説明

燃料電池

【課題】 過酸化水素量を低減することで耐久性を向上させることが可能な燃料電池を提供する。
【解決手段】 電解質膜11と、当該電解質膜11の両側に配設される拡散層12b、13bと触媒層12a、13aとを有する電極12、13とを備え、電解質膜11、拡散層12b、13b、電解質膜11と触媒層12a、13aとの間、及び触媒層12a、13aと拡散層12b、13bとの間、からなる領域の少なくともいずれか一の領域に、スカンジウム及び/又はスカンジウム化合物が備えられている、燃料電池100とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関し、特に、過酸化水素量を低減することで耐久性を向上させることが可能な燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池(以下において、「PEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)」と記述する。)に代表される燃料電池は、電解質膜と、当該電解質膜の両側に配置される電極(カソード及びアノード)とを備える膜電極接合体(以下において、「MEA(Membrane Electrode Assembly)」と記述する。)における電気化学反応により発生した電気エネルギーを、MEAの両側に配設されるセパレータを介して外部に取り出している。燃料電池の中でも、家庭用コージェネレーション・システムや自動車等に使用されるPEFCは、低温領域での運転が可能であり、80〜100℃程度の運転温度で使用されるのが一般的である。また、PEFCは、30〜40%の高いエネルギー変換効率を示し、起動時間が短く、かつシステムが小型軽量であることから、電気自動車や携帯用電源の最適な動力源として注目されている。
【0003】
PEFCのユニットセルは、電解質膜、少なくとも電極層(以下において、「触媒層」と記述することがある。)を備えるカソード及びアノード、並びに、セパレータを含み、その理論起電力は1.23Vである。しかし、かかる低起電力では電気自動車等の動力源として不十分であるため、通常は、ユニットセルを直列に積層した積層体の積層方向両端にエンドプレート等を配置して構成されるスタック形態の燃料電池が使用されている。
【0004】
他方、燃料電池の発電時には、ユニットセル内の電極層で起こる電気化学反応により水が生成されるほか、反応の途中で過酸化水素が生成される場合がある。この過酸化水素は、反応性が高いOHラジカルの発生源となり、OHラジカルは、MEAにおける電解質成分劣化の一因となることが明らかになってきている。かかる劣化は、燃料電池の耐久性低下及び発電性能低下の一因となるため、MEA内にて生成される過酸化水素量を低減することで上記劣化を抑制し、燃料電池の耐久性及び発電性能を向上させることが望まれている。
【0005】
燃料電池の発電性能向上を目的とした技術は、これまでにいくつか開示されてきている。例えば、特許文献1には、酸化セリウムを備える燃料電池用空気電極に関する技術が開示されており、かかる技術によれば、空気利用率を向上させることが可能になり電池性能が向上する、とされている。また、特許文献2には、酸化スカンジウムを備える酸素還元用電極触媒に関する技術が開示されており、かかる技術によれば、触媒の酸素還元活性が高いため、当該電極触媒を燃料電池用触媒として利用すれば高出力の燃料電池を提供できる、とされている。
【特許文献1】特開平10−55807号公報
【特許文献2】特開2004−197130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている技術は、空気利用率を向上させることで電池性能を向上させることを目的としており、過酸化水素に起因する耐久性低下への対策については示唆されていない。ここで、近年の研究により、酸化セリウム及び/又は当該酸化セリウムから溶出されるセリウムイオンが、過酸化水素分解性能を有していることが明らかになってきている。そのため、過酸化水素量を低減することで燃料電池の耐久性を向上させるために、酸化セリウム含有電極を備える燃料電池とすることも考えられる。しかし、酸化セリウムは水への溶解速度が大きいため、ユニットセル内で生成される水と共にユニットセル外へと流出しやすい。したがって、特許文献1にかかる燃料電池用空気電極を用いて燃料電池の耐久性を向上させようとしても、十分な耐久性向上効果が得られ難いという問題があった。また、特許文献2に開示されている技術では、酸素還元活性が高い触媒とするために酸化スカンジウムが使用されており、燃料電池の耐久性向上という観点からの使用はなされていない。
