説明

燃焼制御器を備えた加熱装置

【課題】 燃焼室(1)と第一煙道ガス排出導管(6)を含む固体燃料加熱装置を提供する。
【解決手段】 この加熱装置は、燃焼室の外側にかつ燃焼室(1)と前記第一導管(6)との間の煙道ガス経路上に設けられ、かつその垂直部にそれぞれ異なる高さ(h1,h2,h3,h4など)に配置された複数の制御された連絡弁(11,12,13,14など)を備えた、第二煙道ガス排出導管(2)を規定する二重壁(2A)、ただし第二煙道ガス排出導管(2)は、他の弁を閉じている間に第二導管(2)の開放入口弁の選択に依存する量により煙道ガスの流動経路を延ばすように二重壁(2A)の下方部の開口(2B)を介して適合させられている;及び煙道ガスの温度をその露点以上に維持しながら煙道ガスの温度を最小とするために煙道ガスの流動経路(3)の長さを調整するように前記第一導管(6)に設けられた温度探針(7)により測定された煙道ガスの温度に基づいて弁(11,12,13,14など)のそれぞれに対し開閉位置を選択するために適合された調整手段;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば木材または石炭を使用して、燃焼を最適化しかつ装置の出力を最大にすることを可能にする制御器を備えた加熱装置、特に固体燃料家庭用加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に、木材または石炭を使用する加熱装置は、幾つかの加熱速度で操作することができる。典型的に、例えばPmaxに相当する最大加熱速度、Pmax/2に相当する中間または中央加熱速度、Pmax/4に相当する最小加熱速度、及びPmax/8に相当する待機加熱速度がある。Pmaxは装置の最大出力であり、それは木材ストーブに対しては典型的に5〜15kWの間にある。この分類は、本発明の以下の実例を可能にし、かつ大きさの程度を提供する例としてのみ提供される。他の中間加熱速度及び他の出力基準ももちろん可能である。木材ストーブのためのいわゆる「待機(idle)」加熱速度は典型的には夜間使用のために意図されている。寝る前に、使用者は、ストーブに丸太を補充し、主空気弁を最小位置に調整する。目ざめたら、使用者は、ストーブに丸太を補充し、弁を完全に開いて再度火を燃え上がらせる。
【0003】
家庭用木材加熱装置のような加熱装置の出力ηは:
η=100%−損失、
すなわち
η=100%−q−q−q
式中:
=煙道ガスの温度に関連した損失(すなわち煙突を通して逃げる熱);
=CO/CO比(燃焼の質を考慮に入れる)及びNO,C損失(これらの粒子は、次のヨーロッパ規格が発効するとき、理論的には2011年に、測定されるであろう)に関連した損失;もし燃焼が完全であれば、q=0;
=灰での損失、一定でありかつ無視可能(約0.5%)。
【0004】
従って、出力を最適化するために、q及びqを、特にqを最小にすることが必要である。
【0005】
最大加熱速度では、損失qは最も高く、従って出力は最小であり、おそらく非常に特別な条件下に決定される装置の公称出力より小さい。
【0006】
逆に、待機加熱速度では、煙道ガス温度は最も低く、出力は最も高いが、煙道ガスの露点(60〜70℃)以上にとどまるように注意しなければならない、そうでなければ、すすの蓄積と共に凝縮が起こる。
【0007】
選択された加熱速度にかかわらず装置の出力をおそらく自動的に最適化するために、解決されるべき技術問題は、特に高加熱速度で、制御された態様で煙道ガスまたは燃焼ガスの温度を低下することである。
【0008】
また、我々は、煙道ガスが、最大流動経路を使用する加熱本体から、おそらく対流型シースと組み合わせた、好適な設計の排出導管を通して、排出されるような熱回収木材ストーブ(例えば、文献BE903620A参照)を知っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の欠点を除くことを目的とする。
【0010】
特に、本発明は、各加熱速度に対する燃焼を最適化することを目的とする。
【0011】
本発明はまた、すすの蓄積をもたらしかつ煙突火災に導きうる煙道ライニングのいかなるタール汚染も避けるために意図された安全性を確保することを目的とする。
【0012】
