説明

爆発物検知ユニット、およびゲート装置

【課題】爆発物を所持しているかどうかの判定精度を向上させた爆発物検知ユニットを提供する。
【解決手段】採取部3は、利用者がIDの入力にかかる操作を行う操作部周辺の空気を採取する。濃度検出部4は、利用者が操作部でIDの入力にかかる操作を行っているときに、採取部3が採取した空気に含まれている爆発物質の濃度を検出する。制御部2は、濃度検出部4が検出した爆発物質の濃度が第1の閾値Xを超えている利用者については当該利用者が爆発物質を所持していると判定する。また、濃度検出部4が検出した爆発物質の濃度が第1の閾値Xよりも低い第2の閾値Yに達していない利用者については当該利用者が爆発物質を所持していないと判定する。さらに、濃度検出部4が検出した爆発物質の濃度が第1の閾値Xと、第2の閾値Yとの間である利用者については再判定が必用な利用者であると判定し、IDの再入力にかかる操作を要求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テロ行為等に対する対策のために、利用者が爆発物を所持しているかどうかを検知する爆発物検知ユニット、および、この爆発物検知ユニットを適用したゲート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駅、空港、アミューズメント施設等、不特定多数の人が集まる場所では、テロ行為に対する対策として、爆発物を所持している人物を改札口や入口等で発見し、テロ行為を防止することが検討されている。例えば、爆発物を所持しているかどうかの検知が行える自動改札機(ゲート装置)の提案がなされている(非特許文献1参照)。具体的には、改札通路を通行する利用者が無線通信エリア内に非接触ICカードを翳したときに、無線通信エリアを含むその周辺の空気を採取する。この採取した空気に含まれている爆発物質(爆薬)の濃度を検出する。例えば、トリニトロトルエン、黒色火薬、TATP、硝酸アンモニウム等の爆薬の濃度を検知する。そして、検出した濃度に基づいて当該利用者が爆発物を所持しているかどうかを判定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/016/shiryo/attach/__icsFiles/afieldfile/2009/08/27/1283368_2.pdf[科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 安全・安心科学技術委員会(第21回)資料3第1頁、第2頁]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、爆発物を所持しているか、所持していないかにかかる判定を、検出した爆薬の濃度が、予め定めた閾値を超えているか、超えていないかに基づいて判定している。
【0005】
一方、利用者の手や衣服(特に袖口)に付着している爆薬の量が同じであっても、非接触ICカードの翳し方によって、無線通信エリアを含むその周辺の空気を採取する採取口と、利用者の手や衣服との相対的な位置関係が変化する。この相対的な位置関係の変化にともなって、採取した空気に含まれる爆薬の濃度が変化する。このため、爆発物を所持している利用者であっても、利用者の手や 衣服に付着している爆薬の量に比べて、検出される濃度が低くなって、爆発物を所持していないと誤判定することがある。
【0006】
また、爆発物を所持していない利用者であっても、ごく小量の爆薬が付着していることがある。例えば、花火大会の見学者や、化学工場で働いている人等は、ごく小量ではあるが爆薬が付着している可能性が高い。自動改札機のように、多くの利用者が連続的に利用する装置では、各利用者がごく小量であっても、無線通信エリア内に爆薬を落としていくと、この爆薬が無線通信エリア内に蓄積され、溜まっていく。その結果、ある利用者について検出した爆薬の濃度が、この無線通信エリア内に溜まっている爆薬によって大きくなり、爆発物を所持していると誤判定することがある。
【0007】
このように、従来の構成では、爆発物を所持しているかどうかの判定精度が十分に確保できていなかった。また、この誤判定により、爆発物を所持している利用者を通過させて、テロ行為を未然に防止することができなかったり、逆に、爆発物を所持していない利用者の通行を無駄に制限し、当該利用者に対するサービスを低下させたりする問題がある。
【0008】
