燃料電池
【課題】電解質・電極接合体の発電面全体に反応ガスを均一且つ良好に供給するとともに、反応ガス濃度及び発電反応を均一化し、しかも反応ガスの利用率を向上させることを可能にする。
【解決手段】燃料電池11を構成するセパレータ28は、電解質・電極接合体26を挟持する第1挟持部36を備え、前記第1挟持部36は、アノード電極24の電極面に向かって燃料ガスを雨浴状に供給する複数の燃料ガス供給孔38aと、反応に使用された前記燃料ガスを、排ガスとしてアノード電極24の電極面から雨浴状に排出する複数の排ガス排出孔38bとを設ける。第1挟持部36の周縁部には、第2橋架部46が設けられるとともに、前記第2橋架部46には、排ガスを積層方向に流動させるための排ガス排出連通孔50が形成された排ガス排出部48が連結される。排ガス排出連通孔50に排出された排ガスは、新たな燃料ガスに混合されて再度反応ガスとして利用される。
【解決手段】燃料電池11を構成するセパレータ28は、電解質・電極接合体26を挟持する第1挟持部36を備え、前記第1挟持部36は、アノード電極24の電極面に向かって燃料ガスを雨浴状に供給する複数の燃料ガス供給孔38aと、反応に使用された前記燃料ガスを、排ガスとしてアノード電極24の電極面から雨浴状に排出する複数の排ガス排出孔38bとを設ける。第1挟持部36の周縁部には、第2橋架部46が設けられるとともに、前記第2橋架部46には、排ガスを積層方向に流動させるための排ガス排出連通孔50が形成された排ガス排出部48が連結される。排ガス排出連通孔50に排出された排ガスは、新たな燃料ガスに混合されて再度反応ガスとして利用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、固体電解質型燃料電池(SOFC)は、電解質に酸化物イオン導電体、例えば、安定化ジルコニアを用いており、この電解質の両側にアノード電極及びカソード電極を配設した電解質・電極接合体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。この燃料電池は、通常、MEAとセパレータとが所定数だけ積層された燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
上記の燃料電池では、電解質・電極接合体を構成するアノード電極及びカソード電極に、それぞれ燃料ガス(例えば、水素ガス)及び酸化剤ガス(例えば、空気)を供給するために、セパレータの面方向に沿って燃料ガス通路及び酸化剤ガス通路が形成されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている平板積層型燃料電池は、図20に示すように、発電セルに積層されるセパレータ1を備えている。セパレータ1は、左右のマニホールド部分2a、2aと、中央の発電セルを配置する部分2bとが、連結部分2c、2cにより連結されており、この連結部分2cが可撓性を有している。
【0005】
マニホールド部分2a、2aには、ガス孔3、4が設けられており、一方のガス孔3は、燃料ガス通路3aに連通するとともに、他方のガス孔4は、酸化剤ガス通路4aに連通している。燃料ガス通路3a及び酸化剤ガス通路4aは、部分2b内にらせん状に延在しており、この部分2bの中央部近傍で、図示しない燃料極集電体及び空気極集電体に開放されている。
【0006】
ところで、この特許文献1では、燃料ガス及び酸化剤ガスが、発電セルの中心部から供給されて前記発電セルの外周部に向かって排出されている。このため、発電セルの電極面内において、中央部と外周部とに反応ガスの濃度差が発生し、前記電極面内における電流密度分布に偏りが生じて発電効率の向上が図れないという問題がある。
【0007】
しかも、発電セルの電極面内には、発電反応の差が発生して前記電極面内に温度勾配が生じ易い。従って、発電セルには、熱応力により損傷や劣化等の発電不良が惹起するおそれがある。
【0008】
さらに、発電セルの中央部から外周部に向かって、燃料ガス及び酸化剤ガスが流れるため、特にこの発電セルの外周部に発電反応により発生した水蒸気が集中する。これにより、発電セルが劣化し易いという問題がある。
【0009】
そこで、例えば、特許文献2に開示されている燃料電池用セパレータでは、図21に示すように、セパレータ内部に中空部5が設けられるとともに、この中空部5は、ガス導入口6に連通している。セパレータ積層面7には、ガス導入口6から中空部5内に導入された反応ガスを吐出するための複数のガス吐出口8が、前記積層面7の略全域にわたって設けられている。従って、セパレータ内部に導入された反応ガスは、複数のガス吐出口8から発電セルに向かってシャワー状に吐出されている。
【0010】
【特許文献1】特開2006−120589号公報(図4)
【特許文献2】特開2005−228734号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の特許文献2では、発電セルに向かってシャワー状に反応ガスを吐出する一方、反応後の排ガスを前記発電セルの外周部から排出しているため、前記外周部近傍で反応ガス濃度が低下し易い。これにより、発電セルの電極面内における反応ガス濃度に差が生じ、前記電極面内における電流密度分布に偏りが発生するという問題がある。
【0012】
しかも、発電セルの外周部では、ガス吐出口8近傍に比べて排ガス濃度が高くなり、電極面内における発電反応に差が生じてしまう。従って、発電セルに温度勾配が生じ、熱応力によって前記発電セルに損傷や劣化等の不良が生じるおそれがある。
【0013】
さらにまた、発電セルの外周部から排ガスが排出されるため、この発電セルの外周部には、発電反応で発生した水蒸気が集中し易い。このため、発電セルが劣化するという問題がある。
【0014】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、電解質・電極接合体の発電面全体に反応ガスを均一且つ良好に供給するとともに、反応ガス濃度及び発電反応を均一化し、しかも反応ガスの利用率を向上させることが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池に関するものである。
【0016】
セパレータは、電解質・電極接合体を挟持するとともに、少なくともアノード電極の電極面に沿って燃料ガスを供給する又はカソード電極の電極面に沿って酸化剤ガスを供給する反応ガス通路が設けられる挟持部と、前記挟持部に連結され、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを前記反応ガス通路に供給するための反応ガス供給通路が形成される第1橋架部と、前記第1橋架部に連結され、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを前記反応ガス供給通路に供給するための反応ガス供給連通孔が積層方向に形成される反応ガス供給部と、前記挟持部に連結され、前記電解質・電極接合体で使用された前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを、排ガスとして前記反応ガス通路から排出させるための排ガス排出通路が形成される第2橋架部と、前記第2橋架部に連結され、前記排ガスを前記積層方向に流動させるための排ガス排出連通孔が形成される排ガス排出部とを備えている。
【0017】
そして、挟持部には、少なくとも反応ガス通路に燃料ガス又は酸化剤ガスを雨浴状に供給する複数の反応ガス供給孔と、排ガスを前記反応ガス通路から雨浴状に排出して排ガス排出通路に送る複数の排ガス排出孔と、前記反応ガス通路側の周縁部から前記排ガスが排出されることを抑制する封止部とが形成されるとともに、排ガス排出連通孔は、反応ガス供給連通孔を介して前記反応ガス通路に連通している。
【0018】
また、燃料を改質して燃料ガスを生成し、燃料ガスを反応ガス供給連通孔に供給するための改質器を備えるとともに、排ガス排出連通孔は、前記改質器を介して前記反応ガス供給連通孔に連通することが好ましい。
【0019】
さらに、改質器の上流側には、エゼクタが配設されるとともに、排ガス排出連通孔は、前記エゼクタを介して前記改質器に連通することが好ましい。
【0020】
さらにまた、挟持部は、反応ガス供給孔に連通して反応ガス供給孔に反応ガスを供給するための反応ガス供給室と、排ガス排出孔に連通して排ガス排出孔から排ガスを排出するための排ガス排出室とを設けることが好ましい。
【0021】
また、反応ガス通路は、反応ガス供給孔を介して反応ガス供給室に連通するとともに、排ガス排出孔を介して排ガス排出室に連通することが好ましい。
【0022】
さらに、挟持部は、反応ガス供給孔及び排ガス排出孔が形成される第1プレート部と、前記第1プレート部との間に、反応ガス供給室及び排ガス排出室が形成される第2プレート部とを備え、前記第1プレート部と前記第2プレート部とが積層されることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、反応ガスは、複数の反応ガス供給孔から電解質・電極接合体の電極面全面に雨浴状に供給されるため、前記電極面内における反応ガス濃度を均等化することができる。一方、排ガスは、複数の排ガス排出孔から雨浴状に排出されるため、電解質・電極接合体の電極面内における排ガス濃度を均等化することが可能である。これにより、電極面内の電流密度分布を均一にすることができ、発電効率の向上が遂行される。
【0024】
さらに、電解質・電極接合体における発熱反応となる発電反応を均等化することが可能になる。このため、電解質・電極接合体の温度勾配を抑制し、熱応力による前記電解質・電極接合体の損傷や劣化等を可及的に阻止するとともに、発電反応により生じた水蒸気が集中することを良好に防止することができる。
【0025】
しかも、挟持部の反応ガス通路側の周縁部には、前記周縁部から排ガスが排出されることを抑制するための封止部が形成されている。従って、発電反応により発生した排ガスは、挟持部の周縁部に集中することを抑制することができ、電解質・電極接合体の電極面内における電流密度分布に偏りが生ずることを抑制することが可能になる。これにより、発電効率の向上及び安定化を図るとともに、電解質・電極接合体の温度勾配を抑制して熱応力による前記電解質・電極接合体の損傷や劣化等を可及的に阻止することができる。
【0026】
さらに、電解質・電極接合体で使用された燃料ガス又は酸化剤ガスは、排ガスとして排ガス排出孔から第2橋架部の排ガス排出通路に排出され、さらに排ガス排出連通孔に沿って積層方向に流動した後、反応ガスとして反応ガス供給連通孔から反応ガス通路に再度供給されている。このため、排ガス中に残存する未反応の反応ガスを再利用することができ、反応ガスの利用率が良好に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池11を組み込む燃料電池モジュール10の一部断面説明図であり、図2は、前記燃料電池11が矢印A方向に複数積層された燃料電池スタック12の概略斜視説明図である。
【0028】
燃料電池モジュール10は、定置用の他、車載用等の種々の用途に用いられている。燃料電池モジュール10は、図1に示すように、燃料電池スタック12と、酸化剤ガスを前記燃料電池スタック12に供給する前に加熱する熱交換器14と、燃料を改質して燃料ガスを生成する改質器16と、前記改質器16の上流側に配設されて後述する排出燃料ガスを含む排ガスを吸引するエゼクタ17と、前記燃料電池スタック12、前記熱交換器14、前記改質器16及び前記エゼクタ17を収容する筐体(ケーシング)18とを備える。
【0029】
筐体18内では、燃料電池スタック12の一方の側に、少なくとも熱交換器14、改質器16及びエゼクタ17を含む流体部19が配置されるとともに、前記燃料電池スタック12の他方の側に、燃料電池11の積層方向(矢印A方向)に締め付け荷重を付与する荷重付与機構21が配設される。流体部19及び荷重付与機構21は、燃料電池スタック12の中心軸に対して軸対称に配設される。
【0030】
燃料電池11は、固体電解質型燃料電池であり、この燃料電池11は、図3及び図4に示すように、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質(電解質板)20の両面に、カソード電極22及びアノード電極24が設けられた電解質・電極接合体26を備える。電解質・電極接合体26は、円板状に形成されるとともに、少なくとも外周端面部には、酸化剤ガス及び燃料ガスの進入や排出を阻止するためにバリアー層(図示せず)が設けられている。
【0031】
燃料電池11は、各セパレータ28間に複数、例えば、8個の電解質・電極接合体26が、このセパレータ28の中心部である燃料ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)30と同心円上に配列される。
【0032】
セパレータ28は、図3に示すように、例えば、ステンレス合金等の板金で構成される2枚の金属プレートやカーボンプレート等である第1プレート28a及び第2プレート28bを、例えば、ろう付け、拡散接合やレーザ溶接等により接合して構成される。第1プレート28aは、中央部に燃料ガス供給連通孔30を形成する燃料ガス供給部(反応ガス供給部)32を有する。この燃料ガス供給部32から外方に等角度間隔ずつ離間して放射状に延在する複数の第1橋架部34を介して比較的大径な第1挟持部(第1プレート部)36が一体的に設けられる。
【0033】
各第1挟持部36は、電解質・電極接合体26と略同一寸法に設定される。各第1挟持部36には、燃料ガスを電解質・電極接合体26を構成するアノード電極24に雨浴状(以下、シャワー状という)に供給するための複数の燃料ガス供給孔(反応ガス供給孔)38aと、前記アノード電極24で反応に使用された燃料ガスを、排ガスとしてシャワー状に排出するための複数の排ガス排出孔38bとが、配列される(図3〜図5参照)。
【0034】
各第1挟持部36のアノード電極24に接触する面36aには、アノード電極24の電極面に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス通路(反応ガス通路)40が形成される。面36aには、燃料ガスが燃料ガス供給孔38aから排ガス排出孔38bに直線状に流れることを規制する複数の突起部42が形成される。第1挟持部36の面36a側の周縁部には、前記周縁部から燃料ガス及び排ガスが排出されることを抑制するためのリング状封止部(凸部)44が形成される。
【0035】
突起部42は、面36aに、例えば、エッチングにより形成される中実部、又はプレスにより形成される中空部で構成される。突起部42の断面形状は、矩形状、円形状、長円形状、楕円形状、三角形状又は長方形状等、種々の形状に設定可能であるとともに、位置や密度は、燃料ガスの流れ状態等によって任意に変更される。以下に説明する他の突起部は、上記の突起部42と同様に構成される。
