説明

物流容器

【課題】半液体状態のスラリー氷の投入充填時には短時間に液体が抜け出すことができ、かつ貫通孔を有する底部を簡単な操作で閉塞でき、密封状態に良好に保持できる物流容器を提供する。
【解決手段】容器本体10の底部11に形成された凹設部12に、少なくとも一側辺から摺動可能に嵌挿される底板30を備え、底部11の凹設部12の底壁14に、底板30の複数の貫通孔15が形成され、底板30には、完全嵌挿位置から側辺の開放端側に引きだした不完全嵌挿位置にあるときに底壁14の貫通孔15と合致し、かつ、完全嵌挿位置にあるときに底壁14の貫通孔15外にずれた位置にあるように複数の貫通孔35が設けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にブロッコリー等の野菜その他の農産物や鮮魚類等の輸送、保管等に使用される発泡樹脂製の物流容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブロッコリー等の野菜その他の農産物の輸送、保管等の物流において、上方に開口した平面矩形の容器本体と、その開口端部に嵌合被着される蓋体とからなる発泡スチロール等の断熱性のある発泡樹脂製の容器が使用されている。例えば、ブロッコリー等の野菜の場合、収穫された野菜を容器本体に収納し、収納した野菜の上に砕氷を入れて氷詰めにし、この状態で蓋体を被着して、保冷状態で輸送等の物流に供する。
【0003】
近年、前記の氷詰めに用いる氷として、細かな氷片を水と混合させた流動性のある半液体状態をなすいわゆるシャーベット状のスラリー氷が用いられるようになってきている。シャーベット状のスラリー氷は、液体と同様にポンプにより搬送して容器本体内に容易に充填することができ、しかも、開孔を有する容器を使用した場合、充填されたスラリー氷の液体が開孔から短時間に抜け出ることにより、ブロッコリー等の野菜の間に残ったスラリー氷の氷が隙間なく野菜を包み込んだ状態で固まることで、ブロッコリー等の野菜を固定でき、しかも野菜を新鮮に保つことができることから、特に近年において注目され普及し始めている。
【0004】
このような氷詰めのためにスラリー氷を使用する物流容器としては、充填されるスラリー氷の全体を充分に固まらせるために、スラリー氷の充填時には液体を短時間に排出できることが望まれ、しかも輸送時には空気侵入を防止して保冷効果を低下させないように密封状態を良好に保持できることが望まれる。
【0005】
特許文献1には、鮮魚の輸送に使用する発泡樹脂製の容器において、シャーベット状のスラリー氷を使用する際に、スラリー氷の投入充填時の排水効果を高めるとともに、輸送時の空気侵入を防止するために、容器底面に非貫通の水落とし孔と該水落とし孔から容器外部に通じるトンネル部とを設けておき、海水を含むスラリー氷の投入時には、海水のみが水落とし孔に落とし込まれることで、海水をトンネル部を通じて外部に排出でき、また輸送時には前記トンネル部に溜まる水滴によつてトンネル部を遮蔽できて、密封状態を保持できるようにしたものが提案されている。
【0006】
しかしながら、この提案の場合、輸送中は、容器底面の水落とし孔とトンネル部による排水のための通路が水滴のみによって遮蔽されるものであるため、輸送中に水滴が脱落したり蒸発して縮小したりする可能性があって遮蔽状態が不安定になり、密封状態の保持に不安がある。
【0007】
また、特許文献2には、魚介類を水と共に収容して、収容物に含まれる砂やゴミ等を収容物と分離する目的で、函体の底壁を上段底壁と下段底壁との2重底壁にして、上段底壁に複数の貫通孔を設けておき、下部底壁を離脱させた状態で魚介類等の収容物を収容し、付着物を洗い流した後、下段底壁を装着し、閉蓋し密封状態にして輸送に供するようにした発泡樹脂製の容器が提案されている。
【0008】
この提案の場合、下部底壁は、函体の側壁下端に対し凹凸による嵌合構造により嵌着する構造であるために、下段底壁を装着する際には、収容物が収容されている函体自体を持ち上げなければならず、装着操作が容易でなく、特に段積み状態のままでの装着操作は不可能である。しかも、収容物と共に収容された氷が溶けて生じる水を、上部底壁と下部底壁との間の空間に溜めるものであるため、函体内が底上げされたものとなり、函体の高さの割りには内容積が小さくなり、それだけ輸送効率が低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−264742号公報
【特許文献2】特開2007−84072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、シャーベット状のスラリー氷を使用する野菜等の農産物や魚介類等の物流容器として、半液体状態のスラリー氷の投入充填時には底部に有する貫通孔から短時間に液体が抜け出すことができ、しかもスラリー氷の氷が固まった状態の容器を持ち上げなくても、貫通孔を有する底部を簡単な操作で確実に閉塞でき、輸送時には密封状態に良好に保持できる物流容器を提供するものである。さらに本発明は、前記に加えて、氷が溶けて生じる水を排出でき、かつ通常時の密封性も良好に保持できる排水機能を備える物流容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する本発明の物流容器は、上方に開口する容器本体と、該容器本体に対し被着自在な蓋体とからなる断熱性を有する発泡樹脂製の物流容器であって、容器本体の底部には、その一部領域の上下面の一方側に、対向する両側辺又は一側辺に開放された凹設部が設けられるとともに、該凹設部に対し側辺の開放側から嵌挿される底板を備えてなり、前記容器本体の底部における前記凹設部の底壁に、前記底板の嵌挿方向に所要の間隔をおいて複数の排水用の貫通孔が形成され、前記底板には、前記底部に対する完全嵌挿位置に対して少なくとも一側方に前記底壁の貫通孔の底板嵌挿方向の差し渡し寸法以上を引き出した所定の不完全嵌挿位置において前記底壁の貫通孔と合致し、かつ前記底部に対する完全嵌挿位置にあるときに前記底壁の貫通孔外にずれた位置にある複数の貫通孔が設けられてなることを特徴とする。
