説明

物質の測定方法、物質測定用基板、並びに、物質測定システム

【課題】不溶性凝集物の生成量に基づく測定をより迅速、簡便かつ高感度に行える技術を提供する。
【解決手段】物質測定用基板1に設けられた反応液移動流路6の上流側端部8に、不溶性凝集物を含む反応液25を接触させ、毛細管力によって反応液25を反応液移動流路6に導入するとともに反応液移動流路6内を移動させる。その際の反応液25の移動度によって、試料中に含まれる目的物質の濃度を測定する。気体の発生は光応答性ガス発生材によることが好ましい。不溶性凝集物の生成反応の例として、エンドトキシン(リポ多糖)測定におけるリムルス反応(LAL反応)や、ラテックス凝集反応などが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の測定方法、物質測定用基板、並びに、物質測定システムに関し、さらに詳細には、基板に設けられた微細流路を用いて試料中に含まれる目的物質の濃度を測定する物質の測定方法、当該方法に用いられる物質測定用基板、並びに、当該基板を備えた物質測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
不溶性凝集物の生成反応を利用した各種の分析・計測技術が知られており、医療分野や生化学分野において広く用いられている。例えば、エンドトキシン測定(リムルス試験)におけるLAL反応(リムルス反応)(例えば、特許文献1)や、ラテックス凝集反応(例えば、特許文献2)は、不溶性凝集物の生成反応の一例である。
【0003】
これらの分析法は、不溶性凝集物の生成量に基づいて試料中の目的物質(被検出物質)の濃度を測定するものである。すなわち、不溶性凝集物を含む反応液に光を照射すると、光は不溶性凝集物に当たって散乱する。ここで、透過光の強度は不溶性凝集物の量に応じて変化し、また、不溶性凝集物の量は目的物質の濃度に応じて変化する。したがって、透過光の強度を測定することで、試料中の目的物質の濃度を求めることができる。
【0004】
LAL反応(リムルス反応)について詳述すると、リムルス試験におけるゲル化(不溶性凝集物の生成)は、以下のカスケード反応により起こる。まず、エンドトキシンとカブトガニの血球細胞抽出物(LAL)とが接触すると、LAL中のファクターCが活性化される。活性化されたファクターCはLAL中のファクターBを活性化し、さらに活性化されたファクターBはLAL中の凝固酵素(Clotting enzyme)を活性化する。そして、活性化された凝固酵素によってコアグローゲン(Coagulogen)がコアグリン(Coagulin)に変換され、コアグリンが重合してゲル(不溶性凝集物)を形成する。リムルス試験によるエンドトキシン測定は、本カスケード反応による不溶性凝集物の生成量が、試料中のエンドトキシン濃度に依存することに基づいている。なお、ゲル化反応ではなく、発色合成基質を用いた発色反応による方法(比色法)も開発されている。
【0005】
一方、微量の液体試料を取り扱うためのマイクロ流体デバイスが開発されている。例えば、手で容易に取り扱い得る大きさの基板内に、液体試料等を搬送するための微細流路が形成され、必要に応じて、試料の導入部、試薬類の保持部、反応室等が設けられたマイクロ流体デバイス(マイクロ分析チップ)が知られている(特許文献3)。さらに、マイクロ流体デバイスの微細流路等に微量の流体を送るための駆動源となるマイクロポンプが知られている。例えば、光照射により気体を発生する光応答性ガス発生材料を利用したマイクロポンプが知られている(特許文献4)。
【0006】
一般に、LAL反応やラテックス凝集反応等の不溶性凝集物の生成反応を利用した分析法は、操作が煩雑である上に分析完了まで1日以上の時間を要することがある。そのため、より迅速かつ簡便な分析法が求められている。そこで、前述したようなマイクロ分析チップを利用することが考えられる。特許文献5には、マイクロ分析チップを用いてLAL反応(比色法)を行う技術が記載されている。特許文献6には、マイクロ分析チップを用いてラテックス凝集反応を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−11641号公報
【特許文献2】特開2005−351643号公報
【特許文献3】特許第4177884号公報
【特許文献4】国際公開第2009/113566号
【特許文献5】特表2007−501020号公報
【特許文献6】特開2007−285968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献5、特許文献6に記載の技術では、発色した反応液や不溶性凝集物を含む反応液に光を照射し、吸光度や透過光の強度を測定しているため、光検出器が別途必要である。また、これらの検出は、基板の厚み方向に光を照射するものであるため、光路長を基板の厚み以下でしか取ることができず、高感度測定には不向きであった。
【0009】
上記した現状に鑑み、本発明は、不溶性凝集物の生成反応を利用した分析技術において、特別な検出器が必要なく、迅速かつ簡便で、さらに高感度な測定を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記した課題を解決するために検討を重ねた結果、微細流路を備えた基板を用い、不溶性凝集物を含む反応液を当該微細流路に沿って移動させることにより、「不溶性凝集物の生成量に基づく測定」を、迅速、簡便、かつ高感度に行えることを見出した。さらに、当該測定に用いられる微細流路を備えた物質測定用基板、及び当該基板を備えた物質測定システムを構築し、本発明を完成した。すなわち、上記した課題を解決するために提供される本発明は、以下のとおりである。
【0011】
請求項1に記載の発明は、不溶性凝集物の生成量に基づいて試料中に含まれる目的物質の濃度を測定する物質の測定方法であって、微細流路を備えた基板を用いるものであり、前記微細流路内に導入又は配置された不溶性凝集物を含む反応液を、当該微細流路に沿って移動させ、その際の前記反応液の移動度によって前記試料中に含まれる目的物質の濃度を測定することを特徴とする物質の測定方法である。
【0012】
本発明は、不溶性凝集物の生成量に基づいて試料中に含まれる目的物質の濃度を測定する物質の測定方法に係るものであり、微細流路を備えた基板を用いるものである。本発明では、微細流路内に導入又は配置された不溶性凝集物を含む反応液を、当該微細流路に沿って移動させ、その際の当該反応液の移動度によって試料中に含まれる目的物質の濃度を測定する。
本発明の物質の測定方法では、微細流路を備えた基板を用いるので、取扱いが容易である。また、微細流路における反応液の移動度を指標とする構成を採用しているので、微細流路の長さを大きく取ることで、検出感度や分離能を容易に上げることができる。そのため、不溶性凝集物の生成量が微量であっても、生成量の差を検出・判別でき、物質濃度の測定を短時間で完了することができる。例えば、反応初期の不溶性凝集物の生成量が少ない反応液であっても、物質濃度を正確に測定できる。さらに、反応液の吸光度や濁度を検出・測定する必要がなく、特別の検出器も必要としない。
本発明の物質の測定方法によれば、不溶性凝集物の生成量に基づく物質濃度測定を、迅速かつ簡便に、かつ高感度で行うことができる。
【0013】
「不溶性凝集物の生成量に基づく」物質濃度の測定法の例としては、リポ多糖(エンドトキシン)測定におけるリムルス試験(ゲル化法、比濁法)、ラテックス凝集法等の粒子凝集反応、免疫比濁法、ペプチドグリカン及び/又はβグルカン測定におけるSLP(Silkworm Larvae Plasma)法などが挙げられる。すなわち「不溶性凝集物」の例としては、リムルス反応(ゲル化反応、凝固反応)において生成する不溶性架橋物、粒子凝集反応(ラテックス凝集反応等)において生成する不溶性担体(ラテックス粒子等)の凝集物、免疫比濁法において生成する免疫複合体の凝集物(沈降物)、SLP反応において生成するメラニンの凝集物などが挙げられる。
「不溶性凝集物」には、少なくとも不溶性架橋物と不溶性微粒子が含まれる。
【0014】
SLP反応は、体液中の「PGRP(peptidoglycan recognition protein)・フェノールオキシダーゼ前駆体カスケード」と呼ばれる生体防御機構を利用したものである。すなわち、当該カスケード反応によってフェノールオキシダーゼが活性化される。そして、活性化されたフェノールオキシダーゼの作用によりDOPA(L-3,4-dihydroxyphenylalanine)が酸化され、結果としてメラニンが生成する。
【0015】
「微細流路」とは、0.5μm〜2mm程度の非常に小さい径を有する流路を指す。
【0016】