【0036】
第1挟持部36の外周外側(セパレータ28の外周部)には、矢印B方向外方に突出する板状の第2橋架部46が設けられるとともに、前記第2橋架部46には、排ガス(反応に使用された燃料ガスを含む)を排出する排ガス排出部48が連結される。この排ガス排出部48には、排ガスを積層方向に流動させるための排ガス排出連通孔50が形成される。
【0037】
第2プレート28bは、中央部に燃料ガス供給連通孔30を形成する燃料ガス供給部(反応ガス供給部)52を備える。燃料ガス供給部52から放射状に8本の第1橋架部54が延在するとともに、各第1橋架部54には、第2挟持部(第2プレート部)56が一体に設けられる。
【0038】
燃料ガス供給部52から各第1橋架部54を周回して、凸部58が設けられる。この凸部58は、セパレータ28の燃料ガス供給部32及び各第1橋架部34に接合されることにより、燃料ガス供給連通孔30に連通してセパレータ面方向に延在する燃料ガス供給通路(反応ガス供給通路)60が形成される。
【0039】
第2挟持部56の面56aには、燃料ガス供給通路60と燃料ガス供給孔38aとに連通し、前記燃料ガス供給通路60を流れる燃料ガスを前記燃料ガス供給孔38aに供給する燃料ガス供給室(反応ガス供給室)62と、排ガス排出孔38bに連通し、前記排ガス排出孔38bから排ガスを排出する排ガス排出室64とが設けられる。
【0040】
燃料ガス供給室62は、複数列、例えば、5列に配列される燃料ガス供給孔38aに対応して5本に分岐する一方、排ガス排出室64は、例えば、6列に配列される排ガス排出孔38bに対応して6本に分岐され、前記燃料ガス供給室62と前記排ガス排出室64とが交互に配置される。
【0041】
第2挟持部56の外周外側(セパレータ28の外周部)には、矢印B方向外方に突出する板状の第2橋架部67が設けられるとともに、前記第2橋架部67には、排ガスを排出する排ガス排出部68が連結される。排ガス排出室64は、第2橋架部67に設けられた排ガス排出通路69を介して排ガス排出連通孔50に連通する。
【0042】
第2挟持部56の面56bには、カソード電極22の電極面に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路70を形成し且つ前記カソード電極22に密着する変形可能な弾性通路部、例えば、導電性メッシュ部材(金属メッシュ等の導電性織布)72が配設される。メッシュ部材72は、例えば、ステンレス鋼(SUS材)の線材で構成され、円板状を有する。このメッシュ部材72は、積層方向(矢印A方向)の荷重に対して所望の弾性変形が可能な厚さに設定される。なお、メッシュ部材72に代えて、導電性フェルト部材(金属フェルト等の導電性不織布)、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル等を採用してもよい。また、第2挟持部56の面56bには、カソード電極22の電極面に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路70を形成する複数の突起部(ボス)を設けてもよく、突起部は、エッチングやプレス等により形成される。
【0043】
図6に示すように、メッシュ部材72に設けられる酸化剤ガス通路70は、電解質・電極接合体26の内側周端部と第2挟持部56の内側周端部との間から矢印B方向に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給連通孔74に連通する。この酸化剤ガス供給連通孔74は、各第1挟持部36及び第2挟持部56の内方と第1橋架部34間及び第1橋架部54間に位置して積層方向(矢印A方向)に延在している。
【0044】
各セパレータ28間には、燃料ガス供給連通孔30及び排ガス排出連通孔50をシールするための絶縁シール76a、76bが配設される。絶縁シール76a、76bは、シール性が高く、硬質で潰れ難い、例えば、地殻成分系素材、硝子系素材、粘土とプラスチックの複合素材等が使用される。第1挟持部36及び第2挟持部56の外周側には、主に反応に使用された酸化剤ガスを含む排ガスを排出するための排ガス通路78が設けられる。
【0045】
図1及び図2に示すように、燃料電池スタック12は、複数の燃料電池11の積層方向両端にエンドプレート80a、80bを配置する。エンドプレート80aは、略円板状を有しており、外周部に軸線方向に突出してリング状部82が設けられる。このリング状部82の外周部には、周回溝部84が形成される。リング状部82の中心部に対応して、円柱状凸部86がこのリング状部82と同一方向に膨出形成され、前記凸部86の中央部に段付き孔部88が形成される。
【0046】
エンドプレート80aには、凸部86を中心にして同一仮想円周上に孔部90とねじ孔92とが、交互に且つ所定の角度間隔ずつ離間して設けられる。孔部90及びねじ孔92は、第1橋架部34、54同士の間に形成される各酸化剤ガス供給連通孔74に対応して設けられる。エンドプレート80bは、エンドプレート80aよりも大径に構成されるとともに、導電性の薄板で形成される。
【0047】
筐体18は、荷重付与機構21を収容する第1筐体部96aと、燃料電池スタック12を収容する第2筐体部96bとを備える。第1及び第2筐体部96a、96b間は、エンドプレート80bの第2筐体部96b側に絶縁材を介装してねじ98及びナット100により締め付けられる。エンドプレート80bは、流体部19から荷重付与機構21に高温の排ガスや空気が流入することを阻止するガス遮蔽部を構成する。
【0048】
第2筐体部96bには、リング状壁板102の一端部が接合されるとともに、前記壁板102の他端部には、ヘッド板104が固着される。流体部19は、燃料電池スタック12の中心軸に対して軸対称に配設される。具体的には、略リング状の熱交換器14の内側に、エゼクタ17及び改質器16が同軸的に配設される。
【0049】
エンドプレート80aの周回溝部84に壁板106が固定されて流路部材108が構成されるとともに、この流路部材108には、熱交換器14及び改質器16が直結される。流路部材108内に形成されるチャンバ108aには、熱交換器14を通って加熱された空気が一旦充填される。孔部90は、チャンバ108aに一旦充填された空気を燃料電池スタック12に供給するための開口部を構成する。
【0050】
流路部材108には、略リング状のケーシング110が燃料電池スタック12を構成する各排ガス排出部48、68に一体形成された排ガス排出連通孔50に対応して設けられる。流路部材108には、排ガス排出連通孔50に連通する複数の孔部108bが形成されるとともに、前記孔部108bは、ケーシング110内に連通して排出ガスチャンバを構成する。ケーシング110には、所定数、例えば、1つの管路112が連結され、この管路112はエゼクタ17又は改質器16の吸引口と、燃料電池スタック12の排ガス通路78から熱交換器14を介して排ガス管117に至る通路120に連結される。
【0051】
エゼクタ17には、燃料ガス供給管114が設けられる一方、改質器16には、改質ガス供給管115が設けられる。燃料ガス供給管114は、ヘッド板104を介して外部に延在する一方、改質ガス供給管115は、エンドプレート80aの段付き孔部88に嵌挿されて燃料ガス供給連通孔30に連通する。
【0052】
ヘッド板104には、空気供給管116と排ガス管117とが接続される。筐体18内には、空気供給管116から熱交換器14を介して流路部材108に直接開口する通路118と、燃料電池スタック12の排ガス通路78から熱交換器14を介して排ガス管117に至る通路120とが設けられる。
【0053】
荷重付与機構21は、燃料ガス供給連通孔30の近傍に対して第1締め付け荷重を付与する第1締め付け部122aと、電解質・電極接合体26に対して前記第1締め付け荷重よりも小さな第2締め付け荷重T2を付与する第2締め付け部122bとを備える。
【0054】
第1締め付け部122aは、エンドプレート80aの一方の対角位置に設けられるねじ孔92、92に螺合する短尺な第1締め付けボルト124a、124aを備える。第1締め付けボルト124a、124aは、燃料電池11の積層方向に延在するとともに、第1押圧プレート126aに係合する。第1締め付けボルト124aは、セパレータ28の内部に設けた酸化剤ガス供給連通孔74内に設けられる。第1押圧プレート126aは、幅狭な板状を有しており、燃料ガス供給連通孔30を覆ってセパレータ28の中央部に係合する。
【0055】
第2締め付け部122bは、長尺な第2締め付けボルト124b、124bを備え、前記第2締め付けボルト124b、124bは、エンドプレート80aの他方の対角位置に設けられるねじ孔92、92に螺合する。第2締め付けボルト124bの端部は、外周湾曲形状の第2押圧プレート126bを貫通し、この端部にナット127が螺合する。第2締め付けボルト124bは、セパレータ28の内部に設けた酸化剤ガス供給連通孔74内に設けられる。第2押圧プレート126bの各円弧状部には、燃料電池11の第1及び第2挟持部36、56に配置される各電解質・電極接合体26に対応してスプリング128及び台座129が配設される。スプリング128は、例えば、セラミックススプリングにより構成される。
【0056】
このように構成される燃料電池モジュール10の動作について、以下に説明する。
【0057】
燃料電池モジュール10では、図1に示すように、燃料ガス供給管114から燃料(メタン、エタン又はプロパン等)及び必要に応じて水が供給されるとともに、空気供給管116から酸化剤ガスである酸素含有ガス(以下、空気ともいう)が供給される。
【0058】
燃料は、エゼクタ17から改質器16を通って改質されることにより、燃料ガス(水素含有ガス)が得られ、この燃料ガスは、燃料電池スタック12の燃料ガス供給連通孔30に供給される。燃料ガスは、積層方向(矢印A方向)に移動しながら各燃料電池11を構成するセパレータ28内を通って燃料ガス供給通路60に導入される(図4及び図6参照)。
【0059】
燃料ガスは、燃料ガス供給通路60から燃料ガス供給室62に一旦導入される。この燃料ガス供給室62は、第1挟持部36に設けられている複数且つ5列に配列された燃料ガス供給孔38aに連通している。このため、燃料ガスは、燃料ガス供給室62から各燃料ガス供給孔38aを通って、電解質・電極接合体26を構成するアノード電極24の電極面全面にわたりシャワー状に供給される(図7参照)。
【0060】
燃料ガス供給孔38aを通ってアノード電極24に供給された燃料ガスは、燃料ガス通路40を通り、すなわち、複数の突起部42によって形成された流路を通り、発電反応に使用された後、複数の排ガス排出孔38bから排ガス排出室64にシャワー状に排出される。この排ガス排出室64は、図4に示すように、複数且つ6列に配列された排ガス排出孔38bに連通しており、前記排ガス排出孔38bから前記排ガス排出室64に排出された排ガスは、排ガス排出通路69を介して排ガス排出連通孔50に排出される。
【0061】
一方、空気は、図1に示すように、空気供給管116から熱交換器14の通路118を通って一旦チャンバ108aに導入される。この空気は、チャンバ108aに連通する孔部90を通って各燃料電池11の略中央側に設けられている酸化剤ガス供給連通孔74に供給される。その際、熱交換器14では、後述するように、排ガス通路78に排気される排ガス(反応に使用された空気を含む)が通路120を通るため、使用前の空気と熱交換が行われ、この空気が予め所望の燃料電池運転温度に加温されている。
【0062】
酸化剤ガス供給連通孔74に供給された空気は、電解質・電極接合体26の内側周端部と第1挟持部36の内側周端部との間から矢印B方向に流入し、メッシュ部材72に形成された酸化剤ガス通路70に送られる(図6参照)。酸化剤ガス通路70では、電解質・電極接合体26のカソード電極22の内側周端部(セパレータ28の中央部)側から外側周端部(セパレータ28の外側周端部側)に向かって空気が流動する。
【0063】
従って、電解質・電極接合体26では、アノード電極24の電極面全面にわたってシャワー状に燃料ガスが供給されるとともに、カソード電極22の電極面の一方向(矢印B方向)に向かって空気が供給される。その際、酸化物イオンが電解質20を通ってアノード電極24に移動し、化学反応により発電が行われる。
【0064】
なお、各電解質・電極接合体26の外周部に排出される発電反応後の空気は、排ガスとして排ガス通路78を介して燃料電池スタック12から排出される(図1参照)。そして、排ガス(含有酸化剤ガス)は、熱交換器14の通路120を通って空気との間で熱交換を行った後、排ガス管117から排出される(図1参照)。
【0065】
この場合、第1の実施形態では、第1挟持部36は、アノード電極24の電極面に向かって燃料ガスをシャワー状に導入する複数の燃料ガス供給孔38aと、燃料ガス通路40に供給されて反応に使用された燃料ガスを、排ガスとして前記燃料ガス通路40からシャワー状に排出する複数の排ガス排出孔38bとを設けている。
【0066】
このように、燃料ガスは、複数の燃料ガス供給孔38aからアノード電極24の電極面全面にシャワー状に供給されるため、前記電極面内における燃料ガス濃度を均一化することができる。一方、排ガスは、複数の排ガス排出孔38bからシャワー状に排出されるため、電極面内における排ガス濃度を均等化することが可能になる。このため、電極面内の電流密度分布を均一にすることができ、発電効率の向上が容易に遂行される。
【0067】
さらに、電解質・電極接合体26における発熱反応となる発電反応を均等化することが可能になる。従って、電解質・電極接合体26の温度勾配を抑制し、熱応力による前記電解質・電極接合体26の損傷や劣化等を可及的に阻止するとともに、発電反応により生じた水蒸気が集中することを良好に防止することができるという効果が得られる。
【0068】
そこで、図8には、従来技術1(特許文献1)、従来技術2(特許文献2)及び本発明の第1の実施形態において、それぞれの水蒸気濃度と電流密度との発生状態が示されている。
【0069】
従来技術1では、単一の燃料ガス供給孔を備えるだけであり、電解質・電極接合体26の中心における電流密度及び水蒸気密度と、周縁部における電流密度及び水蒸気濃度とに大きな差が生じた。また、複数の燃料ガス供給孔を備え、外方に排気ガスを排出する従来技術2では、電解質・電極接合体26の中央から外方にわたって水蒸気濃度及び電流密度の差が比較的小さいものの、前記電解質・電極接合体26の周縁部に行くに従って、前記水蒸気濃度及び前記電流密度に差が生じた。
【0070】
