説明

燃焼方法

燃料、燃焼用剤および成分B)、硫黄または硫黄含有化合物を、以下の量、すなわち成分B)中に存在する硫黄の量 + 燃料中に含まれる硫黄(成分BII))の量の合計モルB'と、燃料中に含まれるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属(成分AII))の量 + 成分B)中に含まれる塩および/または酸化物の形態にあるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属(成分A))の量の合計モルAIとの間のモル比、B'/AIが0.5以上となる量で、燃焼装置に供給され、燃焼装置が定温型でかつ無炎である燃焼方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃焼装置からの燃焼ガス(fumes)中に含まれる塩基性の灰を実質的に低減するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩基性の灰は、通常、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属の酸化物および/またはそれらの塩、特に酸化物、炭酸塩などから形成されており、周知のように、不燃性の灰の類に属する(ISO 1171)。
【0003】
より具体的には、本発明は、通常、燃料中に含まれる塩基性の灰(アルカリ灰)を、燃焼装置および燃焼装置下流の熱回収プラントの構成材料に対して、燃焼温度で腐食性のない化合物に変換することも可能にする。このため、バイオマスや廃棄物のような低ランクの燃料も、高い熱回収率、および熱エネルギーから電気エネルギーへの高い変換効率を有する、例えばAISI 304H鋼のような通常の材料で作られたプラント内で用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不燃性の灰の存在、すなわち、重い(すなわち不揮発性の)灰およびフライアッシュのいずれの存在も、常に燃焼プラントにおける技術的な問題となっていた。それらは、今日知られているように、化石燃料の分類の要因となっていた。
【0005】
化石燃料、バイオマスおよび廃棄物の灰の塩基性の部分、特にナトリウムおよびカリウム化合物に由来する塩基性の部分は、燃焼の火炎中において、時には部分的に溶融した酸化物や塩の形成の原因となっている。
【0006】
これらの化合物は、燃焼室および熱回収プラントの壁の材質に対して、高い燃焼温度で特に腐食性がある。これらの壁は、通常、クロムおよびジルコニウム、あるいは例えば鋼、合金のような金属素材を任意に含むアルミニウム化合物および/またはケイ素-アルミニウム化合物でできた耐火性物質で被覆されている。
前記のように、塩基性の灰は、耐火性材料を融かすことにより、腐食することができる。耐火性を増すため、従来技術では、薄層状の99.8%Al2O3を用いてシリカの含量を極めて低い値まで低下させるか、または耐火性の組成物に酸化ジルコニウムを添加することが示されてきた。しかしながら、これらの改質された耐火性物質も、塩基性の灰による燃焼装置の壁の腐食問題を解決することはできない。
【0007】
従来技術では、熱回収プラントの壁を製造するのに、AISI 304H鋼、より好ましくはInconelを用いることも知られている。後者は、AISI 304Hと比べて、塩基性の灰による腐食性に対してより耐性があることが分かった。しかしながら、Inconel材料の使用は、プラントの建設費を著しく増大させるという欠点がある。
【0008】
さらに、塩基性の灰を形成する化合物のいくつかは、燃焼温度で蒸気を生成し、燃焼ガスの冷却時に該蒸気が固化するということが見られている。このことが、熱回収プラントの壁の腐食の原因となる。その上、凝固物/沈着物がパイプ内およびプラント内に形成され、それが設備を詰まらせる。例えば塩基性の灰が塩化物の塩の形態でナトリウムまたはカリウムを含むとき、それらは比較的低い温度(<1,100°K)で溶融し、燃焼装置の壁を腐食する。それらはかなりの分圧のため、比較的低い温度(<1,300K)で蒸発し、燃焼装置の下流に位置する設備の表面で再結晶化する。このため、設備は取り返しのつかないほどの損傷を受ける。このことは、産業的観点から著しい欠点となっている。
【0009】
従来技術において、大量の塩基性の灰を含む燃料、例えばある種の低ランクの石炭や原油がよく知られている。しかしながら、燃料は全て何らかの量の塩基性の灰を含んでいる。
【0010】
塩基性の灰の腐食作用を低減させるため、従来技術において、燃焼装置内での低い燃焼温度、通常650℃〜800℃の採用が提案されてきた。その利点は、燃焼ガス中の塩基性の灰の減少にある。このことは上記の欠点を克服する。しかしながら、このような条件下では、ダイオキシン、フラン、多環性芳香族物質などのような有毒の未燃焼化合物が燃焼装置内で大量に生成する。
【0011】
産業界では、燃焼装置内の塩基性の灰による不都合を減らすため、固形燃料、ビチューメンおよび/または炭質頁岩を低温で気化することが提案されている。しかしながら、これらの方法では、気化のための追加プラントが必要となる欠点がある。いずれにしても、塩基性の灰は、気化装置で得られる合成ガス中に含まれる。それゆえ、上記の問題は解決されないで、下方のプラントに移行するだけである。
