発明の実施形態1の燃料電池電源システムの運用効率を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態1の燃料電池電源システムの動作例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態2の燃料電池電源システムの概要を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態2の出力電圧演算手段の説明図である。
【図8】本発明の実施形態3の燃料電池電源システムの概要を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施形態3の出力電圧演算手段の説明図である。
【図10】本発明の実施形態4の出力電圧演算手段の説明図である。
【図11】本発明の実施形態5の燃料電池電源システムの概要を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施形態5の燃料電池電源システムの動作例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
本発明に係る燃料電池電源システムの第1の実施形態について図1、図2、図3、図4を用いて説明する。図1は、バックアップ運転を行う燃料電池電源システムの概略の構成を示すブロック図である。燃料電池装置としての燃料電池モジュール1は、水素ボンベ2より水素配管3を通じて水素燃料を供給される。燃料電池モジュール1の内部には燃料電池スタック8、DC/DCコンバータ9、ポンプ、ブロア等の補器10および制御手段が備えられている。
【0021】
水素配管3より供給された水素燃料と、燃料電池モジュール1周辺の空気の一部は補器10の作動により燃料電池スタック8に供給され、燃料電池スタック8の起電力エネルギーとして消費される。燃料電池スタック8は複数の燃料電池セルを直列接続して積層した構造となっており、積層の最端部の正負端子をDC/DCコンバータ9の入力に接続する。DC/DCコンバータ9は、入力より得られた燃料電池スタック8の電力を、所定の電圧指令VO_refに制御された電圧の直流電力に変換する。DC/DCコンバータ9の出力部には逆流防止用のダイオードを設けても良い。
【0022】
DC/DCコンバータ9の出力は、燃料電池モジュール1の外部に出力として取り出され、負荷7、整流器5の直流出力、および蓄電装置4にそれぞれ並列に接続されている。例えば負荷7には、放送・通信用基地局、データサーバなどを接続する。また、DC/DCコンバータ9の出力に接続される直流電力伝送手段はDC24V、DC48Vなどを基準電圧として運用してもよい。整流器5は、系統電源6より受電する商用のAC100VまたはAC200V級の交流電力を直流電力に出力変換し、停電など系統電源6の異常時には出力を停止する。整流器5の電圧をVrとする。燃料電池モジュール1、および蓄電装置4は、主に系統電源6が異常となり整流器5の出力が停止した場合に負荷7への電力供給を継続するためのバックアップ運転を行う。
【0023】
燃料電池モジュール1の内部では、DC/DCコンバータ9の出力の電圧および電流をそれぞれ電圧検出手段B1、電流検出手段B2を用いて出力電圧VO、出力電流IOとして検出し、VO、IOに基づき電圧設定手段B3、および起動停止演算手段B4で各演算を行う。電圧設定手段B3は、所定の演算内容に基づきDC/DCコンバータ9への電圧指令VO_refを算出しDC/DCコンバータ9に送信する。起動停止演算手段B4は、所定の演算内容に基づき燃料電池モジュール1の起動停止を判定し、判定結果S1に基づきDC/DCコンバータ9、補器10、電圧設定手段B3を制御する。
【0024】
図2は、起動停止演算手段B4の詳細を示す説明図である。起動停止演算手段B4は、出力電圧VOについて閾値電圧Vsp、Vstを設け、燃料電池モジュール1の運転状態において、出力電圧が上昇し閾値電圧Vspを上回った場合に運転を停止させ、燃料電池モジュール1の停止状態において閾値電圧Vstを下回る場合に起動するよう判定を行う。ここで、閾値電圧はVst<Vspとなるよう設定されており、図2に示すように判定結果はヒステリシス特性を持って出力される。
【0025】