「試料中に含まれる目的物質の濃度測定」には、試料中における目的物質の存在又は量を決定することが含まれる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記微細流路の入口たる上流側端部に不溶性凝集物を含む反応液を接触させて、毛細管力によって当該反応液を前記微細流路内に導入するとともに当該微細流路内を移動させることを特徴とする請求項1に記載の物質の測定方法である。
【0018】
本発明では、不溶性凝集物を含む反応液を微細流路に導入する際に、微細流路の上流側端部に当該反応液を接触させる。そして、毛細管力によって当該反応液を微細流路内に導入するとともに、当該微細流路内を移動させる。すなわち、本発明では毛細管力を利用するので、微細流路の上流側端部(入口)に反応液を接触させた後は、反応液が能動的に微細流路に進入し、移動する。そのため、反応液が微細流路を移動する際に、反応液に対して外部から推進力を与える必要がない。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記基板は、前記上流側端部を介して微細流路内に連通する反応液貯留部を有し、反応液貯留部に溜めた不溶性凝集物を含む反応液を、前記上流側端部に接触させ、微細流路内に導入することを特徴とする請求項2に記載の物質の測定方法である。
【0020】
本発明の物質の測定方法では、基板が反応液貯留部を有しており、当該反応液貯留部が微細流路の上流側端部を介して微細流路内に連通している。そして、反応液貯留部に溜めた不溶性凝集物を含む反応液を、前記上流側端部に接触させ、微細流路内に導入する。本発明では、不溶性凝集物を含む反応液を、反応液貯留部から微細流路に供給するので、毛細管力による反応液の導入と移動が確実に行われる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、前記基板は、反応液貯留部に連通する反応液排出路を有し、
反応液貯留部に溜めた不溶性凝集物を含む反応液を、反応液貯留部と反応液排出路との接続部を横断させた後、前記上流側端部に到達させることを特徴とする請求項3に記載の物質の測定方法である。
【0022】
本発明の物質の測定方法では、基板が、反応液貯留部に連通する反応液排出路をさらに有している。そして、不溶性凝集物を含む反応液を反応液貯留部から微細流路の上流側端部に到達させる際に、反応液貯留部と反応液排出路との接続部を横断させる。かかる構成によれば、反応液が当該接続部を横断する際に、反応液の一部が反応液排出路に流れ出て、反応液の進行方向における先頭形状が揃いやすい。その結果、反応液の上流側端部への接触がより確実に行われ、毛細管力による微細流路への導入もスムーズである。
【0023】
請求項5に記載の発明は、前記反応液排出路は、1個の反応液貯留部に対して少なくとも2個設けられており、前記接続部は、接続部同士を結ぶ直線が反応液の進行方向と直交する位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の物質の測定方法である。
【0024】
本発明の物質の測定方法では、反応液排出路が1個の反応液貯留部に対して少なくとも2個設けられており、かつ、接続部同士を結ぶ直線が、反応液の進行方向(反応液が上流側端部に向かう方向)と直交する位置に設けられている。かかる構成により、反応液貯留部において、反応液の進行方向における先頭形状がさらに揃いやすくなる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、前記接続部の位置を指標として、反応液貯留部に一定量の反応液を導入することを特徴とする請求項5に記載の物質の測定方法である。
【0026】
かかる構成により、反応液貯留部に溜める反応液の量を一定量とすることが、より簡便となる。
【0027】
請求項7に記載の発明は、反応液貯留部には不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め設置されており、目的物質を含む試料を反応液貯留部に導入し、反応液貯留部内で不溶性凝集物を含む反応液を調製することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の物質の測定方法である。
【0028】
本発明の物質の測定方法では、不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め設置された基板を使用する。具体的には、基板の反応液貯留部に基質類が設置されている。そして、目的物質を含む試料を反応液貯留部に導入し、反応液貯留部内で基質類と接触させる。これにより、不溶性凝集物を含む反応液が反応液貯留部内で調製される。本発明の物質の測定方法では、不溶性凝集物の生成を伴う反応を基板内で行うことができるので、操作が簡便かつ確実である。さらに、反応開始後ただちに反応液を微細流路に導入できるので、反応初期の不溶性凝集物の生成量が少ない段階で測定を行いたい場合に好適である。
【0029】
請求項8に記載の発明は、反応液貯留部内の前記反応液の体積は、微細流路の容積よりも大きいことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の物質の測定方法である。
【0030】
かかる構成により、微細流路の全長を確実に利用できる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、微細流路の断面積は、1〜60000平方マイクロメートルの範囲であることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の物質の測定方法である。
【0032】
かかる構成により、毛細管力による反応液の移動が確実に行われる。
【0033】
請求項2〜9のいずれかに記載の物質の測定方法において、不溶性凝集物を含む反応液に対して気体の圧力を付与して、当該反応液を前記上流側端部に向かって移動させ、前記上流側端部に接触させる構成が推奨される(請求項10)。
【0034】
請求項11に記載の発明は、気体は、光応答性ガス発生材に光を照射して発生させたものであることを特徴とする請求項10に記載の物質の測定方法である。
【0035】
本発明の物質の測定方法では、反応液に付与される圧力の基となる気体が、光応答性ガス発生材に光を照射して発生させたものである。本発明の物質の測定方法によれば、光を照射するだけで気体を発生させることができるので、操作が簡便である。
【0036】
請求項12に記載の発明は、光応答性ガス発生材はフィルム状又はテープ状であり、基板に貼付して使用されることを特徴とする請求項11に記載の物質の測定方法である。
【0037】
本発明の物質の測定方法では、光応答性ガス発生材としてフィルム状又はテープ状のものを採用し、基板に貼付して使用する。本発明の物質の測定方法では、基板に光を照射して気体を発生させることができるので、操作がさらに簡便である。
【0038】
請求項1に記載の物質の測定方法においては、微細流路を移動させる反応液は液滴の形態であってもよい。かかる構成を採用した請求項13に記載の発明は、前記微細流路に不溶性凝集物を含む反応液の液滴を配置し、当該液滴に対して気体による圧力を付与して液滴を前記微細流路に沿って移動させることを特徴とする請求項1に記載の物質の測定方法である。
【0039】
請求項14に記載の発明は、基板には不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め導入されており、目的物質を含む試料を前記基板に導入して基板内で前記基質類と接触させ、微細流路に配置される前記液滴を基板内で調製することを特徴とする請求項13に記載の物質の測定方法である。
【0040】
本発明の物質の測定方法では、不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め導入された基板を使用する。そして、目的物質を含む試料を基板に導入して基板内で前記基質類と接触させる。これにより、微細流路に配置される液滴が基板内で調製される。本発明の物質の測定方法では、不溶性凝集物の生成を伴う反応を基板内で行うことができるので、操作が簡便かつ確実である。さらに、反応開始後ただちに液滴の移動操作を行うことができるので、反応初期の不溶性凝集物の生成量が少ない段階で測定を行いたい場合に好適である。
【0041】
請求項15に記載の発明は、気体は、光応答性ガス発生材に光を照射して発生させたものであることを特徴とする請求項13又は14に記載の物質の測定方法である。
【0042】
本発明の物質の測定方法では、液滴に付与される圧力の基となる気体が、光応答性ガス発生材に光を照射して発生させたものである。本発明の物質の測定方法によれば、光を照射するだけで気体を発生させることができるので、操作が簡便である。
【0043】
請求項16に記載の発明は、光応答性ガス発生材はフィルム状又はテープ状であり、基板に貼付して使用されることを特徴とする請求項15に記載の物質の測定方法。
【0044】