ホットガスクリーニング法によって、上記の合成ガスを精製できることも知られている。しかしながら、この方法は高価で特殊な設備を必要とする上、耐用年数を極めて短くする。合成ガスを用いるプラント内で採用されている、より低い温度で該クリーニング処理が行われる場合、熱効率が低下するという欠点がある。
【0012】
従来技術では、固体または液体の燃料から塩基性の灰の前駆物質を燃焼前に除去することがさらに提案されている。このことは、著しい数の化合物が燃料中に存在するので、クリーニング方法が著しく複雑となり、産業的観点から実現可能ではない。
今日まで火力発電所では、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属の含量の低い石炭および炭化水素類が用いられてきた。しかしながら、これらの燃料は極めて貴重で高価なものであり、その上、大量に入手できない。
【0013】
燃焼装置の壁および燃焼装置下方の熱回収プラントの表面に対する塩基性の灰の腐食作用を低減および/または実質的に除去するための産業的な方法を利用可能にする必要性が感じられていた。
【0014】
上記の技術的な問題を解決する方法が、本出願人によって、意外にも驚くべきことに見出された。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、燃料、燃焼用剤および成分B)、硫黄または硫黄含有化合物が、以下の量、すなわち、
成分B)中に存在する硫黄の量 + 燃料中に含まれる硫黄(成分BII))の量の合計モルB'と、
供給される燃料中に含まれるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属(成分AII))の量 + 成分B)中に含まれるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属(成分A))の量の合計モルAI
との間のモル比B'/AIが0.5以上となる量で燃焼装置に供給され、
燃焼装置が定温型でかつ無炎である燃焼方法である。
【0016】
燃料中の硫黄(成分BII))は、元素の硫黄の形態または硫黄含有有機および/または無機化合物の形態で存在し得る。
燃料中において、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属(成分AII))は、通常、塩、塩の混合物、酸化物または酸化物の混合物の形態で存在する。
【0017】
本発明の方法において、燃焼装置内の圧力は、好ましくは101.3kPa〜2,000kPaである。
本発明の方法において、燃焼装置内の温度は、好ましくは1,500K(1,223℃)〜2,100K(1,827℃)の間に含まれる。
【0018】
本発明の方法の燃焼用剤としては、好ましくは酸素、例えば高純度の酸素(98.5容量%)が用いられ得る。一般に、タイター88〜92%VSA(vacuum swing absorption)および88〜92%VPSA(vacuum pressure swing absorption)を有する酸素も用いられ得る。好ましくは、酸素タイターの下限は70容量%であり、100%までの残りは、不活性ガスおよび/または窒素で形成される。
本発明の方法における燃焼用剤は、好ましくは燃料との燃焼反応に必要な化学量論量に対して過剰モルで使用される。しかしながら、化学量論量に対して、不足して用いることもできる。
【0019】
塩基性の灰に存在する金属が1価の金属のみであるとき、好ましくは、前記の比B'/AIは0.5より大きく、存在する金属が2価の金属のみであるとき、前記の比B'/AIは少なくとも1であるのが好ましい。
好ましくは、モル比B'/AIは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも1、さらに好ましくは少なくとも2である。
【0020】
上限はいかなる値をとってもよく、例えばモル比10または100もとり得る。しかしながら、硫黄が大量に含まれる場合、過剰の硫黄を除去するためのプラントが燃焼装置の下方で必要となるため、大量の硫黄を用いない方が好ましいことに気づくべきである。
【0021】
燃焼装置の出口における燃焼ガスは、好ましくは1,100K以下の温度、いずれにしても、溶融した灰の濃縮蒸気の凝固温度より低い温度で冷却される。このことは、通常の材料で製造された熱回収プラントおよび回転機械も使用できるため、有利である。
【0022】
燃焼装置への成分B)の添加は、燃料とは別に、好ましくは燃料と混合して、成分B)を供給することにより行うことができる。
成分B)が元素の硫黄であるとき、それは界面活性剤を含む水性分散液として供給され得る。好適な界面活性剤は、アリールアルキル-またはアルキルアリールスルホネート、ポリエトキシレートなどである。
【0023】
用いられる成分B)の量は、燃焼ガス中で生成するSO2の分圧が0.0004 bar(40 Pa)より高く、好ましくは0.003 bar(300 Pa)までとなるような量であるのが好ましい。例えば、硫黄のような成分B)は、燃焼ガス中にSO2として含まれる。
方法の制御は、好ましくは約10秒の特徴的なレスポンス時間を要するコード(制御ソフトウェア)を用いて行われる。この目的のため、燃焼装置の出口における燃焼ガスは、1.5秒のT95レスポンス時間を与えるように改変されたマルチプルガス分析器、NDIR型(Non Dispersive InfraRed)/NDUV(Non Dispersive Ultra Visible)によってモニターされる。
【0024】
成分B)として、硫黄の代わりに、硫黄含有有機および/または無機化合物を用いることができる。例えば亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硫化水素、硫酸塩、メルカプタンなどを用いることができる。
【0025】
さらに、極めて高いB'/AI比、したがって極めて高い量の硫黄を用いたときでも、燃焼装置の壁および燃焼装置の下方の熱回収プラントの壁の腐食が見られないことが、本出願人により意外にも驚くべきことに見出された。
【0026】
本発明の方法において、燃焼装置内の燃料の滞留時間は、0.5秒〜30分以上、好ましくは2秒〜10秒の範囲である。より長い滞留時間も採用できるが、結果に実質的な変化は得られない。
【0027】
前記の条件で操作することによって、燃焼装置から出てくる燃焼ガスが腐食性の塩基性の灰を実質的に含んでいないことを、本出願人は驚くべきことに意外にも見出した。燃焼装置および熱回収プラントの壁が、実質的に影響を受けていないことが分かった。それらは、塩基性の灰によっても、塩基性の灰と燃料中に存在する例えばバナジウムのような他の成分との組合せによっても腐食していない。
実際、本発明の方法によって、塩基性の灰が不活性な化合物に変換され、それらの化合物が燃焼装置の壁の耐火性物質も、燃焼装置の下方のプラントの壁を形成する金属素材、特に銅鉄や合金も腐食しないことが、驚くべきことに意外にも見出された。
本出願人は、燃焼装置の下方プラント、例えば熱回収プラントにおいて、従来技術ではInconelおよびHastelloyのようなニッケル高含量を有する合金が必要とされる操作条件において、例えばAISI 304H鋼のような合金も用い得ることを、驚くべきことに意外にも見出した。このことは、経費を節減できるので極めて有利である。
【0028】
燃料としては、例えば砂糖、動物の飼料、炭素由来のバイオマス、中和反応、高沸点精製留分、ビチューメンおよびオイルシェールからの産業廃棄物、タールサンド、泥炭、使用済み溶剤、ピッチの工程廃棄物、任意にCDR(廃棄物からの燃料)を含んでいてもよい都市廃棄物からの残留物を含む、一般の産業プロセスのスクラップおよび廃棄物が挙げられ得る。石油由来の液体燃料のエマルジョンも挙げられる。前記のように、これらの燃料はいずれも、塩基性の灰を通常、酸化物および/または塩の形態で含む。
【0029】
前記のように、本発明の方法で使われる燃焼装置は、1,500K以上、好ましくは1,700K〜2,100Kの温度で、かつ101.3kPa (1bar)より高い圧力、好ましくは200kPaより高い圧力、より好ましくは600kPa〜2,026kPaの圧力で操作されるから、定温型でかつ無炎である。
【0030】
本発明の方法で使用される定温型の燃焼装置は、本出願人の特許出願WO2004/094, 904に記載されており、この出願は参照としてここに組み込まれる。
燃料が水および/または水蒸気と混合して定温型の燃焼装置中に導入されるとき、該燃焼装置は特許出願WO2005/108, 867に記載されているように作動する。
【0031】
好ましくは、供給される燃焼用剤の酸素はリサイクルされる燃焼ガスと予め混合される。該燃焼ガスの量は一般的に10容量%より多く、好ましくは50容量%より多い。リサイクルされる燃焼ガスは、リサイクルされる燃焼ガスの全容量に対して計算して10容量%より多く、好ましくは20容量%より多く、より好ましくは30容量%より多い量の水蒸気の形態にある水をも含む。
【0032】
供給される燃焼用剤は水蒸気と混合することもでき、該水蒸気は部分的にまたは全体的にリサイクルされる燃焼ガスに置き換え得る。
供給される燃料は、用いられる燃料のタイプに応じた量の水/水蒸気をも含み得る。供給される混合物の低発熱量(lower heating power)(LHV)の値が6,500kJ/kgより大きいという条件で、燃料中の水の割合は、重量%で表して、80%以上であることもできる。
【0033】
燃焼装置の出口におけるガスは、1,100Kより低い最終温度に達するまで、リサイクルされるガスと混合器内で混合することによって冷却される。こうすることにより、アルカリおよびアルカリ金属塩および酸化物の蒸気が凝固する。該燃焼ガスは、水蒸気を生成させるための水が供給される熱交換器に運ばれ得る。熱交換段階におかれた燃焼ガスは、燃焼装置と燃焼装置の出口にある混合器との両方へリサイクルするために、再び圧縮される。
好ましくは、燃焼ガスの最終的な生成量に相当する燃焼ガスの部分は、機械的作用を得るために膨張された後、燃焼ガスの後処理部に送られる。膨張されるべき燃焼ガスは、混合器の出口に通じている。
燃焼ガスには、フライアッシュが実質的に含まれていないので、膨張は膨張タービンを用いて行うことができる。
【0034】
燃焼装置の下部には、溶融した灰のための収集容器が設けられている。灰は次いで例えば水槽内で冷却され、固体ガラス状態で静置沈殿器内に移される。
【0035】
前記のように、本発明の方法において、腐食性の塩基性の灰は、燃焼装置および燃焼装置に接続されたプラントの壁を形成する物質に対し、もはや腐食性のない化学物質に変換される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の実施例は、本発明を非限定的に説明するものである。
【実施例】
【0037】
実施例1
分析手法
金属の分析は、Thermo Electron CorporationのICP-OES装置を用いた誘導プラズマ分光により行われる。
塩基性の灰は、アルカリおよびアルカリ土類金属として測定する。
灰の全量は、慣用の分析手順に従って、600℃で発火後の残渣の重量として測定する。
硫黄または硫酸塩を化学的分析により測定する。
水分は、慣用の分析手順、例えばカール・フィッシャー器具を用いて測定した。
【0038】
実施例2
燃焼装置は、耐火性物質でコーティングされた壁を有する定温型でかつ無炎の5MW燃焼装置であり、1,650℃および400kPaで操作される。用いられる燃焼用剤は92容量%の酸素であり、燃焼装置から出てくる燃焼ガス中の酸素濃度が1〜3容量%となるように、化学量論量に対して過剰に供給される。
【0039】
燃料はオリーブの外皮であり、以下の含量(重量%)の硫黄、灰全体および水分を含有する:
硫黄 0.1
灰全体(600℃での残滓) 5
水分 9
【0040】
灰全体に対する重量%で計算して、金属K、Na、Ca、Mgは以下の量である。
K 18.3
Na 1.1
Ca 12.8
Mg 1.2
【0041】
アルカリおよびアルカリ土類金属は、塩基性の灰を代表している。
アルカリおよびアルカリ土類金属の合計量は、灰全体の33.4重量%を占めている。
灰全体について、硫酸塩を測定した。得られた量は4.7重量%であった。
【0042】
燃焼用剤の酸素は、燃焼装置から出てくる燃焼ガス中の酸素濃度が1〜3容量%になるように、化学量論量に対して過剰量で燃焼装置に供給した。
【0043】
反応装置内で、オリーブの外皮を撹拌下に水と混合して、乾燥オリーブの外皮に対して60重量%の水を含むスラリーを形成した。
粉末状の硫黄およびアルキルアリールスルホン酸ナトリウム界面活性剤により形成される固体混合物を、反応装置内で撹拌下に水に加えて、水分散液を調製した。
【0044】
オリーブの外皮のスラリーを、乾燥オリーブの外皮に基づいて計算して、1,200kg/時間の割合で燃焼装置に供給した。
硫黄の水分散液を、硫黄18kg/時間の量にて、燃焼装置に供給した。
モル比、B'/AIは、1.1である。燃焼装置を480時間稼働させた。
【0045】
8時間ごとに、供給される燃料の灰におけるのと同じ比率および量の金属K、Na、CaおよびMgを含むガラス化したスラグ約550kgを、燃焼装置から排出する。
大気中に放出される燃焼ガスは、3mg/Nm3より少ない量の灰を含んでいることが分かった。
【0046】
燃焼方法の終了時点で、燃焼装置の壁の耐火性物質が腐食していないことが分かった。さらに、燃焼装置下方の熱回収プラントの部分に位置している、AISI 304H材料から作られ、800℃の燃焼ガスおよび570℃の壁温度で操作される蒸気スーパーヒータ内では、壁材の表面変質が見られなかった。
【0047】
実施例3(比較)
硫黄を供給しなかったことを除いて、燃焼装置を実施例2のように操作する。燃焼装置は72時間運転した。
燃焼装置から出てくる燃焼ガス中のSO2の濃度は30 ppvより少なく、これは0.00014 bar、14 Paに相当する。
【0048】
運転期間の終了後、耐火性物質で保護された内壁を有する燃焼装置およびその出口の燃焼ガス管を視覚検査する。高温焼成煉瓦(9重量%のクロム、6重量%のジルコニウムを含む高純度アルミナ)で作られた耐火性材料の表面に腐食が見られた。さらに、燃焼装置から排出されたスラグは、供給された燃料の灰に存在するより高い濃度のクロムとジルコニウムを含んでいる。それゆえ、過剰のクロムおよびジルコニウムは、燃焼装置の耐火性材料の腐食に由来している。
【0049】
実施例4(比較)
実施例2のように燃焼装置を操作する。燃料は、ビスフェノールAを生産している石油化学プラントから生じる廃フェノール性ピッチからなり、溶融炉(melter)によって供給される。上記のピッチは、ナトリウムとして0.8重量%の量で塩基性の灰を含んでおり、硫黄を含んでいない。溶融ピッチを500リットル/時間(ピッチ濃度約0.98 g/cm3)の流速で供給する。2時間運転の後、溶融スラグが、燃焼装置の底から出てきた。プラントを止め、溶融スラグを分析した。溶融スラグは、アルミン酸ナトリウムからなっている。金属分析結果は、以下の通りであった:ナトリウム6重量%、クロム8重量%、ジルコニウム6重量%。アルミニウム/クロム/ジルコニウムの組成は、燃焼装置の耐火性レンガの組成に類似している。それゆえ、燃焼装置の壁の耐火性材料は、燃料に含まれる塩基性の灰によって濾されていた。
【0050】
実施例5(比較)
ナトリウムとして0.4重量%の量で塩基性の灰を含み、硫黄を含まないフェノール性ピッチを用いることを除いて、比較実施例4を繰り返した。
燃焼装置の温度は1,550Kであった。
【0051】
用いた燃焼用剤は90容量%の酸素であり、化学量論量に対して過剰に供給した。5日間プロセスの運転を継続し、アルキルアリールスルホン酸塩界面活性剤を用い、硫黄を水分散液として、5.5 kg/時間の割合で供給した。
モル比B'/AIは2/1である。
【0052】
運転期間中、燃焼装置の底にスラグを得た。それらを分析し、硫酸ナトリウムの形態で燃焼装置内に導入された塩基性の灰を含むことが示された。プラントを止め、燃焼装置を検査した。燃焼装置の壁の耐火性材料は、どのような腐食も示していないことが観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料、燃焼用剤および成分B)、硫黄または硫黄含有化合物が、以下の量、すなわち成分B)中に存在する硫黄の量 + 燃料中に含まれる硫黄の量の合計モルB'と、
燃料中に含まれるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の量 + 成分B)中に含まれるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の量の合計モルAI
との間のモル比B'/AIが0.5以上となる量で、燃焼装置に供給され、
燃焼装置が定温型でかつ無炎である燃焼方法。
【請求項2】
燃料中の硫黄が、元素の硫黄または硫黄含有有機および/または無機化合物の形態で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
燃焼装置内の圧力が101.3kPa〜2,000kPaの値に含まれ、その温度が1,500K〜2,100Kの間に含まれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
燃焼用剤が酸素である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
モル比B'/AIが少なくとも1である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
燃焼装置の出口における燃焼ガスが1,100K以下の温度で冷却される、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
燃焼装置への成分B)の供給が、燃料とは別に、または燃料と混合して、成分B)を供給することにより行われる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
成分B)が、元素の硫黄であり、界面活性剤を含む水分散液と共に燃焼装置に供給される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
成分B)の使用量が、燃焼ガス中で生成するSO2の分圧が40 Pa〜300 Paとなる量である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
燃料の燃焼装置内の滞留時間が、0.5秒〜30分の範囲である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
供給される酸素が、リサイクルされる燃焼ガスと予め混合され、該ガス状混合物中の燃焼ガスの量が10容量%より多く、好ましくは50%より多い、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
リサイクルされる燃焼ガスが水蒸気の形態にある水を含み、その水の量がリサイクルされる燃焼ガスの全容量に対して計算して10容量%より多い、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
燃料が、80重量%までの量の水を含む、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2011−505542(P2011−505542A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536364(P2010−536364)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010096
【国際公開番号】WO2009/071239
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(505394220)
【氏名又は名称原語表記】ITEA S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Pollastri,6,I−40138 Bologna,ITALIA
【Fターム(参考)】