図3は、出力電圧演算手段B3の詳細を示す説明図である。積算器B31は、出力電圧VO、および出力電流IOを積算し出力電力POとして算出する。ここで出力電流IOは出力方向を正としている。出力電圧加算手段B32は、予め設けられた出力電力POの関数または参照テーブルに従い加算電圧ΔVOを算出する。加算器B33は基準電圧VFBに前述の加算電圧ΔVOを加算する。リミッタB34は加算器B33の加算結果について、上限値Vlhを超える場合はVlh、下限値Vllを下回る場合はVllに出力を制限する。リミッタB34の出力は電圧指令VO_refとして出力される。上記各演算回路手段は例えばワンチップマイコン上で作動するソフトウェアによって実現することができる。また、専用のカスタムIC等のハードロジックで構成しても良い。
【0026】
基準電圧VFBは、DC/DCコンバータ9の運転時は前回の電圧指令VO_refを用い、DC/DCコンバータ9の停止時は固定初期値VO_iniを用いるよう、初期化器B35において選択される。ここで各電圧値は
Vo_ini≦Vst≦Vll<Vlh<Vsp≦Vr
となるように設定されている。ここで例えばDC24V系の直流電力伝送手段ではVstを20V〜24V、整流器5の出力電圧Vrを24V〜28V程度に設定してもよい。
【0027】
上記出力電圧加算手段B32の関数/参照テーブルは、燃料電池モジュール1の消費水素量−出力電力量の変換効率が最大となる出力PmでΔVOがゼロとなり、POがPmよりも大きい領域ではΔVOを負、 POがPmよりも小さい領域では正となるように設定する。この結果、燃料電池モジュール1は、出力電圧VOを変動させながら出力がPmとなる点を自動探索することができる。また、出力電圧加算手段B32の関数/参照テーブルは、蓄電装置4の放電電力変動に対する電圧応答時間よりも長い間隔でVO_refを変化させるように設定すれば、燃料電池モジュール1の一時的な過負荷運転や負荷電圧VLの振動的な変動の発生を防止することができる。
【0028】
図4は、負荷7の電力需要PL、および燃料電池モジュール1の出力POを変化させた場合の燃料電池電源システムの運用効率、すなわち消費水素の積算量に対する負荷7への給電電力量についての変換効率特性を示す説明図である。なお、図4では、電力需要PLおよび出力POを、それぞれ燃料電池モジュール1の定格出力に対する比率で表示している。
【0029】
図4中に示す破線は、出力POと電力需要PLが等しい場合の燃料電池モジュール1の発電効率を示し、このとき発電効率は最大となる。この破線よりも右の領域、すなわち燃料電池モジュール1の出力POが負荷電力PLよりも小さい領域では、燃料電池モジュール1の出力した電力POは全て負荷7へ直に供給するため、燃料電池電源システムの運用効率は、図中の破線で示す燃料電池モジュール1の出力POに対応する発電効率に等しく最大(一定)となる。
【0030】
一方、破線より左の領域、すなわち燃料電池モジュール1の出力POが負荷電力PLよりも大きい領域では、燃料電池モジュール1の出力POのうち負荷電力PLで消費しきれない電力は蓄電装置4に充電される。この場合、蓄電装置4に充電された電力を再度負荷7への給電電力に活用するとして運用効率を求めると、蓄電装置4の充放電の過程で損失が発生するため、蓄電装置4への充電量が増えるに従い運用効率は低下する傾向となる。
【0031】
ここで、燃料電池モジュール1の発電効率としては破線で示すように、軽負荷時0%から定格負荷時30%程度まで変化する例が考えられる。一方、蓄電装置4を例えば鉛蓄電池で実現した場合の充放電効率は80%前後であるため、図4に示すように充放電損失を加味しても、負荷電力PLの全領域で燃料電池モジュール1の出力POを大きくすれば高い運用効率が得られることが分かり、効率が最大となる発電出力Pmは電力需要PLによらず定格の100%出力程度に設定すれば良い。
【0032】
図5は、燃料電池電源システムの運転トレンドの一例について横軸を時間として示した模式図である。この例では、負荷7の電力需要PLは一定と仮定した。初期状態t0から時刻t1の間は、系統電源6が正常であり整流器5より所定の一定電圧Vrが出力され、負荷7へ供給される電圧VLは一定の電圧Vr相当となっている。時刻t1において、系統電源6の異常により整流器5の出力が停止すると、電力需要PLに対して、蓄電装置4の電力PBが放電される。蓄電装置4に鉛蓄電池などの二次電池を用いて連続放電を行う場合、時刻t1以降の放電時間の経過とともに蓄電池端子電圧は低下するため、時間経過に伴い電圧VLは低下する。
【0033】
電圧VLの低下が時刻t2において閾値電圧Vstまで達すると、燃料電池モジュール1が起動し、出力電圧VO_iniで運転を開始する。ただしVO_iniは電圧VL以下のため、燃料電池モジュール1の出力電力POは運転開始直後はゼロである。その後、出力電圧加算手段B32の演算に従い、出力電圧指令VO_refが増加し、DC/DCコンバータ9の出力電圧は上昇する。その結果、電力需要PLに対する燃料電池モジュール1の出力電力POの分担が増え、時刻t3では出力電力POは発電効率の高い出力Pmに至る。