本発明の物質の測定方法では、光応答性ガス発生材としてフィルム状又はテープ状のものを採用し、基板に貼付して使用する。本発明の物質の測定方法では、基板に光を照射して気体を発生させることができるので、操作がさらに簡便である。
【0045】
請求項17に記載の発明は、微細流路の断面積が、反応液の移動方向に向かって漸減していることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の物質の測定方法である。
【0046】
また請求項18に記載の発明は、微細流路は、その深さ又は幅が反応液の移動方向に向かって漸減するテーパ状を成していることを特徴とする請求項17に記載の物質の測定方法である。
【0047】
かかる構成によれば、反応液が微細流路内を移動するにつれ、反応液に対する抵抗を増加させることができる。その結果、測定系の分解能を調節することが可能となる。
【0048】
請求項19に記載の発明は、微細流路は、流れ方向に沿って区分された複数の領域を有することを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の物質の測定方法である。
【0049】
かかる構成により、反応液の移動度を簡単かつ確実に検出することができる。なお、領域の数(区分の数)については、測定系に求める感度や精度によって適宜選択すればよく、2個でもよいし、3個以上でもよい。
【0050】
請求項20に記載の発明は、不溶性凝集物は、リムルス反応、SLP反応、不溶性担体の凝集、不溶性担体の凝集とリムルス反応との組み合わせ、又は不溶性担体の凝集とSLP反応との組み合わせにより生成するものであることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の物質の測定方法である。
【0051】
かかる構成により、エンドトキシンの測定(リムルス反応、不溶性担体の凝集とリムルス反応との組み合わせ)、ペプチドグリカン及び/又はβグルカンの測定(SLP反応、不溶性担体の凝集とSLP反応との組み合わせ)、又は粒子凝集反応を利用した目的物質の測定(不溶性担体の凝集反応)を、迅速・簡便かつ高感度に行うことができる。
【0052】
請求項20に記載の物質の測定方法において、不溶性凝集物は、不溶性担体の凝集とリムルス反応との組み合わせにより生成するものであり、不溶性担体には、カブトガニの血球抽出成分が固定化されて構成が推奨される(請求項21)。
【0053】
請求項20に記載の物質の測定方法において、不溶性凝集物は、不溶性担体の凝集とリムルス反応との組み合わせにより生成するものであり、不溶性担体とカブトガニの血球抽出成分とを共存させる構成が推奨される(請求項22)。
【0054】
請求項20に記載の物質の測定方法において、不溶性凝集物は、不溶性担体の凝集とSLP反応との組み合わせにより生成するものであり、不溶性担体には、昆虫の体液由来成分が固定化されているが推奨される(請求項23)。
【0055】
請求項20に記載の物質の測定方法において、不溶性凝集物は、不溶性担体の凝集とSLP反応との組み合わせにより生成するものであり、不溶性担体と昆虫の体液由来成分とを共存させる構成が推奨される(請求項24)。
【0056】
請求項25に記載の発明は、不溶性担体は、ラテックス粒子であることを特徴とする請求項20〜24のいずれかに記載の物質の測定方法である。
【0057】
かかる構成により、ラテックス凝集を利用した目的物質の測定を迅速かつ簡便に行うことができる。
【0058】
請求項26に記載の発明は、不溶性担体は、標識粒子であることを特徴とする請求項20〜25のいずれかに記載の物質の測定方法である。
【0059】
かかる構成により、生成した不溶性凝集物を目視で容易に観察することができる。標識粒子の例としては、着色ラテックス粒子(赤色、青色、緑色など)、コロイド状金属粒子(金コロイド粒子等)、コロイド状金属酸化物粒子、磁性粒子、蛍光粒子などが挙げられる。
【0060】
請求項27に記載の発明は、請求項1〜26のいずれかに記載の物質の測定方法に用いるための基板であって、不溶性凝集物を含む反応液が移動するための微細流路を備え、前記微細流路は、流れ方向に沿って区分された複数の領域を有することを特徴とする物質測定用基板である。
【0061】
本発明は物質測定用基板に係るものであり、上記した本発明の物質の測定方法に用いるためのものである。本発明の物質測定用基板は、不溶性凝集物を含む反応液が移動するための微細流路を備えており、当該微細流路は、流れ方向に沿って区分された複数の領域を有する。本発明の物質測定用基板によれば、不溶性凝集物を含む反応液の移動度を簡単かつ確実に検出することができ、不溶性凝集物の生成量に基づく物質濃度測定を迅速、簡便、かつ正確に行うことができる。なお、領域の数(区分の数)については、測定系に求める感度や精度によって適宜選択すればよく、2個でもよいし、3個以上でもよい。
【0062】
請求項28に記載の発明は、微細流路の上流側に位置し、微細流路の上流側端部を介して微細流路内に連通する反応液貯留部をさらに備えたことを特徴とする請求項27に記載の物質測定用基板である。
【0063】
かかる構成により、不溶性凝集物を含む反応液を、反応液貯留部から微細流路に導入することができる。
【0064】
請求項29に記載の発明は、反応液貯留部に連通する少なくとも2個の反応液排出路をさらに備え、反応液貯留部と反応液排出路との接続部は、接続部同士を結ぶ直線が微細流路の延長線と直交する位置に設けられていることを特徴とする請求項28に記載の物質測定用基板である。
【0065】
本発明の物質測定用基板は、反応液貯留部に連通する少なくとも2個の反応液排出路をさらに備えている。さらに、反応液貯留部と反応液排出路との接続部は、接続部同士を結ぶ直線が微細流路の延長線と直交する位置に設けられている。そのため、反応液貯留部に溜めた反応液を微細流路の上流側端部に向けて移送するにあたり、反応液が前記接続部を横断する際に、反応液の一部が反応液排出路に流れ出て、反応液の進行方向における先端形状が揃いやすくなる。その結果、反応液の上流側端部への接触が確実に行われ、毛細管力による微細流路への導入もスムーズに行われる。
さらに、接続部の位置を指標とすることにより、反応液貯留部に溜める反応液の量を一定量とすることできる。
【0066】
同様の課題を解決するための請求項30に記載の発明は、微細流路と、微細流路の上流側に位置し、微細流路の上流側端部を介して微細流路内に連通する反応液貯留部と、反応液貯留部に連通する少なくとも2個の反応液排出路とを備え、反応液貯留部と反応液排出路との接続部は、接続部同士を結ぶ直線が微細流路の延長線と直交する位置に設けられていることを特徴とする物質測定用基板である。
【0067】
同様の課題を解決するための請求項31に記載の発明は、請求項1〜26のいずれかに記載の物質の測定方法に用いるための物質測定用基板であって、不溶性凝集物を含む反応液が移動するための微細流路と、微細流路の上流側に位置し、微細流路の上流側端部を介して微細流路内に連通する反応液貯留部と、反応液貯留部に連通する少なくとも2個の反応液排出路とを備え、反応液貯留部と反応液排出路との接続部は、接続部同士を結ぶ直線が微細流路の延長線と直交する位置に設けられていることを特徴とする物質測定用基板である。
【0068】
請求項32に記載の発明は、反応液貯留部には不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め設置されており、目的物質を含む試料を反応液貯留部に導入し、反応液貯留部内で不溶性凝集物を含む反応液を調製可能であることを特徴とする請求項28〜31のいずれかに記載の物質測定用基板である。
【0069】
本発明の物質測定用基板には、反応液貯留部に不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め導入されている。そして、目的物質を含む試料を反応液貯留部に導入し、反応液貯留部内で不溶性凝集物を含む反応液を調製可能である。本発明の物質測定用基板によれば、不溶性凝集物の生成を伴う反応を基板内で行うことができるので、操作が簡便かつ確実である。さらに、反応開始後ただちに反応液を微細流路に導入できるので、反応初期の不溶性凝集物の生成量が少ない段階で測定を行いたい場合に好適である。
【0070】
請求項32に記載の物質測定用基板において、前記基質類は、カブトガニの血球抽出成分、昆虫の体液由来成分、抗原又は抗体が固定化された不溶性担体、カブトガニの血球抽出成分が固定化された不溶性担体、不溶性担体とカブトガニの血球抽出成分との共存物、昆虫の体液由来成分が固定化された不溶性担体、又は不溶性担体と昆虫の体液由来成分との共存物である構成が推奨される(請求項33)。
【0071】
請求項33に記載の物質測定用基板において、不溶性担体は、ラテックス粒子である構成が推奨される(請求項34)。
【0072】
請求項33又34に記載の物質測定用基板において、不溶性担体は、標識粒子である構成が推奨される(請求項35)。
