説明

燃料電池

【課題】 スタックの寸法変化を吸収することができ、かつ、反応ガスの供給効率を向上させることができる燃料電池を提供する。
【解決手段】 燃料電池(200)は、複数のセル(12)が積層されたスタック(10)と、セル(12)の積層方向にあるスタック(10)の端面のうちいずれか一方の端面に設けられた第1配管部(20)と、スタック(10)の第1配管部(20)とは反対側の端面に設けられた第2配管部(30)とを備え、第1配管部(20)、セル(12)および第2配管部(30)は、連通し、第1配管部(20)および第2配管部(30)のいずれか一方は、バネ配管により構成されることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般的には水素および酸素を燃料として電気エネルギを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れており、また高いエネルギ効率を実現できることから、今後のエネルギ供給システムとして広く開発が進められてきている。
【0003】
一般に燃料電池は、複数のセルが積層され、積層方向に所定の荷重をかけて締結されたスタック構造を有している。このようなスタックにおいては、スタックの熱膨張等により生じる積層方向の寸法変化を吸収するために、スタックのセルの積層方向にある端面のうちいずれか一方の端面にバネ等の寸法吸収装置が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−45535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バネ等の寸法吸収装置に配管を設けることは困難である。そこで、スタックに水素、酸素等の反応ガスを供給するための供給口とこれらの反応ガスを排出するための排出口とをスタックの寸法吸収装置と反対側の端面に形成することが考えられる。しかしながら、反応ガスの供給口と排出口とをスタックの同一端面に形成すると、反応ガスはスタック内部で折り返されることになる。この場合、反応ガスの圧力損失が大きくなる。その結果、反応ガスの供給効率が低下する。
【0006】
本発明は、スタックの寸法変化を吸収することができ、かつ、反応ガスの供給効率を向上させることができる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池は、複数のセルが積層されたスタックと、セルの積層方向にあるスタックの端面のうちいずれか一方の端面に設けられた第1配管部と、スタックの第1配管部とは反対側の端面に設けられた第2配管部とを備え、第1配管部、前記セルおよび前記第2配管部は、連通し、第1配管部および第2配管部のいずれか一方は、バネ配管により構成されることを特徴とするものである。本発明に係る燃料電池においては、第1配管部および第2配管部のいずれか一方は、反応ガス用配管としての機能とともに、スタックの寸法吸収装置としての機能を有する。したがって、反応ガス用配管と寸法吸収装置とを別々に設ける必要がなくなる。その結果、反応ガス供給用配管をスタックのセルの積層方向にある端面のうち一方の端面に形成し、反応ガス排出用配管を他方の端面に形成することができる。この場合、反応ガスの入出口がスタックの片側の端面に設けられている場合に比較して、反応ガスの流動距離が短くなる。また、反応ガスの折り返し数が低減する。それにより、圧損が低下する。その結果、反応ガスの供給効率を向上させることができる。
【0008】
上記構成において、第1配管部および第2配管部の両方ともバネ配管により構成されるものであってもよい。この構成によれば、スタックの片側にのみバネ配管が配置される場合に比較して、スタックの端部セルの変位量を抑制することができる。その結果、スタックの磨耗による燃料電池の寿命の低下を抑制することができる。
【0009】
上記構成において、バネ配管は、コイルバネ形状を有する配管であってもよい。また、上記構成において、バネ配管は、内部に反応ガスが流動するための流路が形成された板バネからなるものであってもよい。この構成によれば、配管の内部に反応ガスを流動させることができ、かつ、配管自体がスタックの寸法変化を吸収することもできる。
【0010】
上記構成において、第1配管部および第2配管部は、燃料ガスが流動するための燃料ガス配管と、酸化剤ガスが流動するための酸化剤ガス配管とを含むものであってもよく、セルを冷却するための冷媒が流動するための冷媒配管を含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スタックの寸法変化を吸収することができ、かつ、反応ガスの供給効率を向上させることができる燃料電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の第1実施例に係る燃料電池200の模式的断面図である。図1に示すように、燃料電池200は、スタック10、第1配管部20、第2配管部30およびケース部40を備える。