この発明の目的は、利用者が爆発物を所持しているかどうかの判定精度を向上させた爆発物検知ユニット、および、この爆発物検知ユニットを適用したゲート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の爆発物検知ユニットは、上述の課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0010】
採取部は、利用者が入力操作を行う操作部周辺の空気を採取する。この操作部は、キー操作によってID等を入力する構成であってもよいし、ID等をカード情報として記録したカード等の媒体からカード情報を読み取る構成であってもよい。この種の媒体としては、無線通信機能を有し、カード情報をメモリに記憶した非接触ICカード、カード情報を磁気ストライプに記録した磁気カード、カード情報をバーコードで印刷したカード等がある。
【0011】
濃度検出部は、利用者が操作部で入力操作を行っているときに、採取部が採取した空気に含まれている爆発物質の濃度を検出する。濃度検出部は、操作部で入力操作を行っている利用者の手や衣服(特に袖口)に付着している爆発物質の量に応じた濃度を検出する。濃度検出部は、爆発物質として、トリニトロトルエン、黒色火薬、TATP、硝酸アンモニウム等の爆薬の濃度を検出する。
【0012】
判定部は、濃度検出部が検出した爆発物質の濃度が第1の閾値を超えている利用者については当該利用者が爆発物質を所持していると判定する。また、濃度検出部が検出した爆発物質の濃度が第1の閾値よりも低い第2の閾値に達していない利用者については当該利用者が爆発物質を所持していないと判定する。さらに、判定部は、濃度検出部が検出した爆発物質の濃度が第1の閾値と、第2の閾値との間である利用者については、再判定が必用な利用者であると判定する。このように、判定部は、爆発物質を所持しているかどうかについての判定が曖昧になる利用者については、再判定が必用な利用者であると判定する。
【0013】
第1の閾値は、このレベルを超えると、爆発物質を所持している可能性が高いと判定できるレベルである。第2の閾値は、このレベルに達しないと、爆発物質を所持していない可能性が高いと判定できるレベルである。第1の閾値と第2の閾値との間は、爆発物を所持しているかどうかについて、一概に判定できないレベルである。すなわち、第1の閾値と第2の閾値との間は、何らかの要因で、爆発物質の濃度が低く検出された利用者であるのか、逆に、爆発物質の濃度が高く検出された利用者であるのか、判断できないグレーゾーンである。
【0014】
出力部は、判定部が再判定が必用であるとした利用者、すなわち検出した爆発物質の濃度が上述のグレーゾーンであった利用者、に対して、操作部での再入力操作の要求にかかる出力を行う。このとき、出力部は、操作部での再入力操作を要求するだけであり、付着している爆発物質の濃度の再検出を利用者に通知するわけではない。したがって、利用者は、自分が、爆発物質の所持に関して再判定されることに気づかない。
【0015】
また、判定部が利用者に対して再判定が必用であると判定したとき、操作部周辺の空気を対流させ、操作部周辺に残留している爆発物質を取り除くようにしてもよい。これにより、濃度検出部が、再入力操作を行う利用者について、その利用者に付着している爆発物質の濃度を適正に検出できる。
【0016】
さらに、出力部が操作部で再入力操作の要求にかかる出力を行った利用者については、判定部が、第1の閾値を、この第1の閾値よりも低い値(ただし、第2の閾値よりも大きい値)に置き換えて、該利用者が爆発物質を所持しているかどうかを判定するようにしてもよい。
【0017】
この爆発物検知ユニットは、駅や空港等の自動改札機、オフィスビル等の入退室管理装置、アミューズメント施設等の入場ゲート等、様々な機器に適用でき、不特定多数の人が集まる場所でのテロ行為を未然に防止でき、且つ、利用者に対するサービスの低下が抑えられる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、利用者が爆発物を所持しているかどうかの判定精度を向上でき、テロ行為に対する防止力の強化や、利用者に対するサービスの向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】爆発物検知ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】検出した爆薬の濃度と、爆発物を所持しているかどうかの判定結果と、の関係を説明する図である。