【0073】
請求項28〜35のいずれかに記載の物質測定用基板において、反応液貯留部内の容積は、微細流路の容積よりも大きいことが好ましい(請求項36)。
【0074】
請求項28〜36のいずれかに記載の物質測定用基板において、微細流路の断面積は、2500〜1000000平方マイクロメートルの範囲であることが好ましい(請求項37)。
【0075】
請求項28〜37のいずれかに記載の物質測定用基板において、反応液貯留部に気体を供給する気体供給手段をさらに備えた構成が好ましい(請求項38)。かかる構成によれば、反応液所留部に溜めた反応液に対して、気体の圧力を容易に付与することができる。
【0076】
請求項38に記載の物質測定用基板において、気体供給手段は、光応答性ガス発生材からなることが好ましい(請求項39)。
【0077】
請求項39に記載の物質測定用基板において、光応答性ガス発生材はフィルム状又はテープ状であり、基板の少なくとも一方の面に貼付されていることが好ましい(請求項40)。
【0078】
請求項27に記載の物質測定用基板において、微細流路に気体を供給する気体供給手段をさらに備えた構成が好ましい(請求項41)。かかる構成によれば、微細流路内の反応液の液滴に対して、気体の圧力を容易に付与することができる。
【0079】
請求項42に記載の発明は、基板内に不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め導入されており、目的物質を含む試料を基板に導入して基板内で前記基質類と接触させ、微細流路に導入又は配置される不溶性凝集物を含む反応液を基板内で調製可能であることを特徴とする請求項41に記載の物質測定用基板である。
【0080】
本発明の物質測定用基板には、不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め導入されている。そして、目的物質を含む試料を基板に導入して基板内で基質類と接触させ、微細流路に導入又は配置される不溶性凝集物を含む反応液(例えば、液滴)を基板内で調製可能である。本発明の物質測定用基板によれば、不溶性凝集物の生成を伴う反応を基板内で行うことができるので、操作が簡便かつ確実である。さらに、反応開始後ただちに反応液の移動操作を行うことができるので、反応初期の不溶性凝集物の生成量が少ない段階で測定を行いたい場合に好適である。
【0081】
請求項42に記載の物質測定用基板において、前記基質類は、カブトガニの血球抽出成分、昆虫の体液由来成分、抗原又は抗体が固定化された不溶性担体、カブトガニの血球抽出成分が固定化された不溶性担体、不溶性担体とカブトガニの血球抽出成分との共存物、昆虫の体液由来成分が固定化された不溶性担体、又は不溶性担体と昆虫の体液由来成分との共存物である構成が推奨される(請求項43)。
【0082】
請求項43に記載の物質測定用基板において、不溶性担体は、ラテックス粒子である構成が推奨される(請求項44)。
【0083】
請求項43又44に記載の物質測定用基板において、不溶性担体は、標識粒子である構成が推奨される(請求項45)。
【0084】
請求項46に記載の発明は、微細流路を区分している前記複数の領域において、隣接する前記領域間の境界前後で、微細流路の断面形状又は断面積が変化することを特徴とする請求項41〜45のいずれかに記載の物質測定用基板である。
【0085】
また請求項47に記載の発明は、微細流路は屈折路を有し、当該屈折路の屈折部によって複数の領域に区分されていることを特徴とする請求項41〜45のいずれかに記載の物質測定用基板である。
【0086】
また請求項48に記載の発明は、微細流路の少なくとも1箇所に、不溶性凝集物の生成を促進する試薬が設置されており、当該試薬の設置部位によって微細流路が複数の領域に区分されていることを特徴とする請求項41〜45のいずれかに記載の物質測定用基板である。
【0087】
かかる構成により、反応液の移動度を明確に把握することが可能となる。
【0088】
請求項41〜48のいずれかに記載の物質測定用基板において、気体供給手段は、光応答性ガス発生材からなる構成が推奨される(請求項49)。
【0089】
請求項49に記載の物質測定用基板において、光応答性ガス発生材はフィルム状又はテープ状であり、基板の少なくとも一方の面に貼付されている構成が推奨される(請求項50)。
【0090】
請求項27〜50のいずれかに記載の物質測定用基板において、微細流路の断面積が、流れ方向に向かって漸減している構成でもよい(請求項51)。
【0091】
請求項51に記載の物質測定用基板において、微細流路は、その深さ又は幅が反応液の流れ方向に向かって漸減するテーパ状を成している構成でもよい(請求項52)。
【0092】
請求項27〜52のいずれかに記載の物質測定用基板において、微細流路内の反応液を目視可能であることが好ましい(請求項53)。かかる構成によれば、特別の検出装置等を使用することなく反応液の移動度を検出することができる。
【0093】
請求項27〜53のいずれかに記載の物質測定用基板において、微細流路を複数備え、複数の微細流路は互いに平行に配されていることが好ましい(請求項54)。かかる構成によれば、対照試料との移動度の比較や、複数試料の同時測定を容易に行うことができる。
【0094】
請求項55に記載の発明は、請求項39、40、49又は50に記載の物質測定用基板と、光照射装置を備えたことを特徴とする物質測定システムである。
【0095】
本発明は物質測定システムに係るものであり、光応答性ガス発生材からなる気体供給手段を有する本発明の物質測定用基板と、光照射装置を備えたものである。本発明の物質測定システムによれば、不溶性凝集物の生成量に基づく物質濃度測定を迅速、簡便、かつ高感度に行うことができる。
【発明の効果】
【0096】
本発明の物質の測定方法によれば、不溶性凝集物の生成量に基づく物質濃度測定を、迅速、簡便、かつ高感度に行うことができる。
【0097】
本発明の物質測定用基板についても同様であり、不溶性凝集物の生成量に基づく物質濃度測定を、迅速、簡便、かつ高感度に行うことができる。
【0098】
本発明の物質測定システムについても同様であり、不溶性凝集物の生成量に基づく物質濃度測定を、迅速、簡便、かつ高感度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第一実施形態に係る物質測定用基板を表す正面図である。
【図2】図1の物質測定用基板の分解斜視図である。
【図3】図1の物質測定用基板の基板本体の正面図である。
【図4】図1のA−A断面図である。
【図5】反応液貯留部とその周辺の構成を模式的に表す正面図である。
【図6】光応答性ガス発生フィルムの積層構造を表す断面図である。
【図7】反応液貯留部とその周辺の空間部分のみを模式的に表す斜視図である。
【図8】図1の物質測定用基板を光照射装置に取り付ける方法を説明する斜視図である。
【図9】反応液貯留部と反応液移動流路における反応液の移動の様子を表す説明図であり、(a)は反応液貯留部に反応液を導入した状態、(b)は気体の圧力により反応液が移動し始めた状態を示す。
【図10】図9(b)に続く反応液の移動の様子を表す説明図であり、(c)は反応液が反応液排出路の接続部を横断した後の状態、(d)は反応液が反応液移動流路の上流側端部に到達した状態を示す。
【図11】図10(d)に続く反応液の移動の様子を表す説明図であり、(e)は反応液が毛細管力によって反応液移動流路を移動している状態、(f)は反応液の移動が止まった状態を示す。
【図12】他の実施形態における反応液の移動の様子を表す説明図であり、(a)は反応液貯留部に反応液を導入中の状態、(b)は反応液貯留部の区分と体積の関係、(c)は気体の圧力を付与した後の状態を示す。
【図13】反応液貯留部の別の構成を示す説明図であり、(a)は反応液貯留部に反応液を導入中の状態、(b)は反応液貯留部の区分と体積の関係を示す。
【図14】流路の幅が一律でない微細流路の例を示す正面図である。
【図15】流路の深さが一律でない微細流路の例を示す断面図である。
【図16】流れ方向に区分された微細流路の例を示す正面図である。
【図17】本発明の第二実施形態に係る物質測定用基板を表す正面図である。
【図18】図17の物質測定用基板の分解斜視図である。
【図19】(a)は図17の物質測定用基板の基板本体の正面図、(b)は(a)の微細流路の部分を表す正面図である。
【図20】図17のA−A断面図である。
【図21】液滴調製部の構造を拡大して表す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は流路部分のみを模式的に表す斜視図である。
【図22】図17の物質測定用基板を光照射装置に取り付ける方法を説明する斜視図である。
【図23】微細流路における液滴の移動の様子を表す説明図であり、(a)は試料を導入した状態、(b)は基質保持部まで移動した状態、(c)は液滴移動部を移動している状態、(d)は移動が終了した状態を示す。
