説明

燃焼装置

【課題】バーナの点火時に金属が振動する不快な音が発生することを防ぐ。
【解決手段】金属製の燃焼室内に口火用のパイロットバーナを設け、該バーナの点火手段として、点火トランスとイグナイタ電極を設け、イグナイタ電極からは点火トランスからの高電圧を受けて火花が小刻みに複数発続けて飛ぶ構成とする。手動により操作される器具栓が消火位置から点火位置に移動する間にパイロットバーナへの燃料ガスの供給を開始するが、この燃料ガスの供給開始よりも先にオン信号を出力する器具栓スイッチ52cを器具栓に設け、イグナイタ電極で一発目の火花を飛ばした後に、燃料ガスのパイロットバーナへの供給が開始されるようにすることにより、イグナイタ電極の一発目の火花によってパイロットバーナの点火が行われることによる前記燃焼室の振動音の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の燃焼室内にバーナを備えた燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3には、本願発明者が開発中の燃焼装置が模式的なシステム図により示されている。なお、このシステム構成は、後述する実施例にも適用される。この燃焼装置は、例えば浴室に配置され、バランス型風呂釜と呼ばれている装置である。この装置は、口火用のパイロットバーナ38と、給湯メインバーナ10と、風呂の追い焚き用の風呂メインバーナ39とを有しており、パイロットバーナ38に供給される燃料ガスに点火する点火手段として、イグナイタ電極59と点火トランス(図示せず)が設けられている。
【0003】
イグナイタ電極59からは、点火トランスからの高電圧を受けて火花が小刻みに複数発続けて飛び、例えば1秒間に5回「パチ、パチ、パチ、パチ、パチ」といったように、小刻みに火花が出る。このイグナイタ電極59および前記各バーナ38,10,39は金属製の燃焼室60内に設けられており(図5、参照)、燃焼室60には、空気の吸気口1(図6、参照)と、バーナ38,10,39の燃焼ガスの排気口17とが設けられている。なお、図6の符号2は、排気トップを示し、空気の吸気口1(大気開放部分)とパイロットバーナ38に点火する部位とは例えば50〜250cmのごとく離れている。
【0004】
また、給湯メインバーナ10には能力切り替えつまみ49が設けられており、燃焼装置の設置時等に、能力切り替えつまみ49の手動操作によって給湯メインバーナ10の燃焼能力(バーナ本数切り替え)が設定されるが、その後は、設定された能力で燃焼が行われる(給湯メインバーナ10の燃焼が行われる毎に可変されることはない)。
【0005】
風呂メインバーナ39の上部側には、風呂メインバーナ39によって加熱される風呂追い焚き熱交換器40が設けられ、給湯メインバーナ10の上部側には、給湯メインバーナ10により加熱される給湯熱交換器7が設けられている。給湯熱交換器7の出側には給湯ハイリミットスイッチ47が設けられており、風呂追い焚き熱交換器40には風呂ハイリミットスイッチ46が設けられている。なお、符号45は、過熱防止装置を示す。
【0006】
給湯熱交換器7には、該給湯熱交換器7に水を導入する給水導入通路19と、給湯熱交換器7を通って加熱された水を給湯先に導く給湯通路11とが接続されている。給湯通路11の先端側には給湯栓9が設けられており、この例では、給湯栓9が切り替えレバー方式の栓で形成されている。この種の給湯栓9は、レバーの切り替えによって、給湯通路11を通った湯を、カラン側の出湯管30側とシャワー側通路31のいずれかから選択的に出湯させるものであり、同図では、出湯管30側から出湯されるように選択した状態が示されている。符号57は逆止弁、58は熱湯遮断弁をそれぞれ示す。
【0007】
前記給水導入通路19には、水量調節機構21が接続されており、水量調節機構21には、水ガバナー15、ダイヤフラムケース(ダイヤフラム室)13、水量調節室20が設けられている。ダイヤフラムケース13には、ダイヤフラム14が設けられており、このダイヤフラム14によって、ダイヤフラムケース13内が、一次室13aと二次室13bとに区分けされている。水量調節室20には温度調節子23が設けられており、温度調節子23は、温度調節つまみ22に接続されている。
【0008】
また、水量調節機構21には、水量調節機構21に水を供給する給水通路8と、水量調節機構21から水を導出する通路16と、排水通路24とが接続されている。給水通路8にはフィルタ25が介設され、排水通路24には水抜き栓26が設けられている。
【0009】
前記給湯メインバーナ10には、ガス供給手段としてのガス通路32が接続されており、該ガス通路32は、水圧自動ガス弁33と、器具栓34とを介し、ガス導入通路35に接続されている。なお、符号51は水自弁スイッチを示す。器具栓34の下部側にはガスの電磁弁54が設けられており、水圧自動ガス弁33は、前記ダイヤフラム14に連結して設けられている。
【0010】
ガス導入通路35は、燃料ガスを燃焼装置に外部から導入するものであり、ガス導入通路35から導入される燃料ガスが、器具栓34を介してガス通路32を通り、給湯メインバーナ10に供給される。また、器具栓34には、ガス供給手段としてのガス通路36,37が接続されており、ガス導入通路35から器具栓34まで導入された燃料ガスが、ガス通路36を通してパイロットバーナ38に導入され、ガス通路37を通して風呂メインバーナ39に供給される構成と成している。また、ガスガバナはガス通路32の出口部分、ガス通路37の出口部分にそれぞれ設けられている。
