物体探知装置
【課題】算出される反射波成分の強度の減衰を従来構成よりも小さく抑える。
【解決手段】不要波除去手段13は、各位置毎データ列から不要波成分をそれぞれ減算して反射波成分を算出する。仮不要波抽出手段16は、位置毎データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の集合を仮不要波成分とする。仮不要波除去手段17は、各位置毎データ列から仮不要波成分をそれぞれ減算することにより仮反射波成分を求める。データ列分類手段18は、位置毎データ列を、仮反射波成分において対象物で反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置を含む所定範囲内のアンテナ位置の位置毎データ列である強データ列と強データ列以外の弱データ列とに分類する。不要波抽出手段12は、弱データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の集合を前記不要波成分とする。
【解決手段】不要波除去手段13は、各位置毎データ列から不要波成分をそれぞれ減算して反射波成分を算出する。仮不要波抽出手段16は、位置毎データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の集合を仮不要波成分とする。仮不要波除去手段17は、各位置毎データ列から仮不要波成分をそれぞれ減算することにより仮反射波成分を求める。データ列分類手段18は、位置毎データ列を、仮反射波成分において対象物で反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置を含む所定範囲内のアンテナ位置の位置毎データ列である強データ列と強データ列以外の弱データ列とに分類する。不要波抽出手段12は、弱データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の集合を前記不要波成分とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中または構造物中に埋設された対象物や、構造物の裏側に存在する対象物を電磁波により探知する物体探知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地中または構造物中に埋設された対象物(たとえば埋設管など)を電磁波により探知する技術として、パルス状の電磁波を送受信するアンテナ部を地表面または構造物表面からなる基準面に沿う複数のアンテナ位置に移動させ、各アンテナ位置においてアンテナ部から送信され対象物で反射された電磁波をアンテナ部で受信し電気信号である受信信号に変換することにより、対象物を探知することが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、この種の物体探知においてアンテナ部で受信される受信信号には、対象物で反射された電磁波に相当する反射波成分だけでなく、基準面で反射された電磁波などの不要波成分が含まれている。不要波成分は、通常、各アンテナ位置で共通し、且つ測定環境が大きく変化しない限り定常的な値をとる。
【0004】
ここにおいて、各アンテナ位置で受信された受信信号の強度を所定間隔のサンプリングタイミングごとに強度データとし、当該強度データのアンテナ位置ごとの集合を位置毎データ列として記憶部に記憶し、複数のアンテナ位置における同一のサンプリングタイミングの強度データの平均値を算出することにより、当該平均値の複数のサンプリングタイミング分の集合を不要波成分と想定することが考えられている。この場合に、算出した不要波成分を各アンテナ位置における位置毎データ列からそれぞれ減算することにより反射波成分を算出する。
【0005】
なお、特許文献1に記載の発明では、全アンテナ位置における強度データの平均値を不要波成分とするのではなく、反射波成分の算出対象とするアンテナ位置およびその前後の複数のアンテナ位置における強度データの平均値を不要波成分としている。
【特許文献1】特開平10−132950号公報(第4−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の技術においては、位置毎データ列に不要波成分だけでなく反射波成分も含まれているので、位置毎データ列の強度データの平均値からなる不要波成分には反射波成分が含まれることになり、位置毎データ列から不要波成分を減算すると、減算後の反射波成分の強度が実際の反射波成分よりも減衰してしまう可能性がある。特に、特許文献1に記載の発明では、不要波成分を抽出する際の強度データのデータ数が少ないので、抽出された不要波成分に占める反射波成分の比率が大きくなり、位置毎データ列から不要波成分を減算すると、減算後の反射波成分の強度が大きく減衰する。
【0007】
その結果、電磁波の減衰率が大きい媒質中に存在する対象物や、基準面から遠い位置に存在する対象物や、電磁波の反射率の低い対象物などに関しては、算出される反射波成分の強度が小さくなり対象物を探知できないことがある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、算出される反射波成分の強度の減衰を従来構成よりも小さく抑えることができる物体探知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明では、探知領域内に設定された基準面に沿う複数のアンテナ位置においてアンテナ部から基準面に向けて電磁波を間欠的に送信し、基準面の奥に存在する対象物により反射された電磁波をアンテナ部で受信し電気信号である受信信号に変換することにより対象物を探知する物体探知装置であって、各アンテナ位置で受信された受信信号の強度を所定間隔のサンプリングタイミングごとに強度データとし、当該強度データのアンテナ位置ごとの集合を位置毎データ列として記憶部に記憶するサンプリング手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列に共通に含まれる不要波成分を抽出する不要波抽出手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列から不要波成分をそれぞれ減算することにより、対象物で反射された電磁波に相当する反射波成分を求める不要波除去手段と、複数のアンテナ位置の反射波成分の強度および電磁波が送信されてから反射波成分が受信されるまでの経過時間に基づいて対象物の状態を検出する検出手段とを備え、不要波抽出手段は、記憶部に記憶された位置毎データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を仮不要波成分として抽出する仮不要波抽出手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列から仮不要波成分をそれぞれ減算することにより仮反射波成分を求める仮不要波除去手段と、記憶部に記憶された位置毎データ列を、仮反射波成分において対象物で反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置を含む所定範囲内のアンテナ位置の位置毎データ列である強データ列と強データ列以外の弱データ列とに分類するデータ列分類手段とを有し、弱データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を前記不要波成分とすることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、不要波抽出手段は、記憶部に記憶された位置毎データ列のうちの弱データ列のみに関して、同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を前記不要波成分とするので、強データ列における反射波成分が不要波抽出手段で抽出される不要波成分に含まれることはない。ここにおいて、強データ列は、仮反射波成分において対象物で反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置を含む所定範囲内のアンテナ位置の位置毎データ列であるから、この強データ列における反射波成分が不要波成分に含まれることがなければ、位置毎データ列から不要波成分を減算しても、減算後の反射波成分の強度が実際の反射波成分よりも大きく減衰することはない。すなわち、請求項1の構成では、算出される反射波成分の強度の減衰を従来構成よりも小さく抑えることができるという利点がある。なお、ここでいう代表値は平均値や中央値や最頻値等を意味する。また、検出手段は、対象物の状態として、たとえば反射波成分の強度および電磁波が送信されてから反射波成分が受信されるまでの経過時間に基づいて対象物の有無や、対象物までの距離や、対象物の大きさや形状や材質や、物体探知装置と対象物との間に存在する伝播媒質(壁材等)の特性などを検出する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後複数のアンテナ位置の中で、前記最大データが基準位置における最大データに1未満の所定値を乗算した値以上となるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、各アンテナ位置における最大データの強度の大きさに基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、比較的簡単な演算処理で位置毎データ列を分類することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後の予め設定された数のアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、各アンテナ位置における最大データの強度の大きさに基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、比較的簡単な演算処理で位置毎データ列を分類することができる。しかも、1つの基準位置に対して強データ列とする位置毎データ列の数が固定されるので、基準位置の前後のアンテナ位置で物体探知装置の誤動作による測定エラー等によって前後のアンテナ位置での最大データに比べて極端に小さい異常値が検出されても、異常値が検出されたアンテナ位置の位置毎データ列も強データ列とすることにより異常値の影響を取り除くことが可能となる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、各アンテナ位置における最大データの強度の大きさに基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、比較的簡単な演算処理で位置毎データ列を分類することができる。しかも、基準位置における位置毎データ列を強データ列とするので、基準位置を求めた後で強データ列の範囲を決めるための演算処理を行う必要はなく演算処理をさらに簡略化できる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記複数のアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強度データ列とすることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、各アンテナ位置における最大データの強度の大きさに基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、比較的簡単な演算処理で位置毎データ列を分類することができる。しかも、最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置における位置毎データ列を強データ列とするので、強データ列の範囲を決めるための演算処理を行う必要はなく演算処理をさらに簡略化できる。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後複数のアンテナ位置の中で、前記最大データが基準位置における最大データに1未満の所定値を乗算した値以上となるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、各アンテナ位置における電磁波が送信されてから最大データが受信されるまでの経過時間に基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、対象物で反射された電磁波にノイズが重畳して各最大データの強度が正確な値をとらない場合でも位置毎データを分類することができる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後の予め設定された数のアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、各アンテナ位置における電磁波が送信されてから最大データが受信されるまでの経過時間に基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、対象物で反射された電磁波にノイズが重畳して各最大データの強度が正確な値をとらない場合でも位置毎データを分類することができる。しかも、1つの基準位置に対して強データ列とする位置毎データ列の数が固定されるので、基準位置の前後のアンテナ位置で物体探知装置の誤動作による測定エラー等によって前後のアンテナ位置での最大データに比べて極端に小さい異常値が検出されても、異常値が検出されたアンテナ位置の位置毎データ列も強データ列とすることにより異常値の影響を取り除くことが可能となる。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、各アンテナ位置における電磁波が送信されてから最大データが受信されるまでの経過時間に基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、対象物で反射された電磁波にノイズが重畳して各最大データの強度が正確な値をとらない場合でも位置毎データを分類することができる。しかも、基準位置における位置毎データ列を強データ列とするので、基準位置を求めた後で強データ列の範囲を決めるための演算処理を行う必要はなく演算処理を簡略化できる。
【0025】
請求項9の発明は、請求項2ないし請求項8のいずれかの発明において、前記閾値が、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間が長いほど小さくなるように前記経過時間に対応付けられていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、閾値は電磁波が送信されてから最大データが受信されるまでの経過時間が長いほど小さくなるので、基準面から対象物までの距離が大きくなるほど閾値が小さくなる。ここで、一般に基準面から対象物までの距離が大きくなるほど位置毎データ列の最大データは減衰して低下する。すなわち、請求項9の構成では、基準面から対象物までの距離が比較的大きい場合に、位置毎データ列の最大データが低下していても、確実に強データ列と弱データ列とを分類することができる。
【0027】
請求項10の発明は、請求項2ないし請求項8のいずれかの発明において、前記閾値が、予め一定の値に設定されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、閾値を決定する演算処理が不要であるから、演算処理を簡略化できる。
【0029】
請求項11の発明は、請求項1ないし請求項10のいずれかの発明において、前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方が、同一の前記サンプリングタイミングごとに、複数の前記アンテナ位置の強度データが分布している強度範囲を一定の強度幅の強度区間に分割し、強度データのデータ数が最多となる強度区間について求めた強度データの平均値を前記代表値とすることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、仮不要波抽出手段と不要波抽出手段との少なくとも一方が、強度データのデータ数が最多となる強度区間について求めた強度データの平均値を代表値とする。一般的に強度データは仮不要波成分や不要波成分に対して強度軸方向に偏って分布しているが、請求項11の構成ではサンプリングタイミングごとの全強度データの平均値から仮不要波成分や不要波成分を求める場合に比べて、強度データの分布の偏りの影響を受けず仮不要波成分や不要波成分を正確に算出することができる。そのため、反射波成分が精度よく求まり、対象物の状態の検出精度が向上する。
【0031】
請求項12の発明は、請求項1ないし請求項10のいずれかの発明において、前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方が、同一の前記サンプリングタイミングごとに求めた複数の前記アンテナ位置の強度データの中央値を前記代表値とすることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、仮不要波抽出手段と不要波抽出手段との少なくとも一方が、同一のサンプリングタイミングごとに求めた複数のアンテナ位置の強度データの中央値を代表値とする。一般的に強度データは仮不要波成分や不要波成分に対して強度軸方向に偏って分布しているが、請求項12の構成ではサンプリングタイミングごとの全強度データの平均値から仮不要波成分や不要波成分を求める場合に比べて、強度データの分布の偏りの影響を受けず仮不要波成分や不要波成分を正確に算出することができる。そのため、反射波成分が精度よく求まり、対象物の状態の検出精度が向上する。
【0033】
請求項13の発明は、請求項1ないし請求項10のいずれかの発明において、前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方が、同一の前記サンプリングタイミングごとに求めた複数の前記アンテナ位置の強度データの平均値を前記代表値とすることを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、仮不要波抽出手段と不要波抽出手段との少なくとも一方が、同一のサンプリングタイミングごとに求めた複数のアンテナ位置の強度データの平均値を代表値とするので、比較的簡単な演算処理で仮不要波成分や不要波成分を求めることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、不要波抽出手段が、記憶部に記憶された位置毎データ列のうちの弱データ列のみに関して、同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を前記不要波成分とするので、強データ列における反射波成分が不要波抽出手段で抽出される不要波成分に含まれることはない。ここにおいて、強データ列は、仮反射波成分において対象物で反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置を含む所定範囲内のアンテナ位置の位置毎データ列であるから、この強データ列における反射波成分が不要波成分に含まれることがなければ、位置毎データ列から不要波成分を減算しても、減算後の反射波成分の強度が実際の反射波成分よりも大きく減衰することはない。すなわち、請求項1の構成では、算出される反射波成分の強度の減衰を従来構成よりも小さく抑えることができる。その結果、電磁波の減衰率が大きい媒質中に存在する対象物や、基準面から遠い位置に存在する対象物や、電磁波の反射率の低い対象物などに関しても、対象物を探知できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(実施形態1)
本実施形態の物体探知装置は、1個のアンテナで電気信号である送信信号を受けて電磁波を送信するとともに、当該アンテナで電磁波を受信し電気信号である受信信号に変換するアンテナ部を備え、図2に示すように、地表面もしくは構造物表面からなる基準面Sに沿った複数箇所(ここではn箇所)のアンテナ位置X1〜Xnにおいてアンテナ部1から基準面Sに向けて電磁波を間欠的に送信し、基準面Sよりも奥に存在する対象物Bにより反射された電磁波をアンテナ部1で受信することにより対象物Bを探知するものである。
【0037】
物体探知装置は、図1(a)に示すように、前記送信信号および電磁波の送信後の受波期間を定めるタイミング信号を生成して出力する信号生成部2と、信号生成部2から出力された送信信号を信号処理してアンテナ部1からパルス状の電磁波を送信させる第1の信号処理部3と、各アンテナ位置X1〜Xnにおいて前記受波期間にアンテナ部1からの受信信号をそれぞれ受けて各受信信号を信号処理し、対象物Bを探知する第2の信号処理部4とを備える。さらに、第2の信号処理部4での信号処理に用いる各種データを記憶する記憶部5と、第2の信号処理部4での検知結果などを出力する出力部6と、信号生成部2および各信号処理部3,4の信号処理方法(出力部6での出力内容を含む)を制御する制御部7と、制御部7に各種の指示を与えるように操作される入力部8とが設けられている。
【0038】
ここにおいて、信号生成部2は、制御部7からの制御信号に基づいて送信信号およびタイミング信号を生成し、送信信号を第1の信号処理部3に与えるとともにタイミング信号を第2の信号処理部4に与える。第1の信号処理部3は、入力された送信信号に対して増幅などの処理を行いアンテナ部1から電磁波を送信させる。
【0039】
第2の信号処理部4は、図1(b)に示すように、アンテナ部1からの受信信号を増幅する増幅部9と、増幅部9で増幅された受信信号の強度を前記受波期間のサンプリングタイミングごとにデジタルの強度データに変換して記憶部5に記憶するA/D変換部10(サンプリング手段)と、記憶部5に格納された強度データを用いて対象物Bを探知する演算部11とを備えている。記憶部5内には、各アンテナ位置X1〜Xnと各サンプリングタイミングとが対にされ各強度データにそれぞれ対応付けて格納されており、強度データは実質的にアンテナ位置X1〜Xnとサンプリングタイミングとについて2次元配置されたデータマップを形成する。ここに、記憶部5内における強度データのアンテナ位置X1〜Xnごとの集合を位置毎データ列とする。
【0040】
演算部11は、各アンテナ位置X1〜Xnで共通の不要波成分を求める不要波抽出手段12と、前記位置毎データ列から前記不要波成分を減算することにより反射波成分を求める不要波除去手段13と、複数のアンテナ位置X1〜Xnにおける前記反射波成分の強度に基づいて対象物Bの状態を検出する検出手段14とを備えている。
【0041】
本実施形態の不要波抽出手段12は、記憶部5に記憶された位置毎データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を仮不要波成分として抽出する仮不要波抽出手段16と、各アンテナ位置X1〜Xnでの位置毎データ列から仮不要波成分をそれぞれ減算することにより仮反射波成分を求める仮不要波除去手段17と、記憶部5に記憶された位置毎データ列を、仮反射波成分において対象物Bで反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置X1〜Xnを含む所定範囲内のアンテナ位置X1〜Xnの位置毎データ列である強データ列と強データ列以外の弱データ列とに分類するデータ列分類手段18とを有する。この不要波抽出手段12は、弱データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を不要波成分として出力する。
【0042】
以下に、本実施形態の物体探知装置の動作について図4のフローチャートを参照して説明する。ここでは、図2に示すように複数箇所(n箇所)のアンテナ位置X1〜Xnでそれぞれ信号を受信した場合について説明する。また、アンテナ位置X1で受信された受信信号に相当する位置毎データ列をA1、アンテナ位置X2で受信された受信信号に相当する位置毎データ列をA2とするように、各アンテナ位置X1〜Xnで受信された受信信号に相当する位置毎データ列をそれぞれ位置毎データ列A1〜Anとする。図2および図3では、アンテナ部1がアンテナ位置X3にある場合の位置毎データ列A3を表している。以下、電磁波の送波時点からの経過時間を伝播時間Tという。図3では、横軸を伝播時間Tとし、縦軸を強度としている。
【0043】
図4におけるステップS1は初期化であって、ここで設定される各種パラメータ(i=0、雑音成分算出方法の設定、位置毎データ列A1〜Anの分類基準の設定など)は、予め定められていてもよく、入力部8で取り込まれた値であってもよい。
【0044】
続いて、ステップS2,S3においては各アンテナ位置X1〜Xnの位置毎データ列A1〜Anを個別に記憶部5に取り込む。位置毎データ列A1〜Anは必要なデータ列数(つまりアンテナ位置X1〜Xnの数n)に達するまで取り込まれる(S4,S5)。ここで、新しい位置毎データ列A1〜Anを取り込む度に、既に取り込んだ位置毎データ列A1〜Anを1列ずつシフトする(S2)。これにより、位置毎データ列A1〜Anがデータ列数nだけ一旦取り込まれ後述の検出手段14により解析結果が得られた以降は、新しい位置毎データ列A1〜Anが1つ取り込まれる度に、その位置毎データ列A1〜Anのみが更新された状態で新たに検出手段14での解析が可能になる。すなわち、最も新しい位置毎データ列A1〜Anを最も古い位置毎データ列A1〜Anと入れ替えることができる。位置毎データ列A1〜Anの取り込みには、同様に新旧の位置毎データ列A1〜Anの入れ替えが可能な他の信号処理方法を用いてもよい。
【0045】
ここにおいて、各位置毎データ列A1〜Anは、A/D変換部10でサンプリングされることによりそれぞれ複数個の強度データの集合で表されることとなる。ここでは、サンプリングタイミングの時間間隔を図3(b)に示すようにΔt〔s〕とすることにより、各位置毎データ列A1〜Anはそれぞれ計m個の強度データ(要素)で表される。すなわち、位置毎データ列A1=〔強度データA1(1)、強度データA1(2)、・・・、強度データA1(m)〕、位置毎データ列A2=〔強度データA2(1)、強度データA2(2)、・・・、強度データA2(m)〕、・・・、位置毎データ列An=〔強度データAn(1)、強度データAn(2)、・・・、強度データAn(m)〕となる。
【0046】
強度データは、記憶部5内において同一のサンプリングタイミング(同一の伝播時間T)ごとにも格納され、それぞれ時間毎データ列t1〜tmを構成する。すなわち、受信された各位置毎データ列A1〜Anにおける最初のサンプリングタイミングの強度データの集合〔強度データA1(1)、強度データA2(1)、・・・、強度データAn(1)〕が時間毎データ列t1となり、以降、時間毎データ列t2=〔強度データA1(2)、強度データA2(2)、・・・、強度データAn(2)〕、・・・、時間毎データ列tm=〔強度データA1(m)、強度データA2(m)、・・・、強度データAn(m)〕となる。
【0047】
ところで、図5(c)に示す位置毎データ列A1〜Anは、図5(a)の不要波成分と図5(b)の反射波成分との2つの成分が合成されたものである。図5では、横軸を伝播時間Tとし、縦軸を強度として、複数のアンテナ位置X1〜Xnに対応する各波形を縦軸方向に並べている。ここでいう不要波成分とは、対象物Bで反射されたのではなく、基準面Sや物体探知装置の表面で反射された電磁波を意味する。電磁波を送信する送信アンテナと電磁波を受信する受信アンテナとを別に有したアンテナ部1を用いる場合には、送信アンテナから受信アンテナに直接伝播する直接波も不要波成分に含まれる。これら不要波成分は、異なるアンテナ位置X1〜Xnでも変化せず、且つ測定環境が大きく変化しない限り定常的な値をとる。反射波成分は対象物Bで反射された電磁波を意味する。なお、ランダムに発生する熱雑音等の雑音成分が不要波成分として位置毎データ列A1〜Anに含まれることもあるが、反射波成分に比べて雑音成分が無視できる大きさであれば、不要波成分に雑音成分は含まれない。
【0048】
仮不要波抽出手段16は、図4のステップS6において位置毎データ列A1〜Anから仮不要波成分Y0を抽出するために、まず記憶部5から強度データを時間毎データ列t1〜tmごとに取り出す。各時間毎データ列t1〜tmは、それぞれ図5(c)における位置毎データ列A1〜Anを同一のサンプリングタイミング(同一の伝播時間T)で切断した断面に相当する。横軸をアンテナ位置X1〜Xnとし、縦軸を強度として、複数の時間毎データ列t1、・・・、tN、tN+1、・・・、を縦軸方向に並べると図6のようになる。図6では、各時間毎データ列が相対的に比較されているので、異なるアンテナ位置X1〜Xnでも変化しない不要波成分は反映されず、雑音成分がなければ、図5(b)における反射波成分を同一のサンプリングタイミング(同一の伝播時間T)で切断した断面に相当する。
【0049】
図6に示した時間毎データ列の1つ(時間毎データ列tk)を図7に示す。図7では、横軸をアンテナ位置X1〜Xnとし、縦軸を強度としている。ここにおいて、仮不要波抽出手段16は、時間毎データ列tkを構成する複数の強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)が分布している強度範囲(ここでは図7の上下両端間)を一定の強度幅ΔVで分割した強度区間に、これらの強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)をグループ分けする。つまり、強度範囲を強度幅ΔV刻みで複数の強度区間に分け、各強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)をいずれかの強度区間にそれぞれ当てはめる。そして、強度区間ごとに強度データのデータ数(個数)を比較し、このデータ数が最多となる強度区間(図7に「P」で示す)について、当該強度区間に含まれる全ての強度データの平均値Y0(k)を代表値とする。同様の処理を全ての時間毎データ列t1〜tmについて繰り返す。仮不要波抽出手段16は、このように算出された平均値Y0(k)の全サンプリングタイミング分の集合〔Y0(1)、Y0(2)、・・・、Y0(m)〕を仮不要波成分Y0として出力する。図8には、横軸を伝播時間T、縦軸を強度として、仮不要波抽出手段16で抽出された仮不要波成分Y0の一例を示す。
【0050】
一方、仮不要波除去手段17は、ステップS7において、記憶部5内の位置毎データ列A1〜Anから仮不要波抽出手段16の出力(仮不要波成分Y0)を減算することにより、仮反射波成分C0を求める。ただし、位置毎データ列A1〜Anには、仮不要波成分Y0以外に、アンテナ位置X1〜Xnごとに異なる雑音成分(ランダムに発生する熱雑音等)が含まれる場合があり、この場合には仮不要波除去手段17で求まる仮反射波成分C0に雑音成分(高周波成分)が重畳されることがある。
【0051】
そこで、本実施形態の物体探知装置では、受信信号に含まれる雑音成分を取り除くフィルタ手段15(図1(b)参照)を演算部11に備えることによって、仮不要波成分Y0の抽出精度を向上させている。フィルタ手段15としては、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタやFIR(Finite Impulse Response)フィルタ、または、これらにハミング窓(Hamming Window)などの窓関数やチェビシェフ(Chebyshev)近似などを適用したものなど多くの選択肢があり、これらを適宜採用すればよい。
【0052】
ここに、フィルタ手段15は、以下の2つのいずれかを雑音成分を取り除く対象とする。1つ目は、アンテナ位置X1〜Xnごとの強度データの集合、つまり各位置毎データ列A1〜Anであって、たとえば図3の位置毎データ列A3については、複数のサンプリングタイミングの強度データ(A3(1)、A3(2)、・・・、A3(m))から雑音成分を取り除く。2つ目は、サンプリングタイミングごとの強度データの集合、つまり各時間毎データ列t1〜tmであって、たとえば図7の時間毎データ列tkについては、複数のアンテナ位置X1〜Xnの強度データ(A1(k)、A2(k)、・・・、An(k))から雑音成分を取り除く。各位置毎データ列A1〜Anについて雑音成分を取り除き、その後さらに各時間毎データ列t1〜tmについて雑音成分を取り除く処理を行う等、両フィルタ処理を組み合わせてもよい。
