片口鰯の搬送処理装置
【課題】 搬送トラフの搬送始端部上に定量的に供給される片口鰯において、頭部を搬送方向に向けている片口鰯のみを搬送終端から搬出させて爾後の処理を容易に行えるようにする。
【解決手段】 搬送トラフ1を一体的に前後に往復振動させて前方への振動時にこのトラフ1の底面板1aの搬送始端部上に供給される片口鰯Aを前進移動させ、底面板1aの前部側に設けている落下口3に達した時に、尾部が前方に向けている片口鰯Aの場合には、該尾部を落下口3の上方からのエア噴流圧によって落下口3から下方に撓ませると共に前進移動に従って該落下口3の前端縁下面に沿って下方に落下、排除し、頭部が前方に向けている片口鰯Aの場合にはその頭部側の剛直性によってエア噴流圧に抗して落下口3を通過させ、搬送終端部から搬出するように構成している。
【解決手段】 搬送トラフ1を一体的に前後に往復振動させて前方への振動時にこのトラフ1の底面板1aの搬送始端部上に供給される片口鰯Aを前進移動させ、底面板1aの前部側に設けている落下口3に達した時に、尾部が前方に向けている片口鰯Aの場合には、該尾部を落下口3の上方からのエア噴流圧によって落下口3から下方に撓ませると共に前進移動に従って該落下口3の前端縁下面に沿って下方に落下、排除し、頭部が前方に向けている片口鰯Aの場合にはその頭部側の剛直性によってエア噴流圧に抗して落下口3を通過させ、搬送終端部から搬出するように構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送始端部上に定量的に供給される片口鰯において、頭部が搬送方向に向けている片口鰯のみを搬送終端から搬出させるように片口鰯の搬送処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鯖や鰺などの魚体の頭部を搬送方向に向けた状態にして搬送して爾後の魚体の処理を容易に行えるようにするための搬送装置や頭部揃え装置としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているように、水平な底面を魚体の鱗が係合可能な摩擦係止面に形成している搬送トラフをこの搬送トラフの長さ方向である前後方向に往復振動させ、搬送トラフ上に供給された魚体の鱗を振動する搬送トラフの上記摩擦係止面に係脱させて鱗が前後に振動する摩擦係止面に係合した際にその係合方向に頭部を向けて魚体を搬送するように構成した装置が知られている。
【0003】
また、特許文献3に記載されているように、底面を魚体の鱗が係合可能な摩擦係止面に形成している搬送トラフをその長さ方向を前後方向に向け且つ魚体の搬送始端側である後端から搬送終端側である前端に向かって斜め上方に傾斜させた状態にすると共に前後方向に往復振動させるように構成し、さらに、その搬送始端部上に、上記特許文献1、2に記載された装置等によって頭部を前方に向けられた状態にして魚体を供給するように構成して、この魚体を搬送トラフの前方への振動時にその鱗に摩擦係止面を係合させることにより、魚体を上方に持ち上げるようにしながら前方に搬送するように構成した搬送装置も開発されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−39538号公報
【特許文献2】実公平4−20221号公報
【特許文献3】実公昭61−38455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載の装置によれば、鯖や鰺などのように搬送トラフの底面の摩擦係止面に係合可能な鱗を有する魚体であれば、その頭部を一方向に向けた状態にしてその方向に搬送することが可能であるが、摩擦係止面に係合するような鱗を有していない片口鰯の場合には、この装置に供給して搬送トラフを前後方向に振動させても、片口鰯をその頭部を進行方向に向けた状態にして搬送することができない。
【0006】
一方、特許文献3に記載されている搬送装置によれば、搬送トラフを搬送始端側である後端から搬送終端側である前端に向かって斜め上方に傾斜させていると共にこの搬送トラフを前後方向に往復振動させて前方への振動時には摩擦係止面を前方に向かって斜め上方に突き上げるように作動させるように構成しているので、搬送トラフの傾斜角度を比較的緩やかに構成しておくことによって、鱗を有していない片口鰯であっても、搬送トラフの前方への振動時には片口鰯を持ち上げるようにしながら前方に移動させ、後方への振動時にはその位置で摩擦係止面上に定置させながら搬送することができが、この場合、片口鰯が摩擦係止面上でその頭部を前後いずれの方向に向けていてもその状態で前方に向かって搬送されることになり、従って、搬送終端側からは尾部が前方側に向けている片口鰯も搬出されて頭部が前方側に向けている片口鰯のみを搬出することができない。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、搬送始端部上に頭部の向きをランダムな方向に向けた状態にして供給される片口鰯において、尾部が搬送方向に向けている片口鰯を搬送途上で排除し、頭部が前方側に向けている片口鰯のみを搬送終端部から搬出可能にした片口鰯の搬送処理装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の片口鰯の搬送処理装置は、請求項1に記載したように、定量の片口鰯をその体長方向を搬送方向に向けた状態で搬送する一定幅を有する細長い底面板を有し、且つ、この底面板の搬送終端側である前部に前後方向の開口幅が片口鰯の尾部の長さに略等しい落下口を設けていると共にこの落下口の前方側に搬出開口部を設けてなる搬送トラフと、この搬送トラフを前後方向に振動させて該搬送トラフの底面板上を搬送中の片口鰯を斜め前方に向かって突き上げる方向に進行させるトラフ駆動手段と、搬送トラフに設けている上記落下口の上方に配設されてこの落下口に向かって流体を噴射し、落下口上を前進中の片口鰯の尾部をその噴流圧によって落下口から下方に撓ませる噴射口を有する流体噴射手段と、搬送トラフの後端部側に設けられた片口鰯の供給部とから構成している。
【0009】
このように構成した片口鰯の搬送処理装置において、請求項2に係る発明は、上記搬送トラフの下方に一定間隔を存してこの搬送トラフを上側搬送トラフとして下側搬送トラフを並設し、この下側搬送トラフの底面板において、上記上側搬送トラフの底面板に設けている落下口よりも前方位置に該落下口と同じ落下口を設けていると共にこの落下口の上方に下側流体噴射手段を配設してあり、さらに、これらの上下搬送トラフを一体的にトラフ駆動装置により前後方向に振動させるように構成していることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3に係る発明は、上記上下搬送トラフを左右に対称的に配設し、これらの搬送トラフを一体的にトラフ駆動装置により前後方向に振動させるように構成していることを特徴とし、請求項4に係る発明は、搬送トラフを片口鰯の搬送始端側である後端から搬出開口部を設けた前端に向かって斜め上方に向かって緩傾斜させていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、上記トラフ駆動手段の好ましい構造であって、搬送トラフの下方に設けている固定台の前後部に一定長さを有する前後脚体の下端部を前後方向に往復回動可能に支持させると共にこれらの前後脚体を上端に向かって斜め後方に傾斜させてその上端を下側搬送トラフの外底面における前後部に前後方向に往復回動自在に連結し、さらに、前後脚体の一方に、駆動モータによって前後方向に往復動するロッド体を連結して前後脚体を後方に傾斜した位置と起立する位置との間で下端を支点として往復回動させるように構成している。
【0012】
請求項6に係る発明は、上記流体噴射手段の好ましい構造であって、搬送トラフの底面板に設けている落下口の上方に該落下口に向かってエアを噴射するエア噴射口を設けたエア供給管と、このエア供給管にエア供給ホースを通じて高圧エアを供給するブロワとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、定量の片口鰯をその頭部又は尾部を搬送方向にランダムに向けた状態で搬送する一定幅を有する細長い底面板を有する搬送トラフを前後方向に往復振動させて該底面板上を搬送中の片口鰯に斜め前方に向かって突き上げる方向に進行させる搬送力を伝達するように構成しているので、片口鰯の頭部が前後いずれの方向に向けられていても搬送始端部上に供給される全ての片口鰯を横臥状態で搬送終端側に向かって確実に搬送することができる。
【0014】