【0007】
本発明は、過酸化水素量を低減することで耐久性を向上させることが可能な燃料電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
請求項1に記載の発明は、電解質膜と、当該電解質膜の両側に配設される拡散層と触媒層とを有する電極とを備え、電解質膜、拡散層、電解質膜と触媒層との間、及び触媒層と拡散層との間、からなる領域の少なくともいずれか一の領域に、スカンジウム及び/又はスカンジウム化合物が備えられていることを特徴とする、燃料電池により、上記課題を解決する。
【0009】
ここに、「電解質膜と、電解質膜の両側に配設される拡散層と触媒層とを有する電極とを備え」とは、電解質膜の両側に配設される電極に触媒層及び拡散層が備えられ、触媒層が電解質膜と拡散層との間に挟まれる形態で、電解質膜と電極とが配設されることを意味している。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料電池において、スカンジウム化合物が、酸化スカンジウムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、優れた過酸化水素分解性能を有するスカンジウム及び/又はスカンジウム化合物が、電解質膜、拡散層、電解質膜と触媒層との間、及び触媒層と拡散層との間、の少なくとも1以上の部位に備えられているため、MEA内に存在する過酸化水素を効果的に分解することが可能になる。ここで、スカンジウム及びスカンジウム化合物は、水への溶解速度が小さく、例えばセリウム及びセリウム化合物の溶解速度よりも小さいことが知られている。そのため、かかる構成とすることで、過酸化水素分解性能を長期間に亘って維持することが可能になる。したがって、請求項1に記載の発明によれば、耐久性を向上させることが可能な燃料電池を提供することが可能になる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、酸化スカンジウムを備える燃料電池を提供することが可能になる。酸化スカンジウム及び/又は当該酸化スカンジウムから溶出されるスカンジウムイオンは、過酸化水素分解性能を有する他の物質と比較して優れた過酸化水素分解性能を有している。そのため、かかる構成とすることで、耐久性を効果的に向上させることが可能な燃料電池を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
燃料電池の発電時には、電極で過酸化水素が生じ得ることが知られており、この過酸化水素から生成されるOHラジカルによって、MEA(例えば、電解質膜等)の電解質成分が劣化する。これまでに、過酸化水素分解性能を有するイオンを溶出させる物質(例えば、酸化セリウム等)をMEA内に含む構成の燃料電池に関する技術は開示されているが、従来技術における酸化セリウムの適用は、カソード電極における反応性向上を目的としたものが多い。ここで、燃料電池の耐久性を向上させることを目的として酸化セリウムをMEA内に備える燃料電池とすることも考えられるが、セリウムは水への溶解速度が大きいため、長期間に亘って過酸化水素分解性能を維持することは難しい。燃料電池の耐久性を向上させるためには、長期間に亘って過酸化水素分解性能を維持可能であるとともに良好な過酸化水素分解性能を有する物質を備える構成の燃料電池とすることが好ましく、かかる物質を特定することができれば、耐久性を向上させ得る燃料電池を提供することが可能になる。
【0014】
本発明者らは、鋭意研究の結果、スカンジウム及び/又はスカンジウム化合物が、優れた過酸化水素分解性能を有することを見出した。ここに、スカンジウム及びスカンジウム化合物は、上記酸化セリウムよりも水への溶解速度が小さい。したがって、スカンジウム及び/又はスカンジウム化合物を備える燃料電池とすれば、長期間に亘って過酸化水素分解性能を維持することが可能になるため、かかる構成とすることで、耐久性を向上させ得る燃料電池を提供することが可能になる。