【0012】
この物流容器によれば、野菜等を収容した後のスラリー氷の投入充填時には、前記底板を完全嵌挿位置より少し引き出した前記不完全嵌挿位置に位置させて、容器本体の底部における前記凹設部の底壁に有する貫通孔と前記底板の貫通孔とを合致させておくことで、半液体状態で投入されるスラリー氷の液体が短時間に貫通孔を通じて抜け出ることになり、スラリー氷の氷が直ちに固まった状態になる。この後、前記底板を完全嵌挿位置に押し込むことにより、該底板の貫通孔が前記底壁の貫通孔外にずれた位置になって、底部が完全に閉塞されることになる。
【0013】
前記の物流容器において、前記容器本体の底部の凹設部が容器本体の一側辺に開放して凹設されるとともに、前記底板が前記凹設部に対し前記一側辺の開放側に引き出し可能に嵌挿されてなり、前記底板の嵌挿方向先端が前記凹設部の最奥端に当接する完全嵌挿位置に対して、前記底壁の貫通孔の底板嵌挿方向の差し渡し寸法以上でかつ貫通孔同士間の間隔範囲内の所定寸法分を前記一側辺の側に引き出した位置が不完全嵌挿位置として設定され、前記底板における貫通孔が、前記不完全嵌挿位置にあるときに前記底壁の貫通孔に合致し、かつ前記完全嵌挿位置にあるときに前記底壁の貫通孔外にずれた位置にあるように形成されてなるものとすることができる。この場合、前記底板を強い力で勢いよく押し込んでも他方側に抜けることがないため、押し込み操作を容易に行え、完全嵌挿位置に容易に位置させることができる。
【0014】
また、前記の物流容器において、前記容器本体の底部の凹設部が容器本体の対向する両側辺に開放して凹設されるとともに、前記底板が前記凹設部に対し前記両側辺の開放側にそれぞれ引き出し可能に嵌挿されてなり、前記底板の前記底部に対する完全嵌挿位置に対して、前記底壁の貫通孔の底板嵌挿方向の差し渡し寸法以上でかつ貫通孔同士間の間隔範囲内の所定寸法分を両側辺の一方の側及び他方の側に引き出した位置がそれぞれ不完全嵌挿位置として設定され、前記底板における貫通孔が、前記不完全嵌挿位置にあるときに前記底壁の貫通孔に合致し、かつ前記完全嵌挿位置にあるときに前記底壁の貫通孔外にずれた位置にあるように形成されてなるものとすることもできる。この場合、前記凹設部に対する底板の嵌挿及び押し込み操作を、対向する両側辺のいずれの側からでも行えることになる。
【0015】
前記の物流容器において、前記凹設部が前記容器本体の底部の下面側に設けられ、前記底板が前記凹設部に対し両側端面において下方向きに係合した状態で摺動可能に嵌挿されてなるものとすることができる。この場合、スラリー氷の投入充填時に前記凹設部にスラリー氷が入り込むことがないため、充填後の底板の押し込み操作を容易に行え、また前記底板が前記凹設部から下方に抜脱することもない。
【0016】
前記の物流容器において、前記凹設部の底板嵌挿方向に沿う両側端面と前記底板の両側端面とに、摺動可能に嵌合する長手方向の凹条と凸条とによる嵌合構造が設けられてなるものとすることができる。これにより、前記底板は前記凹設部に対し摺動可能に嵌挿されて、しかも底壁面に対し直交する方向に抜脱しないように係合した状態に保持される。
【0017】
前記物流容器において、前記底板と前記凹設部との嵌挿方向の接触面の所要の個所に、前記底板が前記完全嵌挿位置にあるときに互いに嵌合する複数の凹部と凸部による嵌合手段が設けられるとともに、前記底板が前記不完全嵌挿位置にあるときに前記嵌合手段の少なくとも一つの凹部と凸部が嵌合するように設けられてなるものが好ましい。例えば、前記底板の両側端面と前記凹設部の両側端面の個所に、複数の凹部と凸部による前記嵌合手段が設けられてなるものとすることができる。
【0018】
これにより、前記容器本体の底部における凹設部に嵌挿した底板を、不完全嵌挿位置に容易に位置させることができ、前記底壁に有する貫通孔と底板の貫通孔の位置に合致させ易くなり、また完全嵌挿位置に押し込んだ前記底板を容易に抜脱しないように安定性よく保持できる。
【0019】
また、前記物流容器において、前記凹設部における開放側の側辺近傍における底壁面と、前記底板の引き出し側端部近傍における前記底壁面との相対側の面とに、前記底板が完全嵌挿位置にあるときに互いに嵌合する凸部と凹部による嵌合手段が設けられるとともに、前記底壁面には前記底板が不完全嵌挿位置にあるときに、前記底板の前記嵌合手段の凸部又は凹部と嵌合する凹部又は凸部が設けられてなるものとすることもできる。この場合も、前記底板を、不完全嵌挿位置と、完全嵌挿位置に容易に位置させることができる。
【0020】
前記の物流容器において、前記底板における前記底壁面との相対側の面の前記貫通孔の周辺部が底壁面に対する接触圧を他部分よりも増大させるように増肉形成されてなるものとすることができる。これにより、前記底板を完全嵌挿位置に押し込んだ状態において、前記底壁の貫通孔周辺が前記底壁面に対して密接することで閉塞性が良好に確保され、該貫通孔からの水漏れを防止できる。
【0021】