【0014】
スタック10は、積層された複数のセル12、ターミナル14a,14bおよびインシュレータ16a,16bを備える。セル12は、セパレータ、アノード、電解質、カソードおよびセパレータが順に積層された構造を有する。各セパレータには、燃料ガスが流動するための燃料ガス流路、酸化剤ガスが流動するための酸化剤ガス流路、および、冷媒が流動するための冷媒流路が設けられている。以下、燃料ガスおよび酸化剤ガスを総称して反応ガスと称する。セル12は、反応ガスを用いて発電を行う。本発明においては、燃料ガスとして水素ガスを用い、酸化剤ガスとして酸素を含んだエアを用いる。
【0015】
セル12の積層体の積層方向にある端面のうち、第1配管部20側の端面には、ターミナル14aが積層されている。一方、セル12の積層体の積層方向にある端面のうち、第2配管部30側の端面には、ターミナル14bが積層されている。ターミナル14a,14bは、セル12における発生電力を外部に取り出すための配線等を備えている。
【0016】
ターミナル14aのセル12と反対側の面には、インシュレータ16aが積層されている。一方、ターミナル14bのセル12と反対側の面には、インシュレータ16bが積層されている。インシュレータ16a,16bは、絶縁体により構成され、セル12からの漏電を防止する。
【0017】
セル12、ターミナル14a,14bおよびインシュレータ16a,16bには、図示されてはいないが、燃料ガスが流動するための燃料ガス用マニホールド、酸化剤ガスが流動するための酸化剤ガス用マニホールドおよび冷媒が流動するための冷媒用マニホールドが設けられている。
【0018】
インシュレータ16aのターミナル14aと反対側の面には、第1配管部20が設けられている。第1配管部20は、燃料ガスが流動するための燃料ガス配管100と、酸化剤ガスが流動するための酸化剤ガス配管110と、セル12を冷却するための冷媒が流動するための冷媒配管120とから構成される。インシュレータ16bのターミナル14bと反対側の面には、第2配管部30が設けられている。第2配管部30は、燃料ガスが流動するための燃料ガス配管31と、酸化剤ガスが流動するための酸化剤ガス配管32と、セル12を冷却するための冷媒が流動するための冷媒配管33とから構成される。
【0019】
燃料ガス配管100は、スタック10の燃料ガス用マニホールドおよび各セル12の燃料ガス流路を介して燃料ガス配管31に連通する。酸化剤ガス配管110は、スタック10の酸化剤ガス用マニホールドおよび各セル12の酸化剤ガス流路を介して酸化剤ガス配管32に連通する。また、冷媒配管120は、スタック10の冷媒用マニホールドおよび各セルの冷媒流路を介して冷媒配管33に連通する。
【0020】
ケース部40は、エンドプレート42a,42bおよび複数のテンションプレート44を備える。エンドプレート42aは、インシュレータ16aのターミナル14aと反対側の面に、第1配管部20を介して積層されている。エンドプレート42bは、インシュレータ16bのターミナル14bと反対側の面に積層されている。エンドプレート42a,42bは、複数のテンションプレート44によって締結されている。それにより、スタック10には締結荷重が与えられている。この場合の締結荷重は、例えば、1MPa〜2MPa程度である。
【0021】
燃料ガスは、エンドプレート42aの開口部55から供給され、燃料ガス配管100を通り、スッタク10の燃料ガス用マニホールドを通り、燃料ガス配管31から排出される。酸化剤ガスは、エンドプレート42aの開口部55から供給され、酸化剤ガス配管110を通り、スッタク10の酸化剤ガス用マニホールドを通り、酸化剤ガス配管32から排出される。冷媒は、エンドプレート42aの開口部55から供給され、冷媒配管120を通り、スッタク10の冷媒用マニホールドを通り、冷媒配管33から排出される。なお、図1において、反応ガスおよび冷媒の流動方向を矢印で示す。
【0022】
図2は、第1配管部20を拡大して模式的に示した図である。図2に示すように、燃料ガス配管100、酸化剤ガス配管110および冷媒配管120は、それぞれコイルバネ形状に加工された構造を有する。すなわち、第1配管部20は、コイルバネ形状を有するバネ配管により構成されている。
【0023】
図1および図2に示す構成によれば、第1配管部20は、配管の内部に反応ガスを流動させることができるとともに、スタック10の熱膨張等に伴う寸法変化を吸収することができる。すなわち、第1配管部20は、反応ガス用配管としての機能とともに、スタック10の寸法吸収装置としての機能を有する。
【0024】
したがって、本実施例に係る燃料電池200においては、反応ガス用配管と寸法吸収装置とを別々に設ける必要がなくなる。その結果、反応ガス供給用配管をスタック10のセル12の積層方向にある端面のうち一方の端面に形成し、反応ガス排出用配管を他方の端面に形成することができる。この場合、反応ガスの入出口がスタックの片側の端面に設けられている場合に比較して、反応ガスの流動距離が短くなる。また、反応ガスの折り返し数が低減する。それにより、圧損が低下する。その結果、反応ガスの供給効率を向上させることができる。同様に、冷媒の供給効率も向上する。