【0011】
なお、同図には図示されていないが、パイロットバーナ38の炎口の近傍には、炎口から出る炎の熱をその熱による起電力により検出する熱電対と、パイロットバーナ38の炎を検出するためのフレームロッド電極とが設けられている。熱電対は電磁弁54に電気的に接続されている。
【0012】
前記器具栓34は、器具栓つまみ(操作つまみ)48と、シャフト50と、手動開閉通路である閉子53を有して形成され、器具栓つまみ48の手動操作に応じて、シャフト50と閉子53が、図3の矢印に示すように、上下したり回転したりすることによって、手動により操作される。器具栓つまみ48は、図2(a)に示すように、回動自在に形成されて、この例ではつまみの印が付いている側を「止」、「口火」、「給湯・シャワー」、「追いだき」のいずれかの位置に適宜合わせることにより、パイロットバーナ38、給湯メインバーナ10、風呂メインバーナ39のうちの対応するバーナへの点火や着火が行われるようになっている。
【0013】
シャフト50には、スイッチとして、マイクロスイッチ(器具栓スイッチ)52(52a,52b,52c)が設けられており、器具栓つまみ48を「止」の位置において下側に押し下げると、器具栓つまみ48と共にシャフト50が下がり、表1に示すように器具栓スイッチ52aがオン(52aオン,52bオフ,52cオフ)する。また、このときの押し下げ力により、電磁弁54が開き、燃料ガスがガス導入通路35を通って器具栓34の入口まで流入する。
【0014】
【表1】

【0015】
その状態で器具栓つまみ48を「口火」の位置に回していき、その回転に伴い、図2(b)に示すように、その回転角度θ(「止」の位置とつまみの印との角度)が例えば33°となると、燃料ガスは器具栓34の閉子53に形成された口火用通路を通り(口火用通路が開き)、(口火用の)ガス通路36に導入されていき(つまり、器具栓34が消火位置から点火位置に移動する間にガス通路36から前記パイロットバーナ38への燃料ガスの供給が開始し)、ガス通路36の先端に設けられたパイロットノズルを経て、パイロットバーナ38の一次空気孔から一次空気を吸引しながら炎口側(パイロットバーナヘッド)に流れる。また、この燃料ガスの供給時に器具栓スイッチ52cがオン(52aオン,52bオフ,52cオン)となり、図示されていない燃焼制御部の制御によって図示されないイグナイタ(点火トランス)に通電が行われ、イグナイタ電極59からの火花によるパイロットバーナ38への点火が行われる。
【0016】
なお、図3に示す燃焼装置において、器具栓つまみ48を「口火」の位置に回して器具栓つまみ48を放す(押し下げる力を除く)と、シャフト50が元の位置に戻り、器具栓スイッチ52aはオフ(52aオフ,52bオフ,52cオン)となるが(表1、参照)、器具栓つまみ48を「口火」の位置に回した直後は図示されていない燃焼制御部の制御によって電磁弁54に電流が流されて強制開状態に保たれ、その後、前記のようにパイロットバーナ38の炎口近傍に設けられた電磁弁54と直結される熱電対(図示せず)の起電力が予め定められる電磁弁54の電磁弁維持電圧以上になると、図示されていない燃焼制御部からの通電が停止され、燃焼制御部の通電や熱電対の起電力により、器具栓つまみ48を離しても(押し下げる力を除いても)電磁弁54が開状態に保たれる。
【0017】
なお、炎が無くなっても、熱電対の起電力が直ぐには低下しないことから、炎が無くなっているにもかかわらず生ガスが出てしまう時間を少なくするために、以下のような制御をしている。つまり、フレームロッド電極での炎の検出を併用し、炎安定時には、そのフレームロッド電極の検出タイミングを少なくし(例えば50秒間に1回とし)、熱電対の電圧が有風等により予め設定される設定値以下になると、フレームロッド電極での検出タイミングを多くして(例えば3秒間に1回として)いる。このように、フレームロッド電極での検出を行い、炎が無くなっても熱電対の起電力が発生する現象に惑わされないようにして、フレームロッド電極で炎検出がされなくなったら、速やかに熱電対の起電力を電磁弁54に伝える回路上に設けられたリレーをオフすることで、電磁弁54を停止し、炎が無くなっているにも係わらず生ガスが出てしまう時間を少なくしている。
【0018】
また、電磁弁54への燃焼制御部からの通電は、熱電対の起電力が前記電磁弁維持電圧以上になると停止されるので、その後、例えばフレームロッド電極に対応する炎口に炎があっても、熱電対に対応する炎口に炎がない場合等、熱電対の起電力が前記電磁弁維持電圧より下がると、電磁弁54が閉じる方向に動作する。なお、電磁弁54への通電や熱電対の起電力は、あくまで開状態に保つのみであり、器具栓つまみ48を下側に押し下げていない状態で通電や熱電対の起電力相当を与えても開とはならない。
【0019】
また、熱電対を無くして、フレームロッド電極での炎検出タイミングを常に多く(3秒に1回)し、フレームロッド電極での炎検出の有無(フレームロッド電極での検出電流値が予め定められる電流値以下になったか否か)のみでパイロットバーナ38の燃焼を確認し、図示されていない燃焼制御部の制御によってのみで電磁弁54を開状態に保つようにしてもよい。