【図24】液滴調製部の他の例を示す正面図である。
【図25】液滴調製部のさらに他の例を示す正面図である。
【図26】(a)〜(c)はいずれも流れ方向に区分された微細流路の形状を示す正面図である。
【図27】(a),(b)はいずれも流れ方向に区分された微細流路の形状の他の例を示す断面図である。
【図28】(a),(b)はいずれも流れ方向に区分された微細流路の形状の他の例を示す正面図である。
【図29】流れ方向に区分された微細流路の形状の他の例を示す正面図である。
【図30】(a),(b)はいずれも流れ方向に区分された微細流路の形状の他の例を示す正面図である。
【図31】流れ方向に区分された微細流路の形状の他の例を示す正面図である。
【図32】実施例1の実験結果を表すグラフである。
【図33】実施例2の実験結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0100】
本発明の物質の測定方法は、不溶性凝集物の生成量に基づいて試料中に含まれる目的物質の濃度を測定する物質の測定方法であって、微細流路を備えた基板を用いるものであり、前記微細流路内に導入又は配置された不溶性凝集物を含む反応液を、当該微細流路に沿って移動させ、その際の前記反応液の移動度によって前記試料中に含まれる目的物質の濃度を測定することを特徴とするものである。
【0101】
すなわち本発明は、液体が微細流路内に導入又は配置されて当該微細流路内を進行する際に、その液体が不溶性凝集物を含むものである場合には、不溶性凝集物の含有量が大きいほど当該液体の移動度(進入度)が小さくなる現象を利用したものである。なお、本発明では液体(不溶性凝集物を含む反応液)を微細流路に沿って移動させるだけの簡単な構成を採用しており、例えば、ゲル電気泳動におけるゲルのような支持体を必要としない。
【0102】
まず、本発明の第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する物質測定用基板1は、通常、正面(図1)が鉛直方向における上向きとなる姿勢(基本姿勢)で用いられる。以下の記載において、上下方向は基本姿勢における方向を基準とする。すなわち、基本姿勢において、保護層5が上側、光応答性ガス発生フィルム3が下側となる。また左右方向については図1の姿勢を基準とする。例えば、反応液の移動方向については左側が上流、右側が下流となり、反応液は左から右に向かって移動する。
また、発明の理解を容易にするために、各図面において、各部材の大きさや厚みについては一部誇張して描かれており、実際の大きさや比率等とは必ずしも一致しないことがある。
【0103】
図1,2,4に示す物質測定用基板1は、基本的に、光応答性ガス発生フィルム(気体供給手段)3と、基板本体2と、保護層5がこの順に積層された構造を有している。詳細には、基板本体2の一方の面(下面)に光応答性ガス発生フィルム3、他方の面(上面)に保護層5がそれぞれ設けられている。
【0104】
基板本体2は、合成樹脂やガラスで構成された長方形状の板体である。基板本体2のサイズは、縦20〜150mm程度、横30〜300mm程度、厚み0.5〜3mm程度である。基板本体2には、後に詳述する反応液移動流路(微細流路)6や反応液貯留部7となる溝や窪みが形成されている。
【0105】
基板本体2は、一般的な成形に用いられている樹脂、ガラス、セラミック等で形成することができる。基板本体2を構成する材料の具体例としては、有機シロキサン化合物、ポリメタクリレート樹脂、ポリスチレンや環状ポリオレフィンなどが挙げられる。有機シロキサン化合物の具体例としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)や、ポリメチル水素シロキサンなどが挙げられる。
【0106】
光応答性ガス発生フィルム(気体供給手段)3は、基板本体2の一方の面(下面)に設けられている。図2,4に示すように、光応答性ガス発生フィルム3は基板本体2よりも小さい長方形状であり、正面視において、縦の長さが基板本体2と略同じで、横の長さが基板本体2の1/2〜1/5程度である。
光応答性ガス発生フィルム3は、図6に示すように、ガス発生層17と基材層18とが積層された2層構造を有する。そして、ガス発生層17が基板本体2に接触するように、基板本体2の上流側(図1の左側)に貼付されている。
【0107】
ガス発生層17は、光応答性ガス発生材を含むものであり、その厚みは30〜50μm程度である。光応答性ガス発生材は、アゾ化合物やアジド化合物等の「ガスを発生する材料」と、粘接着性を有するバインダー樹脂とで構成されている。すなわち、ガス発生層17は粘着剤を含んでおり、基板本体2に簡単に貼付できる。
基材層18はポリエチレンテレフタレート(PET)からなる支持体であり、その厚みは50μm程度である。基材層18は光透過性であり、外部から照射された光は基材層18を通過してガス発生層17に届く。
なお図6以外の図では、光応答性ガス発生フィルム3の積層構造は省略している。
【0108】
すなわち本実施形態では、光応答性ガス発生材を利用したマイクロポンプを採用している。ここで「マイクロポンプ」とは、微細流路等に微量の流体を送るための駆動源であって、総体積が1cm3以下程度の非常に小さなポンプを指す。当該マイクロポンプの詳細については、例えば、前述の特許文献4に記載されている。
【0109】
光応答性ガス発生材を構成する「ガスを発生する材料」の例としては、アゾ化合物、アジド化合物、ポリオキシアルキレン樹脂、などが挙げられる。さらに、特許文献4に記載されているような、光酸発生剤(スルホン酸オニウム塩、ベンジルスルホン酸エステル、ハロゲン化イソシアヌレート、ビスアリールスルホニルジアゾメタン等)と酸刺激ガス発生剤(炭酸塩及び/又は重炭酸塩等)の組み合わせ、光塩基発生剤(コバルトアミン系錯体、カルバミン酸o−ニトロベンジル、オキシムエステル、カルバモイルオキシイミノ基含有化合物等)と塩基増殖剤(Flu3、Flu4等)の組み合わせ、などが挙げられる。
光応答性ガス発生材には、さらに光増感剤を含ませてもよい。
【0110】
上記バインダー樹脂の例としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれた一種以上の樹脂が挙げられる。
【0111】
光応答性ガス発生フィルム3のサイズは、気体導入孔20(後述)を覆うものであれば特に限定されない。例えば、後述の第二実施形態(図17)と同様に、基板本体2と同じサイズの長方形状でもよい。
【0112】
保護層5は、基板本体2の光応答性ガス発生フィルム3が設けられた面とは逆の面(上面)に設けられている。保護層5の形状は基板本体2と略同じ長方形状であり、その厚みは0.1mm程度である。保護層5はPET樹脂等に粘着剤を塗工して作製されたものであり、透明である。そのため、反応液移動流路(微細流路)6内や反応液貯留部7内の反応液は、保護層5を介して目視可能である。保護層5は反応液移動流路6を保護するとともに上から覆い、毛細管力により反応液が反応液移動流路6内を移動可能な状態にする。
保護層5には試料導入孔21が設けられており、後述する試料導入部13に連通している。
【0113】
本実施形態の物質測定用基板1は、反応液移動流路(微細流路)6と反応液貯留部7を有している。反応液移動流路6と反応液貯留部7とは連通しており、反応液移動流路6が下流側(図1,3における右側)、反応液貯留部7が上流側(図1,3における左側)に位置している。
【0114】
反応液移動流路6は、不溶性凝集物を含む反応液が移動するための流路であり、本発明の主要構成を成すものである。図2に示すように、反応液移動流路6は、より詳細には、基板本体2の保護層5側の面に形成された直線状の溝と保護層5の裏面(下面)とで構成された、断面形状が長方形状の筒状流路である。反応液移動流路6は直線状であり、正面視において物質測定用基板1の長辺に対して平行に2個配されている。反応液移動流路6の入口たる上流側端部8は、反応液貯留部7と繋がっている。一方、反応液移動流路6の出口たる下流側端部16は、物質測定用基板1の端部に至っており、外部に開放している。
【0115】
反応液移動流路6の内径、例えば、断面(長方形状)における縦横の長さは、毛細管現象が起こりうる範囲内であれば、生成する不溶性凝集物の種類や粒子の大きさ、必要とされる測定精度等を考慮して自由に設定することができるが、一般的には0.5μm〜2000μm(2mm)程度であり、好ましくは1μm〜600μm程度、より好ましくは1μm〜300μm程度である。断面積でいえば、好ましくは1〜90000平方マイクロメートル程度、より好ましくは1〜60000平方マイクロメートル程度である。
反応液移動流路6の断面(長方形状)の縦と横の長さの比(縦:横)についても自由に設定できるが、一般的には1:5〜5:1程度、好ましくは1:4〜4:1程度、より好ましくは1:2〜2:1程度、さらに好ましくは2:3〜3:2程度である。
