説明

燃料電池

【課題】金属製セパレータおよび金属製支持フレームを備える燃料電池において、短絡の防止と整流効果とを両立させること。
【解決手段】金属製支持フレーム50には、整流部材51の端面形状に対応するへこみ部52が形成されている。整流部材51の一端は、へこみ部52に係合するようにして金属製支持フレーム50上に配置される。整流部材51は、その一端が、へこみ部52に係合されている状態で、金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60bとの間に配置されている。整流部材51は絶縁性を有する無機材料から形成されているので、整流部材51を介した金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60bとの間の短絡が抑制または防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単電池からなる燃料電池、または単電池が複数積層されてなる燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質に無機酸化物が用いて、比較的高い運転温度で稼働される燃料電池システム、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、水素透過膜形燃料電池(HMFC)が知られている。発電効率の観点からは、電解質は薄いことが望まれるが、無機酸化物は、一般的に脆い特性を有している。したがって、薄い無機酸化物を電解質に用いる燃料電池システムにおいては、電解質を支持、補強するための支持フレームを備えることが好ましい。
【0003】
例えば、固体電解質の一面に水素透過性金属層が形成され、他面にカソード側電極が形成される膜電極接合体を備える水素分離膜形燃料電池では、膜電極接合体を補強するために、膜電極接合体の外縁を支持する支持フレームが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−243427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高い運転温度で稼働される燃料電池システムでは、支持フレームにも耐熱性が要求される。カーボン材は高い稼働温度で使用されることによって脆くなり、単電池積層時における締結荷重に対する強度が不十分となり、セラミックス材は耐熱性に優れるものの、単電池積層時における締結荷重に対して十分な強度を有していないという課題がある。したがって、支持フレームとして金属製の支持フレームが用いられる傾向にある。
【0006】
また、金属製セパレータまたは支持フレームには、反応ガス供給マニホールドから膜電極接合体に対して反応ガスを導くための、あるいは、膜電極接合体から反応ガス排出マニホールドに対して反応に供された反応ガスを導くための整流フィンが形成若しくは備えられている。一般的に、膜電極接合体を含む支持フレームは、ガスケットを介して金属製セパレータによって挟持される。
【0007】
したがって、例えば、金属製支持フレームに導電性を有する整流フィンが形成されている場合であって、整流フィンの高さが高い場合には、金属製セパレータと金属製支持フレームとの間で短絡が発生してしまうという問題があった。一方、短絡を回避するために、整流フィンの高さを低くすれば十分な整流効果を得ることができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、金属製セパレータおよび金属製支持フレームを備える燃料電池において、短絡の防止と整流効果とを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、膜電極接合体と、前記膜電極接合体の外縁を支持する板状の金属製支持フレームと、前記支持フレームの両側に配置される一対の金属製セパレータと、前記金属製支持フレームと前記一対の金属製セパレータとの間に配置される1または複数の絶縁性整流部材とを備える燃料電池を提供する。
【0010】
本発明に係る燃料電池によれば、金属製支持フレームと一対の金属製セパレータとの間に配置される1または複数の絶縁性整流部材を備えるので、金属製支持フレームと一対の金属製セパレータとの間における短絡を防止することができると共に、十分な整流効果を得ることができる。
【0011】
本発明に係る燃料電池において、前記金属製支持フレームはへこみ部を有し、各前記絶縁性整流部材は、一端が前記へこみ部に係合し、他端が前記一対の金属製セパレータに接触して、前記金属製支持フレームと前記一対の金属製セパレータとの間に配置されても良い。この構成を備えることにより、絶縁性整流部材の配置が容易になると共に、絶縁性整流部材のずれを抑制または防止することができる。
