説明

物品管理システム

【課題】複数の部品のうち作業者が迅速に目的の部品を取り出すことを可能にする。
【解決手段】複数種類の部品のうち必要な部品の取り出しを行う作業者が所持する携帯端末12と各携帯端末12と通信を行う中央制御装置11とを備える部品管理システムであって、携帯端末12は、部品ごとに設けられる当該部品を識別する識別コードを複数個が視野内に収まるように光学的に撮影を行う撮影部23と、撮影部23が撮影した画像に含まれる識別コードを認識して、認識した識別コードに対応する部品を特定するコード認識部24と、中央制御装置11から送信された携帯端末12ごとに各部品の要否を設定している個別部品情報とコード認識部24により特定された部品の情報とに基づいて、画像に含まれる識別コードが示す部品の要否を識別可能に表示する表示部28と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の物品を管理する物品管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機は油圧部品やエンジン部品、電気系統部品等の多数の部品から構成される。作業機の生産ラインでは、多数の部品を順次組み立てることにより作業機を構成する。作業機を構成する部品は、当該部品ごとに格納庫に保管されている。格納庫の中には多数に区画形成された収納部が設けられており、各収納部に種類別に部品が格納されている。そして、部品を組み立てるときには、複数の収納部のうち対応する収納部から部品を取り出して、作業機を組み立てる工程を行う。
【0003】
作業機には小型、中型、大型の各作業機が多種類存在しており、また同じカテゴリーの作業機であっても複数のタイプが存在している。異なるカテゴリー或いは異なるタイプの作業機では必要とされる部品は異なる。ただし、異なるカテゴリー或いは異なるタイプで全ての部品が異なるのではなく、ある程度共通的に使用される部品もある。
【0004】
よって、複数のカテゴリー或いは複数のタイプで生産ラインを共通化することで、生産作業を行うスペースを小型化するようにしている。このため、保管庫の各収納部は1つのカテゴリー或いは1つのタイプのみに特化して設けているのではなく、複数のカテゴリー或いは複数のタイプで共通的に使用されるようになる。
【0005】
各収納部にはそれぞれ1種類の部品が格納されているが、その部品数は複数格納するようにしている。ただし、作業機を構成するために必要な部品数を収納部に格納するようにしているため、むやみに部品の取り出しを行うと、収納部から部品が不足する。このために、作業者が部品の取り出しを行うことができない事態が生じる。
【0006】
このため、多数に区画形成されている収納部から、作業者は適切な部品を適切な数量だけ取り出す必要がある。棚に設けた複数の収納部にバーコードを付して、各バーコードをバーコードリーダで読み取る技術が特許文献1に開示されている。この技術を用いて、バーコードを読み取ることで、適切な部品の取り出しを行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−192431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
作業機を構成する部品数は膨大な数になり、部品を収納する収納部の区画数も著しく多いものになる。しかも、1人の作業者が部品の取り出しを行って組み立てる工程を行うのではなく、複数の作業者が部品の取り出しを行ってそれぞれの組立工程を行う。従って、各作業者によって収納部から取り出す部品は異なる。
【0009】
この点、従来技術のように、収納部にバーコードを付して、当該バーコードをそれぞれバーコードリーダで読み取って、必要な部品であるか否かを識別することができる。ただし、複数の作業者が多数のバーコードをいちいちバーコードリーダで読み取って、必要な部品であるか否かを識別するためには極めて長時間を要するようになる。
【0010】
作業機の生産性を向上するために、区画数が多数形成された各収納部から必要な部品を迅速且つ適切に取り出す必要がある。各収納部についてそれぞれバーコードを読み取って認識することは、部品の取り出し速度を大幅に遅延化させる。これが、作業機の生産性の低下を招来する。
【0011】