本発明はまた、煙突の高さまたはタイプにかかわらず、そして変動する大気状態の場合であっても燃焼を最適化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一目的は、燃焼室と第一煙道ガス排出導管を含む固体燃料加熱装置に関し、その加熱装置が:
− 燃焼室の外側にかつ燃焼室と前記第一導管との間の煙道ガス経路上に設けられ、かつその垂直部にそれぞれ異なる高さ(h1,h2,h3,h4など)に配置された複数の制御された連絡弁を備えた、第二煙道ガス排出導管を規定する二重壁、ただし第二煙道ガス排出導管は他の弁を閉じている間に第二導管の開放入口弁の選択に依存する量により煙道ガスの流動経路を延ばすように二重壁の下方部の開口を介して適合させられている;
− 煙道ガスの温度をその露点以上に維持しながら煙道ガスの温度を最小にするために煙道ガスの流動経路の長さを調整するように前記第一導管に設けられた温度探針により測定された煙道ガスの温度に基づいて弁のそれぞれに対し開閉位置を選択するために適合された調整手段;
を含むことを特徴とする。
【0014】
例示的実施態様によれば、本発明による加熱装置はまた、次の特徴の一つ以上を含む:
− 第一排出導管は垂直煙突または水平もしくは後方取り入れ管である;
− 温度探針は、大気中に出る煙突の端部からある距離に位置されている;
− 温度探針は煙突の上部から約30cm下に設けられる;
− 二重壁は、各高さh1,h2,h3,h4などに、燃焼室の二つの側壁に接近して位置される二つの弁を含む;
− 装置は、第一導管中への煙道ガスの取り入れのための直結通風弁をさらに含む;
− 調整手段は、前記温度探針、マイクロ制御器、及び各弁を開閉するためのモーターの形の作動器を含む;
− 制御器は開ループまたは閉ループ制御器、好ましくはPIDタイプのものである;
− 燃焼室の上部に導く一次または二次空気加熱導管は、燃焼室と第二煙道ガス排出導管の間に位置されている。
【0015】
本発明の第二目的は、上述のような加熱装置を制御するための方法に関し、操作時に前記調整手段が:
− 装置の最大加熱レベルでは、最も高いh1の弁が開かれ、他の弁が閉じられるように;
− 装置の中間加熱レベルでは、最も高いh1の弁が閉じられ、少なくとも一つのより低い高さのh2,h3,h4などの弁が開かれ、他の弁が閉じられるように;
− 装置の最小加熱速度では、または装置が待機状態であるときには、最も小さい弁を除いて全ての弁が閉じられるか、または直結通風弁を除いて全ての弁が閉じられ、煙道ガスが第一導管中に通過することを直接可能にするように;
実施されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明による制御された加熱装置の一実施態様の一例の背面右からの透視断面図を示す。
【0017】
【図2】図2は、図1の装置の右断面図を示す。
【0018】
【図3】図3は、図1の装置の背面透視図を概略的に示す。
【0019】
【図4】図4は、最大加熱速度で示された煙道ガスの経路を持つ、図1の装置の右断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明で実施された原理は、燃焼室と煙突内への取り入れ口の間の煙道ガスの流動経路を延ばすことによって煙道ガス温度を正確に減少することである。実際に、流動経路のこの延長は、ガスのより大きな膨張及び/または壁との熱のより良い交換、従って煙道ガスの冷却を可能にする。本発明によれば、採用された加熱速度にかかわらず、その出力を最適化するために加熱装置の異なる加熱レベルに煙道ガスの流動経路を絶えず適合させることが望ましい。
【0021】
本発明によれば、その目的のために、加熱装置は図1及び2に示されたように提案され、そこでは燃焼室1は、複数の弁(例えばh1>h2>h3>h4のように異なるそれぞれの高さh1,h2,h3及びh4に位置された少なくとも四つの弁11,12,13,14)を使用して燃焼室と連通することができる二重壁2Aを備えている。当業者にとって、加熱装置の通風を制御するために適したいかなる通風調節装置または弁システムも本発明の文脈において使用されることができることは理解される。本発明は、有利には、煙突の上方部(図3の8)に位置された温度センサ(7)を含む開ループまたは閉ループ制御器、及び測定された煙道ガス温度値及び参照温度に従って異なる前述の弁を開閉する作動器(図示せず)を使用して自動的に実施される。各弁は、有線接続によりまたは無線周波数により制御される小さなモーターに固定される。