【0012】
本発明に係る燃料電池において、前記一対の金属製セパレータはへこみ部を有し、各前記絶縁性整流部材は、一端が前記へこみ部に係合し、他端が前記金属製支持フレームに接触して、前記金属製支持フレームと前記一対の金属製セパレータとの間に配置されても良い。この構成を備えることにより、絶縁性整流部材の配置が容易になると共に、絶縁性整流部材のずれを抑制または防止することができる。
【0013】
本発明に係る燃料電池において、前記一対の金属製セパレータはさらに、前記膜電極接合体に対して反応ガスを供給するための反応ガス供給部を有し、前記各絶縁性整流部材は、前記反応ガス供給部と前記膜電極接合体との間に形成され、前記反応ガス供給部から前記膜電極接合体へ供給される反応ガスを整流しても良い。この構成では、絶縁性整流部材によって、反応ガス供給部から膜電極接合体へ所望の整流が施された反応ガスを供給することができる。
【0014】
本発明に係る燃料電池において、前記一対の金属製セパレータはさらに、前記膜電極接合体から反応ガスを排出するための反応ガス排出部を備え、前記各絶縁性整流部材は、前記膜電極接合体と前記反応ガス排出部との間に形成され、前記膜電極接合体から前記反応ガス排出部へ排出される反応ガスを整流しても良い。この構成では、絶縁性整流部材によって、膜電極接合体から反応ガス排出部へ所望の整流が施された反応ガスを排出することができる。
【0015】
本発明に係る燃料電池において、前記膜電極接合体は、水素透過性基材からなるアノード側電極と、固体酸化物型電解質膜からなる電解質膜とを備えても良い。
【0016】
本発明に係る燃料電池において、前記膜電極接合体と前記各セパレータとの間にはそれぞれ拡散層が配置されていても良い。この構成を備えることによって、反応ガスの拡散性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る燃料電池について図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
【0018】
・燃料電池システムの構成
図1〜図4を参照して、以下の実施例において共通して用いられる燃料電池システムFCSについて説明する。図1は本実施例に用いられる燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。図2は図1における燃料電池を切断線X−Xで切断した切断面の一部を示す説明図である。図3は本実施例に用いられる金属製支持フレームのアノード側を示す説明図である。図4は本実施例に用いられる金属製支持フレームのカソード側を示す説明図である。
【0019】
本実施例に係る燃料電池システムFCSは、単電池100が複数積層された積層体からなる燃料電池FC、燃料電池FCに対して燃料ガスである水素ガスを供給する燃料ガス供給源としての改質器FRを備えている。燃料ガス供給源として改質器FRを用いることによって、燃料電池FCの運転温度域と同等温度の燃料ガスを燃料電池FCに投入することができる。燃料電池FCは、燃料ガス(アノードガス)供給部25a、酸化ガス(カソードガス)供給部26a、冷媒供給部27a、燃料ガス排出部25b、酸化ガス排出部26b、冷媒排出部27bを備えている。なお、改質器RFに代えて、高圧水素タンクが燃料ガス供給源として用いられても良い。
【0020】
燃料電池FCの燃料ガス供給部25aと改質器FRとは燃料ガス供給管200を介して接続されている。燃料ガス供給管200の改質器FR近傍には、燃料電池FCに供給する燃料ガス圧力を所定圧力に調整するための調圧弁V1が配置されている。なお、燃料ガスには、例えば、純水素、水素含有ガス(水素リッチガス)が用いられ、酸化ガスには空気(大気)が用いられる。
【0021】
燃料ガス排出部25bには燃料ガス排出管201が接続されている。本実施例では、燃料ガス排出管201は、大気に通じる排出分岐管201aと燃料ガス供給管200に接続される循環分岐管201bとに分岐されている。排出分岐管201aにはバルブV2が配置されており、バルブV2が閉じられると、燃料ガス排出部25bから排出される燃料オフガスは、再度、燃料電池FC内部に供給される。一方、バルブV2が開かれると、燃料ガス排出部25bから排出される燃料オフガスは、大気中に排出される。なお、バルブV2が開かれる時の燃料オフガスの組成は、一般的に、窒素、水蒸気がそのほとんどを占めている。
【0022】