その上、この搬送トラフの底面板の前部に前後方向の幅が片口鰯の尾部の長さに略等しい落下口を設けていると共に、この落下口の上方に落下口に向かって流体を噴射する噴射ノズルを有する流体噴射手段を配設しているので、尾部を前方側に向かって搬送されている片口鰯の該尾部が落下口上に達した時に、噴射口からの流体の噴流圧によって該尾部を落下口の後端縁を支点として下方に撓ますことができ、この状態からこの片口鰯が前後方向に振動する搬送トラフによる斜め前方への搬送力によってさらに前進した時に尾部を落下口の前端縁の下面側に係合状態に摺接させることができと共に前進するに従ってこの落下口の前端縁の下面に沿って尾部から胴部を下方に移動させなから該片口鰯を落下口から円滑に落下させることができる。従って、尾部を前方側に向けている片口鰯を搬送トラフの前端の搬出開口部に達するまでに、搬送トラフから確実に排除することができる。
【0015】
一方、頭部を前方側に向けて搬送トラフの底面板上を該搬送トラフの前後方向の振動力により前方に搬送される片口鰯の該頭部が落下口上に達しても、頭部側は、細くて薄い尾部側よりも太くて剛直性を有しているために、上方からの流体の噴出圧にもかかわらず下方に撓むことがなく、そのまま落下口上を前方に通過していくことができると共に頭部の通過に引き続いてその尾部が落下口上に達した場合においても、上記流体の噴出圧によって該尾部が落下口の前端縁を支点として下方に撓むが、搬送トラフによる斜め前方への搬送力によって尾部が落下口の前端縁上を摺接しながら前方に移動して落下口を通過し、落下口を通じて排除されることなく確実に搬送終端側に向かって搬送することができる。従って、搬送トラフの搬送終端に設けている排出開口部からは、頭部を前方に向けている片口鰯のみを搬出することができる。
【0016】
さらに、請求項2に係る発明によれば、上記搬送トラフを上側搬送トラフとしてこの搬送トラフの下方に下側搬送トラフを並設し、これらの上下搬送トラフを一体的にトラフ駆動装置により前後方向に振動させるように構成しているので、上側搬送トラフの落下口から尾部を先頭側にして落下する片口鰯をこの下側搬送トラフの底面板上に受止させることができる。この際、上側搬送トラフの落下口から片口鰯が落下する際に、上方からの流体の噴流圧により落下口の後端縁を支点して尾部側が後方に回動しようとする方向に付勢されながら落下口から落下するので、落下中にその尾部側が後方に、頭部側が前方に向くように反転させながら下側搬送トラフの底面板上に落下させることができ、従って、上側搬送トラフに対する下側搬送トラフの配置間隔を適宜に設定しておくことによって、上側搬送トラフの落下口から尾部を先頭にして落下する片口鰯をその頭部が搬送側に向けた状態となるように下側搬送トラフ上に落下させることができ、下側搬送トラフにおいてもその搬出開口部から片口鰯をその頭部を前方に向けた状態にして搬出することができる。
【0017】
また、この下側搬送トラフの底面板において、上側搬送トラフの底面板に設けている落下口よりも前方位置に該落下口と同じ構造の落下口を設けていると共にこの下側搬送トラフの落下口の上方に下側流体噴射手段を配設しているので、上側搬送トラフの落下口から下側搬送トラフの底面板上に落下した片口鰯がその尾部を前方に向けた状態となっている場合には、該片口鰯が前方に搬送されてこの下側搬送トラフの底面前端部側に設けている落下口上にその尾部が達した時に、上記同様にして上方からの噴流圧により該片口鰯の尾部を落下口から下方に撓ませると共に搬送トラフの振動による搬送力によって落下口から落下させて下側搬送トラフ上から確実に排除することができる。この下側搬送トラフの後端側から尾部を前方に向けて搬送されてくる片口鰯も同様にして上記落下口から下方に排除することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、上記上下搬送トラフを左右に対称的に配設し、これらの搬送トラフを一体的にトラフ駆動手段により前後方向に振動させるように構成しているので、頭部が前方に向けている片口鰯のみを各搬送トラフの排出開口部から搬出されるように多量の片口鰯を能率よく処理することができる。
【0019】
さらに、請求項4に係る発明によれば、搬送トラフを片口鰯の搬送始端側である後端から搬出開口部を設けた前端に向かって斜め上方に緩傾斜させているので、落下口の前端縁は後端縁よりも高位置となり、従って、尾部を前方に向けた状態で搬送されてくる片口鰯の該尾部が落下口上に達して上記のように上方からの噴流圧により落下口の後端縁を支点として下方に撓むと、その尾部の先端を落下口の前端縁の下方に簡単に位置させることができ、落下口からの該片口鰯の排除が一層円滑に行うことができる。
【0020】
上記請求項1乃至請求項3に係る発明において、トラフ駆動手段は、請求項5に記載したように、固定台上に搬送トラフを下端から上端に向かって斜め後方に傾斜している前後脚体によって前後方向に往復動可能に支持させ、この前後脚体を駆動モータによって後方に傾斜した位置と起立する位置との間で下端を支点として往復回動させるように構成しているので、簡単な構造によって搬送トラフに前方に向かって斜め上方に突き上げるような搬送力を付与することができ、搬送トラフが前方に向かって斜め上方に緩傾斜していても片口鰯を円滑且つ確実に前方に向かって搬送することができる。
【0021】
また、上記流体噴射手段は、請求項6に記載したように、搬送トラフの底面板に設けている落下口の上方に該落下口に向かってエアを噴射するエア噴射口を設けたエア供給管と、このエア供給管にエア供給ホースを通じて高圧エアを供給するブロワとからなるので、水等の流体のように使用時の排水処理や使用後の清掃作業などを不要にすることができ、片口鰯に吹き付けるエア圧も片口鰯の尾部が落下口から僅かに下方に撓む程度の圧力に容易に調整することができて、搬送トラフ上を尾部が前方に向けて搬送される片口鰯のみをこのエア圧と上記トラフ駆動手段による振動力とによって確実に落下口から下方に落下、排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は片口鰯Aの搬送処理装置全体の一部を断面した簡略側面図、図2は簡略正面図、図3はその平面図であって、片口鰯Aを搬送する搬送トラフ1は、幅が片口鰯Aの体長(約130mm 程度)の1/2以下の幅、具体的には50mm程度の幅に形成されている前後方向に細長い帯板形状の底面板1aの両側端に上方に向かって一定高さの側壁板1b、1bを突設して前端開口部を片口鰯Aの搬出開口部2に形成している共に底面板1aの前部に、前後方向に所定間隔を存して片口鰯Aをその尾部側から下方に落下させるための落下口3、3を設けてなり、この搬送トラフ1を、機枠20の高さ方向の中間部に設けている固定台21の上方に、その後端を片口鰯Aの搬送始端側にして該後端から前端に向かって斜め上方に緩やかな角度(水平線に対して5°の角度)でもって傾斜させた状態で前後方向に往復動可能に配設している。なお、搬送トラフ1はこのように緩傾斜させることなく水平状に配設しておいてもよい。また、上記落下口3は底面板1aの前部における1箇所のみに設けておいてもよく、複数箇所に設けておいてもよい。
【0023】
この搬送トラフ1の底面板1aの前部に設けている上記落下口3は、その前後方向の開口幅が片口鰯Aの尾部の長さに略等しい幅、具体的には30mmの開口幅を有し、底面板1aの両側端間の全幅に亘って形成されている。なお、この落下口3の前後方向の開口幅が片口鰯Aの体長の1/3以上であると、頭部を搬送方向に向けた状態で片口鰯Aがこの落下口3に達した時に、落下口3上を通過することなく落下口3から落下する虞れがある一方、片口鰯Aの体長の1/6以下であると、尾部を搬送方向に向けた状態で片口鰯Aがこの落下口3上に達した場合には、後述するように上方から流体噴流圧を作用させても、落下口3から落下させることができなくなる虞れがあるので、その前後方向の開口幅が片口鰯Aの体長の1/3〜1/6、好ましくは尾部の長さに相当する体長の1/4に形成しておくことが望ましい。なお、この落下口3を底面板1aの前部の数箇所に設ける場合には、前後に隣接する落下口3、3を片口鰯Aの体長に等しいかそれ以上の間隔を存して設けておくことが望ましい。
【0024】
機枠20の固定台21の上方には上記搬送トラフ1を一台だけ配設しておいてもよいが、図2に示すように、上記搬送トラフ1を2列に一体に並設してなる搬送トラフ1、1を一対としてこの一対の搬送トラフ1、1を両側に一定の間隔を存して配設し、さらに、これらの一対の搬送トラフ1、1を上側搬送トラフとして、それぞれの対の搬送トラフ1、1の下方に下側搬送トラフ1'、1'を配設してあり、上下搬送トラフ1、1'を上下に一定の間隔を存した状態でその上下側壁板1b、1b' 間を連結部材10によって一体に連結して後述するトラフ駆動手段7により全ての搬送トラフ1、1'を一体的に前後方向に振動させるように構成している。
【0025】
下側搬送トラフ1'の底面板1a' の幅は上側搬送トラフ1と同一幅に形成されているが、長さは上側搬送トラフ1よりもやや長く形成されてあり、さらに、この下側搬送トラフ1'の底面板1a' において、上側搬送トラフ1の底面板1aの前部に設けている上記落下口3、3における前側の落下口3よりも前方位置に該落下口3と同大、同形の落下口3'を設けている。また、これらの上下搬送トラフ1、1'の前端搬出開口部2、2'の開口端は先端(前端)に向かって下方に傾斜している整列シュート4の基端部上に臨ませている。
【0026】
また、両側に配した上側搬送トラフ1、1の上方における機枠20の後端上部に、片口鰯Aの投入ホッパ5を設置していると共にこの投入ホッパ5の下端開口部から供給される片口鰯Aを両側の搬送トラフ1、1の後端部上に定量的に投入する両側シュート5a、5aを配設している。なお、上記下側搬送トラフ1'に設けている落下口3'の下方には、この落下口3'から尾部を先頭にして落下する片口鰯Aを受け取って排出する排除シュート9を配設しているが、このような排除シュート9を設けることなく、落下口3'の下方に適宜な容器を設けておいてもよい。
【0027】
また、上側搬送トラフ1の後端に片口鰯Aが下方に落下可能な開口部1dを設けてこの開口部1dに片口鰯Aを下側搬送トラフ1'の底面板1a' の後端部上に送り込む反転シュート6を設けている。なお、搬送トラフ1、1'は上述したように、片口鰯Aの体長(約130mm 程度)の1/2以下の幅である50mm程度の幅に形成した底面板1a、1a' の両側端に、上方に向かって一定高さの側壁板1b、1b、1b' 、1b' をそれそれ突設した構造としているが、左右に並設した一対の上側搬送トラフ1、1及び下側搬送トラフ1'、1'を形成する場合には、対向する側壁板を図2に示すように共通の仕切板1cとしておくことが好ましい。即ち、上記底面板1a、1a' の2倍の幅を有する底面板の両側端に側壁板1b、1b' をそれぞれ突設すると共にこの底面板の幅方向の中央部を上記仕切板1cで二分割した構造としている。
【0028】
上下搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' はその内底面である上面を片口鰯Aの摩擦係止面となる粗面に形成しておいてもよいが、図においては、これらの底面板1a、1a' 上に、上面が凹凸粗面からなる摩擦係止面に形成しているゴム板11を敷設、固定してこのゴム板11の上面を搬送トラフ1、1'の底面に形成している。なお、上記落下口3、3'にはゴム板11を配設することなくこれらの落下口3、3'を全面的に開口させている。
【0029】
このように構成した搬送トラフ1、1'を前後方向に振動させるトラフ駆動手段7としては、上記固定台21上に一定長さを有する硬質ゴム板又は金属帯板からなる前後脚体7a、7bの下端部を前後方向に往復回動可能に支持させると共にこれらの前後脚端7a、7bを上端に向かって斜め後方に傾斜させてその上端を下側搬送トラフ1'の底面板1a' の外底面における前後部に前後方向に往復回動自在に連結してこれらの前後脚体7a、7bを介して搬送トラフ1、1'を固定台21上に前後方向に振動可能に支持させ、さらに、前後脚体7a、7bの一方(図においては後側脚体7b)に、機枠20の下部に設置した駆動モータ7cによって前後方向に往復動するロッド体7dを連結して前後脚体7a、7bを後方に傾斜した位置と起立する位置との間で下端を支点として往復回動させるように構成してなるものである。
【0030】
なお、上記固定台21は後端側から前端に向かってその脚体支持面を搬送トラフ1、1'と同一角度(水平線に対して5°の角度)でもって傾斜していると共に前後脚体7a、7bは、水平線とその後面とのなす角度を65°の傾斜角度としてあり、下側搬送トラフ1'の外底面と固定台21の上面及び前後脚体7a、7bによって平行四辺形を構成している。また、駆動モータ7cの回転をクランク機構等を介してロッド体7dを前後方向に往復動させるように構成してあり、その往復回動による搬送トラフ1、1'の前後方向の振動数は1分間に約700回に設定していると共に前後の移動距離(振幅)は6mm程度に設定している。
【0031】
また、上記上下搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' に設けている落下口3、3'の上方に、該落下口3、3'に向かってエア又は水等の流体(以下、エアとする)を噴射する下向きに開口したエア噴射口8aを有するエア供給管8bを配設している。このエア噴射口8aは、落下口3の垂直上方において該落下口3の全幅に亘ってエアを吹き付けることができる横幅を有し、このエア噴射口8aを有する上記エア供給管8bは機枠20の上枠部20a に取り付けられている。さらに、機枠20の下部に上記駆動モータ7cと共にブロワ8cを設置し、このブロワのエア吐出口と上記全てのエア供給管8bとをエア供給ホース8dによって連結、連通している。そして、エア噴射口8aを有するエア供給管8bとブロワ8c、エア供給ホース8dとで、流体噴射手段(以下、エア噴射手段8とする)を構成している。
【0032】
次に、以上のように構成した片口鰯の搬送処理装置の作用を説明する。トラフ駆動手段7の駆動モータ7cを作動させると、前後脚体7a、7bがその下端を支点として前後動してこれらの前後脚体7a、7bに支持されている搬送トラフ1、1'が前後方向に急速に振動する。この状態にして投入ホッパ5に適量の片口鰯Aを定量的に投入すると、該投入ホッパ5の下端開口部から両側シュート5a、5aを通じて複数匹の片口鰯Aがそれぞれ両側に配した上側搬送トラフ1、1の後端部上に供給される。この時、搬送トラフ1の底面板1aの幅は片口鰯Aの体長よりも狭い50mm程度の幅に形成されているので、片口鰯Aはその体長方向が搬送トラフ1の長さ方向に対して多少傾斜していてもその頭部又は尾部を搬送方向に向けた状態となるように底面板1a上に横臥する。
【0033】
また、片口鰯Aは搬送トラフ1の底面板1a上に敷設しているゴム板11上に直接横臥した状態に載せられると、搬送トラフ1が後端に向かっ斜め下方に傾斜していても該ゴム板11の摩擦係止面との摩擦力で後方に移動する虞れがないが、片口鰯A、Aが互いに重なり合った状態で搬送トラフ1上に供給された場合には、上側の片口鰯Aが下側の片口鰯A上を滑って後方に移動し、搬送トラフ1の底面板1aの後端開口部1dから反転シュート6を通じて下側の搬送トラフ1'の後端部上に供給される。なお、搬送トラフ1、1'が前後方向に振動しているので、上記のように片口鰯A、Aが重なり合っていても、この振動力によって上側の片口鰯Aが下側片口鰯A上を瞬時に横移動して互いに搬送トラフ1の底面板1a上で並列状に配列される場合も生じる。
【0034】
こうして、投入ホッパ5から両側シュート5a、5aを通じて両側搬送トラフ1、1の底面板1aにおける後端部上に定量的に供給された片口鰯Aは、図4、図5に示すように、その頭部を前方に向けた状態にして、或いは、後方に向けた状態にして、且つ、1〜3列状態となり、この状態で前後方向に振動する搬送トラフ1によって搬出開口部2に向かって前方に搬送される。
【0035】
この搬送トラフ1による片口鰯Aの搬送状態を述べると、搬送トラフ1、1'を支持している前後脚体7a、7bはその下端から上端に向かって斜め後方に傾斜していると共にトラフ駆動手段7によってその傾斜状態から垂直に起立する手前までの間を前後動させられるので、下端を支点として前方へ回動した際には、搬送トラフ1、1'は前方に向かって斜め上方に移動し、搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' 上に横臥している片口鰯Aに対して前方に向かって斜め上方に突き上げるような搬送力が発生して片口鰯Aはその頭部を前後いずれの方向に向けていてもこの搬送力により前方に向かって押し進められる。
【0036】