【0020】
器具栓つまみ48を「給湯・シャワー」や「追いだき」の位置に回していくと、燃料ガスが器具栓つまみ48の回転角度に応じて閉子53に形成されているガスメイン通路を通り、ガス通路32,37を通って給湯メインバーナ10や風呂メインバーナ39に供給される。そして、器具栓つまみ48が「口火」から「給湯・シャワー」の位置に移動する間に器具栓スイッチ52bがオン(52aオフ,52bオン,52cオン)して、蛇口が開くことによって生じる通水に応じて生じる差圧により開閉する水圧自動弁33が開くことで、パイロットバーナ38の口火が給湯メインバーナ10に着火する。
【0021】
また、器具栓つまみ48が「追いだき」の位置に移動する間に器具栓スイッチ52cがオフ(52aオフ,52bオン,52cオフ)し、パイロットバーナ38の口火が風呂メインバーナ39に着火する。そして、器具栓つまみ48を「止」の位置に戻すと、器具栓スイッチ52a,52b,52cがいずれもオフして消火状態となる。なお、器具栓つまみ48の「止」、「口火」、「給湯・シャワー」、「追いだき」の各位置における器具栓スイッチ52b,52cのオン・オフの状態は、表2に示すようになる。
【0022】
【表2】

【0023】
この燃焼装置において、給水栓(図示せず)を開くと、水は、給水通路8を通って水ガバナー15を通り、ダイヤフラムケース13の一次室13aへと流れ、水量調節子23により分岐して、その一方は、通路16を通り、給湯通路11側に導かれる。他方は、給水導入通路19、給湯熱交換器7を通って給湯通路11側に導かれ、給湯通路11から出湯管30(またはシャワー側通路31)へ流れて出水される。
【0024】
また、器具栓つまみ48を「給湯・シャワー」の位置に合わせることにより、燃料ガスは、水圧自動ガス弁33の配設位置まで流れる。この状態で給湯栓9を開き、給水通路8を通して水が流れ始めると、この水がダイヤフラムケース(ダイヤフラム室)13の一次室13aから温度調節子23、通路16を通り、圧力損失による低圧力が通路16によりダイヤフラム二次室13bに伝えられ、一次室13a(高圧)との差圧がダイヤフラム14の面積により荷重として働き、ダイヤフラム14が二次室13b側へと移動する。
【0025】
この結果、ダイヤフラム14と連結された水圧自動ガス弁33が開き、燃料ガスがガス通路32を通って給湯メインバーナ10に供給され、前記の如く、パイロットバーナ38の口火から給湯メインバーナ10に着火する。このように、給湯メインバーナ10は、給湯栓9が開かれることにより流れる(燃焼装置に導入される)水の量により、前記ダイヤフラム一次室13aと二次室13bとの差圧が所定以上となったときに燃焼を開始する。そして、この給湯メインバーナ10の燃焼によって、給湯熱交換器7を通る水が加熱され、出湯管30(またはシャワー側通路31)から出湯される。
【0026】
また、図3には示されていないが、風呂追い焚き熱交換器40は風呂循環通路を介して浴槽に接続されており、その接続部(上部循環口)よりも例えば10cm以上高い位置まで湯または水を入れた状態で、器具栓つまみ48を「追いだき」の位置に合わせることにより、燃料ガスが通路36を通って風呂メインバーナ39に供給され、パイロットバーナ38の口火から風呂メインバーナ39に着火し、風呂追い焚き熱交換器40を循環して浴槽内の湯水の加熱が行われる。
【0027】
なお、バランス型風呂釜等の燃焼装置において、イグナイタ電極59の代わりに、圧電スパークによってパイロットバーナ38への点火を行う点火プラグを設けたバランス型風呂釜も用いられており、この点火プラグが設けられた構成の燃焼装置の場合は、器具栓つまみ48を「口火」の状態として点火装置のハンドルを手動により回転させることにより圧電素子を叩き、発生する高電圧を点火プラグにかけ、点火プラグから圧電スパーク(火花)を飛ばして点火が行える構成と成している。なお、手動により回転させるスピードを変えても圧電素子から発生する電圧、すなわち、点火プラグから放出される電圧に変化はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開平11−173546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
しかしながら、前記のような開発中のバランス型風呂釜において、パイロットバーナ38に、イグナイタ電極59により点火を行う際の点火音が大きく、この音に、燃焼室60を形成している金属製ケースが共鳴して振動し、不快な音を発生する(金属を叩くような音が響く)という問題が新たに見つかった。この音の発生について、以下に詳しく述べる。
【0030】
通常、ガス通路36の先端に取り付けられたパイロットノズルのノズル孔からパイロットバーナ38に向けては、ガス濃度100%でガス(燃料ガス)が放出され、パイロットバーナ38は、吸引効果により一次空気をパイロットバーナ38の一次空気孔から吸い込み、バーナヘッドを出たガスは、バーナヘッド周囲に滞留する二次空気で希釈されながら、後述のスパークが飛ぶ空間に至る。この時のガス濃度は、ガスの燃焼範囲(爆発限界範囲)の比較的濃度が濃い範囲にあり、イグナイタートランスからの高電圧によりイグナイタ電極59から放出されるスパークを受けても緩やかに点火する(小さい点火音で点火する)。それに対し、前回の燃焼停止から今回の燃焼開始(点火)までの待機時間(例えば一晩)が経過する間に、ガス通路36の先端に取り付けられたパイロットノズルのノズル孔から空気が侵入し、ガス通路36内のガスが空気と置換してガス通路36内のガス濃度が低下するという事実を、本願発明者は発見した。
【0031】
この結果、例えば一晩後の点火に際しては、先ず、パイロットノズルのノズル孔からはガス通路36内に滞留した、空気と置換してガス濃度が低下したガスが放出され、パイロットバーナ38は、吸引効果によりさらに一次空気を吸い込み、点火に不適切なほど濃度低下した混合気がパイロットバーナーヘッド(炎口)に供給される。その結果、ガス濃度が、一気に点火(燃焼)が進むほど、ガスの燃焼範囲(爆発限界範囲)の中の比較的薄い濃度となって、パイロットバーナーヘッド(炎口)に至る場合があり、これが点火時の音が大きく、前記振動音が大きくなり、不快の元となることを、本願発明者は見いだした。
【0032】
なお、点火音は点火による気体(主に空気)の体積膨張によって発生するものであり、この体積膨張が開放空間で生じた場合には、空間内の気体(主に空気)の圧力はすぐに発散し、空間内の気体の圧力が上昇することはないが、(器具の分類では密閉燃焼型器具となる)金属製半密閉空間で生じると、急速に空間内の気体の圧力が上昇し、金属を叩く音が響く。そこで、金属製半密閉空間で点火する際の音を低騒音とするためには、例えば前記特許文献1に示されるように、バーナに送る燃料ガス供給量や送風量をコントロールしてガス濃度を制御する必要があった。この制御は、わざと点火音の大きい、点火に不適切なほど濃度が低下した混合気をバーナに供給すると共に、点火しなければ、徐々に濃度を上げていくものであり、このような制御を行うのには下記の理由がある。
【0033】
すなわち、もしバーナから濃い濃度のガスを出すと、点火が遅れた場合には、送風で送られた2次空気と、バーナーヘッド(炎口)から出た濃い濃度のガスとが混合し、この混合ガスが、ガスの燃焼範囲(爆発限界範囲又は燃焼限界範囲)となってバーナ上部を覆う可能性があるからである。このような状況では、2次空気により希釈され一気燃焼する比較的薄い濃度のガスがバーナ周囲にあるため、バーナ点火と同時に周囲のガスに引火してしまい、結果、非常に大きな点火音、振動が生じてしまうからである。
【0034】
ところで、本願発明の燃焼装置は、例えばバランス型風呂釜に適用され、このような燃焼装置においては、ファンがないため、上述の2次空気は燃焼が生じてからでないと発生しない。そのため、点火に際して、わざと点火音の大きい、点火に不適切なほど濃度低下した混合気を送る必要性はない。しかも、バランス型風呂釜は浴室設置である(狭い浴室で反響して小さい音でも大きく聞こえる設置環境)がゆえに、点火に際して緩やかに点火する(小さい点火音で点火する)ガスの燃焼範囲(爆発限界範囲)の、比較的濃度が濃い範囲のガスをバーナへのガス供給が好ましく、通常、この濃度のガス供給を行っている。そのため、バランス風呂釜においては、これまでは、前記待機時間(例えば一晩)の経過に応じて生じる濃度の異なるガスの点火に対応して、前記金属の振動音を防ぐ課題自体がなかった。
【0035】
本発明は、前記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、金属製の燃焼室内に設けられているパイロットバーナ等のバーナの点火時に金属が振動する不快な音が発生することを防ぐことができる燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は上記目的を達成するために、次の構成をもって課題を解決する手段としている。すなわち、第1の発明は、金属製の燃焼室内に設けられたバーナと、該バーナに燃料ガスを供給するガス供給手段と、該ガス供給手段から前記バーナに供給される燃料ガスに点火する点火手段を有し、該点火手段は点火トランスとイグナイタ電極とを有して該イグナイタ電極からは前記点火トランスからの高電圧を受けて火花が小刻みに複数発続けて飛ぶ構成を成し、前記バーナへの燃料ガスの供給開始よりも先に前記点火トランスへの通電が行われるように制御する先行スパーク出力制御部が設けられ、該先行スパーク出力制御部の制御により前記イグナイタ電極で一発目の火花を飛ばした後に前記燃料ガスの前記バーナへの供給が開始されるようにすることにより、前記イグナイタ電極の一発目の火花によって前記バーナの点火が行われることによる前記燃焼室の振動音の発生を防止するバーナ燃焼開始制御構成を有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0037】
また、第2の発明は、金属製の燃焼室内に設けられた口火用のパイロットバーナと、該パイロットバーナに燃料ガスを供給するガス供給手段と、該ガス供給手段から前記パイロットバーナに供給される燃料ガスに点火する点火手段を有し、該点火手段は点火トランスとイグナイタ電極とを有して該イグナイタ電極からは前記点火トランスからの高電圧を受けて火花が小刻みに複数発続けて飛ぶ構成を成し、また、手動により操作される器具栓を有して、該器具栓が消火位置から点火位置に移動する間に前記ガス供給手段から前記パイロットバーナへの燃料ガスの供給が開始する構成を有し、前記器具栓には該器具栓が消火位置から点火位置に移動する途中において前記パイロットバーナへの燃料ガスの供給開始よりも先に信号を出力するスイッチが設けられ、該スイッチの信号を受けて前記点火トランスへの通電が行われるように制御する先行スパーク出力制御部を有して前記イグナイタ電極で一発目の火花を飛ばした後に前記燃料ガスの前記パイロットバーナへの供給が開始されるようにすることにより、前記イグナイタ電極の一発目の火花によって前記パイロットバーナの点火が行われることによる前記燃焼室の振動音の発生を防止するバーナ燃焼開始制御構成を有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0038】
さらに、第3の発明は、前記第2の発明の構成に加え、前記燃焼室内には、パイロットバーナの炎によって着火する給湯メインバーナと風呂メインバーナとが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、金属製の燃焼室内に設けられたバーナに燃料ガスを供給し、この燃料ガスに、イグナイタ電極と点火トランスとを有する点火手段によって点火するが、イグナイタ電極からは、点火トランスからの高電圧を受けて火花が小刻みに複数発続けて飛ぶ構成を有し、また、先行スパーク出力制御部が、前記バーナへの燃料ガスの供給開始よりも先に前記点火トランスへの通電が行われるように制御をすることによって、イグナイタ電極で一発目の火花を飛ばした後に、前記燃料ガスの前記バーナへの供給が開始されるようにすることにより、前記イグナイタ電極の一発目の火花によって前記バーナの点火が行われることによる前記燃焼室の振動音の発生を防止することができる。
【0040】
また、金属製の燃焼室内にパイロットバーナを設け、前記と同様の、イグナイタ電極と点火トランスの構成を備えた点火手段を設けると共に、手動により操作される器具栓が消火位置から点火位置に移動する間(移動する途中または点火位置に移動したとき)にガス供給手段からパイロットバーナへの燃料ガスの供給が開始するが、器具栓が消火位置から点火位置に移動する途中においてパイロットバーナへの燃料ガスの供給開始よりも先に信号を出力するスイッチと、該スイッチの信号を受けて燃料ガスの供給開始よりも先に前記点火トランスへの通電が行われるように制御する先行スパーク出力制御部を設けて、前記イグナイタ電極で一発目の火花を飛ばした後にパイロットバーナへの燃料ガス供給が開始されるようにすることにより、イグナイタ電極の一発目の火花によって前記パイロットバーナの点火が行われることによる前記燃焼室の振動音の発生を防止することができる。
【0041】
なお、本発明に適用されているイグナイタ電極からは、前記の如く、点火トランス(イグナイタ)で発生させる高電圧を受けて、連続スパーク放電火花が小刻みに複数発続けて飛ぶが、このような点火装置を用いて、本発明者がイグナイタ電極から火花を飛ばすタイミングと点火音との関係を求めたところ、一発目の火花によって点火を行うと(つまり、燃料ガスを先に供給した状態で、その燃料ガスに、一発目の火花によって点火を行うと)、一気に全ガスに火がつくらしく、その点火の際に空気が膨張する圧力が大きく、点火音が大きくなることが分かった。
【0042】
この一発目の火花による点火音が大きくなる理由を、本発明者は、例えば図4に示すように、イグナイタ電極から一発目の火花を飛ばすときの放電電圧が、二発目以降の火花を飛ばすときの放電電圧に比べて大きいためではないかと考えている。つまり、イグナイタ内部のコイル(点火トランス内のコイル)に通電する際、最初はイグナイタ内部のコイルに発熱がない状態であるためにイグナイタ内部のコイルの抵抗値が低く、その後は(2発目以降又は順次)発熱によりイグナイタ内部のコイルの抵抗値が高くなることにより、イグナイタ電極から一発目の火花を飛ばすときの放電電圧が、コイルに突入電流が流れる(多くの電流が流れる)ために大きくなるのではないかと考えられる。
【0043】
ところで、昭和40年代以前に多く見られた屋台のアセチレン灯というものが知られている。アセチレンを単に燃やしただけでは、ゆっくり燃えて炎は暗い。しかし、アセチレン灯は2つの火炎を衝突させ(衝突火炎又は衝炎)、ゆっくり燃えようとする一方の炎中の未燃ガスに他方の炎で点火させるがごとく、互いに他方のアセチレンガスに点火し合い、燃焼を加速することで炎が明るくなり、まるで電球の明かりのように明るく燃える。このことから、発電機が普及する以前には夜店や屋台等に多く用いられてきた。
【0044】
前記見知から、点火時の燃焼において燃焼を加速(点火を加速)すると、供給するガス濃度がガスの燃焼範囲(爆発限界範囲)の比較的濃度が濃い範囲(全燃焼限界範囲を薄い範囲と濃い範囲とに2等分したときの、濃い範囲側)であっても、あたかも比較的濃度が薄い範囲(全燃焼限界範囲を薄い範囲と濃い範囲とに2等分したときの、薄い範囲側)のガスであるがごとく、大きな点火音、振動が生じてしまうものと推定され、イグナイタ電極からの放電電圧が高い一発目の火花が燃焼ガスを通過すると、多くの発火点が生じてガスが複数箇所から一気に燃え広がり、火炎同士が衝突し、一発目の火花で点火させると点火音が大きくなり、かつ、ガスが燃え切るまでの時間が短いので圧力が逃げる時間がなくなり振動が大きくなるものと考えられる。
【0045】
上記より、逆に、供給するガス濃度がガスの燃焼範囲(爆発限界範囲)の比較的濃度が薄い範囲であっても、点火時の燃焼において燃焼を減速(発火点を少なくしてガスが燃え切るまでの時間を長く)すると、あたかも比較的濃度が濃い範囲であるがごとく、小さな点火音で振動が生じにくいと考えられたので、本願発明は、イグナイタ電極で点火エネルギーの高い(発火点が多くできる)一発目の火花を飛ばした後に、パイロットバーナへの燃焼ガス供給が開始されるようにすることにより、一発目の火花で点火させると比して点火エネルギーの低い2発目以降で点火させると発火点を少なくできるものと考えられ(例えば2発目、3発目、4発目、でも発火点ができず、5発目でやっと発火点が1個できるような状況を想定すると判りやすく)、小さな点火音で振動が生じにくい発明に至った。
【0046】
なお、ガス濃度がガスの燃焼範囲(爆発限界範囲)の比較的濃度が濃い範囲で点火エネルギーの低いイグナイタ電極の2発目以降の火花で点火させると、より燃焼を減速することができる(つまり、発火点を少なく、かつ、発火点から燃焼が進んでガスが燃え切るまでの時間を長くすることができる)。
【0047】
しかし、本願発明者の検討によると、2発目以降で点火させる場合において、ガス濃度による振動の差異はみられなかった。すなわち、振動は、ガスが燃え切るまでの時間が短いので、圧力が逃げる時間がなくなり振動が発生するものと考えられ、本願発明のように、点火ガス量(パイロットバーナガス消費量)が100〜300kcal/hの場合で、発火点がイグナイタ電極やパイロットバーナヘッド周囲から空気の吸気口(大気開放部分)とが、例えば50〜250cmのごとくしか離れていない場合には、ガス濃度による点火圧力上昇の差異がない程度に圧力が逃げ切ると考えられ(点火で生じる圧力と圧力が逃げる大気開放部分までの距離とがトレードオフの関係にあると考えられ)、そのときに生じる振動は、一発目のガスの燃焼範囲(爆発限界範囲)の比較的濃度が濃い範囲での点火時に発生する振動と同じ位に低く収まる。
【0048】
なお、上述の推定が正しいか否かは明らかではないが、いずれにしても、イグナイタ電極の一発目の火花によって点火を行うと、その点火音が大きくなるのに対し、本発明は、前記の如く、イグナイタ電極で一発目の火花を飛ばした後にパイロットバーナへの燃焼ガス供給が開始されるようにすることにより、燃焼室の振動音の発生を防止することができる。
【0049】
また、燃焼室内に、パイロットバーナの炎によって着火する給湯メインバーナと風呂メインバーナとを設けることにより、給湯機能や、風呂の追い焚き機能を有する燃焼装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る燃焼装置の一実施例における点火動作タイミングを説明するためのグラフである。
【図2】燃焼装置の器具栓つまみの例を示す平面図である。
【図3】燃焼装置としてのバランス型風呂釜のシステム構成図である。
【図4】イグナイタ電極による火花を飛ばすタイミングと放電電圧との関係を示すグラフである。
【図5】バランス型風呂釜の断面構成例を示す模式図である。
【図6】バランス型風呂釜の断面構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本実施例の説明において、これまでの説明の構成要素と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略または簡略化する。
【実施例】
【0052】
本実施例の燃焼装置は、図3に示した燃焼装置と同様のシステム構成を有しており、本実施例の特徴的なことは、以下に述べる特徴的なバーナ燃焼開始制御構成(パイロットバーナ燃焼開始制御構成)を有していることである。
【0053】
つまり、本実施例では、器具栓34に設けられている器具栓スイッチ52cは、器具栓34(器具栓つまみ48)が消火位置から点火位置に移動する途中において、パイロットバーナ38への燃料ガスの供給開始よりも先にオン信号を出力する構成と成しており、本実施例では、この器具栓スイッチ52cのオン信号を、図示されていない燃焼制御手段の先行スパーク出力制御部が受けて、イグナイタ(点火トランス)への通電を行い、イグナイタ電極59で一発目の火花を飛ばした後に、燃料ガスのパイロットバーナ38への供給が開始されるようにすることにより、イグナイタ電極59の一発目の火花によって38パイロットバーナの点火が行われることによる燃焼室60の振動音の発生を防止するバーナ燃焼開始制御構成を有する。
【0054】
具体的には、図1に示すように、器具栓つまみ48の「止」の位置と「口火」の位置との角度は、55°であり、ガス通路36にガスが導入され始める器具栓つまみ48の回転角度θは33°であるが、器具栓つまみ48が「止」の位置から設定角度である25°回転したときに、器具栓スイッチ52cからオン信号が出力される(オフからオンに切り替わる)ように形成されている。なお、実際には、図1のAに示すように、器具栓スイッチ52cの作動公差により、オン信号を出力する角度がずれる可能性があるが、このずれが生じたとしても、「止」の位置から21.3°〜32.7°の回転範囲内でオン信号を出力し、器具栓つまみ48の回転角度が、ガス通路36にガスが導入され始める角度である33°に達するよりも先にオン信号を出力する。
【0055】
この器具栓スイッチ52cから出力されるオン信号を、図示されていない前記燃焼制御手段の先行スパーク出力制御部が受けてイグナイタへの通電を行うことにより、イグナイタ電極59から一発目の火花が飛び、続けて二発目、三発目と、火花が小刻みに複数回続けて飛ぶ。そして、器具栓つまみ48の回転角度が33°になると、燃料ガスがガス通路36に導入されることによってガスの供給が行われ、パイロットバーナ38への点火は、イグナイタ電極59の二発目以降の火花によって行われる。
【0056】
本実施例では、このように、イグナイタ電極59で一発目の火花を飛ばした後に燃料ガスを供給し、イグナイタ電極59の一発目の火花によってパイロットバーナ38の点火が行われることがないようにすることによって(一発目を外して、二発目以降の火花による点火を行うことによって)、イグナイタ電極59の一発目の火花によってパイロットバーナ38に点火されることによる燃焼室60の振動音の発生を防止することができる。
【0057】
なお、図1に示すように、器具栓つまみ48の位置を「止」から「口火」にする間と、「給湯・シャワー」から「追いだき」にする間は、それぞれ、器具栓34の垂直位置は下がる。また、器具栓つまみ48の回転角度が84.5°になると給湯メインバーナ10用(給湯用)のガス通路32へのガス導入開始と共に、Bに示す範囲内(80.8〜92.2°)で器具栓スイッチ52bがオフからオンに切り替わり、給湯メインバーナ10への着火が行われ、器具栓つまみ48の回転角度が181.5°になると風呂メインバーナ39用(風呂用)のガス通路37へのガス導入開始と共に、Cに示す範囲内(175.9〜184.1°)で器具栓スイッチ52cがオンからオフに切り替わり、風呂メインバーナ39への着火が行われる。
【0058】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、適宜設定されるものである。例えば、前記実施例では、器具栓スイッチ52cから出力されるオン信号を先行スパーク出力制御部が受けて、点火トランス(イグナイタ)への通電を行うようにしたが、先行スパーク出力制御部の制御形態は、以下のようにしてもよい。
【0059】
例えば、イグナイタに予め通電しておく回路に、この通電を停止する(阻止する)機能を備えた先行スパーク出力制御部を設ける(例えば、先行スパーク出力制御部は、イグナイタと電源との間に設けたリレーを有する構成として、このリレーをオフしておくものとする)。そして、先行スパーク出力制御部は、例えば器具栓スイッチ52cから出力されるオン信号を受けたときに、イグナイタへの通電の停止を解除する(例えば、前記リレーをオンする)ようにしてもよい。なお、この場合、先行スパーク出力制御部は、器具栓スイッチ52cから出力されるオフ信号を受けると、イグナイタへの通電を停止するようにする。
【0060】
また、前記のように、イグナイタに予め通電しておく回路に、この通電を停止する(阻止する)機能を備えた先行スパーク出力制御部を設け、さらに、器具栓スイッチ52cからのオン信号出力とオフ信号出力の態様を前記実施例の態様とを逆にし(つまり、この例(変形例)では、前記実施例で器具栓スイッチ52cがオンの場合、変形例における器具栓スイッチ52cはオフとし、実施例で器具栓スイッチ52cがオフの場合、変形例における器具栓スイッチ52cはオンとし)、また、器具栓スイッチ52cは、器具栓が消火位置から点火位置に移動する途中において、オフ信号を出力する構成として、この器具栓スイッチ52cから出力されるオフ信号を受けたときに、先行スパーク出力制御部がイグナイタへの通電の停止を解除するようにしてもよい。この場合は、先行スパーク出力制御部は、器具栓スイッチ52cからのオン信号を受けると、イグナイタへの通電を停止するようにする。
【0061】
また、前記実施例では、器具栓つまみ48の角度に応じて器具栓スイッチ52a,52b,52cがオン・オフするように構成されていたが、器具栓34を押したときの(器具栓つまみ48やシャフト50を押したときの)押す方向の位置(押し込む深さ)に応じて器具栓スイッチ52a,52b,52cがオン・オフする構成としてもよい。この場合も、イグナイタ電極59で一発目の火花を飛ばした後に燃料ガスが供給されるように、器具栓スイッチ52c(マイクロスイッチ)がパイロットバーナ38への燃料ガスの供給開始よりも先にオン信号を出力するようにすることによって、前記実施例と同様の効果を奏することができる。
【0062】
さらに、前記実施例では、燃焼室60内に、給湯メインバーナ10と風呂メインバーナ39の両方を設けたが、給湯メインバーナ10と風呂メインバーナ39のうち、いずれか一方とパイロットバーナ38とを金属製の燃焼室60内に設けた構成の燃焼装置であってもよい。
【0063】
さらに、本発明の燃焼装置は、金属製半密閉空間で点火するものであれば、パイロットバーナ38を具備せずに、メインバーナにダイレクトに点火する(ダイレクト着火する)ものであってもよい。
【0064】
さらに、ガスの供給は、前記実施例のように、手動操作に応じて行われるとは限らず、電磁弁等を用いて行われるものであってもかまわない。
【0065】
さらに、前記実施例では、先行スパーク出力制御部は、マイクロスイッチにより形成された器具栓スイッチ52cのオン信号に基づいてイグナイタ(点火トランス)への通電信号を出力するようにしたが、光電式等のスイッチを設けて、このスイッチの信号(例えばオン信号)を先行スパーク出力制御部が受け、パイロットバーナ38等のバーナへの燃料ガスの供給開始よりも先に点火トランスへの通電信号を出力するようにしてもよい。また、スイッチによりイグナイタ点火トランスへの通電タイミングをコントロールするのではなく、CPU(Central Processing Unit)等を用いて、ガス電磁弁への通電に先駆けてイグナイタ(点火トランス)への通電を行ったり、通電停止の解除を行ったりする先行スパーク出力制御部を設けてもかまわない。
【0066】
なお、金属製半密閉空間で点火する際の音を低騒音とするために、本願発明の構成は有効であり、点火部位から開放空間までの長さが50cm以下の、圧力が直ぐに発散する燃焼装置に本願発明の点火方法を用いても効果はない。このような圧力が直ぐに発散する燃焼装置としては、例えば圧力上昇のない開放型機器である、例えば、台所用ガスコンロ(点火ガス量(点火時のゴトクガス消費量)が500〜2000kcal/hで、点火部位からガスの開放空間まで0cm)や、開放型5号湯沸器(点火ガス量(パイロットバーナガス消費量)が100〜300kcal/hで、点火部位からガスの開放空間まで0〜10cm)等がある。
【0067】
また、ファン付機器等、点火時にバーナ周囲に2次空気を流す機器等の燃焼装置では、本願点火方法を用いても効果はない。それというのは、これらの燃焼装置は、わざと点火音の大きい、点火に不適切なほど濃度低下した混合気をバーナに供給するためであり、この混合気は燃え切るまでの時間が短いが、バーナーヘッド(炎口)を出るとすぐに2次空気で希釈されて、ガスの燃焼範囲(爆発限界範囲)外となってしまうからである。すなわち、バーナーヘッド(炎口)を離れたガスは燃えることがなく、燃焼限界を外れて薄くなった(火がつかない)生ガスの状態で大気に放出されるので、圧力そのものが発生せず振動が発生しないためである。換言すれば、必要最小限以外のガスをファンで削除するので振動が発生しない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、金属製の燃焼室内に設けられているバーナの点火時に金属が振動する不快な音が発生することを防ぐことができるので、使い勝手が良好な燃焼装置として利用できる。
【符号の説明】
【0069】
10 給湯メインバーナ
32,36,37 ガス通路
34 器具栓
38 パイロットバーナ
39 風呂メインバーナ
48 器具栓つまみ
52a,52b,52c 器具栓スイッチ
59 イグナイタ電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の燃焼室内に設けられたバーナと、該バーナに燃料ガスを供給するガス供給手段と、該ガス供給手段から前記バーナに供給される燃料ガスに点火する点火手段を有し、該点火手段は点火トランスとイグナイタ電極とを有して該イグナイタ電極からは前記点火トランスからの高電圧を受けて火花が小刻みに複数発続けて飛ぶ構成を成し、前記バーナへの燃料ガスの供給開始よりも先に前記点火トランスへの通電が行われるように制御する先行スパーク出力制御部が設けられ、該先行スパーク出力制御部の制御により前記イグナイタ電極で一発目の火花を飛ばした後に前記燃料ガスの前記バーナへの供給が開始されるようにすることにより、前記イグナイタ電極の一発目の火花によって前記バーナの点火が行われることによる前記燃焼室の振動音の発生を防止するバーナ燃焼開始制御構成を有することを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
金属製の燃焼室内に設けられた口火用のパイロットバーナと、該パイロットバーナに燃料ガスを供給するガス供給手段と、該ガス供給手段から前記パイロットバーナに供給される燃料ガスに点火する点火手段を有し、該点火手段は点火トランスとイグナイタ電極とを有して該イグナイタ電極からは前記点火トランスからの高電圧を受けて火花が小刻みに複数発続けて飛ぶ構成を成し、また、手動により操作される器具栓を有して、該器具栓が消火位置から点火位置に移動する間に前記ガス供給手段から前記パイロットバーナへの燃料ガスの供給が開始する構成を有し、前記器具栓には該器具栓が消火位置から点火位置に移動する途中において前記パイロットバーナへの燃料ガスの供給開始よりも先に信号を出力するスイッチが設けられ、該スイッチの信号を受けて前記点火トランスへの通電が行われるように制御する先行スパーク出力制御部を有して前記イグナイタ電極で一発目の火花を飛ばした後に前記燃料ガスの前記パイロットバーナへの供給が開始されるようにすることにより、前記イグナイタ電極の一発目の火花によって前記パイロットバーナの点火が行われることによる前記燃焼室の振動音の発生を防止するバーナ燃焼開始制御構成を有することを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
燃焼室内には、パイロットバーナの炎によって着火する給湯メインバーナと風呂メインバーナとが設けられていることを特徴とする請求項2記載の燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−97924(P2012−97924A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244149(P2010−244149)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000129231)株式会社ガスター (277)
【Fターム(参考)】