【0015】
本発明は、このような観点からなされたものであり、その要旨は、スカンジウム及び/又はスカンジウム化合物(以下において、単に「Sc」と記述する。)が、電解質膜、拡散層、電解質膜と触媒層との間、及び触媒層と拡散層との間からなる領域の少なくともいずれか一の領域に備えられる構成とすることで、耐久性を向上させることが可能な燃料電池を提供することにある。ここで、本発明にかかる燃料電池に備えられ得るスカンジウム化合物の具体例としては、酸化スカンジウム、塩化スカンジウム、硝酸スカンジウム等を挙げることができる。
【0016】
以下に図面を参照しつつ、本発明の燃料電池ついてさらに具体的に説明する。
【0017】
1.燃料電池の構成
図1は、第1実施形態にかかる本発明の燃料電池を概略的に示す断面図であり、図の左右方向が電極の積層方向である。図示のように、第1実施形態にかかる本発明の燃料電池100は、電解質膜11と当該電解質膜11の両側に配設されるアノード触媒層12a及びカソード触媒層13aとを備えるMEA15と、当該MEA15の両側に配設されるアノード拡散層12b及びカソード拡散層13bと、当該アノード拡散層12b及びカソード拡散層13bの外側に配設されるセパレータ16及び17とを備えている。アノード電極(以下において、単に「アノード」と記述することがある。)12は、アノード触媒層12a及びアノード拡散層12bを備える一方、カソード電極(以下において、単に「カソード」と記述することがある。)13は、カソード触媒層13a及びカソード拡散層13bを備えている。燃料電池100において、電解質膜11、アノード触媒層12a、及びカソード触媒層13aには、電解質成分(例えば、Nafion等に代表される含フッ素イオン交換樹脂等。Nafionは米国デュポン社の登録商標。以下において、単に「Nafion」と記述することがある。)が備えられており、さらに、電解質膜11には、Scが分散されている。アノード触媒層12a及びカソード触媒層13aには、電気化学反応の触媒として機能する白金が担持された炭素粒子(以下において、「白金担持カーボン」と記述する。)が備えられる一方で、アノード拡散層12b及びカソード拡散層13bは、例えば、炭素繊維からなるカーボンペーパーにより構成されている。MEA15の外側に配設されるセパレータ16及び17には、アノード12及びカソード13側に反応ガス供給路18a、18a、…、及び18b、18b、…が形成されており、アノード12側の反応ガス供給路18a、18a、…には水素含有物質(以下において、「水素」と記述する。)が供給される一方、カソード13側の反応ガス供給路18b、18b、…には酸素含有物質(以下において、「空気」と記述する。)が供給され、これらの反対側の面には冷却媒体流路19、19、…が形成されている。
【0018】
燃料電池の発電時には、反応ガス供給路18a、18a、…から供給される水素の一部が電解質膜11を透過して、カソード触媒層13aへと達する場合があるほか、反応ガス供給路18b、18b、…から供給される空気の一部が、電解質膜11を透過して、アノード触媒層12aへと達する場合がある。この空気に含まれる酸素が、燃料電池内の電位環境においてアノード触媒層12a及びカソード触媒層13aに含まれる白金担持カーボンの白金上及び/又はカーボン上で還元されると、反応の途中で過酸化水素が生成される場合があり、さらに、当該過酸化水素に起因するOHラジカルが生成される。OHラジカルは、電解質膜11、アノード触媒層12a、及びカソード触媒層13aに備えられる電解質成分の劣化の一因となり、この劣化が進行するとMEA15が劣化する。かかる電解質成分の劣化は、白金を備えない電解質膜11で特に顕著であり、電解質膜11が劣化すると、燃料電池の電圧が低下し、発電性能の低下を招く。そのため、かかる劣化の一因となる過酸化水素を予め分解することで、電解質膜の劣化を抑制し、燃料電池の耐久性を向上させることが望ましい。そこで、本実施形態にかかる燃料電池100では、劣化が特に顕著である電解質膜11に、優れた過酸化水素分解性能を有するScが分散される構成とすることで、アノード触媒層12a及びカソード触媒層13aにて生成され得る過酸化水素を分解し、電解質膜11の劣化を直接的に抑制している。
【0019】
上記説明では、便宜上、電解質膜11にScが分散されている形態について記述したが、本発明の燃料電池は当該形態に限定されるものではない。本発明の燃料電池では、電解質膜、拡散層、電解質膜と触媒層との間、及び、触媒層と拡散層との間からなる領域の少なくともいずれか一の領域にScが分散されていれば、当該Scの配置形態は特に限定されるものではない。図1に示す燃料電池100のように、電解質膜11のみにScが分散されていても良く、この他、アノード拡散層、カソード拡散層、電解質膜とアノード触媒層との間、電解質膜とカソード触媒層との間、アノード触媒層とアノード拡散層との間、カソード触媒層とカソード拡散層との間に、Scが備えられていても良い。
【0020】
2.Scの分散方法
電解質膜、アノード触媒層、カソード触媒層の、内部又は表面へScを分散させる方法について、以下に説明する。
【0021】
本発明の燃料電池に備えられる電解質膜は、例えば、含フッ素イオン交換樹脂等を含む電解質成分を膜状に形成することにより構成される。一方、本発明の燃料電池100に備えられるScは粉状物である。そのため、本発明では、例えばイソプロパノールと水との混合液等からなる有機溶媒を用いて溶解させた上記含フッ素イオン交換樹脂等を含む溶液(以下において、「電解質インク」と記述する。)に粉状のScを分散させ、その後、乾燥させて膜状に形成する等の方法により、Scを分散させた電解質膜とすることが可能になる。
【0022】
本発明の燃料電池に備えられるアノード触媒層及びカソード触媒層は、上記方法等により作製された電解質膜の表面にペースト状の触媒層(以下において、「電極インク」と記述することがある。)を塗布し乾燥させる等の方法により、製造される。ここに、電極インクは、上記電解質インク中に、燃料電池内の電気化学反応において触媒として機能する粉状の白金担持カーボン等を分散させる等の方法により作製される。
【0023】
本発明にかかる燃料電池では、電解質膜とアノード触媒層との間、及び/又は、電解質膜とカソード触媒層との間に、Scが備えられていても良い。これらの部位にScを分散させる方法の具体例としては、上記電解質インクに粉状のScを分散させ、Scを分散させた電解質インクを電解質膜の表面へ塗布し乾燥させてSc含有層を形成する方法等を挙げることができる。このようにして形成させたSc含有層の上に、上記電極インクを塗布し乾燥させる等の方法によりアノード触媒層又はカソード触媒層を形成させれば、電解質膜とアノード触媒層との間、又は電解質膜とカソード触媒層との間にScが備えられた燃料電池とすることが可能になる。
【0024】
さらに、本発明の燃料電池では、アノード触媒層とアノード拡散層との間、及び/又は、カソード触媒層とカソード拡散層との間に、Scが備えられていても良い。これらの部位にScを分散させる方法の具体例としては、上記電極インクに粉状のScを分散させ、Scを分散させた電極インクを、アノード触媒層及び/又はカソード触媒層の表面へ塗布し乾燥させてSc含有層を形成する方法等を挙げることができる。このようにして形成させたSc含有層の上に、アノード拡散層又はカソード拡散層を形成させれば、アノード触媒層とアノード拡散層との間や、カソード触媒層とカソード拡散層との間にScが備えられた燃料電池とすることが可能になる。
【0025】
上記説明では、電解質膜、電解質膜とアノード触媒層との間、電解質膜とカソード触媒層との間、アノード触媒層とアノード拡散層との間、及び、カソード触媒層とカソード拡散層との間に、Scを分散させる方法について記述したが、本発明にかかる燃料電池では、アノード拡散層及び/又はカソード拡散層(以下において、まとめて「拡散層」と記述することがある。)にScが分散されていても良い。本発明において、拡散層にScを分散させる方法の具体例としては、カーボンペーパー等からなる拡散層の表面に、Scを分散させた導電性樹脂等を塗布し焼き付けて固定させる方法等を挙げることができる。
【0026】