【図3】爆発物検知ユニットの動作を示すフローチャートである。
【図4】自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。
【図5】自動改札機の外観を示す概略図である。
【図6】自動改札機の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0021】
まず、この発明にかかる爆発物検知ユニットの実施形態について説明する。図1は、この爆発物検知ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。この爆発物検知ユニット1は、制御部2と、採取部3と、濃度検出部4と、対流部5と、入出力部6と、を備えている。この爆発物検知ユニット1は、利用者がID等の入力にかかる入力操作を行う操作部を有する上位装置に組み込むことができる。例えば通路における利用者の通行を制限するゲート装置(駅、空港等に設置されている自動改札機や、アミューズメント施設の出入口に設置される入退場ゲート装置等)や、セキュリティルーム等の扉に取り付けた電子錠の施錠/開錠を制御する入退室制御装置や、入出金取引等の取引処理を行うATM等の自動取引処理装置等の様々機器に組み込むことができる。
【0022】
この爆発物検知ユニット1は、組み込まれた上位装置を利用する利用者が爆発物を所持しているかどうかを判定し、その判定結果を上位装置に通知する。上位装置の操作部は、キー操作によってID等を入力する構成であってもよいし、ID等をカード情報として記録したカード等の媒体からカード情報を読み取る構成であってもよい。この種の媒体としては、無線通信機能を有し、カード情報をメモリに記憶した非接触ICカード、カード情報を磁気ストライプに記録した磁気カード、カード情報をバーコードで印刷したカード等がある。
【0023】
なお、この爆発物検知ユニット1を組み込む上位装置は、利用者がID等の入力にかかる入力操作を行う操作部を有する機器や装置であれば、ここで例示していない機器や装置であってもよい。
【0024】
制御部2は、爆発物検知ユニット1本体各部の動作を制御する。採取部3は、図示していない上位装置の操作部周辺の空気を吸気する。
【0025】
濃度検出部4は、採取部3が吸気した空気に含まれているトリニトロトルエン、黒色火薬、TATP、硝酸アンモニウム等の爆薬の濃度を検出する。濃度検出部4は、採取部3が吸気した空気に含まれている爆薬の成分をイオン化し、その質量を検出することにより、爆薬の濃度を検出する。濃度検出部4については、公知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0026】
対流部5は、上位装置の操作部周辺の空気を対流させる。対流部5は、例えば操作部周辺に風を送風する送風機を有する構成であってもよいし、操作部周辺の空気を吸気する吸気機で構成してもよいし、さらには、送風機、および吸気機の両方を有する構成であってもよい。
【0027】
入出力部6は、図示していない上位装置との間における、制御信号等の入出力を制御する。
【0028】
また、制御部2は、濃度検出部4で検出した爆薬の濃度に基づいて、利用者が爆発物を所持しているかどうかを判定するのに用いる閾値をメモリに記憶している。メモリに記憶している閾値は、上限閾値X、および下限閾値Yの2つである。上限閾値Xが,この発明で言う第1の閾値に相当し、下限閾値Yが,この発明で言う第2の閾値に相当する。上限閾値Xは、このレベルを超えると、爆発物質を所持している可能性が高いと判定できるレベルである。また、下限閾値Yは、このレベルに達しないと、爆発物質を所持していない可能性が高いと判定できるレベルである。また、上限閾値Xと下限閾値Yとの間は、何らかの要因で、爆発物質の濃度が低く検出された利用者であるのか、逆に、爆発物質の濃度が高く検出された利用者であるのか、判断できない、すなわち爆発物を所持しているかどうかについて精度良く判定できない、グレーゾーンである。
【0029】
次に、この爆発物検知ユニット1の動作について説明する。図3は、この爆発物検知ユニットの動作を示すフローチャートである。この爆発物検知ユニット1は、通常、対流部5を停止しており、必用に応じて一時的に動作させ、上位装置の操作部周辺の空気を対流させる。この爆発物検知ユニット1を組み込んだ上位装置は、利用者が操作部においてID等の入力にかかる入力操作を開始すると、判定指示を爆発物検知ユニット1に入力する。この上位装置からの判定指示は、入出力部6に入力される。