これにより、従来技術1及び従来技術2では、電極面内の電流密度分布が不均一になり、発電効率が低下するとともに、温度勾配によって前記電解質・電極接合体26の損傷や劣化等が発生し易い。
【0071】
これに対して、第1の実施形態では、電解質・電極接合体26の発電面内にわたって水蒸気濃度及び電流密度を略均一化することができ、上記の不具合が発生することを抑制することができるという効果が得られた。
【0072】
さらにまた、第1の実施形態では、図4及び図5に示すように、第1挟持部36の面36a側の周縁部には、該周縁部から燃料ガス及び排ガスが排出されることを抑制するためのリング状封止部44が形成されている。従って、発電反応により発生した排ガスが第1挟持部36の周縁部に集中することを抑制することができ、電解質・電極接合体26の電極面内における電流密度分布に偏りが生ずることを抑制することが可能になる。このため、発電効率の向上及び安定化を図るとともに、電解質・電極接合体26の温度勾配を抑制し、熱応力による前記電解質・電極接合体26の損傷や劣化等を可及的に阻止することができる。
【0073】
さらに、第2挟持部56には、燃料ガス供給孔38aに連通する燃料ガス供給室62と、排ガス排出孔38bに連通する排ガス排出室64とが設けられている。燃料ガス供給室62は、反応前の燃料ガスの圧力変動や圧力不均等を整える機能を有しており、燃料ガス供給孔38aから電解質・電極接合体26の電極面に供給される燃料ガスは、前記電極面内における燃料ガス濃度を均等化することができる。一方、排ガス排出室64は、排ガスの排出を促進させるとともに、燃料ガスの供給も促進させる機能を有しており、アノード電極24の電極面内における排ガス濃度を均等化することが可能である。
【0074】
これにより、アノード電極24の電極面内の電流密度分布を均一にして発電効率の向上が遂行されるとともに、電解質・電極接合体26における温度勾配を抑制し、熱応力による前記電解質・電極接合体26の損傷や劣化等を可及的に阻止することができる。
【0075】
さらに、第1挟持部36にのみ、繊細な製造工程が必要である微細孔である燃料ガス供給孔38a及び排ガス排出孔38bが形成されており、第2挟持部56には、この種の微細な製造工程が不要になる。従って、微細な製造工程の有無により第1挟持部36と第2挟持部56とを別体に構成することができ、製造コストの削減及び歩留りの向上が容易に図られる。
【0076】
さらにまた、第1の実施形態では、図4及び図6に示すように、電解質・電極接合体26で反応に使用された燃料ガスは、排ガスとして排ガス排出通路69を介して排ガス排出連通孔50に排出される。この排ガスは、排ガス排出連通孔50に沿って積層方向に移動する。そして、排ガスは、図1に示すように、管路112を通ってエゼクタ17に吸引されている。このエゼクタ17から改質器16に送られる排ガスは、前記改質器16から燃料電池スタック12に対し、新たな燃料ガスとして再度供給されている。
【0077】
このため、第1の実施形態では、排ガス中に残存する未反応の燃料ガスを、燃料ガスとして再利用することができ、燃料の利用率が良好に向上するという効果が得られる。
【0078】
さらに、改質器16の上流側にエゼクタ17が連結されるとともに、燃料電池スタック12の排ガス排出通路69は、管路112を介して前記エゼクタ17に連通している。従って、エゼクタ17は、負圧を利用して排出燃料ガスを排ガス排出通路69から吸引することができ、ポンプ等の負荷が不要になって燃料ガスの有効利用が、一層効率的且つ経済的に遂行可能になるという利点がある。
【0079】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池モジュール140の一部断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池モジュール10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3及び第4の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0080】
燃料電池モジュール140では、エゼクタを用いておらず、管路112が改質器16に連結されている。このため、改質器16に供給される新たな燃料と排ガスとの圧力差により、前記排ガスが前記改質器16に吸引されて前記新たな燃料と混合することができる。これにより、第2の実施形態では、エゼクタを削除することができ、構成が一層簡素化されるという効果が得られる。
【0081】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池200が矢印A方向に積層された燃料電池スタック202の概略斜視説明図である。
【0082】
図11に示すように、燃料電池200は、一組のセパレータ204間に電解質・電極接合体26を挟んで構成される。セパレータ204は、互いに積層される第1、第2及び第3プレート206、208及び210を備える。第1〜第3プレート206、208及び210は、例えば、ステンレス合金等の板金で構成され、前記第2プレート208の両面に、前記第1プレート206と前記第3プレート210とが、例えば、ろう付け、拡散接合又はレーザ溶接等により接合される。
【0083】
第1プレート206は、積層方向(矢印A方向)に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔30が形成される燃料ガス供給部(反応ガス供給部)212を備える。燃料ガス供給部212には、幅狭な第1橋架部214を介して第1挟持部216が一体的に設けられる。第1挟持部216は、電解質・電極接合体26のアノード電極24と略同一寸法に設定されている。第1挟持部216には、幅狭な第2橋架部218を介して排ガスを排出するための排ガス排出連通孔50を設けた排ガス排出部220が連結される。
【0084】
第3プレート210は、積層方向(矢印A方向)に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔74が形成される酸化剤ガス供給部(反応ガス供給部)228を備える。酸化剤ガス供給部228には、幅狭な第3橋架部230を介して第2挟持部232が一体的に設けられる。
【0085】
第2挟持部232は、電解質・電極接合体26のカソード電極22に接する面に、前記カソード電極22の電極面全面に酸化剤ガスをシャワー状に供給する複数の酸化剤ガス供給孔38cと、前記カソード電極22で反応に使用された酸化剤ガスを、排ガスとしてシャワー状に排出するための複数の排ガス排出孔38dとが、交互に配設される。酸化剤ガス供給孔38cと排ガス排出孔38dとの間には、突起部42aが設けられる(図11及び図12参照)。
【0086】
図11に示すように、第2プレート208は、燃料ガス供給連通孔30が形成される燃料ガス供給部(反応ガス供給部)238と、排ガス排出連通孔50が形成される排ガス排出部239と、酸化剤ガス供給連通孔74が形成される酸化剤ガス供給部240とを備える。燃料ガス供給部238、排ガス排出部239及び酸化剤ガス供給部240は、幅狭な第1橋架部242、第2橋架部243及び第3橋架部244を介して第3挟持部246に一体的に構成される。第3挟持部246は、第1及び第2挟持部216、232と略同一直径に設定される。
【0087】
第3挟持部246は、第1挟持部216に向かう面に、燃料ガス供給室62と排ガス排出室64とを分離して形成する。この第3挟持部246は、第2挟持部232に向かう面に、図13に示すように、酸化剤ガス供給室62aと、排ガス排出室64aとを分離して形成する。酸化剤ガス供給室62aは、酸化剤ガス供給孔38cに連通するとともに、排ガス排出室64aは、排ガス排出孔38dに連通する。
【0088】
第1橋架部214、242間には、燃料ガス供給連通孔30に連通する燃料ガス供給通路60が設けられる(図11参照)。第2橋架部218、243間には、排ガス排出連通孔50に連通する排ガス排出通路69が設けられるとともに、第3橋架部230、244間には、酸化剤ガス供給連通孔74に連通する酸化剤ガス供給通路252が設けられる。
【0089】
図10に示すように、燃料電池スタック202は、複数の燃料電池200の積層方向両端にエンドプレート254a、254bを配置する。エンドプレート254aもしくはエンドプレート254bは、締付ボルト258と電気的に絶縁される。エンドプレート254aには、燃料電池200の燃料ガス供給連通孔30に連通する第1配管256aと、酸化剤ガス供給連通孔74に連通する第2配管256bと、排ガス排出連通孔50に連通する第3配管256cとが接続される。第3配管256cは、第1配管256aの上流側に連通しており、排ガス排出連通孔50と燃料ガス通路40とは、燃料ガス供給連通孔30を介して連通する。
【0090】
エンドプレート254aには、燃料ガス供給連通孔30の上下両側、酸化剤ガス供給連通孔74の上下両側にねじ孔260が形成される。各ねじ孔260に締付ボルト258が螺合することによって、燃料電池スタック202が締め付け保持される。
【0091】
このように構成される燃料電池スタック202では、エンドプレート254aに接続されている第1配管256aから燃料ガス供給連通孔30には、燃料ガスが供給されるとともに、前記エンドプレート254aに接続された第2配管256bから酸化剤ガス供給連通孔74には、酸素含有ガスである空気が供給される。
【0092】
燃料ガス供給連通孔30に供給された燃料ガスは、図12に示すように、積層方向(矢印A方向)に移動しながら、各燃料電池200を構成するセパレータ204内の燃料ガス供給通路60に供給される。燃料ガスは、燃料ガス供給通路60に沿って燃料ガス供給室62に供給される。
【0093】
燃料ガス供給室62には、複数の燃料ガス供給孔38aが連通しており、燃料ガスは、前記燃料ガス供給孔38aから燃料ガス通路40にシャワー状に供給される。発電反応に使用された燃料ガスは、複数の排ガス排出孔38bから排ガス排出室64にシャワー状に排出される。
【0094】
一方、酸化剤ガス供給連通孔74に供給される空気は、セパレータ204内の酸化剤ガス供給通路252を移動し、酸化剤ガス供給室62aに供給される(図13参照)。さらに、空気は、複数の酸化剤ガス供給孔38cから酸化剤ガス通路70にシャワー状に供給される。発電反応に使用された酸化剤ガスは、複数の排ガス排出孔38dから排ガス排出室64aにシャワー状に排出される。
【0095】
この場合、第3の実施形態では、酸化剤ガスが複数の酸化剤ガス供給孔38cからカソード電極22の電極面全面にシャワー状に供給されるため、前記電極面内における酸化剤ガス濃度を均等化することができる。一方、排ガス(使用済みの酸化剤ガス)は、複数の排ガス排出孔38dからシャワー状に排出されるため、カソード電極22の電極面内における排ガス濃度を均等化することが可能になる。
【0096】
さらに、排ガス排出室64にシャワー状に排出された排ガス(使用された燃料ガス)は、排ガス排出通路69に流入し、この排ガス排出通路69を介して排ガス排出連通孔50に排出されて積層方向(矢印A方向)に移動する。排ガスは、図10に示すように、排ガス排出連通孔50に連結される第3配管256cに沿って移動した後、第1配管256aの上流側に合流する。
【0097】
このため、排ガスは、新たな(反応前の)燃料ガスと共に第1配管256aから燃料ガス供給連通孔30に送られる。従って、燃料ガスがアノード電極24に沿って燃料ガス通路40を流動した後の排ガス中に残存する未反応の燃料ガスを、燃料ガスとして再利用することができ、燃料ガスの利用率を有効に向上させることができる等、第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
図14は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池300を組み込む燃料電池モジュール302の一部断面説明図であり、図15は、前記燃料電池300が矢印A方向に複数積層された燃料電池スタック304の概略斜視説明図である。
【0099】
燃料電池300は、図16に示すように、一対のセパレータ306間に複数、例えば、4個の電解質・電極接合体26を挟んで構成される。セパレータ306間には、このセパレータ306の中心部である燃料ガス供給連通孔30を中心にして等角度間隔ずつ離間し且つ前記燃料ガス供給連通孔30と同心円上に4個の電解質・電極接合体26が配置される。
【0100】
セパレータ306は、例えば、ステンレス合金等の板金で構成される第1プレート308及び第2プレート310を有する。第1プレート308及び第2プレート310は、互いに拡散接合、レーザ溶接又はろう付け等により接合される。第1プレート308及び第2プレート310は、金属プレートに代えて、例えば、カーボンプレート等(接合方法は省略する)で構成してもよい。
【0101】
第1プレート308は、中央部に積層方向(矢印A方向)に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔30が形成される燃料ガス供給部(反応ガス供給部)312を有する。この燃料ガス供給部312から外方に等角度間隔ずつ離間して放射状に延在する4つの第1橋架部314を介し第1挟持部316が一体に設けられる。第1挟持部316は、電解質・電極接合体26と略同一寸法に設定される。
【0102】
各第1挟持部316の外周両側には、外方に突出する第2橋架部318が設けられるとともに、隣り合う第1挟持部316の各第2橋架部318同士は、排ガス排出部320に一体化される。各第1挟持部316には、短尺な第3橋架部322を介して環状の第1筐体部324が一体に設けられる。
【0103】
第1筐体部324は、酸化剤ガスを後述する酸化剤ガス供給通路348に供給するための酸化剤ガス供給連通孔74が積層方向に形成される酸化剤ガス供給部(反応ガス供給部)326を有する。第1筐体部324には、複数のボルト挿入用孔部328が所定角度間隔ずつ離間して設けられる。燃料ガス供給連通孔30、第1橋架部314、第1挟持部316、第3橋架部322及び酸化剤ガス供給連通孔74は、セパレータ面方向に沿って直線上に配置される(図16〜図18参照)。
【0104】
図16及び図19に示すように、第2プレート310は、中央部に燃料ガス供給連通孔30が形成される燃料ガス供給部(反応ガス供給部)330を有する。この燃料ガス供給部330から外方に等角度間隔ずつ離間して放射状に延在する4つの第1橋架部332を介して第2挟持部334が一体に設けられる。第2挟持部334は、第1挟持部316と同様に、電解質・電極接合体26と略同一寸法に設定される。
【0105】
各第2挟持部334の外周両側には、外方に突出する第2橋架部336が設けられるとともに、隣り合う第2挟持部334の各第2橋架部336同士は、排ガス排出部338に一体化される。各第2挟持部334には、短尺な第3橋架部340を介して環状の第2筐体部342が一体に設けられる。