反応液移動流路6の長さは80〜200mm程度であるが、本発明はこれに限定されるものではない。ただし、反応液移動流路6内に進入した反応液が下流側末端16から漏れ出ないよう、長さを設定すべきである。
なお、反応液移動流路6の断面形状(溝の形状)については長方形状以外でもよく、半円状、V字状、などでもよい。
【0116】
反応液移動流路6を基板本体2に形成する方法としては、切削加工、レーザー加工、光造形、射出成形、インプリント、スクリーン印刷等の公知の方法を採用することができる。また、反応液移動流路6は、既存のレンチキュラーシートに粘着フィルムを貼り合わせることでも作製することができる。
【0117】
反応液貯留部7は、反応液移動流路6の上流側に位置している。図5,7に示すように、反応液貯留部7は、正面視が縦2mm、横10mm程度の角が取れた長方形状で、深さが反応液移動流路6の深さと略同じの、平板状の空間である。反応液貯留部7の容積は、反応液移動流路6全長の容積よりも十分大きい。
反応液貯留部7は、反応液移動流路6の上流側端部8を介して、反応液移動流路6と連通している。詳細には、反応液貯留部7の出口たる下流側端面22が、反応液移動流路6の入口たる上流側端部8と繋がっている。
なお、反応液貯留部7の深さは、反応液移動流路6の深さと同じでなくてもよく、下流側端面22と上流側端部8との間に段差があってもよい。
【0118】
図5,7に示すように、反応液貯留部7には、反応液移動流路6の他に、気体導入部12、試料導入部13、及び反応液排出路14a,14bが接続されている。
気体導入部12は、反応液貯留部7の上流側端面23に接続されている。
試料導入部13は、反応液貯留部7の片側の側面26bに接続されている。その接続部27の位置は、側面26b上であって上流側端面23の近傍(真横)である。
反応液排出路14a,14bは、反応液貯留部7の両側面26a,26bに接続されている。その接続部28a,28bの位置は、それぞれ側面26a,26b上であって、反応液貯留部7の長手方向の中央付近から下流側端面22までの間である。
すなわち、反応液貯留部7においては、上流(図5の左側)から下流(図5の右側)に向かって、上流側端面23、試料導入部13の接続部27、反応液排出路14a,14bの接続部28a,28b、及び下流側端面22が、この順番に並んでいる。
【0119】
なお、接続部28aと接続部28bは、反応液貯留部7の上流側端面23と下流側端面22とを結ぶ直線(すなわち、反応液移動流路6の延長線)を挟んで、互いに向き合った位置にある。より詳細には、接続部28aと接続部28bとを結ぶ直線は、反応液移動流路6の延長線と交差しており、さらに詳細には直交している。
【0120】
気体導入部12は、基板本体2の裏面に設けられた気体導入孔20と連通している。ここで気体導入孔20は、図1,2に示すように、光応答性ガス発生フィルム3で覆われている。そのため、光応答性ガス発生フィルム3から発生した気体は、気体導入孔20から入り、気体導入部12を経由して、反応液貯留部7に導入される。
一方、試料導入部13は、保護層5に設けられた試料導入孔21と連通している。反応液あるいは液体試料は、試料導入孔21から入り、試料導入部13を経由して、反応液貯留部7に導入される。
反応液排出路14a,14bの下流側は、保護層5に設けられた排出口29a,29bに連通し、外部に開放している。
【0121】
物質測定用基板1に光を照射する方法としては特に限定はないが、図8に示すようなカートリッジ式の光照射装置30を用いることで、光照射を容易に行うことができる。光照射装置30は、基板が挿入及び保持される基板挿入部31と、基板に光を照射する発光部32とを有している。基板挿入部31のサイズは物質測定用基板1がちょうど収まるサイズであり、基本姿勢の物質測定用基板1を上流側(図1の左側)からスライドさせながら挿入する。
【0122】
発光部32には複数の発光ダイオード35が配されており、図示しないスイッチによってオンオフ可能である。発光ダイオード35は紫外線LED(UV−LED)であり、紫外線を発することができる。物質測定用基板1を基板挿入部31にセットした状態において、発光部32の発光ダイオード35の位置は、気体導入孔20の真下となる。そのため、光応答性ガス発生フィルム3の気体導入孔20に対応する位置に対して確実に光(紫外線)を照射することができる。また光照射装置30には、挿入された物質測定用基板1を一定温度にインキュベートできる機構を設けてもよい。
【0123】
なお、物質測定用基板1と光照射装置30とを組み合わせることにより、物質測定システム40を構築することができる。
【0124】
続いて、物質測定用基板1を用いて試料中に含まれる目的物質の濃度を測定する手順の一例について、図9(a)〜図11(f)を参照しながら説明する。なお、理解を容易にするために、図9(a)〜図11(f)において、反応液25にハッチングを付している。また、反応液25や気体の導入・移動の様子を、適宜、矢印で示している。
【0125】
まず、基板外で、目的物質を含む試料を不溶性凝集物の生成反応に供し、不溶性凝集物を含む反応液(反応液25)を調製する。例えば、目的物質がエンドトキシンの場合には、試料をLAL試薬と反応させればよい(LAL反応)。反応液25には、試料中に含まれる目的物質の濃度に応じた量の不溶性凝集物が含まれている。
【0126】
次に、反応液25を試料導入孔21から入れる。これにより、反応液貯留部7に反応液25が導入される(図9(a))。反応液25の導入量は、反応液25の先頭側表面S(反応液移動流路6に対向する面)が接続部28a,28bに達しない量とする。なお、試料導入孔21については、保持層5に予め設けておいてもよいし、反応液25の導入時に針等を用いて孔をあけて形成させてもよい。所望量の反応液25が反応液貯留部7に溜まったことを確認した後、試料導入孔21をテープ等で塞ぐ。
【0127】
次に、光応答性ガス発生フィルム3の気体導入孔20に対応する位置に光を照射する。光照射は、光照射装置30に物質測定用基板1をセットして行う。前述のとおり、光応答性ガス発生フィルム3の基材層18は光透過性であり、下から照射された光(紫外線)は基材層18を通過してガス発生層17に届く。このとき、気体導入孔20の近傍で気体が発生し、気体導入孔20に導入される。これにより、反応液貯留部7に溜められた反応液25に対して気体による圧力が付与され、反応液25が反応液移動流路6の上流側端部8に向かって移動し始める(図9(b))。
【0128】
反応液25が反応液貯留部7内を進む際、反応液25内で速度分布が生じる。そのため、図9(b)に示すように、反応液25の先頭側表面Sは厳密な平面ではなく反った形状となり、中央部分が最も先頭となり、側面26a,26b側がより後方となる。換言すれば、正面視において、中央部分が頂点となる放物線あるいは円弧の一部のような形状となる。ここで、反応液25がさらに進み、反応液排出路14a,14bの接続部28a,28bに達すると、反応液25の一部が反応液排出路14a,14bに流れ込む。その結果、反応液25内の速度分布が小さくなり、先頭側表面Sの形状が揃い、平面により近づく(図10(c))。換言すれば、正面視において、先頭側表面Sの形状は、反応液25の進行方向に直交する直線により近づく。
【0129】
反応液25がさらに進むと、反応液移動流路6の上流側端部8に接触する(図10(d))。ここで直ちに気体の発生を停止させる。気体発生の停止は、光照射を中止することにより行うことができる。このとき、上流側端部8に接触した反応液25は、毛細管力によって反応液移動流路6に導入される。なお、この段階では反応液25には気体の圧力が付与されておらず、反応液25は毛細管力のみによって反応液移動流路6に導入される。
【0130】
反応液移動流路6に導入された反応液25は、毛細管力によって反応液移動流路6内を進み(図11(e))、やがて自動的に止まる。
このとき、不溶性凝集物の生成量が大きい反応液(不溶性凝集物の含量が大きい反応液)ほど移動度が小さく、一方、不溶性凝集物の生成量が小さい反応液(不溶性凝集物の含量が小さい反応液)ほど移動度が大きくなる。例えば、2種の反応液を測定に供した場合に、反応液25a,25bがそれぞれ図11(f)に示すような移動度を示したら、反応液移動流路6aに供した反応液の不溶性凝集物の生成量は、反応液移動流路6bに供した反応液の不溶性凝集物の生成量よりも高いことになる。すなわち、反応液移動流路6aに供した試料の目的物質濃度は、反応液移動流路6bに供した試料の目的物質濃度よりも高いことになる。
【0131】
反応液25の移動が止まったら、反応液25の移動度(移動距離)を目視で把握する。物質測定用基板1では保護層5が透明であるので、反応液25の移動度を目視で把握することができる。移動度は、例えば反応液移動流路6の任意の位置(例えば上流側端部8)を基準点とし、当該基準点からの移動距離をもって測定することができる。ここで、既知濃度の標準試料を用いて調製した反応液を同時並行で移動に供し、その移動度で検量線を作成することもできる。また、反応液移動流路6を流れ方向に沿って複数の領域に区分けしておき、反応液25がどの領域まで移動したかによって移動度を測定することもできる。
【0132】
以上の手順によって、物質測定用基板1を用いて、反応液の移動度から試料に含まれる目的物質の濃度を測定することができる。
【0133】
別の手順の例を、図12(a),図12(b)を参照しながら説明する。この例では、反応液排出路14a,14bを利用して、反応液貯留部7に溜める反応液25の体積を一定量としている。
【0134】
まず、第一の例と同様に、基板外で反応液25を調製する。続いて、反応液25を試料導入孔21から入れていく(図9(a)と同じ)。このときの反応液25を入れる速度は、できるだけ小さく(遅く)する。そして、反応液25の先頭側表面Sが接続部28a,28bに達したら、反応液25が専ら反応液排出路14a,14bに流れるように、換言すれば、反応液25が上流側端部8に向かって進まないようにする。すなわち、反応液25を入れる速度は、反応液25が上流側端部8に向かって進まない程度に抑える。
【0135】
反応液25を反応液排出路14a,14bにしばらく流した後、反応液25の導入を止める。このとき、反応液貯留部7内の反応液25は図12(a)のような状態となる。すなわち、先頭側表面Sが、接続部28a,28b同士を結ぶ直線の位置で揃う。ここで、図12(b)のように、反応液貯留部7を接続部28a,28b同士を結ぶ直線で2つの領域に区切った場合の、上流側領域の体積をV1、下流側領域の体積をV2とすると、体積V1に相当する量の反応液25が量り取られることとなる。
反応液25が反応液排出路14a,14bに流れるように、下流側端部16を一時的に塞いでもよい。
反応液25の導入を止めた後、試料導入孔21、排出孔29a,29bをテープ等で塞ぐ。
【0136】
次に、光応答性ガス発生フィルム3に光を照射し、気体を発生させ、気体導入孔20から気体を導入する。このときの気体の導入量は、下流側領域の体積V2と同じ量とする。これにより、反応液25が気体の圧力で押されて移動し、先頭側表面Sが上流側端部8にちょうど接触する(図12(c))。
その後の反応液25の挙動は、図11(e)、図11(f)と同じである。
【0137】
この例で示すように、反応液排出路14a,14bを利用することで、一定量の反応液25を量り取ることができる。
【0138】
図11(e)〜図11(f)に示す工程において、反応液25の移動度をより見やすくするために、試料に予め色素を含ませておいてもよい。また、反応液25の移動度をラインセンサ、CCDカメラ、磁気センサなどで検出する構成としてもよい。さらに、反応液25の一定区間における移動速度をラインセンサ、CCDカメラ、磁気センサなどで検出する構成としてもよい。
【0139】
反応液25の一定量を量り取るための別の構成について、図13(a),図13(b)を参照しながら説明する。図13(a)に示す例では、反応液貯留部7に4つの反応液排出路14a,14b,14c,14dが接続されている。そして、接続部28aと接続部28b、接続部28cと接続部28dが、それぞれ反応液移動流路6の延長線を挟んで位置している。接続部28aと接続部28bを結ぶ直線、接続部28cと接続部28dを結ぶ直線は、いずれも反応液移動流路6の延長線と直交している。試料導入部13は、接続部28aと接続部28cの間に設けられている。この例によれば、接続部28aと接続部28bを結ぶ直線、接続部28cと接続部28dを結ぶ直線、及び反応液貯留部7の内壁で囲まれた領域の体積V3(図13(b))に相当する量の反応液25を、量り取ることができる。
【0140】
上記した実施形態では、反応液移動流路6の幅と深さは一定、すなわち流路の断面積が一定であるが、別の実施形態も可能である。例えば、図14に示すように、流路の幅が流れ方向(反応液の移動方向)に向かって漸減するテーパ状を成すようにしてもよい。同様に、図15に示すように、流路の深さが流れ方向に向かって漸減するテーパ状を成すようにしてもよい。これらの実施形態によれば、反応液25が下流側に移動するにつれて流路の断面積が絞られ、反応液25に対する抵抗が徐々に増加する。そのため、低濃度域での分解能の向上が期待できる。
なお、図15では光応答性ガス発生フィルム3の図示を省略している。
【0141】
上記した実施形態において、反応液25の移動度を容易に測定するための構成をさらに加えることができる。例えば、図16に示す実施形態では、反応液移動流路6が、基板表面に設けられた目盛り48によって複数の領域47a〜47fに区分されている。本実施形態によれば、目盛り48を指標として反応液25の移動度を容易に把握することができる。なお、目盛り48については、物質測定用基板1に直接設けてもよいし、別途用意した目盛り付きのシール等を貼付して設けてもよい。
【0142】
上記した実施形態では、不溶性凝集物を含む反応液を物質測定用基板1の外で予め調製し、その後、物質測定用基板1に導入している。しかしながら、不溶性凝集物を含む反応液を物質測定用基板1内で調製することもできる。例えば、不溶性凝集物の生成に必要な基質類を、反応液貯留部7に予め設置しておく。そして、目的物質を含む試料を試料導入孔21から入れ、反応液貯留部7に導入する。必要に応じて、物質測定用基板1を所定温度でインキュベートする。これにより、反応液貯留部7内で目的物質を含む試料と基質類とが接触及び反応し、不溶性凝集物を含む反応液が調製される。結果的に、図9(a)に示す状態となる。その後は、図9(b)〜図11(f)の手順に従って、操作すればよい。本実施形態によれば、不溶性凝集物を含む反応液の調製を物質測定用基板1内で行えるので、操作が簡便である。
【0143】
また、基板外で、不溶性凝集物の生成に必要な基質類と目的物質を含む試料とを混合し、その後ただちに、当該混合液を反応液貯留部7に導入してもよい。この構成では、不溶性凝集物の生成反応が反応液貯留部7内で行われる。当該混合液を反応液貯留部7に導入した後、必要に応じて、物質測定用基板1を所定温度でインキュベートしてもよい。
また、前記基質類と前記試料とを予め混合するのではなく、前記基質類と前記試料とを、順次、反応液貯留部7に導入してもよい。
【0144】
不溶性凝集物の生成に必要な基質類の具体例については後述する。
【0145】
上記した実施形態において、光応答性フィルム3の基板本体2への貼付は、反応液25の導入の直前に行ってもよいし(用時調製)、予め行っておいてもよい。
【0146】
上記した実施形態では、物質測定用基板1に2個の反応液移動流路6が設けられているが、反応液移動流路6の数については特に限定はなく、1個のみでもよいし、3個以上でもよい。このとき、反応液貯留部7は、反応液移動流路6の数に対応して設ければよい。
【0147】
上記した実施形態では、気体導入部12と試料導入部13が別々に設けられているが、気体導入部12と試料導入部13のいずれか一方のみを設け、気体導入部と試料導入部を兼ねてもよい。例えば、上流側端面23に気体導入部12のみを設け、気体導入部12から反応液25を導入する構成としてもよい。
【0148】
上記した実施形態では反応液移動流路6が直線状であるが、毛細管力によって反応液25が導入可能かつ移動可能であれば、直線状以外の形状(例えば曲線状)でもよい。
【0149】
上記した実施形態では、光応答性ガス発生フィルム3によって、反応液25を押すための気体を発生させているが、ポンプ、シリンジ、ピペット等を用いて気体を発生させてもよい。また、気体の圧力を使用しなくてもよく、例えば、反応液移動流路6の下流側端部16から吸引することにより、反応液25を反応液移動流路6の上流側端部8に導いてもよい。
【0150】
上記した物質測定用基板1(又は基板本体2)、反応液移動流路6、反応液貯留部7等のサイズについては、これらに限定されるものではなく、反応液移動流路6の数や、測定系に必要とされる分離能等によって適宜設定することができる。
【0151】
また前記したように、物質測定用基板1と光照射装置30とを組み合わせることにより、物質測定システム40(図8)を構築することができる。物質測定システム40を用いることにより、不溶性凝集物の生成量に基づく物質濃度測定を迅速、簡便、かつ正確に行うことができる。
【0152】