【0030】
爆発物検知ユニット1は、上位装置から判定指示が入力されると(s1)、採取部3が操作部周辺の空気を吸気し、採取する(s2)。s2において、採取部3が操作部周辺の空気を吸気する時間は、予め定めた時間T1である。
【0031】
爆発物検知ユニット1は、濃度検出部4において採取部3で今回吸気した操作部周辺の空気に含まれている爆薬(トリニトロトルエン、黒色火薬、TATP、硝酸アンモニウム等)の濃度を検出する(s3)。濃度検出部4は、採取部3が吸気した空気に含まれている爆薬の成分をイオン化し、その質量を検出することにより、爆薬の濃度を検出する。
【0032】
上述したように、濃度検出部4が爆薬の濃度を検出する空気は、利用者が操作部においてID等の入力にかかる入力操作を行っているときに、採取部3で採取した操作部周辺の空気である。したがって、濃度検出部4が爆薬の濃度を検出する空気には、操作部でID等の入力にかかる入力操作を行っている利用者の手や衣服(特に袖口)に付着していた爆薬が含まれている。
【0033】
制御部2は、濃度検出部4が検出した爆薬の濃度が、上限閾値Xを超えていれば、利用者が爆発物を所持している旨を上位装置に通知する(s4、s5)。この通知は、入出力部6において行う。
【0034】
また、制御部2は、濃度検出部4が検出した爆薬の濃度が、下限閾値Yに達していなければ、利用者が爆発物を所持していない旨を上位装置に通知する(s6、s7)。この通知も、入出力部6において行う。
【0035】
また、制御部2は、濃度検出部4が検出した爆薬の濃度が、上限閾値Xと、下限閾値Yとの間であれば、この利用者について再判定が必用であると判定し、操作部での再入力操作の要求にかかる通知を上位装置に対して行う(s8)。この通知も、入出力部6において行う。
【0036】
上位装置は、爆発物検知ユニット1が上述した処理を行っている間、操作部において入力されたID等に基づいて利用者の認証処理等を行っている。上位装置は、利用者が認証でき、且つ、爆発物検知ユニット1から爆発物を所持していない旨の通知があれば、当該利用者を適正利用者と判断する。
【0037】
また、上位装置は、利用者が認証できなければ、爆発物検知ユニット1から爆発物を所持していない旨の通知があっても、当該利用者を不適正利用者と判断する。
【0038】
また、上位装置は、爆発物検知ユニット1から爆発物を所持している旨の通知があれば、利用者が認証できたかどうかにかかわらず、爆発物所持者と判断する。
【0039】
なお、適正利用者、不適正利用者、および爆発物所持者に対する上位装置の処理は、その上位装置の種類や、使用環境等によって決めればよい。
【0040】
さらに、上位装置は、爆発物検知ユニット1から操作部で再入力操作の要求にかかる通知(再判定が必用である旨の通知)があれば、利用者が認証できたかどうかにかかわらず、利用者に対してID等の入力エラーにともなう認証不良が発生したことを通知し、操作部での再入力操作を利用者に要求する表示出力や音声出力を行う。
【0041】
なお、利用者は、爆発物を所持しているかどうかの判定が行われていることを知らされていない。
【0042】
爆発物検知ユニット1は、s8で、操作部での再入力操作の要求にかかる通知を上位装置に対して行うと、対流部5を一時的に動作させる(s9)。これにより、操作部周辺の空気を対流させ、操作部周辺に蓄積し、残留している爆薬を取り除くことができる。
【0043】
爆発物を所持しているかどうかについての再判定が必用であると判定される主な原因は、
(1)実際に爆発物を所持している利用者であるが、利用者の手や衣服(特に袖口)に付着している爆薬が、採取部3における操作部周辺の空気を採取する吸気口と、IDを入力している利用者の手や衣服と、の相対的な位置関係によって、爆薬が適正に採取できなかった場合
(2)実際に爆発物を所持していない利用者であるが、先に利用した複数人の利用者が操作部周辺に少しずつ落としていった爆薬が蓄積しており、この蓄積している爆薬を採取した場合
の2つである。
【0044】