また、前後脚体7a、7bが後方に回動した際には、搬送トラフ1、1'は後方に向かって斜め下方に移動する。この際、搬送トラフ1、1'は、例えば6mm程度の短い長さ間を前後方向に急速(具体的には毎分700回)に振動しているので、前後脚体7a、7bが後方に回動した時には片口鰯Aは瞬間的に搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' から浮き上がった状態または、底面板1a、1a' の摩擦係止面との摩擦力が殆どなくなった状態となって、片口鰯Aは殆ど後方に移動することなく、前進した位置で搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' 上に移載した状態となる。従って、搬送トラフ1、1'の前後動によって搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' 上の全ての片口鰯Aを前方に向かって移動させることができる。
【0037】
こうして、搬送トラフ1、1'によって片口鰯Aが前方に搬送され、上側の搬送トラフ1によって搬送される片口鰯Aがこの搬送トラフ1の底面板1aの前部に設けている落下口3に達すると、この片口鰯Aがその尾部を前方側、即ち、搬送側に向けている場合には、該尾側が図6に示すように、落下口3の後端縁から落下口3上に突出した状態になると共にこの落下口3の上方に配設しているエア噴出口8aから常時落下口3に向かって噴射している高圧エアにより、該尾部が落下口3の後端縁を支点として落下口3内で下方に撓み、その尾部の先端が落下口3よりも下方に位置した状態になる。
【0038】
このエア噴出口8aからの高圧エアの噴流圧による尾部の下方への撓み変形が瞬時に行われると共に搬送トラフ1、1'による搬送力によってその状態から該片口鰯Aが直ちに前方に移動してその尾部の先端が図7に示すように落下口3の前端縁の下面に突き当たった状態となる。片口鰯Aは搬送トラフ1、1'による搬送力で前方に向かって常に前進力を付与されているので、前進するに従って図8〜図10に示すように、落下口3の前端縁の下面に尾部から胴部を順次摺接させながら落下口3の後端縁を支点として下方に移動し、頭部側を徐々に起立させながらついには落下口3から下側の搬送トラフ1'の底面板1a' 上に落下することになる。
【0039】
この落下時においては、上述したように、片口鰯Aは落下口3の後端縁を支点として尾部側から後方に、頭部側が斜め前方に向かって起立する方向に回動力を付与されながら落下口3から落下するので、図11に二点鎖線で示すように落下中にその尾部側が後方に、頭部側が前方に向くように反転しながら下側搬送トラフ1'の底面板1a' 上に落下させることができる。上側搬送トラフ1に対する下側搬送トラフ1'の配置は、落下口3から反転しながら落下する片口鰯Aがその頭部を前方側に向けた状態となるまで回転した時に該片口鰯Aを底面板1a' 上に受止できる高さ位置に配設されてあり、従って、上側搬送トラフ1の落下口3から尾部を先頭にして落下する殆どの片口鰯Aをその頭部を搬送側に向けた状態となるように下側搬送トラフ1'上に落下させることができる。
【0040】
また、上側搬送トラフ1において、尾部を前方に向けた状態で前進中の片口鰯Aが不測に上記落下口3を通過した場合には、この落下口3の前方側に設けている次の落下口3を通じて下方に落下させることができる。
【0041】
一方、頭部を前方側に向けて搬送トラフ1の底面板1a上を該搬送トラフ1の搬送力によって前進移動する片口鰯Aが上記落下口3に達しても、細くて薄肉で撓みやすい尾部とは違って頭部は太くて肉厚の胴体に連なっていて剛直性を有するので、上方からのエアの噴流圧にもかかわらず、下方に撓むことなくそのまま落下口3上を前方に向かって通過する。さらに、この頭部から胴部が落下口3を通過して尾部が該落下口3上に達した場合に、エア噴出口8aからの噴流圧によって該尾部が落下口3の前端縁を支点として下方に撓むが尾部が落下口3の前端縁の上面側にあって搬送トラフ1の前後動による搬送力により常に前進移動させられているので、該尾部が落下口3の前端縁上を摺接しながら前方に移動して落下口3を通過し、搬送終端側に向かって搬送される。従って、搬送トラフ1の搬送終端に設けている排出開口部2からは、頭部を前方に向けている片口鰯Aのみが整列シュート4上に搬出されることになる。
【0042】
この上側搬送トラフ1の落下口3から下側搬送トラフ1'の底面板1a' 上に落下した上記片口鰯Aは、上側搬送トラフ1と同様にこの下側搬送トラフ1'の前後動によって発生する搬送力によって底面板1a' 上を前進移動し、この底面板1a’の前端部に設けている落下口3に達した時に、尾部を前方に向けている片口鰯Aの場合には上記同様に上方のエア噴出口8aからのエア噴流圧によって該尾部が落下口3から下方に撓ませられながら搬送トラフ1'による搬送力によって落下口3から下方の排出シュート9上に落下し、頭部を前方に向けている片口鰯Aの場合にはエアの噴流圧に抗しながらそのまま落下口3上を通過して排出開口部2から整列シュート4上に搬出される。
【0043】
この下側搬送トラフ1'の後端部側に供給される片口鰯Aに対しても、上記同様に頭部が前方に向けている片口鰯Aのみを排出開口部2から整列シュート4上に搬出され、落下口3から排出シュート9上に落下した片口鰯Aは、再び、投入ホッパ5に供給されて上下搬送トラフ1、1'により搬送処理される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】装置全体の一部を断面した簡略側面図。
【図2】簡略正面図。
【図3】その平面図。
【図4】片口鰯を搬送処理している状態の簡略縦断側面図。
【図5】搬送トラフ上に供給された片口鰯の配列状態を示す平面図。
【図6】落下口上で尾部をエア噴流圧により撓ました状態の簡略側面図。
【図7】尾部が落下口の前端縁下面に摺接した状態の簡略側面図。
【図8】尾部が落下口か下方に移動している状態の簡略側面図。
【図9】尾部から胴部に向かって落下口から滑り落ちる状態の簡略側面図。
【図10】落下直前の状態を示す簡略側面図。
【図11】落下する状態を示す簡略側面図。
【符号の説明】
【0045】
A 片口鰯
1 搬送トラフ
2 搬出開口部
3 落下口
4 整列シュート
5 投入ホッパ
6 反転シュート
7 トラフ駆動手段
8 エア噴射手段
8a エア噴出口
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送始端部上に定量的に供給される片口鰯において、頭部が搬送方向に向けている片口鰯のみを搬送終端から搬出させるように片口鰯の搬送処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鯖や鰺などの魚体の頭部を搬送方向に向けた状態にして搬送して爾後の魚体の処理を容易に行えるようにするための搬送装置や頭部揃え装置としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているように、水平な底面を魚体の鱗が係合可能な摩擦係止面に形成している搬送トラフをこの搬送トラフの長さ方向である前後方向に往復振動させ、搬送トラフ上に供給された魚体の鱗を振動する搬送トラフの上記摩擦係止面に係脱させて鱗が前後に振動する摩擦係止面に係合した際にその係合方向に頭部を向けて魚体を搬送するように構成した装置が知られている。
【0003】
また、特許文献3に記載されているように、底面を魚体の鱗が係合可能な摩擦係止面に形成している搬送トラフをその長さ方向を前後方向に向け且つ魚体の搬送始端側である後端から搬送終端側である前端に向かって斜め上方に傾斜させた状態にすると共に前後方向に往復振動させるように構成し、さらに、その搬送始端部上に、上記特許文献1、2に記載された装置等によって頭部を前方に向けられた状態にして魚体を供給するように構成して、この魚体を搬送トラフの前方への振動時にその鱗に摩擦係止面を係合させることにより、魚体を上方に持ち上げるようにしながら前方に搬送するように構成した搬送装置も開発されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−39538号公報
【特許文献2】実公平4−20221号公報
【特許文献3】実公昭61−38455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載の装置によれば、鯖や鰺などのように搬送トラフの底面の摩擦係止面に係合可能な鱗を有する魚体であれば、その頭部を一方向に向けた状態にしてその方向に搬送することが可能であるが、摩擦係止面に係合するような鱗を有していない片口鰯の場合には、この装置に供給して搬送トラフを前後方向に振動させても、片口鰯をその頭部を進行方向に向けた状態にして搬送することができない。
【0006】