燃料ガス供給部25aから燃料電池FC内部に供給される燃料ガスは、支持フレーム50、セパレータ60a、60b、およびシール部材10によって形成される燃料ガス供給マニホールド20aを介して、電解質膜のアノードへと供給される。電解質膜にて消費された燃料ガスは、支持フレーム50、セパレータ60a、60b、およびシール部材10によって形成される燃料ガス排出マニホールド20bを介して燃料ガス排出部25bから燃料ガス排出管201へ排出される。
【0023】
図示しない酸化ガス供給ポンプによって、酸化ガス供給部26aから燃料電池FC内部に供給される酸化ガス(一般的には、空気)は、支持フレーム50、セパレータ60a、60b、およびシール部材10によって形成される酸化ガス供給マニホールド21aを介して、電解質膜のカソードへと供給される。電解質膜にて起電反応に供された酸化ガスは、支持フレーム50、セパレータ60a、60b、およびシール部材10によって形成される酸化ガス排出マニホールド21bを介して酸化ガス排出部26bから燃料電池FC外部へと排出される。
【0024】
冷媒供給部27aから燃料電池FC内部に供給される冷媒(一般的には、純水)は、支持フレーム50、セパレータ60a、60b、およびシール部材10によって形成される冷媒供給マニホールド22aを介して、セパレータ60a、60bの裏面(電解質膜と対向しない面)に形成されている冷媒流路へと供給される。冷媒流路に供給され、起電反応に伴い発生した熱の一部を吸熱した冷媒は、支持フレーム50、セパレータ60a、60b、およびシール部材10によって形成される冷媒排出マニホールド22bを介して冷媒排出部27bから図示しない放熱器に導かれる。放熱器に導かれた冷媒は、循環ポンプによって繰り返し、冷媒供給部27aへと供給される。
【0025】
図2を参照して、燃料電池FCを構成する単電池100の内部構成について簡単に説明する。単電池100は、1対の金属製セパレータ60a、60bと、1対の金属製セパレータ60a、60bとの間に配置される金属製の支持フレーム50を燃料電池構成部材として備えている。
【0026】
金属製セパレータ60a、60bは燃料ガスと酸化ガスとを分離するために用いられるガス不透過で導電性を有する板材である。各セパレータ60a、60bの裏面、すなわち、セパレータ60aとセパレータ60bとの接触面には冷媒を流動させるための複数の冷媒流路62a、62bが形成されている。各セパレータ60a、60bは、例えば、耐腐食性に優れるステンレス製材料から形成される。
【0027】
金属製支持フレーム50は、非自立型の膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)30を支持するための金属製フレームであり、本実施例においてはアノード側全体にわたって膜電極接合体30を支持するための格子状部56を備えている。格子状部56は、膜電極接合体30に対して燃料ガスを導くための複数の孔561を備えている。金属製支持フレーム50は、例えば、耐腐食性に優れるステンレス製材料から形成される。金属製支持フレーム50と膜電極接合体30は、例えば、公知のクラッド法、レーザー溶接によって互いに接合される。
【0028】
本実施例において用いられる膜電極接合体30は、水素透過膜形の膜電極接合体である。膜電極接合体30は、電解質層31、水素透過膜層32およびカソード33を備えている。
【0029】
電解質層31は、プロトン伝導性を有する固体電解質によって形成されている。本実施例では、ペロブスカイト型固体酸化物、例えば、BaCe0.80.23や、SrZr0.8In0.23によって電解質層31が形成されている。電解質層31は、緻密な水素透過膜層32上に成膜されるため、充分な薄膜化が可能となる。このように、電解質層21をより薄く形成することによって電解質層21の膜抵抗を低減することができるため、従来の固体電解質型燃料電池の運転温度よりも低い温度、例えば、400℃〜600℃で燃料電池を運転することができる。
【0030】
水素透過膜層32は、水素透過性を有する金属によって形成される層であり、本実施例では、パラジウム(Pd)によって形成されている。パラジウムは、水素を透過させる性質に加えて、水素が透過する際に水素分子を解離させる活性を有する。水素透過膜層32は更に、燃料電池FCにおけるアノードとして機能する。
【0031】
カソード34は、電解質層32上に成膜された金属層であり、電気化学反応を促進する触媒活性を有する貴金属により形成されている。本実施例では、カソード24はパラジウムにより形成されている。カソード34を、白金(Pt)等、水素透過性を有しない他種の貴金属により構成する場合には、充分に薄く形成するなどにより、カソード34の外側(セパレータ60a側)と電解質層31との間にガス透過性を確保すればよい。
