説明

燃焼器及びガスタービン

【課題】二重スワラー燃焼器等の燃焼器において、スワラーの断面内周方向に回転しながら発信する燃焼振動を低減できる燃焼器を提供する。
【解決手段】周方向に内側ベーン23及び燃料供給部22を各々均等に配列した内側スワラー20を内筒11の内部に備え、燃料供給状態が内側スワラー20の断面内周方向に略均一となるように構成されている燃焼器において、燃料供給状態を断面内周方向の一部で予め不均一な設定にするための燃料不均一化部Fcを設け、該燃料不均一化部Fcは、燃料供給部22の一部に設置された燃料供給特性の異なる特性変更燃料供給孔である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼器及びこれを備えたガスタービンに係り、特に、ガスタービン燃焼器の燃焼振動を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、圧縮機と、燃焼器(ガスタービン燃焼器)と、タービンとを主な構成要素とする装置である。
圧縮機は空気を取り込んで圧縮し、高圧の圧縮空気を吐出する。圧縮機から吐出された圧縮空気は、燃焼用空気として燃焼器に取り入れられ、燃焼器に供給された燃料とともに燃焼して高温の燃焼ガスとなる。この燃焼ガスはタービンに取り入れられ、動翼及び静翼間を燃焼ガスが流れることによりタービンを駆動する。
このようなガスタービンにおいては、燃料が燃焼される際、燃焼器内に燃焼振動を発生することがある。ガスタービンプラントを安定して運転するためには、燃焼器の燃焼振動を効果的に抑制することが望まれる。
【0003】
図8に示す二重スワラー燃焼器(以下、「燃焼器」と省略する)10は、内筒11の内部に配置された内側スワラー20及び外側スワラー30を備えているガスタービン燃焼器である。内側スワラー20及び外側スワラー30は、内筒11の軸中心と同軸に形成された二重のリング状断面を有する空気流路であり、燃料を燃焼させる燃焼用空気として、圧縮機から供給される圧縮空気を流す流路となる。なお、図中の符号12は、尾筒13内に形成された燃焼室である。
内側スワラー20及び外側スワラー30の内部には、多数の燃料噴出孔21,31を穿設した燃料供給部22,32が設置され、さらにその下流側には、多数のスワール用ベーン(以下、「ベーン」と省略する)23,33が周方向に配列されている。
【0004】
このように構成された燃焼器10は、内側スワラー20内のベーン23及び外側スワラー30内のベーン33が各々周方向に同形状であり、従って、燃焼器10の燃料濃度(発熱の大小)や燃料混合度は断面内周方向において均一になる。このように、燃料濃度及び燃料混合度のような燃料供給状態の均一化は、燃焼ガス中の窒素酸化物を低減するには有効である。
しかし、燃料供給状態が均一化された内側スワラー20及び外側スワラー30の内部には、動的な下流の影響を受けて局所的かつ動的な高熱源Hを生じ、この高熱源Hに起因する燃焼振動の発生が懸念される。この燃焼振動は、燃焼器10の騒音や高サイクル疲労による損傷を引き起こす原因になるため、燃焼振動を低減する対策が必要となる。
【0005】
ガスタービン燃焼器の燃焼振動については、下記のような先行技術がある。
特許文献1に開示されたガスタービン燃焼器は、燃料流路に狭部を設けることにより、下流側から伝播する圧力変動の影響低減に関するものであり、燃焼器の断面内周方向における燃焼振動の低減とは異なるものである。
特許文献2の燃焼器は、マルチ予混合燃焼器に多孔板を設置する燃焼振動対策を開示したものであり、二重スワラー燃焼器に関するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3494753号公報
【特許文献2】特開2008−180445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、燃焼器10の内側スワラー20及び外側スワラー30の内部においては、たとえば図8に示すように、動的な燃焼室12内の影響を受けて局所的かつ動的な高熱源Hを生じ、この高熱源Hの影響を受けて燃焼振動が発生する。
この燃焼振動には、内側スワラー20及び外側スワラー30の断面内を周方向に回転しながら発信する振動モード(比較的高サイクル)も確認されており、たとえば図8に示すように、断面内周方向に正圧(+)及び負圧(−)が交互に生じて移動する2次や4次の振動モードがある。
【0008】
