説明

物体移動検出方法、物体移動検出システム、輸送物移動検出システム、開閉検出システム、コネクタ接続検出システム

【課題】ICタグを利用して、精度のよい移動検出をできる物体移動検出方法、物体移動検出システム、輸送物移動検出システム、開閉検出システム、コネクタ接続検出システム提供する。
【解決手段】物体移動検出方法は、ICタグ20を、物体2に設けるICタグ設置工程と、ICタグ20に対する位置に応じて読み取り装置40及びICタグ20間の通信距離を変化させるブースタ部30を、物体3に設けるブースタ部設置工程と、通信距離の変化を検出する検出工程と、検出工程の検出結果に基づいて、物体2及び物体3が相対移動した否かを判定する判定工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを利用して物体の移動を検出する物体移動検出方法、物体移動検出システム、輸送物移動検出システム、開閉検出システム、コネクタ接続検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相対移動する一方の物体にRFIDタグを設け、物体の移動を検出するシステムがあった(例えば特許文献1)。
しかし、従来のシステムは、物体にRFIDタグの情報を読み取り可能範囲内に、RFIDタグが存在するか否かを判定するものであり、精度のよい検出ができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−273541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ICタグを利用して、精度のよい移動検出をできる物体移動検出方法、物体移動検出システム、輸送物移動検出システム、開閉検出システム、コネクタ接続検出システム提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0006】
第1の発明は、ICタグ(20,220,320,520,620,720A,720B,820A,820B,820C)を、一方の物体(2,202,302,502,602,702A,702C,802A,802B,802C)に設けるICタグ設置工程と、前記ICタグに対する位置に応じて読み取り装置(40,540,640,740,840)及び前記ICタグ間の通信距離を変化させるブースタ部(30,230,330,430,530,630,730A,730B,830A,830B,830C)を、他方の物体(3,203,303,503,603,703A,703C,803A,803B,803C)に設けるブースタ部設置工程と、前記通信距離の変化を検出する検出工程と、検出工程の検出結果に基づいて、前記一方の物体及び前記他方の物体が相対移動した否かを判定する判定工程と、を備える物体移動検出方法である。
第2の発明は、第1の発明の移動検出方法において、前記検出工程は、読み取り装置(40,540,640,740,840)が前記ICタグ(20,220,320,520,620,720A,720B,820A,820B,820C)の情報を読み取れるか否かを検出すること、を特徴とする物体移動検出方法である。
【0007】
第3の発明は、一方の物体(2,202,302,502,602,702A,702C,802A,802B,802C)に設けられるICタグ(20,220,320,520,620,720A,720B,820A,820B,820C)と、他方の物体(3,203,303,503,603,703A,703C,803A,803B,803C)に設けられ、前記ICタグに対する位置に応じて読み取り装置(40,540,640,740,840)及び前記ICタグ間の通信距離を変化させるブースタ部(30,230,330,430,530,630,730A,730B,830A,830B,830C)と、前記通信距離の変化を検出する検出装置(40,540,640,740,840)と、を備える物体移動検出システムである。
第4の発明は、第3の発明の物体移動検出システムにおいて、前記検出装置(40,540,640,740,840)は、前記ICタグ(20,220,320,520,620,720A,720B,820A,820B,820C)の情報を読み取れるか否かを検出すること、を特徴とする物体移動検出システムである。
第5の発明は、第3又は第4の発明の物体移動検出システムにおいて、前記ブースタ部(30,230,330,430,830A,830B,830C)は、コイル状の導体からなるブースタアンテナ(32,232,332,832A,832B,832C)を備えること、を特徴とする物体移動検出システムである。
第6の発明は、第5の発明の物体移動検出システムにおいて、前記ブースタアンテナ(232,832A,832B,832C)は、前記ブースタアンテナの一部を外側に張り出すように設けたタグ検出領域(234,834A,834B,834C)を有すること、を特徴とする物体移動検出システムである。
第7の発明は、第3又は第4の発明の物体移動検出システムにおいて、前記ブースタ部(330)は、導体をベタ状に形成したベタ部(332a)と、ベタ部の内側に設けたベタ抜き部(332b)とを設けたブースタアンテナ(332)を備えること、を特徴とする物体移動検出システムである。
第8の発明は、第7の発明の物体移動検出システムにおいて、前記ブースタ部(330)は、前記ベタ抜き部(332b)をタグ検出領域(332b)とすること、を特徴とする物体移動検出システムである。
第9の発明は、第3又は第4の発明の物体移動検出システムにおいて、前記ブースタ部(530,930)は、ダイポール型の延伸した導体からなるブースタアンテナ(532A,532B,932)又はメアンダ型に屈曲した導体からなるブースタアンテナを備えること、を特徴とする物体移動検出システムである。
第10の発明は、第9の発明の物体移動検出システムにおいて、前記ブースタ部(530)は、前記延伸した導体のスリット部(532c)をタグ検出領域(532c)とすること、を特徴とする物体移動検出システムである。
第11の発明は、第3又は第4の発明の物体移動検出システムにおいて、前記ブースタ部(430)は、ブースタアンテナ(332)を形成するブースタアンテナ層と、前記ブースタアンテナ層の前記ICタグ(320)とは反対側に配置した軟磁性体層(433)とを備えること、を特徴とする物体移動検出システムである。
第12の発明は、第11の発明の物体移動検出システムにおいて、前記ブースタ部(330,430)は、前記軟磁性体層(433)の前記ICタグ(320)とは反対側に配置した導体層(304)を備えること、を特徴とする物体移動検出システムである。
【0008】
第13の発明は、第3から第12までのいずれかの発明の物体移動検出システムを備え、前記一方の物体及び前記他方の物体のいずれかの物体は、輸送物(603)であり、前記いずれかの物体とは異なる方の物体(602,602A)は、前記輸送物を輸送する装置の物体(602,602A)であり、前記輸送物を前記装置の定められた位置に配置した状態では、前記通信距離が長くなり、前記輸送物を前記装置の前記定められた位置から移動した状態では、前記定められた位置に配置された状態よりも前記通信距離が短くなる位置に設けられていること、を特徴とする輸送物移動検出システムである。
第14の発明は、第3から第12までのいずれかの発明の物体移動検出システムを備え、前記一方の物体及び前記他方の物体のいずれかの物体は、枠(703A,703C)に対して開閉する開閉部(702A,702C)に設けられ、前記いずれかの物体とは異なる方の物体(703A,703C)は、前記枠側(703A,703C)に設けられ、前記開閉部が閉じた状態では、前記通信距離が長くなり、前記開閉部が開いた状態では、前記閉じた状態よりも前記通信距離が短くなる位置に設けられていること、を特徴とする開閉検出システムである。
第15の発明は、第3から第12までのいずれかの発明の物体移動検出システムを備え、前記ブースタ部(830A,830B,830C)及び前記ICタグ(820A,820B,820C)は、それぞれ検出位置が異なる複数の組み合わせを有し、前記各組み合わせがそれぞれ対応し、少なくとも2つの部材(802A,802B,802C、及び803A,803B,803C)を接続する複数のコネクタ(801A,801B,801C)を備えること、を特徴とするコネクタ接続検出システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明は、ICタグを一方の物体に設け、ブースタ部を他方の物体に設け、通信距離の変化に基づいて、各物体間の相対移動を検出するので、容易な構成で物体の移動を検出できる。また、ICタグ及び読み取り装置間をブースタ部を介して通信する構成であるので、ICタグ及び読み取り装置間を直接通信する構成に比べて、通信距離の差を大きくできるため、検出誤差を低減し精度のよい検出をできる。さらに、本発明は、ICタグ読み取り装置にのみ電源が必要で、ICタグおよびブースタ部は電源の配線もしくは電池の組み込みは不要であるため、移動体に対する設置に際し電源の配線が不要で、電池の交換といったメンテナンスも不要であり、移動体に対する設置が容易で、メンテナンスも軽減される。
(2)本発明は、ICタグの情報を読み取り装置が読み取れるか否かに基づいて、相対移動を検出するので、読み取り装置を利用して、確実に物体の移動を検出できる。
【0010】
(3)本発明は、通信距離の変化に基づいて、一方の物体及び他方の物体間の相対移動を検出する検出装置を備えるので、上記(1)と同様な効果を奏することができる。
(4)本発明は、検出装置がICタグの情報を読み取り装置が読み取れるか否かに基づいて、相対移動を検出するので、上記(2)と同様な効果を奏することができる。
【0011】
(5)本発明は、ブースタ部がコイル状の導体からなるブースタアンテナであるので、ブースタアンテナのICタグに対する位置に応じて、通信距離を変化させることができる。
(6)本発明は、ブースタアンテナの一部を外側に張り出すように設けられたタグ検出部を有するので、タグ検出部上にICタグを配置することにより、ICタグ及びブースタ部間の通信距離を局部的に向上できる。これにより、物体間のより微細な相対移動を検出できる。
【0012】
(7)本発明は、導体をベタ状に設けたブースタアンテナのICタグに対する位置に応じて、通信距離を変化させることができる。
(8)本発明は、タグ検出部上にICタグを配置することにより、ICタグ及びブースタ部間の通信距離を局部的に向上できる。これにより、物体間のより微細な相対移動を検出できる。
【0013】
(9)本発明は、ブースタ部は、ダイポール型やメアンダ型等のブースタアンテナを備えるので、UHF帯などの電波方式のICタグが利用でき、ブースタアンテナとICタグ読み取り装置との距離を、HF帯を用いる場合と比較し長くすることができる。
(10)本発明は、ダイポール型のブースタアンテナのタグ検出領域にICタグを配置することにより、ICタグ及びブースタ部間の通信距離を局部的に向上できる。これにより、物体間のより微細な相対移動を検出できる。
【0014】
(11)本発明は、ブースタアンテナ層のICタグとは反対側に配置された軟磁性体層を備えるので、例えば、HF帯のICタグを利用する場合に、一方の物体の材質や外乱等が、ブースタアンテナ層のアンテナの性能に与える影響(特に金属等の導体である場合に通信距離が著しく短くなること)を低減できる。これにより、ICタグ及びブースタ部間の通信を安定させることができる。
(12)本発明は、軟磁性体層のICタグとは反対側に配置された導体層とを備えるので、ブースタアンテナ層の設置領域からICタグが外れた場合には、通信距離が著しく低下し、ブースタ部がICタグ間の通信できなくなる。これにより、相対移動したことを精度よく検出できる。
【0015】
(13)本発明は、輸送物が定められた位置に配置された状態では、通信距離が長くなり、輸送物が定められた位置から移動した状態では、通信距離が短くなる位置に設けられているので、輸送物の移動を検出できる。
(14)本発明は、開閉部が閉じた状態では、通信距離が長くなり、開閉部が開いた状態では、通信距離が短くなる位置に設けられているので、開閉部の開閉を検出できる。
(15)本発明は、ブースタ部及びICタグが、それぞれ検出位置が異なる複数の組み合わせを有し、各組み合わせがそれぞれ対応し、少なくとも2つの部材を接続する複数のコネクタを備えるので、コネクタの接続が正常であるかを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の物体移動検出システム1を説明する図である。
【図2】第2実施形態の物体移動検出システム201を説明する図である。
【図3】第3実施形態の物体移動検出システム301を説明する図である。
【図4】第4実施形態の物体移動検出システム401を説明する図である。
【図5】第5実施形態の物体移動検出システム501を説明する図である。
【図6】第6実施形態の輸送物移動検出システム601の構成を説明する図である。
【図7】第7実施形態の開閉検出システム701の構成を説明する図である。
【図8】第8実施形態のコネクタ接続検出システム801の構成を説明する図である。
【図9】第9実施形態の物体移動検出システム901を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態では、HF帯(13.56MHz)のICタグ20を利用した物体移動検出システム1を説明する。
図1は、第1実施形態の物体移動検出システム1を説明する図である。
以下の説明において、ブースタ部30の基材31の表面を法線方向から見たときの状態を平面図とし、そのときの形状を平面形状という。
図1(a)は、ICタグ20及びブースタ部30の平面図における配置を、模式的に示す図である。
図1(b)は、物体2及び物体3を正面から見た断面図(図1(a)のB−B部矢視断面図)である。
図1(c)は、ICタグ20及び読み取り装置40間の通信結果を示す表である。
【0018】
図1(a)、図1(b)に示すように、物体移動検出システム1は、物体2(一方の物体)に取り付けたICタグ20と、物体3(他方の物体)に取り付けたブースタ部30と、読み取り装置40とを備えている。
【0019】
物体2は、物体3に取り付けたブースタ部30のブースタアンテナ32(後述する)の面(XY平面)方向(XY平面)を方向Xに移動する物体である。
なお、本実施形態では、物体2が、物体3に対して方向Xに移動する形態を説明するが、両者が相対移動できる態様であれば、その形態は限定されない。例えば、物体2側を固定し、物体3側を移動してもよい。
【0020】
ICタグ20は、RFIDタグである。ICタグ20は、ICチップ(図示せず)と、アンテナコイル(図示せず)とを備えている。
ICチップは、識別情報等を記憶し、外部接触端子を有さない半導体集積回路素子である。ICチップは、情報を書き換えできないタイプ、情報を書き換えできるタイプのいずれを用いてもよい。情報を書き換えできるタイプを利用する場合には、ICチップは、識別情報の書き換えをしたり、読み取り履歴の情報等を記憶できる。
アンテナコイルは、ICチップがブースタ部30との間で、電磁誘導方式により通信するためのアンテナである。アンテナコイルは、ICチップに電気的に接続されている。
【0021】
ブースタ部30は、基材31と、ブースタアンテナ32とを備えている。
基材31は、例えば絶縁性の樹脂等により形成したシート状の部材である。
ブースタアンテナ32は、基材31の表面側、つまりICタグ20側の面に設けられたアンテナコイルである。ブースタアンテナ32は、エッチング等の方法により形成された導体や、銅線等の金属線材をコイル状に巻いたものである。ブースタアンテナ32は、読み取り装置40との間で電磁誘導方式により通信を行ない、またICタグ20との間で電磁誘導方式により通信を行う。ブースタアンテナ32は、長辺×短辺の大きさが、外側76mm×45mm、内側65mm×34mmである。
【0022】
ブースタアンテナ32は、ICタグ20(ICタグ20のアンテナコイル)が内側の角部の位置P1に配置された状態において、共振周波数が13.56MHz(HF帯という)になるように調整されている。このため、ブースタアンテナ32は、読み取り装置40から例えば数十mm程度離れた場所に配置されても、読み取り装置40が発生した13.56MHzで振動する磁界を誘導し、共振して磁界を受ける効率を向上して、ICタグ20を起電できる。これにより、ブースタアンテナ32は、ICタグ20及び読み取り装置40間の通信を可能にする。
【0023】
読み取り装置40は、13.56MHzで振動する磁界を発し、この磁界に情報をのせて、ICタグ20との間で通信をする装置である。読み取り装置40は、ユーザが所持して読み取り時にICタグ20にかざしてもよいし、物体3に対して固定して配置しておいてもよい。
【0024】
(通信距離試験)
次に、物体移動検出システム1の通信距離(通信感度)について説明する。
ICタグ20及び読み取り装置40間の通信距離試験を以下の手順で行った。
(1)物体2の移動方向がブースタアンテナ32の長辺に平行になるように、つまり方向Xに平行になるように物体2を設置した。また、ICタグ20(ICタグ20のアンテナコイル)が内側長辺上を移動するように配置した。
(2)内側長辺の角部の位置P1を基準(X=0mm、Y=0mm)として、ICタグ20の移動範囲がX=−15〜80mmになるように、物体2を方向Xに移動をした。
(3)上記移動をする過程で、読み取り装置40がICタグ20の情報を読み取れる通信距離を求めた。
【0025】
図1(c)に示すように、通信距離は、ICタグ20の配置に応じて、以下の特徴を有することがわかった。
(a)位置P1,P2(X=0,60mm)
通信距離は、最大通信距離(110〜120mm程度)になる。
(b)範囲A2(0mm<X<60mm)
通信距離は、最大通信距離の85%以上(105mm程度以上)を維持できる。
(c)範囲A1,A3(X<0mm,60mm<X)
通信距離は、急激に減少する。X=−15mm,80mmでは、40%以下(40mm程度以下)に減少した。
【0026】
このように、物体移動検出システム1は、ブースタアンテナ32のICタグ20に対する位置に応じて、ICタグ20及び読み取り装置40間の通信距離を変化させることができる。また、ICタグ20とブースタ部30とを、互いに異なる物体に設けることにより、物体2及び物体3の相対移動に応じて、ICタグ20の通信距離の長短の差を大きくできる。
【0027】
(比較試験)
次に、前述したY=0mmの場合に検出精度がよいことを確認するために、ICタグ20を位置P1よりも内側の位置(Y=20mm)に配置し、Y=0mmの場合と同様に通信距離の変化を確認した。
図1(c)から以下の特徴を有することがわかった。
(a)位置P1,P2(X=0mm,65mm)
通信距離は、X=0mmのときに、最大通信距離(100〜105mm程度)になる。
なお、アンテナの通信特性から、X=65mmの場合も、同様に最大通信距離になる。
(b)範囲A2(0mm<X<65mm)
通信距離は、最大通信距離の85%以上(85mm程度以上)を維持する。
(c)範囲A1,A3(X<0mm,65mm<X)
通信距離は、急激に減少し、X=−15mm,80mmでは、Y=0mmの場合と同様に、40mm程度以下となる。またこのときの通信距離は、Y=0の場合とほぼ同等である。
【0028】
これら2つの結果を比較すると、範囲A1,A3(X<0mm,65mm<X)では、ICタグ20の方向Yの位置は、通信距離にあまり関係しない(上記(c)参照)。これに対して、位置P1、範囲A2、位置P2では、Y=0のときに通信距離が延びることがわかる(上記(a)、(b)参照)。
つまり、ICタグ20が内側長辺32aに沿って移動する場合は(Y=0mm)、X<0mm,65mm<Xの通信距離と、0mm≦X≦65mmの通信距離との差が、その他の場合(Y=0mm以外の場合)よりも大きくなるため、読み取り装置40を用いてICタグ20の情報を読み取れるか否かを判定するときには、判定誤差を小さくできる。
【0029】
これにより、ICタグ20が内側長辺上(Y=0mm)を移動するように、ICタグ20及びブースタ部30を配置することにより、移動検出の精度を向上できることが確認できた。
【0030】
次に、物体移動検出システム1の検出方法を説明する。
ユーザは、以下の手順に従って、物体2及び物体3の相対移動を検出できる。
(ICタグ設置工程)
ICタグ20を、一方の物体2に固定する。
(ブースタ部設置工程)
ブースタ部30を、物体3に固定する。このとき、平面図(図1(a))において、ブースタアンテナ32の長辺が、物体2の移動方向(方向X)に平行になるように設置する。また、ICタグ20の中心が、内側長辺32a上になるように配置する。
【0031】
なお、ICタグ設置工程及びブースタ部設置工程は、順番を入れ替えてもよい。
この場合には、ICタグの移動方向がブースタアンテナ32の長辺に平行になるように、ブースタ部30を物体3に設け、次に、ICタグ20の中心が内側長辺上になるように、ICタグ20を物体2に設置すればよい。また、検出範囲の必要に応じて、ICタグ20に対しブースタアンテナ32の短辺側を使用するよう設置しても同様の効果が得られる。
【0032】
(読み取り確認工程)
これまでの工程によって、ICタグ20及びブースタ部30が通信距離内に配置されたことを確認するために、読み取り装置40をブースタアンテナ32からの80mm程度離して配置して、読み取り装置40でICタグ20の情報を読み取れることを確認する。
【0033】
(逐次検出工程)
読み取り装置40をブースタ部30からの80mm程度離して配置して、読み取り装置40がICタグ20の情報を読み取れるか否かを逐次確認する。
なお、逐次検出工程は、ユーザが読み取り装置40をかざす場合には、ユーザが必要に応じて(例えば、所定時間経過時、物体2及び物体3を一体で搬送した場合等)、適宜検出すればよい。また、読み取り装置40を固定している場合には、継続的に検出し、検出結果を、警告音、警告ランプ等によりユーザに報知してもよい。
【0034】
(判定工程)
ユーザは、逐次検出工程の検出結果に基づいて、以下のように、物体2及び物体3が相対移動したか否かを判定する。
読み取り装置40がICタグ20の情報を読み取れた場合には、物体2及び物体3が規定の相対距離内に配置されている状態を維持していると判定する。この規定の範囲は、図1(c)に示すように、読み取り装置40をブースタアンテナ32からの80mm程度離して配置しても読み取り装置40がICタグ20の情報を読み取れる範囲であり、ICタグ20が0mm≦X≦70mm程度に位置する範囲である。
一方、読み取り装置40がICタグ20の情報を読み取れない場合には、物体2及び物体3が上記規定の相対距離外に配置された状態と判定する。
【0035】
以上説明したように、物体移動検出システム1は、検出誤差を低減し精度のよい移動検出を行うことができる。また、ICタグ20の通信距離の変化に基づいて、物体2及び物体3の相対移動を検出するので、物体2及び物体3の相対移動を容易な構成で検出できる。
【0036】
なお、ブースタ部30は、ICタグ20とは異なるICタグ25を備えていてもよい。このICタグ25を、ブースタアンテナ32に配置しておけば、物体2及び物体3の位置に関わらず、読み取り装置でICタグ25の情報を読み取ることができる。これにより、物体移動検出システム1は、ICタグ20との通信履歴をICタグ25に記録できる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明を適用した第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、HF帯(13.56MHz)のICタグ220を利用した物体移動検出システム201を説明する。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図2は、第2実施形態の物体移動検出システム201を説明する図である。
図2(a)は、ICタグ220及びブースタ部230の平面における配置を、模式的に示す図である。
図2(a)は、物体202及び物体203を正面から見た断面図(図2(a)のB−B部矢視断面図)である。
図2(c)は、ICタグ220及び読み取り装置40間の通信距離の特性を示す表である。
【0038】
図2(a)、図2(b)に示すように、ブースタアンテナ232は、タグ検出領域234を有している。
タグ検出領域234は、ブースタアンテナ232の角部を、短辺に平行な方向(方向Y)に、外側に張り出すように設けた領域である。
ICタグ220は、タグ検出領域234の内側角部の位置P21を通るように配置されている。
【0039】
図2(c)に示すように、図1(c)の通信距離試験を基づいて、ICタグ220及び読み取り装置40間の通信距離の特性を作成した。
(a)位置P21,P22
通信距離は、最大通信距離になる。位置P21,P22は、第1実施形態の位置P1,P2に対応する部分だからである。
(b)範囲A22(P21<X<P22)
通信距離は、最大通信距離の85%以上を維持できる。範囲A22は、第1実施形態の範囲A2に対応する部分だからである。
(c)範囲A21,A23(X<P21,P22<X)
通信距離は、急激に減少する。範囲A21,A23は、第1実施形態の範囲A1,A3に対応する部分だからである。
【0040】
このように、本実施形態の物体移動検出システム201は、通信距離が長くなる範囲を、タグ検出領域234(P21≦X≦P22)程度に小さくし、ICタグ220及びブースタ部230の通信距離を局部的に向上できる。これにより、物体202及び物体203のより微細な相対移動を検出できる。具体的には、ICタグ220がブースタアンテナ230のタグ検出部234の範囲内(約10mmの範囲)に位置する場合は、ICタグ読み取り装置40は、ブースタアンテナ230から40〜80mmの通信距離であれば、常にICタグ220を読み取り可能である。一方、ICタグ220が前記タグ検出部234の範囲外に位置する場合は、ICタグ読み取り装置40は、ブースタアンテナ230から40〜80mmの全ての通信距離で、常にICタグ220を読み取ることができない。つまり、ICタグ220が付設された一方の物体202と、ブースタアンテナ230が付設された他方の物体203との相対的な移動を、これらから離れた位置に配置されたICタグ読み取り装置40で読み取ることができる。
【0041】
(第3実施形態)
次に、本発明を適用した第3実施形態について説明する。
第3実施形態では、HF帯(13.56MHz)のICタグ320を利用した物体移動検出システム301を説明する。
図3は、第3実施形態の物体移動検出システム301を説明する図である。
図3(a)は、ICタグ320及びブースタ部330の平面図における配置を、模式的に示す図である。
図3(b)は、物体302及び物体303を正面から見た断面図(図3(a)のB−B部矢視断面図)である。
図3(c)は、ICタグ320及び読み取り装置40間の通信結果を示す表である。
【0042】
図3(a)、図3(b)に示すように、ブースタ部330のブースタアンテナ332は、ベタ部332aと、ベタ抜き部332b(タグ検出領域)と、切り欠き部332cとを有している。
ベタ部332aは、導体を基材331上にベタ状の形成した部分である。ベタ部332aの平面形状は、正方形であり、各辺の長さは、30mmである。
ベタ抜き部332bは、ベタ部332aの内側の導体が設けられていない部分である。ベタ抜き部332bの平面形状は、長方形であり、長辺が方向Xに平行になるように、配置されている。ベタ抜き部332bの長辺は、その長さが20mmである。また、短辺は、平面図において、ICタグ320(ICタグ320のアンテナコイル)が内側に収容できる程度である。
切り欠き部332cは、導体が設けられていない部分を、ベタ部332aの辺からベタ抜き部332bに向けて、切り欠き状に設けた部分である。
なお、ブースタアンテナ332は、基材331上に積層するものではなく、例えば、銅箔のように、導体単体によって構成してもよい。
【0043】
物体303は絶縁体であり、その下側つまり、物体303のICタグ320とは反対側の領域には、金属板304が設けられている。
金属板304は、物体303に一体に設けたものでもよく、物体303を載置するためのものでもよい。つまり、金属板304は、物体303の一部でもよく、金属板304上に物体303を載置する形態でもよい。金属板304及びブースタアンテナ332間は、4mm程度離した。これは、読み取り装置40が発した磁界を、ブースタアンテナ332が誘導できるようにするためである。つまり、金属板304は、磁界を遮るシールド効果を有するので、物体移動検出システム301は、金属板304及びブースタアンテナ332間を4mm程度離して配置し、このシールド効果を低減している。
【0044】
(通信距離試験)
次に、物体移動検出システム301の通信距離について説明する。
図3(c)に示すように、第1実施形態と同様に、ICタグ320及び読み取り装置40間の通信距離試験を行った。
通信距離試験は、図3(a)に示す状態、つまり方向Yにおいて、ICタグ320(IC320のアンテナコイル)をベタ抜き部332bの中心に配置し、方向Xにおいて、ICタグ320が切り欠き部332c側の端部に配置されている状態をX=0とした。
【0045】
図3(c)に示すように、通信距離は、ICタグ320の配置に応じて、以下の特徴を有することがわかった。
(a)位置P31,P32(X=0mm,15mm)
通信距離は、20mm程度になる。
(b)範囲A32(0mm<X<15mm)
通信距離は、20mm程度を維持する。
(c)範囲A31,A33(X<0mm,15mm<X)
通信距離は、急激に減少する。X=−5mm,20mmでは、0%(0mm)に減少した。
【0046】
このように、物体移動検出システム301は、ICタグ320のブースタアンテナ332に対する位置に応じて、ICタグ320の通信距離を変化させることができる。
また、物体移動検出システム301は、金属板304を配置することにより、ICタグ320がベタ抜き部332bから外れた範囲では(範囲A31,A33)、上記(c)の通り、読み取り装置40は、ICタグ320の情報を読み取ることができず、通信距離が0mmになる。このため、物体移動検出システム301は、ICタグ320の情報を読み取ることができるか否か判定することにより、精度のよい移動検出ができる。
【0047】
(比較試験)
次に、金属板304のシールド効果を確認するために、金属板304を取り除いて、通信距離の変化を確認した。
図3(c)に示すように、以下の特徴を有することがわかった。
(a)位置P31,P32(X=0,15mm)
通信距離は、35mm程度であり、金属板304がある場合よりも、通信距離が長くなる。
(b)範囲A32(0mm<X<15mm)
通信距離は、35mm程度を維持する。
(c)範囲A31,A33(X<0mm,15mm<X)
通信距離は、X=−5mm,20mmでは、0%(0mm)に減少するものの、X<−5mm,20mm<Xの領域では、再び増加する。
【0048】
これら2つの結果から、金属板304がある場合には、金属板304のシールド効果により、金属板304がない場合よりも、範囲A32の領域での通信距離が低下するが、範囲A31,A33の領域での通信を完全に遮断できることを確認できた。これにより、金属板304がある場合には、ICタグ320がブースタアンテナ332以外の領域に移動したときに、読み取り装置40がICタグ320の情報を全く読み取りできないので、精度のよい移動検出をできる。
【0049】
以上説明したように、物体移動検出システム301は、ブースタアンテナ332を利用して、物体302及び物体303間の相対移動を検出できる。また、物体移動検出システム301は、金属板304を配置することにより、精度のよい移動検出をできる。
【0050】
なお、ブースタ部330は、ICタグ320とは異なるICタグ325を備えていてもよい。このICタグ25を、ブースタ部330をベタ抜きにした領域に配置すれば、物体2及び物体3の位置に関わらず、読み取り装置でICタグ325の情報を読み取ることができる。これにより、物体移動検出システム301は、ICタグ320との通信履歴をICタグ325に記録できる。
【0051】
(第4実施形態)
次に、本発明を適用した第4実施形態について説明する。
第4実施形態では、HF帯(13.56MHz)のICタグを利用した物体移動検出システムを説明する。
図4は、第4実施形態の物体移動検出システム401を説明する図である。
図4(a)は、ICタグ320及びブースタ部430の平面図における配置を、模式的に示す図である。
図4(b)は、物体402及び物体403を正面から見た断面図(図4(a)のB−B部矢視断面図)である。
本実施形態のブースタ部430は、第3実施形態のブースタアンテナ332(ブースタアンテナ層)の下側(ICタグ側とは反対側)に、軟磁性体層433を設けたものである。
【0052】
これにより、物体移動検出システム401は、金属板304や外乱等が、ブースタアンテナ332のアンテナの性能に与える影響を低減できる。このため、物体移動検出システム401は、ICタグ320及びブースタ部430間の通信を安定させ、またブースタ部430及び読み取り装置40間の通信を安定させることができる。
つまり、第3実施形態において、ICタグ320及び読み取り装置40間の通信が、できない場合であっても、第4実施形態では、軟磁性体層433を設けることにより、この通信を可能にする。
【0053】
なお、本実施形態では、ブースタ部430は、基材(図3に示す基材331参照)を設けない例を示したが、これに限定されない。例えば、ブースタ部430は、基材の上層又は下層に、軟磁性体層433を積層する構成であってもよい。
【0054】
また、図4(c)に示すように、物体移動検出システム401は、ブースタ部430を、方向Xに長い長方形に形成し、ブースタアンテナ432に切り欠き状に設けたベタ抜き部432aを設けてもよい。この場合、ICタグ320は、ベタ抜き部432a内に配置されたときには、読み取り装置40との間で通信可能であるが、更に右側のブースタアンテナ432の部分432bに配置されたときには(位置P43参照)、ブースタアンテナ332のシールド効果により、読み取り装置40との間で全く通信できない。これにより、物体移動検出システム401は、通信距離を段階的に変化させられるので、通信距離を測定しどの段階の通信距離であるかを確認すれば、物体402及び物体403がどの程度相対移動したかを検出できる。
【0055】
(第5実施形態)
次に、本発明を適用した第5実施形態について説明する。
第5実施形態では、UHF帯(例えば、日本国内では952〜954MHz)のICタグ520を利用した物体移動検出システムを説明する。
図5は、第5実施形態の物体移動検出システム501を説明する図である。
図5(a)は、ICタグ520及びブースタ部530の平面図における配置を、模式的に示す図である。
図5(b)は、物体502及び物体503を正面から見た断面図(図5(a)のB−B部矢視断面図)である。
図5(c)は、ICタグ520及び読み取り装置540の通信結果を示す表である。
【0056】
図5(a)、図5(b)に示すように、ICタグ520は、基材に実装されたICチップ521と、基材に実装されICチップ521に電気的に接続されたアンテナ522とを備えている。
アンテナ522は、ICチップ521がブースタ部530との間で、電波方式で通信するためのアンテナである。アンテナ522は、平面形状の外形がほぼ正方形であり、各辺が10mmである。
【0057】
ブースタ部530は、延伸した2つの導体からなるダイポール型のブースタアンテナ532A,532Bを備える。
ブースタアンテナ532A,532Bは、基部532aの方向Xの長さが50mm程度である。
ブースタアンテナ532A,532Bは、その中心532bと、ICタグ520のアンテナ522の中心とが一致するように配置された状態において、共振周波数が通信周波数に一致するように調整されている。このため、ブースタアンテナ532A,532Bが、読み取り装置540から例えば数m程度離れた場所に配置されても、ブースタアンテナ532A,532Bと、ICチップ521アンテナ522との一体のアンテナ利得を向上できるので、読み取り装置540が発した電波を受信し、ICタグ520を起動できる。これにより、ブースタアンテナ532A,532Bは、ICタグ520及び読み取り装置540間の通信を可能にする。
【0058】
読み取り装置540は、UHF帯の電波を送受信して、この電波に情報をのせて、ICタグ520のとの間で通信をする装置である。読み取り装置540は、ユーザが所持して読み取り時にICタグ520にかざしてもよいし、物体503に対して固定して配置しておいてもよい。
【0059】
(通信距離試験)
次に、物体移動検出システム501の通信距離について説明する。
ICタグ520及び読み取り装置540間の通信距離試験を以下の手順で行った。
(1)平面図(図5(a))において、物体502の移動方向が、ブースタアンテナ532A,532Bの間隙532c(スリット部)の長手方向(方向X)に平行になるように設置した。また、ICタグ520(アンテナ522)が間隙532c上を移動するように配置した。
(2)ブースタアンテナ532A,532Bの中心532bと、ICタグ520のアンテナ522の中心とが一致するように配置し、その中心532bを基準(X=0mm,Y=0mm)とした。そして、物体502をICタグ520の移動範囲がX=−30〜33mmになるように、方向Xに移動をした。
(3)上記移動をする過程で、読み取り装置540がICタグ520の情報を読み取れる通信距離を求めた。
【0060】
図5(c)に示すように、通信距離は、ICタグ520の配置に応じて、以下の特徴を有することがわかった。
(a)位置P51,P52(X=−20mm,20mm)
通信距離は、最大通信距離の70%以上(2500mm程度以上)になる。
(b)範囲A52(−20mm<X<20mm)
位置P51,P52よりも通信距離が長くなり、X=−10mmで最大通信距離(3500mm程度)になる。
(c)範囲A51,A53(X<−20mm、20mm<X)
この範囲では、−20mm<X<−30mm,20mm<X<30mmにおいて、ICタグ520が位置P51,P52から外側に移動するに従ってアンテナ522とブースタアンテナ532A,532Bとの重複領域が徐々に減少し、そして、X=−30mm,30mmにおいて、この重複領域がなくなる。
このため、通信距離は、急激に減少し、X=−30mm,33mmでは、通信距離比が5%程度に低下した。
【0061】
このように、物体移動検出システム501は、ブースタアンテナ532A,532BのICタグ520に対する位置に応じて、通信距離を変化させることができる。
また、物体移動検出システム501は、間隙532cをタグ検出領域とし、この間隙532c上にICタグ520を配置することにより、ICタグ520及びブースタ部530間の通信距離を局部的に向上できる。これにより、物体502及び物体503の相対移動を検出できる。
【0062】
(第6実施形態)
次に、本発明を適用した第6実施形態について説明する。
第6実施形態は、第1から第5実施形態のいずれかの物体移動検出システムを利用した輸送物移動検出システムである。
図6は、第6実施形態の輸送物移動検出システム601の構成を説明する図である。
図6(a)に示すように、輸送物移動検出システムは、トラック650(搬送する装置)の荷台602(輸送物を搬送する装置側の物体)に、2つのICタグ620が固定され、荷物603(輸送物)に2つのブースタ部630が固定されている。
ICタグ620及びブースタ部630は、荷物603が荷台602の規定の搬送位置(装置の定められた位置)に配置された状態では、通信距離が長くなり、一方、荷物603が規定の搬送位置から移動した状態では、規定の搬送位置に配置された状態よりも通信距離が短くなる位置に固定されている。
また、読み取り装置640は、荷物603が荷台602の規定の搬送位置に配置された状態で、ICタグ620との間で通信可能な範囲に配置されている。
【0063】
このため、ユーザは、読み取り装置640がICタグ620の情報を読み取れているか否かを逐次確認し、ICタグ620の情報を読み取れている場合には、荷物603が規定の搬送位置に載置されており、一方、ICタグ620の情報を読み取れなくなった場合には、荷物603が規定の搬送位置から移動したと判定できる。これにより、ユーザは、荷崩れ等により荷物603が移動したときに、荷物603を直ぐに規定の位置に戻すことができ、荷物603の破損等を防止できる。
【0064】
なお、ICタグ620及びブースタ部630の配置は、荷物603の移動を検出できる形態であれば、その形態は限定されず、様々な配置を選択できる。例えば、荷台602にブースタ部630を固定して、荷物603にICタグ620を固定してもよい。
また、図6(b)に示すように、荷物603を固定するベルト602AにICタグ620を設けてもよい。
【0065】
本実施形態では、ICタグ620及び読み取り装置640間の距離が数mになるため、第5実施形態のUHF帯を用いた物体移動検出システム501を採用するのが好適である。
【0066】
(第7実施形態)
次に、本発明を適用した第7実施形態について説明する。
第7実施形態は、第1から第5実施形態のいずれかの物体移動検出システムを利用した開閉検出システム701である。
図7は、第7実施形態の開閉検出システム701の構成を説明する図である。
図7(a)に示すように、開閉検出システム701は、2つのスライド窓部(片引き窓)701A,701Bと、開き戸部701Cとを備えている。
【0067】
図7(b−1)に示すように、スライド窓部701Aは、窓702(開閉部)がスライドすることにより、窓枠703Aに対して開閉するタイプのものである。
スライド窓部701Aには、窓702Aと一体で移動可能にICタグ720Aが固定され、窓枠703Aには、ブースタ部730Aが固定されている。
ICタグ720A及びブースタ部730Aは、窓702Aが窓枠703Aに対して閉じた状態では、通信距離が長くなり、一方、窓702Aが開いた状態では(図7(b−2)の状態)、閉じた状態よりも通信距離が短くなる位置に固定されている。
スライド窓部701Bは、スライド窓部701Aと同様な構成である。
【0068】
図7(c)に示すように、開き戸部701Cは、扉702C(開閉部)がヒンジ705によって、枠703Cに対して開閉するタイプのものである。
扉702Cには、一体で移動可能にICタグ720Cが固定され、枠703Cには、ICタグ720Cに対応したブースタ部730Cが固定されている。
ICタグ720C及びブースタ部730Cは、扉702Cが枠703Cに対して閉じた状態では、通信距離が長くなり、一方、扉702Cが開いた状態では、閉じた状態よりも通信距離が短くなる位置に固定されている。
【0069】
読み取り装置740は、スライド窓部701A,701B及び開き戸部701Cが閉じた状態で、各ICタグとの間で通信可能な範囲に配置されている。
【0070】
ユーザは、読み取り装置740が各ICタグの情報を読み取れているか否かを確認し、ICタグの情報を読み取れている場合には、スライド窓部701A,701B、開き戸部701Cが閉じた状態であり、一方、ICタグの情報を読み取れない場合には、スライド窓部701A,701B、開き戸部701Cの少なくとも1つが開いていると判定できる。
これにより、ユーザは、例えば、戸締り異常等を容易に確認できる。
【0071】
なお、各ICタグがそれぞれ異なる識別情報を記憶している場合には、ユーザは、窓702A、扉702C等のいずれが開閉しているかを確認できる。
また、各ICタグ及び各ブースタ部の配置は、窓702A、扉702C等の開閉を検出できる形態であれば、その形態は限定されず、様々な配置を選択できる。例えば、窓枠703A、枠703CにICタグ720B,720Cを固定して、窓702B、扉702Cにブースタ部730B,730Cを固定してもよい。
【0072】
本実施形態では、ICタグ及び読み取り装置740間の距離が数mになるため、第5実施形態のUHF帯を利用した物体移動検出システム501を採用するのが好適である。
【0073】
(第8実施形態)
次に、本発明を適用した第8実施形態について説明する。
第8実施形態は、第2実施形態の物体移動検出システム201を利用したコネクタ接続検出システム801である。
図8は、第8実施形態のコネクタ接続検出システム801の構成を説明する図である。
コネクタ接続検出システム801は、3つのコネクタ部801A,801B,801Cを備えている。
コネクタ部801A,801B,801Cは、それぞれ、プリント回路基板805に実装された基板側コネクタ802A,802B,802Cと、これらに着脱可能なワイヤ側コネクタ803A,803B,803Cとを備えている。
各コネクタ部801A,801B,801Cは、プリント回路基板805及びワイヤ804A,804B,804C間で、それぞれ異なる電気信号を通信するようになっている。
【0074】
コネクタ部801Aの構成について説明する。
基板側コネクタ802Aは、図中左側の領域に、ICタグ820Aが固定されている。
ワイヤ側コネクタ803Aは、ブースタ部830Aが設けられている。ブースタアンテナ832Aは、図中左側の領域にタグ検出部834Aが設けられている。
そして、図8(b)に示すように、基板側コネクタ802A及びワイヤ側コネクタ803Aが接続されると、ICタグ820A及びタグ検出部834A間で位置が一致し、ブースタアンテナの機能が働き通信可能になる。
このため、読み取り装置840は、コネクタ部801Aから数十mm程度離して配置されることにより、ブースタ部830Aを介してICタグ820Aとの間で通信可能になる。
【0075】
同様に、コネクタ部801Bの基板側コネクタ802Bは、図中中央の領域に、ICタグ820Bが固定され、ワイヤ側コネクタ803Bは、図中中央の領域にタグ検出部834Bが設けられている。そして、基板側コネクタ802B及びワイヤ側コネクタ803Bが接続されると、読み取り装置840は、ブースタ部830Bを介してICタグ820Bとの間で通信可能になる。
同様に、コネクタ部801Cの基板側コネクタ802Cは、図中右側の領域に、ICタグ820Cが固定され、ワイヤ側コネクタ803Cは、図中右側の領域にタグ検出部834Cが設けられている。そして、基板側コネクタ802C及びワイヤ側コネクタ803Cが接続されると、読み取り装置840は、ブースタ部830Cを介してICタグ820Cとの間で通信可能になる。
【0076】
コネクタ接続検出システム801の判定方法について説明する。
コネクタ部801Aの基板側コネクタ802Aに対して、ワイヤ側コネクタ803Aとは異なるワイヤ側コネクタ803B,803Cが接続された場合には、タグ検出部834Aの検出範囲外にICタグ820B,820Cが配置される。このため、読み取り装置840は、基板側コネクタ802Aに異なるワイヤ側コネクタ803B,803Cが接続されても、ICタグ820B,820Cとの間で通信することができない。つまり、コネクタ部801Aは、基板側コネクタ802A及びワイヤ側コネクタ803が接続された場合のみ、読み取り装置840及びICタグ820A間で通信可能になる。
同様に、コネクタ部801Bは、基板側コネクタ802B及びワイヤ側コネクタ803Bが接続された場合のみ、読み取り装置840及びICタグ820B間で通信可能になり、コネクタ部801Cは、基板側コネクタ802C及びワイヤ側コネクタ803Cが接続された場合のみ、読み取り装置840及びICタグ820C間で通信可能になる。
【0077】
このため、ユーザは、全てのコネクタ部801A,801B,801Cを接続した後に、読み取り装置840をプリント回路基板805から数十mm程度離して、読み取り処理をすることにより、全てのコネクタ部801A,801B,801Cが正しく接続されているか否かを判定できる。
すなわち、ユーザは、読み取り装置840が全てのICタグ820A,820B,820Cの情報を読み込むことができた場合には、全てのコネクタ部801A,801B,801Cが正しく接続されていると判定できる。一方、ユーザは、読み取り装置840が全てのICタグ820A,820B,820Cの情報を読み込むことができない場合には、組み合わせの異なる基板側コネクタ及びワイヤ側コネクタが接続されているか、又は接続されていないコネクタ部801A,801B,801Cがあると判定できる。
さらに、使用されているICタグ802A、802B、803Bの保持する固有番号(情報)をあらかじめ記憶しておき、読み取り装置840の読み取ったICタグの固有番号と照合し、ICタグの固有番号が読み取れたコネクタは正常に接続され、固有番号が読み取れなかったICタグに係るコネクタは正常に接続されていないと判断できる。
【0078】
なお、コネクタ接続検出システム801は、第2実施形態の物体移動検出システム201を利用した例を説明したが、その他の実施形態を利用してもよい。
【0079】
(第9実施形態)
次に、本発明を適用した第8実施形態について説明する。
第9実施形態は、第5実施形態の物体移動検出システム501のブースタ部530を変形したものである。
図9は、第9実施形態の物体移動検出システム901を説明する図である。
第5実施形態のブースタ部530が2つのブースタアンテナ532A,532Bを備えるのに対して、図9(a)に示すように、物体移動検出システム901は、ブースタ部930のブースタアンテナ932が1つの導体から形成される。
【0080】
ブースタアンテナ930は、平面形状が長方形である。そして、物体間の移動にともなって(図5に示す物体502,503参照)、ICタグ920が間隙932c(スリット部)上を、移動するようになっている。
このような構成であっても、物体移動検出システム901は、ブースタアンテナ932のICタグ920に対する位置に応じて、通信距離を変化させることができ、物体間の相対移動を検出できる。
なお、図9(b)に示す物体移動検出システム901Bのように、ブースタアンテナは、メアンダ型のブースタアンテナ932Bを利用してもよい。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0082】
(変形形態)
(1)実施形態において、ICタグ及びブースタ部は、相対的に直線移動する例を示したが、これに限定されない。例えば、ICタグ及びブースタ部は、相対的に回転移動するものでもよい。
【0083】
(2)第5実施形態において、ブースタ部は、延伸した2つの導体からなるダイポール型のブースタアンテナを備える例を説明したが、これに限定されない。ブースタアンテナは、メアンダ型に屈曲した2つの導体からなるものでもよい。
【符号の説明】
【0084】
1,201,301,401,501 物体移動検出システム
2,202,302,502 物体
3,203,303,503 物体
20,220,320,520,620,720A,720B,820A,820B,820C ICタグ
30,230,330,430,530,630,730A,730B,830A,830B,830C ブースタ部
32,232,332,532A,532B,832A,832B,832C ブースタアンテナ
40,540,640,740,840 読み取り装置
234,834A,834B,834C タグ検出領域
304 金属板
332a ベタ部
332b ベタ抜き部
433 軟磁性体層
601 輸送物移動検出システム
602 荷台
603 荷物
701 開閉検出システム
701A,701B スライド窓部
701C 開き戸部
702A 窓
703A 窓枠
701C 開き戸部
702C 扉
703C 枠
801 コネクタ接続検出システム
801A,801B,801C コネクタ部
802A,802B,802C 基板側コネクタ
803A,803B,803C ワイヤ側コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグを、一方の物体に設けるICタグ設置工程と、
前記ICタグに対する位置に応じて読み取り装置及び前記ICタグ間の通信距離を変化させるブースタ部を、他方の物体に設けるブースタ部設置工程と、
前記通信距離の変化を検出する検出工程と、
検出工程の検出結果に基づいて、前記一方の物体及び前記他方の物体が相対移動した否かを判定する判定工程と、
を備える物体移動検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の移動検出方法において、
前記検出工程は、読み取り装置が前記ICタグの情報を読み取れるか否かを検出すること、
を特徴とする物体移動検出方法。
【請求項3】
一方の物体の設けられるICタグと、
他方の物体に設けられ、前記ICタグに対する位置に応じて読み取り装置及び前記ICタグ間の通信距離を変化させるブースタ部と、
前記通信距離の変化を検出する検出装置と、
を備える物体移動検出システム。
【請求項4】
請求項3に記載の物体移動検出システムにおいて、
前記検出装置は、前記ICタグの情報を読み取れるか否かを検出すること、
を特徴とする物体移動検出システム。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の物体移動検出システムにおいて、
前記ブースタ部は、コイル状の導体からなるブースタアンテナを備えること、
を特徴とする物体移動検出システム。
【請求項6】
請求項5に記載の物体移動検出システムにおいて、
前記ブースタアンテナは、前記ブースタアンテナの一部を外側に張り出すように設けたタグ検出領域を有すること、
を特徴とする物体移動検出システム。
【請求項7】
請求項3又は請求項4に記載の物体移動検出システムにおいて、
前記ブースタ部は、導体をベタ状に形成したベタ部と、ベタ部の内側に設けたベタ抜き部とを設けたブースタアンテナを備えること、
を特徴とする物体移動検出システム。
【請求項8】
請求項7に記載の物体移動検出システムにおいて、
前記ブースタ部は、前記ベタ抜き部をタグ検出領域とすること、
を特徴とする物体移動検出システム。
【請求項9】
請求項3又は請求項4に記載の物体移動検出システムにおいて、
前記ブースタ部は、ダイポール型の延伸した導体又はメアンダ型に屈曲した導体からなるブースタアンテナを備えること、
を特徴とする物体移動検出システム。
【請求項10】
請求項9に記載の物体移動検出システムにおいて、
前記ブースタ部は、前記延伸した導体のスリット部をタグ検出領域とすること、
を特徴とする物体移動検出システム。
【請求項11】
請求項3又は請求項4に記載の物体移動検出システムにおいて、
前記ブースタ部は、
ブースタアンテナを形成するブースタアンテナ層と、
前記ブースタアンテナ層の前記ICタグとは反対側に配置した軟磁性体層とを備えること、
を特徴とする物体移動検出システム。
【請求項12】
請求項11に記載の物体移動検出システムにおいて、
前記ブースタ部は、前記軟磁性体層の前記ICタグとは反対側に配置した導体層を備えること、
を特徴とする物体移動検出システム。
【請求項13】
請求項3から請求項12までのいずれか1項に記載の物体移動検出システムを備え、
前記一方の物体及び前記他方の物体のいずれかの物体は、輸送物であり、
前記いずれかの物体とは異なる方の物体は、
前記輸送物を輸送する装置の物体であり、
前記輸送物を前記装置の定められた位置に配置した状態では、前記通信距離が長くなり、
前記輸送物を前記装置の前記定められた位置から移動した状態では、前記定められた位置に配置された状態よりも前記通信距離が短くなる位置に設けられていること、
を特徴とする輸送物移動検出システム。
【請求項14】
請求項3から請求項12までのいずれか1項に記載の物体移動検出システムを備え、
前記一方の物体及び前記他方の物体のいずれかの物体は、枠に対して開閉する開閉部に設けられ、
前記いずれかの物体とは異なる方の物体は、
前記枠側に設けられ、
前記開閉部が閉じた状態では、前記通信距離が長くなり、
前記開閉部が開いた状態では、前記閉じた状態よりも前記通信距離が短くなる位置に設けられていること、
を特徴とする開閉検出システム。
【請求項15】
請求項3から請求項12までのいずれか1項に記載の物体移動検出システムを備え、
前記ブースタ部及び前記ICタグは、それぞれ検出位置が異なる複数の組み合わせを有し、
前記各組み合わせがそれぞれ対応し、少なくとも2つの部材を接続する複数のコネクタを備えること、
を特徴とするコネクタ接続検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−13439(P2012−13439A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147664(P2010−147664)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】