【0053】
一方、位置毎データ列A1〜Anを得る前に熱雑音等の雑音成分を予め測定する雑音測定手段(図示せず)を設け、仮不要波抽出手段16で用いる強度区間の強度幅ΔVの値を、雑音測定手段で測定された雑音成分の最大振幅よりも大きく設定するようにしてもよい。これにより、仮不要波抽出手段16で求まる仮不要波成分Y0が雑音成分の影響で変化することはなくなるので、上記フィルタ手段15を用いない場合、あるいは、上記フィルタ手段15で雑音成分が完全には取り除くことができなかった場合でも、雑音成分の影響を無視することができる。
【0054】
ただし、強度幅ΔVが大きくなると、仮不要波抽出手段16での仮不要波成分Y0の抽出に要する信号処理時間は短縮されるものの、仮不要波成分Y0の抽出精度は低下する。そのため、たとえば雑音成分の最大振幅の2倍の値を強度幅ΔVとするなど、測定環境等の状況に応じて適切な強度幅ΔVに設定する必要がある。なお、雑音測定手段で測定された雑音成分の情報は、対象物Bの探知を行う前に記憶部5または第2の信号処理部4内のメモリ(図示せず)に格納するか、あるいは、対象物Bの探知を行うときに記憶部5または信号処理部4内のメモリに書き込みをすることにより、仮不要波抽出手段16で使用可能となる。
【0055】
また、上述のように強度区間の強度幅ΔVを予め設定するのではなく、サンプリングタイミングごとに、複数のアンテナ位置X1〜Xnについての強度データの最大値と最小値との間の範囲を強度範囲とし、この強度範囲を予め定められた定数で分割することにより強度幅ΔVの強度区間を設定してもよい。ここで、たとえば8bit演算を利用するのであれば強度範囲を256分割すればよい。この場合には、256個の強度区間の全てについて強度データの個数を比較すると処理時間が比較的長くなる。そこで、各位置毎データ列A1〜Anの強度範囲を2分割して可変区間とし、分割後の可変区間のうちで強度データのデータ数が最多となる可変区間を再度2分割することにより、強度範囲の2分の1、4分の1、8分の1、・・・というように可変区間を徐々に狭めていく処理を、可変区間が強度幅ΔVの強度区間に相当するまで繰り返すことが望ましい。これにより、処理時間の短縮を図ることができる。ただし、可変区間を徐々に狭めて仮不要波成分Y0を抽出する方法は、強度データの分布状況によっては使用できない場合もある。なお、可変区間を徐々に狭める際の分割は2分割に限らず、たとえば3分割であってもよい。
【0056】
一般的に強度データは仮不要波成分Y0に対して強度軸方向に偏って分布しているが、本実施形態では仮不要波成分Y0を抽出する際に、サンプリングタイミングごとの全強度データの平均値から仮不要波成分Y0を算出するのではなく、強度データのデータ数が最大となる強度区間について強度データの平均値から仮不要波成分Y0を算出するので、強度データの分布の偏りの影響を受けずに仮不要波成分Y0を正確に算出することができる。そのため、仮反射波成分C0が精度よく求まる。
【0057】
ところで、本実施形態では以下に説明するように、不要波抽出手段12が上述の仮反射波成分C0を用いて不要波成分Y1を抽出することにより、算出される反射波成分C1の強度の減衰を従来構成よりも小さく抑えている。以下の説明では、図9(a)の不要波成分と図9(b)の反射波成分との2つの成分が合成された図9(c)の位置毎データ列A1〜Anが得られた場合を例として、反射波成分C1を算出する動作を説明する。図9では、横軸を伝播時間Tとし、縦軸を強度として、複数のアンテナ位置X1〜Xnに対応する各波形を縦軸方向に並べている。ここに、図5(b)の反射波成分は1個の対象物Bで反射された電磁波に相当するのに対し、図9(b)の反射波成分は基準面Sから略同じ深さに位置する2個の対象物Bで反射された電磁波に相当する。
【0058】
ステップS8においては、データ列分類手段18が、仮反射波成分C0を解析することにより、改めて不要波成分Y1を抽出するために位置毎データ列A1〜Anを分類する。ここではまず、データ列分類手段18は、各アンテナ位置X1〜Xnに関して仮反射波成分C0の最大値となる強度データ(以下、「最大データ」という)と、各最大データの伝播時間Tとを検出する。ここでいう最大データは、各仮反射波成分C0の中で強度データを比較した場合にそれぞれ最大となる強度データであってもよいが、本実施形態では、基準の波形に対して各仮反射波成分C0の相関をとり、このとき相関値が最大となる強度データを最大データとして用いている。対象物Bで反射される電磁波の波形は対象物Bの属性(形状や大きさ、材質等)などにより異なる場合があり、したがって、各仮反射波成分C0の中で単純に強度データを比較した場合にそれぞれ最大となる強度データを検出することは困難であるが、相関をとる方法であれば確実に最大データを検出することができる。
【0059】
ここに、データ列分類手段18は、図10に示すように最大データをアンテナ位置X1〜Xnと同じ順番に並べたときに強度の極大(図10に「P」で示す)となるアンテナ位置X1〜Xnを検出し、当該アンテナ位置X1〜Xnの中で最大データの強度が所定の閾値K1以上のものを基準位置とする。なお、図10および以下の説明で用いる図11、図16では横軸をアンテナ位置X1〜Xnとし、縦軸を強度としている。ここで閾値K1は、対象物Bで反射された電磁波に相当する仮反射波成分C0の強度データよりも小さく設定されている。その結果、基準位置となるのは、対象物Bで反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置X1〜Xnであって、一般的には対象物Bとの距離が最小のアンテナ位置X1〜Xnである。
【0060】
そして、データ列分類手段18は、図11に示すように、基準位置および基準位置の前後数箇所のアンテナ位置X1〜Xnの中で、最大データが基準位置の最大データCM1に所定値L1(ただしL1<1とする)を乗算した値以上となるアンテナ位置X1〜Xn(図11では基準位置を含む所定範囲d内のアンテナ位置X1〜Xn)における位置毎データ列A1〜Anを強データ列Aaとし、それ以外の位置毎データ列A1〜Anを弱データ列Abとする。これにより、位置毎データ列A1〜Anは強データ列Aaと強データ列Aaよりも対象物Bで反射された電磁波の影響の小さい弱データ列Abとに分類されることになる。
【0061】
上述の閾値K1は、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間である伝播時間Tが長いほど小さくなるように、最大データの伝播時間Tに対応付けられている。電磁波は伝播距離に伴って減衰するので、基準面Sからの深さのみが異なる対象物Bをそれぞれ探知する場合には、基準面Sからの対象物Bまでの深さが深いほど、アンテナ位置X1〜Xnと対象物Bとの距離は大きくなり、アンテナ位置X1〜Xnで受信される受信信号の強度は小さくなる。したがって、本実施形態のように最大データの伝播時間Tが長いほど(つまりアンテナ位置X1〜Xnと対象物Bとの距離が大きいほど)閾値K1を小さく設定することにより、比較的深い位置に存在する対象物Bで反射された電磁波を受信したアンテナ位置X1〜Xnも基準位置として抽出し易いという利点がある。
【0062】
閾値K1の決定方法の一例として、図12に示すように最大データの伝播時間Tをアンテナ位置X1〜Xnと同じ順番に並べたときに、ある伝播時間T0を境に、伝播時間T0よりも最大データの伝播時間Tが早い場合の閾値をK1(1)、遅い場合の閾値を閾値K1(1)よりも小さいK1(2)とすることが考えられる。なお、図12では横軸をアンテナ位置X1〜Xnとし、縦軸を伝播時間Tとしている。ただし、閾値K1の決定方法は図12の例に限るものではなく、たとえば伝播時間Tを変数とする数式で閾値K1を表したり、伝播時間Tと閾値K1との対応関係を示す対応表を用いたりすることにより、閾値K1と伝播時間Tとの対応関係をより細かく設定してもよい。
【0063】
また、上述の所定値L1や基準位置の前後のアンテナ位置X1〜Xnの数についても、必ずしも全ての場合に共通な一定値である必要はなく、たとえば閾値K1と同様に伝播時間Tの関数としてもよい。ここで、基準面Sからの深さのみが異なる2つの対象物Bを、隣り合った2点のアンテナ位置X1〜Xnで探知する場合には、基準面Sからの深さが深い対象物Bほど、各アンテナ位置X1〜Xnとの距離の差および比は小さくなる。電磁波は伝播距離に伴って減衰するので、各アンテナ位置X1〜Xnと対象物Bとの間の距離の差および比が小さいほど、各アンテナ位置X1〜Xnで受信される受信信号の強度の差も小さくなる。要するに、基準面Sから遠い対象物Bでの反射波の方が、基準面に近い位置の対象物Bでの反射波よりも、アンテナ位置X1〜Xnによる受信信号の強度変化が緩やかになるから、対象物Bが基準面Sから遠いほど、所定値L1を大きく設定することが望ましい。言い換えると、伝播時間Tが短いほど所定値L1を小さくすることが望ましい。
【0064】
上述のように分類された強データ列Aaと弱データ列Abとは、ステップS9において不要波抽出手段12が不要波成分Y1を抽出する処理に使用される。本実施形態では、仮不要波成分Y0を抽出するステップS6の処理と同様の処理により不要波成分Y1を抽出する。ただし、仮不要波成分Y0を抽出する際には、全てのアンテナ位置X1〜Xnの位置毎データ列A1〜Anを用いて仮不要波成分Y0を抽出したのに対して、不要波成分Y1を抽出する際には、位置毎データ列A1〜Anのうちの弱データ列Abのみを用いて不要波成分Y1を抽出する。
【0065】
要するに、不要波抽出手段12は、弱データ列Abに関して、同一のサンプリングタイミングごとに、複数の強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)が分布している強度範囲を一定の強度幅ΔVで分割した強度区間に、これらの強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)をグループ分けする。つまり、強度範囲を強度幅ΔV刻みで複数の強度区間に分け、各強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)をいずれかの強度区間にそれぞれ当てはめる。そして、強度区間ごとに強度データのデータ数(個数)を比較し、このデータ数が最多となる強度区間について、当該強度区間に含まれる全ての強度データの平均値Y1(k)を代表値とする。同様の処理を全サンプリングタイミングについて繰り返す。不要波抽出手段12は、このように算出された平均値Y1(k)の全サンプリングタイミング分の集合〔Y1(1)、Y1(2)、・・・、Y1(m)〕を不要波成分Y1として出力する。ステップS6で説明した上記方法の利点は、不要波成分Y1を精度よく抽出できる点にある。
【0066】
ここに、不要波成分Y1を抽出する処理は仮不要波成分Y0を抽出するステップS6の処理と同じである必要はなく、たとえば、弱データ列Abを同一サンプリングタイミングで比較し、強度データの平均値や中央値を代表値として不要波成分Y1を抽出してもよい。強度データの平均値をとる場合には、同一サンプリングタイミングにおける弱データ列Abの強度データの合計を弱データ列Abの個数で除算した値を平均値Y1(k)とする。不要波抽出手段12は、同様の処理を全サンプリングタイミングについて繰り返し、このように算出された平均値Y1(k)の全サンプリングタイミング分の集合〔Y1(1)、Y1(2)、・・・、Y1(m)〕を不要波成分Y1として出力する。一方、強度データの中央値をとる場合には、同一サンプリングタイミングにおける弱データ列Abの強度データを大小順に並べ替え、このとき中央に位置する強度データを中央値Y1(k)とする。不要波抽出手段12は、同様の処理を全サンプリングタイミングについて繰り返し、このように算出された中央値Y1(k)の全サンプリングタイミング分の集合〔Y1(1)、Y1(2)、・・・、Y1(m)〕を不要波成分Y1として出力する。
【0067】
強度データの平均値を代表値として用いる方法は最も単純であるため、信号処理速度が速く部品コストを抑えられるという利点がある。アプリケーションによっては、信号処理速度の制限上、この方法でなければ実用化できないことも考えられる。中央値を代表値として用いる方法は、平均値を用いる方法に比べると信号処理時間は長くなるものの一般的に精度は良くなる。そのため、物体探知装置に求められる仕様に応じて最適な方法を選択すればよい。また、仮不要波成分Y0を抽出するステップS6の処理において、強度データの平均値や中央値を代表値として用いるようにしてもよい。なお、いずれの方法を用いるにしても、全ての強度データを用いる必要はなく、物体探知装置の誤動作による測定エラー等によって前後のアンテナ位置X1〜Xnでの強度データに比べて極端に小さい(あるいは大きい)異常値が検出されている場合の対策として、異常値に相当する最小値あるいは最大値から数個分の強度データを無視してもよい。
【0068】
不要波除去手段13は、上述のように抽出された不要波成分Y1をステップS10において各位置毎データ列A1〜Anからそれぞれ減算することにより反射波成分C1を算出する。
【0069】
ここで、図13に対象物Bで反射された電磁波に相当する実際の反射波成分C3、図14に従来の方法で算出された反射波成分C2、図15に本実施形態で算出された反射波成分C1をそれぞれ示す。図13〜15では、横軸を伝播時間Tとし、縦軸を強度として、複数のアンテナ位置X1〜Xnに対応する各波形を縦軸方向に並べている。図14の従来方法で算出された反射波成分C2は、実際の反射波成分C3を含んだ不要波成分を位置毎データ列A1〜Anから減算して算出されるので、実際の反射波成分C3には存在しない余計な強度の極大値が現れて波形が歪んでいる。これに対して、本実施形態の反射波成分C1は、このような余計な強度の極大値が現れることはなく、反射波成分C2に比べると波形の歪みが少ないという利点がある。
【0070】
また、図16は、実際の反射波成分C3、従来の方法で算出された反射波成分C2、本実施形態で算出された反射波成分C1のそれぞれについて、各アンテナ位置X1〜Xnに関して強度の最大値となる強度データ(図13〜15に黒点で示す)をアンテナ位置X1〜Xnと同じ順番に並べたものである。ここにおいて、従来方法で算出された反射波成分C2は、実際の反射波成分C3を含んだ不要波成分を位置毎データ列A1〜Anから減算して算出されるので、実際の反射波成分C3に比較して強度が大きく減衰している。一方、本実施形態で算出される反射波成分C1は、対象物Bで反射された電磁波に相当する実際の反射波成分C3に比較して強度の減衰は見られない。要するに、本実施形態では強度を減衰させることなく反射波成分C1を算出することが可能となる。
【0071】
本実施形態の検出手段14は、上述のように不要波除去手段13で求まった複数のアンテナ位置X1〜Xnについての反射波成分C1をステップS11において解析し、反射波成分C1の強度が所定の閾値を超えるか否かによって対象物Bの有無を検出する。ここに、反射波成分C1の強度は対象物Bでの電磁波の反射率により変化し、当該反射率は対象物Bの材質により変化するので、前記閾値を特定の材質の対象物Bにおける電磁波の反射率に合わせて設定しておくことによって、対象物Bよりも電磁波の反射率の小さい物体を無視して特定の材質の対象物Bのみを検出することができる。なお、検出手段14は、反射波成分C1に基づいて対象物Bの有無以外の状態を検出する構成であってもよく、たとえば、対象物Bまでの距離や、対象物Bの大きさや形状あるいは材質、さらにはアンテナ部1と対象物Bとの間に存在する伝播媒質(壁材等)の特性(たとえば誘電率)などを検出手段14に検出させることが考えられる。実際には、電磁波はその伝播距離によって減衰量が異なるため、電磁波がアンテナ部1より送信されてからアンテナ部1で受信されるまでに要した時間と電磁波の速度からその伝播距離を算出し、減衰効果を考慮することで、各特性をより高精度に検出することが可能となる。
【0072】
ここにおいて、本実施形態の構成によれば上述したように対象物Bで反射された電磁波に相当する実際の反射波成分C3に近い反射波成分C1を算出することができるので、検出手段14で当該反射波成分C1を解析することにより得られる各種解析結果も正確なものとなる。
【0073】
検出手段14で求められた各種解析結果はステップS12において出力部6から出力される。出力部6は、解析結果を視認可能な形で映像表示する表示用モニタ(図示せず)を備えているが、この他、音声出力するためのスピーカ等の機器や、解析結果を記憶するための記憶装置や、更なる詳細な分析を行うための演算装置などを付加し、様々な出力形態に対応させてもよい。なお、ほとんどのアプリケーションでは、各アンテナ位置X1〜Xnの位置毎データ列A1〜Anを記憶部5に取り込む処理(S2)から解析結果の出力(S12)までのプロセスを1回行うだけでなく、繰り返し行う。この場合に、再びステップS2から処理が繰り返される(S13)。
【0074】
また、本実施形態の物体探知装置では、アンテナ部1から電磁波として超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)のパルス信号を送信する。UWBの信号を送信すれば、パルス幅の非常に狭い電磁波をアンテナ部1から送信できるので、電磁波を送信してから受信するまでに要した時間の検出精度が向上し、たとえば対象物Bまでの距離等の検出精度が向上する。しかも、不要波成分Y1と反射波成分C1との波形の違いが明確となり、不要波成分Y1の抽出精度を向上させることができる。
【0075】
ところで、地表面もしくは構造物表面からなる基準面Sの奥に存在する対象物Bを探知する場合には、一般的に、上述したように複数のアンテナ位置X1〜Xnにおいて電磁波の送受信を行い受信信号を収集する。本実施形態では、複数のアンテナ位置X1〜Xnで電磁波の送受信を行うために、アンテナ部1が各アンテナ位置X1〜Xnに移動するように(図2参照)物体探知装置自体を移動させる移動手段(図示せず)を備えている。移動手段としては、基準面S上を転動する車輪を有した構成を採用するが、この構成に限るものではなく、たとえば複数のアンテナ位置X1〜Xnを通るレールに沿って物体探知装置を移動させる構成などが考えられる。ここに、アンテナ部1は、1個のアンテナから電磁波を送信するとともに当該アンテナで電磁波を受信するように構成されており、アンテナ部1の小型化を図っている。
【0076】
また、アンテナ部1は、電磁波を送信する送信アンテナと電磁波を受信する受信アンテナとを1個ずつ備える構成であってもよく、この場合にも、アンテナ部1を各アンテナ位置X1〜Xnに移動させる移動手段が設けられる。さらにまた、アンテナ部1は、電磁波の送受信を行うアンテナを複数個備えるか、あるいは送信アンテナと受信アンテナとの組を複数組備えていてもよく、この場合でも、移動手段によってアンテナ部1を各アンテナ位置X1〜Xnに移動させる移動手段が設けられる。
【0077】
ここにおいて、送信アンテナと受信アンテナとの組が各アンテナ位置X1〜Xnにそれぞれ配置されている場合、あるいはそれぞれ電磁波の送受信を行うアンテナが各アンテナ位置X1〜Xnにそれぞれ配置されている場合には、送信アンテナと受信アンテナとを1組ずつ使用し(あるいはアンテナを1個ずつ使用し)、且つ使用する送信アンテナと受信アンテナとの組(あるいは使用するアンテナ)を順に切り替えていくことにより、アンテナ部1を移動させることなくアンテナ位置X1〜Xnを切り替えることができるので、移動手段を省略することができる。
【0078】
また、データ列分類手段18の動作は上述した実施形態の動作に限るものではない。たとえば、データ列分類手段18は、基準位置および基準位置の前後の予め設定された数のアンテナ位置X1〜Xnにおける位置毎データ列A1〜Anを強データ列Aaとし、それ以外の位置毎データ列A1〜Anを弱データ列Abとするものであってもよい。この場合、1つの基準位置に対して強データ列Aaとする位置毎データ列A1〜Anの数が固定されるので、基準位置の前後のアンテナ位置X1〜Xnで物体探知装置の誤動作による測定エラー等によって前後のアンテナ位置X1〜Xnでの最大データに比べて極端に小さい異常値が検出されても、異常値が検出されたアンテナ位置X1〜Xnの位置毎データ列A1〜Anも強データ列Aaとすることにより異常値の影響を取り除くことが可能となる。この場合、算出される反射波成分C1に前記異常値の影響が現れるが、その段階で適切な処理を行えばよい。
【0079】
あるいは、データ列分類手段18は、基準位置の位置毎データ列A1〜Anを強データ列Aa、それ以外の位置毎データ列A1〜Anを弱データ列Abとしてもよく、この方法では、演算処理量を少なくすることができるので、高速処理が要求されるアプリケーションにはこの方法が有効であり、第2の信号処理部4の単純化によるコスト抑制にもつながる。
【0080】
さらにまた、データ列分類手段18は、基準位置を検出することなく位置毎データ列A1〜Anを強データ列Aaと弱データ列Abとに分類することもできる。この場合、データ列分類手段18は、全アンテナ位置X1〜Xnのうち最大データが閾値K1以上となるアンテナ位置X1〜Xnにおける位置毎データ列A1〜Anを全て強度データ列Aaとし、それ以外の位置毎データ列A1〜Anを弱データ列Abとすることにより位置毎データ列A1〜Anを分類する。この方法でも、演算処理量を少なくすることができるので、高速処理が要求されるアプリケーションに有効であり、また第2の信号処理部4の単純化によるコスト抑制にもつながる。
【0081】
なお、データ列分類手段18の動作として上述した実施形態とは異なるこれらの処理を採用する場合、図4のステップS8において、データ列分類手段18が基準位置を判定する際に用いる閾値K1は、上述した実施形態と同値の閾値に限らず適宜設定される。
【0082】
(実施形態2)
本実施形態の物体探知装置は、図4のステップS8において、データ列分類手段18が基準位置を判定する際に用いる閾値K1の設定方法が実施形態1の物体探知装置とは相違する。その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0083】
本実施形態では、初期化(S1)時に前記閾値K1を予め一定の値に設定しており、この閾値K1は最大データの伝播時間Tによって変動することはない。一般に、測定対象とする対象物Bが比較的基準面Sから近い(浅い)領域に限定されているようなアプリケーションにおいては、閾値K1を実施形態1のように細かく設定する必要はない。すなわち、本実施形態のように一定の閾値K1に設定するようにしても、測定対象に合わせて適切な閾値K1を設定しておけば、実施形態1と同等の精度で反射波成分C1を算出することができる。なお、閾値K1は、測定対象とする対象物Bの基準面Sからの深さのほか、測定対象とする対象物Bの反射率などを考慮して設定されていてもよい。
【0084】
この構成によれば、実施形態1の構成に比較すると、伝播時間Tに応じて閾値K1を決定する演算処理が不要である分だけ、演算処理速度の大幅な向上や第2の信号処理部4の単純化によるコスト抑制が可能となる場合がある。なお、物体探知装置の製造時に閾値K1を予め設定しておいてもよく、また、入力部8で設定される値を閾値K1としてもよい。
【0085】
(実施形態3)
本実施形態の物体探知装置は、図4のステップS8において、データ列分類手段18が最大データの伝播時間Tをアンテナ位置X1〜Xnと同じ順番に並べたとき(図12参照)に伝播時間Tの極小(図12に「Q」で示す)となるアンテナ位置X1〜Xnを検出し、当該アンテナ位置X1〜Xnの中で最大データの強度が閾値K1以上のものを基準位置とする点が実施形態1の物体探知装置とは相違する。その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0086】
この構成によれば、対象物Bで反射された電磁波にノイズが重畳して各最大データの強度が正確な値をとらない場合でも、伝播時間Tの極小となる最大データから基準位置を検出することができるので、ノイズの影響を低減することができる。また、実施形態1で説明した強度の極大となるアンテナ位置X1〜Xnの検出も行い、伝播時間Tの極小となるアンテナ位置X1〜Xnと合わせて総合的に判断してもよく、この場合には、さらに基準位置の検出精度が向上し、反射波成分C1の算出精度が向上する。
【0087】
なお、本実施形態でデータ列分類手段18が基準位置を判定する際に用いる閾値K1は、前記最大データの伝播時間Tが短いほど大きくなるように最大データの伝播時間Tに対応付けられているが、実施形態2と同様に、前記閾値K1を予め一定の値に設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態1を示し、(a)はブロック図、(b)は要部のブロック図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】(a)は同上の位置毎データ列を示す説明図、(b)は(a)の一部Zを拡大した説明図である。
【図4】同上の動作を示すフローチャートである。
【図5】同上の動作説明図であって、(a)は不要波成分を示す説明図、(b)は反射波成分を示す説明図、(c)は位置毎データ列を示す説明図である。
【図6】同上の動作説明図である。
【図7】同上の動作説明図である。
【図8】同上の不要波成分の一例を示す説明図である。
【図9】同上の動作説明図であって、(a)は不要波成分を示す説明図、(b)は反射波成分を示す説明図、(c)は位置毎データ列を示す説明図である。
【図10】同上の動作説明図である。
【図11】同上の動作説明図である。
【図12】同上の動作説明図である。
【図13】実際の反射波成分を示す説明図である。
【図14】(a)は従来の方法で算出された反射波成分を示す説明図、(b)は(a)の一部Zを拡大した説明図である。
【図15】(a)は本発明の実施形態1で算出された反射波成分を示す説明図、(b)は(a)の一部Zを拡大した説明図である。
【図16】同上の動作説明図である。
【符号の説明】
【0089】
1 アンテナ部
5 記憶部
10 A/D変換部(サンプリング手段)
12 不要波抽出手段
13 不要波除去手段
14 検出手段
16 仮不要波抽出手段
17 仮不要波除去手段
18 データ列分類手段
A1〜An 位置毎データ列
Aa 強データ列
Ab 弱データ列
B 対象物
C0 仮反射波成分
C1 反射波成分
K1 閾値
L1 所定値
S 基準面
X1〜Xn アンテナ位置
Y0 仮不要波成分
Y1 不要波成分
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中または構造物中に埋設された対象物や、構造物の裏側に存在する対象物を電磁波により探知する物体探知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地中または構造物中に埋設された対象物(たとえば埋設管など)を電磁波により探知する技術として、パルス状の電磁波を送受信するアンテナ部を地表面または構造物表面からなる基準面に沿う複数のアンテナ位置に移動させ、各アンテナ位置においてアンテナ部から送信され対象物で反射された電磁波をアンテナ部で受信し電気信号である受信信号に変換することにより、対象物を探知することが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、この種の物体探知においてアンテナ部で受信される受信信号には、対象物で反射された電磁波に相当する反射波成分だけでなく、基準面で反射された電磁波などの不要波成分が含まれている。不要波成分は、通常、各アンテナ位置で共通し、且つ測定環境が大きく変化しない限り定常的な値をとる。
【0004】
ここにおいて、各アンテナ位置で受信された受信信号の強度を所定間隔のサンプリングタイミングごとに強度データとし、当該強度データのアンテナ位置ごとの集合を位置毎データ列として記憶部に記憶し、複数のアンテナ位置における同一のサンプリングタイミングの強度データの平均値を算出することにより、当該平均値の複数のサンプリングタイミング分の集合を不要波成分と想定することが考えられている。この場合に、算出した不要波成分を各アンテナ位置における位置毎データ列からそれぞれ減算することにより反射波成分を算出する。
【0005】
なお、特許文献1に記載の発明では、全アンテナ位置における強度データの平均値を不要波成分とするのではなく、反射波成分の算出対象とするアンテナ位置およびその前後の複数のアンテナ位置における強度データの平均値を不要波成分としている。
【特許文献1】特開平10−132950号公報(第4−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の技術においては、位置毎データ列に不要波成分だけでなく反射波成分も含まれているので、位置毎データ列の強度データの平均値からなる不要波成分には反射波成分が含まれることになり、位置毎データ列から不要波成分を減算すると、減算後の反射波成分の強度が実際の反射波成分よりも減衰してしまう可能性がある。特に、特許文献1に記載の発明では、不要波成分を抽出する際の強度データのデータ数が少ないので、抽出された不要波成分に占める反射波成分の比率が大きくなり、位置毎データ列から不要波成分を減算すると、減算後の反射波成分の強度が大きく減衰する。
【0007】
その結果、電磁波の減衰率が大きい媒質中に存在する対象物や、基準面から遠い位置に存在する対象物や、電磁波の反射率の低い対象物などに関しては、算出される反射波成分の強度が小さくなり対象物を探知できないことがある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、算出される反射波成分の強度の減衰を従来構成よりも小さく抑えることができる物体探知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明では、探知領域内に設定された基準面に沿う複数のアンテナ位置においてアンテナ部から基準面に向けて電磁波を間欠的に送信し、基準面の奥に存在する対象物により反射された電磁波をアンテナ部で受信し電気信号である受信信号に変換することにより対象物を探知する物体探知装置であって、各アンテナ位置で受信された受信信号の強度を所定間隔のサンプリングタイミングごとに強度データとし、当該強度データのアンテナ位置ごとの集合を位置毎データ列として記憶部に記憶するサンプリング手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列に共通に含まれる不要波成分を抽出する不要波抽出手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列から不要波成分をそれぞれ減算することにより、対象物で反射された電磁波に相当する反射波成分を求める不要波除去手段と、複数のアンテナ位置の反射波成分の強度および電磁波が送信されてから反射波成分が受信されるまでの経過時間に基づいて対象物の状態を検出する検出手段とを備え、不要波抽出手段は、記憶部に記憶された位置毎データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を仮不要波成分として抽出する仮不要波抽出手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列から仮不要波成分をそれぞれ減算することにより仮反射波成分を求める仮不要波除去手段と、記憶部に記憶された位置毎データ列を、仮反射波成分において対象物で反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置を含む所定範囲内のアンテナ位置の位置毎データ列である強データ列と強データ列以外の弱データ列とに分類するデータ列分類手段とを有し、弱データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を前記不要波成分とすることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、不要波抽出手段は、記憶部に記憶された位置毎データ列のうちの弱データ列のみに関して、同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を前記不要波成分とするので、強データ列における反射波成分が不要波抽出手段で抽出される不要波成分に含まれることはない。ここにおいて、強データ列は、仮反射波成分において対象物で反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置を含む所定範囲内のアンテナ位置の位置毎データ列であるから、この強データ列における反射波成分が不要波成分に含まれることがなければ、位置毎データ列から不要波成分を減算しても、減算後の反射波成分の強度が実際の反射波成分よりも大きく減衰することはない。すなわち、請求項1の構成では、算出される反射波成分の強度の減衰を従来構成よりも小さく抑えることができるという利点がある。なお、ここでいう代表値は平均値や中央値や最頻値等を意味する。また、検出手段は、対象物の状態として、たとえば反射波成分の強度および電磁波が送信されてから反射波成分が受信されるまでの経過時間に基づいて対象物の有無や、対象物までの距離や、対象物の大きさや形状や材質や、物体探知装置と対象物との間に存在する伝播媒質(壁材等)の特性などを検出する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後複数のアンテナ位置の中で、前記最大データが基準位置における最大データに1未満の所定値を乗算した値以上となるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、各アンテナ位置における最大データの強度の大きさに基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、比較的簡単な演算処理で位置毎データ列を分類することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後の予め設定された数のアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、各アンテナ位置における最大データの強度の大きさに基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、比較的簡単な演算処理で位置毎データ列を分類することができる。しかも、1つの基準位置に対して強データ列とする位置毎データ列の数が固定されるので、基準位置の前後のアンテナ位置で物体探知装置の誤動作による測定エラー等によって前後のアンテナ位置での最大データに比べて極端に小さい異常値が検出されても、異常値が検出されたアンテナ位置の位置毎データ列も強データ列とすることにより異常値の影響を取り除くことが可能となる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、各アンテナ位置における最大データの強度の大きさに基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、比較的簡単な演算処理で位置毎データ列を分類することができる。しかも、基準位置における位置毎データ列を強データ列とするので、基準位置を求めた後で強データ列の範囲を決めるための演算処理を行う必要はなく演算処理をさらに簡略化できる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記複数のアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強度データ列とすることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、各アンテナ位置における最大データの強度の大きさに基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、比較的簡単な演算処理で位置毎データ列を分類することができる。しかも、最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置における位置毎データ列を強データ列とするので、強データ列の範囲を決めるための演算処理を行う必要はなく演算処理をさらに簡略化できる。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後複数のアンテナ位置の中で、前記最大データが基準位置における最大データに1未満の所定値を乗算した値以上となるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、各アンテナ位置における電磁波が送信されてから最大データが受信されるまでの経過時間に基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、対象物で反射された電磁波にノイズが重畳して各最大データの強度が正確な値をとらない場合でも位置毎データを分類することができる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後の予め設定された数のアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、各アンテナ位置における電磁波が送信されてから最大データが受信されるまでの経過時間に基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、対象物で反射された電磁波にノイズが重畳して各最大データの強度が正確な値をとらない場合でも位置毎データを分類することができる。しかも、1つの基準位置に対して強データ列とする位置毎データ列の数が固定されるので、基準位置の前後のアンテナ位置で物体探知装置の誤動作による測定エラー等によって前後のアンテナ位置での最大データに比べて極端に小さい異常値が検出されても、異常値が検出されたアンテナ位置の位置毎データ列も強データ列とすることにより異常値の影響を取り除くことが可能となる。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1の発明において、前記データ列分類手段が、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、各アンテナ位置における電磁波が送信されてから最大データが受信されるまでの経過時間に基づいて位置毎データ列を強データ列と弱データ列とに分類しているので、対象物で反射された電磁波にノイズが重畳して各最大データの強度が正確な値をとらない場合でも位置毎データを分類することができる。しかも、基準位置における位置毎データ列を強データ列とするので、基準位置を求めた後で強データ列の範囲を決めるための演算処理を行う必要はなく演算処理を簡略化できる。
【0025】
請求項9の発明は、請求項2ないし請求項8のいずれかの発明において、前記閾値が、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間が長いほど小さくなるように前記経過時間に対応付けられていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、閾値は電磁波が送信されてから最大データが受信されるまでの経過時間が長いほど小さくなるので、基準面から対象物までの距離が大きくなるほど閾値が小さくなる。ここで、一般に基準面から対象物までの距離が大きくなるほど位置毎データ列の最大データは減衰して低下する。すなわち、請求項9の構成では、基準面から対象物までの距離が比較的大きい場合に、位置毎データ列の最大データが低下していても、確実に強データ列と弱データ列とを分類することができる。
【0027】
請求項10の発明は、請求項2ないし請求項8のいずれかの発明において、前記閾値が、予め一定の値に設定されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、閾値を決定する演算処理が不要であるから、演算処理を簡略化できる。
【0029】
請求項11の発明は、請求項1ないし請求項10のいずれかの発明において、前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方が、同一の前記サンプリングタイミングごとに、複数の前記アンテナ位置の強度データが分布している強度範囲を一定の強度幅の強度区間に分割し、強度データのデータ数が最多となる強度区間について求めた強度データの平均値を前記代表値とすることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、仮不要波抽出手段と不要波抽出手段との少なくとも一方が、強度データのデータ数が最多となる強度区間について求めた強度データの平均値を代表値とする。一般的に強度データは仮不要波成分や不要波成分に対して強度軸方向に偏って分布しているが、請求項11の構成ではサンプリングタイミングごとの全強度データの平均値から仮不要波成分や不要波成分を求める場合に比べて、強度データの分布の偏りの影響を受けず仮不要波成分や不要波成分を正確に算出することができる。そのため、反射波成分が精度よく求まり、対象物の状態の検出精度が向上する。
【0031】
請求項12の発明は、請求項1ないし請求項10のいずれかの発明において、前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方が、同一の前記サンプリングタイミングごとに求めた複数の前記アンテナ位置の強度データの中央値を前記代表値とすることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、仮不要波抽出手段と不要波抽出手段との少なくとも一方が、同一のサンプリングタイミングごとに求めた複数のアンテナ位置の強度データの中央値を代表値とする。一般的に強度データは仮不要波成分や不要波成分に対して強度軸方向に偏って分布しているが、請求項12の構成ではサンプリングタイミングごとの全強度データの平均値から仮不要波成分や不要波成分を求める場合に比べて、強度データの分布の偏りの影響を受けず仮不要波成分や不要波成分を正確に算出することができる。そのため、反射波成分が精度よく求まり、対象物の状態の検出精度が向上する。
【0033】
請求項13の発明は、請求項1ないし請求項10のいずれかの発明において、前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方が、同一の前記サンプリングタイミングごとに求めた複数の前記アンテナ位置の強度データの平均値を前記代表値とすることを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、仮不要波抽出手段と不要波抽出手段との少なくとも一方が、同一のサンプリングタイミングごとに求めた複数のアンテナ位置の強度データの平均値を代表値とするので、比較的簡単な演算処理で仮不要波成分や不要波成分を求めることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、不要波抽出手段が、記憶部に記憶された位置毎データ列のうちの弱データ列のみに関して、同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を前記不要波成分とするので、強データ列における反射波成分が不要波抽出手段で抽出される不要波成分に含まれることはない。ここにおいて、強データ列は、仮反射波成分において対象物で反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置を含む所定範囲内のアンテナ位置の位置毎データ列であるから、この強データ列における反射波成分が不要波成分に含まれることがなければ、位置毎データ列から不要波成分を減算しても、減算後の反射波成分の強度が実際の反射波成分よりも大きく減衰することはない。すなわち、請求項1の構成では、算出される反射波成分の強度の減衰を従来構成よりも小さく抑えることができる。その結果、電磁波の減衰率が大きい媒質中に存在する対象物や、基準面から遠い位置に存在する対象物や、電磁波の反射率の低い対象物などに関しても、対象物を探知できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(実施形態1)
本実施形態の物体探知装置は、1個のアンテナで電気信号である送信信号を受けて電磁波を送信するとともに、当該アンテナで電磁波を受信し電気信号である受信信号に変換するアンテナ部を備え、図2に示すように、地表面もしくは構造物表面からなる基準面Sに沿った複数箇所(ここではn箇所)のアンテナ位置X1〜Xnにおいてアンテナ部1から基準面Sに向けて電磁波を間欠的に送信し、基準面Sよりも奥に存在する対象物Bにより反射された電磁波をアンテナ部1で受信することにより対象物Bを探知するものである。
【0037】
物体探知装置は、図1(a)に示すように、前記送信信号および電磁波の送信後の受波期間を定めるタイミング信号を生成して出力する信号生成部2と、信号生成部2から出力された送信信号を信号処理してアンテナ部1からパルス状の電磁波を送信させる第1の信号処理部3と、各アンテナ位置X1〜Xnにおいて前記受波期間にアンテナ部1からの受信信号をそれぞれ受けて各受信信号を信号処理し、対象物Bを探知する第2の信号処理部4とを備える。さらに、第2の信号処理部4での信号処理に用いる各種データを記憶する記憶部5と、第2の信号処理部4での検知結果などを出力する出力部6と、信号生成部2および各信号処理部3,4の信号処理方法(出力部6での出力内容を含む)を制御する制御部7と、制御部7に各種の指示を与えるように操作される入力部8とが設けられている。
【0038】
ここにおいて、信号生成部2は、制御部7からの制御信号に基づいて送信信号およびタイミング信号を生成し、送信信号を第1の信号処理部3に与えるとともにタイミング信号を第2の信号処理部4に与える。第1の信号処理部3は、入力された送信信号に対して増幅などの処理を行いアンテナ部1から電磁波を送信させる。
【0039】
第2の信号処理部4は、図1(b)に示すように、アンテナ部1からの受信信号を増幅する増幅部9と、増幅部9で増幅された受信信号の強度を前記受波期間のサンプリングタイミングごとにデジタルの強度データに変換して記憶部5に記憶するA/D変換部10(サンプリング手段)と、記憶部5に格納された強度データを用いて対象物Bを探知する演算部11とを備えている。記憶部5内には、各アンテナ位置X1〜Xnと各サンプリングタイミングとが対にされ各強度データにそれぞれ対応付けて格納されており、強度データは実質的にアンテナ位置X1〜Xnとサンプリングタイミングとについて2次元配置されたデータマップを形成する。ここに、記憶部5内における強度データのアンテナ位置X1〜Xnごとの集合を位置毎データ列とする。
【0040】
演算部11は、各アンテナ位置X1〜Xnで共通の不要波成分を求める不要波抽出手段12と、前記位置毎データ列から前記不要波成分を減算することにより反射波成分を求める不要波除去手段13と、複数のアンテナ位置X1〜Xnにおける前記反射波成分の強度に基づいて対象物Bの状態を検出する検出手段14とを備えている。
【0041】
本実施形態の不要波抽出手段12は、記憶部5に記憶された位置毎データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を仮不要波成分として抽出する仮不要波抽出手段16と、各アンテナ位置X1〜Xnでの位置毎データ列から仮不要波成分をそれぞれ減算することにより仮反射波成分を求める仮不要波除去手段17と、記憶部5に記憶された位置毎データ列を、仮反射波成分において対象物Bで反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置X1〜Xnを含む所定範囲内のアンテナ位置X1〜Xnの位置毎データ列である強データ列と強データ列以外の弱データ列とに分類するデータ列分類手段18とを有する。この不要波抽出手段12は、弱データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を不要波成分として出力する。
【0042】
以下に、本実施形態の物体探知装置の動作について図4のフローチャートを参照して説明する。ここでは、図2に示すように複数箇所(n箇所)のアンテナ位置X1〜Xnでそれぞれ信号を受信した場合について説明する。また、アンテナ位置X1で受信された受信信号に相当する位置毎データ列をA1、アンテナ位置X2で受信された受信信号に相当する位置毎データ列をA2とするように、各アンテナ位置X1〜Xnで受信された受信信号に相当する位置毎データ列をそれぞれ位置毎データ列A1〜Anとする。図2および図3では、アンテナ部1がアンテナ位置X3にある場合の位置毎データ列A3を表している。以下、電磁波の送波時点からの経過時間を伝播時間Tという。図3では、横軸を伝播時間Tとし、縦軸を強度としている。
【0043】
図4におけるステップS1は初期化であって、ここで設定される各種パラメータ(i=0、雑音成分算出方法の設定、位置毎データ列A1〜Anの分類基準の設定など)は、予め定められていてもよく、入力部8で取り込まれた値であってもよい。
【0044】
続いて、ステップS2,S3においては各アンテナ位置X1〜Xnの位置毎データ列A1〜Anを個別に記憶部5に取り込む。位置毎データ列A1〜Anは必要なデータ列数(つまりアンテナ位置X1〜Xnの数n)に達するまで取り込まれる(S4,S5)。ここで、新しい位置毎データ列A1〜Anを取り込む度に、既に取り込んだ位置毎データ列A1〜Anを1列ずつシフトする(S2)。これにより、位置毎データ列A1〜Anがデータ列数nだけ一旦取り込まれ後述の検出手段14により解析結果が得られた以降は、新しい位置毎データ列A1〜Anが1つ取り込まれる度に、その位置毎データ列A1〜Anのみが更新された状態で新たに検出手段14での解析が可能になる。すなわち、最も新しい位置毎データ列A1〜Anを最も古い位置毎データ列A1〜Anと入れ替えることができる。位置毎データ列A1〜Anの取り込みには、同様に新旧の位置毎データ列A1〜Anの入れ替えが可能な他の信号処理方法を用いてもよい。
【0045】
ここにおいて、各位置毎データ列A1〜Anは、A/D変換部10でサンプリングされることによりそれぞれ複数個の強度データの集合で表されることとなる。ここでは、サンプリングタイミングの時間間隔を図3(b)に示すようにΔt〔s〕とすることにより、各位置毎データ列A1〜Anはそれぞれ計m個の強度データ(要素)で表される。すなわち、位置毎データ列A1=〔強度データA1(1)、強度データA1(2)、・・・、強度データA1(m)〕、位置毎データ列A2=〔強度データA2(1)、強度データA2(2)、・・・、強度データA2(m)〕、・・・、位置毎データ列An=〔強度データAn(1)、強度データAn(2)、・・・、強度データAn(m)〕となる。
【0046】
強度データは、記憶部5内において同一のサンプリングタイミング(同一の伝播時間T)ごとにも格納され、それぞれ時間毎データ列t1〜tmを構成する。すなわち、受信された各位置毎データ列A1〜Anにおける最初のサンプリングタイミングの強度データの集合〔強度データA1(1)、強度データA2(1)、・・・、強度データAn(1)〕が時間毎データ列t1となり、以降、時間毎データ列t2=〔強度データA1(2)、強度データA2(2)、・・・、強度データAn(2)〕、・・・、時間毎データ列tm=〔強度データA1(m)、強度データA2(m)、・・・、強度データAn(m)〕となる。
【0047】
ところで、図5(c)に示す位置毎データ列A1〜Anは、図5(a)の不要波成分と図5(b)の反射波成分との2つの成分が合成されたものである。図5では、横軸を伝播時間Tとし、縦軸を強度として、複数のアンテナ位置X1〜Xnに対応する各波形を縦軸方向に並べている。ここでいう不要波成分とは、対象物Bで反射されたのではなく、基準面Sや物体探知装置の表面で反射された電磁波を意味する。電磁波を送信する送信アンテナと電磁波を受信する受信アンテナとを別に有したアンテナ部1を用いる場合には、送信アンテナから受信アンテナに直接伝播する直接波も不要波成分に含まれる。これら不要波成分は、異なるアンテナ位置X1〜Xnでも変化せず、且つ測定環境が大きく変化しない限り定常的な値をとる。反射波成分は対象物Bで反射された電磁波を意味する。なお、ランダムに発生する熱雑音等の雑音成分が不要波成分として位置毎データ列A1〜Anに含まれることもあるが、反射波成分に比べて雑音成分が無視できる大きさであれば、不要波成分に雑音成分は含まれない。
【0048】
仮不要波抽出手段16は、図4のステップS6において位置毎データ列A1〜Anから仮不要波成分Y0を抽出するために、まず記憶部5から強度データを時間毎データ列t1〜tmごとに取り出す。各時間毎データ列t1〜tmは、それぞれ図5(c)における位置毎データ列A1〜Anを同一のサンプリングタイミング(同一の伝播時間T)で切断した断面に相当する。横軸をアンテナ位置X1〜Xnとし、縦軸を強度として、複数の時間毎データ列t1、・・・、tN、tN+1、・・・、を縦軸方向に並べると図6のようになる。図6では、各時間毎データ列が相対的に比較されているので、異なるアンテナ位置X1〜Xnでも変化しない不要波成分は反映されず、雑音成分がなければ、図5(b)における反射波成分を同一のサンプリングタイミング(同一の伝播時間T)で切断した断面に相当する。
【0049】
図6に示した時間毎データ列の1つ(時間毎データ列tk)を図7に示す。図7では、横軸をアンテナ位置X1〜Xnとし、縦軸を強度としている。ここにおいて、仮不要波抽出手段16は、時間毎データ列tkを構成する複数の強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)が分布している強度範囲(ここでは図7の上下両端間)を一定の強度幅ΔVで分割した強度区間に、これらの強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)をグループ分けする。つまり、強度範囲を強度幅ΔV刻みで複数の強度区間に分け、各強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)をいずれかの強度区間にそれぞれ当てはめる。そして、強度区間ごとに強度データのデータ数(個数)を比較し、このデータ数が最多となる強度区間(図7に「P」で示す)について、当該強度区間に含まれる全ての強度データの平均値Y0(k)を代表値とする。同様の処理を全ての時間毎データ列t1〜tmについて繰り返す。仮不要波抽出手段16は、このように算出された平均値Y0(k)の全サンプリングタイミング分の集合〔Y0(1)、Y0(2)、・・・、Y0(m)〕を仮不要波成分Y0として出力する。図8には、横軸を伝播時間T、縦軸を強度として、仮不要波抽出手段16で抽出された仮不要波成分Y0の一例を示す。
【0050】
一方、仮不要波除去手段17は、ステップS7において、記憶部5内の位置毎データ列A1〜Anから仮不要波抽出手段16の出力(仮不要波成分Y0)を減算することにより、仮反射波成分C0を求める。ただし、位置毎データ列A1〜Anには、仮不要波成分Y0以外に、アンテナ位置X1〜Xnごとに異なる雑音成分(ランダムに発生する熱雑音等)が含まれる場合があり、この場合には仮不要波除去手段17で求まる仮反射波成分C0に雑音成分(高周波成分)が重畳されることがある。
【0051】
そこで、本実施形態の物体探知装置では、受信信号に含まれる雑音成分を取り除くフィルタ手段15(図1(b)参照)を演算部11に備えることによって、仮不要波成分Y0の抽出精度を向上させている。フィルタ手段15としては、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタやFIR(Finite Impulse Response)フィルタ、または、これらにハミング窓(Hamming Window)などの窓関数やチェビシェフ(Chebyshev)近似などを適用したものなど多くの選択肢があり、これらを適宜採用すればよい。
【0052】
ここに、フィルタ手段15は、以下の2つのいずれかを雑音成分を取り除く対象とする。1つ目は、アンテナ位置X1〜Xnごとの強度データの集合、つまり各位置毎データ列A1〜Anであって、たとえば図3の位置毎データ列A3については、複数のサンプリングタイミングの強度データ(A3(1)、A3(2)、・・・、A3(m))から雑音成分を取り除く。2つ目は、サンプリングタイミングごとの強度データの集合、つまり各時間毎データ列t1〜tmであって、たとえば図7の時間毎データ列tkについては、複数のアンテナ位置X1〜Xnの強度データ(A1(k)、A2(k)、・・・、An(k))から雑音成分を取り除く。各位置毎データ列A1〜Anについて雑音成分を取り除き、その後さらに各時間毎データ列t1〜tmについて雑音成分を取り除く処理を行う等、両フィルタ処理を組み合わせてもよい。
【0053】
一方、位置毎データ列A1〜Anを得る前に熱雑音等の雑音成分を予め測定する雑音測定手段(図示せず)を設け、仮不要波抽出手段16で用いる強度区間の強度幅ΔVの値を、雑音測定手段で測定された雑音成分の最大振幅よりも大きく設定するようにしてもよい。これにより、仮不要波抽出手段16で求まる仮不要波成分Y0が雑音成分の影響で変化することはなくなるので、上記フィルタ手段15を用いない場合、あるいは、上記フィルタ手段15で雑音成分が完全には取り除くことができなかった場合でも、雑音成分の影響を無視することができる。
【0054】
ただし、強度幅ΔVが大きくなると、仮不要波抽出手段16での仮不要波成分Y0の抽出に要する信号処理時間は短縮されるものの、仮不要波成分Y0の抽出精度は低下する。そのため、たとえば雑音成分の最大振幅の2倍の値を強度幅ΔVとするなど、測定環境等の状況に応じて適切な強度幅ΔVに設定する必要がある。なお、雑音測定手段で測定された雑音成分の情報は、対象物Bの探知を行う前に記憶部5または第2の信号処理部4内のメモリ(図示せず)に格納するか、あるいは、対象物Bの探知を行うときに記憶部5または信号処理部4内のメモリに書き込みをすることにより、仮不要波抽出手段16で使用可能となる。
【0055】
また、上述のように強度区間の強度幅ΔVを予め設定するのではなく、サンプリングタイミングごとに、複数のアンテナ位置X1〜Xnについての強度データの最大値と最小値との間の範囲を強度範囲とし、この強度範囲を予め定められた定数で分割することにより強度幅ΔVの強度区間を設定してもよい。ここで、たとえば8bit演算を利用するのであれば強度範囲を256分割すればよい。この場合には、256個の強度区間の全てについて強度データの個数を比較すると処理時間が比較的長くなる。そこで、各位置毎データ列A1〜Anの強度範囲を2分割して可変区間とし、分割後の可変区間のうちで強度データのデータ数が最多となる可変区間を再度2分割することにより、強度範囲の2分の1、4分の1、8分の1、・・・というように可変区間を徐々に狭めていく処理を、可変区間が強度幅ΔVの強度区間に相当するまで繰り返すことが望ましい。これにより、処理時間の短縮を図ることができる。ただし、可変区間を徐々に狭めて仮不要波成分Y0を抽出する方法は、強度データの分布状況によっては使用できない場合もある。なお、可変区間を徐々に狭める際の分割は2分割に限らず、たとえば3分割であってもよい。
【0056】
一般的に強度データは仮不要波成分Y0に対して強度軸方向に偏って分布しているが、本実施形態では仮不要波成分Y0を抽出する際に、サンプリングタイミングごとの全強度データの平均値から仮不要波成分Y0を算出するのではなく、強度データのデータ数が最大となる強度区間について強度データの平均値から仮不要波成分Y0を算出するので、強度データの分布の偏りの影響を受けずに仮不要波成分Y0を正確に算出することができる。そのため、仮反射波成分C0が精度よく求まる。
【0057】
ところで、本実施形態では以下に説明するように、不要波抽出手段12が上述の仮反射波成分C0を用いて不要波成分Y1を抽出することにより、算出される反射波成分C1の強度の減衰を従来構成よりも小さく抑えている。以下の説明では、図9(a)の不要波成分と図9(b)の反射波成分との2つの成分が合成された図9(c)の位置毎データ列A1〜Anが得られた場合を例として、反射波成分C1を算出する動作を説明する。図9では、横軸を伝播時間Tとし、縦軸を強度として、複数のアンテナ位置X1〜Xnに対応する各波形を縦軸方向に並べている。ここに、図5(b)の反射波成分は1個の対象物Bで反射された電磁波に相当するのに対し、図9(b)の反射波成分は基準面Sから略同じ深さに位置する2個の対象物Bで反射された電磁波に相当する。
【0058】
ステップS8においては、データ列分類手段18が、仮反射波成分C0を解析することにより、改めて不要波成分Y1を抽出するために位置毎データ列A1〜Anを分類する。ここではまず、データ列分類手段18は、各アンテナ位置X1〜Xnに関して仮反射波成分C0の最大値となる強度データ(以下、「最大データ」という)と、各最大データの伝播時間Tとを検出する。ここでいう最大データは、各仮反射波成分C0の中で強度データを比較した場合にそれぞれ最大となる強度データであってもよいが、本実施形態では、基準の波形に対して各仮反射波成分C0の相関をとり、このとき相関値が最大となる強度データを最大データとして用いている。対象物Bで反射される電磁波の波形は対象物Bの属性(形状や大きさ、材質等)などにより異なる場合があり、したがって、各仮反射波成分C0の中で単純に強度データを比較した場合にそれぞれ最大となる強度データを検出することは困難であるが、相関をとる方法であれば確実に最大データを検出することができる。
【0059】
ここに、データ列分類手段18は、図10に示すように最大データをアンテナ位置X1〜Xnと同じ順番に並べたときに強度の極大(図10に「P」で示す)となるアンテナ位置X1〜Xnを検出し、当該アンテナ位置X1〜Xnの中で最大データの強度が所定の閾値K1以上のものを基準位置とする。なお、図10および以下の説明で用いる図11、図16では横軸をアンテナ位置X1〜Xnとし、縦軸を強度としている。ここで閾値K1は、対象物Bで反射された電磁波に相当する仮反射波成分C0の強度データよりも小さく設定されている。その結果、基準位置となるのは、対象物Bで反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置X1〜Xnであって、一般的には対象物Bとの距離が最小のアンテナ位置X1〜Xnである。
【0060】
そして、データ列分類手段18は、図11に示すように、基準位置および基準位置の前後数箇所のアンテナ位置X1〜Xnの中で、最大データが基準位置の最大データCM1に所定値L1(ただしL1<1とする)を乗算した値以上となるアンテナ位置X1〜Xn(図11では基準位置を含む所定範囲d内のアンテナ位置X1〜Xn)における位置毎データ列A1〜Anを強データ列Aaとし、それ以外の位置毎データ列A1〜Anを弱データ列Abとする。これにより、位置毎データ列A1〜Anは強データ列Aaと強データ列Aaよりも対象物Bで反射された電磁波の影響の小さい弱データ列Abとに分類されることになる。
【0061】
上述の閾値K1は、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間である伝播時間Tが長いほど小さくなるように、最大データの伝播時間Tに対応付けられている。電磁波は伝播距離に伴って減衰するので、基準面Sからの深さのみが異なる対象物Bをそれぞれ探知する場合には、基準面Sからの対象物Bまでの深さが深いほど、アンテナ位置X1〜Xnと対象物Bとの距離は大きくなり、アンテナ位置X1〜Xnで受信される受信信号の強度は小さくなる。したがって、本実施形態のように最大データの伝播時間Tが長いほど(つまりアンテナ位置X1〜Xnと対象物Bとの距離が大きいほど)閾値K1を小さく設定することにより、比較的深い位置に存在する対象物Bで反射された電磁波を受信したアンテナ位置X1〜Xnも基準位置として抽出し易いという利点がある。
【0062】
閾値K1の決定方法の一例として、図12に示すように最大データの伝播時間Tをアンテナ位置X1〜Xnと同じ順番に並べたときに、ある伝播時間T0を境に、伝播時間T0よりも最大データの伝播時間Tが早い場合の閾値をK1(1)、遅い場合の閾値を閾値K1(1)よりも小さいK1(2)とすることが考えられる。なお、図12では横軸をアンテナ位置X1〜Xnとし、縦軸を伝播時間Tとしている。ただし、閾値K1の決定方法は図12の例に限るものではなく、たとえば伝播時間Tを変数とする数式で閾値K1を表したり、伝播時間Tと閾値K1との対応関係を示す対応表を用いたりすることにより、閾値K1と伝播時間Tとの対応関係をより細かく設定してもよい。
【0063】
また、上述の所定値L1や基準位置の前後のアンテナ位置X1〜Xnの数についても、必ずしも全ての場合に共通な一定値である必要はなく、たとえば閾値K1と同様に伝播時間Tの関数としてもよい。ここで、基準面Sからの深さのみが異なる2つの対象物Bを、隣り合った2点のアンテナ位置X1〜Xnで探知する場合には、基準面Sからの深さが深い対象物Bほど、各アンテナ位置X1〜Xnとの距離の差および比は小さくなる。電磁波は伝播距離に伴って減衰するので、各アンテナ位置X1〜Xnと対象物Bとの間の距離の差および比が小さいほど、各アンテナ位置X1〜Xnで受信される受信信号の強度の差も小さくなる。要するに、基準面Sから遠い対象物Bでの反射波の方が、基準面に近い位置の対象物Bでの反射波よりも、アンテナ位置X1〜Xnによる受信信号の強度変化が緩やかになるから、対象物Bが基準面Sから遠いほど、所定値L1を大きく設定することが望ましい。言い換えると、伝播時間Tが短いほど所定値L1を小さくすることが望ましい。
【0064】
上述のように分類された強データ列Aaと弱データ列Abとは、ステップS9において不要波抽出手段12が不要波成分Y1を抽出する処理に使用される。本実施形態では、仮不要波成分Y0を抽出するステップS6の処理と同様の処理により不要波成分Y1を抽出する。ただし、仮不要波成分Y0を抽出する際には、全てのアンテナ位置X1〜Xnの位置毎データ列A1〜Anを用いて仮不要波成分Y0を抽出したのに対して、不要波成分Y1を抽出する際には、位置毎データ列A1〜Anのうちの弱データ列Abのみを用いて不要波成分Y1を抽出する。
【0065】
要するに、不要波抽出手段12は、弱データ列Abに関して、同一のサンプリングタイミングごとに、複数の強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)が分布している強度範囲を一定の強度幅ΔVで分割した強度区間に、これらの強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)をグループ分けする。つまり、強度範囲を強度幅ΔV刻みで複数の強度区間に分け、各強度データA1(k)、A2(k)、・・・、An(k)をいずれかの強度区間にそれぞれ当てはめる。そして、強度区間ごとに強度データのデータ数(個数)を比較し、このデータ数が最多となる強度区間について、当該強度区間に含まれる全ての強度データの平均値Y1(k)を代表値とする。同様の処理を全サンプリングタイミングについて繰り返す。不要波抽出手段12は、このように算出された平均値Y1(k)の全サンプリングタイミング分の集合〔Y1(1)、Y1(2)、・・・、Y1(m)〕を不要波成分Y1として出力する。ステップS6で説明した上記方法の利点は、不要波成分Y1を精度よく抽出できる点にある。
【0066】
ここに、不要波成分Y1を抽出する処理は仮不要波成分Y0を抽出するステップS6の処理と同じである必要はなく、たとえば、弱データ列Abを同一サンプリングタイミングで比較し、強度データの平均値や中央値を代表値として不要波成分Y1を抽出してもよい。強度データの平均値をとる場合には、同一サンプリングタイミングにおける弱データ列Abの強度データの合計を弱データ列Abの個数で除算した値を平均値Y1(k)とする。不要波抽出手段12は、同様の処理を全サンプリングタイミングについて繰り返し、このように算出された平均値Y1(k)の全サンプリングタイミング分の集合〔Y1(1)、Y1(2)、・・・、Y1(m)〕を不要波成分Y1として出力する。一方、強度データの中央値をとる場合には、同一サンプリングタイミングにおける弱データ列Abの強度データを大小順に並べ替え、このとき中央に位置する強度データを中央値Y1(k)とする。不要波抽出手段12は、同様の処理を全サンプリングタイミングについて繰り返し、このように算出された中央値Y1(k)の全サンプリングタイミング分の集合〔Y1(1)、Y1(2)、・・・、Y1(m)〕を不要波成分Y1として出力する。
【0067】
強度データの平均値を代表値として用いる方法は最も単純であるため、信号処理速度が速く部品コストを抑えられるという利点がある。アプリケーションによっては、信号処理速度の制限上、この方法でなければ実用化できないことも考えられる。中央値を代表値として用いる方法は、平均値を用いる方法に比べると信号処理時間は長くなるものの一般的に精度は良くなる。そのため、物体探知装置に求められる仕様に応じて最適な方法を選択すればよい。また、仮不要波成分Y0を抽出するステップS6の処理において、強度データの平均値や中央値を代表値として用いるようにしてもよい。なお、いずれの方法を用いるにしても、全ての強度データを用いる必要はなく、物体探知装置の誤動作による測定エラー等によって前後のアンテナ位置X1〜Xnでの強度データに比べて極端に小さい(あるいは大きい)異常値が検出されている場合の対策として、異常値に相当する最小値あるいは最大値から数個分の強度データを無視してもよい。
【0068】
不要波除去手段13は、上述のように抽出された不要波成分Y1をステップS10において各位置毎データ列A1〜Anからそれぞれ減算することにより反射波成分C1を算出する。
【0069】
ここで、図13に対象物Bで反射された電磁波に相当する実際の反射波成分C3、図14に従来の方法で算出された反射波成分C2、図15に本実施形態で算出された反射波成分C1をそれぞれ示す。図13〜15では、横軸を伝播時間Tとし、縦軸を強度として、複数のアンテナ位置X1〜Xnに対応する各波形を縦軸方向に並べている。図14の従来方法で算出された反射波成分C2は、実際の反射波成分C3を含んだ不要波成分を位置毎データ列A1〜Anから減算して算出されるので、実際の反射波成分C3には存在しない余計な強度の極大値が現れて波形が歪んでいる。これに対して、本実施形態の反射波成分C1は、このような余計な強度の極大値が現れることはなく、反射波成分C2に比べると波形の歪みが少ないという利点がある。
【0070】
また、図16は、実際の反射波成分C3、従来の方法で算出された反射波成分C2、本実施形態で算出された反射波成分C1のそれぞれについて、各アンテナ位置X1〜Xnに関して強度の最大値となる強度データ(図13〜15に黒点で示す)をアンテナ位置X1〜Xnと同じ順番に並べたものである。ここにおいて、従来方法で算出された反射波成分C2は、実際の反射波成分C3を含んだ不要波成分を位置毎データ列A1〜Anから減算して算出されるので、実際の反射波成分C3に比較して強度が大きく減衰している。一方、本実施形態で算出される反射波成分C1は、対象物Bで反射された電磁波に相当する実際の反射波成分C3に比較して強度の減衰は見られない。要するに、本実施形態では強度を減衰させることなく反射波成分C1を算出することが可能となる。
【0071】
本実施形態の検出手段14は、上述のように不要波除去手段13で求まった複数のアンテナ位置X1〜Xnについての反射波成分C1をステップS11において解析し、反射波成分C1の強度が所定の閾値を超えるか否かによって対象物Bの有無を検出する。ここに、反射波成分C1の強度は対象物Bでの電磁波の反射率により変化し、当該反射率は対象物Bの材質により変化するので、前記閾値を特定の材質の対象物Bにおける電磁波の反射率に合わせて設定しておくことによって、対象物Bよりも電磁波の反射率の小さい物体を無視して特定の材質の対象物Bのみを検出することができる。なお、検出手段14は、反射波成分C1に基づいて対象物Bの有無以外の状態を検出する構成であってもよく、たとえば、対象物Bまでの距離や、対象物Bの大きさや形状あるいは材質、さらにはアンテナ部1と対象物Bとの間に存在する伝播媒質(壁材等)の特性(たとえば誘電率)などを検出手段14に検出させることが考えられる。実際には、電磁波はその伝播距離によって減衰量が異なるため、電磁波がアンテナ部1より送信されてからアンテナ部1で受信されるまでに要した時間と電磁波の速度からその伝播距離を算出し、減衰効果を考慮することで、各特性をより高精度に検出することが可能となる。
【0072】
ここにおいて、本実施形態の構成によれば上述したように対象物Bで反射された電磁波に相当する実際の反射波成分C3に近い反射波成分C1を算出することができるので、検出手段14で当該反射波成分C1を解析することにより得られる各種解析結果も正確なものとなる。
【0073】
検出手段14で求められた各種解析結果はステップS12において出力部6から出力される。出力部6は、解析結果を視認可能な形で映像表示する表示用モニタ(図示せず)を備えているが、この他、音声出力するためのスピーカ等の機器や、解析結果を記憶するための記憶装置や、更なる詳細な分析を行うための演算装置などを付加し、様々な出力形態に対応させてもよい。なお、ほとんどのアプリケーションでは、各アンテナ位置X1〜Xnの位置毎データ列A1〜Anを記憶部5に取り込む処理(S2)から解析結果の出力(S12)までのプロセスを1回行うだけでなく、繰り返し行う。この場合に、再びステップS2から処理が繰り返される(S13)。
【0074】
また、本実施形態の物体探知装置では、アンテナ部1から電磁波として超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)のパルス信号を送信する。UWBの信号を送信すれば、パルス幅の非常に狭い電磁波をアンテナ部1から送信できるので、電磁波を送信してから受信するまでに要した時間の検出精度が向上し、たとえば対象物Bまでの距離等の検出精度が向上する。しかも、不要波成分Y1と反射波成分C1との波形の違いが明確となり、不要波成分Y1の抽出精度を向上させることができる。
【0075】
ところで、地表面もしくは構造物表面からなる基準面Sの奥に存在する対象物Bを探知する場合には、一般的に、上述したように複数のアンテナ位置X1〜Xnにおいて電磁波の送受信を行い受信信号を収集する。本実施形態では、複数のアンテナ位置X1〜Xnで電磁波の送受信を行うために、アンテナ部1が各アンテナ位置X1〜Xnに移動するように(図2参照)物体探知装置自体を移動させる移動手段(図示せず)を備えている。移動手段としては、基準面S上を転動する車輪を有した構成を採用するが、この構成に限るものではなく、たとえば複数のアンテナ位置X1〜Xnを通るレールに沿って物体探知装置を移動させる構成などが考えられる。ここに、アンテナ部1は、1個のアンテナから電磁波を送信するとともに当該アンテナで電磁波を受信するように構成されており、アンテナ部1の小型化を図っている。
【0076】
また、アンテナ部1は、電磁波を送信する送信アンテナと電磁波を受信する受信アンテナとを1個ずつ備える構成であってもよく、この場合にも、アンテナ部1を各アンテナ位置X1〜Xnに移動させる移動手段が設けられる。さらにまた、アンテナ部1は、電磁波の送受信を行うアンテナを複数個備えるか、あるいは送信アンテナと受信アンテナとの組を複数組備えていてもよく、この場合でも、移動手段によってアンテナ部1を各アンテナ位置X1〜Xnに移動させる移動手段が設けられる。
【0077】
ここにおいて、送信アンテナと受信アンテナとの組が各アンテナ位置X1〜Xnにそれぞれ配置されている場合、あるいはそれぞれ電磁波の送受信を行うアンテナが各アンテナ位置X1〜Xnにそれぞれ配置されている場合には、送信アンテナと受信アンテナとを1組ずつ使用し(あるいはアンテナを1個ずつ使用し)、且つ使用する送信アンテナと受信アンテナとの組(あるいは使用するアンテナ)を順に切り替えていくことにより、アンテナ部1を移動させることなくアンテナ位置X1〜Xnを切り替えることができるので、移動手段を省略することができる。
【0078】
また、データ列分類手段18の動作は上述した実施形態の動作に限るものではない。たとえば、データ列分類手段18は、基準位置および基準位置の前後の予め設定された数のアンテナ位置X1〜Xnにおける位置毎データ列A1〜Anを強データ列Aaとし、それ以外の位置毎データ列A1〜Anを弱データ列Abとするものであってもよい。この場合、1つの基準位置に対して強データ列Aaとする位置毎データ列A1〜Anの数が固定されるので、基準位置の前後のアンテナ位置X1〜Xnで物体探知装置の誤動作による測定エラー等によって前後のアンテナ位置X1〜Xnでの最大データに比べて極端に小さい異常値が検出されても、異常値が検出されたアンテナ位置X1〜Xnの位置毎データ列A1〜Anも強データ列Aaとすることにより異常値の影響を取り除くことが可能となる。この場合、算出される反射波成分C1に前記異常値の影響が現れるが、その段階で適切な処理を行えばよい。
【0079】
あるいは、データ列分類手段18は、基準位置の位置毎データ列A1〜Anを強データ列Aa、それ以外の位置毎データ列A1〜Anを弱データ列Abとしてもよく、この方法では、演算処理量を少なくすることができるので、高速処理が要求されるアプリケーションにはこの方法が有効であり、第2の信号処理部4の単純化によるコスト抑制にもつながる。
【0080】
さらにまた、データ列分類手段18は、基準位置を検出することなく位置毎データ列A1〜Anを強データ列Aaと弱データ列Abとに分類することもできる。この場合、データ列分類手段18は、全アンテナ位置X1〜Xnのうち最大データが閾値K1以上となるアンテナ位置X1〜Xnにおける位置毎データ列A1〜Anを全て強度データ列Aaとし、それ以外の位置毎データ列A1〜Anを弱データ列Abとすることにより位置毎データ列A1〜Anを分類する。この方法でも、演算処理量を少なくすることができるので、高速処理が要求されるアプリケーションに有効であり、また第2の信号処理部4の単純化によるコスト抑制にもつながる。
【0081】
なお、データ列分類手段18の動作として上述した実施形態とは異なるこれらの処理を採用する場合、図4のステップS8において、データ列分類手段18が基準位置を判定する際に用いる閾値K1は、上述した実施形態と同値の閾値に限らず適宜設定される。
【0082】
(実施形態2)
本実施形態の物体探知装置は、図4のステップS8において、データ列分類手段18が基準位置を判定する際に用いる閾値K1の設定方法が実施形態1の物体探知装置とは相違する。その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0083】
本実施形態では、初期化(S1)時に前記閾値K1を予め一定の値に設定しており、この閾値K1は最大データの伝播時間Tによって変動することはない。一般に、測定対象とする対象物Bが比較的基準面Sから近い(浅い)領域に限定されているようなアプリケーションにおいては、閾値K1を実施形態1のように細かく設定する必要はない。すなわち、本実施形態のように一定の閾値K1に設定するようにしても、測定対象に合わせて適切な閾値K1を設定しておけば、実施形態1と同等の精度で反射波成分C1を算出することができる。なお、閾値K1は、測定対象とする対象物Bの基準面Sからの深さのほか、測定対象とする対象物Bの反射率などを考慮して設定されていてもよい。
【0084】
この構成によれば、実施形態1の構成に比較すると、伝播時間Tに応じて閾値K1を決定する演算処理が不要である分だけ、演算処理速度の大幅な向上や第2の信号処理部4の単純化によるコスト抑制が可能となる場合がある。なお、物体探知装置の製造時に閾値K1を予め設定しておいてもよく、また、入力部8で設定される値を閾値K1としてもよい。
【0085】
(実施形態3)
本実施形態の物体探知装置は、図4のステップS8において、データ列分類手段18が最大データの伝播時間Tをアンテナ位置X1〜Xnと同じ順番に並べたとき(図12参照)に伝播時間Tの極小(図12に「Q」で示す)となるアンテナ位置X1〜Xnを検出し、当該アンテナ位置X1〜Xnの中で最大データの強度が閾値K1以上のものを基準位置とする点が実施形態1の物体探知装置とは相違する。その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0086】
この構成によれば、対象物Bで反射された電磁波にノイズが重畳して各最大データの強度が正確な値をとらない場合でも、伝播時間Tの極小となる最大データから基準位置を検出することができるので、ノイズの影響を低減することができる。また、実施形態1で説明した強度の極大となるアンテナ位置X1〜Xnの検出も行い、伝播時間Tの極小となるアンテナ位置X1〜Xnと合わせて総合的に判断してもよく、この場合には、さらに基準位置の検出精度が向上し、反射波成分C1の算出精度が向上する。
【0087】
なお、本実施形態でデータ列分類手段18が基準位置を判定する際に用いる閾値K1は、前記最大データの伝播時間Tが短いほど大きくなるように最大データの伝播時間Tに対応付けられているが、実施形態2と同様に、前記閾値K1を予め一定の値に設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態1を示し、(a)はブロック図、(b)は要部のブロック図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】(a)は同上の位置毎データ列を示す説明図、(b)は(a)の一部Zを拡大した説明図である。
【図4】同上の動作を示すフローチャートである。
【図5】同上の動作説明図であって、(a)は不要波成分を示す説明図、(b)は反射波成分を示す説明図、(c)は位置毎データ列を示す説明図である。
【図6】同上の動作説明図である。
【図7】同上の動作説明図である。
【図8】同上の不要波成分の一例を示す説明図である。
【図9】同上の動作説明図であって、(a)は不要波成分を示す説明図、(b)は反射波成分を示す説明図、(c)は位置毎データ列を示す説明図である。
【図10】同上の動作説明図である。
【図11】同上の動作説明図である。
【図12】同上の動作説明図である。
【図13】実際の反射波成分を示す説明図である。
【図14】(a)は従来の方法で算出された反射波成分を示す説明図、(b)は(a)の一部Zを拡大した説明図である。
【図15】(a)は本発明の実施形態1で算出された反射波成分を示す説明図、(b)は(a)の一部Zを拡大した説明図である。
【図16】同上の動作説明図である。
【符号の説明】
【0089】
1 アンテナ部
5 記憶部
10 A/D変換部(サンプリング手段)
12 不要波抽出手段
13 不要波除去手段
14 検出手段
16 仮不要波抽出手段
17 仮不要波除去手段
18 データ列分類手段
A1〜An 位置毎データ列
Aa 強データ列
Ab 弱データ列
B 対象物
C0 仮反射波成分
C1 反射波成分
K1 閾値
L1 所定値
S 基準面
X1〜Xn アンテナ位置
Y0 仮不要波成分
Y1 不要波成分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
探知領域内に設定された基準面に沿う複数のアンテナ位置においてアンテナ部から基準面に向けて電磁波を間欠的に送信し、基準面の奥に存在する対象物により反射された電磁波をアンテナ部で受信し電気信号である受信信号に変換することにより対象物を探知する物体探知装置であって、各アンテナ位置で受信された受信信号の強度を所定間隔のサンプリングタイミングごとに強度データとし、当該強度データのアンテナ位置ごとの集合を位置毎データ列として記憶部に記憶するサンプリング手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列に共通に含まれる不要波成分を抽出する不要波抽出手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列から不要波成分をそれぞれ減算することにより、対象物で反射された電磁波に相当する反射波成分を求める不要波除去手段と、複数のアンテナ位置の反射波成分の強度および電磁波が送信されてから反射波成分が受信されるまでの経過時間に基づいて対象物の状態を検出する検出手段とを備え、不要波抽出手段は、記憶部に記憶された位置毎データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を仮不要波成分として抽出する仮不要波抽出手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列から仮不要波成分をそれぞれ減算することにより仮反射波成分を求める仮不要波除去手段と、記憶部に記憶された位置毎データ列を、仮反射波成分において対象物で反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置を含む所定範囲内のアンテナ位置の位置毎データ列である強データ列と強データ列以外の弱データ列とに分類するデータ列分類手段とを有し、弱データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を前記不要波成分とすることを特徴とする物体探知装置。
【請求項2】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後複数のアンテナ位置の中で、前記最大データが基準位置における最大データに1未満の所定値を乗算した値以上となるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項3】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後の予め設定された数のアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項4】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項5】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記複数のアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強度データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項6】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後複数のアンテナ位置の中で、前記最大データが基準位置における最大データに1未満の所定値を乗算した値以上となるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項7】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後の予め設定された数のアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項8】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項9】
前記閾値は、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間が長いほど小さくなるように前記経過時間に対応付けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項8のいずれか1項に記載の物体探知装置。
【請求項10】
前記閾値は、予め一定の値に設定されていることを特徴とする請求項2ないし請求項8のいずれか1項に記載の物体探知装置。
【請求項11】
前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方は、同一の前記サンプリングタイミングごとに、複数の前記アンテナ位置の強度データが分布している強度範囲を一定の強度幅の強度区間に分割し、強度データのデータ数が最多となる強度区間について求めた強度データの平均値を前記代表値とすることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の物体探知装置。
【請求項12】
前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方は、同一の前記サンプリングタイミングごとに求めた複数の前記アンテナ位置の強度データの中央値を前記代表値とすることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の物体探知装置。
【請求項13】
前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方は、同一の前記サンプリングタイミングごとに求めた複数の前記アンテナ位置の強度データの平均値を前記代表値とすることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の物体探知装置。
【請求項1】
探知領域内に設定された基準面に沿う複数のアンテナ位置においてアンテナ部から基準面に向けて電磁波を間欠的に送信し、基準面の奥に存在する対象物により反射された電磁波をアンテナ部で受信し電気信号である受信信号に変換することにより対象物を探知する物体探知装置であって、各アンテナ位置で受信された受信信号の強度を所定間隔のサンプリングタイミングごとに強度データとし、当該強度データのアンテナ位置ごとの集合を位置毎データ列として記憶部に記憶するサンプリング手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列に共通に含まれる不要波成分を抽出する不要波抽出手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列から不要波成分をそれぞれ減算することにより、対象物で反射された電磁波に相当する反射波成分を求める不要波除去手段と、複数のアンテナ位置の反射波成分の強度および電磁波が送信されてから反射波成分が受信されるまでの経過時間に基づいて対象物の状態を検出する検出手段とを備え、不要波抽出手段は、記憶部に記憶された位置毎データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を仮不要波成分として抽出する仮不要波抽出手段と、各アンテナ位置での位置毎データ列から仮不要波成分をそれぞれ減算することにより仮反射波成分を求める仮不要波除去手段と、記憶部に記憶された位置毎データ列を、仮反射波成分において対象物で反射された電磁波の強度の極大となるアンテナ位置を含む所定範囲内のアンテナ位置の位置毎データ列である強データ列と強データ列以外の弱データ列とに分類するデータ列分類手段とを有し、弱データ列に関して同一のサンプリングタイミングごとに強度データの代表値を求め、当該代表値の複数のサンプリングタイミング分の集合を前記不要波成分とすることを特徴とする物体探知装置。
【請求項2】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後複数のアンテナ位置の中で、前記最大データが基準位置における最大データに1未満の所定値を乗算した値以上となるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項3】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後の予め設定された数のアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項4】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記最大データをアンテナ位置と同じ順番に並べたときに強度の極大となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項5】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、前記複数のアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強度データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項6】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後複数のアンテナ位置の中で、前記最大データが基準位置における最大データに1未満の所定値を乗算した値以上となるアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項7】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置および基準位置の前後の予め設定された数のアンテナ位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項8】
前記データ列分類手段は、前記各アンテナ位置における前記仮反射波成分の最大値となる強度データを最大データとしてそれぞれ検出し、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間をアンテナ位置と同じ順番に並べたときに前記経過時間の極小となるアンテナ位置のうちで前記最大データが所定の閾値以上であるアンテナ位置を基準位置とし、基準位置における前記位置毎データ列を前記強データ列とすることを特徴とする請求項1記載の物体探知装置。
【請求項9】
前記閾値は、電磁波が送信されてから前記最大データが受信されるまでの経過時間が長いほど小さくなるように前記経過時間に対応付けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項8のいずれか1項に記載の物体探知装置。
【請求項10】
前記閾値は、予め一定の値に設定されていることを特徴とする請求項2ないし請求項8のいずれか1項に記載の物体探知装置。
【請求項11】
前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方は、同一の前記サンプリングタイミングごとに、複数の前記アンテナ位置の強度データが分布している強度範囲を一定の強度幅の強度区間に分割し、強度データのデータ数が最多となる強度区間について求めた強度データの平均値を前記代表値とすることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の物体探知装置。
【請求項12】
前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方は、同一の前記サンプリングタイミングごとに求めた複数の前記アンテナ位置の強度データの中央値を前記代表値とすることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の物体探知装置。
【請求項13】
前記仮不要波抽出手段と前記不要波抽出手段との少なくとも一方は、同一の前記サンプリングタイミングごとに求めた複数の前記アンテナ位置の強度データの平均値を前記代表値とすることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の物体探知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−134099(P2008−134099A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319055(P2006−319055)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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