【0025】
(変形例1)
図3は、本実施例の変形例1に係る第1配管部20aを模式的に示した図である。図3に示すように、第1配管部20aは、それぞれコイルバネ形状を有する燃料ガス配管100a、酸化剤ガス配管110aおよび冷媒配管120aが、束になって1つのコイル形状に加工された構造を有する。この場合においても、第1配管部20aは、反応ガス用配管として機能するとともに、スタック10の寸法吸収装置としての機能を有する。
【0026】
(変形例2)
図4は、本実施例の変形例2に係る第1配管部20bを模式的に示した図である。図4に示すように、第1配管部20bは、図1に示す燃料ガス配管100、酸化剤ガス配管110および冷媒配管120の代わりに、燃料ガス配管100b、酸化剤ガス配管110bおよび冷媒配管120bを備える。燃料ガス配管100b、酸化剤ガス配管110bおよび冷媒配管120bは、内部に反応ガスまたは冷媒が流動する板バネ形状に加工されている。この場合においても、第1配管部20bは、反応ガス用配管として機能するとともに、スタック10の寸法吸収装置としての機能を有する。
【0027】
(変形例3)
図5は、本実施例の変形例3に係る第1配管部20cを模式的に示した図である。図5に示すように、第1配管部20cは、それぞれ板バネ形状を有する燃料ガス配管100c、酸化剤ガス配管110cおよび冷媒配管120cが、束になって1つの板バネ形状に加工された構造を有する。この場合においても、第1配管部20cは、反応ガス用配管として機能するとともに、スタック10の寸法吸収装置としての機能を有する。
【0028】
(変形例4)
図6は、本実施例の変形例4に係る第1配管部20dを模式的に示した図である。図6に示すように、第1配管部20dは、図1に示す燃料ガス配管100、酸化剤ガス配管110および冷媒配管120の代わりに、燃料ガス配管100d、酸化剤ガス配管110dおよび冷媒配管120dを備えている。第1配管部20dの各配管は、コイルバネ60の周りを蛇腹65で覆ったバネ配管からなる。この場合においても、第1配管部20dは、反応ガス用配管として機能するとともに、スタック10の寸法吸収装置としての機能を有する。
【0029】
また、図2〜図5に示したバネ配管の材質は、内部に反応ガス等を流すことができ、かつ、バネ形状に加工することができるものであれば、特に限定はされない。ただし、バネとしての特性を考慮すると、高弾性率を有する材料であることが好ましい。例えば、ステンレス鋼(SUS)等がこれらの配管用材質として挙げられる。
【0030】
また、図6に示したバネ配管において、蛇腹65の材質は、反応ガス等が漏洩せずに内部を通ることができるものであれば、特に限定されない。また、コイルバネ60の材質も、例えばSUS等のようにバネとしての特性を有するものであれば、特に限定されない。
【0031】
また、図1において、燃料ガスおよび酸化剤ガスは、一方向に流れるのであれば、必ずしも同一方向に流れる必要はなく、別々の方向に流れるものであってもよい。例えば、図1において、燃料ガスは矢印方向に流れ、酸化剤ガスは矢印とは反対方向に流れるものであってもよい。
【0032】
また、上記変形例1〜4に示すように、第1配管部は、反応ガス用配管として機能しかつスタック10の寸法吸収装置として機能できるものであれば、特に限定されるものではない。
【実施例2】
【0033】
続いて、本発明の第2実施例に係る燃料電池200aについて説明する。図7は、燃料電池200aの模式的断面図である。図7に示すように、燃料電池200aは、図1に示す第2配管部30の代わりに第2配管部30aを備える。第2配管部30aは、図2〜図6のいずれかに示すバネ配管により構成される。そのため、第1配管部20および第2配管部30aは、反応ガス用配管として機能するとともに、スタック10の寸法吸収装置としての機能を有する。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0034】
本実施例に係る燃料電池200aにおいては、反応ガス用配管と寸法吸収装置とを別々に設ける必要がなくなる。その結果、反応ガス供給用配管をスタック10のセル12の積層方向にある端面のうち一方の端面に形成し、反応ガス排出用配管を他方の端面に形成することができる。この場合、反応ガスの入出口がスタックの片側の端面に設けられている場合に比較して、反応ガスの流動距離が短くなる。また、反応ガスの折り返し数が低減する。それにより、圧損が低下する。その結果、反応ガスの供給効率を向上させることができる。同様に、冷媒の供給効率も向上する。
【0035】