【0034】
図5の例ではPm<PLであるため、時刻t3以降は、燃料電池モジュール1が出力Pm、電力需要PLと出力Pmの差分を蓄電装置4が放電する状態が継続する。また、時刻t2以降、出力電力POの分担変化につれ、蓄電装置4の放電電力PBも変化し、蓄電装置4の端子電圧は放電電力PBに従い変化する。燃料電池モジュール1は出力Pm一定で運転するために蓄電装置4の電圧変化に応じて出力電圧指令VO_refを変化させながら推移する。時刻t4で系統電源6が正常に復帰すると負荷7への供給電圧VLは整流器5の出力電圧Vr相当となり、Vspを上回るため燃料電池モジュール1の発電運転が停止する。
【0035】
以上のように構成すれば、燃料電池モジュール1は、出力電圧VOを変化させながら発電効率が最大となる点を自動探索することができ、燃料電池電源システムのバックアップ運転全体の効率が改善される。
(第2の実施の形態)
本発明に係わるバックアップ電源システムの第2の実施の形態について図6、図7を用いて説明する。図6は図1で述べた燃料電池電源システムについて、負荷7に流入する電流を測定する電流検出手段B5を燃料電池モジュール1の内部に追加したブロック図である。電流検出手段B5の測定した負荷電流ILは負荷7に流入する方向を正として電圧設定手段B3bに入力される。
【0036】
図7は電圧設定手段B3bの詳細を示した説明図であり、図3で示した電圧設定手段B3のうち加算電圧ΔVOの演算手法を変更したものである。加算器B36は、負荷電流ILから燃料電池モジュール1の出力電流IOを減じた差電流ΔIを算出する。出力電圧加算手段B32bは、予め設けられた差電流ΔIの関数/参照テーブルに従い加算電圧ΔVOを算出する。
【0037】
ここで、出力電圧加算手段B32bの関数/参照テーブルは、差電流ΔIがゼロの場合にΔVOがゼロとなり、ΔIが正の領域ではΔVOを正、ΔIが負の領域ではΔVOを負となるように設定する。この結果、燃料電池モジュール1は、出力電圧VOを変動させながら差電流ΔIがゼロとなる点を自動探索することができる。
【0038】
燃料電池モジュール1の出力電圧と負荷電圧VLは配線の抵抗を無視すれば同一であるため、差電流ΔIがゼロの状態は即ち負荷7の電力需要PLを全て燃料電池モジュール1の出力POで供給した状態となる。このように構成すれば、電力需要PLに対する燃料電池モジュール1の配分を高めることができるため、燃料電池電源システム全体の効率を向上できる。
(第3の実施の形態)
本発明に係わるバックアップ電源システムの実施形態3について図8、図9を用いて説明する。図8は図1で述べた燃料電池電源システムについて、蓄電装置4が充放電する電流を測定する電流検出手段B6を燃料電池モジュール1の内部に追加したブロック図である。電流検出手段B6の測定した充放電電流IBは放電方向を正として電圧設定手段B3cに入力される。なお、図1で示した電流検出手段B2は削除しても構わない。
【0039】
図9は電圧設定手段B3cの詳細を示した説明図であり、図3で示した電圧設定手段B3のうち加算電圧ΔVOの演算手法を変更したものである。出力電圧加算手段B32cは、予め設けられた充放電電流IBの関数/参照テーブルに従い加算電圧ΔVOを算出する。
【0040】
ここで、出力電圧加算手段B32cの関数/参照テーブルは、充放電電流IBがゼロの場合にΔVOがゼロとなり、IBが正の領域ではΔVOを正、IBが負の領域ではΔVOを負となるように設定する。この結果、燃料電池モジュール1は、出力電圧VOを変動させながら充放電電流IBがゼロとなる点を自動探索することができる。充放電電流IBがゼロである状態は、蓄電装置4の充放電電力がゼロとなり、負荷7の電力需要PLを全て燃料電池モジュール1の出力POで供給した状態となる。このように構成すれば、電力需要PLに対する燃料電池モジュール1の配分を高めることができるため、燃料電池電源システム全体の効率を向上できる。
(第4の実施の形態)
本発明に係わるバックアップ電源システムの実施形態4について図10を用いて説明する。図10は図1で示す電圧設定手段B3の変形実施例B3dの詳細を示した説明図であり、図3で述べた電圧設定手段B3の加算電圧ΔVOの演算手法を変更したものである。負荷推定手段B37は、図5に示す時刻t1からt2までの間、すなわち燃料電池電源システム1が起動する前に蓄電装置4が放電する時間における電圧VOの時間変化を検出し、負荷電力PLの負荷推定値PLeを算出する。蓄電装置4に鉛蓄電池などを用いた場合、図5に示すように放電時間の経過に伴い鉛蓄電池の電圧は低下するが、その時間変化は放電電力によって異なることが知られている。従って、予め異なる放電電力での電圧低下特性を負荷推定手段B37に参照テーブル等で与えておけば、蓄電装置4が放電する間の出力電圧VOの低下傾向から負荷電力PLの推定が可能となる。
