説明

燃料電池

【課題】燃料電池に用いられるカソード電極触媒の性能劣化を抑制する。
【解決手段】電極触媒30は、触媒金属が担持されたグラファイト化カーボンを含む触媒担持グラファイト化カーボン層60と、触媒金属が担持されたアモルファスカーボンを含む触媒担持アモルファスカーボン層62とを含む。触媒金属としては、白金、ルテニウム、ロジウムなどの1種または2種を混合したものが挙げられる。触媒担持グラファイト化カーボン層60は、固体高分子電解質膜20側に形成されており、触媒担持グラファイト化カーボン層60と固体高分子電解質膜20とが接合している。一方、触媒担持アモルファスカーボン層62は、ガス拡散層32側に設けられており、触媒担持アモルファスカーボン層62とガス拡散層32とが接合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素と酸素の電気化学反応により発電する燃料電池に関する。より具
体的には、本発明は、触媒性能の劣化が低減された燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー変換効率が高く、かつ、発電反応により有害物質を発生しない燃料電池が注目を浴びている。こうした燃料電池の一つとして、100℃以下の低温で作動する固体高分子形燃料電池が知られている。
【0003】
固体高分子形燃料電池は、電解質膜である固体高分子膜を燃料極と空気極との間に配した基本構造を有し、燃料極に水素を含む燃料ガス、空気極に酸素を含む酸化剤ガスを供給し、以下の電気化学反応により発電する装置である。
【0004】
燃料極:H→2H++2e(1)
空気極:1/2O+2H++2e→HO(2)
燃料極および空気極は、触媒層とガス拡散層が積層した構造からなる。各電極の触媒層が固体高分子膜を挟んで対向配置され、燃料電池を構成する。触媒層は、触媒を担持した炭素粒子がイオン交換樹脂により結着されてなる層である。ガス拡散層は酸化剤ガスや燃料ガスの通過経路となる(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
燃料極においては、供給された燃料中に含まれる水素が上記式(1)に示されるように水素イオンと電子に分解される。このうち水素イオンは固体高分子電解質膜の内部を空気極に向かって移動し、電子は外部回路を通って空気極に移動する。一方、空気極においては、空気極に供給された酸化剤ガスに含まれる酸素が燃料極から移動してきた水素イオンおよび電子と反応し、上記式(2)に示されるように水が生成する。このように、外部回路では燃料極から空気極に向かって電子が移動するため、電力が取り出される。
【特許文献1】特開2005−302527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固体高分子形燃料電池が発電している状態において、固体高分子膜を介して燃料極から空気極に水素がクロスリークする現象が知られている。空気極に水素がクロスリークすると、空気極の触媒層において水素の燃焼や過酸化水素の生成が起きる。従来の固体高分子形燃料電池では、空気極の触媒層にカーボンブラックなどの熱によって酸化しやすく、化学的安定性が低い炭素粒子が用いられていた。このため、クロスリークした水素と、空気極に残留している空気との燃焼により、空気極の触媒層の炭素粒子が酸化し、触媒層の触媒活性や導電性が低下し、結果的に電池性能が低下するという問題があった。
【0007】
また、固体高分子形燃料電池が発電を停止すると、空気極では、燃料極からクロスリークした水素と、空気極の触媒層に残留している空気との燃焼により、空気極の触媒層の炭素粒子が酸化し、触媒層の触媒活性や導電性が低下し、結果的に電池性能が低下するという問題があった。
【0008】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池用の電極触媒の触媒性能が劣化すること抑制する技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、電解質膜と、電解質膜の一方の面に設けられた第1の電極と、電解質膜の他方の面に設けられた第2の電極と、を備える燃料電池において、第1の電極は、触媒金属が担持されたアモルファスカーボンからなる触媒担持カーボン層と、触媒担持カーボン層と電解質膜との間に設けられ、触媒担持カーボン層よりも耐酸化性が高い耐酸化触媒層と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この態様によれば、燃料電池が発電中に燃料極から空気極に水素がクロスリークしたときに、耐酸化性が相対的に高い耐酸化触媒層においてクロスリークした水素の燃焼が起きるため、触媒担持アモルファスカーボン層に含まれるアモルファスカーボンが水素の燃焼熱により酸化することが抑制される。