また、燃料電池200aにおいては、外部拘束部材が設けられている場合に各セル12の磨耗を抑制することができる。以下、詳細を説明する。図8(a)〜図8(d)は、磨耗抑制効果について説明するための図である。図8(a)および図8(b)は、図1に示した燃料電池200のスタック10が熱膨張により寸法拡大した場合を模式的に図示したものである。一方、図8(c)および図8(d)は、図7に示した燃料電池200aのスタック10が熱膨張により寸法拡大した場合を模式的に図示したものである。
【0036】
なお、図8(a)〜図8(d)に示すように、スタック10の側壁には、板状の外部拘束部材150が設けられている。外部拘束部材150は、各セル12の位置ずれを抑制する拘束部材である。
【0037】
まず、スタック10が熱膨張によりセルの積層方向にΔL1だけ膨張する場合を想定する。図8(a)および図8(b)に示すように、燃料電池200においては、第1配管部20側端のセル12は、セルの積層方向にΔL1移動する。一方、図8(c)および図8(d)に示すように、燃料電池200aにおいては、第1配管部20側端のセル12および第2配管部30a側端のセル12は、それぞれΔL2(ΔL2=1/2・ΔL1の関係を有する)移動する。
【0038】
すなわち、燃料電池200aにおいては、スタック10が寸法変化した場合におけるセル12の移動量を抑制することができる。その結果、セル12と外部拘束部材150との接触によるセル12の磨耗を抑制することができる。その結果、燃料電池200aの寿命の低下が抑制される。
【実施例3】
【0039】
続いて、本発明の第4実施例に係る燃料電池200bについて説明する。図9は、燃料電池200bの模式的断面図である。図9に示すように、燃料電池200bが図1に示す実施例1に係る燃料電池200と異なる点は、スタック10を2つ有する点である。燃料電池200bにおいては、それぞれの側壁同士が対向するように各セル12が配置される。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0040】
燃料電池200bにおける第1配管部20は、図2〜図6のいずれかに示したバネ配管により構成される。そのため、第1配管部20は、反応ガス用配管として機能するとともに、スタック10の寸法吸収装置としての機能を有する。したがって、燃料電池200bにおいても、反応ガスおよび冷媒の供給効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施例に係る燃料電池の模式的断面図である。
【図2】第1実施例に係る第1配管部の模式図である。
【図3】第1実施例の変形例1に係る第1配管部の模式図である。
【図4】第1実施例の変形例2に係る第1配管部の模式図である。
【図5】第1実施例の変形例3に係る第1配管部の模式図である。
【図6】第1実施例の変形例4に係る第1配管部の模式図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る燃料電池の模式的断面図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る燃料電池の効果を示す模式的断面図である。
【図9】本発明の第3実施例に係る燃料電池の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 スタック
12 セル
20 第1配管部
30 第2配管部
40 ケース部
200 燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが積層されたスタックと、
前記セルの積層方向にある前記スタックの端面のうちいずれか一方の端面に設けられた第1配管部と、
前記スタックの前記第1配管部とは反対側の端面に設けられた第2配管部と、を備え、
前記第1配管部、前記セルの流路および前記第2配管部は、連通し、
前記第1配管部および前記第2配管部のいずれか一方は、バネ配管により構成されることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記第1配管部および前記第2配管部の両方とも前記バネ配管により構成されることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記バネ配管は、コイルバネ形状を有する配管であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記バネ配管は、内部に反応ガスが流動するための流路が形成された板バネからなることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記第1配管部および前記第2配管部は、燃料ガスが流動するための燃料ガス配管と、酸化剤ガスが流動するための酸化剤ガス配管とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項6】
前記第1配管部および前記第2配管部は、前記セルを冷却するための冷媒が流動するための冷媒配管を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate