物品分別搬送装置
【課題】搬送面上で複数の物品を分別し異なる方向に搬送させることができる物品分別搬送装置を提供する。
【解決手段】弾性支持手段5を介して設けられた可動台6が振動することで物品9を搬送する物品分別搬送装置1であって、可動台6に対して鉛直方向より傾斜した方向に周期的加振力を付与する第1の加振手段71と、第1の加振手段6による周期的加振力71と交差する方向に周期的加振力を付与する第2の加振手段72と、各加振手段71、72による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ可動台6に楕円の振動軌跡を生じさせる振動制御手段31とを備え、振動制御手段31により摩擦係数が異なる物品が異なる方向に搬送されるように可動台6の振動軌跡を設定することによって、可動台6上で物品9を分別搬送するように構成した。
【解決手段】弾性支持手段5を介して設けられた可動台6が振動することで物品9を搬送する物品分別搬送装置1であって、可動台6に対して鉛直方向より傾斜した方向に周期的加振力を付与する第1の加振手段71と、第1の加振手段6による周期的加振力71と交差する方向に周期的加振力を付与する第2の加振手段72と、各加振手段71、72による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ可動台6に楕円の振動軌跡を生じさせる振動制御手段31とを備え、振動制御手段31により摩擦係数が異なる物品が異なる方向に搬送されるように可動台6の振動軌跡を設定することによって、可動台6上で物品9を分別搬送するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動により複数の物品を搬送しつつ分別することが可能な物品分別搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、振動を利用したリニアフィーダなどの物品搬送装置が多数知られており、こうした技術を展開した特許文献1に係るような物品搬送装置が開示されている。
【0003】
このものは物品搬送用の軌道を有する可動体に対して、垂直および水平方向の同一周波数の振動を加えることで楕円振動を生じさせ、摩擦係数に応じてそれぞれの方向の振動の位相差を設定することで、搬送方向を異ならせることを可能に構成したものである。これを用いることにより、摩擦係数の異なる2種の物品を同時に搬送面上に載せ、摩擦係数に応じた所定の位相差を有する振動を付与することで、それぞれが反対方向に搬送されるようにして分別することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−255351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の先行技術に係る物品搬送装置では、2方向の振動成分を合成して楕円の振動軌跡を生成し、これを利用して物品の分別を行っているものの、振動軌跡の生じる方向が限定されているために、搬送する物品の移動方向についての自由度が少ない。そのため、当該装置を製造ラインに組み込んで用いた場合には、搬送経路の方向についての設計自由度が低くなる。
【0006】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には物品の分別を行うと同時に、分別された物品をそれぞれ任意の方向に搬送していくことができ、製造ラインの中で容易に用いることのできる物品分別搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明の物品分別搬送装置は、基体上に弾性支持手段を介して設けられた可動台を具備し、当該可動台が振動することで可動台上に載せられた物品を搬送する物品分別搬送装置であって、前記可動台に対して鉛直方向より傾斜した方向に周期的加振力を付与する第1の加振手段と、前記可動台に対して前記第1の加振手段による周期的加振力と交差する方向に周期的加振力を付与する第2の加振手段と、前記各加振手段による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ前記可動台に楕円の振動軌跡を生じさせるように前記各加振手段を制御する振動制御手段とを備え、前記振動制御手段により摩擦係数が異なる物品が異なる方向に搬送されるように前記可動台の振動軌跡を設定することによって、前記可動台上で前記物品を分別搬送することを特徴とする。
【0009】
このように構成すると、複数の物品を一方向に搬送することができるとともに、摩擦係数の相違によって搬送方向を異ならせることができるため、カメラや画像処理機などの検査機器および分別のための特殊な機器を用いなくても、これらを自動的に分別することができる。さらに、搬送面を平面に構成できるため、一個の機器によって大型のものから小型のものまで対応が可能となる。
【0010】
さらに、物品の移動する方向を安定させてそれぞれを決まった方向に搬送できるようにするために、前記可動台上に、分別された物品を所定の軌道に沿って移動させるガイドを設けるようにして構成することが好適である。
【0011】
また、複数の物品を同方向に搬送することと、それぞれを別方向に搬送することを容易に切り替えられるようにするためには、前記可動台の振動軌跡を異なる振動軌跡に切り替える振動切替手段を備えており、当該振動切替手段が前記各加振手段による周期的加振力の位相差であって摩擦係数が異なる物品が異なる方向に搬送される位相差のデータと、摩擦係数が異なる物品が同じ方向に搬送される位相差のデータを内部に保存しており、外部からの信号入力に応じてこれらの位相差を切り替えるように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した本発明によれば、簡単な構成でありながら、同時に複数の物品の分別を行い、それぞれの物品を任意の方向に搬送させることができるとともに、多様な大きさ・形状の物品にも対応することができる物品分別搬送装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る物品分別搬送装置のシステム構成図。
【図2】同物品分別搬送装置の機械装置部の斜視図。
【図3】同物品分別搬送装置の機械装置部の側面図。
【図4】同物品分別搬送装置の機械装置部のK方向への動作を示す側面図。
【図5】同物品分別搬送装置のバネ部材の断面を示す図3のA−A断面矢視図。
【図6】同物品分別搬送装置の動作原理を示す模式図。
【図7】同物品分別搬送装置における各方向への周期的加振力間の位相差と物品の搬送速度との関係を示す図。
【図8】同物品分別搬送装置における水平方向への周期的加振力の振幅と物品の搬送速度との関係を示す図。
【図9】同物品分別搬送装置における搬送路を例示した上面図。
【図10】図1とは別の実施形態に係る物品分別搬送装置の機械装置部の斜視図。
【図11】図1および図10とは別の実施形態に係る物品分別搬送装置の機械装置部の斜視図。
【図12】図1、図10および図11とは別の実施形態に係る物品分別搬送装置の機械装置部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
この実施形態の物品分別搬送装置1は、図1に示すように、大きくは機械装置部2と制御システム部3とから構成される。この制御システム部3は、後述するように機械装置部2に組み込まれた圧電素子71、72の制御を行うことで、機械装置部2にK、Yの各方向の周期的加振力を与えて振動を生じさせるように構成している。
【0016】
ここで、K方向とは、圧電素子71の弾性支持部材52への貼り付け面に対する直交方向をいい、Y方向とは紙面垂直方向をいうものとする。さらに、後述のX、Z方向についても、図中左下に示した座標軸に示したとおりに定義することとする。そのため、K方向とは、X方向、Z方向成分を有するものであって、XZ平面と平行になるものといえる。以下、この座標軸に沿って説明を進めていく。
【0017】
機械装置部2は、図2および図3に示すように、大きくは床面に固定した基体4と、基体4に対して振動することで上に載せた物品9を分別しつつ搬送する可動台6と、可動台6を基体4に対して弾性的に支持する弾性支持手段5とから構成している。基体4の下に、図示しない防振ゴム等のバネ定数の小さい弾性体を取り付ければ、設置する床に対する反力を低減させることができて好適である。
【0018】
基体4は底面41aがX方向に長辺を向けた長方形であり、上面41bは底面41aと同形状でありながらX方向に位置がずれた形状としている。そのため、前面41c、後面41dは底面41aおよび上面41bに対して傾いている。
【0019】
そして、これら前面41cおよび後面41dのそれぞれに、弾性支持手段5を構成する棒状バネであるバネ部材52が2本ずつ取り付けられている。このバネ部材52は、基体4の前面41cまたは後面41dに、それぞれ平板状に形成された下側取付部52bで固定しており、当該取付部52bより、K方向およびY方向に垂直な、図中左上の方向に向かって延出し、平板状に形成された上側取付部52aで可動台6の下部に設けられた支持ブロック62と連結している。バネ部材52のうち、上側取付部52aおよび下側取付部52bの間となる中間部52cは断面を四角状に形成してある。
【0020】
可動台6は、水平に配置された平板状の形態を基本とし、搬送面である上面61には対応する製造ラインおよび物品9に応じて適宜、搬送路63aを形成する。図2においては、例としてY字型に分岐する搬送ラインを形成した場合を記載してある。前述したように可動台6の下側に支持ブロック62を固定して設けており、当該支持ブロック62において4本のバネ部材52と連結してある。
【0021】
このように構成しているため、4本のバネ部材52はあたかも平行リンク機構のように働き、可動台6は水平状態を維持したまま各方向に移動を行うことができる。
【0022】
そして、この可動台6をX、Y、Zの各方向に振動させるための駆動部として、以下のように圧電素子71、72を設けている。
【0023】
まず、K方向の振動を付与する第1の加振手段として、バネ部材52の中間部52cの長手方向中央以下の側面でX軸に直交する面に、直方体状の第1圧電素子71を貼りつけてある。また、Y方向の振動を付与する第2の加振手段としてとして、バネ部材52の中間部52cの長手方向中央以下の側面でY軸に直交する面に、直方体状の第2圧電素子72を貼りつけてある。これらの圧電素子71、72は電圧を付与することにより全長に伸びを生じさせることができるため、図4に例として示したように、バネ部材52をたわませ、可動台6にK方向あるいはY方向の変位を生じさせることが可能となっている。
【0024】
本実施形態においては、図5(a)に示すように、それぞれのバネ部材52に対して第1圧電素子71a、71bと第2圧電素子72a、72bとをそれぞれ対向する面に一対ずつ設けたバイモルフ型として構成した。本実施形態のように圧電素子の伸びを利用してバネ部材にたわみを生じさせようとする場合、対向面に設けた圧電素子の片方を伸び側に設定するときには他方を縮み側に設定する必要があるため、片方を伸び側とした際に、他方が縮み側になるように電圧印加及び貼り付け方向を設定してある。以下、圧電素子に対して付与する電圧に関しては、単純にX方向制御電圧、Y方向制御電圧として説明を行い、X方向およびY方向に正の制御電圧を付与するということは、それぞれ可動台6をX、Yの正方向に移動させる向きにバネ部材52に曲げを生じさせるように、第1圧電素子71、第2圧電素子72を伸び縮みさせる電圧を付与することを意味するものする。
【0025】
また、バネ部材52は変形を行う場合、図4に示すように中間部52cの長手方向中央を境に、一つの面内の上下で伸び側と縮み側が逆転する。よって、第1圧電素子71、第2圧電素子72を長手方向中央付近を超えて広い範囲に貼りつけることは、却って変形を阻害することになり好ましくない。そのため、本実施形態のように長手方向中央付近より片端部側に寄せた位置に貼りつけることが効率的である。
【0026】
このようにして構成した機械装置部2に対して制御システム部3は、第1圧電素子71および第2圧電素子72に各々正弦波状の制御電圧を付与することによって、K、Yの各方向の振動を発生させるための周期的加振力を生じさせる。
【0027】
そのため、制御システム部3は、図1に示すように、正弦電圧を生じさせる発振機34を備えており、この正弦電圧をアンプ35により増幅した上で、各圧電素子71、72に出力する。さらに、上記制御システム部3はK、Yの各方向の制御電圧を詳細に調整するための振動制御手段31を有している。なお、発振機34により生じさせる振動の周波数は、K、Y方向のいずれかの振動系と共振する周波数とすることで、振動を増幅して省電力化を図るようにしてある。なお、双方の振動系の振動が干渉することを避けるためには、各方向の固有振動数を離してもよい。この時、各方向の固有振動数は例えば−10%〜+10%程度離すようにする。
【0028】
振動制御手段31は大きくは、K、Yの各方向の制御電圧の振幅を調整する振幅調整回路31aと、それぞれの位相差を調整するための位相調整回路31bとから構成してある。本実施形態では、K、Yの各制御電圧にそれぞれ対応した振幅調整回路31aを有するとともに、K方向の制御電圧の位相を基準として、これと所定の位相差となるように制御電圧の位相を調整する位相調整回路31bをYの制御電圧について設けるように構成している。
【0029】
そして、制御システム部3は、搬送する物品9に応じた搬送方向および搬送速度が得られるように、各方向の周期的加振力を付与する圧電素子への制御電圧の振幅および位相を切り替える振動切替手段32を有している。当該振動切替手段32は図示しない外部からの信号によって適宜物品9の搬送方向を所定の方向に変えるべく、その方向に対応する各圧電素子71、72の制御電圧の振幅および位相の具体的制御値を決定して、当該制御値に調整するように振幅調整回路31a、位相調整回路31bに命令を与える。
【0030】
上記のように構成した物品分別搬送装置1は、具体的には次のような原理に基づいて物品9に対して作用する。説明を簡単にするため上述したK方向の振動成分は、X方向、Z方向の振動に分解して考えることとする。
【0031】
ここで、本物品分別搬送装置1を図6の模式図に示すような簡略化したモデルで考え、可動台6が基体4に対してX、Y、Zの各方向に弾性体54、55、56により弾性的に支持するとともに、各方向の加振手段74、75、76を設けている場合を想定する。このように構成することで、X、Y、Zの三方向に設けた加振手段74、75、76によって可動台6を三方向に動作させることが可能とされている。図6の模式図における弾性体54、55、56は、図1におけるバネ部材52に該当するとともに、図6における加振手段74、75、76はそれぞれ圧電素子71、72に該当する。
【0032】
図6に示すモデルの可動台6に対して、Z方向にZ=Z0×sinωtで表される周期的な振動変位を与える。ここで、Z0はZ方向の振幅を、ωは角周波数を、tは時間を示す。さらに、X、Y方向にもそれぞれZ方向と同一周波数の振動を、X=X0×sin(wt+φx)、Y=Y0×sin(wt+φy)の式のように与えることとする。ここで、X0、Y0はそれぞれX方向、Yの振幅を、φx、φyはそれぞれX方向、Z方向の振動のZ方向の振動に対する位相差を示す。
【0033】
このように、X、Y、Zの各方向に正弦波状の周期的な振動変位を加えることにより、可動台6にはこれらが合成された、本発明で三次元の振動軌跡と称する鉛直平面および水平面に対して傾いた平面内の楕円の軌跡あるいは平面外の立体的な軌跡を有する振動を可動台に対して生じさせることができる。例えば、図6に示すように、Z方向の振動成分に対してφx、φyの位相差を持たせてX、Y方向の振動を生じさせたとき、二次元的にはXZ平面上で右側を上にした楕円軌道を有する振動が生じ、YZ平面上で右側を下にした楕円軌道を有する振動が生じる。そして、さらにこの2つを合成することで、図中右下に示すように三次元の振動軌跡たる三次元空間上での楕円軌道が生じる。
【0034】
そして、各方向の振動変位の振幅および位相を変えることにより、XZ平面、YZ平面内の二次元の楕円軌道の大きさや向きを変更することができ、対応して三次元空間上の楕円軌道の大きさや向きを自由に変更することができる。なお、このように各方向への周期的な振動変位を付与するために、制御上は各方向への周期的加振力を付与することで対応を行っている。
【0035】
以上のように、可動台6が楕円軌道を描きつつ振動することによって、可動台6の上に載せられた物品9は移動を行う。そして、この移動のうちX方向への移動速度成分は上記XZ平面内の楕円軌道によって制御でき、Y方向への移動速度成分は上記YZ平面内の楕円軌道によって制御できる。すなわち、Z方向への振動成分を基準としてX方向、Y方向のそれぞれの振動の振幅と位相差を変化させることで、X、Y方向への移動速度成分を変化させ、任意の方向に搬送させることが可能となる。
【0036】
具体的には各方向への移動速度成分の変更は次のようにして行う。
【0037】
発明者らの知見によれば、図6を参照しつつ図7を用いて説明すると、位相差φx(φy)によって物品9の移動速度Vx(Yy)は正弦波に類似したカーブを描くように変化するとともに、物品9と可動台6との間の摩擦係数によっても変化する。すなわち、2種類の物品9であるW1、W2と可動台6との間の摩擦係数をそれぞれμ1、μ2としてμ1<μ2の関係があるとき、W2の時の移動速度のグラフは、W1の時の移動速度のカーブを位相差が正となる方向にずらした形状となる。そのため、楕円振動を行う可動台6の上に同時に摩擦係数の異なる物品9を置いた場合には、移動速度及び移動方向が異なることになる。
【0038】
具体的には、図7に示す位相差φ1にφxを設定したとき、W1のX方向移動速度は0になり、W2は負の値を取る。そしてφ1〜φ2の間に位相差を設定しているときには、W1は正の方向、W2は負の方向と互いに逆方向に進む。位相差φ2ではW2の速度が0になり、W1は正の方向の速度となる。さらにφ2〜φ4の間ではW1、W2ともに正の方向に進むが、そのうちφ3では同じ速度になり、その前後でW1とW2の速度の大きさが逆転する。また、位相差をφ4とするとW1は速度が0になり、W2は正の方向に移動する。位相差φ4〜φ5の範囲ではW1は負の方向に進み、W2は正の方向に進む。さらに、φ5ではW2の速度が0になり、W1は負の方向に進む。また、φ5〜πの範囲では双方とも負の方向に進むが、その中でもφ5の時に同じ速度となり、その前後で速度が逆転する。なお、こうした関係はY方向の移動速度Vyに対してもあてはまる。
【0039】
また、発明者らの知見によれば、図6を参照しつつ図8を用いて説明すると、位相差φx(φy)と物品9の移動速度Vx(Yy)との関係は、振幅X0(Y0)を変えることによっても変化する。すなわち、位相差φx(φy)に対する物品9の移動速度Vx(Yy)である正弦波類似のカーブは、概ね振動変位の振幅X0(Y0)に比例して変化する。このことから、物品9の移動速度Vx(Yy)を2倍にしたい場合には、概ねX(Y)方向の振動変位の振幅を2倍にすればよい。そのためには、それに応じた加振力を与えるべく、制御電圧の振幅を変化させればよい。
【0040】
このような一方向に対する振動制御を、直交するX、Y方向に同時に付与することによって、摩擦係数の異なる複数の種類の物品9を可動台6上で分別し異なる方向に搬送させることができる。なお、上記のように摩擦係数の異なる物品9を異なる方向に搬送させるように制御することによって、厳密には摩擦係数が同じものであっても表面形状が異なるなど、見かけ上摩擦係数が異なっているようにとらえられるものについても搬送方向を異ならせることもできる。例えば、同一の物品の表面と裏面であっても、面の凹凸が異なり可動台6との接触面積が大きく異なる場合が該当し、このような場合でも適宜分別・搬送を行うことができる。
【0041】
しかしながら、複数の種類の物品9を搬送しつつ、二方向に分別し、搬送していくことを目的とした場合、上記のような3つの方向への加振手段をそれぞれ別に有することは必須とはいえない。なぜならば、図7から分かるように、X方向に対しては一方にのみ搬送を行い逆方向に進ませることを必要としないのであれば、Z方向に対する位相差を0に、すなわち同位相で駆動させても良い。よって、本実施形態においては、Z方向とX方向の振動成分を有するK方向の加振手段71として一個に構成することができる。
【0042】
これに対し、Y方向には物品9の種類に応じて分別する機能が必要となるため、Z方向の周期的加振力に対する位相差、すなわちK方向の周期的加振力に対する位相差を物品の摩擦係数に応じて切り替えることができるように構成している。
【0043】
このように構成した本物品分別搬送装置1によって、図9(a)〜(c)に例示するような、物品9の搬送および分別が可能となる。
【0044】
図9(a)は、可動台6の上に、広い搬送路63aを形成し、搬送方向に対する左右に平行な壁面63b、63cを形成した例である。壁面63b、63cは分別する物品の移動方向を規制するガイドとして作用し、それぞれの物品9a、9bを決まった方向に搬送することができる。図中における可動台6の右側には、物品9a、9bが混在して入れられたコンテナ95が接続されており、当該コンテナ95から可動台6上に物品9a、9bを投入する場合を示している。さらに、図1における振動切替手段32からの命令によって、振動制御手段31によりY方向への振動の位相差を図7に示すφ1〜φ2またはφ4〜φ5に設定されており、図9(a)の物品9a、9bは図中の左方向に搬送されつつも、進行方向に対して左右の壁面63c、63bに向かって分別されていき、やがてはそれぞれ壁面63c、63bに接触しながら搬送されていく。このように簡単に搬送路および壁面を形成しただけでも分別を容易に行ったうえで、各々を決まった方向に搬送していくことができるため、様々な大きさの物品に対応できる。なお、このように特定の物品の分別搬送を行うだけであれば、振動切替手段32は必須ではなく、振動制御手段31にあらかじめ決まった位相差を設定しておくだけで足りる。
【0045】
図9(b)は可動台6の上に、図中上側の軌道64、下側の軌道65に分岐するY字型の搬送路63aを形成したものであり、この搬送路63aに従い2種の物品9a、9bを右側から左側に向けて搬送していく。この場合においても、図1における振動切替手段32において、Y方向への振動の位相差を図7に示すφ1〜φ2またはφ4〜φ5に切り替えることにより、図9(a)の物品9a、9bは互いに逆方向のY方向移動速度成分を受けて、搬送方向に対する左右の壁面63b、63cに接触しながら搬送される。そして、Y字の分岐点より、それぞれ軌道64、65に進入することで搬送先を異ならせることができる。
【0046】
また、図9(c)には可動台6の上に、直線状の搬送路63aを形成し、その延長上の軌道64と、搬送路63aに対して側方に分岐する軌道65a、65b、65cを有するものである。このように形成することで、通常は2種の物品を9a、9bを同じ方向に搬送しつつ、特定のタイミングでY方向の振動成分も加えることで、特定の物品9bを分岐した軌道65a、65b、65cに取り出すことができる。そのために、通常は物品9a、9bを双方とも図の左方向に搬送しておき、特定の物品9bが搬送するべきいずれかのライン65a、65b、65cに到達した際に、図1における振動切替手段32によって振動を切り替えて、物品9bを分岐した任意の軌道65a、65b、65cより取り出すこともできる。こうした物品9の搬送途中における搬送方向の変更を容易にするため、図1における振動切替手段は、複数の物品9を同一方向に搬送するためのZ(K)方向振動に対するY方向振動の位相差データと、複数の物品9をY方向に分別するためのZ(K)方向振動に対するY方向振動の位相差データとをあらかじめ内部に保存している。そして、図示しない外部からの信号の入力を合図にして双方の位相差を切り替えることにより、同一方向に進ませていた物品9の分別搬送することや、分別搬送していた物品9を同一方向に進ませるように切り替えることが可能である。
【0047】
以上のように本実施形態に係る物品分別搬送装置1は、基体4上に弾性支持手段5を介して設けられた可動台6を具備し、当該可動台6が振動することで可動台6上に載せられた物品9を搬送する物品分別搬送装置1であって、前記可動台6に対して鉛直方向より傾斜した方向に周期的加振力を付与する第1の加振手段71と、前記可動台6に対して前記第1の加振手段6による周期的加振力71と交差する方向に周期的加振力を付与する第2の加振手段72と、前記各加振手段71、72による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ前記可動台6に楕円の振動軌跡を生じさせるように前記各加振手段71、72を制御する振動制御手段31とを備え、前記振動制御手段31により摩擦係数が異なる物品9が異なる方向に搬送されるように前記可動台6の振動軌跡を設定することによって、前記可動台6上で前記物品9を分別搬送するように構成したものである。
【0048】
このように構成しているため、複数の物品9を一方向に搬送しつつ、摩擦係数の相違によって搬送方向を異ならせることができるため、カメラや画像処理機などの検査機器および分別のための特殊な機器を用いなくても、これらを自動的に分別することができる。さらに、搬送面61を平面に構成できるため、一個の機器によって大型のものから小型のものまで対応が可能となる。
【0049】
さらに、前記可動台6上に、分別された物品を所定の軌道に沿って移動させるガイド63b、63cを設けるように構成しているため、複数の物品を分別しつつ、それぞれを決まった方向に搬送することができるため、生産ライン等の搬送ラインの中で好適に用いることができる。
【0050】
さらに、前記可動台6の振動軌跡を異なる振動軌跡に切り替える振動切替手段32を備えており、当該振動切替手段32が前記各加振手段71、72による周期的加振力の位相差であって摩擦係数が異なる物品9が異なる方向に搬送される位相差のデータと、摩擦係数が異なる物品9が同じ方向に搬送される位相差のデータを内部に保存しており、外部からの信号入力に応じてこれらの位相差を切り替えるように構成しているため、複数の物品9を同じ方向に搬送することと、二方向に分別してそれぞれ別の方向に向かって搬送させていくことを容易に切り替えることが可能となる。
【0051】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0052】
例えば、上述の実施形態においては、各方向への加振手段71、72をそれぞれK、Yの互いに直交する方向に加振力を与えるように構成したが、可動台6にこれらを合成した振動軌跡を生成・変更できるかぎり必ずしも直交させることは必要でなく、単にそれぞれの方向が交差しているだけでもよい。
【0053】
また、上述の実施形態においては、バネ部材52の側面に貼りつける第1圧電素子71と第2圧電素子72とは裏表に貼りつけた2個を一組としたバイモルフ型としていたが、図5(b)のようにそれぞれを1個ずつとしたユニモルフ型とすることも可能である。
【0054】
また、本実施形態においては、図2および図3に示すように、第1圧電素子71および第2圧電素子72はバネ部材52の下側半分に貼りつけてあるが、これを上側半分に貼りつける構成とすることも可能であるし、上側半分と下側半分のそれぞれに設けるように構成することも可能である。
【0055】
また、上述の実施形態では、弾性支持手段5を4本のバネ部材52より構成していたが、これは可動台6の水平状態を維持しやすくするためである。そのため、Y方向の振動振幅が小さく、物品9の重量が小さい場合には図10に示すように搬送方向に対して前後2本のバネ部材52で構成することも可能である。この場合には可動台6の傾きはほとんど無視できる程度にしか生じない。
【0056】
また、上述の実施形態の棒状のバネ部材52に替えて、板バネを用いた構成を図11に示す。この形態においては、K方向バネ部材として、K方向に垂直になるように配置した一対の板バネ151の一端をそれぞれ基体4に対して設けるとともに、他端によって、中間台161を支持する。中間台161に対しては、さらに、Y方向バネ部材として、Y方向に垂直になるように配置した一対の板バネ152、152を2組設けており、これらの板バネ152、152によって一対のブロック162、162を支持するとともに、当該ブロック162、162によって可動台6を支持する構成としている。加えて、K方向バネ部材である板バネ151には圧電素子171が貼り付けられ、Y方向バネ部材である板バネ152には圧電素子172が貼り付けられており、これらの圧電素子171、172に対して上述の実施形態と同様、制御電圧を付与することでK方向、Y方向に振動を与えることができるようになっている。こうした構成であっても、上記と同様に制御することで同じ効果を得ることが可能であるとともに、K方向、Y方向の板バネ151、152を各々独立して管理することができるため保守作業を容易に行うことができるようになる。さらには、こうした板バネは複数のものをつなぎ合わせて使用する構成とすることも可能でありさらに保守が容易となる。また、平行に配置する板バネを組み合わせることで、可動台6に対してねじり方向の変位が生じることを防止することができ、可動台6の傾きを保ったまま動作させることができる。
【0057】
また、上記とは別の実施形態として構成した例を図12に示す。これは、図11に示したものと同様の板バネ構成を採るとともに、K方向、Y方向の加振手段として圧電素子に替えて電磁石173、174を用いたものである。この場合には、中間台161の下面に金属プレート163を設けるとともに、可動台6の下面に金属プレート164を設けてある。可動台6の下面の金属プレート164は、中間台161に設けられた孔部161aを挿通するようにして下方に張り出しているため中間台161とは干渉することなく独立してY方向に動作可能になっている。このように設けられたプレート163、164と対向させるように電磁石173、174が基体4上に設けられており、これらに電流を与えることでそれぞれK方向またはY方向の変位を可動台6に対して生じさせることができるようになっている。こうした構成であっても、それぞれの方向の電流値を制御することで、上記と同じ効果を得ることが可能であるとともに、K方向、Y方向の動作を圧電素子によって行う場合に対して、容易に大きな出力を得ることができる。
【0058】
さらに、上述した実施形態では、個々の物品9の摩擦係数に着目して、摩擦係数を基準に物品9の分別・搬送を行うように構成したが、前述の通り物品9の表面形状によっては局所的な摩擦係数は同一であっても見かけ上は摩擦係数が異なるものと扱っても支障がない場合もある。また、物品9の表面形状を大きく変えることにより可動台6の上で転動や揺動を行うようになり、摩擦による推力の伝達を効果的に行うことができなくなる場合もある。さらには、可動台6の表面の硬さと、物品9の重量及び硬さとの関係から生じる幾何学的な形状変化も物品9に与える推力に影響を与える。そのため、通常の意味での摩擦係数に加えて、物品9および可動台6の表面形状や表面粗度、さらには重量や硬さによる形状変化等の影響を含めて、現実に物品9に対して水平方向に作用する推力を広い意味での摩擦力として捉え、当該広い意味での摩擦力を基準として各方向の振動成分の制御を行い、物品9の分別・搬送を行わせるように構成することも可能である。こうした考えを採る限りにおいては、物品9の分別・搬送を行うために基準として用いる摩擦係数の中に、上記広い意味での摩擦力の考えを取り込ませることも可能である。すなわち、上記広い意味での摩擦力を物品9に対する可動台6の垂直抗力で除した係数を広い意味での摩擦係数として、これを一般の摩擦係数と置き換えて基準として用いることでより多様な物品9の分別・搬送ができるようになるのであり、本発明における意図はこうした内容をも含むものである。また、上述の実施形態では摩擦係数を基準として制御を行うことで個々の物品9に対する推力を変化させて物品9の分別・搬送を行わせているが、上述のように広い意味での摩擦力を変化させることによって推力を変化させることが可能である限り、摩擦係数と置き換えて異なるパラメータを基準として用いても同様の作用効果を生じる物品分別搬送装置として構成することもできるのであり、こうした構成についても本発明の均等の範囲に含まれる。
【0059】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
4…基体
5…弾性支持手段
6…可動台
9…物品
31…振動制御手段
32…振動切替手段
34…発振機
52…バネ部材
71…第1圧電素子(第1の加振手段)
72…第2圧電素子(第2の加振手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動により複数の物品を搬送しつつ分別することが可能な物品分別搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、振動を利用したリニアフィーダなどの物品搬送装置が多数知られており、こうした技術を展開した特許文献1に係るような物品搬送装置が開示されている。
【0003】
このものは物品搬送用の軌道を有する可動体に対して、垂直および水平方向の同一周波数の振動を加えることで楕円振動を生じさせ、摩擦係数に応じてそれぞれの方向の振動の位相差を設定することで、搬送方向を異ならせることを可能に構成したものである。これを用いることにより、摩擦係数の異なる2種の物品を同時に搬送面上に載せ、摩擦係数に応じた所定の位相差を有する振動を付与することで、それぞれが反対方向に搬送されるようにして分別することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−255351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の先行技術に係る物品搬送装置では、2方向の振動成分を合成して楕円の振動軌跡を生成し、これを利用して物品の分別を行っているものの、振動軌跡の生じる方向が限定されているために、搬送する物品の移動方向についての自由度が少ない。そのため、当該装置を製造ラインに組み込んで用いた場合には、搬送経路の方向についての設計自由度が低くなる。
【0006】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には物品の分別を行うと同時に、分別された物品をそれぞれ任意の方向に搬送していくことができ、製造ラインの中で容易に用いることのできる物品分別搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明の物品分別搬送装置は、基体上に弾性支持手段を介して設けられた可動台を具備し、当該可動台が振動することで可動台上に載せられた物品を搬送する物品分別搬送装置であって、前記可動台に対して鉛直方向より傾斜した方向に周期的加振力を付与する第1の加振手段と、前記可動台に対して前記第1の加振手段による周期的加振力と交差する方向に周期的加振力を付与する第2の加振手段と、前記各加振手段による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ前記可動台に楕円の振動軌跡を生じさせるように前記各加振手段を制御する振動制御手段とを備え、前記振動制御手段により摩擦係数が異なる物品が異なる方向に搬送されるように前記可動台の振動軌跡を設定することによって、前記可動台上で前記物品を分別搬送することを特徴とする。
【0009】
このように構成すると、複数の物品を一方向に搬送することができるとともに、摩擦係数の相違によって搬送方向を異ならせることができるため、カメラや画像処理機などの検査機器および分別のための特殊な機器を用いなくても、これらを自動的に分別することができる。さらに、搬送面を平面に構成できるため、一個の機器によって大型のものから小型のものまで対応が可能となる。
【0010】
さらに、物品の移動する方向を安定させてそれぞれを決まった方向に搬送できるようにするために、前記可動台上に、分別された物品を所定の軌道に沿って移動させるガイドを設けるようにして構成することが好適である。
【0011】
また、複数の物品を同方向に搬送することと、それぞれを別方向に搬送することを容易に切り替えられるようにするためには、前記可動台の振動軌跡を異なる振動軌跡に切り替える振動切替手段を備えており、当該振動切替手段が前記各加振手段による周期的加振力の位相差であって摩擦係数が異なる物品が異なる方向に搬送される位相差のデータと、摩擦係数が異なる物品が同じ方向に搬送される位相差のデータを内部に保存しており、外部からの信号入力に応じてこれらの位相差を切り替えるように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した本発明によれば、簡単な構成でありながら、同時に複数の物品の分別を行い、それぞれの物品を任意の方向に搬送させることができるとともに、多様な大きさ・形状の物品にも対応することができる物品分別搬送装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る物品分別搬送装置のシステム構成図。
【図2】同物品分別搬送装置の機械装置部の斜視図。
【図3】同物品分別搬送装置の機械装置部の側面図。
【図4】同物品分別搬送装置の機械装置部のK方向への動作を示す側面図。
【図5】同物品分別搬送装置のバネ部材の断面を示す図3のA−A断面矢視図。
【図6】同物品分別搬送装置の動作原理を示す模式図。
【図7】同物品分別搬送装置における各方向への周期的加振力間の位相差と物品の搬送速度との関係を示す図。
【図8】同物品分別搬送装置における水平方向への周期的加振力の振幅と物品の搬送速度との関係を示す図。
【図9】同物品分別搬送装置における搬送路を例示した上面図。
【図10】図1とは別の実施形態に係る物品分別搬送装置の機械装置部の斜視図。
【図11】図1および図10とは別の実施形態に係る物品分別搬送装置の機械装置部の斜視図。
【図12】図1、図10および図11とは別の実施形態に係る物品分別搬送装置の機械装置部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
この実施形態の物品分別搬送装置1は、図1に示すように、大きくは機械装置部2と制御システム部3とから構成される。この制御システム部3は、後述するように機械装置部2に組み込まれた圧電素子71、72の制御を行うことで、機械装置部2にK、Yの各方向の周期的加振力を与えて振動を生じさせるように構成している。
【0016】
ここで、K方向とは、圧電素子71の弾性支持部材52への貼り付け面に対する直交方向をいい、Y方向とは紙面垂直方向をいうものとする。さらに、後述のX、Z方向についても、図中左下に示した座標軸に示したとおりに定義することとする。そのため、K方向とは、X方向、Z方向成分を有するものであって、XZ平面と平行になるものといえる。以下、この座標軸に沿って説明を進めていく。
【0017】
機械装置部2は、図2および図3に示すように、大きくは床面に固定した基体4と、基体4に対して振動することで上に載せた物品9を分別しつつ搬送する可動台6と、可動台6を基体4に対して弾性的に支持する弾性支持手段5とから構成している。基体4の下に、図示しない防振ゴム等のバネ定数の小さい弾性体を取り付ければ、設置する床に対する反力を低減させることができて好適である。
【0018】
基体4は底面41aがX方向に長辺を向けた長方形であり、上面41bは底面41aと同形状でありながらX方向に位置がずれた形状としている。そのため、前面41c、後面41dは底面41aおよび上面41bに対して傾いている。
【0019】
そして、これら前面41cおよび後面41dのそれぞれに、弾性支持手段5を構成する棒状バネであるバネ部材52が2本ずつ取り付けられている。このバネ部材52は、基体4の前面41cまたは後面41dに、それぞれ平板状に形成された下側取付部52bで固定しており、当該取付部52bより、K方向およびY方向に垂直な、図中左上の方向に向かって延出し、平板状に形成された上側取付部52aで可動台6の下部に設けられた支持ブロック62と連結している。バネ部材52のうち、上側取付部52aおよび下側取付部52bの間となる中間部52cは断面を四角状に形成してある。
【0020】
可動台6は、水平に配置された平板状の形態を基本とし、搬送面である上面61には対応する製造ラインおよび物品9に応じて適宜、搬送路63aを形成する。図2においては、例としてY字型に分岐する搬送ラインを形成した場合を記載してある。前述したように可動台6の下側に支持ブロック62を固定して設けており、当該支持ブロック62において4本のバネ部材52と連結してある。
【0021】
このように構成しているため、4本のバネ部材52はあたかも平行リンク機構のように働き、可動台6は水平状態を維持したまま各方向に移動を行うことができる。
【0022】
そして、この可動台6をX、Y、Zの各方向に振動させるための駆動部として、以下のように圧電素子71、72を設けている。
【0023】
まず、K方向の振動を付与する第1の加振手段として、バネ部材52の中間部52cの長手方向中央以下の側面でX軸に直交する面に、直方体状の第1圧電素子71を貼りつけてある。また、Y方向の振動を付与する第2の加振手段としてとして、バネ部材52の中間部52cの長手方向中央以下の側面でY軸に直交する面に、直方体状の第2圧電素子72を貼りつけてある。これらの圧電素子71、72は電圧を付与することにより全長に伸びを生じさせることができるため、図4に例として示したように、バネ部材52をたわませ、可動台6にK方向あるいはY方向の変位を生じさせることが可能となっている。
【0024】
本実施形態においては、図5(a)に示すように、それぞれのバネ部材52に対して第1圧電素子71a、71bと第2圧電素子72a、72bとをそれぞれ対向する面に一対ずつ設けたバイモルフ型として構成した。本実施形態のように圧電素子の伸びを利用してバネ部材にたわみを生じさせようとする場合、対向面に設けた圧電素子の片方を伸び側に設定するときには他方を縮み側に設定する必要があるため、片方を伸び側とした際に、他方が縮み側になるように電圧印加及び貼り付け方向を設定してある。以下、圧電素子に対して付与する電圧に関しては、単純にX方向制御電圧、Y方向制御電圧として説明を行い、X方向およびY方向に正の制御電圧を付与するということは、それぞれ可動台6をX、Yの正方向に移動させる向きにバネ部材52に曲げを生じさせるように、第1圧電素子71、第2圧電素子72を伸び縮みさせる電圧を付与することを意味するものする。
【0025】
また、バネ部材52は変形を行う場合、図4に示すように中間部52cの長手方向中央を境に、一つの面内の上下で伸び側と縮み側が逆転する。よって、第1圧電素子71、第2圧電素子72を長手方向中央付近を超えて広い範囲に貼りつけることは、却って変形を阻害することになり好ましくない。そのため、本実施形態のように長手方向中央付近より片端部側に寄せた位置に貼りつけることが効率的である。
【0026】
このようにして構成した機械装置部2に対して制御システム部3は、第1圧電素子71および第2圧電素子72に各々正弦波状の制御電圧を付与することによって、K、Yの各方向の振動を発生させるための周期的加振力を生じさせる。
【0027】
そのため、制御システム部3は、図1に示すように、正弦電圧を生じさせる発振機34を備えており、この正弦電圧をアンプ35により増幅した上で、各圧電素子71、72に出力する。さらに、上記制御システム部3はK、Yの各方向の制御電圧を詳細に調整するための振動制御手段31を有している。なお、発振機34により生じさせる振動の周波数は、K、Y方向のいずれかの振動系と共振する周波数とすることで、振動を増幅して省電力化を図るようにしてある。なお、双方の振動系の振動が干渉することを避けるためには、各方向の固有振動数を離してもよい。この時、各方向の固有振動数は例えば−10%〜+10%程度離すようにする。
【0028】
振動制御手段31は大きくは、K、Yの各方向の制御電圧の振幅を調整する振幅調整回路31aと、それぞれの位相差を調整するための位相調整回路31bとから構成してある。本実施形態では、K、Yの各制御電圧にそれぞれ対応した振幅調整回路31aを有するとともに、K方向の制御電圧の位相を基準として、これと所定の位相差となるように制御電圧の位相を調整する位相調整回路31bをYの制御電圧について設けるように構成している。
【0029】
そして、制御システム部3は、搬送する物品9に応じた搬送方向および搬送速度が得られるように、各方向の周期的加振力を付与する圧電素子への制御電圧の振幅および位相を切り替える振動切替手段32を有している。当該振動切替手段32は図示しない外部からの信号によって適宜物品9の搬送方向を所定の方向に変えるべく、その方向に対応する各圧電素子71、72の制御電圧の振幅および位相の具体的制御値を決定して、当該制御値に調整するように振幅調整回路31a、位相調整回路31bに命令を与える。
【0030】
上記のように構成した物品分別搬送装置1は、具体的には次のような原理に基づいて物品9に対して作用する。説明を簡単にするため上述したK方向の振動成分は、X方向、Z方向の振動に分解して考えることとする。
【0031】
ここで、本物品分別搬送装置1を図6の模式図に示すような簡略化したモデルで考え、可動台6が基体4に対してX、Y、Zの各方向に弾性体54、55、56により弾性的に支持するとともに、各方向の加振手段74、75、76を設けている場合を想定する。このように構成することで、X、Y、Zの三方向に設けた加振手段74、75、76によって可動台6を三方向に動作させることが可能とされている。図6の模式図における弾性体54、55、56は、図1におけるバネ部材52に該当するとともに、図6における加振手段74、75、76はそれぞれ圧電素子71、72に該当する。
【0032】
図6に示すモデルの可動台6に対して、Z方向にZ=Z0×sinωtで表される周期的な振動変位を与える。ここで、Z0はZ方向の振幅を、ωは角周波数を、tは時間を示す。さらに、X、Y方向にもそれぞれZ方向と同一周波数の振動を、X=X0×sin(wt+φx)、Y=Y0×sin(wt+φy)の式のように与えることとする。ここで、X0、Y0はそれぞれX方向、Yの振幅を、φx、φyはそれぞれX方向、Z方向の振動のZ方向の振動に対する位相差を示す。
【0033】
このように、X、Y、Zの各方向に正弦波状の周期的な振動変位を加えることにより、可動台6にはこれらが合成された、本発明で三次元の振動軌跡と称する鉛直平面および水平面に対して傾いた平面内の楕円の軌跡あるいは平面外の立体的な軌跡を有する振動を可動台に対して生じさせることができる。例えば、図6に示すように、Z方向の振動成分に対してφx、φyの位相差を持たせてX、Y方向の振動を生じさせたとき、二次元的にはXZ平面上で右側を上にした楕円軌道を有する振動が生じ、YZ平面上で右側を下にした楕円軌道を有する振動が生じる。そして、さらにこの2つを合成することで、図中右下に示すように三次元の振動軌跡たる三次元空間上での楕円軌道が生じる。
【0034】
そして、各方向の振動変位の振幅および位相を変えることにより、XZ平面、YZ平面内の二次元の楕円軌道の大きさや向きを変更することができ、対応して三次元空間上の楕円軌道の大きさや向きを自由に変更することができる。なお、このように各方向への周期的な振動変位を付与するために、制御上は各方向への周期的加振力を付与することで対応を行っている。
【0035】
以上のように、可動台6が楕円軌道を描きつつ振動することによって、可動台6の上に載せられた物品9は移動を行う。そして、この移動のうちX方向への移動速度成分は上記XZ平面内の楕円軌道によって制御でき、Y方向への移動速度成分は上記YZ平面内の楕円軌道によって制御できる。すなわち、Z方向への振動成分を基準としてX方向、Y方向のそれぞれの振動の振幅と位相差を変化させることで、X、Y方向への移動速度成分を変化させ、任意の方向に搬送させることが可能となる。
【0036】
具体的には各方向への移動速度成分の変更は次のようにして行う。
【0037】
発明者らの知見によれば、図6を参照しつつ図7を用いて説明すると、位相差φx(φy)によって物品9の移動速度Vx(Yy)は正弦波に類似したカーブを描くように変化するとともに、物品9と可動台6との間の摩擦係数によっても変化する。すなわち、2種類の物品9であるW1、W2と可動台6との間の摩擦係数をそれぞれμ1、μ2としてμ1<μ2の関係があるとき、W2の時の移動速度のグラフは、W1の時の移動速度のカーブを位相差が正となる方向にずらした形状となる。そのため、楕円振動を行う可動台6の上に同時に摩擦係数の異なる物品9を置いた場合には、移動速度及び移動方向が異なることになる。
【0038】
具体的には、図7に示す位相差φ1にφxを設定したとき、W1のX方向移動速度は0になり、W2は負の値を取る。そしてφ1〜φ2の間に位相差を設定しているときには、W1は正の方向、W2は負の方向と互いに逆方向に進む。位相差φ2ではW2の速度が0になり、W1は正の方向の速度となる。さらにφ2〜φ4の間ではW1、W2ともに正の方向に進むが、そのうちφ3では同じ速度になり、その前後でW1とW2の速度の大きさが逆転する。また、位相差をφ4とするとW1は速度が0になり、W2は正の方向に移動する。位相差φ4〜φ5の範囲ではW1は負の方向に進み、W2は正の方向に進む。さらに、φ5ではW2の速度が0になり、W1は負の方向に進む。また、φ5〜πの範囲では双方とも負の方向に進むが、その中でもφ5の時に同じ速度となり、その前後で速度が逆転する。なお、こうした関係はY方向の移動速度Vyに対してもあてはまる。
【0039】
また、発明者らの知見によれば、図6を参照しつつ図8を用いて説明すると、位相差φx(φy)と物品9の移動速度Vx(Yy)との関係は、振幅X0(Y0)を変えることによっても変化する。すなわち、位相差φx(φy)に対する物品9の移動速度Vx(Yy)である正弦波類似のカーブは、概ね振動変位の振幅X0(Y0)に比例して変化する。このことから、物品9の移動速度Vx(Yy)を2倍にしたい場合には、概ねX(Y)方向の振動変位の振幅を2倍にすればよい。そのためには、それに応じた加振力を与えるべく、制御電圧の振幅を変化させればよい。
【0040】
このような一方向に対する振動制御を、直交するX、Y方向に同時に付与することによって、摩擦係数の異なる複数の種類の物品9を可動台6上で分別し異なる方向に搬送させることができる。なお、上記のように摩擦係数の異なる物品9を異なる方向に搬送させるように制御することによって、厳密には摩擦係数が同じものであっても表面形状が異なるなど、見かけ上摩擦係数が異なっているようにとらえられるものについても搬送方向を異ならせることもできる。例えば、同一の物品の表面と裏面であっても、面の凹凸が異なり可動台6との接触面積が大きく異なる場合が該当し、このような場合でも適宜分別・搬送を行うことができる。
【0041】
しかしながら、複数の種類の物品9を搬送しつつ、二方向に分別し、搬送していくことを目的とした場合、上記のような3つの方向への加振手段をそれぞれ別に有することは必須とはいえない。なぜならば、図7から分かるように、X方向に対しては一方にのみ搬送を行い逆方向に進ませることを必要としないのであれば、Z方向に対する位相差を0に、すなわち同位相で駆動させても良い。よって、本実施形態においては、Z方向とX方向の振動成分を有するK方向の加振手段71として一個に構成することができる。
【0042】
これに対し、Y方向には物品9の種類に応じて分別する機能が必要となるため、Z方向の周期的加振力に対する位相差、すなわちK方向の周期的加振力に対する位相差を物品の摩擦係数に応じて切り替えることができるように構成している。
【0043】
このように構成した本物品分別搬送装置1によって、図9(a)〜(c)に例示するような、物品9の搬送および分別が可能となる。
【0044】
図9(a)は、可動台6の上に、広い搬送路63aを形成し、搬送方向に対する左右に平行な壁面63b、63cを形成した例である。壁面63b、63cは分別する物品の移動方向を規制するガイドとして作用し、それぞれの物品9a、9bを決まった方向に搬送することができる。図中における可動台6の右側には、物品9a、9bが混在して入れられたコンテナ95が接続されており、当該コンテナ95から可動台6上に物品9a、9bを投入する場合を示している。さらに、図1における振動切替手段32からの命令によって、振動制御手段31によりY方向への振動の位相差を図7に示すφ1〜φ2またはφ4〜φ5に設定されており、図9(a)の物品9a、9bは図中の左方向に搬送されつつも、進行方向に対して左右の壁面63c、63bに向かって分別されていき、やがてはそれぞれ壁面63c、63bに接触しながら搬送されていく。このように簡単に搬送路および壁面を形成しただけでも分別を容易に行ったうえで、各々を決まった方向に搬送していくことができるため、様々な大きさの物品に対応できる。なお、このように特定の物品の分別搬送を行うだけであれば、振動切替手段32は必須ではなく、振動制御手段31にあらかじめ決まった位相差を設定しておくだけで足りる。
【0045】
図9(b)は可動台6の上に、図中上側の軌道64、下側の軌道65に分岐するY字型の搬送路63aを形成したものであり、この搬送路63aに従い2種の物品9a、9bを右側から左側に向けて搬送していく。この場合においても、図1における振動切替手段32において、Y方向への振動の位相差を図7に示すφ1〜φ2またはφ4〜φ5に切り替えることにより、図9(a)の物品9a、9bは互いに逆方向のY方向移動速度成分を受けて、搬送方向に対する左右の壁面63b、63cに接触しながら搬送される。そして、Y字の分岐点より、それぞれ軌道64、65に進入することで搬送先を異ならせることができる。
【0046】
また、図9(c)には可動台6の上に、直線状の搬送路63aを形成し、その延長上の軌道64と、搬送路63aに対して側方に分岐する軌道65a、65b、65cを有するものである。このように形成することで、通常は2種の物品を9a、9bを同じ方向に搬送しつつ、特定のタイミングでY方向の振動成分も加えることで、特定の物品9bを分岐した軌道65a、65b、65cに取り出すことができる。そのために、通常は物品9a、9bを双方とも図の左方向に搬送しておき、特定の物品9bが搬送するべきいずれかのライン65a、65b、65cに到達した際に、図1における振動切替手段32によって振動を切り替えて、物品9bを分岐した任意の軌道65a、65b、65cより取り出すこともできる。こうした物品9の搬送途中における搬送方向の変更を容易にするため、図1における振動切替手段は、複数の物品9を同一方向に搬送するためのZ(K)方向振動に対するY方向振動の位相差データと、複数の物品9をY方向に分別するためのZ(K)方向振動に対するY方向振動の位相差データとをあらかじめ内部に保存している。そして、図示しない外部からの信号の入力を合図にして双方の位相差を切り替えることにより、同一方向に進ませていた物品9の分別搬送することや、分別搬送していた物品9を同一方向に進ませるように切り替えることが可能である。
【0047】
以上のように本実施形態に係る物品分別搬送装置1は、基体4上に弾性支持手段5を介して設けられた可動台6を具備し、当該可動台6が振動することで可動台6上に載せられた物品9を搬送する物品分別搬送装置1であって、前記可動台6に対して鉛直方向より傾斜した方向に周期的加振力を付与する第1の加振手段71と、前記可動台6に対して前記第1の加振手段6による周期的加振力71と交差する方向に周期的加振力を付与する第2の加振手段72と、前記各加振手段71、72による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ前記可動台6に楕円の振動軌跡を生じさせるように前記各加振手段71、72を制御する振動制御手段31とを備え、前記振動制御手段31により摩擦係数が異なる物品9が異なる方向に搬送されるように前記可動台6の振動軌跡を設定することによって、前記可動台6上で前記物品9を分別搬送するように構成したものである。
【0048】
このように構成しているため、複数の物品9を一方向に搬送しつつ、摩擦係数の相違によって搬送方向を異ならせることができるため、カメラや画像処理機などの検査機器および分別のための特殊な機器を用いなくても、これらを自動的に分別することができる。さらに、搬送面61を平面に構成できるため、一個の機器によって大型のものから小型のものまで対応が可能となる。
【0049】
さらに、前記可動台6上に、分別された物品を所定の軌道に沿って移動させるガイド63b、63cを設けるように構成しているため、複数の物品を分別しつつ、それぞれを決まった方向に搬送することができるため、生産ライン等の搬送ラインの中で好適に用いることができる。
【0050】
さらに、前記可動台6の振動軌跡を異なる振動軌跡に切り替える振動切替手段32を備えており、当該振動切替手段32が前記各加振手段71、72による周期的加振力の位相差であって摩擦係数が異なる物品9が異なる方向に搬送される位相差のデータと、摩擦係数が異なる物品9が同じ方向に搬送される位相差のデータを内部に保存しており、外部からの信号入力に応じてこれらの位相差を切り替えるように構成しているため、複数の物品9を同じ方向に搬送することと、二方向に分別してそれぞれ別の方向に向かって搬送させていくことを容易に切り替えることが可能となる。
【0051】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0052】
例えば、上述の実施形態においては、各方向への加振手段71、72をそれぞれK、Yの互いに直交する方向に加振力を与えるように構成したが、可動台6にこれらを合成した振動軌跡を生成・変更できるかぎり必ずしも直交させることは必要でなく、単にそれぞれの方向が交差しているだけでもよい。
【0053】
また、上述の実施形態においては、バネ部材52の側面に貼りつける第1圧電素子71と第2圧電素子72とは裏表に貼りつけた2個を一組としたバイモルフ型としていたが、図5(b)のようにそれぞれを1個ずつとしたユニモルフ型とすることも可能である。
【0054】
また、本実施形態においては、図2および図3に示すように、第1圧電素子71および第2圧電素子72はバネ部材52の下側半分に貼りつけてあるが、これを上側半分に貼りつける構成とすることも可能であるし、上側半分と下側半分のそれぞれに設けるように構成することも可能である。
【0055】
また、上述の実施形態では、弾性支持手段5を4本のバネ部材52より構成していたが、これは可動台6の水平状態を維持しやすくするためである。そのため、Y方向の振動振幅が小さく、物品9の重量が小さい場合には図10に示すように搬送方向に対して前後2本のバネ部材52で構成することも可能である。この場合には可動台6の傾きはほとんど無視できる程度にしか生じない。
【0056】
また、上述の実施形態の棒状のバネ部材52に替えて、板バネを用いた構成を図11に示す。この形態においては、K方向バネ部材として、K方向に垂直になるように配置した一対の板バネ151の一端をそれぞれ基体4に対して設けるとともに、他端によって、中間台161を支持する。中間台161に対しては、さらに、Y方向バネ部材として、Y方向に垂直になるように配置した一対の板バネ152、152を2組設けており、これらの板バネ152、152によって一対のブロック162、162を支持するとともに、当該ブロック162、162によって可動台6を支持する構成としている。加えて、K方向バネ部材である板バネ151には圧電素子171が貼り付けられ、Y方向バネ部材である板バネ152には圧電素子172が貼り付けられており、これらの圧電素子171、172に対して上述の実施形態と同様、制御電圧を付与することでK方向、Y方向に振動を与えることができるようになっている。こうした構成であっても、上記と同様に制御することで同じ効果を得ることが可能であるとともに、K方向、Y方向の板バネ151、152を各々独立して管理することができるため保守作業を容易に行うことができるようになる。さらには、こうした板バネは複数のものをつなぎ合わせて使用する構成とすることも可能でありさらに保守が容易となる。また、平行に配置する板バネを組み合わせることで、可動台6に対してねじり方向の変位が生じることを防止することができ、可動台6の傾きを保ったまま動作させることができる。
【0057】
また、上記とは別の実施形態として構成した例を図12に示す。これは、図11に示したものと同様の板バネ構成を採るとともに、K方向、Y方向の加振手段として圧電素子に替えて電磁石173、174を用いたものである。この場合には、中間台161の下面に金属プレート163を設けるとともに、可動台6の下面に金属プレート164を設けてある。可動台6の下面の金属プレート164は、中間台161に設けられた孔部161aを挿通するようにして下方に張り出しているため中間台161とは干渉することなく独立してY方向に動作可能になっている。このように設けられたプレート163、164と対向させるように電磁石173、174が基体4上に設けられており、これらに電流を与えることでそれぞれK方向またはY方向の変位を可動台6に対して生じさせることができるようになっている。こうした構成であっても、それぞれの方向の電流値を制御することで、上記と同じ効果を得ることが可能であるとともに、K方向、Y方向の動作を圧電素子によって行う場合に対して、容易に大きな出力を得ることができる。
【0058】
さらに、上述した実施形態では、個々の物品9の摩擦係数に着目して、摩擦係数を基準に物品9の分別・搬送を行うように構成したが、前述の通り物品9の表面形状によっては局所的な摩擦係数は同一であっても見かけ上は摩擦係数が異なるものと扱っても支障がない場合もある。また、物品9の表面形状を大きく変えることにより可動台6の上で転動や揺動を行うようになり、摩擦による推力の伝達を効果的に行うことができなくなる場合もある。さらには、可動台6の表面の硬さと、物品9の重量及び硬さとの関係から生じる幾何学的な形状変化も物品9に与える推力に影響を与える。そのため、通常の意味での摩擦係数に加えて、物品9および可動台6の表面形状や表面粗度、さらには重量や硬さによる形状変化等の影響を含めて、現実に物品9に対して水平方向に作用する推力を広い意味での摩擦力として捉え、当該広い意味での摩擦力を基準として各方向の振動成分の制御を行い、物品9の分別・搬送を行わせるように構成することも可能である。こうした考えを採る限りにおいては、物品9の分別・搬送を行うために基準として用いる摩擦係数の中に、上記広い意味での摩擦力の考えを取り込ませることも可能である。すなわち、上記広い意味での摩擦力を物品9に対する可動台6の垂直抗力で除した係数を広い意味での摩擦係数として、これを一般の摩擦係数と置き換えて基準として用いることでより多様な物品9の分別・搬送ができるようになるのであり、本発明における意図はこうした内容をも含むものである。また、上述の実施形態では摩擦係数を基準として制御を行うことで個々の物品9に対する推力を変化させて物品9の分別・搬送を行わせているが、上述のように広い意味での摩擦力を変化させることによって推力を変化させることが可能である限り、摩擦係数と置き換えて異なるパラメータを基準として用いても同様の作用効果を生じる物品分別搬送装置として構成することもできるのであり、こうした構成についても本発明の均等の範囲に含まれる。
【0059】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
4…基体
5…弾性支持手段
6…可動台
9…物品
31…振動制御手段
32…振動切替手段
34…発振機
52…バネ部材
71…第1圧電素子(第1の加振手段)
72…第2圧電素子(第2の加振手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に弾性支持手段を介して設けられた可動台を具備し、当該可動台が振動することで可動台上に載せられた物品を搬送する物品分別搬送装置であって、前記可動台に対して鉛直方向より傾斜した方向に周期的加振力を付与する第1の加振手段と、前記可動台に対して前記第1の加振手段による周期的加振力と交差する方向に周期的加振力を付与する第2の加振手段と、前記各加振手段による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ前記可動台に楕円の振動軌跡を生じさせるように前記各加振手段を制御する振動制御手段とを備え、前記振動制御手段により摩擦係数が異なる物品が異なる方向に搬送されるように前記可動台の振動軌跡を設定することによって、前記可動台上で前記物品を分別搬送することを特徴とする物品分別搬送装置。
【請求項2】
前記可動台上に、分別された物品を所定の軌道に沿って移動させるガイドを設けたことを特徴とする請求項1に記載の物品分別装置。
【請求項3】
前記可動台の振動軌跡を異なる振動軌跡に切り替える振動切替手段を備えており、当該振動切替手段が前記各加振手段による周期的加振力の位相差であって摩擦係数が異なる物品が異なる方向に搬送される位相差のデータと、摩擦係数が異なる物品が同じ方向に搬送される位相差のデータを内部に保存しており、外部からの信号入力に応じてこれらの位相差を切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の物品分別搬送装置。
【請求項1】
基体上に弾性支持手段を介して設けられた可動台を具備し、当該可動台が振動することで可動台上に載せられた物品を搬送する物品分別搬送装置であって、前記可動台に対して鉛直方向より傾斜した方向に周期的加振力を付与する第1の加振手段と、前記可動台に対して前記第1の加振手段による周期的加振力と交差する方向に周期的加振力を付与する第2の加振手段と、前記各加振手段による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ前記可動台に楕円の振動軌跡を生じさせるように前記各加振手段を制御する振動制御手段とを備え、前記振動制御手段により摩擦係数が異なる物品が異なる方向に搬送されるように前記可動台の振動軌跡を設定することによって、前記可動台上で前記物品を分別搬送することを特徴とする物品分別搬送装置。
【請求項2】
前記可動台上に、分別された物品を所定の軌道に沿って移動させるガイドを設けたことを特徴とする請求項1に記載の物品分別装置。
【請求項3】
前記可動台の振動軌跡を異なる振動軌跡に切り替える振動切替手段を備えており、当該振動切替手段が前記各加振手段による周期的加振力の位相差であって摩擦係数が異なる物品が異なる方向に搬送される位相差のデータと、摩擦係数が異なる物品が同じ方向に搬送される位相差のデータを内部に保存しており、外部からの信号入力に応じてこれらの位相差を切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の物品分別搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−229120(P2012−229120A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100182(P2011−100182)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
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