【0106】
第2筐体部342には、酸化剤ガス供給連通孔74が積層方向に形成される酸化剤ガス供給部326と、ボルト挿入用孔部328とが設けられる。この第2筐体部342の第1筐体部324に接合される面には、酸化剤ガス供給連通孔74から供給される酸化剤ガスを充填するための充填室346が形成される。
【0107】
充填室346は、各第3橋架部340から各第2挟持部334の中央部近傍まで延在する酸化剤ガス供給通路(反応ガス供給通路)348に連通する。酸化剤ガス供給通路348の先端には、第2挟持部334を貫通する酸化剤ガス供給孔350が連通する。
【0108】
各セパレータ306間には、図示しないが、燃料ガス供給連通孔30をシールするための第1絶縁シールと、酸化剤ガス供給連通孔74をシールするための第2絶縁シールとが設けられる。第1絶縁シール及び第2絶縁シールは、シール性が高く、硬質で潰れ難い、例えば、地殻成分系素材、硝子系素材、粘土とプラスチックの複合素材等が使用される。また、第2絶縁シールは、熱エネルギの拡散を阻止する断熱部材であることが好ましい。
【0109】
図14及び図15に示すように、燃料電池スタック304は、複数の燃料電池300の積層方向一端に、略円板状の第1エンドプレート352aが配置されるとともに、積層方向他端に、隔壁354を介装して小径且つ略円板状の複数の第2エンドプレート352bと、大径且つ略リング状の固定リング352cとが配置される。隔壁354は、排ガスが燃料電池300の外部に拡散することを阻止する機能を有する一方、第2エンドプレート352bは、各電解質・電極接合体26の積層位置に対応して4つ配設される。
【0110】
第1エンドプレート352a及び固定リング352cは、セパレータ306のボルト挿入用孔部328に連通する複数の孔部356を有する。孔部356からボルト挿入用孔部328に挿入されるボルト358及び前記ボルト358に螺合するナット360を介し、セパレータ306の第1筐体部324及び第2筐体部342が第1エンドプレート352aに締め付け固定される。
【0111】
第1エンドプレート352aには、燃料ガス供給連通孔30に連通する単一の燃料ガス供給パイプ362と、各酸化剤ガス供給連通孔74に連通する4本の酸化剤ガス供給パイプ364と、排ガス排出連通孔50に連通する4本の排ガスリサイクルパイプ366と、排ガス通路78に連通する4本の酸化剤ガス排出パイプ368とが設けられる。
【0112】
第1エンドプレート352aは、板状カラー部材370を介して支持プレート372が固定される。支持プレート372と第1エンドプレート352aとの間には、燃料ガス供給部312、330に締め付け荷重を付与する第1荷重付与部374と、酸化剤ガス供給部326に締め付け荷重を付与する第2荷重付与部376と、各電解質・電極接合体26に締め付け荷重を付与する第3荷重付与部378とが設けられる。
【0113】
第1荷重付与部374は、燃料ガス供給連通孔30から燃料ガスが漏れることを阻止するために燃料電池300の中央部(燃料ガス供給部312、330の中央部)に配置される押圧部材380を備え、この押圧部材380は、4つの第2エンドプレート352bの配列中心近傍に位置して前記燃料電池300に隔壁354を介して押圧する。押圧部材380には、第1受け部材382a及び第2受け部材382bを介して第1スプリング384が配置される。第2受け部材382bには、第1押圧ボルト386の先端が当接する。第1押圧ボルト386は、支持プレート372に形成された第1ねじ孔388に螺合するとともに、第1ナット390を介して位置調整可能に固定される。
【0114】
第2荷重付与部376は、孔部356からボルト挿入用孔部328に挿入されるボルト358と、前記ボルト358に螺合するナット360とを備え、酸化剤ガス供給部326から酸化剤ガスが漏れることを阻止する機能を有する。
【0115】
第3荷重付与部378は、第2エンドプレート352bに各電解質・電極接合体26に対応して配置される第3受け部材392aを備える。第3受け部材392aは、ピン394を介して第2エンドプレート352bに位置決め支持される。第3受け部材392aに第2スプリング396の一端が当接する一方、前記第2スプリング396の他端が第4受け部材392bに当接する。第4受け部材392bには、第2押圧ボルト398の先端が当接する。第2押圧ボルト398は、支持プレート372に形成された第2ねじ孔400に螺合するとともに、第2ナット402を介して位置調整可能に固定される。
【0116】
図14に示すように、酸化剤ガス供給パイプ364は、熱交換器14の通路118に連通し、排ガスリサイクルパイプ366は、エゼクタ17又は改質器16の吸引口と、燃料電池300の排ガス通路78から熱交換器14を介して排ガス管117に至る通路120に連結され、酸化剤ガス排出パイプ368は、前記熱交換器14の通路120に連通する。
【0117】
このように構成される燃料電池スタック12の動作について、以下に説明する。
【0118】
図14及び図15に示すように、第1エンドプレート352aに接続されている燃料ガス供給パイプ362から燃料ガス供給連通孔30には、燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス供給パイプ364から酸化剤ガス供給連通孔74には、酸素含有ガスである空気が供給される。
【0119】
燃料ガス供給連通孔30に供給された燃料ガスは、図17に示すように、積層方向(矢印A方向)に移動しながら、各燃料電池300を構成するセパレータ306の燃料ガス供給通路60から燃料ガス供給室62に一旦供給される。燃料ガスは、燃料ガス供給室62から各燃料ガス供給孔38aを通って、電解質・電極接合体26を構成するアノード電極24の電極面全面にわたりシャワー状に供給される。
【0120】
アノード電極24で発電反応に使用された燃料ガスは、排ガスとして複数の排ガス排出孔38bから排ガス排出室64にシャワー状に排出された後、排ガス排出通路69を介して排ガス排出連通孔50に排出される。そして、排ガスは、図14に示すように、エゼクタ17から改質器16に送られ、前記改質器16から燃料電池スタック12に対して新たな燃料ガスとして再度供給されている。
【0121】
一方、酸化剤ガス供給連通孔74に供給される空気は、第1プレート308の第1筐体部324と第2プレート310の第2筐体部342との間に設けられる充填室346に一旦充填される。この充填室346には、酸化剤ガス供給通路348が連通しており、酸化剤ガスは、各酸化剤ガス供給通路348に沿って第1挟持部316及び第2挟持部334の中心側に移動する。
【0122】
第2挟持部334の中心近傍には、酸化剤ガス供給孔350が連通するとともに、前記酸化剤ガス供給孔350は、電解質・電極接合体26のカソード電極22の略中心位置に対応して設けられている。これにより、空気は、酸化剤ガス供給孔350からカソード電極22に供給され、このカソード電極22の略中心部から外周部に向かってメッシュ部材(金属メッシュ等の導電性織布)72に形成された酸化剤ガス通路70を流動する。なお、メッシュ部材72に代えて、導電性フェルト部材(金属フェルト等の導電性不織布)、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル等を採用してもよい。また、第2挟持部334のカソード電極22側の面には、カソード電極22の電極面に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路70を形成する複数の突起部(ボス)を設けてもよく、突起部は、エッチングやプレス等により形成される。
【0123】
これにより、第4の実施形態では、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池を組み込む燃料電池モジュールの一部断面説明図である。
【図2】前記燃料電池が矢印A方向に複数積層された燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図3】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図4】前記燃料電池のガス流れ状態を示す一部分解斜視説明図である。
【図5】前記セパレータの一方の面の一部拡大説明図である。
【図6】前記燃料電池の、図5中、VI−VI線断面説明図である。
【図7】前記燃料電池の、図5中、VII−VII線断面説明図である。
【図8】従来技術と第1の実施形態の水蒸気濃度及び電流密度の関係説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池を組み込む燃料電池モジュールの一部断面説明図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池が矢印A方向に積層された燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図11】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図12】前記燃料電池のガス流れ状態を示す一部分解斜視説明図である。
【図13】前記燃料電池を構成する第2プレートの正面説明図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池が矢印A方向に積層された燃料電池モジュールの一部断面説明図である。
【図15】前記燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図16】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図17】前記燃料電池のガス流れ状態を示す一部分解斜視説明図である。
【図18】セパレータを構成する第1プレートの説明図である。
【図19】前記セパレータを構成する第2プレートの説明図である。
【図20】特許文献1の平板積層型燃料電池を構成するセパレータの説明図である。
【図21】特許文献2の燃料電池用セパレータの説明図である。
【符号の説明】
【0125】
10、140、302…燃料電池モジュール
11、200、300…燃料電池
12、202、304…燃料電池スタック
14…熱交換器 16…改質器
17…エゼクタ 18…筐体
20…電解質 21…荷重付与機構
22…カソード電極 24…アノード電極
26…電解質・電極接合体 28、204、306…セパレータ
28a、28b、206、208、210、308、310…プレート
30…燃料ガス供給連通孔
32、52、212、238、312、330…燃料ガス供給部
34、46、54、67、214、218、230、242、243、244、314、318、322、332、336、340…橋架部
36、56、216、232、246、316、334…挟持部
38a…燃料ガス供給孔 38b、38d…排ガス排出孔
38c…酸化剤ガス供給孔 42、42a…突起部
44…リング状封止部
48、68、220、239、320、338…排ガス排出部
50…排ガス排出連通孔 60…燃料ガス供給通路
62…燃料ガス供給室 64、64a…排ガス排出室
69…排ガス排出通路 70…酸化剤ガス通路
72…メッシュ部材 74…酸化剤ガス供給連通孔
78…排ガス通路 96a、96b、324、342…筐体部
228、240、326…酸化剤ガス供給部
252、348…酸化剤ガス供給通路
346…充填室
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、固体電解質型燃料電池(SOFC)は、電解質に酸化物イオン導電体、例えば、安定化ジルコニアを用いており、この電解質の両側にアノード電極及びカソード電極を配設した電解質・電極接合体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。この燃料電池は、通常、MEAとセパレータとが所定数だけ積層された燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
上記の燃料電池では、電解質・電極接合体を構成するアノード電極及びカソード電極に、それぞれ燃料ガス(例えば、水素ガス)及び酸化剤ガス(例えば、空気)を供給するために、セパレータの面方向に沿って燃料ガス通路及び酸化剤ガス通路が形成されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている平板積層型燃料電池は、図20に示すように、発電セルに積層されるセパレータ1を備えている。セパレータ1は、左右のマニホールド部分2a、2aと、中央の発電セルを配置する部分2bとが、連結部分2c、2cにより連結されており、この連結部分2cが可撓性を有している。
【0005】
マニホールド部分2a、2aには、ガス孔3、4が設けられており、一方のガス孔3は、燃料ガス通路3aに連通するとともに、他方のガス孔4は、酸化剤ガス通路4aに連通している。燃料ガス通路3a及び酸化剤ガス通路4aは、部分2b内にらせん状に延在しており、この部分2bの中央部近傍で、図示しない燃料極集電体及び空気極集電体に開放されている。
【0006】
ところで、この特許文献1では、燃料ガス及び酸化剤ガスが、発電セルの中心部から供給されて前記発電セルの外周部に向かって排出されている。このため、発電セルの電極面内において、中央部と外周部とに反応ガスの濃度差が発生し、前記電極面内における電流密度分布に偏りが生じて発電効率の向上が図れないという問題がある。
【0007】
しかも、発電セルの電極面内には、発電反応の差が発生して前記電極面内に温度勾配が生じ易い。従って、発電セルには、熱応力により損傷や劣化等の発電不良が惹起するおそれがある。
【0008】
さらに、発電セルの中央部から外周部に向かって、燃料ガス及び酸化剤ガスが流れるため、特にこの発電セルの外周部に発電反応により発生した水蒸気が集中する。これにより、発電セルが劣化し易いという問題がある。
【0009】
そこで、例えば、特許文献2に開示されている燃料電池用セパレータでは、図21に示すように、セパレータ内部に中空部5が設けられるとともに、この中空部5は、ガス導入口6に連通している。セパレータ積層面7には、ガス導入口6から中空部5内に導入された反応ガスを吐出するための複数のガス吐出口8が、前記積層面7の略全域にわたって設けられている。従って、セパレータ内部に導入された反応ガスは、複数のガス吐出口8から発電セルに向かってシャワー状に吐出されている。
【0010】
【特許文献1】特開2006−120589号公報(図4)
【特許文献2】特開2005−228734号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の特許文献2では、発電セルに向かってシャワー状に反応ガスを吐出する一方、反応後の排ガスを前記発電セルの外周部から排出しているため、前記外周部近傍で反応ガス濃度が低下し易い。これにより、発電セルの電極面内における反応ガス濃度に差が生じ、前記電極面内における電流密度分布に偏りが発生するという問題がある。
【0012】
しかも、発電セルの外周部では、ガス吐出口8近傍に比べて排ガス濃度が高くなり、電極面内における発電反応に差が生じてしまう。従って、発電セルに温度勾配が生じ、熱応力によって前記発電セルに損傷や劣化等の不良が生じるおそれがある。
【0013】
さらにまた、発電セルの外周部から排ガスが排出されるため、この発電セルの外周部には、発電反応で発生した水蒸気が集中し易い。このため、発電セルが劣化するという問題がある。
【0014】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、電解質・電極接合体の発電面全体に反応ガスを均一且つ良好に供給するとともに、反応ガス濃度及び発電反応を均一化し、しかも反応ガスの利用率を向上させることが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池に関するものである。
【0016】
セパレータは、電解質・電極接合体を挟持するとともに、少なくともアノード電極の電極面に沿って燃料ガスを供給する又はカソード電極の電極面に沿って酸化剤ガスを供給する反応ガス通路が設けられる挟持部と、前記挟持部に連結され、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを前記反応ガス通路に供給するための反応ガス供給通路が形成される第1橋架部と、前記第1橋架部に連結され、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを前記反応ガス供給通路に供給するための反応ガス供給連通孔が積層方向に形成される反応ガス供給部と、前記挟持部に連結され、前記電解質・電極接合体で使用された前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを、排ガスとして前記反応ガス通路から排出させるための排ガス排出通路が形成される第2橋架部と、前記第2橋架部に連結され、前記排ガスを前記積層方向に流動させるための排ガス排出連通孔が形成される排ガス排出部とを備えている。
【0017】
そして、挟持部には、少なくとも反応ガス通路に燃料ガス又は酸化剤ガスを雨浴状に供給する複数の反応ガス供給孔と、排ガスを前記反応ガス通路から雨浴状に排出して排ガス排出通路に送る複数の排ガス排出孔と、前記反応ガス通路側の周縁部から前記排ガスが排出されることを抑制する封止部とが形成されるとともに、排ガス排出連通孔は、反応ガス供給連通孔を介して前記反応ガス通路に連通している。
【0018】
また、燃料を改質して燃料ガスを生成し、燃料ガスを反応ガス供給連通孔に供給するための改質器を備えるとともに、排ガス排出連通孔は、前記改質器を介して前記反応ガス供給連通孔に連通することが好ましい。
【0019】
さらに、改質器の上流側には、エゼクタが配設されるとともに、排ガス排出連通孔は、前記エゼクタを介して前記改質器に連通することが好ましい。
【0020】
さらにまた、挟持部は、反応ガス供給孔に連通して反応ガス供給孔に反応ガスを供給するための反応ガス供給室と、排ガス排出孔に連通して排ガス排出孔から排ガスを排出するための排ガス排出室とを設けることが好ましい。
【0021】
また、反応ガス通路は、反応ガス供給孔を介して反応ガス供給室に連通するとともに、排ガス排出孔を介して排ガス排出室に連通することが好ましい。
【0022】
さらに、挟持部は、反応ガス供給孔及び排ガス排出孔が形成される第1プレート部と、前記第1プレート部との間に、反応ガス供給室及び排ガス排出室が形成される第2プレート部とを備え、前記第1プレート部と前記第2プレート部とが積層されることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、反応ガスは、複数の反応ガス供給孔から電解質・電極接合体の電極面全面に雨浴状に供給されるため、前記電極面内における反応ガス濃度を均等化することができる。一方、排ガスは、複数の排ガス排出孔から雨浴状に排出されるため、電解質・電極接合体の電極面内における排ガス濃度を均等化することが可能である。これにより、電極面内の電流密度分布を均一にすることができ、発電効率の向上が遂行される。
【0024】
さらに、電解質・電極接合体における発熱反応となる発電反応を均等化することが可能になる。このため、電解質・電極接合体の温度勾配を抑制し、熱応力による前記電解質・電極接合体の損傷や劣化等を可及的に阻止するとともに、発電反応により生じた水蒸気が集中することを良好に防止することができる。
【0025】
しかも、挟持部の反応ガス通路側の周縁部には、前記周縁部から排ガスが排出されることを抑制するための封止部が形成されている。従って、発電反応により発生した排ガスは、挟持部の周縁部に集中することを抑制することができ、電解質・電極接合体の電極面内における電流密度分布に偏りが生ずることを抑制することが可能になる。これにより、発電効率の向上及び安定化を図るとともに、電解質・電極接合体の温度勾配を抑制して熱応力による前記電解質・電極接合体の損傷や劣化等を可及的に阻止することができる。
【0026】
さらに、電解質・電極接合体で使用された燃料ガス又は酸化剤ガスは、排ガスとして排ガス排出孔から第2橋架部の排ガス排出通路に排出され、さらに排ガス排出連通孔に沿って積層方向に流動した後、反応ガスとして反応ガス供給連通孔から反応ガス通路に再度供給されている。このため、排ガス中に残存する未反応の反応ガスを再利用することができ、反応ガスの利用率が良好に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池11を組み込む燃料電池モジュール10の一部断面説明図であり、図2は、前記燃料電池11が矢印A方向に複数積層された燃料電池スタック12の概略斜視説明図である。
【0028】
燃料電池モジュール10は、定置用の他、車載用等の種々の用途に用いられている。燃料電池モジュール10は、図1に示すように、燃料電池スタック12と、酸化剤ガスを前記燃料電池スタック12に供給する前に加熱する熱交換器14と、燃料を改質して燃料ガスを生成する改質器16と、前記改質器16の上流側に配設されて後述する排出燃料ガスを含む排ガスを吸引するエゼクタ17と、前記燃料電池スタック12、前記熱交換器14、前記改質器16及び前記エゼクタ17を収容する筐体(ケーシング)18とを備える。
【0029】
筐体18内では、燃料電池スタック12の一方の側に、少なくとも熱交換器14、改質器16及びエゼクタ17を含む流体部19が配置されるとともに、前記燃料電池スタック12の他方の側に、燃料電池11の積層方向(矢印A方向)に締め付け荷重を付与する荷重付与機構21が配設される。流体部19及び荷重付与機構21は、燃料電池スタック12の中心軸に対して軸対称に配設される。
【0030】
燃料電池11は、固体電解質型燃料電池であり、この燃料電池11は、図3及び図4に示すように、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質(電解質板)20の両面に、カソード電極22及びアノード電極24が設けられた電解質・電極接合体26を備える。電解質・電極接合体26は、円板状に形成されるとともに、少なくとも外周端面部には、酸化剤ガス及び燃料ガスの進入や排出を阻止するためにバリアー層(図示せず)が設けられている。
【0031】
燃料電池11は、各セパレータ28間に複数、例えば、8個の電解質・電極接合体26が、このセパレータ28の中心部である燃料ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)30と同心円上に配列される。
【0032】
セパレータ28は、図3に示すように、例えば、ステンレス合金等の板金で構成される2枚の金属プレートやカーボンプレート等である第1プレート28a及び第2プレート28bを、例えば、ろう付け、拡散接合やレーザ溶接等により接合して構成される。第1プレート28aは、中央部に燃料ガス供給連通孔30を形成する燃料ガス供給部(反応ガス供給部)32を有する。この燃料ガス供給部32から外方に等角度間隔ずつ離間して放射状に延在する複数の第1橋架部34を介して比較的大径な第1挟持部(第1プレート部)36が一体的に設けられる。
【0033】
各第1挟持部36は、電解質・電極接合体26と略同一寸法に設定される。各第1挟持部36には、燃料ガスを電解質・電極接合体26を構成するアノード電極24に雨浴状(以下、シャワー状という)に供給するための複数の燃料ガス供給孔(反応ガス供給孔)38aと、前記アノード電極24で反応に使用された燃料ガスを、排ガスとしてシャワー状に排出するための複数の排ガス排出孔38bとが、配列される(図3〜図5参照)。
【0034】
各第1挟持部36のアノード電極24に接触する面36aには、アノード電極24の電極面に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス通路(反応ガス通路)40が形成される。面36aには、燃料ガスが燃料ガス供給孔38aから排ガス排出孔38bに直線状に流れることを規制する複数の突起部42が形成される。第1挟持部36の面36a側の周縁部には、前記周縁部から燃料ガス及び排ガスが排出されることを抑制するためのリング状封止部(凸部)44が形成される。
【0035】
突起部42は、面36aに、例えば、エッチングにより形成される中実部、又はプレスにより形成される中空部で構成される。突起部42の断面形状は、矩形状、円形状、長円形状、楕円形状、三角形状又は長方形状等、種々の形状に設定可能であるとともに、位置や密度は、燃料ガスの流れ状態等によって任意に変更される。以下に説明する他の突起部は、上記の突起部42と同様に構成される。
【0036】
第1挟持部36の外周外側(セパレータ28の外周部)には、矢印B方向外方に突出する板状の第2橋架部46が設けられるとともに、前記第2橋架部46には、排ガス(反応に使用された燃料ガスを含む)を排出する排ガス排出部48が連結される。この排ガス排出部48には、排ガスを積層方向に流動させるための排ガス排出連通孔50が形成される。
【0037】
第2プレート28bは、中央部に燃料ガス供給連通孔30を形成する燃料ガス供給部(反応ガス供給部)52を備える。燃料ガス供給部52から放射状に8本の第1橋架部54が延在するとともに、各第1橋架部54には、第2挟持部(第2プレート部)56が一体に設けられる。
【0038】
燃料ガス供給部52から各第1橋架部54を周回して、凸部58が設けられる。この凸部58は、セパレータ28の燃料ガス供給部32及び各第1橋架部34に接合されることにより、燃料ガス供給連通孔30に連通してセパレータ面方向に延在する燃料ガス供給通路(反応ガス供給通路)60が形成される。
【0039】
第2挟持部56の面56aには、燃料ガス供給通路60と燃料ガス供給孔38aとに連通し、前記燃料ガス供給通路60を流れる燃料ガスを前記燃料ガス供給孔38aに供給する燃料ガス供給室(反応ガス供給室)62と、排ガス排出孔38bに連通し、前記排ガス排出孔38bから排ガスを排出する排ガス排出室64とが設けられる。
【0040】
燃料ガス供給室62は、複数列、例えば、5列に配列される燃料ガス供給孔38aに対応して5本に分岐する一方、排ガス排出室64は、例えば、6列に配列される排ガス排出孔38bに対応して6本に分岐され、前記燃料ガス供給室62と前記排ガス排出室64とが交互に配置される。
【0041】
第2挟持部56の外周外側(セパレータ28の外周部)には、矢印B方向外方に突出する板状の第2橋架部67が設けられるとともに、前記第2橋架部67には、排ガスを排出する排ガス排出部68が連結される。排ガス排出室64は、第2橋架部67に設けられた排ガス排出通路69を介して排ガス排出連通孔50に連通する。
【0042】
第2挟持部56の面56bには、カソード電極22の電極面に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路70を形成し且つ前記カソード電極22に密着する変形可能な弾性通路部、例えば、導電性メッシュ部材(金属メッシュ等の導電性織布)72が配設される。メッシュ部材72は、例えば、ステンレス鋼(SUS材)の線材で構成され、円板状を有する。このメッシュ部材72は、積層方向(矢印A方向)の荷重に対して所望の弾性変形が可能な厚さに設定される。なお、メッシュ部材72に代えて、導電性フェルト部材(金属フェルト等の導電性不織布)、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル等を採用してもよい。また、第2挟持部56の面56bには、カソード電極22の電極面に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路70を形成する複数の突起部(ボス)を設けてもよく、突起部は、エッチングやプレス等により形成される。
【0043】
図6に示すように、メッシュ部材72に設けられる酸化剤ガス通路70は、電解質・電極接合体26の内側周端部と第2挟持部56の内側周端部との間から矢印B方向に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給連通孔74に連通する。この酸化剤ガス供給連通孔74は、各第1挟持部36及び第2挟持部56の内方と第1橋架部34間及び第1橋架部54間に位置して積層方向(矢印A方向)に延在している。
【0044】
各セパレータ28間には、燃料ガス供給連通孔30及び排ガス排出連通孔50をシールするための絶縁シール76a、76bが配設される。絶縁シール76a、76bは、シール性が高く、硬質で潰れ難い、例えば、地殻成分系素材、硝子系素材、粘土とプラスチックの複合素材等が使用される。第1挟持部36及び第2挟持部56の外周側には、主に反応に使用された酸化剤ガスを含む排ガスを排出するための排ガス通路78が設けられる。
【0045】
図1及び図2に示すように、燃料電池スタック12は、複数の燃料電池11の積層方向両端にエンドプレート80a、80bを配置する。エンドプレート80aは、略円板状を有しており、外周部に軸線方向に突出してリング状部82が設けられる。このリング状部82の外周部には、周回溝部84が形成される。リング状部82の中心部に対応して、円柱状凸部86がこのリング状部82と同一方向に膨出形成され、前記凸部86の中央部に段付き孔部88が形成される。
【0046】