【0041】
また、鉛電池などの開放電圧は、その放電残容量に従い10%程度変動することが知られている。開放電圧推定手段B38は、予め設定された蓄電装置4の定格放電電力量から負荷推定値Pleの時間積分を減じることで蓄電装置4の放電残容量を推定し、蓄電装置4の開放電圧推定値VB0を算出する。減算器B39は開放電圧推定値VB0から出力電圧VOを減じて差電圧VB0を算出する。出力電圧加算手段B32dは、予め設けられた差電圧VB0の関数/参照テーブルに従い加算電圧ΔVOを算出する。
【0042】
ここで、出力電圧加算手段B32dの関数/参照テーブルは、差電圧VB0がゼロの場合にΔVOがゼロとなり、VB0が正の領域ではΔVOを正、VB0が負の領域ではΔVOを負となるように設定する。この結果、燃料電池モジュール1は、出力電圧VOを変動させながら蓄電装置4の電圧が開放電圧推定値VB0となる点を自動探索することができる。蓄電装置4の電圧が開放電圧推定値VB0となる状態は、蓄電装置4の放電電力がゼロとなり、負荷7の電力需要PLを全て燃料電池モジュール1の出力POで供給した状態となる。このように構成すれば、電力需要PLに対する燃料電池モジュール1の配分を高めることができるため、燃料電池電源システム全体の効率を向上できる。
【0043】
蓄電装置4の開放電圧は、蓄電装置4の放電残容量に依存するため、負荷推定手段B37、および開放電圧推定手段B38を用いることで放電残容量を推定可能としている。なお、本実施の形態であれば、実施の形態1で述べた構成に比べ、電流検出手段B2を削減でき装置コストの低減にも寄与できる。
(第5の実施の形態)
本発明に係わる燃料電池電源システムの実施形態5について図11、図12を用いて説明する。図11は、燃料電池モジュール1と同等の燃料電池モジュール1A、1Bを2台並列運転する場合の燃料電池電源システムの構成を示すブロック図である。水素供給は水素配管3により共通の水素ボンベ2より供給を受ける構成となっている。また電力出力は2台のモジュールの出力端子を並列接続している。
【0044】
図12は図11に示す燃料電池電源システムの動作例を示した模式図である。時刻t3の後、蓄電装置4の放電が進み、時刻t2bにおいて電圧VLが再度Vst相当まで低下した場合に、2台目の燃料電池モジュールが起動する。2台目の燃料電池モジュールも1台目と同様に電圧VO_iniより上昇を始め、出力POが最大効率出力Pmになるまで電圧を上昇させる。
【0045】
本実施例の構成によれば、複数台の燃料電池モジュールを同時並列運転する場合にも、負荷に供給される電圧VLを監視するだけで、負荷7の電力需要PLに応じ必要となるモジュール台数を個別に判断可能となる。また、各燃料電池モジュールについて起動する順序を予め設定しておくほか、電圧閾値Vstを各燃料電池モジュールについて異なる値を設定することで、負荷7の電力需要PLに応じた台数を所定の間隔をおいて一台ずつ起動することも可能である。なお、従来の複数台運転で用いられていたような運転台数を外部で演算し各モジュールに起動停止信号を送る等の構成は必要なく、制御の簡略化、配線等の削減効果も得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1、1A、1B:燃料電池モジュール、4:蓄電装置、5:整流器、6:系統電源
7:負荷、B1:電圧検出手段、B2:電流検出手段、B3、B3b、B3c、B3d:電圧設定手段、B4:起動停止演算手段、B5:電流検出手段、B6:電流検出手段、B38:開放電圧推定手段、PO:出力電力、VO_ref:電圧指令値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を変換して直流電力を得る整流器と、整流器の出力低下時に前記負荷に電力を供給する蓄電装置と、燃料電池装置をそれぞれ負荷に並列接続して負荷に電力を供給する燃料電池電源システムにおいて、