【0011】
本発明の他の態様は、電解質膜と、電解質膜の一方の面に設けられた第1の電極と、電解質膜の他方の面に設けられた第2の電極と、を備える燃料電池において、第1の電極は、触媒金属が担持されたアモルファスカーボンからなる触媒担持カーボン層と、触媒担持カーボン層の電解質膜と対向する面に設けられ、触媒担持カーボン層よりも耐酸化性が高い耐酸化触媒層と、を備えることを特徴とする。
【0012】
燃料電池が発電を停止した後、第2の電極(燃料極)から第1の電極(空気極)に水素がクロスリークし、空気極に水素が充満する。この状態で燃料電池を再起動することにともない、空気極に空気が流入した場合に、耐酸化性が相対的に高い耐酸化触媒層において流入した空気と空気極に充満している水素との燃焼が起きるため、触媒担持アモルファスカーボン層に含まれるアモルファスカーボンが水素の燃焼熱により酸化することが抑制される。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、燃料電池の電解質膜とカソード側のガス拡散層との間に設けられる燃料電池用電極触媒であって、触媒金属が担持されたアモルファスカーボンからなる触媒担持カーボン層と、触媒担持カーボン層よりも耐酸化性が高い耐酸化触媒層と、を備え、耐酸化触媒層が電解質膜との接合面側およびガス拡散層との接合面側に設けられていることを特徴とする。この態様によれば、上述した各態様の効果を合わせ持つことができる。
【0014】
上記態様の燃料電池用電極触媒において、耐酸化触媒層が、グラファイト化カーボン、セラミック、または金属酸化物を触媒金属の担体として有してもよい。より詳しくは、グラファイト化カーボンが、黒鉛質炭素、カーボンナノチューブ、ナノホーン、またはフラーレンからなる群より選ばれてもよい。
【0015】
また、上記態様の燃料電池用電極触媒において、耐酸化触媒層の厚さが触媒担持カーボン層の膜厚の1/10以下であってもよい。
【0016】
本発明のさらに他の態様は燃料電池である。当該燃料電池は、上述したいずれかの燃料電池用電極触媒をカソード電極の触媒として有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料電池に用いられるカソード電極触媒の性能劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電極触媒およびこれを用いた燃料電池10の構造を模式的に示す断面図である。燃料電池10は、平板状のセル50を備え、このセル50の両側にはセパレータ34およびセパレータ36が設けられる。この例では一つのセル50のみを示すが、セパレータ34やセパレータ36を介して複数のセル50を積層して、燃料電池10が構成されてもよい。セル50は、固体高分子電解質膜20、燃料極22および空気極24とを有する。燃料極22および空気極24を「ガス拡散電極」と呼んでもよい。燃料極22は、積層した電極触媒26およびガス拡散層28を有する。同様に、空気極24は、積層した電極触媒30およびガス拡散層32を有する。燃料極22の電極触媒26と空気極24の電極触媒30は、固体高分子電解質膜20を挟んで対向するように設けられている。
【0019】
燃料極22側に設けられるセパレータ34にはガス流路38が設けられており、このガス流路38を通じてセル50に燃料ガスが供給される。同様に、空気極24側に設けられるセパレータ36にもガス流路40が設けられ、このガス流路40を通じてセル50に酸化剤ガスが供給される。具体的には、燃料電池10の運転時、ガス流路38から燃料極22に燃料ガス、例えば水素ガスが供給され、ガス流路40から空気極24に酸化剤ガス、たとえば、空気が供給される。これにより、セル50内で反応が生じる。ガス拡散層28を介して電極触媒26に水素ガスが供給されると、ガス中の水素がプロトンとなり、このプロトンが固体高分子電解質膜20中を空気極24側へ移動する。このとき放出される電子は外部回路に移動し、外部回路から空気極24に流れ込む。一方、ガス拡散層32を介して電極触媒30に空気が供給されると、酸素がプロトンと結合して水となる。この結果、外部回路においては燃料極22から空気極24に向かって電子が流れることとなり、電力を取り出すことができる。
【0020】
固体高分子電解質膜20は、湿潤状態において良好なイオン伝導性を示すことが多く、燃料極22および空気極24の間でプロトンを移動させるイオン交換膜として機能する。固体高分子電解質膜20は、含フッ素重合体や非フッ素重合体等の固体高分子材料によって形成され、例えば、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体、ポリサルホン樹脂、ホスホン酸基又はカルボン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用いることができる。スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体の例として、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)112などがあげられる。また、非フッ素重合体の例として、スルホン化された、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどがあげられる。
【0021】
燃料極22における電極触媒26は、イオン交換樹脂と、触媒を担持した炭素粒子すなわち触媒担持炭素粒子とから構成される。担持される触媒には、例えば白金、ルテニウム、ロジウムなどの1種または2種を合金化したものなどがある。また触媒を担持する炭素粒子には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどがある。
【0022】
空気極24における電極触媒30は、多孔膜であり、イオン交換樹脂と、触媒成分とを含む。電極触媒30の詳細については後述する。
【0023】
イオン交換樹脂は、触媒を担持した炭素粒子と固体高分子電解質膜20を接続し、両者間においてプロトンを伝達する役割を持つ。イオン交換樹脂は、固体高分子電解質膜20と同様の高分子材料から形成されてよい。
【0024】
燃料極22におけるガス拡散層28および空気極24におけるガス拡散層32は、供給される水素ガス又は空気を電極触媒26および電極触媒30に供給する機能を持つ。また反応により生じる電荷を外部回路に移動させる機能や、水や未反応ガスなどを外部に放出する機能を持つ。ガス拡散層28およびガス拡散層32は、電子伝導性を有する多孔体で構成されることが好ましく、例えばカーボンペーパーやカーボンクロスなどで構成される。
【0025】
図2は、電極触媒30の構成をより詳細に示した要部断面図である。本実施の形態の電極触媒30は、触媒金属が担持されたグラファイト化カーボンを含む触媒担持グラファイト化カーボン層60と、触媒金属が担持されたアモルファスカーボンを含む触媒担持アモルファスカーボン層62とを含む。触媒金属としては、白金、ルテニウム、ロジウムなどの1種または2種を合金化したものが挙げられる。
【0026】
本実施の形態では、触媒担持グラファイト化カーボン層60は、固体高分子電解質膜20側に形成されており、触媒担持グラファイト化カーボン層60と固体高分子電解質膜20とが接合している。一方、触媒担持アモルファスカーボン層62は、ガス拡散層32側に設けられており、触媒担持アモルファスカーボン層62とガス拡散層32とが接合している。
【0027】
触媒担持グラファイト化カーボン層60の厚さは、触媒担持アモルファスカーボン層62の厚さの1/10以下であることが望ましい。触媒担持グラファイト化カーボン層60の厚さが触媒担持アモルファスカーボン層62の厚さの1/10より大きいと、相対的に触媒性能が低い触媒担持グラファイト化カーボン層60に触媒性能が依存し、触媒金属質量活性が大きく低下する。たとえば、触媒金属として白金を用いた場合には、触媒担持グラファイト化カーボン層60の厚さ、白金量をそれぞれ5μm、0.05mg/cmとし、触媒担持アモルファスカーボン層62の厚さ、白金量をそれぞれ50μm、白金量を0.50mg/cmとすることができる。
【0028】
グラファイト化カーボンは、アモルファスカーボンに比べて耐酸化性が優れている。グラファイト化カーボンとしては、黒鉛質炭素のみならず、カーボンナノチューブ、ナノホーン、フラーレンなどの炭素新素材を用いることができる。なお、グラファイト化カーボンのG/D比は10以上であることが好ましく、グラファイト化カーボンのG/D比は20以上であることがより好ましい。ここで、Gは、共鳴ラマン散乱測定法により得られるスペクトルにおいて、1560〜1600cm-1の範囲(グラファイト由来のバンド)内で最大のピーク強度である。また、Dは、共鳴ラマン散乱測定法により得られるスペクトルにおいて、1310〜1350cm-1の範囲(グラファイトの欠陥および非結晶カーボン由来のバンド)内で最大のピーク強度である。グラファイト化カーボンのG/D比を10以上とすることにより、グラファイト化度が高まり、耐酸化性がより向上する。
【0029】
一方、アモルファスカーボンのG/D比は5以下である。アモルファスカーボンとして、カーボンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。
【0030】
以上説明した構成によれば、燃料電池10が発電中に燃料極22から空気極24に水素がクロスリークしたときに、耐酸化性が相対的に高い触媒担持グラファイト化カーボン層60においてクロスリークした水素の燃焼が起きるため、触媒担持アモルファスカーボン層62に含まれるアモルファスカーボンが水素の燃焼熱により酸化することが抑制される。
【0031】
実施の形態1に係る電極触媒30の作成方法について説明する。まず、白金などの触媒金属を、たとえば、含浸法やコロイド法を用いてグラファイト化カーボンに担持させる。得られた触媒担持グラファイト化カーボンとナフィオンなどのイオン交換樹脂とを溶媒に分散させて触媒インクを生成する。得られた触媒インクを固体高分子電解質膜20の空気極側の表面に所定の厚さになるまでスプレー塗布し、触媒担持グラファイト化カーボン層60を形成する。続いて、含浸法、コロイド法などにより、白金などの触媒金属が担持されたアモルファスカーボンとナフィオンなどのイオン交換樹からなる触媒担持アモルファスカーボン層62をホットプレス法により触媒担持グラファイト化カーボン層60の上に接合する。触媒担持アモルファスカーボン層62の厚さは、触媒担持グラファイト化カーボン層60の厚さの10倍以上が好ましい。
【0032】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る燃料電池の基本的な構成は実施の形態1と同様である。実施の形態2の説明において、実施の形態1と同様な構成については、同一の符号を付し、説明を適宜省略する。図3は、実施の形態2に係る電極触媒30の構成をより詳細に示した要部断面図である。本実施の形態では、触媒担持グラファイト化カーボン層60は、ガス拡散層32側に形成されており、触媒担持グラファイト化カーボン層60とガス拡散層32とが接合している。一方、触媒担持アモルファスカーボン層62は、固体高分子電解質膜20側に設けられており、触媒担持アモルファスカーボン層62と固体高分子電解質膜20とが接合している。実施の形態1と同様に、触媒担持グラファイト化カーボン層60の厚さは、触媒担持アモルファスカーボン層62の厚さの1/10以下であることが望ましい。
【0033】
燃料電池が発電を停止した後、燃料極22から空気極24に水素がクロスリークし、空気極24に水素が充満する。この状態で燃料電池を再起動することにともない、ガス拡散層32から電極触媒30に空気が流入した場合に、耐酸化性が相対的に高い触媒担持グラファイト化カーボン層60においてガス拡散層から流入した空気と電極触媒30中に充満している水素との燃焼が起きるため、触媒担持アモルファスカーボン層62に含まれるアモルファスカーボンが水素の燃焼熱により酸化することが抑制される。
【0034】
実施の形態2に係る電極触媒30の作成方法について説明する。まず、白金などの触媒金属を、たとえば、含浸法やコロイド法を用いてグラファイト化カーボンに担持させる。得られた触媒担持グラファイト化カーボンとナフィオンなどのイオン交換樹脂とを溶媒に分散させて触媒インクを生成する。得られた触媒インクをガス拡散層32の表面に所定の厚さになるまでスプレー塗布し、触媒担持グラファイト化カーボン層60を形成する。続いて、含浸法、コロイド法などにより、白金などの触媒金属が担持されたアモルファスカーボンとナフィオンなどのイオン交換樹からなる触媒担持アモルファスカーボン層62をホットプレス法により触媒担持グラファイト化カーボン層60の上に接合する。触媒担持アモルファスカーボン層62の厚さは、触媒担持グラファイト化カーボン層60の厚さの10倍以上が好ましい。
【0035】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る燃料電池の基本的な構成は実施の形態1と同様である。実施の形態2の説明において、実施の形態1と同様な構成については、同一の符号を付し、説明を適宜省略する。図4は、実施の形態3に係る電極触媒30の構成をより詳細に示した要部断面図である。本実施の形態では、触媒担持グラファイト化カーボン層60a、60bが、それぞれ、固体高分子電解質膜20およびガス拡散層32側に形成されており、触媒担持グラファイト化カーボン層60aと固体高分子電解質膜20とが接合し、触媒担持グラファイト化カーボン層60bとガス拡散層32とが接合している。触媒担持アモルファスカーボン層62は、触媒担持グラファイト化カーボン層60aと触媒担持グラファイト化カーボン層60bとの間に狭持されている。触媒担持グラファイト化カーボン層60a、60bのそれぞれの厚さは、触媒担持アモルファスカーボン層62の厚さの1/10以下であることが望ましい。
【0036】
これによれば、燃料電池が発電中に燃料極22から空気極24に水素がクロスリークしたときに、耐酸化性が相対的に高い触媒担持グラファイト化カーボン層60aにおいてクロスリークした水素の燃焼が起きるため、触媒担持アモルファスカーボン層62に含まれるアモルファスカーボンが水素の燃焼熱により酸化することが抑制される。また、燃料電池が発電を停止した後、燃料極22から空気極24に水素がクロスリークし、空気極24に水素が充満する。この状態で燃料電池を再起動することにともない、ガス拡散層32から電極触媒30に空気が流入した場合に、耐酸化性が相対的に高い触媒担持グラファイト化カーボン層60bにおいてガス拡散層から流入した空気と電極触媒30中に充満している水素との燃焼が起きるため、触媒担持アモルファスカーボン層62に含まれるアモルファスカーボンが水素の燃焼熱により酸化することが抑制される。
【0037】
なお、上述した各実施形態において、グラファイト化カーボンに代えて、アモルファスカーボンより耐酸化性が高いセラミックまたは金属酸化物を触媒担体として用いてもよい。また、触媒担持グラファイト化カーボンに代えて、アモルファスカーボンより耐酸化性が高い白金黒などの触媒金属を用いてもよい。
【0038】
また、上述した各実施形態では、触媒担持グラファイト化カーボン層と触媒担持アモルファスカーボン層とが界面を有する形態が示されているが、両者の間に明確な界面がなくてもよい。触媒担持グラファイト化カーボン層と触媒担持アモルファスカーボン層とは境界において、互いにオーバーラップしていてもよい。
【0039】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態1に係る電極触媒およびこれを用いた燃料電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】実施の形態1に係るカソード側の電極触媒の構成をより詳細に示した要部断面図である。
【図3】実施の形態2に係るカソード側の電極触媒の構成をより詳細に示した要部断面図である。
【図4】実施の形態3に係るカソード側の電極触媒の構成をより詳細に示した要部断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 燃料電池、20 固体高分子電解質膜、22 燃料極、24 空気極、26,30 電極触媒、34,36 セパレータ、50 セル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、
前記電解質膜の一方の面に設けられた第1の電極と、
前記電解質膜の他方の面に設けられた第2の電極と、
を備える燃料電池において、
前記第1の電極は、
触媒金属が担持されたアモルファスカーボンからなる触媒担持カーボン層と、
前記触媒担持カーボン層と前記電解質膜との間に設けられ、前記触媒担持カーボン層よりも耐酸化性が高い耐酸化触媒層と、
を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
電解質膜と、
前記電解質膜の一方の面に設けられた第1の電極と、
前記電解質膜の他方の面に設けられた第2の電極と、
を備える燃料電池において、
前記第1の電極は、
触媒金属が担持されたアモルファスカーボンからなる触媒担持カーボン層と、
前記触媒担持カーボン層の前記電解質膜と対向する面に設けられ、前記触媒担持カーボン層よりも耐酸化性が高い耐酸化触媒層と、
を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
前記耐酸化触媒層が、グラファイト化カーボン、セラミック、または金属酸化物を触媒金属の担体として有することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記グラファイト化カーボンが、黒鉛質炭素、カーボンナノチューブ、ナノホーン、またはフラーレンからなる群より選ばれることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−265916(P2007−265916A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92294(P2006−92294)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】