なお、本発明において、電解質膜、拡散層、電解質膜と触媒層との間、及び触媒層と拡散層との間、からなる領域の、少なくともいずれか一の領域に分散させるScの質量は、上記過酸化水素分解性能を発揮して効果的に耐久性を向上させ得る質量であれば特に限定されるものではない。Scの質量の具体例としては、電解質膜の質量の5%程度(電解質膜100質量部に対して、分散させるScが5質量部程度)等を挙げることができる。
【0027】
便宜上、上記説明では、アノード拡散層及びカソード拡散層が備えられている形態の燃料電池について記述したが、本発明にかかる燃料電池は当該形態に限定されるものではなく、一方の拡散層又は両方の拡散層を備えない形態であっても良い。
また、上記説明では、アノード側及びカソード側に反応ガス供給路が形成されている形態のセパレータを備える燃料電池について記述したが、本発明にかかる燃料電池は当該形態に限定されるものではなく、例えば、反応ガス供給路が形成されていないフラットタイプのセパレータがアノード側及び/又はカソード側に備えられている形態であっても良い。かかる形態の燃料電池とする場合には、フラットタイプのセパレータと当接すべき層(アノード拡散層若しくはアノード触媒層、及び/又は、カソード拡散層若しくはカソード触媒層)を、めっき法や発泡法等により製造されるステンレス鋼、チタン又はニッケル等の発泡金属、あるいは焼結金属等の多孔体により形成し、セパレータと当接すべき層に反応ガスが供給される形態の燃料電池とすれば良い。
【実施例】
【0028】
鉄イオンを含むフェントン試薬と、フッ素系の樹脂(Nafion)を含む電解質膜と、添加元素の酸化物とを耐圧容器に入れ、当該耐圧容器を100℃で8時間加熱後、溶液のフッ素イオン濃度を測定した(以下において、フェントン試薬を用いた試験を単に「フェントン試験」と記述する。)。添加元素の種類と、当該添加元素を入れた場合に測定されたフッ素イオン濃度(ppm)の結果を、表1にあわせて示す。表1において、添加元素欄の「−」は、添加元素を入れなかった場合を表している。なお、フッ素系樹脂を含む電解質膜が劣化するとフッ素イオンが溶出するため、フッ素イオン溶出量(フッ素イオン濃度)は耐久性の指標となる。
【0029】
【表1】

【0030】
表1より、添加元素を使用しないフェントン試験ではフッ素イオン濃度が30ppmであったのに対し、Ce酸化物(酸化セリウム:CeO)を用いたフェントン試験では、同濃度が1.0ppm、Sc酸化物(酸化スカンジウム:Sc)を用いたフェントン試験では、同濃度が0.6ppmであった。他方、他の添加元素の酸化物を用いたフェントン試験では、Y酸化物(酸化イットリウム:Y)を用いたフェントン試験においてフッ素イオン濃度が2.0ppmであった他は、同濃度が20ppm以上であった。すなわち、以上のフェントン試験により、酸化スカンジウムを用いることで、電解質膜から溶出するフッ素イオンを低減可能であることが確認された。ここで、測定されたフッ素イオン濃度が低いことは、電解質膜の劣化が少ないことを意味している。すなわち、以上の試験により、酸化スカンジウムを備える構成とすることで、耐久性を向上させ得る燃料電池を提供可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態にかかる本発明の燃料電池を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
11 電解質膜
12 アノード電極
12a アノード触媒層
12b アノード拡散層
13 カソード電極
13a カソード触媒層
13b カソード拡散層
16、17 セパレータ
100 燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、該電解質膜の両側に配設される拡散層と触媒層とを有する電極とを備え、
前記電解質膜、前記拡散層、前記電解質膜と前記触媒層との間、及び前記触媒層と前記拡散層との間、からなる領域の少なくともいずれか一の領域に、スカンジウム及び/又はスカンジウム化合物が備えられていることを特徴とする、燃料電池。
【請求項2】
前記スカンジウム化合物が、酸化スカンジウムであることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池。

【図1】
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