【0022】
本発明による方法は、次いで異なる加熱速度を別個に試験することにより適用されるだろう。
【0023】
最大加熱速度
煙道ガスの温度は、上に示されたように、この加熱速度で最も高く、高さh1に位置される弁11は、燃焼ガス3を有意な距離(すなわち2x+a+h(図3))に渡って循環させ、それらを冷却させ、従ってより良い出力を得るために開かれる。弁12,13及び14は(図2のように)閉じられたままである。しかし、煙道ガスを露点(約65℃)以下に冷却しないことを確保することが必要である。煙突の高さhが一定でないと仮定すれば、煙突6の上部の煙道ガス温度センサの位置を、例えば上部8を越えて30cmに設けることが必要であることは注目されるであろう。センサのこの位置は、本発明をいかなる煙突の高さにも適合可能にし、変動可能な大気状態を考慮に入れることを可能にする。
【0024】
図4は、最大加熱速度の場合の煙道ガスの流動経路(弁11開)を示す。煙道ガスは、大気中に後部4または上部4Aの通路を通して(煙突に向けて)逃げる。
【0025】
煙道ガスの「迷路状」流動経路は、簡単な構造を持つ当業者に知られているいかなる手段を使用しても、例えばストーブの下方部に開口2Bを残す「L」形状に折りたたまれたシート状金属を使用して得られることができる。
【0026】
中間加熱速度
煙道ガスの温度は最大加熱速度に対してより低いので、もし煙道ガスを冷却することを意図された経路が最大加熱速度におけるのと同じままであるなら、凝縮の危険があるだろう。従って、前述の弁の開閉を制御することによってそれらの経路を短くすることが必要である。具体的には、最大加熱速度から中間加熱速度になり、煙突の上部で測定された煙道ガスの温度が露点に接近するとき、弁11を閉じかつ弁12を開くように(弁13と14は閉じたままである)指令が送られ、それは冷却距離をyだけ減少するであろう(すなわち2x+a+hから2x+a+h−yになる、図3)。煙道ガスの温度はそのとき露点からさらに遠い値に増加するだろう。
【0027】
最小及び待機加熱速度
これらの加熱速度では、煙道ガスの温度は再び露点に近づく(またはそれ以下に下がる)危険があり、弁13(14など)は開かれ(弁11,12は閉じられる)、さらに煙道ガスにより移動される距離を減少し、煙道ガス温度を高めるだろう、等々である。もしこれが十分でないなら、燃焼ガスを煙突内に直接通過させる直結通風弁5(それは通常、他の加熱速度では閉じられている)が最後に開かれ、露点から離れるように動くだろう。
【0028】
例えばWoodbox(登録商標)タイプ(EP特許1563228B1)の予熱された空気を持つ高出力加熱装置の場合には、本発明による装置の「二重壁」は三重壁となり、それは来入する空気の加熱経路と熱交換し、空気はまた、燃焼室により加熱される。二つの熱い壁間の加熱経路のこの「サンドイッチ」は、その場合、燃焼室内の予熱された空気の取り入れ温度を増加し、かつ損失qを減少することを可能にする。なぜなら予熱された空気を供給されるときに燃焼が改善されるからである。しかし、損失qもまた増加するかもしれず、それは、本発明による制御器を使用して再調整されなければならない。
【0029】
上部調理テーブルを備えたWoodbox(登録商標)タイプの装置の場合でもなお、調理を困難にする絶縁素子を構成した上部加熱二重ジャケットに注目されなければならない。本発明による装置は、調理テーブルが煙道ガスのための熱い空気排出導管と接触されることができるので調理を再度可能にする。
【0030】
シミュレーションによれば、煙突出口での約80℃の温度に対して300℃またはさらには350℃に予熱された空気を用いると、出力は、本発明による燃焼制御器を持つ高出力木材丸太ストーブに対して、85〜90%であり、CO/CO比は約0.1%であり、それは性能を高め、加熱装置の汚染を減らす(例えばフランス、オーストリア等での「グリーンフレーム」ラベル)ために有効な規格またはエコラベルのほとんどに従っていることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(1)と第一煙道ガス排出導管(6)を含む固体燃料加熱装置において、その加熱装置が:
