説明

燃料電池

【課題】容易且つ簡単な構成で、固体高分子電解質膜の損傷を可及的に阻止し、良好な発電性能を確保することを可能にする。
【解決手段】燃料電池10を構成する電解質膜・電極構造体12は、固体高分子電解質膜18の両面に、カソード電極20及びアノード電極22が配設される。カソード電極20は、第1触媒層20a及び第1ガス拡散層20bを設ける一方、アノード電極22は、第2触媒層22a及び第2ガス拡散層22bを設ける。第1ガス拡散層20bの平面は、第2ガス拡散層22bの平面よりも大きな寸法に且つ固体高分子電解質膜18の平面と同一の寸法に設定される。第1触媒層20aは、バッファ部に対応する部分を含んで第1ガス拡散層20bの外周端部全体にわたって設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子電解質膜の両面に、第1触媒層及び第1ガス拡散層を有する第1電極と、第2触媒層及び第2ガス拡散層を有する第2電極とが配設される電解質膜・電極構造体と、セパレータとが積層される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ触媒層(電極触媒)とガス拡散層(多孔質カーボン)とからなるアノード電極及びカソード電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。通常、この燃料電池を所定数だけ積層した燃料電池スタックが、例えば、車載用燃料電池スタックとして燃料電池電気自動車に使用されている。
【0003】
この種の電解質膜・電極構造体では、一方のガス拡散層が固体高分子電解質膜よりも小さな表面積に設定されるとともに、他方のガス拡散層が前記固体高分子電解質膜と同一の表面積に設定される、所謂、段差型MEAを構成する場合がある。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている電解質膜−電極接合体では、図7に示すように、電解質膜1と前記電解質膜1の一方の側に配置されたカソード触媒層2aと、前記電解質膜1の他方の側に配置されたアノード触媒層2bと、前記電解質膜1の両側に配置されるガス拡散層3a、3bとを備えている。
【0005】
アノード側のガス拡散層3bは、電解質膜1の面積と同等で、且つ、カソード側のガス拡散層3aの面積よりも大きく構成されている。この電解質膜・電極接合体(MEA)のエッジ領域には、ガスケット構造体4が配置されており、ガス拡散層3a側の電解質膜1の外周部と前記ガスケット構造体4とは、接着層5を介して接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−66766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の特許文献1では、加工精度及び組立精度の関係から、ガス拡散層3aの外周端面3aeとガスケット構造体4の内方側の内周端面4aeとの間には、隙間が形成され易い。このため、ガス拡散層3aとガスケット構造体4との隙間からのガス透過が増加してしまい、特に電解質膜1の劣化が著しくなるという問題がある。
【0008】
さらに、燃料電池では、セパレータに反応ガス流路の入口及び出口に連通してバッファ部が設けられる場合がある。バッファ部は、電極面の外方に設けられており、反応ガスを拡散させて反応ガス流路に均一に流通させる機能を有している。
【0009】
そこで、電解質膜−電極接合体では、通常、バッファ部に対応する部分にカソード触媒層2a及びアノード触媒層2bが設けられていない。従って、バッファ部に対応する電解質膜1の先端側では、ガス透過が増加し易くなり、前記電解質膜1の劣化が著しくなるという問題がある。
【0010】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、容易且つ簡単な構成で、固体高分子電解質膜の損傷を可及的に阻止し、良好な発電性能を確保することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、固体高分子電解質膜の一方の面に、第1触媒層及び第1ガス拡散層を有する第1電極と、前記固体高分子電解質膜の他方の面に、第2触媒層及び第2ガス拡散層を有する第2電極とが、配設される電解質膜・電極構造体と、セパレータとが積層されるとともに、前記第1ガス拡散層の平面は、前記第2ガス拡散層の平面よりも大きな寸法に且つ前記固体高分子電解質膜の平面と同一の寸法に設定される燃料電池に関するものである。
【0012】
この燃料電池は、セパレータの第1電極に対向する面には、一方の反応ガスを流通させる反応ガス流路と、前記反応ガス流路の入口及び出口に連通するバッファ部とが形成されるとともに、第1触媒層は、前記バッファ部に対応する部分を含んで第1ガス拡散層の外周端部全体にわたって設けられている。
【0013】