エンドプレート80aには、凸部86を中心にして同一仮想円周上に孔部90とねじ孔92とが、交互に且つ所定の角度間隔ずつ離間して設けられる。孔部90及びねじ孔92は、第1橋架部34、54同士の間に形成される各酸化剤ガス供給連通孔74に対応して設けられる。エンドプレート80bは、エンドプレート80aよりも大径に構成されるとともに、導電性の薄板で形成される。
【0047】
筐体18は、荷重付与機構21を収容する第1筐体部96aと、燃料電池スタック12を収容する第2筐体部96bとを備える。第1及び第2筐体部96a、96b間は、エンドプレート80bの第2筐体部96b側に絶縁材を介装してねじ98及びナット100により締め付けられる。エンドプレート80bは、流体部19から荷重付与機構21に高温の排ガスや空気が流入することを阻止するガス遮蔽部を構成する。
【0048】
第2筐体部96bには、リング状壁板102の一端部が接合されるとともに、前記壁板102の他端部には、ヘッド板104が固着される。流体部19は、燃料電池スタック12の中心軸に対して軸対称に配設される。具体的には、略リング状の熱交換器14の内側に、エゼクタ17及び改質器16が同軸的に配設される。
【0049】
エンドプレート80aの周回溝部84に壁板106が固定されて流路部材108が構成されるとともに、この流路部材108には、熱交換器14及び改質器16が直結される。流路部材108内に形成されるチャンバ108aには、熱交換器14を通って加熱された空気が一旦充填される。孔部90は、チャンバ108aに一旦充填された空気を燃料電池スタック12に供給するための開口部を構成する。
【0050】
流路部材108には、略リング状のケーシング110が燃料電池スタック12を構成する各排ガス排出部48、68に一体形成された排ガス排出連通孔50に対応して設けられる。流路部材108には、排ガス排出連通孔50に連通する複数の孔部108bが形成されるとともに、前記孔部108bは、ケーシング110内に連通して排出ガスチャンバを構成する。ケーシング110には、所定数、例えば、1つの管路112が連結され、この管路112はエゼクタ17又は改質器16の吸引口と、燃料電池スタック12の排ガス通路78から熱交換器14を介して排ガス管117に至る通路120に連結される。
【0051】
エゼクタ17には、燃料ガス供給管114が設けられる一方、改質器16には、改質ガス供給管115が設けられる。燃料ガス供給管114は、ヘッド板104を介して外部に延在する一方、改質ガス供給管115は、エンドプレート80aの段付き孔部88に嵌挿されて燃料ガス供給連通孔30に連通する。
【0052】
ヘッド板104には、空気供給管116と排ガス管117とが接続される。筐体18内には、空気供給管116から熱交換器14を介して流路部材108に直接開口する通路118と、燃料電池スタック12の排ガス通路78から熱交換器14を介して排ガス管117に至る通路120とが設けられる。
【0053】
荷重付与機構21は、燃料ガス供給連通孔30の近傍に対して第1締め付け荷重を付与する第1締め付け部122aと、電解質・電極接合体26に対して前記第1締め付け荷重よりも小さな第2締め付け荷重T2を付与する第2締め付け部122bとを備える。
【0054】
第1締め付け部122aは、エンドプレート80aの一方の対角位置に設けられるねじ孔92、92に螺合する短尺な第1締め付けボルト124a、124aを備える。第1締め付けボルト124a、124aは、燃料電池11の積層方向に延在するとともに、第1押圧プレート126aに係合する。第1締め付けボルト124aは、セパレータ28の内部に設けた酸化剤ガス供給連通孔74内に設けられる。第1押圧プレート126aは、幅狭な板状を有しており、燃料ガス供給連通孔30を覆ってセパレータ28の中央部に係合する。
【0055】
第2締め付け部122bは、長尺な第2締め付けボルト124b、124bを備え、前記第2締め付けボルト124b、124bは、エンドプレート80aの他方の対角位置に設けられるねじ孔92、92に螺合する。第2締め付けボルト124bの端部は、外周湾曲形状の第2押圧プレート126bを貫通し、この端部にナット127が螺合する。第2締め付けボルト124bは、セパレータ28の内部に設けた酸化剤ガス供給連通孔74内に設けられる。第2押圧プレート126bの各円弧状部には、燃料電池11の第1及び第2挟持部36、56に配置される各電解質・電極接合体26に対応してスプリング128及び台座129が配設される。スプリング128は、例えば、セラミックススプリングにより構成される。
【0056】
このように構成される燃料電池モジュール10の動作について、以下に説明する。
【0057】
燃料電池モジュール10では、図1に示すように、燃料ガス供給管114から燃料(メタン、エタン又はプロパン等)及び必要に応じて水が供給されるとともに、空気供給管116から酸化剤ガスである酸素含有ガス(以下、空気ともいう)が供給される。
【0058】
燃料は、エゼクタ17から改質器16を通って改質されることにより、燃料ガス(水素含有ガス)が得られ、この燃料ガスは、燃料電池スタック12の燃料ガス供給連通孔30に供給される。燃料ガスは、積層方向(矢印A方向)に移動しながら各燃料電池11を構成するセパレータ28内を通って燃料ガス供給通路60に導入される(図4及び図6参照)。
【0059】
燃料ガスは、燃料ガス供給通路60から燃料ガス供給室62に一旦導入される。この燃料ガス供給室62は、第1挟持部36に設けられている複数且つ5列に配列された燃料ガス供給孔38aに連通している。このため、燃料ガスは、燃料ガス供給室62から各燃料ガス供給孔38aを通って、電解質・電極接合体26を構成するアノード電極24の電極面全面にわたりシャワー状に供給される(図7参照)。
【0060】
燃料ガス供給孔38aを通ってアノード電極24に供給された燃料ガスは、燃料ガス通路40を通り、すなわち、複数の突起部42によって形成された流路を通り、発電反応に使用された後、複数の排ガス排出孔38bから排ガス排出室64にシャワー状に排出される。この排ガス排出室64は、図4に示すように、複数且つ6列に配列された排ガス排出孔38bに連通しており、前記排ガス排出孔38bから前記排ガス排出室64に排出された排ガスは、排ガス排出通路69を介して排ガス排出連通孔50に排出される。
【0061】
一方、空気は、図1に示すように、空気供給管116から熱交換器14の通路118を通って一旦チャンバ108aに導入される。この空気は、チャンバ108aに連通する孔部90を通って各燃料電池11の略中央側に設けられている酸化剤ガス供給連通孔74に供給される。その際、熱交換器14では、後述するように、排ガス通路78に排気される排ガス(反応に使用された空気を含む)が通路120を通るため、使用前の空気と熱交換が行われ、この空気が予め所望の燃料電池運転温度に加温されている。
【0062】
酸化剤ガス供給連通孔74に供給された空気は、電解質・電極接合体26の内側周端部と第1挟持部36の内側周端部との間から矢印B方向に流入し、メッシュ部材72に形成された酸化剤ガス通路70に送られる(図6参照)。酸化剤ガス通路70では、電解質・電極接合体26のカソード電極22の内側周端部(セパレータ28の中央部)側から外側周端部(セパレータ28の外側周端部側)に向かって空気が流動する。
【0063】
従って、電解質・電極接合体26では、アノード電極24の電極面全面にわたってシャワー状に燃料ガスが供給されるとともに、カソード電極22の電極面の一方向(矢印B方向)に向かって空気が供給される。その際、酸化物イオンが電解質20を通ってアノード電極24に移動し、化学反応により発電が行われる。
【0064】
なお、各電解質・電極接合体26の外周部に排出される発電反応後の空気は、排ガスとして排ガス通路78を介して燃料電池スタック12から排出される(図1参照)。そして、排ガス(含有酸化剤ガス)は、熱交換器14の通路120を通って空気との間で熱交換を行った後、排ガス管117から排出される(図1参照)。
【0065】
この場合、第1の実施形態では、第1挟持部36は、アノード電極24の電極面に向かって燃料ガスをシャワー状に導入する複数の燃料ガス供給孔38aと、燃料ガス通路40に供給されて反応に使用された燃料ガスを、排ガスとして前記燃料ガス通路40からシャワー状に排出する複数の排ガス排出孔38bとを設けている。
【0066】
このように、燃料ガスは、複数の燃料ガス供給孔38aからアノード電極24の電極面全面にシャワー状に供給されるため、前記電極面内における燃料ガス濃度を均一化することができる。一方、排ガスは、複数の排ガス排出孔38bからシャワー状に排出されるため、電極面内における排ガス濃度を均等化することが可能になる。このため、電極面内の電流密度分布を均一にすることができ、発電効率の向上が容易に遂行される。
【0067】
さらに、電解質・電極接合体26における発熱反応となる発電反応を均等化することが可能になる。従って、電解質・電極接合体26の温度勾配を抑制し、熱応力による前記電解質・電極接合体26の損傷や劣化等を可及的に阻止するとともに、発電反応により生じた水蒸気が集中することを良好に防止することができるという効果が得られる。
【0068】
そこで、図8には、従来技術1(特許文献1)、従来技術2(特許文献2)及び本発明の第1の実施形態において、それぞれの水蒸気濃度と電流密度との発生状態が示されている。
【0069】
従来技術1では、単一の燃料ガス供給孔を備えるだけであり、電解質・電極接合体26の中心における電流密度及び水蒸気密度と、周縁部における電流密度及び水蒸気濃度とに大きな差が生じた。また、複数の燃料ガス供給孔を備え、外方に排気ガスを排出する従来技術2では、電解質・電極接合体26の中央から外方にわたって水蒸気濃度及び電流密度の差が比較的小さいものの、前記電解質・電極接合体26の周縁部に行くに従って、前記水蒸気濃度及び前記電流密度に差が生じた。
【0070】
これにより、従来技術1及び従来技術2では、電極面内の電流密度分布が不均一になり、発電効率が低下するとともに、温度勾配によって前記電解質・電極接合体26の損傷や劣化等が発生し易い。
【0071】
これに対して、第1の実施形態では、電解質・電極接合体26の発電面内にわたって水蒸気濃度及び電流密度を略均一化することができ、上記の不具合が発生することを抑制することができるという効果が得られた。
【0072】
さらにまた、第1の実施形態では、図4及び図5に示すように、第1挟持部36の面36a側の周縁部には、該周縁部から燃料ガス及び排ガスが排出されることを抑制するためのリング状封止部44が形成されている。従って、発電反応により発生した排ガスが第1挟持部36の周縁部に集中することを抑制することができ、電解質・電極接合体26の電極面内における電流密度分布に偏りが生ずることを抑制することが可能になる。このため、発電効率の向上及び安定化を図るとともに、電解質・電極接合体26の温度勾配を抑制し、熱応力による前記電解質・電極接合体26の損傷や劣化等を可及的に阻止することができる。
【0073】
さらに、第2挟持部56には、燃料ガス供給孔38aに連通する燃料ガス供給室62と、排ガス排出孔38bに連通する排ガス排出室64とが設けられている。燃料ガス供給室62は、反応前の燃料ガスの圧力変動や圧力不均等を整える機能を有しており、燃料ガス供給孔38aから電解質・電極接合体26の電極面に供給される燃料ガスは、前記電極面内における燃料ガス濃度を均等化することができる。一方、排ガス排出室64は、排ガスの排出を促進させるとともに、燃料ガスの供給も促進させる機能を有しており、アノード電極24の電極面内における排ガス濃度を均等化することが可能である。
【0074】
これにより、アノード電極24の電極面内の電流密度分布を均一にして発電効率の向上が遂行されるとともに、電解質・電極接合体26における温度勾配を抑制し、熱応力による前記電解質・電極接合体26の損傷や劣化等を可及的に阻止することができる。
【0075】
さらに、第1挟持部36にのみ、繊細な製造工程が必要である微細孔である燃料ガス供給孔38a及び排ガス排出孔38bが形成されており、第2挟持部56には、この種の微細な製造工程が不要になる。従って、微細な製造工程の有無により第1挟持部36と第2挟持部56とを別体に構成することができ、製造コストの削減及び歩留りの向上が容易に図られる。
【0076】
さらにまた、第1の実施形態では、図4及び図6に示すように、電解質・電極接合体26で反応に使用された燃料ガスは、排ガスとして排ガス排出通路69を介して排ガス排出連通孔50に排出される。この排ガスは、排ガス排出連通孔50に沿って積層方向に移動する。そして、排ガスは、図1に示すように、管路112を通ってエゼクタ17に吸引されている。このエゼクタ17から改質器16に送られる排ガスは、前記改質器16から燃料電池スタック12に対し、新たな燃料ガスとして再度供給されている。
【0077】
このため、第1の実施形態では、排ガス中に残存する未反応の燃料ガスを、燃料ガスとして再利用することができ、燃料の利用率が良好に向上するという効果が得られる。
【0078】
さらに、改質器16の上流側にエゼクタ17が連結されるとともに、燃料電池スタック12の排ガス排出通路69は、管路112を介して前記エゼクタ17に連通している。従って、エゼクタ17は、負圧を利用して排出燃料ガスを排ガス排出通路69から吸引することができ、ポンプ等の負荷が不要になって燃料ガスの有効利用が、一層効率的且つ経済的に遂行可能になるという利点がある。
【0079】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池モジュール140の一部断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池モジュール10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3及び第4の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0080】
燃料電池モジュール140では、エゼクタを用いておらず、管路112が改質器16に連結されている。このため、改質器16に供給される新たな燃料と排ガスとの圧力差により、前記排ガスが前記改質器16に吸引されて前記新たな燃料と混合することができる。これにより、第2の実施形態では、エゼクタを削除することができ、構成が一層簡素化されるという効果が得られる。
【0081】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池200が矢印A方向に積層された燃料電池スタック202の概略斜視説明図である。
【0082】