− 燃焼室の外側にかつ燃焼室(1)と前記第一導管(6)との間の煙道ガス経路上に設けられ、かつその垂直部にそれぞれ異なる高さ(h1,h2,h3,h4など)に配置された複数の制御された連絡弁(11,12,13,14など)を備えた、第二煙道ガス排出導管(2)を規定する二重壁(2A)、ただし第二煙道ガス排出導管(2)は、他の弁を閉じている間に第二導管(2)の開放入口弁の選択に依存する量により煙道ガスの流動経路を延ばすように二重壁(2A)の下方部の開口(2B)を介して適合させられている;
− 煙道ガスの温度をその露点以上に維持しながら煙道ガスの温度を最小にするために煙道ガスの流動経路(3)の長さを調整するように前記第一導管(6)に設けられた温度探針(7)により測定された煙道ガスの温度に基づいて弁(11,12,13,14など)のそれぞれに対し開閉位置を選択するために適合された調整手段;
を含むことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
第一排出導管(6)が垂直煙突または水平もしくは後方取り入れ管であることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
温度探針(7)が、大気中に出る煙突(8)の端部からある距離に位置されていることを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
温度探針(7)が煙突(8)の上部から約30cm下に設けられることを特徴とする請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
二重壁(2A)が、各高さh1,h2,h3,h4などに、燃焼室(1)の二つの側壁に接近して位置される二つの弁(11,12,13,14など)を含むことを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項6】
第一導管(6)中への煙道ガスの取り入れのための直結通風弁(5)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項7】
調整手段が、前記温度探針(7)、マイクロ制御器、及び各弁を開閉するためのモーターの形の作動器を含むことを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項8】
制御器が開ループまたは閉ループ制御器、好ましくはPIDタイプのものであることを特徴とする請求項7に記載の加熱装置。
【請求項9】
燃焼室(1)の上部(10)に導く一次または二次空気加熱導管(9)が、燃焼室(1)と第二煙道ガス排出導管(2)の間に位置されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項10】
請求項1に記載の加熱装置を制御するための方法において、操作時に、前記調整手段が:
− 装置の最大加熱レベルでは、最も高いh1の弁(11)が開かれ、他の弁(12,13,14など)が閉じられるように;
− 装置の中間加熱レベルでは、最も高いh1の弁(11)が閉じられ、少なくとも一つのより低い高さのh2,h3,h4などの弁が開かれ、他の弁が閉じられるように;
− 装置の最小加熱速度では、または装置が待機状態であるときには、最も小さい弁を除いて全ての弁が閉じられるか、または直結通風弁を除いて全ての弁(11,12,13,14など)が閉じられ、煙道ガスが第一導管(6)中に通過することを直接可能にするように;
実施されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−516594(P2013−516594A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547472(P2012−547472)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069279
【国際公開番号】WO2011/082936
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512171870)
【Fターム(参考)】