上述した燃焼振動は、ガスタービン燃焼器の騒音や高サイクル疲労による損傷を引き起こす原因になるため、燃焼振動を低減する対策を施したガスタービンの燃焼器、及びこの燃焼器を備えたガスタービンの開発が望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とする所は、二重スワラー燃焼器等の燃焼器において、スワラーの断面内周方向に回転しながら発信する燃焼振動を低減できる燃焼器、及びこの燃焼器を備えたガスタービンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る燃焼器は、周方向にスワール用ベーン及び燃料供給部を各々均等に配列したスワラーを内筒の内部に備え、燃料供給状態が前記スワラーの断面内周方向に略均一となるように構成されている燃焼器において、前記燃料供給状態を前記断面内周方向の一部で予め不均一な設定にするための燃料不均一化部を設け、該燃料不均一化部は、前記燃料供給部の一部に設置された燃料供給特性の異なる燃料供給特性変更部であることを特徴とするものである。
【0010】
このような燃焼器によれば、燃料供給状態を断面内周方向の一部で予め不均一な設定にするための燃料不均一化部を設け、該燃料不均一化部を、燃料供給部の一部に設置された燃料供給特性の異なる燃料供給特性変更部としたので、断面内周方向における燃料供給状態(燃料濃度や燃料混合度)の分布について、一部を不均一にした部分を意図的に形成することができる。このため、動的な下流の影響を受けて、断面内周方向の燃焼振動を引き起こす原因と考えられる局所的かつ動的な高熱源Hが生じることを防止または抑制できるようになる。
【0011】
特に、燃料不均一化部を燃料供給特性変更部としたので、断面内周方向において周囲と異なる燃料供給状態の領域を形成することができる。この場合の燃料供給特性変更部は、たとえば燃料供給部に対して、周方向断面内で燃料噴出孔の数、径及び噴射方向のうち、少なくとも1つが異なる部分を設けたものである。すなわち、周方向断面方向の燃料供給状態については、燃料供給量の増減により周囲と異なる領域を形成することができる。
【0012】
上記の発明において、前記燃料不均一化部は、前記断面内周方向に素数の奇数個を略均等に配置されていることが好ましく、これにより、燃焼器断面内の燃料供給状態を一定のモードにして燃焼のモードが決定されるので、圧力波が重なりにくくなって断面内周方向の振動モードを軽減することができる。
【0013】
上記の発明において、前記スワラーが内側スワラー及び外側スワラーを同軸に配置した二重スワラーとされ、前記燃料不均一化部の周方向位置を前記内側スワラー及び前記外側スワラーでずらすことが好ましく、これにより、内側及び外側のスワラーの下流で生じた異なるモードの圧力波が重なることにより、振動モードが増幅されることを防止できる。
【0014】
本発明のガスタービンは、空気を導入して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から供給される空気で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する請求項1から3のいずれかに記載の燃焼器と、前記燃焼器から燃焼ガスの供給を受けるタービンとを具備して構成したことを特徴とするものである。
【0015】
このような本発明のガスタービンによれば、圧縮機から供給される空気で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する請求項1から3のいずれかに記載の燃焼器を備えているので、燃焼器においては、断面内周方向において燃料供給状態の分布を不均一にした部分を意図的に形成する。この結果、ガスタービンの燃焼器においては、断面内周方向の燃焼振動を引き起こす原因と考えられる局所的かつ動的な高熱源Hの発生を防止または抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明によれば、二重スワラー燃焼器等の燃焼器において、スワラーの断面内周方向に回転しながら発信する燃焼振動を低減することが可能になる。すなわち、燃焼器の断面内周方向において、一部に燃料濃度や燃料混合度を不均一にした部分を意図的に設けることにより、断面内周方向の燃焼モードを固定し、回転振動する高サイクルの燃焼振動を低減することができる。この結果、燃焼器及びこの燃焼器を備えたガスタービンにおいては、燃焼振動に起因する騒音や高サイクル疲労損傷等を抑制または防止できるという顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る燃焼器の参考例を示す周方向断面図であり、(a)は一部のベーン高さを低くして燃料不均一化部とした構成例を示す図、(b)は燃料濃度の予想モード概念図である。
【図2】本発明に係る燃焼器の一例として、二重スワラー燃焼器の要部を示す軸方向断面図である。
【図3】図1に示す燃焼器の参考例(第1変形例)を示す図で、(a)は燃料不均一化部としてベーン形状を変更した例を示す説明図、(b)は燃焼器の周方向断面図である。
【図4】本発明に係る燃焼器の一実施形態を示す図で、燃料不均一化部として、燃料供給部の一部で燃料供給特性を異ならせた構成例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る燃焼器の一実施形態として、図5に示す燃焼器の変形例を示す図であり、燃料供給部の一部において燃料噴射角度を異ならせた構成例を示した説明図である。
【図6】図1に示す燃焼器の参考例(第2変形例)を示す図で、燃料不均一化部として、流路抵抗変更部となるラティスを設置した構成例を示す説明図である。
【図7】図1に示す燃焼器の参考例(第3変形例)を示す図で、燃料不均一化部として、流路抵抗可変部となるベローズ加工を施した構成例を示す説明図である。
【図8】従来の二重スワラー燃焼器について、その構成例及び課題を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るガスタービンの燃焼器及びガスタービンの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示す二重スワラー燃焼器(以下、「燃焼器」と省略する)10は、内筒11の内部に配置された内側スワラー20及び外側スワラー30を備えている燃焼器である。この燃焼器10は、内筒11に連結されて燃焼室12を形成する尾筒13を備えている。
【0019】
この燃焼器10は、図示しない圧縮機やタービンとともに、ガスタービンの主要な構成要素となる。
すなわち、ガスタービンにおいては、圧縮機が空気を取り込んで圧縮し、高圧の圧縮空気を燃焼用空気として燃焼器10に供給する。燃焼器10では、この圧縮空気を用いて燃料を燃焼させ、高温の燃焼ガスを生成してタービンに供給する。この燃焼ガスは、タービン内の動翼及び静翼間を流れることによりタービンを駆動するので、軸出力を得ることができる。
【0020】
燃焼器10の内側スワラー20及び外側スワラー30は、内筒11の軸中心と同軸に形成された二重のリング状断面を有する空気流路であり、燃料を燃焼させる燃焼用空気として、圧縮機から供給される圧縮空気を流す流路となる。
内側スワラー20及び外側スワラー30の内部には、多数の燃料噴出孔21,31を穿設した燃料供給部22,32が設置されている。通常、内側スワラー20がリッチ燃焼火炎を形成し、外側スワラー30がリーン燃焼火炎を形成するように、それぞれのスワラー毎に最適な燃料濃度が定められている。なお、内側スワラー20及び外側スワラー30の燃料濃度は、空気濃度(空気量)及び燃料濃度(燃料供給量)によって規定される。
【0021】
燃料供給部22,32の下流側には、すなわち、内側スワラー20及び外側スワラー30内において燃料供給部22,32より燃焼室12側となる位置には、多数のスワール用ベーン(以下、「ベーン」と省略する)が周方向に配列されている。ここで、内側スワラー20内に設置されたベーンを内側ベーン23と呼び、外側スワラー30内に設置されたベーンを外側ベーン33と呼ぶ。
そして、周方向にベーン23,33及び燃料供給部22,32を各々均等に配列した内側スワラー20及び外側スワラー30を備え、燃料濃度がスワラーの断面内周方向に略均一となるように設定された二重スワラーの燃焼器10に対し、本発明では、燃料供給状態を断面内周方向の一部で予め不均一な設定にするための燃料不均一化部を設けてある。
【0022】
図1に示す参考例の燃料不均一化部Faは、内側スワラー20に設置されたスワール用ベーンの一部について、ベーン高さHを他の内側ベーン23より低くした異形状ベーン23A、すなわち、半径方向の長さを短くした異形状ベーン23Aを採用している。
このような異形状ベーン23Aは、ベーン高さHが低くなった分だけ流路断面積を増した空気流路を確保できるので、燃焼器10の断面内周方向においては、特に内側スワラー20の断面内周方向においては、空気の流れに対して部分的に圧力損失を減少させた領域(流路)が形成される。このため、異形状ベーン23Aを通過して流れる空気の流量は、通常高さとした内側ベーン23が配列されている周辺の領域(流路)より増加するので、燃料濃度や燃料混合度のような燃料供給状態は、異形状ベーン23Aが存在する位置の周辺で空気の割合が増すなどして、断面内周方向に不均一となる。
【0023】
上述した燃料不均一化部Faは、内側ベーン23の断面内周方向において、たとえば図1(a)に示す3箇所のように、素数の奇数個(3,5,7・・・)を略均等に配置することが望ましい。このような配置は、燃焼器10の断面内において、燃料供給状態を一定のモードにして燃焼のモードが決定されることから、圧力波が重なりにくい配置としたものであり、従って、断面内周方向の振動モードを軽減することができる。
また、上記の説明では、燃料不均一化部Faを内側ベーン23に適用しているが、外側ベーン33に適用してもよい。
【0024】
また、上述した燃料不均一化部Faは、たとえば図1(b)に示すように、燃焼器10が内側スワラー20及び外側スワラー30を同軸に配置した二重スワラーである場合、内側スワラー20の燃料不均一化部Fiと、外側スワラー30の燃料不均一化部Foとについて、周方向位置をずらすことが好ましい。これは、内側スワラー20及び外側スワラー30の圧力波が重ならないようにずらしたものであり、圧力波が重なった場合に生じる振動モードの増幅を防止したものである。なお、図示の例では、各々3箇所の燃料不均一化部Fi,Foを設けて周方向に60度程度ずらした配置を採用しているが、これに限定されることはない。
【0025】
図3は、上述した参考例の第1変形例を示しており、燃料不均一化部Fbとなる一部の内側ベーン23及び/または外側ベーン33について、内側の支柱を残してベーン幅を小さくしたベーン形状の変更例である。この変形例では、図3(a)の紙面左側に示す通常のベーン形状を有する内側ベーン23または外側ベーン33から、ベーン幅Wの一部を除去した異形状ベーンである内側ベーン23′または外側ベーン33′に形状変更することにより、部分的に剥離渦を発生させ流路の圧力損失を増加させている。こうして圧力損失が増加した部分では、空気流量の減少により周囲と燃料濃度等の燃料供給状態に不均一が生じることとなる。
【0026】
このような燃料不均一化部Fbについても、たとえば図3(b)に示す燃焼器10Aのように、断面内周方向に素数の奇数個を略均等に配置するとともに、二重スワラーの場合には、内側スワラー20及び外側スワラー30の燃料不均一化部Fi,Foについて、周方向へ位置をずらして配置することが望ましい。
【0027】
図4は、本発明に係る燃焼器の一実施形態を示しており、本実施形態の燃焼器10Bでは、燃料不均一化部Fcとして、燃料供給部22,32の一部で燃料供給特性を異ならせた構成例が示されている。すなわち、燃料不均一化部Fcは、断面内周方向において、燃料供給部22,32の一部に燃料供給特性の異なる燃料供給特性変更部を設けたものである。
【0028】
この場合の燃料供給特性変更部には、たとえば燃料噴出孔21,31の径や数を部分的に変更し、燃料供給部22,32から供給される燃料噴射量を断面内周方向において異なるように設定したものがある。
あるいは、本実施形態に係る変形例として図5に示すように、燃料噴出孔21,31の一部である特性変更燃料供給孔21A,31Aにおいて、燃料を流出させる方向(燃料噴射角度)が適宜異なるように設定したものでもよい。
すなわち、燃料供給特性変更部としては、燃料供給部22,32において、周方向断面内で燃料噴出孔21,31の数、径及び噴射方向のうち、少なくとも1つが異なる部分を設ければよい。
【0029】
このような燃料供給特性変更部を設けると、一部の領域で燃料の供給量や供給方向等が異なるため、燃料供給量の増減により燃料供給状態が周囲と異なる領域を形成できる。
また、上述した燃料不均一化部Fcについても、たとえば図4に示す燃焼器10Bのように、断面内周方向に素数の奇数個を略均等に配置するとともに、二重スワラーの場合には、内側スワラー20及び外側スワラー30の燃料不均一化部Fi,Foについて、周方向へ位置をずらして配置することが望ましい。
【0030】
図6に示す第2変形例(参考例)の燃焼器10C及び図7に示す第3変形例(参考例)の燃焼器10Dは、内側スワラー20及び外側スワラー30の少なくとも一方に、燃料不均一化部として流路抵抗変更部を設けたものである。この流路抵抗変更部は、上述した燃料不均一化部Faなどと同様に、断面内周方向の一部にのみ設けられている。
【0031】
図6に示す第2変形例では、内側スワラー20の空気流路内において、燃料供給部22の下流に、燃料流路抵抗変更部としてラティス40が設置されている。このラティス40は、流路内に設置されて流路抵抗を増す微小間隔の格子状障害物である。そして、ラティス40を通過した流れは、微小な渦を発生させて燃料と空気との混合を促進するので、ラティス40周辺の燃料濃度や燃料混合度は周囲と異なる不均一なものとなる。すなわち、このようなラティス40を設けることにより、断面内周方向の一部において、微小な渦を形成するなどして意図的に流れを乱すことができるので、周囲と異なる燃料供給状態の領域を形成することができる。
【0032】
図7に示す第3変形例では、内側スワラー20の空気流路内において、燃料供給部22から内側ベーン23まで流路内壁面適所に、流路抵抗可変部となるベローズ(蛇腹)加工部50を設けてある。このベローズ加工部50は、内側スワラー20の流路内壁面にベローズ加工を施して凹凸を設けたものであり、流路抵抗を増すことができる。このため、ベローズ加工部50の凹凸壁面に渦を発生させ、燃料と空気との混合を促進することができるので、ベローズ加工部50周辺の燃料濃度や燃料混合度は周囲と異なる不均一なものとなる。すなわち、断面内周方向の一部において、渦を形成するなどして意図的に流れを乱すことができるので、周囲と異なる燃料供給状態の領域を形成することができる。