図11に示すように、燃料電池200は、一組のセパレータ204間に電解質・電極接合体26を挟んで構成される。セパレータ204は、互いに積層される第1、第2及び第3プレート206、208及び210を備える。第1〜第3プレート206、208及び210は、例えば、ステンレス合金等の板金で構成され、前記第2プレート208の両面に、前記第1プレート206と前記第3プレート210とが、例えば、ろう付け、拡散接合又はレーザ溶接等により接合される。
【0083】
第1プレート206は、積層方向(矢印A方向)に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔30が形成される燃料ガス供給部(反応ガス供給部)212を備える。燃料ガス供給部212には、幅狭な第1橋架部214を介して第1挟持部216が一体的に設けられる。第1挟持部216は、電解質・電極接合体26のアノード電極24と略同一寸法に設定されている。第1挟持部216には、幅狭な第2橋架部218を介して排ガスを排出するための排ガス排出連通孔50を設けた排ガス排出部220が連結される。
【0084】
第3プレート210は、積層方向(矢印A方向)に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔74が形成される酸化剤ガス供給部(反応ガス供給部)228を備える。酸化剤ガス供給部228には、幅狭な第3橋架部230を介して第2挟持部232が一体的に設けられる。
【0085】
第2挟持部232は、電解質・電極接合体26のカソード電極22に接する面に、前記カソード電極22の電極面全面に酸化剤ガスをシャワー状に供給する複数の酸化剤ガス供給孔38cと、前記カソード電極22で反応に使用された酸化剤ガスを、排ガスとしてシャワー状に排出するための複数の排ガス排出孔38dとが、交互に配設される。酸化剤ガス供給孔38cと排ガス排出孔38dとの間には、突起部42aが設けられる(図11及び図12参照)。
【0086】
図11に示すように、第2プレート208は、燃料ガス供給連通孔30が形成される燃料ガス供給部(反応ガス供給部)238と、排ガス排出連通孔50が形成される排ガス排出部239と、酸化剤ガス供給連通孔74が形成される酸化剤ガス供給部240とを備える。燃料ガス供給部238、排ガス排出部239及び酸化剤ガス供給部240は、幅狭な第1橋架部242、第2橋架部243及び第3橋架部244を介して第3挟持部246に一体的に構成される。第3挟持部246は、第1及び第2挟持部216、232と略同一直径に設定される。
【0087】
第3挟持部246は、第1挟持部216に向かう面に、燃料ガス供給室62と排ガス排出室64とを分離して形成する。この第3挟持部246は、第2挟持部232に向かう面に、図13に示すように、酸化剤ガス供給室62aと、排ガス排出室64aとを分離して形成する。酸化剤ガス供給室62aは、酸化剤ガス供給孔38cに連通するとともに、排ガス排出室64aは、排ガス排出孔38dに連通する。
【0088】
第1橋架部214、242間には、燃料ガス供給連通孔30に連通する燃料ガス供給通路60が設けられる(図11参照)。第2橋架部218、243間には、排ガス排出連通孔50に連通する排ガス排出通路69が設けられるとともに、第3橋架部230、244間には、酸化剤ガス供給連通孔74に連通する酸化剤ガス供給通路252が設けられる。
【0089】
図10に示すように、燃料電池スタック202は、複数の燃料電池200の積層方向両端にエンドプレート254a、254bを配置する。エンドプレート254aもしくはエンドプレート254bは、締付ボルト258と電気的に絶縁される。エンドプレート254aには、燃料電池200の燃料ガス供給連通孔30に連通する第1配管256aと、酸化剤ガス供給連通孔74に連通する第2配管256bと、排ガス排出連通孔50に連通する第3配管256cとが接続される。第3配管256cは、第1配管256aの上流側に連通しており、排ガス排出連通孔50と燃料ガス通路40とは、燃料ガス供給連通孔30を介して連通する。
【0090】
エンドプレート254aには、燃料ガス供給連通孔30の上下両側、酸化剤ガス供給連通孔74の上下両側にねじ孔260が形成される。各ねじ孔260に締付ボルト258が螺合することによって、燃料電池スタック202が締め付け保持される。
【0091】
このように構成される燃料電池スタック202では、エンドプレート254aに接続されている第1配管256aから燃料ガス供給連通孔30には、燃料ガスが供給されるとともに、前記エンドプレート254aに接続された第2配管256bから酸化剤ガス供給連通孔74には、酸素含有ガスである空気が供給される。
【0092】
燃料ガス供給連通孔30に供給された燃料ガスは、図12に示すように、積層方向(矢印A方向)に移動しながら、各燃料電池200を構成するセパレータ204内の燃料ガス供給通路60に供給される。燃料ガスは、燃料ガス供給通路60に沿って燃料ガス供給室62に供給される。
【0093】
燃料ガス供給室62には、複数の燃料ガス供給孔38aが連通しており、燃料ガスは、前記燃料ガス供給孔38aから燃料ガス通路40にシャワー状に供給される。発電反応に使用された燃料ガスは、複数の排ガス排出孔38bから排ガス排出室64にシャワー状に排出される。
【0094】
一方、酸化剤ガス供給連通孔74に供給される空気は、セパレータ204内の酸化剤ガス供給通路252を移動し、酸化剤ガス供給室62aに供給される(図13参照)。さらに、空気は、複数の酸化剤ガス供給孔38cから酸化剤ガス通路70にシャワー状に供給される。発電反応に使用された酸化剤ガスは、複数の排ガス排出孔38dから排ガス排出室64aにシャワー状に排出される。
【0095】
この場合、第3の実施形態では、酸化剤ガスが複数の酸化剤ガス供給孔38cからカソード電極22の電極面全面にシャワー状に供給されるため、前記電極面内における酸化剤ガス濃度を均等化することができる。一方、排ガス(使用済みの酸化剤ガス)は、複数の排ガス排出孔38dからシャワー状に排出されるため、カソード電極22の電極面内における排ガス濃度を均等化することが可能になる。
【0096】
さらに、排ガス排出室64にシャワー状に排出された排ガス(使用された燃料ガス)は、排ガス排出通路69に流入し、この排ガス排出通路69を介して排ガス排出連通孔50に排出されて積層方向(矢印A方向)に移動する。排ガスは、図10に示すように、排ガス排出連通孔50に連結される第3配管256cに沿って移動した後、第1配管256aの上流側に合流する。
【0097】
このため、排ガスは、新たな(反応前の)燃料ガスと共に第1配管256aから燃料ガス供給連通孔30に送られる。従って、燃料ガスがアノード電極24に沿って燃料ガス通路40を流動した後の排ガス中に残存する未反応の燃料ガスを、燃料ガスとして再利用することができ、燃料ガスの利用率を有効に向上させることができる等、第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
図14は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池300を組み込む燃料電池モジュール302の一部断面説明図であり、図15は、前記燃料電池300が矢印A方向に複数積層された燃料電池スタック304の概略斜視説明図である。
【0099】
燃料電池300は、図16に示すように、一対のセパレータ306間に複数、例えば、4個の電解質・電極接合体26を挟んで構成される。セパレータ306間には、このセパレータ306の中心部である燃料ガス供給連通孔30を中心にして等角度間隔ずつ離間し且つ前記燃料ガス供給連通孔30と同心円上に4個の電解質・電極接合体26が配置される。
【0100】
セパレータ306は、例えば、ステンレス合金等の板金で構成される第1プレート308及び第2プレート310を有する。第1プレート308及び第2プレート310は、互いに拡散接合、レーザ溶接又はろう付け等により接合される。第1プレート308及び第2プレート310は、金属プレートに代えて、例えば、カーボンプレート等(接合方法は省略する)で構成してもよい。
【0101】
第1プレート308は、中央部に積層方向(矢印A方向)に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔30が形成される燃料ガス供給部(反応ガス供給部)312を有する。この燃料ガス供給部312から外方に等角度間隔ずつ離間して放射状に延在する4つの第1橋架部314を介し第1挟持部316が一体に設けられる。第1挟持部316は、電解質・電極接合体26と略同一寸法に設定される。
【0102】
各第1挟持部316の外周両側には、外方に突出する第2橋架部318が設けられるとともに、隣り合う第1挟持部316の各第2橋架部318同士は、排ガス排出部320に一体化される。各第1挟持部316には、短尺な第3橋架部322を介して環状の第1筐体部324が一体に設けられる。
【0103】
第1筐体部324は、酸化剤ガスを後述する酸化剤ガス供給通路348に供給するための酸化剤ガス供給連通孔74が積層方向に形成される酸化剤ガス供給部(反応ガス供給部)326を有する。第1筐体部324には、複数のボルト挿入用孔部328が所定角度間隔ずつ離間して設けられる。燃料ガス供給連通孔30、第1橋架部314、第1挟持部316、第3橋架部322及び酸化剤ガス供給連通孔74は、セパレータ面方向に沿って直線上に配置される(図16〜図18参照)。
【0104】
図16及び図19に示すように、第2プレート310は、中央部に燃料ガス供給連通孔30が形成される燃料ガス供給部(反応ガス供給部)330を有する。この燃料ガス供給部330から外方に等角度間隔ずつ離間して放射状に延在する4つの第1橋架部332を介して第2挟持部334が一体に設けられる。第2挟持部334は、第1挟持部316と同様に、電解質・電極接合体26と略同一寸法に設定される。
【0105】
各第2挟持部334の外周両側には、外方に突出する第2橋架部336が設けられるとともに、隣り合う第2挟持部334の各第2橋架部336同士は、排ガス排出部338に一体化される。各第2挟持部334には、短尺な第3橋架部340を介して環状の第2筐体部342が一体に設けられる。
【0106】
第2筐体部342には、酸化剤ガス供給連通孔74が積層方向に形成される酸化剤ガス供給部326と、ボルト挿入用孔部328とが設けられる。この第2筐体部342の第1筐体部324に接合される面には、酸化剤ガス供給連通孔74から供給される酸化剤ガスを充填するための充填室346が形成される。
【0107】
充填室346は、各第3橋架部340から各第2挟持部334の中央部近傍まで延在する酸化剤ガス供給通路(反応ガス供給通路)348に連通する。酸化剤ガス供給通路348の先端には、第2挟持部334を貫通する酸化剤ガス供給孔350が連通する。
【0108】
各セパレータ306間には、図示しないが、燃料ガス供給連通孔30をシールするための第1絶縁シールと、酸化剤ガス供給連通孔74をシールするための第2絶縁シールとが設けられる。第1絶縁シール及び第2絶縁シールは、シール性が高く、硬質で潰れ難い、例えば、地殻成分系素材、硝子系素材、粘土とプラスチックの複合素材等が使用される。また、第2絶縁シールは、熱エネルギの拡散を阻止する断熱部材であることが好ましい。
【0109】
図14及び図15に示すように、燃料電池スタック304は、複数の燃料電池300の積層方向一端に、略円板状の第1エンドプレート352aが配置されるとともに、積層方向他端に、隔壁354を介装して小径且つ略円板状の複数の第2エンドプレート352bと、大径且つ略リング状の固定リング352cとが配置される。隔壁354は、排ガスが燃料電池300の外部に拡散することを阻止する機能を有する一方、第2エンドプレート352bは、各電解質・電極接合体26の積層位置に対応して4つ配設される。
【0110】
第1エンドプレート352a及び固定リング352cは、セパレータ306のボルト挿入用孔部328に連通する複数の孔部356を有する。孔部356からボルト挿入用孔部328に挿入されるボルト358及び前記ボルト358に螺合するナット360を介し、セパレータ306の第1筐体部324及び第2筐体部342が第1エンドプレート352aに締め付け固定される。
【0111】
第1エンドプレート352aには、燃料ガス供給連通孔30に連通する単一の燃料ガス供給パイプ362と、各酸化剤ガス供給連通孔74に連通する4本の酸化剤ガス供給パイプ364と、排ガス排出連通孔50に連通する4本の排ガスリサイクルパイプ366と、排ガス通路78に連通する4本の酸化剤ガス排出パイプ368とが設けられる。
【0112】
第1エンドプレート352aは、板状カラー部材370を介して支持プレート372が固定される。支持プレート372と第1エンドプレート352aとの間には、燃料ガス供給部312、330に締め付け荷重を付与する第1荷重付与部374と、酸化剤ガス供給部326に締め付け荷重を付与する第2荷重付与部376と、各電解質・電極接合体26に締め付け荷重を付与する第3荷重付与部378とが設けられる。
【0113】
第1荷重付与部374は、燃料ガス供給連通孔30から燃料ガスが漏れることを阻止するために燃料電池300の中央部(燃料ガス供給部312、330の中央部)に配置される押圧部材380を備え、この押圧部材380は、4つの第2エンドプレート352bの配列中心近傍に位置して前記燃料電池300に隔壁354を介して押圧する。押圧部材380には、第1受け部材382a及び第2受け部材382bを介して第1スプリング384が配置される。第2受け部材382bには、第1押圧ボルト386の先端が当接する。第1押圧ボルト386は、支持プレート372に形成された第1ねじ孔388に螺合するとともに、第1ナット390を介して位置調整可能に固定される。
【0114】
第2荷重付与部376は、孔部356からボルト挿入用孔部328に挿入されるボルト358と、前記ボルト358に螺合するナット360とを備え、酸化剤ガス供給部326から酸化剤ガスが漏れることを阻止する機能を有する。
【0115】
第3荷重付与部378は、第2エンドプレート352bに各電解質・電極接合体26に対応して配置される第3受け部材392aを備える。第3受け部材392aは、ピン394を介して第2エンドプレート352bに位置決め支持される。第3受け部材392aに第2スプリング396の一端が当接する一方、前記第2スプリング396の他端が第4受け部材392bに当接する。第4受け部材392bには、第2押圧ボルト398の先端が当接する。第2押圧ボルト398は、支持プレート372に形成された第2ねじ孔400に螺合するとともに、第2ナット402を介して位置調整可能に固定される。
【0116】
図14に示すように、酸化剤ガス供給パイプ364は、熱交換器14の通路118に連通し、排ガスリサイクルパイプ366は、エゼクタ17又は改質器16の吸引口と、燃料電池300の排ガス通路78から熱交換器14を介して排ガス管117に至る通路120に連結され、酸化剤ガス排出パイプ368は、前記熱交換器14の通路120に連通する。