さらに、前記の物流容器において、前記容器本体の側壁の所要個所とこれに対応する蓋体の周辺部の個所に、上下方向に貫通する縦孔が設けられるととともに、容器本体の底部周辺部の縦孔に近い個所に、底部上面より落とし込んだ凹部と該凹部から前記縦孔に通じる横孔による排水通路が設けられ、該排水通路の横孔における縦孔側に横孔の内端上壁部より高くなったトラップ部が設けられてなるものとすることができる。この場合、前記排水通路のトラップ部のたのめに凹部内に溜まる水により、密封性を確保することができ、しかも氷が溶けて生じる水が一定以上になると前記排水通路のトラップ部を超えて縦孔に流れ出ることで排水される。
【0022】
前記の各物流容器において、前記容器本体の底部は、前記凹設部の底壁を含む領域の上面が他部分より高くなるように底上げ形成されてなるものが好ましい、これにより、充填されたスラリー氷の氷が溶けて生じる水は、底部における前記底壁を含む領域以外の部分に流れて、前記排水通路から確実に排出されることになる。
【発明の効果】
【0023】
上記したように本発明の物流容器によれば、ブロッコリー等の野菜その他の農産物や魚介類の輸送、保管等の物流において、内容物を収納した状態で半液体状態のスラリー氷を投入充填するときは、容器本体の底部における凹設部に嵌挿された底板を、前記完全嵌挿位置より少し引き出して所定の不完全嵌挿位置に位置させておくことで、該底板の貫通孔を容器本体の底壁の貫通孔と合致させた状態にでき、スラリー氷の液体が前記底壁と底板の両貫通孔から短時間に抜け出し、スラリー氷の氷が直ちに固まる。
【0024】
しかも、内部の氷が固まった後、前記底板を不完全嵌挿位置から完全嵌挿位置に押し込むだけの簡単な操作により、前記底板の貫通孔が底壁の貫通孔から外れた位置になることで、底部を密閉性よく閉塞できることになり、輸送時の密閉性を良好に保持できる。またそのため、底部を閉塞する操作のために内容物が収納されている容器本体を持ち上げる必要がなく、また複数の容器を段積みした状態のままでも、前記底板の押し込みにより底部を閉塞することが可能になる。
【0025】
さらに、前記容器本体の側壁と蓋体の周辺部の所要の個所に上下方向に貫通する縦孔が設けられるととともに、容器本体の周辺部の個所に凹部と前記縦孔に通じる横孔とによるトラップ機能を有する排水通路が設けられていると、収納された氷が溶けて生じる水を排出できるとともに、通常時は前記凹部内に溜まる水により密封性を良好に確保することができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の物流容器の実施例を示す蓋体と容器本体および底板を分離して示す斜視図である。
【図2】底板を抜脱した容器本体の平面図である。
【図3】同上の底面図である。
【図4】同上の側面図である。
【図5】同上の容器本体に使用する底板の正面図(a)と平面図(b)と側面図(c)である。
【図6】図2のA−A線での底板嵌挿前の容器本体と蓋体の断面図である。
【図7】同上の底板を完全嵌挿位置に嵌挿した状態の断面図である。
【図8】同上の図2のB−B線での断面図である。
【図9】同上の容器本体の底板が不完全嵌挿位置にある状態(a)と完全嵌挿位置にある状態(b)の一部の拡大断面図である。
【図10】同上の物流容器の縦孔と排水通路部分の断面図である。
【図11】同上の一部の拡大断面図である。
【図12】本発明の他の実施例を示す底板を抜脱した容器本体の平面図である。
【図13】同上の底面図である。
【図14】図12のC−C線の断面図である。
【図15】同上の実施例の容器本体に使用する底板の正面図(a)と平面図(b)と側面図(c)である。
【図16】底板を完全嵌挿位置に嵌挿した状態の図12のC−C線での断面図である。
【図17】同上の図12のD−D線での断面図である。
【図18】同上の容器本体の底板が不完全嵌挿位置にある状態(a)と完全嵌挿位置にある状態(b)の一部の拡大断面図である。
【図19】本発明のさらに他の実施例を示す容器本体の平面図である。
【図20】同上の容器本体の断面図である。
【図21】本発明の物流容器のさらに他の実施例を示す蓋体と容器本体の斜視図である。
【図22】同上の蓋体の半部を切欠した蓋体被着状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0028】
図1〜図11の第1の実施例について説明する。物流容器Aは、主として発泡ポリスチレン等の発泡樹脂を素材として成形された断熱性を有する発泡樹脂製の容器であり、平面が長方形や正方形等の矩形をなして上方に開口する容器本体10と、該容器本体10の開口部に対し嵌合被着自在な蓋体40とよりなる。
【0029】
前記容器本体10の開口部に対する前記蓋体40の嵌合による被着構造として、図の場合、容器本体10の側壁上端の開口端部と蓋体40の周縁部の下面とに、全周にわたって連続して互いに嵌合する凸縁10aと凹溝40aによる嵌合構造が設けられている。これに限らず、他の種々の嵌合被着構造による実施が可能である。
【0030】
図示する実施例の物流容器Aの場合、前記蓋体40の上面周縁部には、容器本体10に蓋体40を被着した状態での容器の積み重ね時に、上段の容器の容器本体10の底部下面の周縁部に有する切欠部19が嵌合する凸縁49が設けられており、前記蓋体40を被着した物流容器Aを安定性よく積み重ねることができるようになっている。
【0031】
前記容器本体10の底部11には、その一部の領域、特には縦横1方向の中央部領域11aの上下面の一方側に、好ましくは図のように下面側に、底部肉厚の約半分程度を残すように凹設されることにより、四周側辺の対向する両側辺又は一側辺に開放された凹設部12が設けられるとともに、該凹設部12に対し側辺の開放端側から長手方向に沿う両側端面において後述の凹条と凸条による嵌合構造により下方向きに係合した状態で摺動可能に嵌挿された別体の主として発泡樹脂製の底板30を備えてなる。
【0032】
図1〜図11の第1の実施例の場合は、前記凹設部12が底部11の下面側で一側辺に開放して形成され、前記底板30が前記凹設部12に対し前記一側辺の開放側に引き出し可能に嵌挿されてなる場合を示している。
【0033】
前記底板30が前記凹設部12に対し下方向きに係合した状態で摺動可能に嵌合するための嵌合構造として、容器本体10の底部11の前記凹設部12の底板嵌挿方向に沿う両側端面には、長手方向の凹条13が上下に数mmのフラット面を残して形成され、また、前記底板30の両側端面には前記凹条13に摺動可能に嵌合する長手方向の凸条33が上下に数mmのフラット面を残して形成されている。これにより嵌挿方向と直交する下方向きに抜脱しないように係合して、かつ発泡樹脂特有の弾性力を利用して比較的密接した状態で摺動可能に嵌挿できることになる。前記とは逆に、凹設部12の両側端面に凸条、底板30の両側端面に凹条を設けて実施することもできる。
【0034】
前記容器本体10の底部11には、前記凹設部12の部分の底壁14に、前記底板30の嵌挿方向に所要の間隔をおいて複数の排水用の貫通孔15が形成されている。図の場合、前記貫通孔15として、平面円形の孔が幅方向に複数列(例えば3列)に並列して形成されている。
【0035】
一方、前記底板30には、容器本体10の底部11に対する完全嵌挿位置、すなわち底板30の嵌挿方向先端30aが前記凹設部12の最奥端12aに当接する完全嵌挿位置に対して、前記貫通孔15の底板嵌挿方向の差し渡し寸法以上、例えば図のように円孔の場合の直径d以上を引き出した所定の不完全嵌挿位置にあるときに前記貫通孔15に合致し、かつ、前記完全嵌挿位置にあるときに前記底壁14の貫通孔15外にずれた位置にあるように、複数の貫通孔35が前記底壁14の各貫通孔15に対応する配置で形成されている。
【0036】
前記底壁14の貫通孔15と前記底板30の貫通孔35とを、底板30が前記不完全嵌挿位置にあるときに互いに合致し、かつ完全嵌挿位置にあるときには互いにずれた位置にあるものとするために、それぞれの貫通孔15,35は、例えば次のように配置形成されている。
【0037】
前記底壁14における貫通孔15は、底板嵌挿方向に並列する複数の各貫通孔15,15同士間に、前記貫通孔15の底板嵌挿方向の差し渡し寸法である前記直径dより大きい寸法、好ましくは1.5倍以上の寸法の間隔Lを保有して、さらに前記凹設部12における最奥端12aから最奥側の貫通孔15までの間に、前記直径dより大きい寸法、好ましくは前記間隔Lと同寸法分を残余させて底壁14に配置形成されている。
【0038】
一方、前記底板30は、嵌挿方向先端30aが前記凹設部12の最奥端12aに当接する完全嵌挿位置に対して、前記貫通孔15の直径d以上で、かつ貫通孔15,15同士間の間隔Lの範囲内の所定寸法分を引き出した位置が前記不完全嵌挿位置として設定され、該不完全嵌挿位置にあるときに前記底壁14の各貫通孔15と合致する位置に貫通孔35が形成されるとともに、前記底板30を前記嵌挿方向先端30aが凹設部12の最奥端12aに当接する完全嵌挿位置まで押し込んだときには、前記各貫通孔35が、前記底壁14の貫通孔15外に完全にずれた位置、特には各貫通孔15,15間又は最奥側の貫通孔15と前記最奥端12aとの間に位置するように設定されている。より好ましくは、図のように、底板30の各貫通孔35が、底壁14の各貫通孔15,15間の中央位置および最奥側の貫通孔15と前記最奥端12aとの間の中央位置に位置するように設定される。図中のbは前記完全嵌挿位置と不完全嵌挿位置の距離を示す。
【0039】
前記底壁14における貫通孔15と、前記底板30の貫通孔35とは、図のような平面円形の孔には限らず、平面楕円形や四角形の孔あるいはその他の異形の孔を幅方向に並列させて形成することも、また幅方向や斜め方向の長孔やスリット状の孔を形成することもできる。この場合も、前記貫通孔15,35の配置の説明における直径dを該貫通孔の底板嵌挿方向の幅等の差し渡し寸法として、該差し渡し寸法以上で、かつ貫通孔同士間の間隔Lの範囲内の所定寸法分を引き出した位置を前記不完全嵌挿位置として設定し、前記同様の配置になるように形成して実施できる。
【0040】
前記貫通孔15,35の直径d等の差し渡し寸法及び配置個数や開孔率等ついては、スラリー氷の投入充填時の液体排出の効果および氷の入り込み防止の効果等を考慮して適宜設定でき、例えば前記直径dなとの差し渡し寸法は2〜30mmの範囲とされるが、もちろん前記範囲外の寸法とすることもできる。図中の符号31は手掛け用の切欠部である。
【0041】
前記底板30を完全嵌挿位置と不完全嵌挿位置とに位置決めするための構造として、前記底板30と前記凹設部12との嵌挿方向の接触面の所要の個所、例えば凸条33と凹条13との嵌合構造を備える両側端面の所要の個所、及び/又は底壁14の面とこれに相対する底板30の面に、前記底板30が完全嵌挿位置にあるときに互いに嵌合する複数の凹部と凸部による嵌合手段が設けられるとともに、前記底板30が前記不完全嵌挿位置にあるときに前記嵌合手段の少なくとも一つの凹部と凸部が嵌合するように設けられている。
【0042】
図1〜図11の第1の実施例においては、前記底板30の嵌挿方向先端30aの近傍の両側端面の個所に、前記完全嵌挿位置と不完全嵌挿位置の距離bに相当する間隔をおいて二つ一組の底板厚み方向の溝状をなす凹部36が設けられ、他方、前記凹設部12の最奥端12aの近傍の両側端面に、前記底板30が完全嵌挿位置にあるときに前記二つの凹部36に嵌合する二つ一組のリブ状の凸部16が形成され、前記底板30を不完全嵌挿位置に引き出した状態において一つの凸部16が一つの凹部36と嵌合するように設けられている。これにより、前記底板30を所定の完全嵌挿位置と不完全嵌挿位置とに位置決めできるようになっている。
【0043】
また、前記底板30の引き出し側端部30bの近傍の両側端面の個所には、底板厚み方向の溝状をなす凹部37が設けられ、他方、前記凹設部12の開放側端の近傍の両側端面の個所には、底板30が完全嵌挿位置にあるときに前記凹部37に嵌合するリブ状の凸部17が設けられており、完全嵌挿位置にある前記底板30を安定性よく位置決め保持できるようになっている。
【0044】
図1〜図11の実施例の場合、前記底板30と前記凹設部12との嵌挿方向の接触面における嵌合手段として、前記凹設部12における開放側の側辺近傍における底壁面すなわち前記底壁14の下面には、前記完全嵌挿位置と不完全嵌挿位置の距離bに相当する間隔をおいて二つの幅方向の溝状の凹部18a,18bが設けられ、他方、前記底板30の引き出し側の端部30bの近傍における前記底壁面との相対側の面すなわち上面には、底板30が完全嵌挿位置にあるときに内方側の凹部18aに嵌合し、底板30が不完全嵌挿位置にあるときに外方側の凹部18bに嵌合する一つの幅方向のリブ状の凸部38が設けられており、この凹部18a,18bと凸部38によっても、前記底板30を完全嵌挿位置と不完全嵌挿位置とに位置決めできるようになっている。
【0045】
これらの凹部と凸部との嵌合手段により、前記底板30を不完全嵌挿位置に位置決めして保持できることで、前記底壁14の貫通孔15と前記底板30の貫通孔35を容易に合致させることができ、かつ底板30を完全嵌挿位置に押し込んだ位置に安定性よく保持できることになる。
【0046】
なお、前記の凸部16及び凸部17並びに凸部38は、いずれも構成素材の発泡樹脂の持つ弾力性を利用して前記底板30の完全嵌挿位置までの押し込みを許容できる程度の高さとされ、主として表面が断面円弧状や三角山形状の凸部形状とされる。
【0047】
前記底板30を前記凹設部12に対し完全嵌挿位置に押し込んだ状態においては、前記底板30の上面が前記底壁14の下面に接していることで、ある程度の気密性を保有できるが、図示する実施例の場合、前記底板30の前記底壁14の面との相対側の上面の前記貫通孔35の周辺部がごく僅かに(例えば、0.5mm程度)増肉形成されており、これにより、前記底壁14の下面に対する接触圧を他部分よりも増大させることができるようになっている。すなわち、前記貫通孔15から底壁14と底板30との間に滲出した水が底板30の貫通孔35の部分へ流れ込むのを前記貫通孔周辺部の増肉部39による接触部分で阻止できることになり、これにより前記貫通孔15および貫通孔35からの水漏れを防止できることになる。
【0048】
さらに、前記底板30を前記凹設部12に対し完全嵌挿位置に押し込んだ状態での底板30と底壁14との接触圧を高めるために、図9に拡大して示すように、前記凹設部12の両側端面の凹条13の最奥側の端部13aが僅かに上向きに傾斜して形成されており、これにより、両側端面の凸条33が前記凹条13に嵌合して嵌挿される前記底板30が、完全嵌挿位置に押し込まれた状態において前記凹条13の端部13aに沿って上向きに僅かに変位することで底壁14に対して強く接するようになっている。
【0049】
さらに、図1〜図11の実施例の物流容器Aの場合、前記容器本体10の側壁の所要個所、例えば前記底部11の両側部領域11bの側壁におけるコーナー部21の個所と、これに対応する蓋体40の周辺部の個所、例えば四隅部41に、それぞれ上下方向に貫通する縦孔22と42が設けられるととともに、図11に拡大して示すように、容器本体10の底部11の周辺部の縦孔22に近い個所に、底部11の上面より落とし込んだ凹部23と該凹部23から前記縦孔22に通じる横孔24による排水通路25が設けられ、該排水通路25の横孔24における縦孔22側に、横孔24の内端上壁部26より高くなったトラップ部27が設けられている。
【0050】
これにより、容器使用中に収納された氷が溶けて生じる水を該排水通路25から排出できるとともに、通常時は、前記凹部23内に溜まる水により密封性を良好に確保できるようになっている。特に、前記蓋体40にも前記容器本体10の縦孔22に連通する縦孔42が形成されていることで、複数の物流容器Aを段積みした状態(図10の鎖線)においても、各物流容器Aの縦孔22,42を通じて水を排出できるようになっている。
【0051】
図12〜図18は本発明の物流容器Aの第2の実施例を示している。この実施例において、発泡樹脂製の容器本体10、蓋体40及び底板30等の基本的な構成態様は、上記した第1の実施例と共通しているので、共通する構成及び同機能を果たす構成部分や部材については、同符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0052】
この第2の実施例においては、前記容器本体10の底部11における凹設部12が、底部下面側において対向する両側辺に開放して凹設され、前記底板30が、前記凹設部12に対し長手方向に沿う両側端面において第1の実施例と同様の凹条13と凸条33による嵌合構造により下方向きに係合した状態で摺動可能に嵌挿され、前記両側辺の開放側にそれぞれ引き出し可能に設けられている。
【0053】
そして、容器本体10の底部11における凹設部12の底壁14に、第1の実施例と同様の配置で複数の排水用の貫通孔15が形成されている。一方、底板30は、両端がそれぞれ容器本体10の底部における対向する両側辺に略一致する状態を完全嵌挿位置として、この完全嵌挿位置に対して、少なくとも一側方に、好ましくは図のように、両側辺の一方の側及び他方の側に、前記底壁14の貫通孔15の底板嵌挿方向の差し渡し寸法以上、例えば直径d以上を引き出した不完全嵌挿位置において前記底壁14の貫通孔15と合致し、かつ前記底部11に対する完全嵌挿位置にあるときに前記底壁14の貫通孔15外にずれた位置にある複数の貫通孔35が前記底壁14の各貫通孔15に対応する配置で形成されている。
【0054】
この第2の実施例の場合は、前記底部11の凹設部12に対する完全嵌挿位置に対して、前記底壁14の貫通孔15の前記直径d等の差し渡し寸法以上でかつ貫通孔15,15同士間の間隔Lの範囲内の所定寸法分を、前記両側辺の一方の側及び他方の側に引き出した位置をそれぞれ不完全嵌挿位置として設定し、前記底板11における貫通孔35が、前記両方の不完全嵌挿位置にあるときに、それぞれ前記底壁14の貫通孔15に合致し、かつ前記完全嵌挿位置にあるときに、それぞれ前記底壁14の貫通孔15外にずれた位置にあるように設けられている。
【0055】
なお、前記貫通孔15,35の形状、直径d等の差し渡し寸法及び配置個数や開孔率等は第1の実施例と同様に実施可能である。
【0056】
前記底板30を所定の完全嵌挿位置と両不完全嵌挿位置とに位置決めするための構造として、前記底板30と前記凹設部12との嵌挿方向の摺接面の所要の個所、凸条33と凹条13との嵌合構造を備える両側端面の所要の個所、及び/又は底壁14の下面とこれに相対する底板30の上面に、前記底板30が完全嵌挿位置にあるときに互いに嵌合する複数の凹部と凸部による嵌合手段が設けられている。
【0057】
例えば、前記底板30の引き出し側になる両端部近傍の両側端面の個所に、それぞれ、前記完全嵌挿位置と不完全嵌挿位置の間の距離bに相当する間隔をおいて二つ一組の底板厚み方向の溝状の凹部36a,36bが設けられ、また、前記凹設部12の対向する両側辺の開放側端近傍の両側端面の個所には、それぞれ前記凹部36a,36bに嵌合する二つ一組のリブ状の凸部16a,16bが形成されており、前記底板30を前記不完全嵌挿位置に引き出した状態において、両端部近傍の二つ一組のうちの一つの凹部36a,36bと凸部16a,16bとが嵌合するように設けられている。これにより、前記底板30を所定の完全嵌挿位置と不完全嵌挿位置とに位置決めできるようになっている。特に、前記底板30を両側辺のいずれの側の不完全嵌挿位置に引き出した場合にも、前記のように一つの凹部36a,36bと凸部16a,16bとが嵌合して位置決めできるように設けられている。
【0058】
さらに、前記底板30と前記凹設部12との嵌挿方向の接触面における嵌合手段として、前記凹設部12における両側辺の開放側端の近傍における底壁14の下面には、それぞれ前記完全嵌挿位置と不完全嵌挿位置の距離bに相当する間隔をおいて二つ一組の幅方向の溝状の凹部18a,18bが設けられ、他方、前記底板30の両端部近傍における前記底壁面との相対側の上面には、それぞれ底板30が完全嵌挿位置にあるときに内方側の凹部18aに嵌合し、底板30が一方側及び他方側へ引き出された不完全嵌挿位置にあるときに、それぞれ引き出し側の端部近傍における外方側の凹部18bに嵌合する一つの幅方向のリブ状の凸部38がそれぞれ設けられており、この凹部18a,18bと凸部38によっても、前記底板30を完全嵌挿位置と不完全嵌挿位置とに位置決めできるようになっている。
【0059】
前記凹設部12における対向する両側辺の開放側端近傍の凸部16a,16bと凹部18a,18b、及び底板30の流端部近傍の凹部36a,36bと凸部38は、嵌挿方向の中央で左右対称になるように配置形成されており、底部11の凹設部12に対し、前記底板30をいずれの端部の側からでも嵌挿して使用できるようになっている。
【0060】
この第2の実施例においても、前記底板30の前記底壁14の下面との相対側の上面における前記貫通孔35の周辺部が、前記底壁14の下面に対する接触圧を他部分よりも増大させるようにごく僅かに増肉された増肉部39が形成されている。
【0061】
さらに詳しい説明は省略するが、第1の実施例と同様に、容器本体10の側壁の所要個所、例えばコーナー部21の個所と、これに対応する蓋体40の周辺部の個所、例えば四隅部41に、それぞれ上下方向に貫通する縦孔22と42が設けられるととともに、底部11の上面より落とし込んだ凹部23と、該凹部23から前記縦孔22に通じる横孔24とよりなり、かつ、横孔24における縦孔22側にトラップ部27を備える排水通路25が設けられており、容器使用中に氷が溶けて生じる水を該排水通路25から排出できるとともに、通常時は前記凹部23内に溜まる水により密封性を良好に確保できるようになっいる。
【0062】
なお、第1及び第2の実施例の物流容器Aにおいては、容器本体10の底部11の上面は、通常の容器と同様に全体として水平面をなしているが、図19及び図20のように、前記凹設部12の底壁14を含む中央部領域11aを、両側部領域11bよりも僅かに高く(例えば、3mm)肉盛りし底上げしておくことができる。この場合、スラリー氷の投入充填時の貫通孔15からの排水を可能にして、かつ容器使用中に氷が溶けて生じる水が、底上げした中央部領域11aに流れ込むのを防止できることになる。
【0063】
なお、物流容器としては、上記した縦孔22,42および排水通路25による排水機能は必ずしも必要ではなく、図21及び図22のように、他の各構成は上記した実施例と同様にして、前記縦孔22,42および排水通路25を省略して実施することができる。
【0064】
この場合も、凹設部12の底壁14を含む中央部領域11aを両側部領域11bよりも僅かに高く肉盛りし底上げしておくことにより、仮に氷が溶けて生じた水が溜まった場合にも、底上げした中央部領域12bに作用する水圧を低減できることになる。
【0065】
また、容器本体10の底部11において相対向する側壁間の全体を凹設して、該凹設部に相当する底板を、上記した各実施例と同様にスライド可能に嵌挿して実施することもできる。
【0066】
前記容器本体10、底板30及び蓋体40の構成材である発泡樹脂としては、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂の発泡体を用いることができる。中でも、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体による成形体が好適に用いられる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られるものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは55〜75重量%のものが用いられる。また、前記発泡体の発泡倍率は10〜70倍が好ましい。
【0067】
スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体の成形品は、同じ発泡倍率のポリプロピレン系樹脂ビーズの成形品に比べて強度があり、また、深さが500mmを越える容器を成形した場合の収縮率が低く寸法精度もよい。さらに、スチレン系樹脂ビーズの発泡成形品に比べて擦れによる粉が出難い長所もある。
【0068】
上記した実施例の物流容器Aの使用状態について説明する。この物流容器Aは、ブロッコリー等の野菜その他の農産物の輸送、保管等の物流に使用する。この使用において、例えば、収穫されたブロッコリー等の野菜を容器本体10に収納し、必要に応じて収納状態のままで所定の予冷(真空予冷や差圧予冷)を行った後、氷詰め用として、細かな氷片と水を混合した流動性のある半液体状態のスラリー氷を用い、収納された野菜等を埋めるように該スラリー氷を投入し充填する。
【0069】
この際、容器本体10の底部11において下面側の凹設部12に嵌挿されている底板30は、完全嵌挿位置から一側辺の開放端側に少し引き出して不完全嵌挿位置に位置させ、前記底部11の凹設部12の底壁14に有する貫通孔15と前記底板30の貫通孔35とを合致させておく。
【0070】
特に、図1〜図11の第1の実施例の場合は、前記底板30と前記凹設部12に有する凹部36と凸部16との嵌合手段、及び/又は、凸部38と凹部18a,18bとの嵌合手段により、また、図12〜図18の第2の実施例の場合は、前記底板30と前記凹設部12に有する凹部36a,36bと凸部16a,16bとの嵌合手段、及び/又は、凸部38と凹部18a,18bとの嵌合手段を利用して位置決めすることにより、前記貫通孔15と前記貫通孔35を容易にかつずれなく合致させることができる。
【0071】
この状態で、半液体状態のスラリー氷を収納充填することにより、該スラリー氷の液体は、前記貫通孔15,35を通じて短時間に抜け出ることになり、スラリー氷の氷が直ちに固まった状態になる。この後、前記底板30を完全嵌挿位置に押し込むことにより、前記底板30の貫通孔35が前記底壁14の貫通孔15外にずれた位置になって、前記貫通孔15が底板30により塞がれ、底部11が閉塞された状態になる。このときも、前記の凹部と凸部による嵌合手段により、完全嵌挿位置に押し込まれた前記底板30を容易に抜脱しないように安定性よく保持できる。
【0072】
この状態で、容器本体10の開口部に蓋体40を被着することにより、容器内部を密封状態に保持でき、断熱性のある発泡樹脂製の容器であることも相俟って、保冷状態に良好に保持できる。
【0073】
しかも、前記状態の輸送等の使用中に、内部の氷が溶けて水が生じるが、前記底部11における中央部領域11aの底壁14の貫通孔15は前記底板30により閉塞されており、この中央部領域からの水漏れが生じることはない。
【0074】
その上、第1の実施例及び第2の実施例のように、容器本体10の側壁と蓋体40の周辺部の個所に縦孔22,42が設けられ、容器本体10の底部11周辺部の縦孔22に近い個所に、底部上面から落とし込んだ凹部23とトラップ部27を含む横孔24による排水通路25が設けられている場合、前記排水通路25のトラップ部27により凹部23内に溜まる水が排水通路25を塞ぐことになって密封性を確保でき、かつ氷が溶けて生じる水が一定以上になったときは、前記排水通路25のトラップ部27を超えて縦孔22に流れ出ることで排水でき、密封性を保持しながら良好な排水機能を発揮できることになる。
【符号の説明】
【0075】
10…容器本体、10a…凸縁、11…底部、11a…中央武領域、11b…両側部領域、12…凹設部、12a…最奥端、13…凹条、13a…端部、14…底壁、15…貫通孔、16,17…凸部、18a,18b…凹部、19…切欠部、21…コーナー部、22…縦孔、23…凹部、24…横孔、25…排水通路、26…内端上壁部、27…トラップ部、30…底板、30a…嵌挿方向先端、30b…引き出し側の端部、31…手掛け用の切欠部、33…凸条、35…貫通孔、36,37…凹部、38…凸部、40…蓋体、40a…凹溝、41…四隅部、42…縦孔、49…凸縁、A…物流容器、b…距離、d…直径、L…間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する容器本体と、該容器本体に対し被着自在な蓋体とからなる断熱性を有する発泡樹脂製の物流容器であって、
容器本体の底部には、その一部領域の上下面の一方側に、対向する両側辺又は一側辺に開放された凹設部が設けられるとともに、該凹設部に対し側辺の開放側から嵌挿される底板を備えてなり、
前記容器本体の底部における前記凹設部の底壁に、前記底板の嵌挿方向に所要の間隔をおいて複数の排水用の貫通孔が形成され、前記底板には、前記底部に対する完全嵌挿位置に対して少なくとも一側方に前記底壁の貫通孔の底板嵌挿方向の差し渡し寸法以上を引き出した所定の不完全嵌挿位置において前記底壁の貫通孔と合致し、かつ前記底部に対する完全嵌挿位置にあるときに前記底壁の貫通孔外にずれた位置にある複数の貫通孔が設けられてなることを特徴とする物流容器。
【請求項2】
前記容器本体の底部の凹設部が容器本体の一側辺に開放して凹設されるとともに、前記底板が前記凹設部に対し前記一側辺の開放側に引き出し可能に嵌挿されてなり、前記底板の嵌挿方向先端が前記凹設部の最奥端に当接する完全嵌挿位置に対して、前記底壁の貫通孔の底板嵌挿方向の差し渡し寸法以上でかつ貫通孔同士間の間隔範囲内の所定寸法分を前記一側辺の側に引き出した位置が不完全嵌挿位置として設定され、前記底板における貫通孔が、前記不完全嵌挿位置にあるときに前記底壁の貫通孔に合致し、かつ前記完全嵌挿位置にあるときに前記底壁の貫通孔外にずれた位置にあるように形成されてなる請求項1に記載の物流容器。
【請求項3】
前記容器本体の底部の凹設部が容器本体の対向する両側辺に開放して凹設されるとともに、前記底板が前記凹設部に対し前記両側辺の開放側にそれぞれ引き出し可能に嵌挿されてなり、前記底板の前記底部に対する完全嵌挿位置に対して、前記底壁の貫通孔の底板嵌挿方向の差し渡し寸法以上でかつ貫通孔同士間の間隔範囲内の所定寸法分を両側辺の一方の側及び他方の側に引き出した位置がそれぞれ不完全嵌挿位置として設定され、前記底板における貫通孔が、前記不完全嵌挿位置にあるときに前記底壁の貫通孔に合致し、かつ前記完全嵌挿位置にあるときに前記底壁の貫通孔外にずれた位置にあるように形成されてなる請求項1に記載の物流容器。
【請求項4】
前記凹設部が前記容器本体の底部の下面側に設けられ、前記底板が前記凹設部に対し両側端面において下方向きに係合した状態で摺動可能に嵌挿されてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の物流容器。
【請求項5】
前記凹設部の底板嵌挿方向に沿う両側端面と前記底板の両側端面とに、摺動可能に嵌合する長手方向の凹条と凸条とによる嵌合構造が設けられてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の物流容器。
【請求項6】
前記底板と前記凹設部との嵌挿方向の接触面の所要の個所に、前記底板が前記完全嵌挿位置にあるときに互いに嵌合する複数の凹部と凸部による嵌合手段が設けられるとともに、前記底板が前記不完全嵌挿位置にあるときに前記嵌合手段の少なくとも一つの凹部と凸部が嵌合するように設けられてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の物流容器。
【請求項7】
前記底板の両側端面と前記凹設部の両側端面の個所に、複数の凹部と凸部による前記嵌合手段が設けられてなる請求項6に記載の物流容器。
【請求項8】
前記凹設部における開放側の側辺近傍における底壁面と、前記底板の引き出し側端部近傍における前記底壁面との相対側の面とに、前記底板が完全嵌挿位置にあるときに互いに嵌合する凸部と凹部による嵌合手段が設けられるとともに、前記底壁面には前記底板が不完全嵌挿位置にあるときに、前記底板の前記嵌合手段の凸部又は凹部と嵌合する凹部又は凸部が設けられてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の物流容器。
の物流容器。
【請求項9】
前記底板における前記底壁面との相対側の面の前記貫通孔の周辺部が底壁面に対する接触圧を他部分よりも増大させるように増肉形成されてなる請求項1〜8のいずれか1孔に記載の物流容器。
【請求項10】
前記容器本体の側壁の所要個所とこれに対応する蓋体の周辺部の個所に、上下方向に貫通する縦孔が設けられるととともに、容器本体の底部周辺部の縦孔に近い個所に、底部上面より落とし込んだ凹部と該凹部から前記縦孔に通じる横孔による排水通路が設けられ、該排水通路の横孔における縦孔側に横孔の内端上壁部より高くなったトラップ部が設けられてなる請求項1〜9のいずれか1項に記載の物流容器。
【請求項11】
前記容器本体の底部は、前記凹設部の底壁を含む領域の上面が他部分より高くなるように底上げ形成されてなる請求項10に記載の物流容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−143961(P2011−143961A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8301(P2010−8301)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】