なお、流路壁面に凹凸を設けて流路抵抗可変部とする構成は、上述したベローズ加工部50に限定されることはなく、たとえばプレス加工や他部材貼り付け等により形成した凹凸壁面など、周囲と流路抵抗が異なる壁面や渦を形成できる壁面であればよい。
【0033】
また、図6及び図7の構成例では、内側スワラー20にラティス40やベローズ加工部50を設けてあるが、このような燃料流路抵抗変更部については、外側スワラー30のみに設置してもよいし、あるいは、内側スワラー20及び外側スワラー30の両方に設置してもよい。
また、燃料流路可変抵抗部を採用した燃料不均一化部についても、上述した実施形態や各変形例と同様に、断面内周方向に素数の奇数個を略均等に配置するとともに、二重スワラーの場合には、内側スワラー20及び外側スワラー30の燃料不均一化部を周方向へ位置をずらして配置することが望ましい。
【0034】
このように、本発明及び各参考例の燃焼器によれば、燃料供給状態を断面内周方向の一部で予め不均一な設定にするための燃料不均一化部を設けたので、断面内周方向における燃料供給状態(燃料濃度や燃料混合度)の分布について、一部が不均一となる部分を意図的に形成することができる。このため、動的な下流の影響を受けて、断面内周方向の燃焼振動を引き起こす原因と考えられる局所的かつ動的な高熱源Hが生じることを防止または抑制できるようになる。
【0035】
従って、上述した本発明及び各参考例の燃焼器においては、内側スワラー20及び/または外側スワラー30の断面内周方向に回転しながら発信する燃焼振動を低減することが可能になる。すなわち、燃焼器の断面内周方向において、一部に燃料濃度や燃料混合度を不均一にした燃料供給状態が異なる部分を意図的に設けることにより、断面内周方向の燃焼モードを固定し、回転振動する高サイクルの燃焼振動を低減することができる。この結果、燃焼器及びこの燃焼器を備えたガスタービンにおいては、燃焼振動に起因する騒音や高サイクル疲労損傷等を抑制または防止できるという顕著な効果が得られる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、たとえば実施形態で説明した二重スワラーの燃焼器に限定されないなど、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0036】
10,10A〜10D 二重スワラー燃焼器
11 内筒
20 内側スワラー
21,31 燃料噴出孔
21A,31A 特性変更燃料供給孔
22,32 燃料供給部
23 内側ベーン
23A 異形状ベーン
30 外側スワラー
33 外側ベーン
40 ラティス
50 ベローズ加工部
Fa,Fb,Fc 燃料不均一化部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向にスワール用ベーン及び燃料供給部を各々均等に配列したスワラーを内筒の内部に備え、燃料供給状態が前記スワラーの断面内周方向に略均一となるように構成されている燃焼器において、
前記燃料供給状態を前記断面内周方向の一部で予め不均一な設定にするための燃料不均一化部を設け、該燃料不均一化部は、前記燃料供給部の一部に設置された燃料供給特性の異なる燃料供給特性変更部であることを特徴とする燃焼器。
【請求項2】
前記燃料不均一化部は、前記断面内周方向に素数の奇数個を略均等に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼器。
【請求項3】
前記スワラーが内側スワラー及び外側スワラーを同軸に配置した二重スワラーとされ、前記燃料不均一化部の周方向位置を前記内側スワラー及び前記外側スワラーでずらしたことを特徴とする請求項2に記載の燃焼器。
【請求項4】
空気を導入して圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から供給される空気で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する請求項1から3のいずれかに記載の燃焼器と、前記燃焼器から燃焼ガスの供給を受けるタービンとを具備して構成したことを特徴とするガスタービン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−225647(P2012−225647A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181509(P2012−181509)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【分割の表示】特願2009−42659(P2009−42659)の分割
【原出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)