一方、特許文献3に記載されている搬送装置によれば、搬送トラフを搬送始端側である後端から搬送終端側である前端に向かって斜め上方に傾斜させていると共にこの搬送トラフを前後方向に往復振動させて前方への振動時には摩擦係止面を前方に向かって斜め上方に突き上げるように作動させるように構成しているので、搬送トラフの傾斜角度を比較的緩やかに構成しておくことによって、鱗を有していない片口鰯であっても、搬送トラフの前方への振動時には片口鰯を持ち上げるようにしながら前方に移動させ、後方への振動時にはその位置で摩擦係止面上に定置させながら搬送することができが、この場合、片口鰯が摩擦係止面上でその頭部を前後いずれの方向に向けていてもその状態で前方に向かって搬送されることになり、従って、搬送終端側からは尾部が前方側に向けている片口鰯も搬出されて頭部が前方側に向けている片口鰯のみを搬出することができない。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、搬送始端部上に頭部の向きをランダムな方向に向けた状態にして供給される片口鰯において、尾部が搬送方向に向けている片口鰯を搬送途上で排除し、頭部が前方側に向けている片口鰯のみを搬送終端部から搬出可能にした片口鰯の搬送処理装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の片口鰯の搬送処理装置は、請求項1に記載したように、定量の片口鰯をその体長方向を搬送方向に向けた状態で搬送する一定幅を有する細長い底面板を有し、且つ、この底面板の搬送終端側である前部に前後方向の開口幅が片口鰯の尾部の長さに略等しい落下口を設けていると共にこの落下口の前方側に搬出開口部を設けてなる搬送トラフと、この搬送トラフを前後方向に振動させて該搬送トラフの底面板上を搬送中の片口鰯を斜め前方に向かって突き上げる方向に進行させるトラフ駆動手段と、搬送トラフに設けている上記落下口の上方に配設されてこの落下口に向かって流体を噴射し、落下口上を前進中の片口鰯の尾部をその噴流圧によって落下口から下方に撓ませる噴射口を有する流体噴射手段と、搬送トラフの後端部側に設けられた片口鰯の供給部とから構成している。
【0009】
このように構成した片口鰯の搬送処理装置において、請求項2に係る発明は、上記搬送トラフの下方に一定間隔を存してこの搬送トラフを上側搬送トラフとして下側搬送トラフを並設し、この下側搬送トラフの底面板において、上記上側搬送トラフの底面板に設けている落下口よりも前方位置に該落下口と同じ落下口を設けていると共にこの落下口の上方に下側流体噴射手段を配設してあり、さらに、これらの上下搬送トラフを一体的にトラフ駆動装置により前後方向に振動させるように構成していることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3に係る発明は、上記上下搬送トラフを左右に対称的に配設し、これらの搬送トラフを一体的にトラフ駆動装置により前後方向に振動させるように構成していることを特徴とし、請求項4に係る発明は、搬送トラフを片口鰯の搬送始端側である後端から搬出開口部を設けた前端に向かって斜め上方に向かって緩傾斜させていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、上記トラフ駆動手段の好ましい構造であって、搬送トラフの下方に設けている固定台の前後部に一定長さを有する前後脚体の下端部を前後方向に往復回動可能に支持させると共にこれらの前後脚体を上端に向かって斜め後方に傾斜させてその上端を下側搬送トラフの外底面における前後部に前後方向に往復回動自在に連結し、さらに、前後脚体の一方に、駆動モータによって前後方向に往復動するロッド体を連結して前後脚体を後方に傾斜した位置と起立する位置との間で下端を支点として往復回動させるように構成している。
【0012】
請求項6に係る発明は、上記流体噴射手段の好ましい構造であって、搬送トラフの底面板に設けている落下口の上方に該落下口に向かってエアを噴射するエア噴射口を設けたエア供給管と、このエア供給管にエア供給ホースを通じて高圧エアを供給するブロワとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、定量の片口鰯をその頭部又は尾部を搬送方向にランダムに向けた状態で搬送する一定幅を有する細長い底面板を有する搬送トラフを前後方向に往復振動させて該底面板上を搬送中の片口鰯に斜め前方に向かって突き上げる方向に進行させる搬送力を伝達するように構成しているので、片口鰯の頭部が前後いずれの方向に向けられていても搬送始端部上に供給される全ての片口鰯を横臥状態で搬送終端側に向かって確実に搬送することができる。
【0014】
その上、この搬送トラフの底面板の前部に前後方向の幅が片口鰯の尾部の長さに略等しい落下口を設けていると共に、この落下口の上方に落下口に向かって流体を噴射する噴射ノズルを有する流体噴射手段を配設しているので、尾部を前方側に向かって搬送されている片口鰯の該尾部が落下口上に達した時に、噴射口からの流体の噴流圧によって該尾部を落下口の後端縁を支点として下方に撓ますことができ、この状態からこの片口鰯が前後方向に振動する搬送トラフによる斜め前方への搬送力によってさらに前進した時に尾部を落下口の前端縁の下面側に係合状態に摺接させることができと共に前進するに従ってこの落下口の前端縁の下面に沿って尾部から胴部を下方に移動させなから該片口鰯を落下口から円滑に落下させることができる。従って、尾部を前方側に向けている片口鰯を搬送トラフの前端の搬出開口部に達するまでに、搬送トラフから確実に排除することができる。
【0015】
一方、頭部を前方側に向けて搬送トラフの底面板上を該搬送トラフの前後方向の振動力により前方に搬送される片口鰯の該頭部が落下口上に達しても、頭部側は、細くて薄い尾部側よりも太くて剛直性を有しているために、上方からの流体の噴出圧にもかかわらず下方に撓むことがなく、そのまま落下口上を前方に通過していくことができると共に頭部の通過に引き続いてその尾部が落下口上に達した場合においても、上記流体の噴出圧によって該尾部が落下口の前端縁を支点として下方に撓むが、搬送トラフによる斜め前方への搬送力によって尾部が落下口の前端縁上を摺接しながら前方に移動して落下口を通過し、落下口を通じて排除されることなく確実に搬送終端側に向かって搬送することができる。従って、搬送トラフの搬送終端に設けている排出開口部からは、頭部を前方に向けている片口鰯のみを搬出することができる。
【0016】
さらに、請求項2に係る発明によれば、上記搬送トラフを上側搬送トラフとしてこの搬送トラフの下方に下側搬送トラフを並設し、これらの上下搬送トラフを一体的にトラフ駆動装置により前後方向に振動させるように構成しているので、上側搬送トラフの落下口から尾部を先頭側にして落下する片口鰯をこの下側搬送トラフの底面板上に受止させることができる。この際、上側搬送トラフの落下口から片口鰯が落下する際に、上方からの流体の噴流圧により落下口の後端縁を支点して尾部側が後方に回動しようとする方向に付勢されながら落下口から落下するので、落下中にその尾部側が後方に、頭部側が前方に向くように反転させながら下側搬送トラフの底面板上に落下させることができ、従って、上側搬送トラフに対する下側搬送トラフの配置間隔を適宜に設定しておくことによって、上側搬送トラフの落下口から尾部を先頭にして落下する片口鰯をその頭部が搬送側に向けた状態となるように下側搬送トラフ上に落下させることができ、下側搬送トラフにおいてもその搬出開口部から片口鰯をその頭部を前方に向けた状態にして搬出することができる。
【0017】
また、この下側搬送トラフの底面板において、上側搬送トラフの底面板に設けている落下口よりも前方位置に該落下口と同じ構造の落下口を設けていると共にこの下側搬送トラフの落下口の上方に下側流体噴射手段を配設しているので、上側搬送トラフの落下口から下側搬送トラフの底面板上に落下した片口鰯がその尾部を前方に向けた状態となっている場合には、該片口鰯が前方に搬送されてこの下側搬送トラフの底面前端部側に設けている落下口上にその尾部が達した時に、上記同様にして上方からの噴流圧により該片口鰯の尾部を落下口から下方に撓ませると共に搬送トラフの振動による搬送力によって落下口から落下させて下側搬送トラフ上から確実に排除することができる。この下側搬送トラフの後端側から尾部を前方に向けて搬送されてくる片口鰯も同様にして上記落下口から下方に排除することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、上記上下搬送トラフを左右に対称的に配設し、これらの搬送トラフを一体的にトラフ駆動手段により前後方向に振動させるように構成しているので、頭部が前方に向けている片口鰯のみを各搬送トラフの排出開口部から搬出されるように多量の片口鰯を能率よく処理することができる。
【0019】
さらに、請求項4に係る発明によれば、搬送トラフを片口鰯の搬送始端側である後端から搬出開口部を設けた前端に向かって斜め上方に緩傾斜させているので、落下口の前端縁は後端縁よりも高位置となり、従って、尾部を前方に向けた状態で搬送されてくる片口鰯の該尾部が落下口上に達して上記のように上方からの噴流圧により落下口の後端縁を支点として下方に撓むと、その尾部の先端を落下口の前端縁の下方に簡単に位置させることができ、落下口からの該片口鰯の排除が一層円滑に行うことができる。
【0020】
上記請求項1乃至請求項3に係る発明において、トラフ駆動手段は、請求項5に記載したように、固定台上に搬送トラフを下端から上端に向かって斜め後方に傾斜している前後脚体によって前後方向に往復動可能に支持させ、この前後脚体を駆動モータによって後方に傾斜した位置と起立する位置との間で下端を支点として往復回動させるように構成しているので、簡単な構造によって搬送トラフに前方に向かって斜め上方に突き上げるような搬送力を付与することができ、搬送トラフが前方に向かって斜め上方に緩傾斜していても片口鰯を円滑且つ確実に前方に向かって搬送することができる。
【0021】
また、上記流体噴射手段は、請求項6に記載したように、搬送トラフの底面板に設けている落下口の上方に該落下口に向かってエアを噴射するエア噴射口を設けたエア供給管と、このエア供給管にエア供給ホースを通じて高圧エアを供給するブロワとからなるので、水等の流体のように使用時の排水処理や使用後の清掃作業などを不要にすることができ、片口鰯に吹き付けるエア圧も片口鰯の尾部が落下口から僅かに下方に撓む程度の圧力に容易に調整することができて、搬送トラフ上を尾部が前方に向けて搬送される片口鰯のみをこのエア圧と上記トラフ駆動手段による振動力とによって確実に落下口から下方に落下、排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は片口鰯Aの搬送処理装置全体の一部を断面した簡略側面図、図2は簡略正面図、図3はその平面図であって、片口鰯Aを搬送する搬送トラフ1は、幅が片口鰯Aの体長(約130mm 程度)の1/2以下の幅、具体的には50mm程度の幅に形成されている前後方向に細長い帯板形状の底面板1aの両側端に上方に向かって一定高さの側壁板1b、1bを突設して前端開口部を片口鰯Aの搬出開口部2に形成している共に底面板1aの前部に、前後方向に所定間隔を存して片口鰯Aをその尾部側から下方に落下させるための落下口3、3を設けてなり、この搬送トラフ1を、機枠20の高さ方向の中間部に設けている固定台21の上方に、その後端を片口鰯Aの搬送始端側にして該後端から前端に向かって斜め上方に緩やかな角度(水平線に対して5°の角度)でもって傾斜させた状態で前後方向に往復動可能に配設している。なお、搬送トラフ1はこのように緩傾斜させることなく水平状に配設しておいてもよい。また、上記落下口3は底面板1aの前部における1箇所のみに設けておいてもよく、複数箇所に設けておいてもよい。
【0023】
この搬送トラフ1の底面板1aの前部に設けている上記落下口3は、その前後方向の開口幅が片口鰯Aの尾部の長さに略等しい幅、具体的には30mmの開口幅を有し、底面板1aの両側端間の全幅に亘って形成されている。なお、この落下口3の前後方向の開口幅が片口鰯Aの体長の1/3以上であると、頭部を搬送方向に向けた状態で片口鰯Aがこの落下口3に達した時に、落下口3上を通過することなく落下口3から落下する虞れがある一方、片口鰯Aの体長の1/6以下であると、尾部を搬送方向に向けた状態で片口鰯Aがこの落下口3上に達した場合には、後述するように上方から流体噴流圧を作用させても、落下口3から落下させることができなくなる虞れがあるので、その前後方向の開口幅が片口鰯Aの体長の1/3〜1/6、好ましくは尾部の長さに相当する体長の1/4に形成しておくことが望ましい。なお、この落下口3を底面板1aの前部の数箇所に設ける場合には、前後に隣接する落下口3、3を片口鰯Aの体長に等しいかそれ以上の間隔を存して設けておくことが望ましい。
【0024】
機枠20の固定台21の上方には上記搬送トラフ1を一台だけ配設しておいてもよいが、図2に示すように、上記搬送トラフ1を2列に一体に並設してなる搬送トラフ1、1を一対としてこの一対の搬送トラフ1、1を両側に一定の間隔を存して配設し、さらに、これらの一対の搬送トラフ1、1を上側搬送トラフとして、それぞれの対の搬送トラフ1、1の下方に下側搬送トラフ1'、1'を配設してあり、上下搬送トラフ1、1'を上下に一定の間隔を存した状態でその上下側壁板1b、1b' 間を連結部材10によって一体に連結して後述するトラフ駆動手段7により全ての搬送トラフ1、1'を一体的に前後方向に振動させるように構成している。
【0025】
下側搬送トラフ1'の底面板1a' の幅は上側搬送トラフ1と同一幅に形成されているが、長さは上側搬送トラフ1よりもやや長く形成されてあり、さらに、この下側搬送トラフ1'の底面板1a' において、上側搬送トラフ1の底面板1aの前部に設けている上記落下口3、3における前側の落下口3よりも前方位置に該落下口3と同大、同形の落下口3'を設けている。また、これらの上下搬送トラフ1、1'の前端搬出開口部2、2'の開口端は先端(前端)に向かって下方に傾斜している整列シュート4の基端部上に臨ませている。
【0026】
また、両側に配した上側搬送トラフ1、1の上方における機枠20の後端上部に、片口鰯Aの投入ホッパ5を設置していると共にこの投入ホッパ5の下端開口部から供給される片口鰯Aを両側の搬送トラフ1、1の後端部上に定量的に投入する両側シュート5a、5aを配設している。なお、上記下側搬送トラフ1'に設けている落下口3'の下方には、この落下口3'から尾部を先頭にして落下する片口鰯Aを受け取って排出する排除シュート9を配設しているが、このような排除シュート9を設けることなく、落下口3'の下方に適宜な容器を設けておいてもよい。
【0027】
また、上側搬送トラフ1の後端に片口鰯Aが下方に落下可能な開口部1dを設けてこの開口部1dに片口鰯Aを下側搬送トラフ1'の底面板1a' の後端部上に送り込む反転シュート6を設けている。なお、搬送トラフ1、1'は上述したように、片口鰯Aの体長(約130mm 程度)の1/2以下の幅である50mm程度の幅に形成した底面板1a、1a' の両側端に、上方に向かって一定高さの側壁板1b、1b、1b' 、1b' をそれそれ突設した構造としているが、左右に並設した一対の上側搬送トラフ1、1及び下側搬送トラフ1'、1'を形成する場合には、対向する側壁板を図2に示すように共通の仕切板1cとしておくことが好ましい。即ち、上記底面板1a、1a' の2倍の幅を有する底面板の両側端に側壁板1b、1b' をそれぞれ突設すると共にこの底面板の幅方向の中央部を上記仕切板1cで二分割した構造としている。
【0028】
上下搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' はその内底面である上面を片口鰯Aの摩擦係止面となる粗面に形成しておいてもよいが、図においては、これらの底面板1a、1a' 上に、上面が凹凸粗面からなる摩擦係止面に形成しているゴム板11を敷設、固定してこのゴム板11の上面を搬送トラフ1、1'の底面に形成している。なお、上記落下口3、3'にはゴム板11を配設することなくこれらの落下口3、3'を全面的に開口させている。
【0029】
このように構成した搬送トラフ1、1'を前後方向に振動させるトラフ駆動手段7としては、上記固定台21上に一定長さを有する硬質ゴム板又は金属帯板からなる前後脚体7a、7bの下端部を前後方向に往復回動可能に支持させると共にこれらの前後脚端7a、7bを上端に向かって斜め後方に傾斜させてその上端を下側搬送トラフ1'の底面板1a' の外底面における前後部に前後方向に往復回動自在に連結してこれらの前後脚体7a、7bを介して搬送トラフ1、1'を固定台21上に前後方向に振動可能に支持させ、さらに、前後脚体7a、7bの一方(図においては後側脚体7b)に、機枠20の下部に設置した駆動モータ7cによって前後方向に往復動するロッド体7dを連結して前後脚体7a、7bを後方に傾斜した位置と起立する位置との間で下端を支点として往復回動させるように構成してなるものである。
【0030】
なお、上記固定台21は後端側から前端に向かってその脚体支持面を搬送トラフ1、1'と同一角度(水平線に対して5°の角度)でもって傾斜していると共に前後脚体7a、7bは、水平線とその後面とのなす角度を65°の傾斜角度としてあり、下側搬送トラフ1'の外底面と固定台21の上面及び前後脚体7a、7bによって平行四辺形を構成している。また、駆動モータ7cの回転をクランク機構等を介してロッド体7dを前後方向に往復動させるように構成してあり、その往復回動による搬送トラフ1、1'の前後方向の振動数は1分間に約700回に設定していると共に前後の移動距離(振幅)は6mm程度に設定している。
【0031】
また、上記上下搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' に設けている落下口3、3'の上方に、該落下口3、3'に向かってエア又は水等の流体(以下、エアとする)を噴射する下向きに開口したエア噴射口8aを有するエア供給管8bを配設している。このエア噴射口8aは、落下口3の垂直上方において該落下口3の全幅に亘ってエアを吹き付けることができる横幅を有し、このエア噴射口8aを有する上記エア供給管8bは機枠20の上枠部20a に取り付けられている。さらに、機枠20の下部に上記駆動モータ7cと共にブロワ8cを設置し、このブロワのエア吐出口と上記全てのエア供給管8bとをエア供給ホース8dによって連結、連通している。そして、エア噴射口8aを有するエア供給管8bとブロワ8c、エア供給ホース8dとで、流体噴射手段(以下、エア噴射手段8とする)を構成している。
【0032】
次に、以上のように構成した片口鰯の搬送処理装置の作用を説明する。トラフ駆動手段7の駆動モータ7cを作動させると、前後脚体7a、7bがその下端を支点として前後動してこれらの前後脚体7a、7bに支持されている搬送トラフ1、1'が前後方向に急速に振動する。この状態にして投入ホッパ5に適量の片口鰯Aを定量的に投入すると、該投入ホッパ5の下端開口部から両側シュート5a、5aを通じて複数匹の片口鰯Aがそれぞれ両側に配した上側搬送トラフ1、1の後端部上に供給される。この時、搬送トラフ1の底面板1aの幅は片口鰯Aの体長よりも狭い50mm程度の幅に形成されているので、片口鰯Aはその体長方向が搬送トラフ1の長さ方向に対して多少傾斜していてもその頭部又は尾部を搬送方向に向けた状態となるように底面板1a上に横臥する。
【0033】
また、片口鰯Aは搬送トラフ1の底面板1a上に敷設しているゴム板11上に直接横臥した状態に載せられると、搬送トラフ1が後端に向かっ斜め下方に傾斜していても該ゴム板11の摩擦係止面との摩擦力で後方に移動する虞れがないが、片口鰯A、Aが互いに重なり合った状態で搬送トラフ1上に供給された場合には、上側の片口鰯Aが下側の片口鰯A上を滑って後方に移動し、搬送トラフ1の底面板1aの後端開口部1dから反転シュート6を通じて下側の搬送トラフ1'の後端部上に供給される。なお、搬送トラフ1、1'が前後方向に振動しているので、上記のように片口鰯A、Aが重なり合っていても、この振動力によって上側の片口鰯Aが下側片口鰯A上を瞬時に横移動して互いに搬送トラフ1の底面板1a上で並列状に配列される場合も生じる。
【0034】
こうして、投入ホッパ5から両側シュート5a、5aを通じて両側搬送トラフ1、1の底面板1aにおける後端部上に定量的に供給された片口鰯Aは、図4、図5に示すように、その頭部を前方に向けた状態にして、或いは、後方に向けた状態にして、且つ、1〜3列状態となり、この状態で前後方向に振動する搬送トラフ1によって搬出開口部2に向かって前方に搬送される。
【0035】
この搬送トラフ1による片口鰯Aの搬送状態を述べると、搬送トラフ1、1'を支持している前後脚体7a、7bはその下端から上端に向かって斜め後方に傾斜していると共にトラフ駆動手段7によってその傾斜状態から垂直に起立する手前までの間を前後動させられるので、下端を支点として前方へ回動した際には、搬送トラフ1、1'は前方に向かって斜め上方に移動し、搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' 上に横臥している片口鰯Aに対して前方に向かって斜め上方に突き上げるような搬送力が発生して片口鰯Aはその頭部を前後いずれの方向に向けていてもこの搬送力により前方に向かって押し進められる。
【0036】
また、前後脚体7a、7bが後方に回動した際には、搬送トラフ1、1'は後方に向かって斜め下方に移動する。この際、搬送トラフ1、1'は、例えば6mm程度の短い長さ間を前後方向に急速(具体的には毎分700回)に振動しているので、前後脚体7a、7bが後方に回動した時には片口鰯Aは瞬間的に搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' から浮き上がった状態または、底面板1a、1a' の摩擦係止面との摩擦力が殆どなくなった状態となって、片口鰯Aは殆ど後方に移動することなく、前進した位置で搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' 上に移載した状態となる。従って、搬送トラフ1、1'の前後動によって搬送トラフ1、1'の底面板1a、1a' 上の全ての片口鰯Aを前方に向かって移動させることができる。
【0037】
こうして、搬送トラフ1、1'によって片口鰯Aが前方に搬送され、上側の搬送トラフ1によって搬送される片口鰯Aがこの搬送トラフ1の底面板1aの前部に設けている落下口3に達すると、この片口鰯Aがその尾部を前方側、即ち、搬送側に向けている場合には、該尾側が図6に示すように、落下口3の後端縁から落下口3上に突出した状態になると共にこの落下口3の上方に配設しているエア噴出口8aから常時落下口3に向かって噴射している高圧エアにより、該尾部が落下口3の後端縁を支点として落下口3内で下方に撓み、その尾部の先端が落下口3よりも下方に位置した状態になる。
【0038】
このエア噴出口8aからの高圧エアの噴流圧による尾部の下方への撓み変形が瞬時に行われると共に搬送トラフ1、1'による搬送力によってその状態から該片口鰯Aが直ちに前方に移動してその尾部の先端が図7に示すように落下口3の前端縁の下面に突き当たった状態となる。片口鰯Aは搬送トラフ1、1'による搬送力で前方に向かって常に前進力を付与されているので、前進するに従って図8〜図10に示すように、落下口3の前端縁の下面に尾部から胴部を順次摺接させながら落下口3の後端縁を支点として下方に移動し、頭部側を徐々に起立させながらついには落下口3から下側の搬送トラフ1'の底面板1a' 上に落下することになる。
【0039】
この落下時においては、上述したように、片口鰯Aは落下口3の後端縁を支点として尾部側から後方に、頭部側が斜め前方に向かって起立する方向に回動力を付与されながら落下口3から落下するので、図11に二点鎖線で示すように落下中にその尾部側が後方に、頭部側が前方に向くように反転しながら下側搬送トラフ1'の底面板1a' 上に落下させることができる。上側搬送トラフ1に対する下側搬送トラフ1'の配置は、落下口3から反転しながら落下する片口鰯Aがその頭部を前方側に向けた状態となるまで回転した時に該片口鰯Aを底面板1a' 上に受止できる高さ位置に配設されてあり、従って、上側搬送トラフ1の落下口3から尾部を先頭にして落下する殆どの片口鰯Aをその頭部を搬送側に向けた状態となるように下側搬送トラフ1'上に落下させることができる。
【0040】
また、上側搬送トラフ1において、尾部を前方に向けた状態で前進中の片口鰯Aが不測に上記落下口3を通過した場合には、この落下口3の前方側に設けている次の落下口3を通じて下方に落下させることができる。
【0041】
一方、頭部を前方側に向けて搬送トラフ1の底面板1a上を該搬送トラフ1の搬送力によって前進移動する片口鰯Aが上記落下口3に達しても、細くて薄肉で撓みやすい尾部とは違って頭部は太くて肉厚の胴体に連なっていて剛直性を有するので、上方からのエアの噴流圧にもかかわらず、下方に撓むことなくそのまま落下口3上を前方に向かって通過する。さらに、この頭部から胴部が落下口3を通過して尾部が該落下口3上に達した場合に、エア噴出口8aからの噴流圧によって該尾部が落下口3の前端縁を支点として下方に撓むが尾部が落下口3の前端縁の上面側にあって搬送トラフ1の前後動による搬送力により常に前進移動させられているので、該尾部が落下口3の前端縁上を摺接しながら前方に移動して落下口3を通過し、搬送終端側に向かって搬送される。従って、搬送トラフ1の搬送終端に設けている排出開口部2からは、頭部を前方に向けている片口鰯Aのみが整列シュート4上に搬出されることになる。
【0042】
この上側搬送トラフ1の落下口3から下側搬送トラフ1'の底面板1a' 上に落下した上記片口鰯Aは、上側搬送トラフ1と同様にこの下側搬送トラフ1'の前後動によって発生する搬送力によって底面板1a' 上を前進移動し、この底面板1a’の前端部に設けている落下口3に達した時に、尾部を前方に向けている片口鰯Aの場合には上記同様に上方のエア噴出口8aからのエア噴流圧によって該尾部が落下口3から下方に撓ませられながら搬送トラフ1'による搬送力によって落下口3から下方の排出シュート9上に落下し、頭部を前方に向けている片口鰯Aの場合にはエアの噴流圧に抗しながらそのまま落下口3上を通過して排出開口部2から整列シュート4上に搬出される。
【0043】
この下側搬送トラフ1'の後端部側に供給される片口鰯Aに対しても、上記同様に頭部が前方に向けている片口鰯Aのみを排出開口部2から整列シュート4上に搬出され、落下口3から排出シュート9上に落下した片口鰯Aは、再び、投入ホッパ5に供給されて上下搬送トラフ1、1'により搬送処理される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】装置全体の一部を断面した簡略側面図。
【図2】簡略正面図。
【図3】その平面図。
【図4】片口鰯を搬送処理している状態の簡略縦断側面図。
【図5】搬送トラフ上に供給された片口鰯の配列状態を示す平面図。
【図6】落下口上で尾部をエア噴流圧により撓ました状態の簡略側面図。
【図7】尾部が落下口の前端縁下面に摺接した状態の簡略側面図。
【図8】尾部が落下口か下方に移動している状態の簡略側面図。
【図9】尾部から胴部に向かって落下口から滑り落ちる状態の簡略側面図。
【図10】落下直前の状態を示す簡略側面図。
【図11】落下する状態を示す簡略側面図。
【符号の説明】
【0045】
A 片口鰯
1 搬送トラフ
2 搬出開口部
3 落下口
4 整列シュート
5 投入ホッパ
6 反転シュート
7 トラフ駆動手段
8 エア噴射手段
8a エア噴出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定量の片口鰯をその体長方向を搬送方向に向けた状態で搬送する一定幅を有する細長い底面板を有し、且つ、この底面板の搬送終端側である前部に前後方向の開口幅が片口鰯の尾部の長さに略等しい落下口を設けていると共にこの落下口の前方側に搬出開口部を設けてなる搬送トラフと、この搬送トラフを前後方向に振動させて該搬送トラフの底面板上を搬送中の片口鰯を斜め前方に向かって突き上げる方向に進行させるトラフ駆動手段と、搬送トラフに設けている上記落下口の上方に配設されてこの落下口に向かって流体を噴射し、落下口上を前進中の片口鰯の尾部をその噴流圧によって落下口から下方に撓ませる噴射口を有する流体噴射手段と、搬送トラフの後端部側に設けられた片口鰯の供給部とから構成していることを特徴とする片口鰯の搬送処理装置。
【請求項2】
搬送トラフの下方に一定間隔を存してこの搬送トラフを上側搬送トラフとして下側搬送トラフを並設し、この下側搬送トラフの底面板において、上記上側搬送トラフの底面板に設けている落下口よりも前方位置に該落下口と同じ落下口を設けていると共にこの落下口の上方に下側流体噴射手段を配設してあり、さらに、これらの上下搬送トラフを一体的にトラフ駆動手段により前後方向に振動させるように構成していることを特徴とする請求項1に記載の片口鰯の搬送処理装置。
【請求項3】
上下搬送トラフを左右に対称的に配設し、これらの搬送トラフを一体的にトラフ駆動手段により前後方向に振動させるように構成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の片口鰯の搬送処理装置。
【請求項4】
搬送トラフは、片口鰯の搬送始端側である後端から搬出開口部を設けた前端に向かって斜め上方に向かって緩やかに傾斜していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の片口鰯の搬送処理装置。
【請求項5】
トラフ駆動手段は、搬送トラフの下方に設けている固定台の前後部に一定長さを有する前後脚体の下端部を前後方向に往復回動可能に支持させると共にこれらの前後脚体を上端に向かって斜め後方に傾斜させてその上端を下側搬送トラフの外底面における前後部に前後方向に往復回動自在に連結し、さらに、前後脚体の一方に、駆動モータによって前後方向に往復動するロッド体を連結して前後脚体を後方に傾斜した位置と起立する位置との間で下端を支点として往復回動させるように構成していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の片口鰯の搬送処理装置。
【請求項6】
流体噴射手段は、搬送トラフの底面板に設けている落下口の上方に該落下口に向かってエアを噴射するエア噴射口を設けたエア供給管と、このエア供給管にエア供給ホースを通じて高圧エアを供給するブロワとからなることを特徴とする請求項1に記載の片口鰯の搬送処理装置。
【請求項1】
定量の片口鰯をその体長方向を搬送方向に向けた状態で搬送する一定幅を有する細長い底面板を有し、且つ、この底面板の搬送終端側である前部に前後方向の開口幅が片口鰯の尾部の長さに略等しい落下口を設けていると共にこの落下口の前方側に搬出開口部を設けてなる搬送トラフと、この搬送トラフを前後方向に振動させて該搬送トラフの底面板上を搬送中の片口鰯を斜め前方に向かって突き上げる方向に進行させるトラフ駆動手段と、搬送トラフに設けている上記落下口の上方に配設されてこの落下口に向かって流体を噴射し、落下口上を前進中の片口鰯の尾部をその噴流圧によって落下口から下方に撓ませる噴射口を有する流体噴射手段と、搬送トラフの後端部側に設けられた片口鰯の供給部とから構成していることを特徴とする片口鰯の搬送処理装置。
【請求項2】
搬送トラフの下方に一定間隔を存してこの搬送トラフを上側搬送トラフとして下側搬送トラフを並設し、この下側搬送トラフの底面板において、上記上側搬送トラフの底面板に設けている落下口よりも前方位置に該落下口と同じ落下口を設けていると共にこの落下口の上方に下側流体噴射手段を配設してあり、さらに、これらの上下搬送トラフを一体的にトラフ駆動手段により前後方向に振動させるように構成していることを特徴とする請求項1に記載の片口鰯の搬送処理装置。
【請求項3】
上下搬送トラフを左右に対称的に配設し、これらの搬送トラフを一体的にトラフ駆動手段により前後方向に振動させるように構成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の片口鰯の搬送処理装置。
【請求項4】
搬送トラフは、片口鰯の搬送始端側である後端から搬出開口部を設けた前端に向かって斜め上方に向かって緩やかに傾斜していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の片口鰯の搬送処理装置。
【請求項5】
トラフ駆動手段は、搬送トラフの下方に設けている固定台の前後部に一定長さを有する前後脚体の下端部を前後方向に往復回動可能に支持させると共にこれらの前後脚体を上端に向かって斜め後方に傾斜させてその上端を下側搬送トラフの外底面における前後部に前後方向に往復回動自在に連結し、さらに、前後脚体の一方に、駆動モータによって前後方向に往復動するロッド体を連結して前後脚体を後方に傾斜した位置と起立する位置との間で下端を支点として往復回動させるように構成していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の片口鰯の搬送処理装置。
【請求項6】
流体噴射手段は、搬送トラフの底面板に設けている落下口の上方に該落下口に向かってエアを噴射するエア噴射口を設けたエア供給管と、このエア供給管にエア供給ホースを通じて高圧エアを供給するブロワとからなることを特徴とする請求項1に記載の片口鰯の搬送処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−302985(P2008−302985A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148723(P2007−148723)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000222794)東洋水産機械株式会社 (8)
【出願人】(501168814)独立行政法人水産総合研究センター (103)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000222794)東洋水産機械株式会社 (8)
【出願人】(501168814)独立行政法人水産総合研究センター (103)
【Fターム(参考)】
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