【0032】
本実施例では支持フレーム50の格子状部56とセパレータ60bによって形成される燃料ガス内部流路37a、およびカソード34とセパレータ60aとによって形成される酸化ガス内部流路37cには、ガス拡散性を向上させるために、アノード側ガス拡散層38a、カソード側ガス拡散層38cがそれぞれ備えられている。各ガス拡散層38a、38cは、多孔質層であり、導電性及びガス透過性を有する部材によって構成されている。各ガス拡散層38a、38cとしては、例えば、発泡金属や金属メッシュなどの金属多孔質体やカーボンペーパなどのカーボン製多孔質体を用いることができる。
【0033】
金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60a、60bとの間には、燃料ガスおよび酸化ガスを単電池100内部に止めるための燃料電池用シール部材10が配置されている。燃料電池用シール部材10は、耐熱性、シール性、絶縁性に優れた材料、例えば、無機材料から形成されている。
【0034】
図1に示す燃料ガス供給マニホールド25aに供給された燃料ガスはアノード側ガス拡散層38a介して膜電極接合体30のアノード側に供給される。酸化ガス供給マニホールド26aに供給された酸化ガスはカソード側ガス拡散層38c介して膜電極接合体30のカソード側に供給される。
【0035】
図3および4を参照して金属製支持フレーム50について説明する。先ず、金属製支持フレーム50のアノード面(図3)とカソード面(図4)において共通する構成について以下に説明する。金属製支持フレーム50は、積層時にセパレータ60a、60b、シール部材10と共に、燃料ガス供給マニホールド25aを形成する燃料ガス供給マニホールド形成部520a、燃料ガス排出マニホールド25bを形成する燃料ガス排出マニホールド形成部520bを備えている。金属製支持フレーム50は同様に、酸化ガス供給マニホールド26aを形成する酸化ガス供給マニホールド形成部521a、酸化ガス排出マニホールド26bを形成する酸化ガス排出マニホールド形成部521bを備えている。金属製支持フレーム50はさらに、積層時に冷媒供給マニホールド27aを形成する冷媒供給マニホールド形成部522a、冷媒排出マニホールド27bを形成する冷媒排出マニホールド形成部522bを備えている。
【0036】
金属製支持フレーム50のアノード面およびカソード面の両面には、燃料ガス内部流路37a、酸化ガス内部流路37cを流れる各反応ガスを所望の方向へ整流するための複数の整流部材51が形成されている。整流部材51は、絶縁性、耐熱性を有する材料から形成されており、詳細については後述する。
【0037】
金属製支持フレーム50のアノード面には、既述の通り、膜電極接合体30をアノード側底面から支持する格子状部56が備えられている。格子状部56は金属製支持フレーム50の製造時に打ち抜き加工によって形成されても良く、あるいは、金属製支持フレーム50に対応する開口部を形成しておき、パンチングメタル、エキスパンドメタルといった複数の孔、またはスリットを有する別部材を接合することによって備えられても良い。なお、金属製支持フレーム50は、膜電極接合体30の少なくとも外縁を支持すれば良いので、格子状部56を備えることなく、膜電極接合体30の外縁を受けるためのフランジ部を有する開口部のみを備えていても良い。この場合、金属製支持フレーム50のカソード面から見た開口部の面積は膜電極接合体30の面積と略同一であり、アノード面の開口部面積は、フランジ部の面積分だけカソード面の開口部面積よりも小さい。
【0038】
図3は金属製支持フレーム50におけるアノード面を示しているため、燃料ガス供給マニホールド形成部520aおよび燃料ガス排出マニホールド形成部520bにはシール部材10が配置されていない。したがって、燃料ガス供給マニホールド形成部520aから燃料ガス内部流路37aに供給された燃料ガスは、矢印にて示すように、複数の整流部材51によって整流され、燃料ガス排出マニホールド形成部520bへと導かれる。
【0039】
図4は金属製支持フレーム50におけるカソード面を示しているため、酸化ガス供給マニホールド形成部521aおよび酸化ガス排出マニホールド形成部521bにはシール部材10が配置されていない。したがって、酸化ガス供給マニホールド形成部521aから酸化ガス内部流路37cに供給された酸化ガスは、矢印にて示すように、複数の整流部材51によって整流され、酸化ガス排出マニホールド形成部521bへと導かれる。
