説明

物品出入り管理システム

【課題】 物品の持ち出し、返却を適正かつ効率的に管理する。
【解決手段】 人Mや物品Pに配設され、その識別情報を記憶したICタグ2、3と、出入り口R1の外寄りに設けられた外側リーダー4と、出入り口R1の内寄りに設けられた内側リーダー5と、人Mや物品Pの識別情報を記憶し、リーダー4、5によって識別情報が読み取られた順番に基づいて、出入り口R1に対して人Mや物品Pが出るのか入るのかを判定し、所定の時間内に人Mの識別情報と物品Pの識別情報とが読み取られた場合に、誰がどの物品を持ち出しあるいは返却したかを割り出す管理コンピュータ7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管理エリアからの物品の持ち出しや返却を管理する物品出入り管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電力制御所においては、制御装置のシステム仕様書やデータ記憶媒体などの盗難、紛失、情報漏洩を防止するために、これらが資産管理対象とされ、持ち出し、返却の場合には、台帳に誰がいつ持ち出し、返却したかを記録している。また、IC(Integrated Circuit)タグを利用して、人や物品の入退室を管理する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この技術は、建物や部屋の出入り口を囲うドア枠にループ状のアンテナを設け、このアンテナをリード/ライトユニットに接続する。リード/ライトユニットは、アンテナから電磁界を出力して、ICタグに記憶された識別情報を読み取り、この識別情報を基づいて、人や物品の出入りを管理するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−041152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように資産管理対象の持ち出し、返却を台帳によって管理する場合、持ち出し、返却の度に台帳に記録しなければならず、煩雑で多大な労力と時間とを要するばかりでなく、記録漏れなどにより適正な管理が行われないおそれがあった。また、特許文献1に記載された技術では、出入りする人や物品を管理するだけであり、人や物品が建物や部屋に入るのか、あるいは、建物や部屋から出るのかまでは判別することができない。従って、この技術を資産管理に適用しようとしても、資産管理対象が持ち出されるのか、返却されるのかを判別して管理することができない。このため、例えば、持ち出しか返却かを宣言するスイッチを設け、出入りの都度このスイッチを押すことが行われるが、資産管理対象を両手で持っている場合など、スイッチ操作に手間がかかり、非効率的である。
【0005】
そこでこの発明は、物品の持ち出し、返却を適正かつ効率的に管理することが可能な物品出入り管理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、人や物品の検知対象に配設され、前記検知対象の識別情報を読み取り可能に記憶した情報媒体と、出入り口の外寄りに設けられ、前記情報媒体から前記識別情報を読み取る第1の読取手段と、出入り口の内寄りに設けられ、前記情報媒体から前記識別情報を読み取る第2の読取手段と、前記各検知対象に対する識別情報が記憶され、前記第1の読取手段と第2の読取手段とによって前記識別情報が読み取られた順番に基づいて、前記出入り口に対して前記検知対象が出るのか入るのかを判定し、所定の時間内に人の識別情報と物品の識別情報とが読み取られた場合に、誰がどの物品を持ち出しあるいは返却したかを割り出す処理手段と、を備えることを特徴とする物品出入り管理システムである。
【0007】
この発明によれば、例えば、情報媒体を配設した人と物品とが、出入り口の外側から内側に入ると、まず、第1の読取手段によって情報媒体の識別情報が読み取られ、次に、第2の読取手段によって情報媒体の識別情報が読み取られる。これにより、処理手段によって、読み取られた識別情報に対応した人と物品とが、出入り口から内側に入ったと判定され、かつ、読み取られた識別情報に対応した人が、読み取られた識別情報に対応する物品を返却したと、割り出される。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の物品出入り管理システムにおいて、前記第1の読取手段と第2の読取手段とで同一の識別情報が読み取られることを対検知とし、複数の検知対象のうち一部の検知対象のみが対検知された場合に、前記処理手段は、前記対検知された識別情報に基づいて前記判定を行う、ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、例えば、情報媒体を配設した人と物品とが、出入り口の外側から内側に入り、人の識別情報のみが第1の読取手段と第2の読取手段とで読み取られ(対検知され)、物品の識別情報が第1の読取手段のみで読み取られた場合、処理手段は、人の識別情報の読み取り順に基づいて、誰がどの物品を持ち出しあるいは返却したかを割り出す。つまり、人と物品とが出入り口から内側に入ったと判定され、かつ、第1の読取手段と第2の読取手段とで読み取られた識別情報に対応した人が、第1の読取手段で読み取られた識別情報に対応する物品を返却したと、割り出される。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の物品出入り管理システムにおいて、前記第1の読取手段と第2の読取手段とで同一の識別情報が読み取られることを対検知とし、前記処理手段は、前記割り出した結果を管理記録として記憶し、対検知されないために前記判定が行えない場合に、記憶された前記管理記録に基づいて前記判定を行う、ことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、例えば、人と物品とが出入り口から内側に入ったことが、管理記録として記憶され、その後、同一の人の識別情報が第1の読取手段のみによって読み取られ、同一の物品の識別情報が第2の読取手段のみによって読み取られたとする。この場合、対検知されていないため、読み取り順に基づいて、人や物品が出るのか入るのかを判定することができず、管理記録に基づいて判定される。つまり、最新の管理記録として、人と物品とが内側に入ったこと(入室)が記憶され、その後、人と物品の識別情報が読み取られているため、出入り口に対して人と物品が出る(退室)、と判定される。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から3に記載の物品出入り管理システムにおいて、人や物品が前記出入り口を通過したことを検知する人物検知手段を備え、前記処理手段は、前記人物検知手段によって人や物品の通過が検知されたにもかかわらず、前記第1の読取手段および第2の読取手段のいずれによっても人の識別情報が読み取られない場合に、出入り異常と判定する、ことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、例えば、情報媒体を配設していない人が出入り口から内側に入った場合、まず、人物検知手段によって人の通過が検知されるが、第1の読取手段および第2の読取手段のいずれによっても人の識別情報が読み取られない。このため、処理手段によって、出入り異常と判定される。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1から4に記載の物品出入り管理システムにおいて、前記第1の読取手段および第2の読取手段の少なくとも一方を取り外して、前記出入り口内にある物品の識別情報を読み取る棚卸用読取手段とし、前記棚卸用読取手段によって読み取った識別情報に基づいて、前記出入り口内にある物品の棚卸しを行う棚卸手段を備える、ことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、例えば、第1の読取手段を取り外して棚卸用読取手段とし、出入り口内にある物品の識別情報を棚卸用読取手段によって読み取ると、読み取った識別情報に基づいて、棚卸手段によって物品の棚卸しが行われる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、人や物品が出入り口を通過するだけで、人や物品が出るのか入るのかが判定され、さらに、所定の時間内(ほぼ同時)に人と物品とが検知された場合には、誰がどの物品を持ち出しあるいは返却したかが割り出される。このため、資産管理対象である物品の持ち出し、返却を適正、確実に管理することが可能となり、しかも、人が台帳に記録したり、持ち出しか返却かを宣言するスイッチを押したりする必要がなく、効率的な管理が可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、人や物品の姿勢や情報媒体の位置状態などによって、一部の情報媒体が第1の読取手段か第2の読取手段の一方でしか読み取れなかった場合であっても、誰がどの物品を持ち出しあるいは返却したかが割り出される。このため、物品の持ち出し、返却をより適正、確実に管理することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、人や物品の姿勢や情報媒体の位置状態などによって、第1の読取手段と第2の読取手段とで同一の人や物品を検知できなかった場合であっても、人や物品が出るのか入るのかが判定される。このため、物品の持ち出し、返却をより適正、確実に管理することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、情報媒体を有さない人が出入り口を通過した場合などには、出入り異常と判定されるため、許容されない人の出入りなどを防止して、物品をより適正、確実に管理することが可能となる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、読取手段を取り外して、出入り口内にある物品の識別情報を読み取るだけで、自動的に物品の棚卸しが行われるため、容易かつ適正に棚卸しを行うことが可能となる。しかも、第1の読取手段や第2の読取手段を棚卸用読取手段として活用するため、既存設備を有効利用して設備費用を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1に係る物品出入り管理システムを示す概略構成図である。
【図2】図1のシステムの管理コンピュータを示す概略構成ブロック図である。
【図3】図2の管理コンピュータの履歴データベースのデータ構成図である。
【図4】図2の管理コンピュータの監視タスクの処理タイミングなどを示すタイミングチャートである。
【図5】図2の管理コンピュータの監視タスクのフローチャートである。
【図6】図5の監視タスクで、両リーダーで同一の識別情報が読み取られない場合の処理例を示す図である。
【図7】図5の監視タスクで、両リーダーで同一人または同一物品の一方の識別情報のみが読み取られた場合の処理例を示す図である。
【図8】図5の監視タスクで、両リーダーで同一人および同一物品の識別情報が読み取られた場合の処理例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態2におけるリーダーの配設状態を示す平面図である。
【図10】この発明の実施の形態2におけるリーダーの別の配設状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る物品出入り管理システム1を示す概略構成図である。この物品出入り管理システム1は、物品の持ち出しや返却を管理するシステムであり、主として、ICタグ(情報媒体)2、3と、外側リーダー(第1の読取手段)4と、内側リーダー(第2の読取手段)5と、ドアタグ(人物検知手段)6と、管理コンピュータ(処理手段、棚卸手段)7とを備える。ここで、物品Pが、電力制御所の資産管理室(制御セキュリティエリア)R内に資産管理対象として収容、保管されている場合について説明し、物品Pとして、システム仕様書やデータ記憶媒体、メンテナンス用パソコンなどが該当する。
【0024】
ICタグ2、3は、人Mや物品Pの検知対象に配設され、人Mや物品Pに固有の識別情報を読み取り可能に記憶した情報媒体である。すなわち、半導体集積回路と小型アンテナで構成され、半導体集積回路に記憶された識別情報を無線によってICリーダーで読み取れるものである。そして、資産管理室Rへの入室が許可されている人Mには、それぞれ固有の識別情報を記憶した人用ICタグ2が配布され、管理対象であるすべての物品Pには、それぞれ固有の識別情報を記憶した物用ICタグ3が付けられている。
【0025】
リーダー4、5は、ICタグ2、3に電波を送信して電力を発生させるとともに、ICタグ2、3からの電波信号を受信して、ICタグ2、3に記憶された識別情報を読み取るICリーダーである。そして、外側リーダー4は、資産管理室Rの出入り口R1の外寄りに配設され、内側リーダー5は、出入り口R1の内寄りに配設されている。すなわち、資産管理室R内で出入り口R1の直近に外側リーダー4が配設され、この外側リーダー4よりも資産管理室R内側に内側リーダー5が配設され、かつ、ともに、その検知方向が出入り口R1に対してほぼ平行になるように配設されている。そして、外から資産管理室Rに入る場合には、ICタグ2、3からの信号を外側リーダー4で受信してから内側リーダー5で受信し、資産管理室Rから外に出る場合には、ICタグ2、3からの信号を内側リーダー5で受信してから外側リーダー4で受信するように配設されている。