前記燃料電池装置は、前記蓄電装置の出力電圧が所定値に低下したときに蓄電装置の電圧以下の出力電圧で燃料電池装置を起動させる起動停止演算手段と、燃料電池装置の起動後にその出力電圧を上昇させ燃料電池装置の出力量を調整する電圧設定手段を有することを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池電源システムにおいて、前記電圧設定手段は、燃料電池装置の出力電力が予め設定された目標出力電力に一致するように前記燃料電池装置の出力電圧を調整する電圧指令値を出力することを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の燃料電池電源システムにおいて、 前記燃料電池装置は燃料電池装置の出力電流および出力電圧を検出する出力検出手段を備え、前記電圧設定手段は前記出力検出手段で検出された出力情報に基づき前記燃料電池装置への電圧指令値を変更することを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項4】
請求項1または2記載の燃料電池電源システムにおいて、 前記燃料電池装置は燃料電池装置の出力電流を検出する出力電流検出手段と、負荷消費電流を検出する負荷電流検出手段とを備え、前記電圧設定手段は前記出力電流検出手段の検出電流と前記負荷電流検出手段の検出電流の差が所定の閾値以下となるように前記電圧指令値を変更することを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項5】
請求項1または2記載の燃料電池電源システムにおいて、 前記燃料電池装置は、前記蓄電装置の充放電電流を検出する充放電電流検出手段を備え、前記電圧設定手段は、充放電電流検出手段の検出電流が所定の閾値以下となるよう前記電圧指令値を変更することを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項6】
請求項1または2記載の燃料電池電源システムにおいて、 前記燃料電池装置は燃料電池装置の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、出力電圧検出手段の検出電圧より前記蓄電装置の残容量を推定する残容量推定手段と、残容量推定手段の推定結果に従い前記蓄電装置の開放電圧を推定する開放電圧推定手段とを備え、前記電圧設定手段は、前記出力電圧検出手段の検出する電圧と前記開放電圧推定手段の推定する開放電圧の差が所定の閾値以下となるように前記電圧指令値を変更することを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料電池電源システムにおいて、前記燃料電池装置は、複数台の燃料電池装置の出力を並列接続して成り、前記燃料電池装置は出力電圧に応じて個別に起動判断可能としたことを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項8】
交流電力を変換して直流電力を得る整流器と、整流器の出力低下時に前記負荷に電力を供給する蓄電装置と、燃料電池装置をそれぞれ負荷に並列接続して負荷に電力を供給する燃料電池電源システムであって、前記燃料電池装置は、前記蓄電装置の出力電圧が所定値に低下したときに蓄電装置の電圧以下の出力電圧で燃料電池装置を起動させる起動停止演算手段と、燃料電池装置の起動後にその出力電圧を上昇させ燃料電池装置の出力量を調整する電圧設定手段を有することを特徴とする燃料電池電源システムにおいて、
前記整流器の所定の制御直流電圧をV1とするとき、前記燃料電池装置は起動直後に出力電圧V2を出力した後、出力電圧を所定の電圧V3まで変化させ、各電圧をV1>V3>V2の関係としたことを特徴とする燃料電池電源システムの制御方法。
【請求項9】
請求項8記載の燃料電池電源システムの制御方法において、前記燃料電池装置はV2からV3への到達時間が所定の時間以上となるように変化率を調整することを特徴とする燃料電池電源システムの制御方法。
【請求項10】
請求項8または9記載の燃料電池電源システムの制御方法において、 前記燃料電池装置は出力電圧が所定の電圧V4に到達した場合に停止し、各電圧をV1>V4>V3の関係としたことを特徴とする燃料電池電源システムの制御方法。
【請求項11】
請求項8乃至10記載の燃料電池電源システムの制御方法において、前記燃料電池装置は、複数台の燃料電池装置の出力を並列接続して成り、前記燃料電池装置は出力電圧に応じて個別に起動判断可能としたことを特徴とする燃料電池電源システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−218691(P2010−218691A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60346(P2009−60346)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000233033)日立コンピュータ機器株式会社 (253)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】