【0040】
なお、金属製支持フレーム50のアノード面およびカソード面における燃料ガスおよび酸化ガスの整流方向は例示であり、条件に応じて適宜変更される。例えば、燃料ガスおよび酸化ガスは金属製支持フレーム50の長手方向に対して平行に流れるように整流部材51が配置されても良い。すなわち、整流部材51の配置パターンは、燃料ガスおよび酸化ガスをどのように流すかによって適宜配置される。
【0041】
金属製支持フレームと整流部材の構成:
図5および図6を参照して、第1の実施例に係る燃料電池に用いられる金属製支持フレームと整流部材の構成について詳細に説明する。図5は金属製支持フレームと金属製セパレータとが組み合わされた単電池をアノード面から見た平面透視図である。図6は第1の実施例に係る燃料電池に用いられる単電池について図5中の切断線Y−Yで切断した断面を示す断面図である。
【0042】
金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60bとの間に配置されるシール部材10、整流部材51および金属製支持フレーム50に形成されている部位を点線にて示し、金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60aおよび60bとが組み合わされた単電池100をアノード側から見ると、図5に示すように表される。金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60bとの間には、既述のように燃料ガス内部流路37aが形成される。
【0043】
図6には、図5中のY−Y切断線で切断した単電池100の断面の一部が示されている。図6を参照して整流部材51について説明する。整流部材51は、絶縁性および耐熱性を有する材料、例えば、アルミナ等のセラミックス材料、雲母シール等のマイカ系材料によって形成されている。本実施例では、整流部材51は、金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60bとの間に配置され、金属製支持フレーム50および金属製セパレータ60bの双方と直接接触するが、絶縁性材料によって形成されているため、金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60bとの間における短絡を防止することができる。
【0044】
本実施例では、図6に示すように、金属製支持フレーム50には、整流部材51の端面形状に対応するへこみ部52が形成されている。整流部材51の一端は、へこみ部52に係合するようにして金属製支持フレーム50上に配置される。整流部材51は、その一端が、へこみ部52に係合されている状態で、金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60bとの間に配置されている。へこみ部52は、例えば、切削加工、エッチング処理によって金属製支持フレーム50上に形成される。
【0045】
へこみ部52は金属製支持フレーム50に複数形成されており、へこみ部52の形成パターンによって整流部材51の配置パターンが決定される。本実施例では、金属製支持フレーム50のアノード面には、左上方の燃料ガス供給マニホールド形成部520aから右下方の燃料ガス排出マニホールド形成部520bに向かって、好ましくは直線状に燃料ガスが流れるように複数の整流部材51が配置されている。
【0046】
なお、図5および図6を用いて、金属製支持フレーム50のアノード面について説明しているが、金属製支持フレーム50のカソード面においてもアノード面と同様にへこみ部が形成され、また、複数の整流部材51が配置されている。
【0047】
以上説明した第1の実施例に用いられる整流部材51によれば、整流部材51が絶縁性および耐熱性に優れた無機材料から形成されるので、整流部材51を介した、金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60a、60bとの間の短絡を抑制または防止することができる。すなわち、稼働温度が高い本実施例に係る燃料電池システムFCSは、耐熱性および締結荷重に対する強度確保のために膜電極接合体30を支持するための支持フレームおよびガスセパレータとして金属製の支持フレーム50およびセパレータ60a、60bを備えている。また、整流部材51は、金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60a、60bとの間に、金属製支持フレーム50および金属製セパレータ60a、60bの双方と直接接触するように配置されている。したがって、整流部材が導電性を有する場合には、金属製支持フレーム50および金属製セパレータ60a、60bとの間に短絡が発生するが、本実施例に用いられる整流部材51は絶縁性に優れているため上記短絡を抑制または防止することができる。