【0026】
また、リーダー4、5は、管理コンピュータ7と通信可能に接続され、リーダー4、5で読み取られた識別情報が逐次・リアルタイムに管理コンピュータ7に送信されるようになっている。このようなリーダー4、5は、パイプで構成された枠体や壁などに、着脱自在に取り付けられている。
【0027】
ドアタグ6は、出入り口R1を開閉するドアDの識別情報を読み取り可能に記憶したICタグ(情報媒体)であり、ドアDの資産管理室R外側(室外側)の面に配設されている。そして、ドアDを開けると、ドアタグ6からの信号が外側リーダー4で受信されてから内側リーダー5で受信され、ドアDを閉めると、ドアタグ6からの信号が内側リーダー5で受信されてから外側リーダー4で受信される。これにより、ドアDの開閉、つまり人Mや物品Pが出入り口R1を通過したことが検知、認識されるようになっており、ドアタグ6とリーダー4、5とによって、人物検知手段が構成されている。
【0028】
管理コンピュータ7は、図2に示すように、主として、入力部71と、表示部72と、通信部73と、IDデータベース74と、履歴データベース75と、棚卸データベース76と、監視タスク(処理手段)77と、棚卸タスク(棚卸手段)78と、これらを制御などする中央制御部79とを備えている。
【0029】
入力部71は、後述する監視タスク77と棚卸タスク78との起動切り替えなどを指令、入力するインターフェイスであり、キーボードやマウスなどで構成されている。表示部72は、後述する履歴データベース75内の管理記録や警報などを表示するディスプレイである。通信部73は、リーダー4、5や後述する管理センタなどと通信するためのインターフェイスである。
【0030】
IDデータベース74は、各検知対象の識別情報を記憶したデータベースである。すなわち、資産管理室Rへの入室が許可されている各人Mの所属部署と氏名に対応して、その人Mに割り当てられた固有の識別情報が記憶され、また、管理対象の各物品Pの名称、型式などに対応して、その物品Pに割り当てられた固有の識別情報が記憶されている。
【0031】
履歴データベース75は、後述するようにして監視タスク77で割り出された結果を、管理記録として記憶するデータベースである。すなわち、図3に示すように、時系列順に、いつ、どの部署の、誰が、入室したかあるいは退室したかが記憶され、さらに、物品Pを持ち出しあるいは返却した場合には、その旨が記憶されている。
【0032】
棚卸データベース76は、後述するようにして棚卸タスク78で行われた棚卸しの結果を記憶するデータベースである。すなわち、いつ、誰が、どの資産管理室Rを棚卸し、どのような物品Pがいくつあるか(後述する在庫リスト)など、が記憶されている。
【0033】
監視タスク77は、リーダー4、5で読み取られた識別情報に基づいて、人Mや物品Pの出入りを監視、管理するタスク・プログラムである。ここで、まず、リーダー4、5による読取タイミングや、監視タスク77による解析タイミングなどについて説明する。
【0034】
図4中符号T1は、解析対象を判定するための解析対象判定時間(タイムラグ)であり、この解析対象判定時間T1内に次の識別情報が読み取られた場合(所定の時間内に複数の識別情報が読み取られた場合)には、ひとつの塊として処理する。そして、通常の通過速度で、例えば、人MがドアDを開けて物品Pと一緒に資産管理室Rに入った場合に、ドアDと人Mと物品Pとの各識別情報の読取間隔が、解析対象判定時間T1内になるように解析対象判定時間T1が設定されている。また、このような塊の識別情報の最後を読み取った時点から、解析処理を行うまでの時間が、解析待ち時間(タイムインターバル)T2として設定されている。さらに、先の解析処理が終了してから、次の解析処理を行うまでの時間が解析後時間(タイムカウント)T3として設定されている。つまり、例えば、人MがドアDを開けて物品Pと一緒に資産管理室Rに入った場合に、解析対象判定時間T1内に読み取られたドアDと人Mと物品Pの識別情報をひとつの解析対象とし、最後の識別情報の読み取りから解析待ち時間T2後に監視タスク77による処理を行い、その解析後時間T3後に次の解析を行うものである。
【0035】
また、ドアDの開閉は、外側リーダー4による識別情報の読み取りのみで判定する。すなわち、ドアDが閉じた状態から、外側リーダー4でドアDの識別情報を読み取ると、ドアDが開いたと判定する。その後、ドアDが開いた状態から、外側リーダー4でドアDの識別情報を読み取ると、ドアDが閉じたと判定し、ドアDの識別情報を読み取る度に、ドアDの開閉状態を反転するものである。また、人Mや物品Pが出入り口R1を出入りする場合には、ドアDが必ず開閉されるため、監視タスク77による処理が行われる場合には、解析対象にドアDの識別情報が必ず含まれている。
【0036】
このような前提の下、監視タスク77は、まず、図5に示すように、読み取った識別情報とIDデータベース74とに基づいて、人Mの識別情報が読み取られたか否かを判断し(ステップS1)、読み取られなかった場合には、警報を出力する(ステップS2)。すなわち、ドアDが開閉されたにもかかわらず(人Mや物品Pの通過が検知されたにもかかわらず)、人Mの識別情報が読み取られなかった場合に、出入り異常と判定する。このようなケースとして、資産管理室Rへの入室が許可されていない、人用ICタグ2を有さない人Mが出入り口R1を出入りする場合が該当する。また、警報出力として、表示部72に警報を表示するとともに、予め設定された外部の管理センタなどに通信部73を介して警報を通知する。
【0037】
一方、人Mの識別情報が読み取られた場合には、読み取った識別情報とIDデータベース74とに基づいて、同一の人Mまたは物品Pの識別情報が、外側リーダー4および内側リーダー5で読み取られたか否かを判断する(ステップS3)。つまり、図6に示すように、リーダー4、5によって同一の識別情報が読み取られないために、人Mや物品Pが資産管理室Rに入るのか出るのか判定できないケース、に該当するか否かを判断する。そして、判定できないケースに該当する場合(ステップS3で「N」の場合)には、履歴データベース75に記憶された当該人Mや物品Pの直近・最新の管理記録に基づいて、入るのか出るのかを判定する(ステップS4)。
【0038】
具体的には、図6の(a)ケースのように、外側リーダー4でのみ人Mと物品Pの識別情報が読み取られた場合、内側リーダー5でも同一の人Mと物品Pの識別情報が読み取られたと読取判定する。そして、当該人Mの直近の管理記録(直前記録)が「入室」の場合、今回の出入りでは、「退出」と判定する。同様に、当該物品Pの直近の管理記録が「返却」の場合、今回の出入りでは、「貸出」と判定する。このように、今回の出入りは、直前の行為(入室・退室および貸出・返却)を反転させた逆の行為(退室・入室および返却・貸出)であると、判定する。
【0039】
一方、入るのか出るのか判定できる場合(ステップS3で「Y」の場合)、物品Pの識別情報が読み取られたか否かを判断する(ステップS5)。そして、読み取られた場合には、同一の人Mおよび物品Pの識別情報が、外側リーダー4および内側リーダー5で読み取られたか否か(対検知された否か)を判断する(ステップS6)。すなわち、上記のようなひと塊の識別情報(処理上ほぼ同時とみなされる所定の時間内に読み取られた識別情報)において、同一人Mの識別情報が両リーダー4、5で読み取られ、かつ、同一物品Pの識別情報も両リーダー4、5で読み取られたか否かを判定する。このことは、人Mと物品Pとが出入りした場合に、すべての人Mと物品Pの識別情報が両リーダー4、5で正しく読み取られたか否かの判断に該当する。
【0040】
そして、図7に示すように、人Mまたは物品Pの一方のみが両リーダー4、5でその識別情報を読み取られた場合(ステップS6で「N」の場合)、両リーダー4、5で読み取られた人Mまたは物品Pの出入りにあわせて、入るのか出るのかを判定する(ステップS7)。例えば、図7の(a)ケースのように、同一人Mの識別情報が両リーダー4、5で読み取られ、物品Pの識別情報が外側リーダー4でのみ読み取られた場合、内側リーダー5でも物品Pの識別情報が読み取られたと読取判定する。その結果、当該人Mと物品Pが入室したと判定する。
【0041】
一方、物品Pの識別情報が読み取られなかった場合(ステップS5で「N」の場合で、人Mのみが出入りする場合)および、同一人Mおよび同一物品Pの識別情報が両リーダー4、5で読み取られた場合(ステップS6で「Y」の場合)には、識別情報が読み取られた順番に基づいて、出るのか入るのかを判定する(ステップS8)。すなわち、この場合には、図8に示すように、人Mと物品Pの識別情報が両リーダー4、5で正しく読み取られているため、その読取結果がそのまま読取判定となり、読み取り順に基づいて、出るのか入るのかを判定する。例えば図8のケースのように、先に外側リーダー4で人Mと物品Pの識別情報が読み取られ、その後、内側リーダー5で人Mと物品Pの識別情報が読み取られた場合、人Mと物品Pが入室したと判定する。これとは逆に、先に内側リーダー5で人Mと物品Pの識別情報が読み取られ、その後、外側リーダー4で人Mと物品Pの識別情報が読み取られた場合、人Mと物品Pが退室したと判定する。
【0042】
次に、上記の出入りの判定結果と、読み取られた識別情報に基づいて、誰がどの物品Pを持ち出しあるいは返却したかなどを割り出す(ステップS9)。すなわち、人Mと物品Pの識別情報が読み取られた場合、その識別情報とIDデータベース74とに基づいて、人Mの所属部署と氏名と、物品Pの名称、型式を割り出し、出入りの判定結果に基づいて、誰がどのような物品Pを持ち出し(貸し出し)あるいは返却したかを割り出す。ここで、物品Pとともに入室した場合には、「返却」と割り出し、物品Pとともに退室した場合には、「持ち出し」と割り出する。また、人Mのみが読み取られた場合、人Mの所属部署と氏名を割り出し、出入りの判定結果に基づいて、誰が入室したかあるいは退室したかを割り出す。
【0043】
そして、その割出結果をIDデータベース74に記憶する(ステップS10)ものである。すなわち、上記のように(図3参照)、時系列順に、いつ、どの部署の、誰が、入室したかあるいは退室したか、さらに、該当する場合には、どのような物品Pを持ち出しあるいは返却したかを記憶する。
【0044】
棚卸タスク78は、リーダー4、5の少なくとも一方を取り外して、出入り口R1内(資産管理室R内)にある物品Pの識別情報を読み取る棚卸用リーダー(棚卸用読取手段)4、5とした場合に、棚卸用リーダー4、5で読み取った識別情報に基づいて、資産管理室R内の棚卸しを行うタスクである。
【0045】
具体的には、棚卸用リーダー4、5で読み取られた識別情報とIDデータベース74とに基づいて、どのような(何の名称、型式などの)物品Pが資産管理室R内にあるかを割り出し、その物品Pがいくつあるかをカウントして、在庫リストを作成する。また、資産管理室R内で保管、管理すべき物品Pの名称、型式などとその個数とを示す管理対象リストが予め記憶され、在庫リストと管理対象リストとを比較して、現在資産管理室R内にない貸し出し中の物品Pを割り出すものである。また、入力部71で入力された棚卸担当者の氏名や棚卸日、資産管理室Rの名称とともに、在庫リストと割り出し結果を棚卸データベース76に記憶する。
【0046】
次に、このような構成の物品出入り管理システム1の作用について説明する。
【0047】
まず、両リーダー4、5が上記のように取り付けられ、管理コンピュータ7の入力部71で監視タスク77の起動が選択された状態で、人Mや物品Pが資産管理室Rに出入りすると、両リーダー4、5によってドアDおよびICタグ2、3の識別情報が読み取られる。そして、上記のようなタイミングで監視タスク77が起動され、読み取られた識別情報に基づいて、上記のようにして、人Mや物品Pが資産管理室Rに入るのか出るのかが判定され、さらに、誰がどのような物品Pを持ち出しあるいは返却したかが割り出される。そして、その判定、割出結果がIDデータベース74に記憶され、このような処理が、人Mや物品Pの出入りの度に行われる。また、資産管理室Rへの入室が許可されていない人Mが資産管理室Rに入った場合などには、表示部72に警報が表示され、外部の管理センタなどに警報が通知される。
【0048】
また、半年に一度などの棚卸し時には、少なくとも一方のリーダー4、5を取り外して棚卸用リーダー4、5とし、管理コンピュータ7の入力部71で棚卸タスク78を起動させる。そして、資産管理室R内にあるすべての物品Pの物用ICタグ3から、識別情報を棚卸用リーダー4、5で順次読み取っていく。この読み取りを受けて棚卸タスク78によって、上記のようにして、在庫リストが作成され、さらに、現在資産管理室R内にない貸し出し中の物品Pが割り出される。その後、棚卸担当者の氏名や棚卸日、資産管理室Rの名称とともに、在庫リストと割り出し結果が、棚卸データベース76に記憶される。そして、棚卸しが終了した後には、リーダー4、5を再び取り付け、監視タスク77を起動可能状態とし、上記と同様にして、人Mや物品Pの出入りを監視、管理するものである。
【0049】
以上のように、この物品出入り管理システム1によれば、人Mや物品Pが出入り口R1を通過するだけで、人Mや物品Pが資産管理室Rを出るのか入るのかが判定され、さらに、人Mと物品Pが一緒に(処理上ほぼ同時に)出入りした場合には、誰がどの物品Pを持ち出しあるいは返却したかが割り出される。このため、資産管理対象である物品Pの持ち出し、返却や人Mの出入りを、適正、確実に管理することが可能となる。しかも、人が台帳に記録したり、持ち出しか返却かを宣言するスイッチを押したりする必要がなく、効率的な管理が可能となる。
【0050】
しかも、人Mや物品Pの姿勢やICタグ2、3の位置状態などによって、一部のICタグ2、3から識別情報を正しく読み取れない場合であっても、誰がどの物品Pを持ち出しあるいは返却したか、あるいは誰が出入りしたかが割り出される。このため、物品Pの持ち出し、返却や人Mの出入りを、漏れなく、より適正、確実に管理することが可能となる。ところで、履歴データベース75を備えるため、人Mや物品Pが検知されたことのみで、直近・最新の管理記録に基づいて出入りを判定することも可能である。つまり、ICリーダーを1つだけ配設し、直前の行為を反転させるだけで出入りを判定することも可能であるが、反転のみで判定すると修正、校正がされなくなり、誤判定を起こす可能性がある。これに対して、この物品出入り管理システム1では、出入りの度に両リーダー4、5の読取結果に基づいて判定を行うため、自己修正、校正が行われ、恒常的に適正な判定結果を得ることが可能となる。
【0051】
また、資産管理室Rへの入室が許可されていない人Mが資産管理室Rに入った場合などには、警報が出力されるため、許容されない人Mの出入りなどを防止して、物品Pをより適正、確実に管理することが可能となる。さらに、リーダー4、5を取り外して、資産管理室R内にある物品Pの識別情報を読み取るだけで、自動的に物品Pの棚卸しが行われるため、容易かつ適正に棚卸しを行うことが可能となる。しかも、リーダー4、5を棚卸用リーダーとして活用するため、既存設備を有効利用して設備費用を低減することが可能となる。
【0052】
(実施の形態2)
この実施の形態では、リーダー4、5の配設状態が実施の形態1と異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することで、その説明を省略する。
【0053】
すなわち、実施の形態1のようなリーダー4、5の配設状態では、リーダー4、5が開放された空間に配設されているため、リーダー4、5の近くにある検知不要な(例えば、資産管理室R内の物品Pの)ICタグの情報を読み取る(誤認する)おそれがある。また、複数の物品Pを持ち出したりする場合に、一部の物品Pの物用ICタグ3の識別情報が読み取れないおそれがある。
【0054】
これに対して、この実施の形態では、図9に示すように、出入り口R1から資産管理室R側の小空間を検知エリアR2とし、この検知エリアR2の3面が、電磁波を遮へいする遮へいシート41〜43で覆われている。そして、実施の形態1と同様に、ドアDを開けた状態(図示の状態)で、ドアDと対向する第3の遮へいシート43の検知エリアR2側に、リーダー4、5が配設されている。また、出入り口R1と対向する第1の遮へいシート41が開閉可能で、この第1の遮へいシート41を開けることで、人Mや物品Pが出入りできるようになっている。
【0055】
このようなリーダー4、5の配設によれば、リーダー4、5およびICタグ2、3、6からの電磁波が、遮へいシート41〜43によって検知エリアR2外に漏れず、また、検知エリアR2外からの不要な電磁波が検知エリアR2内に入り込むことがない。さらには、電磁波が検知エリアR2内で回り込んで、互いに確実に送受信される。このため、不要な電磁波を読み取ること(誤認)や、受信漏れなどがなく、より確実、正確に識別情報を読み取って、物品Pの持ち出し、返却をより適正、確実に管理することが可能となる。
【0056】
また、図10に示すように、外側リーダー4を第3の遮へいシート43に配設し、内側リーダー5を第1の遮へいシート41に配設して、外側リーダー4と内側リーダー5とを離してもよい。これにより、出入りに対してリーダー4、5で検知すべき順番が乱れること、例えば、入室にもかかわらず識別情報が内側リーダー5で読み取られた後に外側リーダー4で読み取られることがなくなり、物品Pの持ち出し、返却をより適正、確実に管理することが可能となる。さらには、出入り口R1や検知エリアR2の大きさ、通路の配置などに応じて、リーダー4、5の角度、向きを調整することで、より確実、正確に識別情報を読み取ることが可能となる。
【0057】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、ドアタグ6とリーダー4、5とによって人物検知手段を構成しているが、人や物品の接近、通過を検知する赤外線センサや超音波センサなどで、人物検知手段を構成してもよい。また、ひとりの人Mとひとつの物品Pが出入りする場合について、主として説明したが、複数人や複数物品に対しても、同様にして判定、割り出しが行われる。例えば、ひとりの人Mが複数の物品Pを持って資産管理室Rに入室し、一部の物品Pの物用ICタグ3から識別情報を正しく読み取れない場合であっても、その一部の物品Pの管理記録や他の物品Pの読取結果などに基づいて、その一部の物品Pが持ち出されたのか、あるいは返却されたのかが割り出される。
【0058】
さらに、直前・最後の読取時から解析対象判定時間T1内に次の識別情報が読み取られた場合を、所定の時間内に複数の識別情報が読み取られた場合とし、ひとつの塊として処理しているが、最先・最初の読取時から所定の時間内に読み取られた複数の識別情報を、ひとつの塊として処理するようにしてもよい。また、資産管理室Rに対する人Mや物品Pの出入りを管理する場合について説明したが、作業現場やセキュリティエリアなどにおける人Mや物品Pの出入りにも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 物品出入り管理システム
2、3 ICタグ(情報媒体)
4 外側リーダー(第1の読取手段)
5 内側リーダー(第2の読取手段)
6 ドアタグ(人物検知手段)
7 管理コンピュータ(処理手段、棚卸手段)
77 監視タスク(処理手段)
78 棚卸タスク(棚卸手段)
M 人
P 物品(資産管理対象)
R 資産管理室
R1 出入り口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
人や物品の検知対象に配設され、前記検知対象の識別情報を読み取り可能に記憶した情報媒体と、
出入り口の外寄りに設けられ、前記情報媒体から前記識別情報を読み取る第1の読取手段と、
出入り口の内寄りに設けられ、前記情報媒体から前記識別情報を読み取る第2の読取手段と、
前記各検知対象に対する識別情報が記憶され、前記第1の読取手段と第2の読取手段とによって前記識別情報が読み取られた順番に基づいて、前記出入り口に対して前記検知対象が出るのか入るのかを判定し、所定の時間内に人の識別情報と物品の識別情報とが読み取られた場合に、誰がどの物品を持ち出しあるいは返却したかを割り出す処理手段と、
を備えることを特徴とする物品出入り管理システム。
【請求項2】
前記第1の読取手段と第2の読取手段とで同一の識別情報が読み取られることを対検知とし、
複数の検知対象のうち一部の検知対象のみが対検知された場合に、前記処理手段は、前記対検知された識別情報に基づいて前記判定を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品出入り管理システム。
【請求項3】
前記第1の読取手段と第2の読取手段とで同一の識別情報が読み取られることを対検知とし、
前記処理手段は、前記割り出した結果を管理記録として記憶し、対検知されないために前記判定が行えない場合に、記憶された前記管理記録に基づいて前記判定を行う、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の物品出入り管理システム。
【請求項4】
人や物品が前記出入り口を通過したことを検知する人物検知手段を備え、
前記処理手段は、前記人物検知手段によって人や物品の通過が検知されたにもかかわらず、前記第1の読取手段および第2の読取手段のいずれによっても人の識別情報が読み取られない場合に、出入り異常と判定する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の物品出入り管理システム。
【請求項5】
前記第1の読取手段および第2の読取手段の少なくとも一方を取り外して、前記出入り口内にある物品の識別情報を読み取る棚卸用読取手段とし、
前記棚卸用読取手段によって読み取った識別情報に基づいて、前記出入り口内にある物品の棚卸しを行う棚卸手段を備える、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の物品出入り管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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