そこで、本発明は、複数の物品のうち作業者が迅速に目的の物品を取り出すことを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、本発明の物品管理システムは、複数種類の物品のうち必要な物品の取り出しを行う作業者が所持する携帯端末と各携帯端末と通信を行う中央制御装置とを備える物品管理システムであって、前記携帯端末は、前記物品ごとに設けられる当該物品を識別する識別コードを複数個が視野内に収まるように光学的に撮影を行う撮影部と、前記撮影部が撮影した画像に含まれる前記識別コードを認識して、認識した前記識別コードに対応する物品を特定するコード認識部と、前記携帯端末を識別する端末識別部と、前記端末識別部により識別された前記携帯端末に対して前記中央制御装置から送信される前記携帯端末ごとに各物品の要否を設定している個別物品情報と前記コード認識部により特定された物品の情報とに基づいて、前記画像に含まれる前記識別コードが示す物品の要否を識別可能に表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この物品管理システムによれば、撮影した画像は複数の物品を含む俯瞰画像になり、この俯瞰画像の中に含まれる複数の物品のそれぞれの要否が表示される。これにより、作業者は携帯端末の画像を視認するだけで、複数の物品の中から自身に必要な物品を容易に取り出すことができる。このため、複数の物品のうち作業者は目的の物品を迅速に取り出すことができるようになる。
【0014】
また、前記画像に含まれる前記物品のうち必要な物品を識別するシンボルを前記画像に重畳する画像処理を行う画像処理部と、前記携帯端末を所持する前記作業者が任意の前記シンボルを設定するシンボル設定部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
画像中にシンボルを表示することで、画像の中から必要な物品を主張させている。これにより、作業者は画像を視認するだけで、一見して容易に目的の物品を認識することができる。且つ、作業者はシンボルを任意に設定することができることから、自身の感性に応じたシンボルを設定することができ、目的の物品を直感的に認識することができるようになる。
【0016】
また、前記画像処理部は、前記シンボルに前記必要な物品の個数を付加して表示させる画像処理を行うことを特徴とする。
【0017】
シンボルに物品の必要個数を付加して表示することで、必要な物品の種類だけでなく、取り出しを行う物品の個数までもが視覚的に一見して認識することができるようになる。これにより、作業者の部品取り出し作業をさらにアシストすることができ、作業効率を向上させることができるようになる。
【0018】
また、相互に関連性のある物品同士に同一の識別コードを付して、前記画像処理部は同一の識別コードが付された前記物品について同じシンボルを重畳表示するように画像処理することを特徴とする。
【0019】
物品と物品とが関連性を有している場合、例えば1つの物品に他の物品が取り付けられるような場合に同一の識別コードを付して、同じシンボルを表示することで、画像を視認することにより物品同士の相互の関連性が一見して把握することができるようになる。
【0020】
また、前記識別コードに対応する物品が変更されたときには、前記識別コードを変更することなく前記中央制御装置の前記個別物品情報および前記コード認識部が特定する物品の情報を変更することを特徴とする。
【0021】
物品が変更されたときには物品と識別コードとの対応関係を変更する必要があるが、識別コードを変更するのではなく、中央制御装置の個別物品情報およびコード認識部が特定する物品の情報を変更している。これにより、識別コードを変更する必要がなくなり、情報を変更するだけで対応関係を変更することができるようになる。
【0022】
また、本発明の作業機の部品管理システムは、前述した何れかに記載の物品管理システムを備えたことを特徴とする。物品管理システムは任意のシステムに適用することができるが、例えば複数の部品を組み立てて作業機を生産するときに部品を管理する作業機の部品管理システムに適用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数の識別コードを視野内に収めて、複数種類の物品を俯瞰して認識するようにしていることから、このうち目的となる物品を直感的且つ正確に識別することができるようになる。これにより、容易且つ迅速に、しかも間違いなく適切に物品の取り出しを行うことができ、作業性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】収納部および識別コードの一部を示す図である。