爆発物検知ユニット1は、上位装置から再判定指示が入力されるのを待つ(s10)。上位装置は、ID等の再入力を要求した利用者が、操作部においてID等の再入力にかかる再入力操作を開始すると、再判定指示を爆発物検知ユニット1に入力する。爆発物検知ユニット1は、上位装置から再判定指示が入力されると、採取部3が操作部周辺の空気を吸気し(s11)、s3以降の処理を繰り返す。
【0045】
s12では、採取部3が操作部周辺の空気を採取するための吸気時間を、上述のs2での時間T1よりも長い、T2に設定する。このように、採取部3が操作部周辺の空気を吸気する時間を長くしたことにより、利用者の手や衣服(特に袖口)に付着している爆薬をより確実に採取できる。したがって、上述の(1)が原因で、再判定が必用であると判定された利用者であれば、この再判定で、爆発物を所持しているとの判定が行えるようになる。
【0046】
また、爆発物検知ユニット1は、上述したように、s9で対流部5を一時的に動作させ、操作部周辺の空気を対流させることで、この時点で操作部周辺に残留している爆薬を取り除いている。したがって、上述の(2)が原因で、再判定が必用であると判定された利用者であれば、この再判定で、爆発物を所持していないとの判定が行えるようになる。
【0047】
このように、この爆発物検知ユニット1は、グレーゾーン(爆薬の検出濃度が上限閾値Xと、下限閾値Yとの間)の利用者に対して、再判定を行うので、利用者が爆発物を所持しているかどうかの判定精度を向上できる。
【0048】
また、上述したように、この再判定では、対流部5を一時的に動作させ、操作部周辺の空気を対流させたり、採取部3が操作部周辺の空気を吸気する時間を長くするので、利用者が爆発物を所持しているかどうかの判定精度を一層向上できる。
【0049】
なお、同じ利用者に対して、爆発物を所持しているかどうかの再判定を所定回数(例えば、1回、2回等)繰り返しても、毎回、再判定が必用であると判定される利用者については、便宜的に爆発物を所持していないと判定してもよいし、爆発物を所持していると判定してもよい。この判定は、その場所のセキュリティレベル等に応じて決めればよい。
【0050】
また、爆発物検知ユニット1は、爆発物を所持しているかどうかの再判定を行うときには、上限閾値Xを下げるようにしてもよい。例えば、再判定時には、上限閾値Xを、メモリに記憶している値の5%や10%下げた値にしてもよい。
【0051】
次に、上述の爆発物検知ユニット1を組み込んだ自動改札機について説明する。図4は、この自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。図5は、この自動改札機の外観を示す概略図である。この自動改札機10は、駅の改札口に設置され、適正な乗車券を所持していない利用者や、爆発物を所持している利用者が改札通路を通行して、駅構内に入場したり、駅構内から出場したりするのを制限する。この自動改札機10は、制御部11と、乗車券処理部12と、利用者検知部13と、表示部14と、扉開閉部15と、報知部16と、上述の爆発物検知ユニット1と、を備えている。図5は、2台の自動改札機10を対向して配置し、これらの自動改札機10の間に形成された改札通路における利用者の通行方向を双方向にしたものである。
【0052】
制御部11は、自動改札機10本体各部の動作を制御する。爆発物検知ユニット1は、上述したように改札通路を通行する利用者が爆発物を所持しているかどうかの判定を行い、その結果を上位装置である自動改札機10の制御部11に通知する。
【0053】
乗車券処理部12は、改札通路を通行する利用者が所持している乗車券を受け付け、受け付けた乗車券に記録されている乗車券ID等を含む乗車券情報の読み取りや、書き込みを行う。この乗車券処理部12は、非接触ICカードとの間で無線通信を行う無線通信部等を有している。乗車券処理部12が、この発明でいう操作部に相当する。改札通路の入口側には、非接触ICカードと無線通信を行うためのアンテナ12aが設けられている。非接触ICカードは、無線通信機能を有し、乗車券情報を内蔵メモリに記録している乗車券である。乗車券処理部12は、非接触ICカードとの無線通信により、その非接触ICカードに記録されている乗車券情報の読み取りや、当該非接触ICカードに対する乗車券情報の書き込みを行う。
【0054】
利用者検知部13は、適当な間隔で改札通路に沿って設けた複数のセンサにより、改札通路内における利用者の位置を検知する。すなわち、利用者検知部13は、利用者が改札通路に進入してから、改札通路を通り抜けるまでの間、改札通路における利用者の位置を追跡する。具体的には、センサは、透過型の光センサであり、対向配置している一方の側の自動改札機10に複数の発光部を設け、他方の側の自動改札機10に受光部を設けた構成である。受光部を設けた側の自動改札機10は、受光部毎に、その受光部における受光の有無によって利用者の有無を検知する。発光部を設けた自動改札機10は、受光部を設けた側の自動改札機10から検出結果を得る。
【0055】
表示部14は、改札通路の中央付近に設けた表示器14aに、改札通路を通行している利用者に対する案内メッセージ等を表示する。また、扉開閉部15は、改札通路の出口側に設けた扉15aを開閉することにより、改札通路における利用者の通行を制限する。
【0056】
なお、自動改札機10は、改札通路の入口側にも扉15aを有している。この入口側の扉15aは、対向する側の自動改札機10からの指示にしたがって、扉開閉部15が開閉する。
【0057】
報知部16は、改札通路に進入した利用者が適正な乗車券を所持していない場合や、爆発物を所持している場合に、警告音等による報知を行う。また、利用者が、適正な乗車券を所持していない場合と、爆発物を所持している場合とで、警告音を異ならせている。駅係員は、警告音によって、適正な乗車券を所持していない利用者であるか、爆発物を所持している利用者であるか、の判断が行える。
【0058】
爆発物検知ユニットの採取部3は、アンテナ12a周辺の空気を吸気し、採取するように取り付けている。また、対流部5は、アンテナ12a周辺の空気を対流させるように取り付けている。
【0059】
次に、この自動改札機10の動作について説明する。図6は、自動改札機の動作を示すフローチャートである。自動改札機10は、乗車券処理部12において、利用者がアンテナ12aに翳した非接触ICカード(乗車券)との無線通信を開始すると(s21)、爆発物検知ユニット1に対して、上述した判定指示を入力する(s22)。これにより、爆発物検知ユニット1が、図3に示した処理を開始する。
【0060】
自動改札機10は、非接触ICカード(乗車券)との無線通信により取得した乗車券情報に基づいて、改札通路における利用者の通行可否を判定する(s23)。s23では、利用者が所持している乗車券が適正であるかどうかを判定している。また、自動改札機10は、必用に応じて、非接触ICカードに対する乗車券情報の書き込みを行う。自動改札機10は、爆発物検知ユニット1における判定が入力されるのを待つ(s24)。
【0061】
自動改札機10は、爆発物検知ユニット1が爆発物を所持している利用者であると判定した場合、報知部16において、爆発物を所持している利用者であることを駅係員等に通知する警告報知を行う(s25、s26)。また、s26では扉開閉部15が扉15aを閉し、この利用者が改札通路を通行するのを制限する。
【0062】
また、自動改札機10は、爆発物検知ユニット1が爆発物を所持していない利用者であると判定した場合、s23で、この利用者について改札通路通行を許可すると判定していれば、扉開閉部15が扉15aを開して、当該利用者が改札通路を通行するのを許可する(s27、s28、s29)。一方、自動改札機10は、爆発物検知ユニット1が爆発物を所持していない利用者であると判定した場合であっても、s23で、この利用者について改札通路通行を許可しないと判定していれば、扉開閉部15が扉15aを閉して、当該利用者が改札通路を通行するのを制限する(s27、s28、s30)。また、自動改札機10は、報知部16において、適正な乗車券を所持していない利用者であることを駅係員等に通知する警告報知を行う(s31)。
【0063】
なお、s26における警告報知と、s31における警告報知とは異なる。また、自動改札機10における上述の乗車券が不適正であるとの判断は、実際に乗車券が不適正であった場合だけでなく、乗車券情報の読み取り不良が発生している場合もある。
【0064】
また、自動改札機10は、爆発物検知ユニット1が再判定が必用な利用者であると判定した場合、表示部14が表示器14aに乗車券情報の読み取り不良が発生したことを表示し(s32)、当該利用者に対して非接触ICカードを再度アンテナ12aに翳すことを促す。このとき、自動改札機10は、扉開閉部15が扉15aを閉するとともに、報知部16が警告報知を行う。
【0065】
自動改札機10は、利用者が非接触ICカードを再度アンテナ12aに翳すと(s33)、爆発物検知ユニット1に対して、上述した再判定指示を入力し(s34)、s24に戻る。
【0066】
また、自動改札機10は、再判定指示を入力したときに、すでに乗車券情報の読み取りが適正に完了していれば、s33でアンテナ12aに翳された非接触ICカードから乗車券情報の読み取りを行う必要はない。反対に、再判定指示を入力したときに、乗車券情報を適正に読み取っていなければ、s33でアンテナ12aに翳された非接触ICカードから乗車券情報の読み取りを行えばよい。
【0067】
このように、この自動改札機10は、組み込んだ爆発物検知ユニット1が、利用者が爆発物を所持しているかどうかについて精度よく判定できるので、爆発物を所持している利用者を通過させ、テロ行為を未然に防止できなかったり、逆に、爆発物を所持していない利用者の通行を無駄に制限し、当該利用者に対するサービスを低下させることがない。したがって、テロ行為に対する防止力の強化や、利用者に対するサービスの向上が図れる。
【0068】
なお、この発明にかかる爆発物検知ユニット1は、上述した自動改札機10だけでなく、利用者がID等の入力にかかる入力操作を行う操作部を有する装置であれば、様々な装置に組み込むことができる。
【符号の説明】
【0069】
1…爆発物検知ユニット
2…制御部
3…採取部
4…濃度検出部
5…対流部
6…入出力部
10…自動改札機
11…制御部
12…乗車券処理部
12a…アンテナ
13…利用者検知部
14…表示部
14a…表示器
15…扉開閉部
15a…扉
16…報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が入力操作を行う操作部周辺の空気を採取する採取部と、
利用者が前記操作部で入力操作を行っているときに、前記採取部が採取した空気に含まれている爆発物質の濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部が検出した爆発物質の濃度が第1の閾値を超えている利用者については当該利用者が爆発物質を所持していると判定し、前記濃度検出部が検出した爆発物質の濃度が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値に達していない利用者については当該利用者が爆発物質を所持していないと判定し、さらに、前記濃度検出部が検出した爆発物質の濃度が前記第1の閾値と、前記第2の閾値との間である利用者については再判定が必用な利用者であると判定する判定部と、
前記判定部が再判定が必用であると判定した利用者に対して、前記操作部での再入力操作の要求にかかる出力を行う出力部と、を備えた爆発物検知ユニット。
【請求項2】
前記判定部が利用者に対して再判定が必用であると判定したとき、前記操作部周辺の空気を対流させる対流部を備えた請求項1に記載の爆発物検知ユニット。
【請求項3】
前記判定部は、前記出力部が前記操作部で再入力再操作の要求にかかる出力を行った利用者については、前記第1の閾値を、この第1の閾値よりも低い値に置き換えて、該利用者が爆発物質を所持しているかどうかを判定する、請求項1、または2に記載の爆発物検知ユニット。
【請求項4】
前記採取部は、前記出力部が前記操作部で再入力再操作の要求にかかる出力を行った利用者については、その利用者が前記操作部で再入力操作を行っているとき、当該操作部周辺の空気を採取する時間を長くする、請求項1〜3のいずれかに記載の爆発物検知ユニット。
【請求項5】
前記操作部は、無線通信エリア内に翳された無線通信媒体との無線通信により、その無線通信媒体が記憶している媒体情報を取得する、請求項1〜4のいずれかに記載の爆発物検知ユニット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の爆発物検知ユニットを備え、通路における利用者の通行を制限するゲート装置であって、
前記爆発物検知ユニットの判定部により、爆発物質を所持していると判定された利用者については、その旨を報知する報知部を備えた、ゲート装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−43130(P2012−43130A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183107(P2010−183107)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】