物品管理システム、物品管理方法および物品管理システムにおける無線タグ読取装置
【課題】使用者がアンテナ部を保持して読取作業を行っているときにアンテナ部で直接データベースのレコード参照範囲を指定でき、パソコン操作の往復を不要とさせる物品管理システムを提供する。
【解決手段】複数の書類5に設けられた無線タグ6から、これら無線タグ6のタグIDを読取る無線タグ読取装置10と、無線タグ6のタグIDとこの無線タグ6が付された書類5の書類IDとを各書類5毎に紐付けしたレコードを、複数に区分して記憶するデータベース14と、このデータベース14からいずれかの区分のレコードを取得し、この取得したレコードの固有識別情報と無線タグ読取装置10が読取ったタグIDとを照合判定する照合判定部34と、を備え、照合判定部34がデータベース14から取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部33を、無線タグ読取装置10に設ける。
【解決手段】複数の書類5に設けられた無線タグ6から、これら無線タグ6のタグIDを読取る無線タグ読取装置10と、無線タグ6のタグIDとこの無線タグ6が付された書類5の書類IDとを各書類5毎に紐付けしたレコードを、複数に区分して記憶するデータベース14と、このデータベース14からいずれかの区分のレコードを取得し、この取得したレコードの固有識別情報と無線タグ読取装置10が読取ったタグIDとを照合判定する照合判定部34と、を備え、照合判定部34がデータベース14から取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部33を、無線タグ読取装置10に設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品管理システム、物品管理方法および物品管理システムにおける無線タグ読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、書籍などの物品を無線タグを用いて管理する物品管理システムが知られている(特許文献1参照)。この物品管理システムは、書籍に付された無線タグの識別IDと、棚に付された無線タグの識別IDとを、ダイポールアンテナ及びリーダライタ本体を用いて読取る。リーダライタ本体にはパソコンが接続されており、このパソコンには、書籍管理を行うアプリケーションソフトウェアがインストールされている。パソコンには書籍管理データベースがネットワーク接続されている。
【0003】
パソコンを操作して、データベースから所望するレコードをパソコンにロードした後、リーダライタ本体にケーブル接続されたアンテナ部を手で持ち、書類が収納された棚段に向けてアンテナ部をかざす。アンテナ部の正面を各書類に向けた状態でこのアンテナ部を水平に動かし、これらの書類の無線タグから情報をリードライタ本体がアンテナ部を介して読取る。復調された情報はパソコンに取込まれ、アプリケーションが受信データとダウンロードしたレコードデータとを照合するようになっている。
【0004】
無線タグを使って書架の棚卸を行う際、照合処理に要する時間を短くするため、予め書架番号や棚番号など目的とする書架の情報をデータベースからパソコンにロードしておく。パソコンのアプリケーションは、処理速度を遅くさせずに照合処理を行える程度の件数分のレコードをロードする。これは、タグID1件当たりにパソコンが照合するために要する時間がかかり、全件検索処理では、パソコンが読取り件数に追従できないからである。
【0005】
データベースのレコードの数が全部で数十万から数百万件である場合、人がマウスなどでデータ範囲を指定し、数百件分のレコードをロードする。一つの書架の全ての棚段に存在する無線タグの読取りを終えると、パソコンを操作して別の書架に収納されている書類についてのレコードを、データベースからロードする。棚卸しでは、この作業が繰返される。
【0006】
棚卸しに無線タグを用いる技術に関しては、入庫時に個装のIDタグを読取り、CPUにパケットと紐付けて記憶すると共にパケットのIDタグに個装のデータと棚番地とを書込むようにした保管システムが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−350205号公報
【特許文献2】国際公開第2006/059674号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、1台の書架の読取りを終えた後、別の書架に収納された書籍のレコードをロードするために人がパソコンに戻って操作しなければならない。2台分又は3台分の書架のレコードをパソコン側に予めロードして作業を行っても同様である。このように、書架とパソコンとの間を作業者が往復してマウス操作などを行うことは手間がかかり、作業性に優れない。
【0009】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、指定した書架の棚卸しを行う際など、使用者がアンテナ部を保持して読取作業を行っているときに直接、データベース中のレコードの参照範囲を指定することを可能とし、パソコン操作のための往復を不要とし、物品の管理のための読取作業効率を向上させることを可能とする物品管理システム、物品管理方法および物品管理システムにおける無線タグ読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するため、本発明の一態様によれば、複数の物品に設けられた無線タグから、これら無線タグの個別識別情報を読取る無線タグ読取装置と、前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを、複数に区分して記憶するデータベースと、このデータベースからいずれかの区分の前記レコードを取得し、この取得したレコードの固有識別情報と前記無線タグ読取装置が読取った個別識別情報とを照合判定する照合判定部と、を備え、前記照合判定部が前記データベースから取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部を、前記無線タグ読取装置に設けたことを特徴とする物品管理システムが提供される。
【0011】
また、本発明の別の一態様によれば、それぞれ無線タグを設けられた複数の物品を配設し、前記無線タグの個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースを設置し、複数の物品に設けられた無線タグからこれら無線タグの前記個別識別情報を読取る無線タグ読取装置に、前記データベースから取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部を設け、この区分レコード指定部が前記区分されたレコードを指定し、照合判定を行う照合判定部が、前記区分レコード指定部が指定したレコードを前記データベースから取得し、この取得したレコードの固有識別情報と、前記無線タグ読取装置が読取った前記個別識別情報とを照合判定することを特徴とする物品管理方法が提供される。
【0012】
また、本発明の別の一態様によれば、個別識別情報を有する無線タグとの間で無線信号を送受信するハンディ型のアンテナ部と、このアンテナ部に対して振幅変調された質問波を出力し、前記アンテナ部が受信した応答波を復調して前記個別識別情報を含む復調出力を上位装置に対して送信する本体部と、を備え、前記アンテナ部は、前記無線信号を送受信するアンテナと、このアンテナを保持する筐体と、この筐体に設けられ、前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースの前記区分されたレコードを指定する情報を生成して前記上位装置へ出力する区分レコード指定部と、を備えたことを特徴とする無線タグ読取装置が提供される。
【0013】
また、本発明の別の一態様によれば、個別識別情報を有する無線タグとの間で無線信号を送受信するハンディ型のアンテナ部と、このアンテナ部に対して振幅変調された質問波を出力し、前記アンテナ部が受信した応答波を復調して前記個別識別情報を含む復調出力を上位装置に対して送信する本体部と、を備え、前記アンテナ部は、前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースの前記区分されたレコードを指定するための個別識別情報を保持する他の無線タグとの間で無線通信を行い、前記本体部は、前記他の無線タグの前記個別識別情報を前記上位装置に送信することを特徴とする無線タグ読取装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、読取作業中に使用者が保持しているアンテナ部で、データベース中のレコードの参照範囲を指定することが可能となり、パソコン操作のための往復を不要とすることができ、物品の管理のための読取作業効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る物品管理システムの構成図である。
【図2】無線タグのブロック図である。
【図3】無線タグリーダのブロック図である。
【図4】アンテナ部と本体部とが接続されている状態のこれらの斜視図である。
【図5】(a)はアンテナ部の正面図であり、(b)はアンテナ部の一側面図である。
【図6】アンテナ部の背面斜視図である。
【図7】照合判定部の機能ブロック図である。
【図8】データベースのレコードのデータ構造例を示す図である。
【図9】アンテナ部を用いた棚卸しの作業状況を示す図である。
【図10】照合対象区画を指定した読取方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】番号設定後のダイアル操作部の表示例を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る物品管理システムに用いられる区画を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る物品管理システム、物品管理方法および物品管理システムにおける無線タグ読取装置について、図1乃至図12を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る物品管理システムは管理対象の物品である書類に無線タグを付し、無線タグのタグID(個別識別情報)を読取ることにより、各書類の在処を管理するRFID棚卸システムである。本実施形態に係る物品管理方法は無線タグを利用した棚卸しにより、各書類の在処を判定するための方法である。棚卸しでは、書架に収納された書類の実際の収納状況がデータベースの登録情報と一致しているかどうかをチェックする。データベース上で登録されている書類が存在すること、データベース上貸出し中あるいは抹消された書類が存在していないことがチェックされる。
【0018】
図1はRFID棚卸システムの構成図である。RFID棚卸システム1は、それぞれが構造フレーム2及びこの構造フレーム2内に横架された複数枚の棚板3から成る複数台(同図では1台だけが示されている)の書架4と、これらの書架4の各棚板3によって内部空間が上下区画されて形成された収納空間にそれぞれ収納される複数の書類5(物品)と、それぞれこれらの書類5に付された複数の無線タグ6とを用いる。
【0019】
RFID棚卸システム1は、これらの無線タグ6のタグIDを非接触で読取るハンディ型のアンテナ部7と、アンテナ部7とケーブル8により接続されこのアンテナ部7と高周波信号を送受信する本体部9とを備える。これらのアンテナ部7、ケーブル8及び本体部9が協同して無線タグリーダ10(本実施形態に係る物品管理システムにおける無線タグ読取装置)として機能する。無線タグリーダ10は、複数の書類5に設けられた無線タグ6から、これら無線タグ6のタグIDを読取る。更にRFID棚卸システム1は、本体部9とケーブル11により接続され、この本体部9が読取ったタグIDの照合判定処理を行う機能を有するパソコン12と、このパソコン12とネットワーク13を介して接続され、データベース14に登録された情報をパソコン12へ転送するホストサーバ15とを備える。
【0020】
書架4の例えば4段の各収納空間はいずれも区画である。各収納空間には予め“A111”など棚番号が付与されており、データベース14上に登録されている。書類5は紙書類の包袋であり、契約などで作成された書面の原本などが入れられており、ラベル状の無線タグ6が貼付けられている。各収納空間内では複数の書類5が水平方向に列設されている。
【0021】
契約期間が終了ないし満了するまでの間、割当られた収納空間にこれらの書類5は保管され続ける。書面の記載内容を変更するとき、あるいは記載事項を確認するとき、書類5は書架4から取出される。書類5の出し入れの都度、作業者による端末への操作によって、データベース14は、書類5の持ち出し期間などの内容を更新されるようにされている。平面状のアンテナ部7は、書架4に書類5が収納された状態で複数の無線タグ6の情報を一括して読取ることを可能にされている。
【0022】
図2は無線タグ6のブロック図である。同図中、既出の符号はそれらと同じ要素を表す。無線タグ6はICチップ16及びアンテナ17を有する。ICチップ16は、電源生成部18、受信波の復調部19、送信波の変調部20、固有識別情報を記憶するメモリ部21及びこれらを制御する制御部22を有する。
【0023】
電源生成部18は、アンテナ17が受信した電波を整流し電荷を蓄積することによりICチップ16内の各部に電源を供給する。復調部19はアンテナ部7からの受信電波を復調して制御部22へ送出する。変調部20は制御部22から送られた情報により搬送波を変調し、変調波をアンテナ17から放射させる。制御部22は復調部19が復調したデータをメモリ部21へ書込み、メモリ部21からデータを読出して変調部20へ送る。メモリ部21はデータ書換えを不能にされた設定用の図示しない記憶エリアと、任意のデータを書込み可能なユーザ記憶エリアとを有し、設定用の記憶エリアに固有のタグ識別情報が書込まれている。アンテナ17はループ状である。一枚の無線タグ6の構造は、例えば台紙と、ICチップ16及びアンテナ17を封入しこの台紙上に設けられた薄厚のフィルムと、このフィルムを覆った状態で台紙面に接着固定されるラベルシートとからなる。
【0024】
アンテナ部7及び本体部9の電気的な機能と構造とについて図3から図6を参照して述べる。図3は無線タグリーダ10のブロック図である。図4はアンテナ部7と本体部9とが接続されている状態のこれらの斜視図である。これらの図中、既出の符号はそれらと同じ要素を表す。
【0025】
本体部9は、インターフェース部23、変調部24、送信アンプ25、サーキュレータ26、受信アンプ28、復調部29、制御部30を備える。アンテナ部7は、アンテナ111、スイッチ112a、112b、表示部32、及びダイアル操作部33(区分レコード指定部)を備える。同図中、アンテナ部7がダイアル操作部33を設ける点で従来例と異なる。ケーブル8は同軸ケーブル、及び制御信号用の信号線を有する。
【0026】
インターフェース部23はパソコン12のUSBポートなどに差し込まれ、USB規格に準拠した信号を入出力する。変調部24は、制御部30からの信号により搬送波を変調する。送信アンプ25は、変調部24により変調された変調波を増幅する。サーキュレータ26は、送信アンプ25にて増幅された無線信号をアンテナ部7に出力する。サーキュレータ26は、アンテナ部7が受信した電波を受信アンプ28に出力する。この受信アンプ28は、受信無線信号を増幅する。復調部29は、受信アンプ28にて増幅された信号を復調し、復調信号を制御部30に出力する。これらの変復調やアンプ用の素子は高周波モジュール内に一体化されている。制御部30はCPU、ROM、RAMからなり、RAMには、復調部29が復調した無線タグデータが一時的に記憶される。
【0027】
また、アンテナ部7のアンテナ111の形状は平面状であり、アンテナ利得を高めた状態で複数のタグIDを一括して読出し可能にされている。スイッチ112a、112bはともに無線信号の送信のオン及び送信のオフを切替える指令を本体部9の制御部30へ与えるためのスイッチである。表示部32は、光の点灯及び消灯によりアンテナ部7の動作状態を示すものであり、3個のLEDからなる。表示部32は制御部30により駆動される。ダイアル操作部33は、棚番号を示す電気信号を生成して本体部9側に出力するユーザインターフェースである。ダイアル操作部33の詳細については後述する。
【0028】
本体部9及びアンテナ部7の間では、制御部30による制御により送信アンプ25が応答要求を含む無線信号を送信すると、無線タグ6は電波の照射によって誘導起電力を生じ、ICチップ16が駆動される。この無線タグ6はタグID及び応答メッセージを含む無線信号を送信する。アンテナ部7は復調したタグIDをパソコン12側に送信する。
【0029】
また、アンテナ部7の構造について述べる。図5(a)はアンテナ部7の正面図であり、図5(b)はアンテナ部7の一側面図である。図6はアンテナ部7の背面斜視図である。同図中のアンテナ111の平らな面部を収納空間の端面に対向させた姿勢でアンテナ部7は把持される。これらの図中、既出の符号はそれらと同じ要素を表し、同じ符号は互いに同じ要素を表す。
【0030】
図5(a)、図5(b)に示すように、アンテナ部7は、アンテナ111を内蔵する筐体115と、この筐体115の背面側に取付けられたハンドル114とから構成される。ハンドル114は屈曲部を有し、長手方向の一端部及びこの屈曲部を挟む他端部がそれぞれ筐体115の背面にネジなどによって固定されている。人がこのハンドル114を把持した状態でアンテナ部7を水平移動させる。
【0031】
スイッチ112aはハンドル114の長手方向の途中部に設けられたプッシュスイッチである。ハンドル114内に設けられた操作杆に、押しボタンを嵌合させた状態で押下することにより、このプッシュスイッチのオン、オフが行われる。スイッチ112aのオンを制御部30が読込むと制御部30が変調部24、送信アンプ25を駆動し電波を放射させるようになっている。高所側に位置する収納空間に収納された書類5からタグIDを読取る場合、人が手掌でハンドル114を握って腕を伸ばした姿勢で親指によるスイッチ操作を行えるようになっている。同じくプッシュスイッチであるスイッチ112bはハンドル114の長手方向の一端部に設けられている。低所側の収納空間に収納された書類5からタグIDを読取る場合、人が手掌でハンドル114の先端付近を握り手先からぶら下げた姿勢で親指によるスイッチ操作を行えるようにされている。このスイッチ112bもオンにされると、電波が放射される等されている。
【0032】
筐体115の上面部には図6に示すように、開口が形成されており、この開口を表示窓としてダイアル操作部33のダイアル円板の外周面上の記号及び数字列を視認できるようになっている。4枚のダイアル円板に触れて回すことにより“A111”など棚番号を手元で直接指定できるようになっている。このダイアル操作部33が、データベース14から取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部である。ダイアル操作部33が無線タグリーダ10側に設けられており、読取作業中に使用者がアンテナ部7を保持した状態でレコードの参照範囲を指定することが可能になっている。
【0033】
このダイアル操作部33は、一例として、1本のシャフトと、それぞれこのシャフトに同軸状に軸装され一方向に回転付勢された4枚のダイアル円板と、それぞれこれらのダイアル円板に設けられ円板の回転位置を検出して電気信号として出力するポテンショメータ(回転位置検出部)と、これらを覆う外装材とを有する。
【0034】
各ダイアル円板の外周面上には円板回転軸に平行に、各外周面を十等分する位置にリブ状又は爪状の成型が施されている。収容体の内壁面には円板の逆回転防止用の板ばね等の一端が固定されている。この板ばねの他端がリブや爪などの突起に当接することによって、各ダイアル円板は逆回転を阻止され、手動設定された回転位置を保持することが可能にされている。手動で4枚のダイアル円板を回して4桁の記号及び数字をセットすると、ダイアル操作部33はこの4桁のダイアル値を出力し、制御部30は、棚番号情報としてパソコン12へ通知するようになっている。
【0035】
また、図1のパソコン12は、MPU、メモリ類、ハードディスクドライブ、USBインターフェース、LANインターフェース等を有する。ハードディスクドライブには、照合判定部として機能する上位アプリケーションソフトウェアが実装されている。
【0036】
図7は照合判定部の機能ブロック図である。照合判定部34は、データベース14からいずれかの区分のレコードを取得し、この取得したレコードの固有識別情報と無線タグリーダ10が読取ったタグID(個別識別情報)とを照合判定するものである。照合判定部34は、本体部9を介してアンテナ部7のダイアル操作部33から、棚番号情報を受けると、この棚番号情報をホストサーバ15に通知し、ホストサーバ15から棚番号情報を有する複数のレコードをロードする。本実施形態に係る物品管理方法は、この照合判定部34が記憶部37に複数のタグIDをロードし、これらのタグID及びアンテナ部7により読取ったIDを用いて照合判定処理を実行する。
【0037】
照合判定部34は、棚番号情報を取得する取得部35と、ホストサーバ15と通信する通信部36と、ホストサーバ15からのレコードを記憶する記憶部37と、無線タグリーダ10が読取ったタグIDとデータベース14からロードしたレコードとを比較する比較部38と、全体制御を司る主制御部39とを備える。取得部35は汎用ポートから、読取られた無線タグ6のタグIDと、ユーザ設定された棚番号情報とを取得する。通信部36はLSI、LANポート等を介してデータをホストサーバ15と授受する。記憶部37はDRAMあるいはハードディスク上の領域である。比較部38、主制御部39はMPU、ROM、RAMである。
【0038】
アンテナ部7のダイアル操作部33に、“A111”といった棚番号がセットされると、本体部9は棚番号を読込みパソコン12に宛ててこの“A111”という棚番号情報を送る。主制御部39は、オペレーティングシステムから棚番号情報の受信を通知されると通信部36を呼ぶ。通信部36は、ホストサーバ15の全レコードのうち、“A111”に該当するデータ範囲の複数のレコードをホストサーバ15よりロードする。
【0039】
また、図1のデータベース14は、無線タグ6のタグIDとこの無線タグ6が付された書類5の書類ID(物品情報)とを各書類5毎に紐付けしたレコードを、複数に区分して記憶している。データベース14には例えば複数台のハードディスクからなるディスクアレイなどが用いられる。
【0040】
図8はデータベース14のレコードのデータ構造例を示す図である。書類IDが物品情報として機能している。棚番号A001に例えば256部の書類5が収納されているとした場合、棚番号A001には256個のレコードがエントリされている。これらの256個のレコードについてそれぞれ書類IDと、タグIDとが互いに紐付けられている。棚番号A001、A002など区分毎に、即ち収納空間毎に全レコードが区分けされて記憶されている。ホストサーバ15が、パソコン12から“A111”という棚番号情報を受信すると、ホストサーバ15はネットワーク13を介してこのデータベース14を検索し、棚番号A111のデータ範囲のレコードを全て読出してパソコン12へロードするようにしている。
【0041】
パソコン12の記憶部37が使用可能な記憶容量はデータベース14に記憶されているレコードが占める記憶容量よりも小さい。パソコン12は、データベース14の全範囲から、ある範囲のレコードを引っ張ってきて、このパソコン12上での照合判定処理の処理速度を早めるようにしている。本実施形態では、その照合速度を更に速めるために、レコードをパソコン12側に引っ張ってくるための操作を、アンテナ部7に設けられたダイアル操作部33によって行えるようにされている。
【0042】
上述の構成のRFID棚卸システム1において、新規な書類5が作成されると、担当者が書類5に書類IDを付与し、書類5に無線タグ6を貼付けてこの書類5を書架4のいずれかの棚段に保管する。新規に作成された書類5の収納場所である棚番号、書類ID、無線タグ6のタグID及び必要な事項を紐付けて担当者が端末からデータベース14に登録する。担当者は、包袋を作成する度に、新規な書類5のレコードをデータベース14に登録する。担当者が複数人である場合、各担当者はそれぞれこれと同じ作業を行う。
【0043】
書類5を貸出す場合、管理者は、棚段から書類5を取出して担当者に書類5を手渡す。担当者から書類5が返却された場合、管理者は書類5を受け取って元の棚段に戻す。貸出し又は返却の際、管理者あるいは担当者は、端末からデータベース14に貸出し中フラグを設定し、又はフラグを抹消する。
【0044】
数ヶ月に一回、棚卸しを実行する。一人の作業者は、1組の無線タグリーダ10を使う。
【0045】
図9はアンテナ部7を用いた棚卸しの作業状況を示す図である。本体部9とパソコン12とは台車の上に載せられ、作業者の移動に伴って作業者が作業をしやすい位置に止めて棚卸し作業を開始する。なお、パソコン12に接続されるホストサーバ15、データベース14は図示を省略している。図9の例では、棚番号A110、A111、A112の各4段の収納空間に書類5が収納されている。A110の棚から作業を始めて、4段の各収納空間に収納されている全ての書類5の無線タグ6をアンテナ部7で読取る。棚番号A110についての作業を終えた後、棚番号A111の棚について棚卸しを開始する。
【0046】
図10はいずれかの照合対象区画を指定した読取方法を説明するためのフローチャートである。
【0047】
ステップA1において、作業者は、ダイアル操作部33のダイアルナンバーを設定する。図11は番号設定後のダイアル操作部33の表示例を示す図である。ダイアル操作部33のポテンショメータは回転位置検出部として機能する。ダイアル操作部33は、リング状に形成された抵抗器と、この抵抗器に接触して電気信号を取出す導電性の摺動子とを有する。摺動子はダイアル円板に設けられている。各摺動子の角変位量は電気抵抗の変化値に変換され、バイアス回路から電圧又は電流の変化として出力される。これにより、4枚のダイアル円板の回転位置を本体部9の制御部30は読込む。
【0048】
制御部30は、読込んだ情報を位置コードに変換し、この位置コードを、パソコン12へ通知する。パソコン12は位置コードを受信すると、ホストサーバ15から、この位置コードに対応する棚番号A111に登録されているレコードを記憶部37にロードする。この間、アンテナ部7では、表示部32の3個のLEDが予め決められたパターンで点灯又は点滅する。これによって作業者は、データベース14から照合用のレコードデータをロード中であることを知る。
【0049】
また、表示部32の点灯パターンが実行準備が整ったことの表示を始めると、図10のステップA2に進み、作業者は、手持ちのアンテナ部7を、このアンテナ部7の正面部が棚番号A111の最上段の棚段に向くようにして、スイッチ112aを押下する。アンテナ部7は電波を送信するとともに、無線タグ6からの電波の受信を開始する。作業者により、アンテナ部7は、棚番号A111の最上段の収納空間の左端から、この収納空間の右端まで、右方に向かって水平移動しながら各無線タグ6の読取りを行う。引き続き、アンテナ部7は棚番号A111の2段目の収納空間の左端から右端まで移動しながら各無線タグ6の読取りを行う。ハンドル114を握る位置を変えた後、アンテナ部7は、棚番号A111の3段目及び最下段の収納空間にそれぞれ収納された書類5に付された無線タグ6の読取りを行う。
【0050】
ステップA3において、パソコン12の比較部38は、棚番号A111に対応する収納空間内の各書類5に付された無線タグ6の各タグIDと、アンテナ部7が読取った各タグIDとを個々に照合判定する。例えば各無線タグ6のタグIDが、ロードしたレコード内に含まれているか否かにより、比較部38は比較する。この棚段内に置かれた書類5の無線タグ6がレコードにヒットする場合、Yesルートを通り、ステップA4において、比較部38は、読取った無線タグ6が正しい位置のタグであると判定する。主制御部39はパソコン12のモニタに、棚卸しの結果が正常である旨を表示させる。このようにして各書類5の在処が確認される。
【0051】
一方、ステップA3において、比較部38が書類5の無線タグ6がレコードにヒットしないと判定した場合、Noルートを通り、ステップA5において、比較部38は、読取った無線タグ6は混入したタグであると判定する。混入タグの情報は、パソコン12の記憶部37に記憶される。誤読みでなければ、別の棚に本来収納されるべき書類5が誤って混入していたとアプリケーションは判定する。
【0052】
仮に従来例を用いて、棚番号A111の棚卸しを行う場合、作業者は、棚番号A110についての棚卸しを終えた後、棚番号A110の棚の前からパソコンを載せた台車まで一旦戻り、パソコン操作により、データベースから棚番号A111の収納空間に登録されたレコードをパソコンにロードしなければならない。現在作業者が立つ通路に台車を残してこの通路から1台の書架を挟んだ隣の通路に行き、そこで、背中合わせの棚や反対側の別の棚の棚卸しを行う場合、不便である。作業者が隣の通路で作業を終えた後、書架を挟んで元の通路に戻ってレコードを引っ張ってくる処理を再度行わければならない。台車と、書架の距離が大きい場合、往復することは大変効率が悪い。
【0053】
これに対して、RFID棚卸システム1では、ダイアル操作部33によって、無線タグ6を読むときのレコードのデータ範囲を指定するという操作を作業者の手元側に移すことができる。作業者の立ち位置において直接レコードのデータ範囲を指定することができる。例えば書架4を挟んで反対側の通路において棚の棚卸しを終えた後、パソコン12に戻らずに、その隣の棚の棚卸しを続行することが容易にできるようになる。往復してパソコン12に入力するという動作が不要となる。
【0054】
従って、無線タグリーダ10の導入することで作業の速度を大幅に速めることができるようになる。業務効率を向上させることができるようになる。このようにして、本実施形態に係る物品管理システム、物品管理方法および無線タグ読取装置によれば、読取作業中に使用者が保持しているアンテナ部7で直接、レコードの範囲を指定することが可能となり、パソコン操作のための往復を解消することが可能となる。書類5の管理のための読取作業効率を向上させることが可能となる。
【0055】
(第2の実施形態)
棚番号を指定する手法としては、ユーザがダイアル操作部33を用いて設定する代わりに、レコードのデータ範囲を表すための他の無線タグを各棚段に付しておき、これらの無線タグを読込むようにして棚番号を直接指定することもできる。棚板3の左側又は右側に位置する書架4の縦枠材に棚番号を表す無線タグを付けておき、アンテナ部及び本体部からなる無線タグリーダが所望する収容空間を読む直前にその無線タグを読み棚番号を指定する。
【0056】
本実施形態に係る物品管理システムもRFID棚卸システムであり、書類に無線タグを付し、無線タグのタグIDを読取ることにより、各書類の在処を管理する。本実施形態に係る物品管理方法も無線タグを利用した棚卸しにより、各書類の在処を判定するための方法である。本実施形態では、このアンテナ部にダイアル円板などが設けられていない。
【0057】
図12は本発明の第2の実施形態に係る物品管理システムに用いられる区画を示す図である。同図には書架40の正面図が示されている。既出の符号はそれらと同じ要素を表す。書架40は、構造フレーム2を構成する縦枠材の面部に貼付けられた一枚の無線タグ41(他の無線タグ)を有する。この無線タグ41は、レコードを指定するためのタグID(個別識別情報)を保持している。
【0058】
この無線タグ41が例えば“A111”という棚番号を有する書架40に貼付けられている場合、この無線タグ41のタグIDがデータベース上で棚番号A111の欄に格納された複数の書類5のレコードに紐付けられている。このRFID棚卸システムでは、棚卸しの作業時に、立ち位置にて、無線タグ6のタグIDを読取るアンテナ部をそのまま用いて書架40の無線タグ41のタグIDを読取るようにする。人がダイアル操作部33を操作する代わりに、読取るべき棚の書架40に付された無線タグ41にアンテナ部をかざし、この無線タグ41の情報を本体部からパソコン12に送り、ホストサーバ15に中継される。
【0059】
あるいは無線タグ41のユーザエリアに、レコードのデータ範囲を指し示す情報を予め書込みしておき、無線タグリーダ10がこの無線タグ41のタグIDを読取るようにしてもよい。
【0060】
このような構成により、アンテナ部が書架40の左側面上の無線タグ41を読むと、本体部がパソコン12に通知し、パソコン12はホストサーバ15から所望する範囲のレコードを引っ張ってくる。続いてアンテナ部を棚側に向けながら動かし、収納空間内の個品である書類5の無線タグ6から各タグIDを読取って照合処理を行う。換言すれば、アンテナ部が無線タグ6が置かれる収納空間を指定するための棚番号情報を保持する他の無線タグ41との間で無線通信を行い、本体部は、この無線タグ41からの棚番号情報を上位装置であるパソコン12に送信する。
【0061】
本発明のこの実施形態に係る物品管理システムによれば、無線タグリーダが無線タグ6を読むリーダ装置であるという機能をそのまま活かし、ユーザ側からデータ範囲を直接指定することができる。作業者側で作業中の立ち位置を変えずに、直接、データ範囲を指定して、パソコン12にロードさせることができるようになる。
【0062】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記の実施形態では、物品としては書類のほかに、書籍や各種記録用メディアを用いることができる。データベースのデータ構造や、パソコンがロードするレコードの件数などは種々変更可能である。無線タグ6の貼付け位置は、起立させた状態の書類5の一側面の下端部であってもよい。無線タグ6のループ状のアンテナ17の法線方向を、書架4の幅方向と一致させることによって、アンテナ利得を増大させることができ、読取りやすさを向上させることができる。
【0063】
上記実施形態では、パソコン12、ホストサーバ15及びデータベース14が別個に構成されていたが、これらの機能を一つの装置にまとめて構成することもできる。第1実施形態では、ダイアル操作部33が用いられたが、棚番号を指定するために、ボタン類、DIPスイッチ、タッチパネル、ジョグダイアルなど各種のデバイスを用いてもよい。
【0064】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0065】
また、本実施の形態では装置内部に発明を実施する機能が予め記録されている場合で説明をしたが、これに限らず同様の機能をネットワークから装置にダウンロードしても良いし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものを装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等プログラムを記憶でき、かつ装置が読取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…RFID棚卸システム(物品管理システム)、2…構造フレーム、3…棚板、4,40…書架、5…書類(物品)、6…無線タグ、7…アンテナ部、8,11…ケーブル、9…本体部、10…無線タグリーダ(無線タグ読取装置)、12…パソコン(上位装置)、13…ネットワーク、14…データベース、15…ホストサーバ、16…ICチップ、17,111…アンテナ、18…電源生成部、19…復調部、20…変調部、21…メモリ部、22…制御部、23…インターフェース部、24…変調部、25…送信アンプ、26…サーキュレータ、28…受信アンプ、29…復調部、30…制御部、32…表示部、33…ダイアル操作部(区分レコード指定部)、34…照合判定部、35…取得部、36…通信部、37…記憶部、38…比較部、39…主制御部、41…無線タグ(他の無線タグ)、112a,112b…スイッチ、114…ハンドル、115…筐体。
【技術分野】
【0001】
本発明は物品管理システム、物品管理方法および物品管理システムにおける無線タグ読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、書籍などの物品を無線タグを用いて管理する物品管理システムが知られている(特許文献1参照)。この物品管理システムは、書籍に付された無線タグの識別IDと、棚に付された無線タグの識別IDとを、ダイポールアンテナ及びリーダライタ本体を用いて読取る。リーダライタ本体にはパソコンが接続されており、このパソコンには、書籍管理を行うアプリケーションソフトウェアがインストールされている。パソコンには書籍管理データベースがネットワーク接続されている。
【0003】
パソコンを操作して、データベースから所望するレコードをパソコンにロードした後、リーダライタ本体にケーブル接続されたアンテナ部を手で持ち、書類が収納された棚段に向けてアンテナ部をかざす。アンテナ部の正面を各書類に向けた状態でこのアンテナ部を水平に動かし、これらの書類の無線タグから情報をリードライタ本体がアンテナ部を介して読取る。復調された情報はパソコンに取込まれ、アプリケーションが受信データとダウンロードしたレコードデータとを照合するようになっている。
【0004】
無線タグを使って書架の棚卸を行う際、照合処理に要する時間を短くするため、予め書架番号や棚番号など目的とする書架の情報をデータベースからパソコンにロードしておく。パソコンのアプリケーションは、処理速度を遅くさせずに照合処理を行える程度の件数分のレコードをロードする。これは、タグID1件当たりにパソコンが照合するために要する時間がかかり、全件検索処理では、パソコンが読取り件数に追従できないからである。
【0005】
データベースのレコードの数が全部で数十万から数百万件である場合、人がマウスなどでデータ範囲を指定し、数百件分のレコードをロードする。一つの書架の全ての棚段に存在する無線タグの読取りを終えると、パソコンを操作して別の書架に収納されている書類についてのレコードを、データベースからロードする。棚卸しでは、この作業が繰返される。
【0006】
棚卸しに無線タグを用いる技術に関しては、入庫時に個装のIDタグを読取り、CPUにパケットと紐付けて記憶すると共にパケットのIDタグに個装のデータと棚番地とを書込むようにした保管システムが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−350205号公報
【特許文献2】国際公開第2006/059674号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、1台の書架の読取りを終えた後、別の書架に収納された書籍のレコードをロードするために人がパソコンに戻って操作しなければならない。2台分又は3台分の書架のレコードをパソコン側に予めロードして作業を行っても同様である。このように、書架とパソコンとの間を作業者が往復してマウス操作などを行うことは手間がかかり、作業性に優れない。
【0009】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、指定した書架の棚卸しを行う際など、使用者がアンテナ部を保持して読取作業を行っているときに直接、データベース中のレコードの参照範囲を指定することを可能とし、パソコン操作のための往復を不要とし、物品の管理のための読取作業効率を向上させることを可能とする物品管理システム、物品管理方法および物品管理システムにおける無線タグ読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するため、本発明の一態様によれば、複数の物品に設けられた無線タグから、これら無線タグの個別識別情報を読取る無線タグ読取装置と、前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを、複数に区分して記憶するデータベースと、このデータベースからいずれかの区分の前記レコードを取得し、この取得したレコードの固有識別情報と前記無線タグ読取装置が読取った個別識別情報とを照合判定する照合判定部と、を備え、前記照合判定部が前記データベースから取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部を、前記無線タグ読取装置に設けたことを特徴とする物品管理システムが提供される。
【0011】
また、本発明の別の一態様によれば、それぞれ無線タグを設けられた複数の物品を配設し、前記無線タグの個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースを設置し、複数の物品に設けられた無線タグからこれら無線タグの前記個別識別情報を読取る無線タグ読取装置に、前記データベースから取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部を設け、この区分レコード指定部が前記区分されたレコードを指定し、照合判定を行う照合判定部が、前記区分レコード指定部が指定したレコードを前記データベースから取得し、この取得したレコードの固有識別情報と、前記無線タグ読取装置が読取った前記個別識別情報とを照合判定することを特徴とする物品管理方法が提供される。
【0012】
また、本発明の別の一態様によれば、個別識別情報を有する無線タグとの間で無線信号を送受信するハンディ型のアンテナ部と、このアンテナ部に対して振幅変調された質問波を出力し、前記アンテナ部が受信した応答波を復調して前記個別識別情報を含む復調出力を上位装置に対して送信する本体部と、を備え、前記アンテナ部は、前記無線信号を送受信するアンテナと、このアンテナを保持する筐体と、この筐体に設けられ、前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースの前記区分されたレコードを指定する情報を生成して前記上位装置へ出力する区分レコード指定部と、を備えたことを特徴とする無線タグ読取装置が提供される。
【0013】
また、本発明の別の一態様によれば、個別識別情報を有する無線タグとの間で無線信号を送受信するハンディ型のアンテナ部と、このアンテナ部に対して振幅変調された質問波を出力し、前記アンテナ部が受信した応答波を復調して前記個別識別情報を含む復調出力を上位装置に対して送信する本体部と、を備え、前記アンテナ部は、前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースの前記区分されたレコードを指定するための個別識別情報を保持する他の無線タグとの間で無線通信を行い、前記本体部は、前記他の無線タグの前記個別識別情報を前記上位装置に送信することを特徴とする無線タグ読取装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、読取作業中に使用者が保持しているアンテナ部で、データベース中のレコードの参照範囲を指定することが可能となり、パソコン操作のための往復を不要とすることができ、物品の管理のための読取作業効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る物品管理システムの構成図である。
【図2】無線タグのブロック図である。
【図3】無線タグリーダのブロック図である。
【図4】アンテナ部と本体部とが接続されている状態のこれらの斜視図である。
【図5】(a)はアンテナ部の正面図であり、(b)はアンテナ部の一側面図である。
【図6】アンテナ部の背面斜視図である。
【図7】照合判定部の機能ブロック図である。
【図8】データベースのレコードのデータ構造例を示す図である。
【図9】アンテナ部を用いた棚卸しの作業状況を示す図である。
【図10】照合対象区画を指定した読取方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】番号設定後のダイアル操作部の表示例を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る物品管理システムに用いられる区画を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る物品管理システム、物品管理方法および物品管理システムにおける無線タグ読取装置について、図1乃至図12を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る物品管理システムは管理対象の物品である書類に無線タグを付し、無線タグのタグID(個別識別情報)を読取ることにより、各書類の在処を管理するRFID棚卸システムである。本実施形態に係る物品管理方法は無線タグを利用した棚卸しにより、各書類の在処を判定するための方法である。棚卸しでは、書架に収納された書類の実際の収納状況がデータベースの登録情報と一致しているかどうかをチェックする。データベース上で登録されている書類が存在すること、データベース上貸出し中あるいは抹消された書類が存在していないことがチェックされる。
【0018】
図1はRFID棚卸システムの構成図である。RFID棚卸システム1は、それぞれが構造フレーム2及びこの構造フレーム2内に横架された複数枚の棚板3から成る複数台(同図では1台だけが示されている)の書架4と、これらの書架4の各棚板3によって内部空間が上下区画されて形成された収納空間にそれぞれ収納される複数の書類5(物品)と、それぞれこれらの書類5に付された複数の無線タグ6とを用いる。
【0019】
RFID棚卸システム1は、これらの無線タグ6のタグIDを非接触で読取るハンディ型のアンテナ部7と、アンテナ部7とケーブル8により接続されこのアンテナ部7と高周波信号を送受信する本体部9とを備える。これらのアンテナ部7、ケーブル8及び本体部9が協同して無線タグリーダ10(本実施形態に係る物品管理システムにおける無線タグ読取装置)として機能する。無線タグリーダ10は、複数の書類5に設けられた無線タグ6から、これら無線タグ6のタグIDを読取る。更にRFID棚卸システム1は、本体部9とケーブル11により接続され、この本体部9が読取ったタグIDの照合判定処理を行う機能を有するパソコン12と、このパソコン12とネットワーク13を介して接続され、データベース14に登録された情報をパソコン12へ転送するホストサーバ15とを備える。
【0020】
書架4の例えば4段の各収納空間はいずれも区画である。各収納空間には予め“A111”など棚番号が付与されており、データベース14上に登録されている。書類5は紙書類の包袋であり、契約などで作成された書面の原本などが入れられており、ラベル状の無線タグ6が貼付けられている。各収納空間内では複数の書類5が水平方向に列設されている。
【0021】
契約期間が終了ないし満了するまでの間、割当られた収納空間にこれらの書類5は保管され続ける。書面の記載内容を変更するとき、あるいは記載事項を確認するとき、書類5は書架4から取出される。書類5の出し入れの都度、作業者による端末への操作によって、データベース14は、書類5の持ち出し期間などの内容を更新されるようにされている。平面状のアンテナ部7は、書架4に書類5が収納された状態で複数の無線タグ6の情報を一括して読取ることを可能にされている。
【0022】
図2は無線タグ6のブロック図である。同図中、既出の符号はそれらと同じ要素を表す。無線タグ6はICチップ16及びアンテナ17を有する。ICチップ16は、電源生成部18、受信波の復調部19、送信波の変調部20、固有識別情報を記憶するメモリ部21及びこれらを制御する制御部22を有する。
【0023】
電源生成部18は、アンテナ17が受信した電波を整流し電荷を蓄積することによりICチップ16内の各部に電源を供給する。復調部19はアンテナ部7からの受信電波を復調して制御部22へ送出する。変調部20は制御部22から送られた情報により搬送波を変調し、変調波をアンテナ17から放射させる。制御部22は復調部19が復調したデータをメモリ部21へ書込み、メモリ部21からデータを読出して変調部20へ送る。メモリ部21はデータ書換えを不能にされた設定用の図示しない記憶エリアと、任意のデータを書込み可能なユーザ記憶エリアとを有し、設定用の記憶エリアに固有のタグ識別情報が書込まれている。アンテナ17はループ状である。一枚の無線タグ6の構造は、例えば台紙と、ICチップ16及びアンテナ17を封入しこの台紙上に設けられた薄厚のフィルムと、このフィルムを覆った状態で台紙面に接着固定されるラベルシートとからなる。
【0024】
アンテナ部7及び本体部9の電気的な機能と構造とについて図3から図6を参照して述べる。図3は無線タグリーダ10のブロック図である。図4はアンテナ部7と本体部9とが接続されている状態のこれらの斜視図である。これらの図中、既出の符号はそれらと同じ要素を表す。
【0025】
本体部9は、インターフェース部23、変調部24、送信アンプ25、サーキュレータ26、受信アンプ28、復調部29、制御部30を備える。アンテナ部7は、アンテナ111、スイッチ112a、112b、表示部32、及びダイアル操作部33(区分レコード指定部)を備える。同図中、アンテナ部7がダイアル操作部33を設ける点で従来例と異なる。ケーブル8は同軸ケーブル、及び制御信号用の信号線を有する。
【0026】
インターフェース部23はパソコン12のUSBポートなどに差し込まれ、USB規格に準拠した信号を入出力する。変調部24は、制御部30からの信号により搬送波を変調する。送信アンプ25は、変調部24により変調された変調波を増幅する。サーキュレータ26は、送信アンプ25にて増幅された無線信号をアンテナ部7に出力する。サーキュレータ26は、アンテナ部7が受信した電波を受信アンプ28に出力する。この受信アンプ28は、受信無線信号を増幅する。復調部29は、受信アンプ28にて増幅された信号を復調し、復調信号を制御部30に出力する。これらの変復調やアンプ用の素子は高周波モジュール内に一体化されている。制御部30はCPU、ROM、RAMからなり、RAMには、復調部29が復調した無線タグデータが一時的に記憶される。
【0027】
また、アンテナ部7のアンテナ111の形状は平面状であり、アンテナ利得を高めた状態で複数のタグIDを一括して読出し可能にされている。スイッチ112a、112bはともに無線信号の送信のオン及び送信のオフを切替える指令を本体部9の制御部30へ与えるためのスイッチである。表示部32は、光の点灯及び消灯によりアンテナ部7の動作状態を示すものであり、3個のLEDからなる。表示部32は制御部30により駆動される。ダイアル操作部33は、棚番号を示す電気信号を生成して本体部9側に出力するユーザインターフェースである。ダイアル操作部33の詳細については後述する。
【0028】
本体部9及びアンテナ部7の間では、制御部30による制御により送信アンプ25が応答要求を含む無線信号を送信すると、無線タグ6は電波の照射によって誘導起電力を生じ、ICチップ16が駆動される。この無線タグ6はタグID及び応答メッセージを含む無線信号を送信する。アンテナ部7は復調したタグIDをパソコン12側に送信する。
【0029】
また、アンテナ部7の構造について述べる。図5(a)はアンテナ部7の正面図であり、図5(b)はアンテナ部7の一側面図である。図6はアンテナ部7の背面斜視図である。同図中のアンテナ111の平らな面部を収納空間の端面に対向させた姿勢でアンテナ部7は把持される。これらの図中、既出の符号はそれらと同じ要素を表し、同じ符号は互いに同じ要素を表す。
【0030】
図5(a)、図5(b)に示すように、アンテナ部7は、アンテナ111を内蔵する筐体115と、この筐体115の背面側に取付けられたハンドル114とから構成される。ハンドル114は屈曲部を有し、長手方向の一端部及びこの屈曲部を挟む他端部がそれぞれ筐体115の背面にネジなどによって固定されている。人がこのハンドル114を把持した状態でアンテナ部7を水平移動させる。
【0031】
スイッチ112aはハンドル114の長手方向の途中部に設けられたプッシュスイッチである。ハンドル114内に設けられた操作杆に、押しボタンを嵌合させた状態で押下することにより、このプッシュスイッチのオン、オフが行われる。スイッチ112aのオンを制御部30が読込むと制御部30が変調部24、送信アンプ25を駆動し電波を放射させるようになっている。高所側に位置する収納空間に収納された書類5からタグIDを読取る場合、人が手掌でハンドル114を握って腕を伸ばした姿勢で親指によるスイッチ操作を行えるようになっている。同じくプッシュスイッチであるスイッチ112bはハンドル114の長手方向の一端部に設けられている。低所側の収納空間に収納された書類5からタグIDを読取る場合、人が手掌でハンドル114の先端付近を握り手先からぶら下げた姿勢で親指によるスイッチ操作を行えるようにされている。このスイッチ112bもオンにされると、電波が放射される等されている。
【0032】
筐体115の上面部には図6に示すように、開口が形成されており、この開口を表示窓としてダイアル操作部33のダイアル円板の外周面上の記号及び数字列を視認できるようになっている。4枚のダイアル円板に触れて回すことにより“A111”など棚番号を手元で直接指定できるようになっている。このダイアル操作部33が、データベース14から取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部である。ダイアル操作部33が無線タグリーダ10側に設けられており、読取作業中に使用者がアンテナ部7を保持した状態でレコードの参照範囲を指定することが可能になっている。
【0033】
このダイアル操作部33は、一例として、1本のシャフトと、それぞれこのシャフトに同軸状に軸装され一方向に回転付勢された4枚のダイアル円板と、それぞれこれらのダイアル円板に設けられ円板の回転位置を検出して電気信号として出力するポテンショメータ(回転位置検出部)と、これらを覆う外装材とを有する。
【0034】
各ダイアル円板の外周面上には円板回転軸に平行に、各外周面を十等分する位置にリブ状又は爪状の成型が施されている。収容体の内壁面には円板の逆回転防止用の板ばね等の一端が固定されている。この板ばねの他端がリブや爪などの突起に当接することによって、各ダイアル円板は逆回転を阻止され、手動設定された回転位置を保持することが可能にされている。手動で4枚のダイアル円板を回して4桁の記号及び数字をセットすると、ダイアル操作部33はこの4桁のダイアル値を出力し、制御部30は、棚番号情報としてパソコン12へ通知するようになっている。
【0035】
また、図1のパソコン12は、MPU、メモリ類、ハードディスクドライブ、USBインターフェース、LANインターフェース等を有する。ハードディスクドライブには、照合判定部として機能する上位アプリケーションソフトウェアが実装されている。
【0036】
図7は照合判定部の機能ブロック図である。照合判定部34は、データベース14からいずれかの区分のレコードを取得し、この取得したレコードの固有識別情報と無線タグリーダ10が読取ったタグID(個別識別情報)とを照合判定するものである。照合判定部34は、本体部9を介してアンテナ部7のダイアル操作部33から、棚番号情報を受けると、この棚番号情報をホストサーバ15に通知し、ホストサーバ15から棚番号情報を有する複数のレコードをロードする。本実施形態に係る物品管理方法は、この照合判定部34が記憶部37に複数のタグIDをロードし、これらのタグID及びアンテナ部7により読取ったIDを用いて照合判定処理を実行する。
【0037】
照合判定部34は、棚番号情報を取得する取得部35と、ホストサーバ15と通信する通信部36と、ホストサーバ15からのレコードを記憶する記憶部37と、無線タグリーダ10が読取ったタグIDとデータベース14からロードしたレコードとを比較する比較部38と、全体制御を司る主制御部39とを備える。取得部35は汎用ポートから、読取られた無線タグ6のタグIDと、ユーザ設定された棚番号情報とを取得する。通信部36はLSI、LANポート等を介してデータをホストサーバ15と授受する。記憶部37はDRAMあるいはハードディスク上の領域である。比較部38、主制御部39はMPU、ROM、RAMである。
【0038】
アンテナ部7のダイアル操作部33に、“A111”といった棚番号がセットされると、本体部9は棚番号を読込みパソコン12に宛ててこの“A111”という棚番号情報を送る。主制御部39は、オペレーティングシステムから棚番号情報の受信を通知されると通信部36を呼ぶ。通信部36は、ホストサーバ15の全レコードのうち、“A111”に該当するデータ範囲の複数のレコードをホストサーバ15よりロードする。
【0039】
また、図1のデータベース14は、無線タグ6のタグIDとこの無線タグ6が付された書類5の書類ID(物品情報)とを各書類5毎に紐付けしたレコードを、複数に区分して記憶している。データベース14には例えば複数台のハードディスクからなるディスクアレイなどが用いられる。
【0040】
図8はデータベース14のレコードのデータ構造例を示す図である。書類IDが物品情報として機能している。棚番号A001に例えば256部の書類5が収納されているとした場合、棚番号A001には256個のレコードがエントリされている。これらの256個のレコードについてそれぞれ書類IDと、タグIDとが互いに紐付けられている。棚番号A001、A002など区分毎に、即ち収納空間毎に全レコードが区分けされて記憶されている。ホストサーバ15が、パソコン12から“A111”という棚番号情報を受信すると、ホストサーバ15はネットワーク13を介してこのデータベース14を検索し、棚番号A111のデータ範囲のレコードを全て読出してパソコン12へロードするようにしている。
【0041】
パソコン12の記憶部37が使用可能な記憶容量はデータベース14に記憶されているレコードが占める記憶容量よりも小さい。パソコン12は、データベース14の全範囲から、ある範囲のレコードを引っ張ってきて、このパソコン12上での照合判定処理の処理速度を早めるようにしている。本実施形態では、その照合速度を更に速めるために、レコードをパソコン12側に引っ張ってくるための操作を、アンテナ部7に設けられたダイアル操作部33によって行えるようにされている。
【0042】
上述の構成のRFID棚卸システム1において、新規な書類5が作成されると、担当者が書類5に書類IDを付与し、書類5に無線タグ6を貼付けてこの書類5を書架4のいずれかの棚段に保管する。新規に作成された書類5の収納場所である棚番号、書類ID、無線タグ6のタグID及び必要な事項を紐付けて担当者が端末からデータベース14に登録する。担当者は、包袋を作成する度に、新規な書類5のレコードをデータベース14に登録する。担当者が複数人である場合、各担当者はそれぞれこれと同じ作業を行う。
【0043】
書類5を貸出す場合、管理者は、棚段から書類5を取出して担当者に書類5を手渡す。担当者から書類5が返却された場合、管理者は書類5を受け取って元の棚段に戻す。貸出し又は返却の際、管理者あるいは担当者は、端末からデータベース14に貸出し中フラグを設定し、又はフラグを抹消する。
【0044】
数ヶ月に一回、棚卸しを実行する。一人の作業者は、1組の無線タグリーダ10を使う。
【0045】
図9はアンテナ部7を用いた棚卸しの作業状況を示す図である。本体部9とパソコン12とは台車の上に載せられ、作業者の移動に伴って作業者が作業をしやすい位置に止めて棚卸し作業を開始する。なお、パソコン12に接続されるホストサーバ15、データベース14は図示を省略している。図9の例では、棚番号A110、A111、A112の各4段の収納空間に書類5が収納されている。A110の棚から作業を始めて、4段の各収納空間に収納されている全ての書類5の無線タグ6をアンテナ部7で読取る。棚番号A110についての作業を終えた後、棚番号A111の棚について棚卸しを開始する。
【0046】
図10はいずれかの照合対象区画を指定した読取方法を説明するためのフローチャートである。
【0047】
ステップA1において、作業者は、ダイアル操作部33のダイアルナンバーを設定する。図11は番号設定後のダイアル操作部33の表示例を示す図である。ダイアル操作部33のポテンショメータは回転位置検出部として機能する。ダイアル操作部33は、リング状に形成された抵抗器と、この抵抗器に接触して電気信号を取出す導電性の摺動子とを有する。摺動子はダイアル円板に設けられている。各摺動子の角変位量は電気抵抗の変化値に変換され、バイアス回路から電圧又は電流の変化として出力される。これにより、4枚のダイアル円板の回転位置を本体部9の制御部30は読込む。
【0048】
制御部30は、読込んだ情報を位置コードに変換し、この位置コードを、パソコン12へ通知する。パソコン12は位置コードを受信すると、ホストサーバ15から、この位置コードに対応する棚番号A111に登録されているレコードを記憶部37にロードする。この間、アンテナ部7では、表示部32の3個のLEDが予め決められたパターンで点灯又は点滅する。これによって作業者は、データベース14から照合用のレコードデータをロード中であることを知る。
【0049】
また、表示部32の点灯パターンが実行準備が整ったことの表示を始めると、図10のステップA2に進み、作業者は、手持ちのアンテナ部7を、このアンテナ部7の正面部が棚番号A111の最上段の棚段に向くようにして、スイッチ112aを押下する。アンテナ部7は電波を送信するとともに、無線タグ6からの電波の受信を開始する。作業者により、アンテナ部7は、棚番号A111の最上段の収納空間の左端から、この収納空間の右端まで、右方に向かって水平移動しながら各無線タグ6の読取りを行う。引き続き、アンテナ部7は棚番号A111の2段目の収納空間の左端から右端まで移動しながら各無線タグ6の読取りを行う。ハンドル114を握る位置を変えた後、アンテナ部7は、棚番号A111の3段目及び最下段の収納空間にそれぞれ収納された書類5に付された無線タグ6の読取りを行う。
【0050】
ステップA3において、パソコン12の比較部38は、棚番号A111に対応する収納空間内の各書類5に付された無線タグ6の各タグIDと、アンテナ部7が読取った各タグIDとを個々に照合判定する。例えば各無線タグ6のタグIDが、ロードしたレコード内に含まれているか否かにより、比較部38は比較する。この棚段内に置かれた書類5の無線タグ6がレコードにヒットする場合、Yesルートを通り、ステップA4において、比較部38は、読取った無線タグ6が正しい位置のタグであると判定する。主制御部39はパソコン12のモニタに、棚卸しの結果が正常である旨を表示させる。このようにして各書類5の在処が確認される。
【0051】
一方、ステップA3において、比較部38が書類5の無線タグ6がレコードにヒットしないと判定した場合、Noルートを通り、ステップA5において、比較部38は、読取った無線タグ6は混入したタグであると判定する。混入タグの情報は、パソコン12の記憶部37に記憶される。誤読みでなければ、別の棚に本来収納されるべき書類5が誤って混入していたとアプリケーションは判定する。
【0052】
仮に従来例を用いて、棚番号A111の棚卸しを行う場合、作業者は、棚番号A110についての棚卸しを終えた後、棚番号A110の棚の前からパソコンを載せた台車まで一旦戻り、パソコン操作により、データベースから棚番号A111の収納空間に登録されたレコードをパソコンにロードしなければならない。現在作業者が立つ通路に台車を残してこの通路から1台の書架を挟んだ隣の通路に行き、そこで、背中合わせの棚や反対側の別の棚の棚卸しを行う場合、不便である。作業者が隣の通路で作業を終えた後、書架を挟んで元の通路に戻ってレコードを引っ張ってくる処理を再度行わければならない。台車と、書架の距離が大きい場合、往復することは大変効率が悪い。
【0053】
これに対して、RFID棚卸システム1では、ダイアル操作部33によって、無線タグ6を読むときのレコードのデータ範囲を指定するという操作を作業者の手元側に移すことができる。作業者の立ち位置において直接レコードのデータ範囲を指定することができる。例えば書架4を挟んで反対側の通路において棚の棚卸しを終えた後、パソコン12に戻らずに、その隣の棚の棚卸しを続行することが容易にできるようになる。往復してパソコン12に入力するという動作が不要となる。
【0054】
従って、無線タグリーダ10の導入することで作業の速度を大幅に速めることができるようになる。業務効率を向上させることができるようになる。このようにして、本実施形態に係る物品管理システム、物品管理方法および無線タグ読取装置によれば、読取作業中に使用者が保持しているアンテナ部7で直接、レコードの範囲を指定することが可能となり、パソコン操作のための往復を解消することが可能となる。書類5の管理のための読取作業効率を向上させることが可能となる。
【0055】
(第2の実施形態)
棚番号を指定する手法としては、ユーザがダイアル操作部33を用いて設定する代わりに、レコードのデータ範囲を表すための他の無線タグを各棚段に付しておき、これらの無線タグを読込むようにして棚番号を直接指定することもできる。棚板3の左側又は右側に位置する書架4の縦枠材に棚番号を表す無線タグを付けておき、アンテナ部及び本体部からなる無線タグリーダが所望する収容空間を読む直前にその無線タグを読み棚番号を指定する。
【0056】
本実施形態に係る物品管理システムもRFID棚卸システムであり、書類に無線タグを付し、無線タグのタグIDを読取ることにより、各書類の在処を管理する。本実施形態に係る物品管理方法も無線タグを利用した棚卸しにより、各書類の在処を判定するための方法である。本実施形態では、このアンテナ部にダイアル円板などが設けられていない。
【0057】
図12は本発明の第2の実施形態に係る物品管理システムに用いられる区画を示す図である。同図には書架40の正面図が示されている。既出の符号はそれらと同じ要素を表す。書架40は、構造フレーム2を構成する縦枠材の面部に貼付けられた一枚の無線タグ41(他の無線タグ)を有する。この無線タグ41は、レコードを指定するためのタグID(個別識別情報)を保持している。
【0058】
この無線タグ41が例えば“A111”という棚番号を有する書架40に貼付けられている場合、この無線タグ41のタグIDがデータベース上で棚番号A111の欄に格納された複数の書類5のレコードに紐付けられている。このRFID棚卸システムでは、棚卸しの作業時に、立ち位置にて、無線タグ6のタグIDを読取るアンテナ部をそのまま用いて書架40の無線タグ41のタグIDを読取るようにする。人がダイアル操作部33を操作する代わりに、読取るべき棚の書架40に付された無線タグ41にアンテナ部をかざし、この無線タグ41の情報を本体部からパソコン12に送り、ホストサーバ15に中継される。
【0059】
あるいは無線タグ41のユーザエリアに、レコードのデータ範囲を指し示す情報を予め書込みしておき、無線タグリーダ10がこの無線タグ41のタグIDを読取るようにしてもよい。
【0060】
このような構成により、アンテナ部が書架40の左側面上の無線タグ41を読むと、本体部がパソコン12に通知し、パソコン12はホストサーバ15から所望する範囲のレコードを引っ張ってくる。続いてアンテナ部を棚側に向けながら動かし、収納空間内の個品である書類5の無線タグ6から各タグIDを読取って照合処理を行う。換言すれば、アンテナ部が無線タグ6が置かれる収納空間を指定するための棚番号情報を保持する他の無線タグ41との間で無線通信を行い、本体部は、この無線タグ41からの棚番号情報を上位装置であるパソコン12に送信する。
【0061】
本発明のこの実施形態に係る物品管理システムによれば、無線タグリーダが無線タグ6を読むリーダ装置であるという機能をそのまま活かし、ユーザ側からデータ範囲を直接指定することができる。作業者側で作業中の立ち位置を変えずに、直接、データ範囲を指定して、パソコン12にロードさせることができるようになる。
【0062】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記の実施形態では、物品としては書類のほかに、書籍や各種記録用メディアを用いることができる。データベースのデータ構造や、パソコンがロードするレコードの件数などは種々変更可能である。無線タグ6の貼付け位置は、起立させた状態の書類5の一側面の下端部であってもよい。無線タグ6のループ状のアンテナ17の法線方向を、書架4の幅方向と一致させることによって、アンテナ利得を増大させることができ、読取りやすさを向上させることができる。
【0063】
上記実施形態では、パソコン12、ホストサーバ15及びデータベース14が別個に構成されていたが、これらの機能を一つの装置にまとめて構成することもできる。第1実施形態では、ダイアル操作部33が用いられたが、棚番号を指定するために、ボタン類、DIPスイッチ、タッチパネル、ジョグダイアルなど各種のデバイスを用いてもよい。
【0064】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0065】
また、本実施の形態では装置内部に発明を実施する機能が予め記録されている場合で説明をしたが、これに限らず同様の機能をネットワークから装置にダウンロードしても良いし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものを装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等プログラムを記憶でき、かつ装置が読取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…RFID棚卸システム(物品管理システム)、2…構造フレーム、3…棚板、4,40…書架、5…書類(物品)、6…無線タグ、7…アンテナ部、8,11…ケーブル、9…本体部、10…無線タグリーダ(無線タグ読取装置)、12…パソコン(上位装置)、13…ネットワーク、14…データベース、15…ホストサーバ、16…ICチップ、17,111…アンテナ、18…電源生成部、19…復調部、20…変調部、21…メモリ部、22…制御部、23…インターフェース部、24…変調部、25…送信アンプ、26…サーキュレータ、28…受信アンプ、29…復調部、30…制御部、32…表示部、33…ダイアル操作部(区分レコード指定部)、34…照合判定部、35…取得部、36…通信部、37…記憶部、38…比較部、39…主制御部、41…無線タグ(他の無線タグ)、112a,112b…スイッチ、114…ハンドル、115…筐体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物品に設けられた無線タグから、これら無線タグの個別識別情報を読取る無線タグ読取装置と、
前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを、複数に区分して記憶するデータベースと、
このデータベースからいずれかの区分の前記レコードを取得し、この取得したレコードの固有識別情報と前記無線タグ読取装置が読取った個別識別情報とを照合判定する照合判定部と、を備え、
前記照合判定部が前記データベースから取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部を、前記無線タグ読取装置に設けたことを特徴とする物品管理システム。
【請求項2】
それぞれ無線タグを設けられた複数の物品を配設し、前記無線タグの個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースを設置し、
複数の物品に設けられた無線タグからこれら無線タグの前記個別識別情報を読取る無線タグ読取装置に、前記データベースから取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部を設け、
この区分レコード指定部が前記区分されたレコードを指定し、
照合判定を行う照合判定部が、前記区分レコード指定部が指定したレコードを前記データベースから取得し、この取得したレコードの固有識別情報と、前記無線タグ読取装置が読取った前記個別識別情報とを照合判定することを特徴とする物品管理方法。
【請求項3】
個別識別情報を有する無線タグとの間で無線信号を送受信するハンディ型のアンテナ部と、
このアンテナ部に対して振幅変調された質問波を出力し、前記アンテナ部が受信した応答波を復調して前記個別識別情報を含む復調出力を上位装置に対して送信する本体部と、を備え、
前記アンテナ部は、
前記無線信号を送受信するアンテナと、
このアンテナを保持する筐体と、
この筐体に設けられ、前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースの前記区分されたレコードを指定する情報を生成して前記上位装置へ出力する区分レコード指定部と、
を備えたことを特徴とする無線タグ読取装置。
【請求項4】
前記区分レコード指定部は、
それぞれ同軸状に軸装された複数のダイアル円板と、
これらのダイアル円板の回転位置を電気信号に変換し、前記情報を生成する回転位置検出部とを備えることを特徴とする請求項3記載の無線タグ読取装置。
【請求項5】
個別識別情報を有する無線タグとの間で無線信号を送受信するハンディ型のアンテナ部と、
このアンテナ部に対して振幅変調された質問波を出力し、前記アンテナ部が受信した応答波を復調して前記個別識別情報を含む復調出力を上位装置に対して送信する本体部と、を備え、
前記アンテナ部は、前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースの前記区分されたレコードを指定するための個別識別情報を保持する他の無線タグとの間で無線通信を行い、前記本体部は、前記他の無線タグの前記個別識別情報を前記上位装置に送信することを特徴とする無線タグ読取装置。
【請求項1】
複数の物品に設けられた無線タグから、これら無線タグの個別識別情報を読取る無線タグ読取装置と、
前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを、複数に区分して記憶するデータベースと、
このデータベースからいずれかの区分の前記レコードを取得し、この取得したレコードの固有識別情報と前記無線タグ読取装置が読取った個別識別情報とを照合判定する照合判定部と、を備え、
前記照合判定部が前記データベースから取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部を、前記無線タグ読取装置に設けたことを特徴とする物品管理システム。
【請求項2】
それぞれ無線タグを設けられた複数の物品を配設し、前記無線タグの個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースを設置し、
複数の物品に設けられた無線タグからこれら無線タグの前記個別識別情報を読取る無線タグ読取装置に、前記データベースから取得する区分されたレコードを指定する区分レコード指定部を設け、
この区分レコード指定部が前記区分されたレコードを指定し、
照合判定を行う照合判定部が、前記区分レコード指定部が指定したレコードを前記データベースから取得し、この取得したレコードの固有識別情報と、前記無線タグ読取装置が読取った前記個別識別情報とを照合判定することを特徴とする物品管理方法。
【請求項3】
個別識別情報を有する無線タグとの間で無線信号を送受信するハンディ型のアンテナ部と、
このアンテナ部に対して振幅変調された質問波を出力し、前記アンテナ部が受信した応答波を復調して前記個別識別情報を含む復調出力を上位装置に対して送信する本体部と、を備え、
前記アンテナ部は、
前記無線信号を送受信するアンテナと、
このアンテナを保持する筐体と、
この筐体に設けられ、前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースの前記区分されたレコードを指定する情報を生成して前記上位装置へ出力する区分レコード指定部と、
を備えたことを特徴とする無線タグ読取装置。
【請求項4】
前記区分レコード指定部は、
それぞれ同軸状に軸装された複数のダイアル円板と、
これらのダイアル円板の回転位置を電気信号に変換し、前記情報を生成する回転位置検出部とを備えることを特徴とする請求項3記載の無線タグ読取装置。
【請求項5】
個別識別情報を有する無線タグとの間で無線信号を送受信するハンディ型のアンテナ部と、
このアンテナ部に対して振幅変調された質問波を出力し、前記アンテナ部が受信した応答波を復調して前記個別識別情報を含む復調出力を上位装置に対して送信する本体部と、を備え、
前記アンテナ部は、前記無線タグの前記個別識別情報とこの無線タグが付された物品の物品情報とを各物品毎に紐付けしたレコードを複数に区分して記憶するデータベースの前記区分されたレコードを指定するための個別識別情報を保持する他の無線タグとの間で無線通信を行い、前記本体部は、前記他の無線タグの前記個別識別情報を前記上位装置に送信することを特徴とする無線タグ読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−60124(P2011−60124A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210831(P2009−210831)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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