また、この燃料電池では、第2電極の外周端部は、固体高分子電解質膜の外周端部よりも内方に配置され、且つ、第2触媒層の外周端部は、第2ガス拡散層の外周端部よりも内方に配置されるとともに、前記燃料電池は、一端が前記第2触媒層の外周縁部と前記第2ガス拡散層との間に配置され、他端が前記固体高分子電解質膜の外周端部と同一位置に配置される額縁状フィルム部材を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1ガス拡散層の平面は、固体高分子電解質膜の平面と同一の寸法に設定されるとともに、第1触媒層は、バッファ部に対応する部分を含んで前記第1ガス拡散層の外周端部全体にわたって、すなわち、前記固体高分子電解質膜の外周端部全体にわたって、設けられている。
【0015】
このため、電解質膜・電極構造体には、第1触媒層の端部に対応して隙間が形成されることがなく、固体高分子電解質膜のガス透過を可及的に抑制することができる。これにより、容易且つ簡単な構成で、固体高分子電解質膜の損傷を可及的に阻止し、良好な発電性能を確保することが可能になる。
【0016】
しかも、第1ガス拡散層の平面は、固体高分子電解質膜の平面と同一の寸法に設定されている。従って、第1電極自体が固体高分子電解質膜の全面を支持することにより、固体高分子電解質膜の変形を良好に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の、図1中、II−II線断面説明図である。
【図3】前記燃料電池を構成する電解質膜・電極構造体の一部断面説明図である。
【図4】前記電解質膜・電極構造体のカソード電極側の正面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図6】前記燃料電池を構成する電解質膜・電極構造体の一部断面説明図である。
【図7】特許文献1に開示された電解質膜−電極接合体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、電解質膜・電極構造体12と、この電解質膜・電極構造体12を挟持する第1セパレータ14及び第2セパレータ16とを備える。第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板や、カーボン部材等で構成されている。
【0019】
電解質膜・電極構造体12は、後述する酸化剤ガス用入口バッファ部及び出口バッファ部に対応して突出部12a、12bを一体に有する。突出部12a、12bは、連結流路部としてバッファ部の一部の領域を構成する。なお、突出部12a、12bは、必要に応じて設ければよく、不要にすることもできる。電解質膜・電極構造体12は、固体高分子電解質膜18と、前記固体高分子電解質膜18を挟持するカソード電極(第1電極)20及びアノード電極(第2電極)22とを備える。
【0020】
カソード電極20は、アノード電極22よりも大きな表面積を有するとともに、固体高分子電解質膜18と同一の表面積を有する。固体高分子電解質膜18には、アノード電極22の外周から外部に露呈する面に額縁状補強シート部材24が配設される。
【0021】
図3に示すように、カソード電極20は、固体高分子電解質膜18の一方の面18aに当接する第1触媒層(電極触媒層)20a及び第1ガス拡散層20bを設ける。アノード電極22は、固体高分子電解質膜18の他方の面18bに当接し、且つ前記固体高分子電解質膜18の外周を額縁状に露呈させる第2触媒層(電極触媒層)22a及び第2ガス拡散層22bを設ける。なお、第1及び第2触媒層20a、22aは、複数の層から構成してもよい。
【0022】
第1ガス拡散層20bの平面は、第2ガス拡散層22bの平面よりも大きな寸法に且つ固体高分子電解質膜18の平面と同一の寸法に設定される。図4中、斜線で示すように、第1触媒層20aは、突出部12a、12bを含んで第1ガス拡散層20bの外周端部全体にわたって、すなわち、固体高分子電解質膜18の外周端部全体にわたって、設けられる。
【0023】
図3に示すように、第2触媒層22aの外周端部22aeは、第2ガス拡散層22bの外周端部22beよりも内方に配置される。補強シート部材24は、一端24aが第2触媒層22aの外周縁部と第2ガス拡散層22bとの間に配置され、他端24bが固体高分子電解質膜18の外周端部と同一位置に配置される。
【0024】
この補強シート部材24は、額縁状を有するとともに、ガス不透過性を有する材料、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)やPEEK系(ポリエーテルエーテルケトン)等のエンプラ乃至スーパーエンプラにより構成される。また、補強シート部材24の材料として、ポリイミド、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリ二フッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、シリコーン、熱可塑性エラストマー、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が使用される。
【0025】
図1に示すように、燃料電池10の矢印B方向(図1中、水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔32a及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔34bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0026】
燃料電池10の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔34a、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔32b及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔30bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0027】
第1セパレータ14の電解質膜・電極構造体12に向かう面14aには、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス出口連通孔30bとに連通する酸化剤ガス流路(反応ガス流路)36が設けられる。
【0028】
酸化剤ガス流路36の入口36a側及び出口36b側には、それぞれ入口バッファ部37a及び出口バッファ部37bが連通する。入口バッファ部37a及び出口バッファ部37bは、酸化剤ガスを拡散させて前記酸化剤ガスの流れを円滑化且つ均一化させる機能を有しており、例えば、複数のエンボスにより構成される。電解質膜・電極構造体12には、連結流路部として入口バッファ部37aの一部の領域を構成する突出部12aと、連結流路部として出口バッファ部37bの一部の領域を構成する突出部12bとが、必要に応じて設けられる。
【0029】
第2セパレータ16の電解質膜・電極構造体12に向かう面16aには、燃料ガス入口連通孔34aと燃料ガス出口連通孔34bとに連通する燃料ガス流路38が形成される。第1セパレータ14の面14bと第2セパレータ16の面16bとの間には、冷却媒体入口連通孔32aと冷却媒体出口連通孔32bとに連通する冷却媒体流路40が形成される。
【0030】
図1及び図2に示すように、第1セパレータ14の面14a、14bには、この第1セパレータ14の外周端部を周回して、第1シール部材42が一体化されるとともに、第2セパレータ16の面16a、16bには、この第2セパレータ16の外周端部を周回して、第2シール部材44が一体化される。
【0031】
図2に示すように、第2シール部材44は、補強シート部材24と第2セパレータ16との間に介装される第1凸状シール44aと、第1セパレータ14と前記第2セパレータ16との間に介装される第2凸状シール44bとを有する。第1シール部材42は、平面シールを構成する。なお、第2凸状シール44bに代えて、第1シール部材42に第2凸状シール(図示せず)を設けてもよい。
【0032】
第1及び第2シール部材42、44には、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0033】
図1に示すように、第2セパレータ16には、燃料ガス入口連通孔34aを燃料ガス流路38に連通する供給孔部46と、前記燃料ガス流路38を燃料ガス出口連通孔34bに連通する排出孔部48とが形成される。
【0034】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0035】
先ず、図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔30aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔34aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔32aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0036】
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔30aから第1セパレータ14の酸化剤ガス流路36に導入され、矢印B方向に移動して電解質膜・電極構造体12のカソード電極20に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔34aから供給孔部46を通って第2セパレータ16の燃料ガス流路38に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路38に沿って矢印B方向に移動し、電解質膜・電極構造体12のアノード電極22に供給される。
【0037】
従って、各電解質膜・電極構造体12では、カソード電極20に供給される酸化剤ガスと、アノード電極22に供給される燃料ガスとが、第1触媒層20a及び第2触媒層22a内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0038】
次いで、カソード電極20に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔30bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極22に供給されて消費された燃料ガスは、排出孔部48を通り燃料ガス出口連通孔34bに沿って矢印A方向に排出される。
【0039】
また、冷却媒体入口連通孔32aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ14と第2セパレータ16との間の冷却媒体流路40に導入された後、矢印B方向に流通する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体12を冷却した後、冷却媒体出口連通孔32bから排出される。
【0040】
この場合、第1の実施形態では、固体高分子電解質膜18の両面に、それぞれ表面積の異なるアノード電極22及びカソード電極20が配設される、所謂、段差MEAを構成する電解質膜・電極構造体12を備えている。この電解質膜・電極構造体12では、第1ガス拡散層20bの平面は、固体高分子電解質膜18の平面と同一の寸法に設定されるとともに、第1触媒層20aは、入口バッファ部37a及び出口バッファ部37bに対応する部分を含んで前記第1ガス拡散層20bの外周端部全体にわたって、すなわち、前記固体高分子電解質膜18の外周端部全体にわたって、設けられている。
【0041】
このため、電解質膜・電極構造体12には、第1触媒層20aの端部に、バッファ部を含め、特に突出部12a、12bに対応する部位にも触媒層が設けられているため、固体高分子電解質膜18のガス透過を可及的に抑制することができる。これにより、容易且つ簡単な構成で、固体高分子電解質膜18の外周端部における前記固体高分子電解質膜18の損傷を可及的に阻止し、良好な発電性能を確保することが可能になるという効果が得られる。従来は、バッファ部の接着層と触媒層の端部との間に隙間が発生して損傷の発生起点となっていたが、この隙間が形成されることがなく、ガス透過が抑制可能になる。
【0042】
しかも、第1ガス拡散層20bの平面は、固体高分子電解質膜18の平面と同一の寸法に設定されている。従って、カソード電極20自体が、固体高分子電解質膜18の全面を支持することにより、前記固体高分子電解質膜18の変形を良好に抑制することができる。
【0043】
さらに、固体高分子電解質膜18には、アノード電極22の外周から外部に露呈する面に額縁状補強シート部材24が配設されている。そして、補強シート部材24は、一端24aが第2触媒層22aの外周端部全体を覆って第2ガス拡散層22bとの間に配置され、他端24bが固体高分子電解質膜18の外周端部と同一位置に配置されている(図3参照)。
【0044】
このため、アノード電極22は、強固な補強シート部材24に固定されるとともに、固体高分子電解質膜18は、全面にわたって確実に補強され、前記補強シート部材24が前記固体高分子電解質膜18の露出部分を覆ってガスの透過を抑制するため、前記固体高分子電解質膜18の耐久性が向上するという利点がある。
【0045】
その上、カソード電極20側には、補強シート部材24が用いられていない。すなわち、第1触媒層20aの外周縁部及び第2触媒層22aの外周縁部が、それぞれ補強シート部材24に覆われることがない。従って、ガス拡散性が低下することを有効に抑制することができ、固体高分子電解質膜18は、外周端部がガス混在環境に長時間にわたって曝されることがなく、前記固体高分子電解質膜18の劣化を抑制することが可能になる。
【0046】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池50の要部分解斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0047】
燃料電池50は、電解質膜・電極構造体52と、この電解質膜・電極構造体52を挟持する第1セパレータ54及び第2セパレータ56とを備える。電解質膜・電極構造体52は、後述する燃料ガス用入口バッファ部及び出口バッファ部に対応し、連結流路部としてバッファ部の一部の領域を構成する突出部52a、52bを、必要に応じて一体に有する。
【0048】
電解質膜・電極構造体52は、固体高分子電解質膜18と、前記固体高分子電解質膜18を挟持するアノード電極(第1電極)58及びカソード電極(第2電極)60とを備える。アノード電極58は、カソード電極60よりも大きな表面積を有するとともに、固体高分子電解質膜18と同一の表面積を有する。アノード電極58とカソード電極60との大小関係は、第1の実施形態とは逆である。固体高分子電解質膜18には、カソード電極60の外周から外部に露呈する面に額縁状補強シート部材24が配設される。
【0049】
図6に示すように、アノード電極58は、固体高分子電解質膜18の一方の面18aに当接する第1触媒層(電極触媒層)58a及び第1ガス拡散層58bを設ける。カソード電極60は、固体高分子電解質膜18の他方の面18bに当接し、且つ前記固体高分子電解質膜18の外周を額縁状に露呈させる第2触媒層(電極触媒層)60a及び第2ガス拡散層60bを設ける。
【0050】
第1ガス拡散層58bの平面は、第2ガス拡散層60bの平面よりも大きな寸法に且つ固体高分子電解質膜18の平面と同一の寸法に設定される。第1触媒層58aは、突出部52a、52bを含んで第1ガス拡散層58bの外周端部全体にわたって、すなわち、固体高分子電解質膜18の外周端部全体にわたって、設けられる。
【0051】
第2触媒層60aの外周端部60aeは、第2ガス拡散層60bの外周端部60beよりも内方に配置される。補強シート部材24は、一端24aが第2触媒層60aの外周端部全体を覆って第2ガス拡散層60bとの間に配置され、他端24bが固体高分子電解質膜18の外周端部と同一位置に配置される。
【0052】
図5に示すように、第1セパレータ54の電解質膜・電極構造体52に向かう面54aには、燃料ガス入口連通孔34aと燃料ガス出口連通孔34bとに連通する燃料ガス流路(反応ガス流路)38が形成される。
【0053】
燃料ガス流路38の入口38a側及び出口38b側には、それぞれ入口バッファ部39a及び出口バッファ部39bが連通する。入口バッファ部39a及び出口バッファ部39bは、燃料ガスを拡散させて前記燃料ガスの流れを円滑化且つ均一化させる機能を有しており、例えば、複数のエンボスにより構成される。電解質膜・電極構造体52には、連結流路部として入口バッファ部39aの一部の領域を構成する突出部52aと、連結流路部として出口バッファ部39bの一部の領域を構成する突出部52bとが設けられる。
【0054】
第2セパレータ56の電解質膜・電極構造体12に向かう面56aには、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス出口連通孔30bとに連通する酸化剤ガス流路36が設けられる。第1セパレータ54の面54bと第2セパレータ56の面56bとの間には、冷却媒体入口連通孔32aと冷却媒体出口連通孔32bとに連通する冷却媒体流路40が形成される。
【0055】
このように構成される第2の実施形態では、第1ガス拡散層58bの平面は、固体高分子電解質膜18の平面と同一の寸法に設定されるとともに、第1触媒層58aは、入口バッファ部39a及び出口バッファ部39bに対応する部分を含んで前記第1ガス拡散層58bの外周端部全体にわたって、すなわち、前記固体高分子電解質膜18の外周端部全体にわたって、設けられている。
【0056】
これにより、容易且つ簡単な構成で、固体高分子電解質膜18の損傷を可及的に阻止し、良好な発電性能を確保することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0057】
10、50…燃料電池 12、52…電解質膜・電極構造体
12a、12b、52a、52b…突出部
14、16、54、56…セパレータ 18…固体高分子電解質膜
20、60…カソード電極
20a、22a、58a、60a…触媒層
20b、22b、58b、60b…ガス拡散層
22、58…アノード電極 24…補強シート部材
30a…酸化剤ガス入口連通孔 30b…酸化剤ガス出口連通孔
32a…冷却媒体入口連通孔 32b…冷却媒体出口連通孔
34a…燃料ガス入口連通孔 34b…燃料ガス出口連通孔
36…酸化剤ガス流路 37a、39a…入口バッファ部
37b、39b…出口バッファ部 38…燃料ガス流路
40…冷却媒体流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜の一方の面に、第1触媒層及び第1ガス拡散層を有する第1電極と、前記固体高分子電解質膜の他方の面に、第2触媒層及び第2ガス拡散層を有する第2電極とが、配設される電解質膜・電極構造体と、セパレータとが積層されるとともに、前記第1ガス拡散層の平面は、前記第2ガス拡散層の平面よりも大きな寸法に且つ前記固体高分子電解質膜の平面と同一の寸法に設定される燃料電池であって、
前記セパレータの前記第1電極に対向する面には、一方の反応ガスを流通させる反応ガス流路と、
前記反応ガス流路の入口及び出口に連通するバッファ部と、
が形成されるとともに、
前記第1触媒層は、前記バッファ部に対応する部分を含んで前記第1ガス拡散層の外周端部全体にわたって設けられることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、前記第2電極の外周端部は、前記固体高分子電解質膜の外周端部よりも内方に配置され、且つ、第2触媒層の外周端部は、前記第2ガス拡散層の外周端部よりも内方に配置されるとともに、
前記燃料電池は、一端が前記第2触媒層の外周縁部と前記第2ガス拡散層との間に配置され、他端が前記固体高分子電解質膜の外周端部と同一位置に配置される額縁状フィルム部材を備えることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−84353(P2013−84353A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221579(P2011−221579)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】