【0048】
本実施例において用いられる整流部材51は、金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60a、60bとに直接接触するように配置されているので、部6に矢印F1で示す方向に発生する整流部材51を跨ぐ(すり抜ける)反応ガス(燃料ガス、酸化ガス)の流動を矢印F2で示すように阻止することができる。したがって、燃料ガス内部流路37a(酸化ガス内部流路37b)において、膜電極接合体30上を通過するように反応ガスの流れを規定することが可能となり、発電効率を向上させることができる。
【0049】
また、本実施例に用いられる整流部材51は、金属製支持フレーム50に形成されているへこみ部52に係合されている。したがって、整流部材51の位置決めが容易になり、単電池の組み立て効率を向上させることができる。本実施例においては、へこみ部52は金属製支持フレーム50のみに形成されているので、金属製支持フレーム50と金属製セパレータ60a、60bとを組み合わせる際の位置決め誤差を考慮することなくへこみ部52を形成することができる。
【0050】
さらに、整流部材51は、金属製支持フレーム50と別体の構成部材であるため、金属製支持フレーム50におけるシール部材10の配置位置(シール位置)に対する表面粗さを出すための加工を容易化することができる。
【0051】
・第2の実施例:
図7を参照して第2の実施例に係る燃料電池に用いられる金属製セパレータと整流部材との構成について説明する。図7は第2の実施例に係る燃料電池に用いられる単電池について図5中の切断線Y−Yで切断した断面を示す断面図である。
【0052】
第2の実施例では、金属製支持フレーム50に代えて金属製セパレータ60bにへこみ部64が形成されている。へこみ部64は、整流部材51の端面形状と同等の形状を有し、例えば、切削加工、エッチング処理によって金属製セパレータ60b上に形成される。なお、図7には金属製支持フレーム50のアノード面に配置されている整流部材51、アノード面に形成されているへこみ部64が示されているが、カソード面においても同様にへこみ部64が形成され、整流部材51が配置されている。
【0053】
第2の実施例に係る燃料電池においても、第1の実施例と同様の利点を有することができる。
【0054】
・その他の実施例:
(1)上記各実施例では水素透過膜形の膜電極接合体を例にとって説明したが、支持フレームによる支持が必要な非自立型の固体酸化物形の膜電極接合体に対しても適用され得ることは言うまでもない。非自立型の固体酸化物形膜電極接合体においても、締結過重、高い稼働温度の観点から膜電極接合体を支持するフレームとして金属製材料を用いなくてはならず、金属製支持フレームと金属製セパレータとの間における絶縁性を確保しなければならないからである。
【0055】
(2)上記第1および第2の実施例においては、へこみ部は金属製支持フレーム50または金属製セパレータ60a、60bのいずれか一方に形成されているが、金属製支持フレーム50および金属製セパレータ60a、60bの双方に形成されていても良い。この場合には、整流部材51の保持強度を高めることが可能となり、整流部材51の位置ズレをさらに抑制することができる。なお、へこみ部が金属製支持フレーム50および金属製セパレータ60a、60bの双方に形成される場合には、へこみ部の形成位置の管理精度を向上させることによって、あるいは、一方のへこみ部の大きさを大きく形成することによって組み立て時における位置ズレを抑制することができる。
【0056】
(3)上記各実施例では、支持フレーム50、セパレータ60a、60bとして金属製材料を用いて説明しているが、その他の導電性材料であって、金属製材料と同等の対締結過重性能を有する材料であれば同様にして用いることができる。この場合には、上記各実施例において用いられた整流部材51によって提供される良好な絶縁性が要求されるからである。
【0057】
(4)上記燃料電池システムの実施例では、格子状部56を備えている金属製支持フレーム50を用いて説明したが、格子状部56を備えることなく開口部を備える金属製フレームを用いても良い。
【0058】
以上、実施例に基づき本発明を説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施例に用いられる燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】図1における燃料電池を切断線X−Xで切断した切断面の一部を示す説明図である。
【図3】本実施例に用いられる金属製支持フレームのアノード側を示す説明図である。
【図4】本実施例に用いられる金属製支持フレームのカソード側を示す説明図である。
【図5】金属製支持フレームと金属製セパレータとが組み合わされた単電池をアノード面から見た平面透視図である。
【図6】第1の実施例に係る燃料電池に用いられる単電池について図5中の切断線Y−Yで切断した断面を示す断面図である。
【図7】第2の実施例に係る燃料電池に用いられる単電池について図5中の切断線Y−Yで切断した断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10…燃料電池用シール部材
25a…燃料ガス供給マニホールド
25b…燃料ガス排出マニホールド
26a…酸化ガス供給マニホールド
26b…酸化ガス排出マニホールド
27a…冷媒供給マニホールド
27b…冷媒排出マニホールド
30…膜電極接合体
31…電解質層
32…水素透過膜層
33…カソード
37a…燃料ガス内部流路
37c…酸化ガス内部流路
38a…アノード側ガス拡散層
38c…カソード側ガス拡散層
50…金属製支持フレーム
51…整流部材
52…へこみ部
56…格子状部
561…孔
520a…燃料ガス供給マニホールド形成部
520b燃料ガス排出マニホールド形成部
521a…酸化ガス供給マニホールド形成部
521b…酸化ガス排出マニホールド形成部
522a…冷媒供給マニホールド形成部
522b…冷媒排出マニホールド形成部
60a…カソードセパレータ
60b…アノードセパレータ
62a、62b…冷媒流路
64…へこみ部
100…単電池
200…燃料ガス供給管
201…燃料ガス排出管
201a…排出分岐管
201b…循環分岐管
FCS…燃料電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の外縁を支持する板状の金属製支持フレームと、
前記支持フレームの両側に配置される一対の金属製セパレータと、
前記金属製支持フレームと前記一対の金属製セパレータとの間に配置される1または複数の絶縁性整流部材とを備える燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記金属製支持フレームはへこみ部を有し、
各前記絶縁性整流部材は、一端が前記へこみ部に係合し、他端が前記一対の金属製セパレータに接触して、前記金属製支持フレームと前記一対の金属製セパレータとの間に配置される燃料電池。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記一対の金属製セパレータはへこみ部を有し、
各前記絶縁性整流部材は、一端が前記へこみ部に係合し、他端が前記金属製支持フレームに接触して、前記金属製支持フレームと前記一対の金属製セパレータとの間に配置される燃料電池。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の燃料電池において、
前記一対の金属製セパレータはさらに、前記膜電極接合体に対して反応ガスを供給するための反応ガス供給部を有し、
前記各絶縁性整流部材は、前記反応ガス供給部と前記膜電極接合体との間に形成され、前記反応ガス供給部から前記膜電極接合体へ供給される反応ガスを整流する燃料電池。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の燃料電池において、
前記一対の金属製セパレータはさらに、前記膜電極接合体から反応ガスを排出するための反応ガス排出部を備え、
前記各絶縁性整流部材は、前記膜電極接合体と前記反応ガス排出部との間に形成され、前記膜電極接合体から前記反応ガス排出部へ排出される反応ガスを整流する燃料電池。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の燃料電池において、
前記膜電極接合体は、
水素透過性基材からなるアノード側電極と、
固体酸化物型電解質膜からなる電解質膜とを備える燃料電池。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池において、
前記膜電極接合体と前記各金属製セパレータとの間にはそれぞれ拡散層が配置されている燃料電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate