説明

燃焼装置および燃焼制御方法

【課題】流体燃料と空気の混合比率を最適な状態に近づけるように流体燃料に供給する空気量をリアルタイムで調節することができる燃焼装置、及び、燃焼制御方法を提供する。
【解決手段】ノズル1、制御手段2、第一測定手段3、第二測定手段4、及び導出手段5を備える燃焼装置100とする。第一測定手段3で流体燃料の流量を測定すると共に、第二測定手段4でノズル1における空気路12への空気の供給量と相関のある物理量である分岐路41の流量を測定する。この測定した分岐路41の流量からノズル11n近傍において流体燃料と混合される空気の流量の予測値を導出手段5により導出する。そして、この予測値と、第一測定手段3で求めた流体燃料の流量値とに基づいて、空気路12への空気の供給量を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナを使用した燃焼装置、及び、この燃焼装置における燃料と空気の混合比率を最適に調節するための燃焼制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炉、及びボイラなどの熱源機器に、バーナを使用した燃焼装置が利用されている。この燃焼装置は、ガスやオイルなどの流体燃料を燃焼させることで熱源機器に要求される熱エネルギーを発生させる装置である。
【0003】
上記燃焼装置の一例を図5に示す。この燃焼装置300は、バーナ1と、制御手段2と、を備える。バーナ1の構成としては、流体燃料の流路となる燃料路と、燃料路の先端に設けられるノズルと、流体燃料に混合する空気の流路となる空気路と、を備える構成を挙げることができる(特許文献1を参照)。また、制御手段2の構成としては、燃料系統である管路7からバーナ1の燃料路に供給される流体燃料の供給量と、送風機6から接続管路8を介してバーナ1の空気路に供給される空気の供給量と、を制御する構成を挙げることができる。例えば、特許文献2には、これら流体燃料の供給量と空気の供給量をそれぞれ別個に制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−202817号公報
【特許文献2】特許第2779460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の燃焼装置300は、以下の点で改良の余地がある。
【0006】
燃焼装置300に備わる代表的な制御手段2は、流体燃料の供給量の目安となる燃料バルブ7Bの開度と、空気の供給量の目安となる空気ダンパ8Bの開度との相関関係を利用する構成である。例えば、燃料バルブ7Bの開度をα°に設定すれば、そのときの流体燃料の流量はβm/hと予想できるので、そのβに合わせた空気の流量となるように空気ダンパ8Bの開度をγ°にする、といった操作を行う。つまり、この構成は、流体燃料や空気の流量をリアルタイムで測定する構成ではない。そのため、予め求めておいた相関関係と異なる環境で燃焼装置300を使用したときに、流体燃料と空気の混合比率が最適な値とならない虞がある。例えば、相関関係を求めた時期が気温の高い夏場であった場合、燃焼装置300の実使用時が気温の低い冬場であれば、その相関関係を用いて求められた空気の供給量は過剰となる。これは、温度により気体の体積が膨張・収縮するからであり、夏場に比べて冬場の方が空気密度が高いからである。この問題点を解決するには、相関関係の再設定を行うなどすれば良いが、ユーザーにとっては非常に面倒な作業である。
【0007】
上記の問題点を解決するために、図5のAの位置に流体燃料の供給量を監視する流量計を設けると共に、Bの位置に空気の供給量を監視する流量計を設けることも検討されている。この場合、流体燃料と空気の流量をリアルタイムで測定できるので、燃焼装置300の実使用時の気温に左右されずに流体燃料と空気の混合比率を最適に設定できる。しかし、この構成では、流体燃料の流量に比べて空気の流量が非常に大きいため、空気の流量を測定する流量計として非常に大型な流量計を用意する必要がある。燃焼装置の設置状態によってはそのような大型の流量計を設置するスペースを確保できない虞もある。また、大型の流量計は高価で、バーナの価格を上回る場合もあり、製品として成り立たない虞がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、簡易な構成にて、流体燃料と空気の混合比率を最適な状態に近づけるように流体燃料に供給する空気量をリアルタイムで調節することができる燃焼装置および燃焼制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明燃焼装置は、バーナと制御手段とを有する燃焼装置であって、第一測定手段と第二測定手段と導出手段とを備える。バーナは、流体燃料が流通される燃料路、燃料路の先端に設けられるノズル、およびノズルから噴射される流体燃料に空気を供給するために、ノズルの近傍に開口する空気路を有し、ノズルの先端部分で流体燃料を燃焼させた火炎を発生させる部材である。制御手段は、燃料路への流体燃料の供給量、及び、空気路への空気の供給量をそれぞれ個別に制御する手段である。第一測定手段は、燃料路へ供給される流体燃料の流量を測定する手段である。第二測定手段は、空気路内外の圧力に関わる物理量であって、空気路への空気の供給量と相関のある特性値を測定する手段である。導出手段は、第二測定手段の測定結果を用いて、空気路を経てノズル近傍に噴射され、ノズルから噴射される流体燃料と混合される空気の流量の予測値を導出する手段である。そして、上記手段を備える本発明燃焼装置は、第一測定手段により得られた流体燃料の流量値から求められる、最適な燃焼を達成するための空気流量の目標値に、導出手段で得られた空気流量の予測値が近づくように、制御手段により、空気路への空気の供給量を制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の燃焼制御方法は、バーナと制御手段とを備える燃焼装置を用いて、流体燃料を効率的に燃焼させるために、バーナに備わるノズルの近傍における流体燃料と空気の混合比率を制御する制御方法であって、以下のステップを備えることを特徴とする。
ステップ1…バーナに備わる燃料路へ供給される流体燃料の流量を測定する。
ステップ2…バーナに備わる空気路の内外の圧力に関わる物理量であって、空気路への空気の供給量と相関のある特性値を測定する。
ステップ3…ステップ2で測定した特性値の測定結果を用いて、バーナに備わる空気路を経てノズル近傍に噴射され、ノズルから噴射される流体燃料と混合される空気の流量の予測値を導出する。
ステップ4…ステップ1で得られた流体燃料の流量値から求められる、最適な燃焼を達成するための空気流量の目標値に、ステップ3で得られた空気流量の予測値が近づくように、空気路への空気の供給量を変更する。
【0011】
本発明燃焼装置、及び燃焼制御方法によれば、空気路の内外の圧力に関わる物理量であって、空気路への空気の供給量と相関のある特性値をリアルタイムで測定することで、実際に空気路へ供給された後に空気路からノズル近傍に噴射されている空気の流量をリアルタイムで把握することができる。そして、このリアルタイムの空気流量を把握することで、流体燃料の供給量と空気流量の供給量を最適な状態に制御することができ、効率的な燃焼を達成することができる。
【0012】
ここで、本発明燃焼装置の第二測定手段で測定する特性値として、下記に例示する2つの特性値を挙げることができる。そして、それぞれの特性値に応じて第二測定手段の構成が変化する。
【0013】
(1)空気路に連通させた分岐路の流量
空気路に連通させた分岐路の流量を特性値とする本発明燃焼装置は、バーナの空気路に連通して、その空気路へ供給された空気の一部を分岐させる分岐路と、分岐路の中途に設けられ、分岐路における空気の流量を測定する流量計とを有する第二測定手段を備える。そして、この燃焼装置に備わる導出手段は、分岐路に設けた流量計の測定結果を、分岐路における空気の流量と、空気路からノズル近傍に噴射される空気の流量との相関関係に当てはめて、実際に空気路からノズル近傍に噴射される空気の流量の予測値を導出する。
【0014】
バーナの空気路に分岐路を設ければ、空気路の内外の圧力差により空気路から分岐路へ空気の流れが発生する。この分岐路における空気の流量は、バーナの外部からバーナの空気路に導入された空気の流量と密接な相関関係を持つので、分岐路における空気の流量を測定すれば、その測定した流量に基づいて、空気路へ導入された後に空気路からノズル近傍に噴射される空気の流量をかなり正確に予測することができる。また、分岐路の流路断面積は、バーナの空気路の流路断面積に比べて非常に小さいため、分岐路に設ける流量計として小型のものを使用することができる。
【0015】
(2)空気路の内外の圧力差
空気路の内外の圧力差を特性値とする本発明燃焼装置は、バーナに備わる空気路の内部の圧力を測定する第一圧力計と、その空気路の外部の圧力を測定する第二圧力計とを有する第二測定手段を備える。そして、本発明燃焼装置の導出手段は、第一圧力計の測定結果と第二圧力計の測定結果とを用いて、空気路からノズル近傍に噴射される空気の流量の予測値を計算により導出する。
【0016】
バーナに備わる空気路の開口部は、通常、複数の貫通孔を備える板材で封止された、いわゆるオリフィス板となっている。そこで、空気路内の圧力と空気路外の圧力を測定し、それら測定した圧力値をオリフィス流量計の計算式に当てはめることで、空気路へ供給された空気の流量値を算出することができる。算出の際は、第一圧力計と第二圧力計を配置する位置などの種々の要素を加味して、計算式を適宜補正することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明燃焼装置及び燃焼制御方法によれば、簡易な構成で流体燃料と空気の流量をリアルタイムで補正することができるので、流体燃料と空気との混合比率を常に最適な状態とすることができる。その結果、燃焼装置を低燃費で運転できる上、排気ガス中に一酸化炭素などの有害物質が生成することを抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る燃焼装置の概略構成図である。
【図2】実施形態1に係る燃焼装置で使用される分岐路の流量と空気路に導入される空気の流量との相関関係を示すグラフである。
【図3】実施形態1に係る燃焼装置の燃焼制御方法のフローチャートである。
【図4】実施形態2に係る燃焼装置の概略構成図である。
【図5】従来の燃焼装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
[全体構成]
図1に示す本実施形態の燃焼装置100は、流体燃料を燃焼させた火炎で燃焼室9内を加熱する装置である。この燃焼装置100は、従来の燃焼装置に備わるバーナ1と、制御手段2と、送風機6に加えて、第一測定手段3と、第二測定手段4と、導出手段5とを備えることを特徴とする。以下、燃焼装置100に備わる各構成について順次説明し、次いで、この燃焼装置100の運転方法を説明する。
【0020】
(バーナ)
バーナ1は、流体燃料が流通される燃料路11と、この燃料路11の先端に設けられるノズル11nと、ノズル11nから噴射される流体燃料に空気を供給するために、ノズル11nの近傍に開口する空気路12とを有する。
【0021】
バーナ1に備わる燃料路11には、天然ガスなどの気体燃料やオイルなどの液体燃料の貯留源から延びる管路7が接続されており、管路7を介して流体燃料が供給される。燃料路11に供給された流体燃料は、燃料路11の先端に設けられるノズル11nから燃焼室9内に噴射される。管路7には燃料バルブ7Bが設けられており、ノズル11nからの流体燃料の噴射量を調節できるようになっている。
【0022】
一方、バーナに備わる空気路12には、送風機6から接続管路8を介して空気が供給される。接続管路8には空気ダンパ8Bが設けられており、空気路12への空気の供給量を調整できるようになっている。この空気路12は、燃料路11を内部に収納する筒状となっており、空気路12の端部は、複数の貫通孔を有する板材で封止されている。板材の中心部分からは前述のノズル11nの端部が露出しており、板材の貫通孔がノズル11nを取り囲むように位置される。このような構成により、ノズル11nから燃焼室9内に噴射された流体燃料と、空気路12の板材の貫通孔から燃焼室9内に噴射された空気とが混合される。その混合気体に着火するには、ノズル11nの近傍に延びるパイロットバーナ13を用いる。
【0023】
(制御手段)
制御手段2は、バーナ1の燃料路11への流体燃料の供給量と、バーナ1の空気路12への空気の供給量をそれぞれ個別に制御する手段である。具体的に流体燃料の供給量を制御するには、例えば、燃料路11に接続される管路7の燃料バルブ7Bの開度を調節することが挙げられる。また、空気の供給量を制御するには、例えば、送風機6の出力を調節したり、この送風機6と空気路12とを繋ぐ接続管路8の空気ダンパ8Bの開度を調節したりすることが挙げられる。
【0024】
本実施形態の燃焼装置100で流体燃料の燃焼を開始する際、制御手段2は、作業者がコントローラ(図示略)に入力した指示(例えば、最大火力で燃焼室9内を加熱するという指示)に基づいて、流体燃料の供給量を調節すると共に、流体燃料の供給量に応じて、空気の供給量も調整する。ここで言う、供給量の調節は、予め設定された条件に基づいて行われるものであり、例えば、最大火力での加熱という指示を受けていれば、燃料バルブ7Bの開度はα°で、送風機6の出力はβW、空気ダンパ8Bの開度はγ°、といった予め決められた制御に基づく調節である。このような制御に加えて、本実施形態の燃焼装置100では、流体燃料の燃焼開始後も流体燃料の実際の供給量に応じて空気の供給量を微調整する。その微調整には、第一測定手段3と導出手段5から得られる情報を用いる。第一測定手段3や導出手段5から得られる情報とその利用方法については後述する。
【0025】
(第一測定手段)
第一測定手段3は、バーナ1の燃料路11へ供給される流体燃料の流量を直接的に測定する手段であって、例えば、体積流量計や質量流量計を用いることができる。第一測定手段3を設置する位置は、例えば、図中に示すように、管路7における燃料路11の入口近傍などを挙げることができる。もちろん、第一測定手段3の役割を考慮して、第一測定手段3は、燃料バルブ7Bよりも燃料路11側に設ける。この第一測定手段3で得られた流体燃料の流量値の情報は、制御手段2で管理される。
【0026】
(第二測定手段)
第二測定手段4は、空気路12に連通する分岐路41と、分岐路41の途中に設けられ、分岐路41を流れる空気の流量を測定する流量計42とを備える。分岐路41を流れる空気は、接続管路8から空気路12に供給された空気の一部が分流したものである。そのため、空気路12に供給された空気の流量(接続管路8を流れる空気の流量)と、分岐路41を流れる空気の流量との間には相関があり、前者の流量が変化すれば、それに応じて後者の流量も変化する。
【0027】
上記分岐路41は、空気路12に供給される空気の流量を接続管路8の位置で直接測定する代わりに設けられるものであり、分岐路41の流路断面積は、接続管路8よりも小さくする。分岐路41の流路断面積が小さいほど、分岐路41に設ける流量計42を小型にすることができ、流量計42を設置するスペースが不足するという問題を解消し易い。但し、分岐路41の流路断面積が小さすぎると、分岐路41における流量と接続管路8における流量とが相関関係を維持できなくなる虞がある。
【0028】
また、分岐路41を設ける位置は、接続管路8から離れた位置であって、空気路12内の空気の圧力がほぼ安定する位置とすることが好ましい。これは、接続管路8から空気路12に導入される領域では空気の流れが乱れているため、接続管路8の近傍に分岐路41があると、空気路12への空気の供給量を変化させたときに、流量計42による測定結果が大きくぶれるからである。
【0029】
一方、分岐路41に設ける流量計42には、大別すると質量流量計と体積流量計がある。最適な燃焼を達成するには、温度・圧力などの補正機能を備える質量流量計を使用することが好ましい。
【0030】
(導出手段)
導出手段5は、第二測定手段4の測定結果を用いて、空気路12に導入された後に空気路12からノズル11nの近傍に噴射される空気の流量の予測値を導出する。予測値の導出に際しては、分岐路41における流量と、空気路12からノズル11nに噴射される空気の流量との相関関係を示したテーブルを用いる。この相関関係のテーブルを求める方法の一例を以下に示す。
【0031】
まず、管路7の燃料バルブ7Bを固定した状態で、バーナ1に着火する。そして、送風機6の出力と空気ダンパ8Bの開度を調節し、燃焼室9内のノズル11nから所定距離だけ離れた位置で酸素濃度を測定し、酸素濃度が3%で安定したときの分岐路41の流量を測定する。ここで、天然ガスの場合、酸素濃度が3%となったときに最も好ましい燃焼状態を達成していると判断でき、そのときの空気の流量は、流体燃料の流量の約11倍であることが知られている。仮に、酸素濃度3%となったときの分岐路41の流量が10リットル/minであり、流体燃料の流量が50m/hであれば、空気路12からノズル11nの近傍に噴射された空気の流量(実流量)は約550m/hであると分かる。つまり、測定した分岐路41における空気の流量と、実流量との一対一の相関関係が求められる。そこで、燃料バルブ7Bの開度を変化させて、酸素濃度が3%で安定したときの分岐路41の流量値と、流体燃料の流量値から間接的に求めた実流量との相関関係を次々に求めていき、相関関係のテーブルを完成させる。
【0032】
上述のようにして求めた相関関係のテーブルを図2に示す。相関関係のテーブルを求めたときの接続管路8の内部断面積、即ち、接続管路8が連結される空気路12の入口の内部断面積=244mm×244mm=59536mm、分岐路41の内部断面積=66.44mm(φ9.2mm)、空気路12の太径部の内部断面積=480mm×480mm=230400mm、空気路12の細径部(ノズル11n近傍の部分)の内部断面積=73438mmであった。また、空気路12の端部に形成される空気の噴射口(貫通孔)の総面積は19411mmであった。さらに、燃料路11の内部断面積=3621mm、ノズル11nに形成される噴射口の総面積=350mmであった。そして、求めた相関関係は、y=0.0064x+39.141x+149.65(y=実流量;m/h、x=分岐路41の流量;リットル/min)で近似できることが分かった。
【0033】
[燃焼制御方法]
以上の構成を備える燃焼装置100を実際に運転する際、流体燃料を効率的に燃焼させる燃焼制御方法を説明する。説明に当たっては図1に加えて図3のフローチャートを合わせて参照する。
【0034】
まず、燃焼装置100の運転を開始すると、燃焼装置100に備わる第一測定手段3は、管路7を流れる流体燃料の流量、即ち、燃料路11に供給される流体燃料の流量を測定する(S1)。そして、測定した結果は、制御手段2に入力される。制御手段2は、第一測定手段3で測定した流体燃料の流量に基づいて、最適な燃焼状態を達成できる空気路12の空気流量の目標値を算出する(S2)。目標値は、流体燃料が天然ガスであれば、測定した流量の11倍である。
【0035】
次に、燃焼装置100は、第二測定手段4の流量計42により分岐路41を流れる空気の流量を測定する(S3)。測定した結果は導出手段5に入力される。導出手段5は、流量計42から入力された測定値を、導出手段5に記憶される相関関係のテーブルと比較し、実流量の予測値を求める(S4)。例えば、図2の相関関係のテーブルを使用する場合、分岐路41の流量が20リットル/minであれば、実流量の予測値は約932.5m/hとなる。導出した実流量の予測値は、導出手段5から制御手段2に出力される。
【0036】
なお、上述したS1〜S4の順序は、S1よりも後にS2を行い、S3よりも後にS4を行うようになっていれば良く、特に限定されない。例えば、S1→S3→S2→S4としても良いし、S3→S4→S1→S2としても良い。
【0037】
S1〜S4の処理が終了したら、制御手段2は、S2において制御手段2で求めた目標値と、S4において導出手段5で求めた予測値とを比較して、両者が一致するか否かを判定する(S5)。もちろん、目標値と予測値とが完全に一致することは殆どないので、一致するか否かの判定はある程度の誤差(例えば、1m/h以下の誤差は実質同一と見なす)をもって行う。
【0038】
S5において、目標値と予測値とが一致した場合、空気流量の調節を行うことなく再びS1に戻り、流量の監視を再開する。
【0039】
一方、S5において、目標値と予測値とが一致しなかった場合、予測値が目標値に近づくように、空気流量の調節を行う(S6)。例えば、予測値が目標値を下回っている場合、空気流量が足らないということであるので、制御手段2は、空気ダンパ8Bの開度を上げたり、送風機6の出力を上げたりして、空気流量を増大させる。逆に、予測値が目標値を上回っている場合、空気流量が過剰であるということであるので、制御手段2は、空気ダンパ8Bの開度を下げたり、送風機6の出力を下げたりして、空気流量を低下させる。空気流量の調節(S6)が終了したら、流量の監視を再開する(S1)。
【0040】
なお、空気ダンパ8Bの開度や送風機6の出力をどの程度操作するかについては、予め試験したデータを制御手段2に記憶させておき、そのデータを参考にして制御手段2が自動で行うようにすれば良い。その他、予め、これら開度と出力の変化量を決めておいても良い。例えば、空気流量を上げるという判断をした場合、自動的に空気ダンパ8Bの開度を1°上げる、あるいは、送風機6の出力を1W上げる、といった操作を行うようにすることが挙げられる。
【0041】
[効果]
以上説明した燃焼装置100によれば、流体燃料が効率的に燃焼するように、燃料路11への流体燃料の供給量に応じて、リアルタイムに空気路12への空気の供給量を調節することができる。その結果、燃焼装置100の燃費が向上するし、排気ガス中の有毒成分の生成を抑制することもできる。
【0042】
<実施形態2>
実施形態2では、図4を参照しつつ第二測定手段4の構成が実施形態1と異なる燃焼装置200を説明する。ここでは、実施形態1との相違点についてのみ説明する。
【0043】
本実施形態の燃焼装置200に備わる第二測定手段4は、空気路11内の圧力を監視する第一圧力計43と、空気路11の外部である燃焼室9内の圧力を監視する第二圧力計44とを備える。第一圧力計43と第二圧力計44を配置する位置は、空気路12の端部を封止する板材の近傍とする。特に、第二圧力計44については、燃焼排気ガスの速度の影響を受けない位置で、燃焼排気ガスの発生する場所から第二圧力計44までの間に燃焼排気ガスに通過抵抗を発生させるような複雑形状がないことも重要である。各圧力計43,44で測定された数値は、導出手段5に入力される。
【0044】
各圧力計43,44から測定値の入力を受けた導出手段5は、接続管路8から空気路12に供給された空気の流量を計算する。空気路12内外の圧力差を利用して空気路12の流量を計算できるのは、空気路12の端部が、複数の貫通孔を備える板材で封止された構成、いわゆるオリフィス板となっているためである。もちろん、流量の算出の際は、第一圧力計43と第二圧力計44を配置する位置などの種々の要素を加味して、計算式を適宜補正することが好ましい。
【0045】
以上説明した構成を備える実施形態2の燃焼装置200も、空気路12に供給される空気の流量をリアルタイムで監視でき、かつ、その監視結果に基づいて流体燃料と空気との混合比率が最適となるように空気の供給量を制御することができる。つまり、本実施形態の燃焼装置200は、効率的で無駄なく流体燃料を燃焼させることができる燃費の良い燃焼装置である。
【0046】
なお、本発明の実施形態は、上述した実施形態に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明燃焼装置は、ボイラなどの加熱手段として好適に利用できる。また、本発明燃焼制御方法は、効率的で無駄のない燃料の燃焼を求められる燃焼装置の運転に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
100,200,300 燃焼装置
1 バーナ
11 燃料路 11n ノズル 12 空気路 13 パイロットバーナ
2 制御手段
3 第一測定手段
4 第二測定手段
41 分岐路 42 流量計 43 第一圧力計 44 第二圧力計
5 導出手段
6 送風機
7 管路 7B 燃料バルブ
8 接続管路 8B 空気ダンパ
9 燃焼室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体燃料が流通される燃料路、前記燃料路の先端に設けられるノズル、及び、前記ノズルから噴射される流体燃料に空気を供給するために、前記ノズルの近傍に開口する空気路、を有するバーナと、
前記燃料路への流体燃料の供給量、および前記空気路への空気の供給量をそれぞれ個別に制御する制御手段と、
を備える燃焼装置であって、
前記燃料路へ供給される流体燃料の流量を測定する第一測定手段と、
前記空気路内外の圧力に関わる物理量であって、空気路への空気の供給量と相関のある特性値を測定する第二測定手段と、
前記第二測定手段の測定結果を用いて、前記空気路を経て前記ノズル近傍に噴射され、前記ノズルから噴射される流体燃料と混合される空気の流量の予測値を導出する導出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記第一測定手段により得られた流体燃料の流量値から求められる、最適な燃焼を達成するための空気流量の目標値に、前記導出手段により得られた前記予測値が近づくように、前記空気路への空気の供給量を制御することを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記第二測定手段は、
前記空気路に連通して、前記空気路へ供給された空気の一部を分岐させる分岐路と、
前記分岐路の中途に設けられ、前記分岐路における空気の流量を測定する流量計と、を備え、
前記導出手段は、
前記流量計の測定結果を、前記分岐路における空気の流量と、前記空気路から前記ノズル近傍に噴射される空気の流量との相関関係に当てはめて、前記噴射される空気の流量の予測値を導出することを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記第二測定手段は、
前記空気路の内部の圧力を測定する第一圧力計と、
前記空気路の外部の圧力を測定する第二圧力計と、を備え、
前記導出手段は、
前記第一圧力計の測定結果と第二圧力計の測定結果とを用いて、前記空気路から前記ノズル近傍に噴射される空気の流量の予測値を計算により導出することを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項4】
流体燃料が流通される燃料路、前記燃料路の先端に設けられるノズル、及び、前記ノズルから噴射される流体燃料に空気を供給するために、前記ノズルの近傍に開口する空気路、を有するバーナと、
前記燃料路への流体燃料の供給量、および前記空気路への空気の供給量をそれぞれ別個に制御する制御手段と、
を備える燃焼装置を用いて、
流体燃料を効率的に燃焼させるために、前記ノズル近傍における流体燃料と空気との混合比率を制御する燃焼制御方法であって、
前記燃料路へ供給される流体燃料の流量を測定するステップ1と、
前記空気路の内外の圧力に関わる物理量であって、空気路への空気の供給量と相関のある特性値を測定するステップ2と、
前記特性値の測定結果を用いて、前記空気路を経て前記ノズル近傍に噴射され、前記ノズルから噴射される流体燃料と混合される空気の流量の予測値を導出するステップ3と、
前記ステップ1で得られた流体燃料の流量値から求められる、最適な燃焼を達成するための空気流量の目標値に、前記ステップ3で得られた空気流量の予測値が近づくように、前記空気路への空気の供給量を変更するステップ4と、
を備えることを特徴とする燃焼制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−99594(P2011−99594A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253426(P2009−253426)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000106597)サンレー冷熱株式会社 (8)
【Fターム(参考)】