【0117】
このように構成される燃料電池スタック12の動作について、以下に説明する。
【0118】
図14及び図15に示すように、第1エンドプレート352aに接続されている燃料ガス供給パイプ362から燃料ガス供給連通孔30には、燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス供給パイプ364から酸化剤ガス供給連通孔74には、酸素含有ガスである空気が供給される。
【0119】
燃料ガス供給連通孔30に供給された燃料ガスは、図17に示すように、積層方向(矢印A方向)に移動しながら、各燃料電池300を構成するセパレータ306の燃料ガス供給通路60から燃料ガス供給室62に一旦供給される。燃料ガスは、燃料ガス供給室62から各燃料ガス供給孔38aを通って、電解質・電極接合体26を構成するアノード電極24の電極面全面にわたりシャワー状に供給される。
【0120】
アノード電極24で発電反応に使用された燃料ガスは、排ガスとして複数の排ガス排出孔38bから排ガス排出室64にシャワー状に排出された後、排ガス排出通路69を介して排ガス排出連通孔50に排出される。そして、排ガスは、図14に示すように、エゼクタ17から改質器16に送られ、前記改質器16から燃料電池スタック12に対して新たな燃料ガスとして再度供給されている。
【0121】
一方、酸化剤ガス供給連通孔74に供給される空気は、第1プレート308の第1筐体部324と第2プレート310の第2筐体部342との間に設けられる充填室346に一旦充填される。この充填室346には、酸化剤ガス供給通路348が連通しており、酸化剤ガスは、各酸化剤ガス供給通路348に沿って第1挟持部316及び第2挟持部334の中心側に移動する。
【0122】
第2挟持部334の中心近傍には、酸化剤ガス供給孔350が連通するとともに、前記酸化剤ガス供給孔350は、電解質・電極接合体26のカソード電極22の略中心位置に対応して設けられている。これにより、空気は、酸化剤ガス供給孔350からカソード電極22に供給され、このカソード電極22の略中心部から外周部に向かってメッシュ部材(金属メッシュ等の導電性織布)72に形成された酸化剤ガス通路70を流動する。なお、メッシュ部材72に代えて、導電性フェルト部材(金属フェルト等の導電性不織布)、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル等を採用してもよい。また、第2挟持部334のカソード電極22側の面には、カソード電極22の電極面に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路70を形成する複数の突起部(ボス)を設けてもよく、突起部は、エッチングやプレス等により形成される。
【0123】
これにより、第4の実施形態では、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池を組み込む燃料電池モジュールの一部断面説明図である。
【図2】前記燃料電池が矢印A方向に複数積層された燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図3】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図4】前記燃料電池のガス流れ状態を示す一部分解斜視説明図である。
【図5】前記セパレータの一方の面の一部拡大説明図である。
【図6】前記燃料電池の、図5中、VI−VI線断面説明図である。
【図7】前記燃料電池の、図5中、VII−VII線断面説明図である。
【図8】従来技術と第1の実施形態の水蒸気濃度及び電流密度の関係説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池を組み込む燃料電池モジュールの一部断面説明図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池が矢印A方向に積層された燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図11】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図12】前記燃料電池のガス流れ状態を示す一部分解斜視説明図である。
【図13】前記燃料電池を構成する第2プレートの正面説明図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池が矢印A方向に積層された燃料電池モジュールの一部断面説明図である。
【図15】前記燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図16】前記燃料電池の分解斜視説明図である。
【図17】前記燃料電池のガス流れ状態を示す一部分解斜視説明図である。
【図18】セパレータを構成する第1プレートの説明図である。
【図19】前記セパレータを構成する第2プレートの説明図である。
【図20】特許文献1の平板積層型燃料電池を構成するセパレータの説明図である。
【図21】特許文献2の燃料電池用セパレータの説明図である。
【符号の説明】
【0125】
10、140、302…燃料電池モジュール
11、200、300…燃料電池
12、202、304…燃料電池スタック
14…熱交換器 16…改質器
17…エゼクタ 18…筐体
20…電解質 21…荷重付与機構
22…カソード電極 24…アノード電極
26…電解質・電極接合体 28、204、306…セパレータ
28a、28b、206、208、210、308、310…プレート
30…燃料ガス供給連通孔
32、52、212、238、312、330…燃料ガス供給部
34、46、54、67、214、218、230、242、243、244、314、318、322、332、336、340…橋架部
36、56、216、232、246、316、334…挟持部
38a…燃料ガス供給孔 38b、38d…排ガス排出孔
38c…酸化剤ガス供給孔 42、42a…突起部
44…リング状封止部
48、68、220、239、320、338…排ガス排出部
50…排ガス排出連通孔 60…燃料ガス供給通路
62…燃料ガス供給室 64、64a…排ガス排出室
69…排ガス排出通路 70…酸化剤ガス通路
72…メッシュ部材 74…酸化剤ガス供給連通孔
78…排ガス通路 96a、96b、324、342…筐体部
228、240、326…酸化剤ガス供給部
252、348…酸化剤ガス供給通路
346…充填室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池であって、
前記セパレータは、前記電解質・電極接合体を挟持するとともに、少なくとも前記アノード電極の電極面に沿って燃料ガスを供給する又は前記カソード電極の電極面に沿って酸化剤ガスを供給する反応ガス通路が設けられる挟持部と、
前記挟持部に連結され、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを前記反応ガス通路に供給するための反応ガス供給通路が形成される第1橋架部と、
前記第1橋架部に連結され、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを前記反応ガス供給通路に供給するための反応ガス供給連通孔が積層方向に形成される反応ガス供給部と、
前記挟持部に連結され、前記電解質・電極接合体で使用された前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを、排ガスとして前記反応ガス通路から排出させるための排ガス排出通路が形成される第2橋架部と、
前記第2橋架部に連結され、前記排ガスを前記積層方向に流動させるための排ガス排出連通孔が形成される排ガス排出部と、
を備え、
前記挟持部には、少なくとも前記反応ガス通路に前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを雨浴状に供給する複数の反応ガス供給孔と、
前記排ガスを前記反応ガス通路から雨浴状に排出して前記排ガス排出通路に送る複数の排ガス排出孔と、
前記反応ガス通路側の周縁部から前記排ガスが排出されることを抑制する封止部と、
が形成されるとともに、
前記排ガス排出連通孔は、前記反応ガス供給連通孔を介して前記反応ガス通路に連通することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、燃料を改質して前記燃料ガスを生成し、前記燃料ガスを前記反応ガス供給連通孔に供給するための改質器を備えるとともに、
前記排ガス排出連通孔は、前記改質器を介して前記反応ガス供給連通孔に連通することを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池において、前記改質器の上流側には、エゼクタが配設されるとともに、
前記排ガス排出連通孔は、前記エゼクタを介して前記改質器に連通することを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池において、前記挟持部は、前記反応ガス供給孔に連通して前記反応ガス供給孔に前記反応ガスを供給するための反応ガス供給室と、
前記排ガス排出孔に連通して前記排ガス排出孔から前記排ガスを排出するための排ガス排出室と、
を設けることを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項4記載の燃料電池において、前記反応ガス通路は、前記反応ガス供給孔を介して前記反応ガス供給室に連通するとともに、
前記排ガス排出孔を介して前記排ガス排出室に連通することを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池において、前記挟持部は、前記反応ガス供給孔及び前記排ガス排出孔が形成される第1プレート部と、
前記第1プレート部との間に、前記反応ガス供給室及び前記排ガス排出室が形成される第2プレート部と、
を備え、
前記第1プレート部と前記第2プレート部とが積層されることを特徴とする燃料電池。
【請求項1】
電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に積層される燃料電池であって、
前記セパレータは、前記電解質・電極接合体を挟持するとともに、少なくとも前記アノード電極の電極面に沿って燃料ガスを供給する又は前記カソード電極の電極面に沿って酸化剤ガスを供給する反応ガス通路が設けられる挟持部と、
前記挟持部に連結され、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを前記反応ガス通路に供給するための反応ガス供給通路が形成される第1橋架部と、
前記第1橋架部に連結され、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを前記反応ガス供給通路に供給するための反応ガス供給連通孔が積層方向に形成される反応ガス供給部と、
前記挟持部に連結され、前記電解質・電極接合体で使用された前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを、排ガスとして前記反応ガス通路から排出させるための排ガス排出通路が形成される第2橋架部と、
前記第2橋架部に連結され、前記排ガスを前記積層方向に流動させるための排ガス排出連通孔が形成される排ガス排出部と、
を備え、
前記挟持部には、少なくとも前記反応ガス通路に前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスを雨浴状に供給する複数の反応ガス供給孔と、
前記排ガスを前記反応ガス通路から雨浴状に排出して前記排ガス排出通路に送る複数の排ガス排出孔と、
前記反応ガス通路側の周縁部から前記排ガスが排出されることを抑制する封止部と、
が形成されるとともに、
前記排ガス排出連通孔は、前記反応ガス供給連通孔を介して前記反応ガス通路に連通することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、燃料を改質して前記燃料ガスを生成し、前記燃料ガスを前記反応ガス供給連通孔に供給するための改質器を備えるとともに、
前記排ガス排出連通孔は、前記改質器を介して前記反応ガス供給連通孔に連通することを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池において、前記改質器の上流側には、エゼクタが配設されるとともに、
前記排ガス排出連通孔は、前記エゼクタを介して前記改質器に連通することを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池において、前記挟持部は、前記反応ガス供給孔に連通して前記反応ガス供給孔に前記反応ガスを供給するための反応ガス供給室と、
前記排ガス排出孔に連通して前記排ガス排出孔から前記排ガスを排出するための排ガス排出室と、
を設けることを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項4記載の燃料電池において、前記反応ガス通路は、前記反応ガス供給孔を介して前記反応ガス供給室に連通するとともに、
前記排ガス排出孔を介して前記排ガス排出室に連通することを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池において、前記挟持部は、前記反応ガス供給孔及び前記排ガス排出孔が形成される第1プレート部と、
前記第1プレート部との間に、前記反応ガス供給室及び前記排ガス排出室が形成される第2プレート部と、
を備え、
前記第1プレート部と前記第2プレート部とが積層されることを特徴とする燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
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【図4】
【図5】
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【図11】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−123710(P2008−123710A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302932(P2006−302932)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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