【図2】作業機の部品管理システムの全体構成図である。
【図3】個別部品情報の一例を示す図である。
【図4】2つの携帯端末が同じ視野を撮影している状態を示す図である。
【図5】2つの携帯端末の表示部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では物品管理システムを作業機の部品管理システムに適用した場合について説明する。従って、本実施形態では物品は作業機を構成する部品となる。勿論、複数種類の物品から目的となる物品を取り出すときの管理を行うシステムであれば、任意のシステムに適用することができる。例えば、書庫に保管されている書籍やファイル等を物品として、当該物品を取り出すときの管理に本発明の物品管理システムを適用することができる。
【0026】
図1は作業機を構成する部品が収納されている収納部1を示している。作業機は油圧部品やエンジン部品、電気系統部品といった多数の部品から構成されており、作業機の生産ラインでは多数の部品を順次組み立てる組立工程を経ることにより作業機の組み立てを行う。作業機の構成部品は部品ごとに格納庫に保存されており、この格納庫の棚に収納部1が多数区画形成されている。そして、各収納部1にはそれぞれ1種類の部品が複数個収納されている。
【0027】
作業機の組立工程を行う作業者は各収納部1から1または複数の部品を取り出して、生産ラインの流れに応じて部品の組立作業を行う。作業機の構成部品は極めて多数になるため、複数の作業者が自身の作業に応じて収納部1から必要な部品を取り出して、組立作業を行う。従って、各収納部1からは1人の作業者ではなく、複数の作業者が必要に応じて部品の取り出しを行う。
【0028】
図1は多数に区画形成された収納部1のうち一部(8つ)の収納部1−1〜1−8(総称して収納部1)を示している。各収納部1にはそれぞれ異なる種類の部品が収納されており、1つの収納部1には1または複数個の部品が収納されている。各収納部1−1〜1−8にはそれぞれ個別的に識別コード2−1〜2−8(総称して識別コード2)が設けられている。図1では収納部1の下部に識別コード2を設けているが、上部、左部、右部等の任意の位置に識別コード2を設けることができる。
【0029】
この識別コード2は収納部1に収納されている部品を特定するための情報であり、例えば1次元或いは2次元のバーコード等を適用することができる(図中では1次元のバーコード)。従って、収納部1に収納された部品に応じて各識別コード2はそれぞれ異なるコードとなっている。識別コード2を直接的に視認しても格別の情報を認識することができないが、後述する携帯端末12を用いて識別コード2の情報を認識することができる。
【0030】
次に、図2を用いて、本実施形態の作業機の部品管理システム(以下、部品管理システム)の一例を示す。この図に示すように、部品管理システム10は中央制御装置11と携帯端末12A、携帯端末12B(総称して携帯端末12)とを備えている。図2では識別コード2−1〜2−8を示しており、これらは図1で示した識別コード2−1〜2−8と同じである。ただし、図2では概念的に1列に並べて示している。
【0031】
中央制御装置11は各携帯端末12A、12Bと通信を行うサーバである。複数の作業者が作業機の生産工程を行っており、各作業者に1つの携帯端末12が割り当てられる。つまり、各作業者はそれぞれ1つの携帯端末12を所持する。図2の例では、2人の作業者A、Bを想定しており、作業者Aが携帯端末12Aを所持し、作業者Bが携帯端末12Bを所持している。勿論、作業者は3人以上であってもよく、この場合には携帯端末12は3つ以上となる。
【0032】
中央制御装置11は更新部13とサーバ記憶部14と送信部15とを有して構成したサーバである。更新部13はキーボードやマウス等を用いてサーバ記憶部14に記憶される個別部品情報の更新を行う。サーバ記憶部14は個別部品情報を記憶する。個別部品情報は、図3に示すように、携帯端末12ごとに個別的に部品の要否を示す情報になっている。部品1〜部品8は8つの収納部1−1〜1−8に収納されている部品を示しており、各部品について携帯端末12ごとに必要であるか否かの情報をテーブル形式で設定している。
【0033】
図2に示すように、送信部15は個別部品情報を各携帯端末12に送信する。後述するように、各携帯端末12A、12Bには端末識別部21が設けられており、この端末識別部21は携帯端末12の個体を識別する。よって、送信部15は端末識別部21によって識別されるそれぞれの携帯端末12に対して個別的に部品情報を送信する。送信部15は任意の手段により個別部品情報を送信してもよいが、ここでは無線通信により送信しているものとする。
【0034】
携帯端末12A、12Bはほぼ同じ構成となっており、端末識別部21と端末記憶部22と撮影部23とコード認識部24と画像処理部25とシンボル設定部26と表示制御部27と表示部28とを備えて構成している。図2に示した構成を有してれば、携帯端末12Aと12Bとは完全に同じ構成とする必要はなく、その構成を異なるようにしてもよい。
【0035】
端末識別部21は携帯端末12の個体を識別するための手段である。中央制御装置11の送信部15は端末識別部21を認識して、個別部品情報を送信する携帯端末12を特定する。端末記憶部22は中央制御装置11の送信部15が送信した個別部品情報を記憶する。撮影部23は光学的に画像を撮影するカメラであり、ここでは図1に示した視野Rの画像を撮影する。撮影部23が撮影する画像は可視光画像であるものとするが、紫外光画像や赤外光画像等であってもよい。撮影部23は光学的な画像を光電変換して電気的な画像データに変換する。この画像データには複数(ここでは、8つ)の識別コード2が含まれる。
【0036】
コード認識部24は画像データの中から識別コード2を抽出する。識別コード2は画像データの中の特異点であり、この特異点を抽出することにより識別コード2を認識する。この識別コード2は部品を特定しており、コード認識部24も識別コード2に対応して部品を認識している。このために、識別コード2に対応した部品の情報を関連付けて記憶する。コード認識部24が識別コード2に基づいて認識した部品をコード部品情報とする。
【0037】
画像処理部25は撮影部23が撮影した画像データを入力して画像処理を行う。画像処理部25は端末記憶部22から個別部品情報を入力しており、またコード認識部24からコード部品情報を入力している。よって、個別部品情報とコード部品情報とを比較することにより、コード部品情報が示す部品のうち携帯端末12を所持する作業者が必要である部品を認識する。
【0038】
また、画像処理部25はシンボル設定部26から設定されたシンボルを入力する。シンボル設定部26は表示部28に表示される画像に重畳して表示するシンボルを設定する。このシンボルは自由な図柄や記号等に設定することができる。画像処理部25はコード部品情報が示す部品のうち必要な部品の情報に対してシンボル表示を行うように画像処理を行う。具体的には、画像データに含まれる識別コード2の箇所に設定されたシンボルを立体的に重畳表示するように画像処理を行う。シンボルを立体的に重畳表示する技術としては例えば拡張現実を用いることができる。
【0039】
この画像処理を行った画像データは表示制御部27に出力される。表示制御部27は画像データを表示部28に表示させる。表示部28は携帯端末12に設けられたディスプレイである。作業者は表示部28を視認することにより、画像データに含まれる部品のうち取り出しが必要な部品を認識する。
【0040】
以上が構成である。次に、動作について説明する。作業機の生産工程に従事する複数の作業者が携帯端末12を所持する。携帯端末12と作業者とは予め関連付けられており、携帯端末12を所持する作業者が組立作業を行うために必要な部品と必要でない部品とを個別部品情報としてサーバ記憶部14に記憶する。従って、サーバ記憶部14には携帯端末12ごとに部品の要否がテーブル形式で記憶される。
【0041】
図3の例では、携帯端末12Aを所持する作業者は収納部1−1〜1−8に収納されている部品1〜8のうち部品2、3、4、7、8が必要であり、それ以外は不要であることが設定されている。一方、携帯端末12Bを所持する作業者は部品1〜8のうち部品2、3、5、6、7、8が必要であり、それ以外は不要であることが設定されている。部品の個数が9つ以上の場合にはその部品に応じて携帯端末12ごとに部品の要否が設定され、携帯端末12が3つ以上の場合には3つ以上の個別部品情報が設定される。
【0042】
送信部15は各携帯端末12と個別的に通信を行う。各携帯端末12の端末識別部21を認識することで、それぞれの携帯端末12の個体を認識する。そして、個別部品情報は携帯端末12ごとに設定されており、端末識別部21によって識別される携帯端末12に対して、送信部15は対応する個別部品情報を送信する。これにより、各携帯端末12A、12Bには自身の携帯端末12に対応した個別部品情報が受信される。そして、受信した個別部品情報を端末記憶部22に記憶する。以上の点は作業を開始する前に予め設定を終了しておく。
【0043】
複数の作業者A、Bが作業に従事しているときに、新たな部品を必要とした場合には、収納部1から部品の取り出しを行う。図1に示したように、収納部1は多数に区画形成がされており、格納庫全体に多数種類の部品が収納されている。作業者はこのうち必要な部品の取り出しを行うために、携帯端末12を用いる。このために、携帯端末12の撮影部23を収納部1に向けて、所定範囲を視野Rとした撮影を行う。
【0044】
ここでは、図4に示すように、作業者AおよびBが同じ視野Rを撮影しているものとする。従って、携帯端末Aの撮影部23の視野Rと携帯端末Bの撮影部23の視野Rとには収納部1−1〜1−8および識別コード2−1〜2−8が含まれている。なお、撮影部23の視野Rは携帯端末12を動かすことにより変化させることができ、視野Rは上下および左右の任意の方向に移動させることができる。
【0045】
撮影部23が撮影した画像データはコード認識部24に出力される。コード認識部24は画像データのうち識別コード2を抽出する。ここでは、携帯端末Aおよび携帯端末Bは同じ識別コード2−1〜2−8を視野Rとしており、両携帯端末12A、12Bのコード認識部24は識別コード2−1〜2−8を抽出する。識別コード2は収納部1と対応付けられており、識別コード2を用いて収納部1に収納されている部品が特定される。コード認識部24は識別コード2に対応する部品を予め記憶しており、これにより識別コード2−1〜2−8に対応する部品をコード部品情報として認識する。
【0046】
コード認識部24は撮影部23から入力した画像データを画像処理部25に出力すると共に、画像データに含まれる識別コード2−1〜2−8のそれぞれに対応する部品の情報をコード部品情報として画像処理部25に出力する。画像処理部25はコード部品情報に基づいて、画像データに含まれる識別コード2−1〜2−8に対応する部品を認識する。これにより、画像処理部25は撮影部23が撮影している視野Rの収納部1−1〜1−8に収納されている部品1〜8を認識する。
【0047】
そして、画像処理部25は端末記憶部22から個別部品情報を取得する。この個別部品情報は携帯端末12ごとに部品の要否を示す情報になっており、個別部品情報には部品1〜8の要否に関する情報も含まれている。そこで、画像処理部25はコード部品情報により特定された部品1〜8について個別部品情報と比較し、当該部品1〜8の要否を認識する。これにより、携帯端末12Aの画像処理部25は、視野Rに映っている部品1〜8のうち部品2、3、4、7、8が必要であることを認識する。一方、携帯端末12Bの画像処理部25は、視野Rに映っている部品1〜8のうち部品2、3、5、6、7、8が必要であることを認識する。また、携帯端末12A、12Bは、これら以外の部品は必要でないことを認識する。
【0048】
画像処理部25はシンボル設定部26からシンボルを取得する。シンボル設定部26を用いて表示部28に表示されるシンボルを自由に設定することができる。このシンボルは必要な部品を特定するための記号や図柄等であり、作業者A、Bのそれぞれが自由にシンボルを設定することができる。図5の例では、作業者Aはシンボルに円柱を設定し、作業者Bはシンボルに四角柱を設定している。
【0049】
携帯端末12Aの画像処理部25はシンボル設定部26からシンボルが円柱であることを取得する。そして、画像データに含まれる識別コード2−1〜2−8のうち必要な部品2、3、4、7、8に対応する識別コード2−1、2−3、2−4、2−7、2−8の位置に円柱を表示するように、画像データに対して円柱を重畳的に表示する画像処理を行う。これにより、画像データは図5のようになり、視野Rの画像の中にシンボル(円柱)が重畳的に表示される。
【0050】
携帯端末12Bの画像処理部25はシンボル設定部26からシンボルが四角柱であることを取得する。そして、画像データに含まれる識別コード2−1〜2−8のうち必要な部品2、3、5、6、7、8に対応する識別コード2−1、2−3、2−5、2−6、2−7、2−8の位置に四角柱を表示するように、画像データに対して四角柱を重畳的に表示する画像処理を行う。これにより、画像データは図5のようになり、視野Rの画像の中にシンボル(四角柱)が重畳的に表示される。
【0051】
従って、携帯端末12A、12Bの表示部28には撮影部23が撮影した視野Rの画像が表示されるが、この画像の中に取り出すことが必要な部品がシンボル表示される。このシンボルは画像中の特徴点として表示されるため、画像中の部品のうち必要な部品を一見して把握することができる。
【0052】
図5に示すように、複数(8つ)の収納部1および識別コード2が視野Rに含まれており、画像データを確認することで、複数の部品の収納部1を俯瞰的に視認することが可能になる。そして、画像データには必要な部品がシンボルにより特定されるため、俯瞰的に表示された複数の部品のうち1または複数の必要な部品を直感的に把握することができる。一度に複数の部品を俯瞰的に認識して部品の要否を判別できるため、必要な部品を迅速に認識して取り出しを行うことができる。
【0053】
一定範囲の視野Rは上下および左右方向に移動させることができるため、視野Rを移動させることにより、他の部位の一定範囲について撮影した画像およびシンボルを表示することができる。これにより、俯瞰表示させる画像を移動させて、他の収納部1について必要な部品を迅速に認識することができる。
【0054】
そして、携帯端末12Aと12Bとのそれぞれで目的となる部品が異なる。これは、携帯端末12Aを所持する作業者Aと携帯端末12Bを所持する作業者Bとで必要な部品が異なるためである。このために、サーバ記憶部14に記憶された個別部品情報に基づいて、画像処理部25が必要な部品にのみシンボル表示を行うように画像処理を行う。図5では、同じ視野Rの画像を映し出しているため、収納部1やその他の映像については、携帯端末12Aの表示部28と携帯端末12Bの表示部28とで全く同一になる。
【0055】
ただし、携帯端末12A、12Bのそれぞれで必要となる部品が異なる(つまり、作業者A、Bで必要な部品が異なる)ため、画像処理部25により画像データに重畳表示されるシンボルは携帯端末12Aと12Bとで異なるようになる。従って、作業者A、Bが同じ箇所を携帯端末12A、12Bを用いて同じ箇所を撮影していたとしても、その作業者A、Bに応じた部品の位置にシンボルが表示されるため、自身の作業に応じた部品の取り出しを直感的に且つ迅速に行うことができるようになる。
【0056】
換言すれば、収納部1に収納されている各部品の方から作業者が所持する携帯端末12A、12Bに対して個別的に、自身の部品が必要であるか否かを主張させている。つまり、部品の方から要否を自己主張させている。これにより、部品の取り出し間違い等を生じることなく、迅速且つ正確に部品の取り出しを行うことができる。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態では、複数の部品に対応する識別コード2が視野Rに収まるように撮影を行い、画像データに含まれる識別コード2に対応する部品のうち携帯端末12ごとに設定された個別部品情報に基づいて、必要な部品を認識する。そして、必要な部品に対応する箇所にシンボル表示を行うことで、複数の部品が含まれた俯瞰的な画像データのうち必要な部品を一見して認識することができる。これにより、迅速な部品の取り出しを行うことができ、作業機を生産する効率が向上する。
【0058】
以上において、画像データに含まれる部品のうち取り出しを行う部品を特定するためにシンボルを用いたが、シンボル以外の手段を用いてもよい。例えば、画像データのうち必要な部品を認識できる箇所の色彩を変更し、或いは点滅させる等を行ってもよい。要は、画像データに含まれる複数の部品を俯瞰的に表示したときに、そのうち必要な部品を迅速に把握できるものであれば任意の手法を用いてもよい。
【0059】
また、画像処理部25はシンボル設定部26に設定されたシンボルを画像データに重畳表示させるときに、必要な部品の個数を付加して表示するようにしてもよい。このために、サーバ記憶部14に設定される個別部品情報には部品の要否だけではなく、必要な部品の個数も含めるようにする。そして、送信部15が携帯端末12に個別部品情報を送信することで、携帯端末12は部品の要否および必要な部品の個数を認識することができる。
【0060】
そして、画像処理部25が個別部品情報に基づいて必要な部品をシンボル表示するときに、図5に示すように、その個数を付加して画像データに重畳表示する。これにより、作業者A、Bは表示部28を視認するだけで、複数の収納部1に収納されている部品のうち必要な部品を特定するだけでなく、取り出しを行う個数についても迅速且つ直感的に認識することができるようになる。
【0061】
また、画像処理部25は画像データの中の識別コード2の位置にシンボルを重畳表示させていたが、識別コード2以外の位置に表示させてもよい。例えば、画像データに映し出されている収納部1の位置或いはその近傍にシンボルを表示するようにしてもよい。要は、画像データに含まれている部品を特定できる位置にシンボルを表示できればよく、これにより作業者は迅速且つ直感的に部品の取り出しを行うことができるようになる。
【0062】
また、識別コード2は区画形成された各収納部1の下部位置に設けていた。つまり、1つの収納部1に対応して1つの識別コード2を設けていた。これにより、収納部1に収納されている部品と識別コード2とを対応させていたが、識別コード2は部品自体に設けるものであってもよい。最終的には、部品と識別コード2とを対応させるため、部品に識別コード2を設けても、両者を対応させることはできる。
【0063】
この点、部品自体に識別コード2を設けて、且つ収納部1に対応した位置にも識別コード2を設けるようにして、部品に設けた識別コード2と収納部1に対応した位置の識別コード2とが一致したときに画像処理部25はシンボル表示をするようにしてもよい。部品は適正な収納部1に収納されていることが望ましく、部品に設けた識別コード2と収納部1に対応した位置に設けた識別コード2とが異なる場合には、部品が不適正な収納部1に収納されていることになる。従って、前記の2つの識別コード2が一致したときにのみシンボル表示をすることで、適正に収納されている部品のみが取り出し対象となる。
【0064】
また、シンボル設定部26には多数種類のシンボルを設定してもよく、少なくとも画像データに含まれる識別コード2の個数以上の種類のシンボルを予め設定することができる。これにより、画像データに表示される各シンボルをそれぞれ異なる種類とすることができる(例えば、円柱、三角柱、星型等のように種類を異ならせる)。
【0065】
収納部1に収納される各部品は相互に関連性を有する場合がある。例えば、2つの部品を組み合わせて1つの部品を構成するような場合、或いは基本部分を構成する部品(フレーム等)に他の部品を取り付けるような場合である。このような場合において、相互に取り付けられる関連性を有する部品には同一の識別コード2を付すようにする。
【0066】
これにより、画像処理部25は同一の識別コード2に対しては、シンボル設定部26に多数種類が設定されているシンボルのうち同一種類のシンボルを重畳表示する。従って、画像データには関連性のある部品については同一種類のシンボルが表示され、それ以外の必要な部品については他の種類のシンボルが表示されるため、部品相互の関連性を直感的に認識することができる。
【0067】
この点、撮影部23の視野Rに工具が含まれている場合には、この工具を用いて取り付けを行う部品と同一の識別コード2を工具に付すことができる。これにより、部品と識別コード2とを同一種類のシンボルで表示することができ、工具と部品との関連性についても直感的に認識することができる。
【0068】
また、収納部1に収納する部品の種類を変更するときには、識別コード2の変更は行わないようにすることができる。このときには、サーバ記憶部14に設定されている個別部品情報およびコード認識部24に設定されている部品と識別コード2との対応関係を変更する。このように、中央制御装置11および携帯端末12に設定されている情報を変更するだけで、収納部1に対応する位置に設けられている識別コード2を変更する必要がなくなる。例えば、識別コード2がラベル形式のバーコードである場合には、ラベルの貼り替えを要しなくなる。
【0069】
また、収納部1は格納庫の立面の棚に区画形成されたものとして説明したが、床面に区画形成されたものであってもよい。また、建物自体や壁、天井等に収納部1を区画形成してもよい。また、収納部1は固定されたものではなく、可動式の運搬具等に設けてもよい。
【0070】
また、作業者は携帯端末12を用いて、撮影部23から映像の取得を行うが、このときに画像データに少なくとも1つの識別コード2が入ったときに、その旨を作業者に了知させるようにしてもよい。これにより、少なくとも1つの部品が視野R内に収まったことを作業者は認識することができる。作業者に対する了知は音や光等を用いることができる。
【0071】
また、撮影部23は識別コード2を光学的に撮影して、部品を認識するようにしている。例えば、無線タグ等のように電気的な無線信号により部品を認識するようにしていない。作業機を構成する各部品は基本的に鉄素材であり、無線信号は部品の素材に吸収されやすい。これにより、無線信号を正常に送受信することができず、部品の認識を正確に行なえないことがある。この点、光学的に撮影して識別コード2を認識することで、作業機の構成部品が鉄素材であったとしても、正確に部品を認識することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 収納部
2 識別コード
10 部品管理システム
11 中央制御装置
12 携帯端末
13 更新部
14 サーバ記憶部
15 送信部
21 端末識別部
22 端末記憶部
23 撮影部
24 コード認識部
25 画像処理部
26 シンボル設定部
27 表示制御部
28 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の物品のうち必要な物品の取り出しを行う作業者が所持する携帯端末と各携帯端末と通信を行う中央制御装置とを備える物品管理システムであって、
前記携帯端末は、
前記物品ごとに設けられる当該物品を識別する識別コードを複数個が視野内に収まるように光学的に撮影を行う撮影部と、
前記撮影部が撮影した画像に含まれる前記識別コードを認識して、認識した前記識別コードに対応する物品を特定するコード認識部と、
前記携帯端末を識別する端末識別部と、
前記端末識別部により識別された前記携帯端末に対して前記中央制御装置から送信される前記携帯端末ごとに各物品の要否を設定している個別物品情報と前記コード認識部により特定された物品の情報とに基づいて、前記画像に含まれる前記識別コードが示す物品の要否を識別可能に表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする物品管理システム。
【請求項2】
前記画像に含まれる前記物品のうち必要な物品を識別するシンボルを前記画像に重畳する画像処理を行う画像処理部と、
前記携帯端末を所持する前記作業者が任意の前記シンボルを設定するシンボル設定部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の物品管理システム。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記シンボルに前記必要な物品の個数を付加して表示させる画像処理を行うこと
を特徴とする請求項2記載の物品管理システム。
【請求項4】
相互に関連性のある物品同士に同一の識別コードを付して、前記画像処理部は同一の識別コードが付された前記物品について同じシンボルを重畳表示するように画像処理すること
を特徴とする請求項2記載の物品管理システム。
【請求項5】
前記識別コードに対応する物品が変更されたときには、前記識別コードを変更することなく前記中央制御装置の前記個別物品情報および前記コード認識部が特定する物品の情報を変更すること
を特徴とする請求項2記載の物品管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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