上記した第一実施形態及びそれに関連する実施形態は、反応液貯留部7内の反応液25を、毛細管力によって反応液移動流路6に導入するとともに反応液移動流路6に沿って移動させるものであった。そのため、反応液25が、反応液貯留部7から反応液移動流路6に向かって1つに繋がって延びるような形態であった。一方、次に説明する第二実施形態は、気体の圧力を利用して反応液の液滴を移動させるものである。以下、本発明の第二実施形態について説明する。なお、第一実施形態の物質測定用基板1(図1)と同様に、本実施形態で使用する物質測定用基板71も、通常、正面(図17)が鉛直方向における上向きとなる姿勢(基本姿勢)で用いられる。本実施形態においても、以下の記載において、上下方向は基本姿勢における方向を基準とする。すなわち、基本姿勢において、保護層75が上側、光応答性ガス発生フィルム73が下側となる。また左右方向については図17の姿勢を基準とする。例えば、液滴の移動方向については左側が上流、右側が下流となり、液滴は左から右に向かって移動する。
また、発明の理解を容易にするために、各図面において、各部材の大きさや厚みについては一部誇張して描かれており、実際の大きさや比率等とは必ずしも一致しないことがある。
【0153】
図17〜20に示す物質測定用基板71は、第一実施形態と同様に、基本的に、光応答性ガス発生フィルム(気体供給手段)73と、基板本体72と、保護層75がこの順に積層された構造を有している。詳細には、基板本体72の一方の面(下面)に光応答性ガス発生フィルム73、他方の面(上面)に保護層75がそれぞれ設けられている。
【0154】
基板本体72は、合成樹脂やガラスで構成された長方形状の板体である。基板本体72のサイズは、縦20〜50mm程度、横40〜100mm程度、厚み0.5〜3mm程度である。基板本体72には、後に詳述する微細流路76となる溝が形成されている。基板本体72を構成する材料については、第一実施形態の基板本体2と同様である。
【0155】
光応答性ガス発生フィルム(気体供給手段)73は、基板本体2の一方の面(下面)に設けられている。光応答性ガス発生フィルム73は、基板本体72と略同じ長方形状のフィルムであり、第一実施形態の光応答性ガス発生フィルム3と同様に、ガス発生層17と基材層18とが積層された2層構造を有する(図6)。そして、ガス発生層17が基板本体72に接触するように基板本体72に貼付されている。
【0156】
光応答性ガス発生フィルム73は、サイズが異なる以外は第一実施形態の光応答性ガス発生フィルム3と同じ構成を有している。
ガス発生層17は、光応答性ガス発生材を含むものであり、その厚みは30〜50μm程度である。光応答性ガス発生材は、前記したアゾ化合物やアジド化合物等の「ガスを発生する材料」と、粘接着性を有するバインダー樹脂とで構成されている。すなわち、ガス発生層17は粘着剤を含んでおり、基板本体72に簡単に貼付できる。
基材層18はポリエチレンテレフタレート(PET)からなる支持体であり、その厚みは50μm程度である。基材層18は光透過性であり、外部から照射された光は基材層18を通過してガス発生層17に届く。
なお、図17以降において、光応答性ガス発生フィルム73の積層構造は省略している。
光反応性ガス発生材を構成する「ガスを発生する材料」については、第一実施形態の光応答性ガス発生フィルム3を構成する「ガスを発生する材料」と同様である。バインダーについても同様である
【0157】
光応答性ガス発生フィルム73のサイズは、気体導入孔90(後述)を覆うものであれば特に限定されない。例えば第一実施形態(図1)と同様に、基板本体72よりも小さい長方形状でもよい。
【0158】
保護層75は、基板本体72の光応答性ガス発生フィルム73が設けられた面とは逆の面(上面)に設けられている。保護層75の形状は基板本体72と略同じ長方形状であり、その厚みは0.1mm程度である。保護層75はPET樹脂等に粘着剤を塗工して作製されたものであり、透明である。そのため、微細流路76内の液滴は、保護層75を介して目視可能である。保護層75は微細流路6を保護するとともに上から覆い、気体による加圧で液滴が微細流路76内を移動可能な状態にする。
保護層75には試料導入孔91が設けられており、後述する微細流路76の試料導入部83に連通している。
【0159】
基板71には微細流路76が設けられている。微細流路76は、不溶性凝集物を含む反応液(液滴)が移動するための流路であり、本発明の主要構成を成すものである。図18,20に示すように、微細流路76は、より詳細には、基板本体72の保護層75側の面に形成された直線状の溝と保護層75の裏面(下面)とで構成された、断面形状が長方形状の筒状流路である。
【0160】
微細流路76は直線状であり、正面視において基板71の長辺に対して平行に2個配されている。微細流路76の上流側(図17,19における左側)の端部は基板71の上流側(左側)短辺までは至っておらず、一方、下流側(図17,19における右側)の端部は基板71の下流側(右側)短辺まで至っており、外部に開放している(開放端86)。すなわち、微細流路76の長さは基板71の長辺の長さよりも少し短く、30〜70mm程度である。微細流路76の内径、例えば、断面(長方形状)における縦横の長さは、生成する不溶性凝集物の種類や粒子の大きさ、必要とされる測定精度等を考慮して自由に設定することができるが、一般的には0.5μm〜2000μm(2mm)程度であり、好ましくは50μm〜1500μm程度、より好ましくは50μm〜1000μm程度(断面積が2500〜1000000平方マイクロメートル程度)である。
微細流路76の断面(長方形状)の縦と横の長さの比(縦:横)についても自由に設定できるが、一般的には1:5〜5:1程度、好ましくは1:4〜4:1程度、より好ましくは1:2〜2:1程度、さらに好ましくは2:3〜3:2程度である。
なお、微細流路6の断面形状(溝の形状)については長方形状以外でもよく、半円状、V字状、などでもよい。
【0161】
微細流路76を基板本体72に形成する方法としては、切削加工、レーザー加工、光造形、射出成形、インプリント、スクリーン印刷等の公知の方法を採用することができる。また、微細流路76は、既存のレンチキュラーシートに粘着フィルムを貼り合わせることでも作製することができる。
【0162】
図19(b),図20に示すように、微細流路76は、液滴調製部80と液滴移動部81に大きく分けられる。液滴調製部80は微細流路76における上流部分に位置しており、その長さは5〜10mm程度と短い。図19(b),図20,図21(a)(b)に示すように、液滴調製部80は、気体導入部82と試料導入部83と基質保持部85を有している。気体導入部82、試料導入部83、及び基質保持部85は、上流から下流に向かってこの順番に並んでいる。
【0163】
気体導入部82は、液滴への圧力源となる気体が導入される部位であり、微細流路76の上流側最端部又はその近傍に位置している。後述するように、気体導入部82は、基板本体72に設けられた気体導入孔90と連通しており、光応答性ガス発生フィルム73から発生した気体が導入される。
【0164】
試料導入部83は、試料又は反応液が導入される部位であり、気体導入部82の下流に位置している。試料導入部83は保護層75に設けられた試料導入孔91と連通しており、試料導入孔91を通じて試料又は反応液が導入される。
【0165】
基質保持部85は、試料導入部83の下流に位置しており、微細流路76の底面(光応答性ガス発生フィルム73側)に設けられた小さな凹部で構成されている。基質保持部85には、不溶性凝集物の生成に必要な基質類、例えば、カブトガニの血球抽出物(LAL)の凍結乾燥品が保持されている。なお、図20,図21(a)では基質類の図示を省略している。
また、物質測定用基板71は、液滴の移動度によって物質濃度を測定するものであるから、不溶性凝集物の生成とは関係のない基質類(例えば発色基質)は備えていない。
【0166】
不溶性凝集物の生成に必要な基質類の具体例については後述する。
【0167】
一方、図20に示すように、液滴移動部81は、微細流路76の主要構成をなす部分であり、微細流路76の中央部から下流部分を占めている。液滴移動部81の長さは20〜60mm程度である。液滴移動部81の下流側端部は外部に開放している(開放端86)。後述するように、物質測定用基板71に導入された不溶性凝集物を含む液滴は、気体の圧力を受けて液滴移動部81を移動する。そして、その際の移動度をもって試料中の目的物質の濃度が測定される。
【0168】
物質測定用基板71に光を照射する方法としては特に限定はないが、第一実施形態と同様のカートリッジ式の光照射装置30(図8)を用いることができる。使用方法は同じであり、図22に示すように、基本姿勢の物質測定用基板71を上流側(図17の左側)からスライドさせながら、光照射装置30の基板挿入部31に挿入する。物質測定用基板71を基板挿入部31にセットした状態において、発光部32の発光ダイオード35の位置は、気体導入孔90の真下となる。そのため、光応答性ガス発生フィルム73の気体導入孔90に対応する位置に対して確実に光(紫外線)を照射することができる。また光照射装置30には、挿入された物質測定用基板71を一定温度にインキュベートできる機構を設けてもよい。
なお、物質測定用基板71と光照射装置30とを組み合わせることにより、物質測定システム97を構築することができる。
【0169】
続いて、物質測定用基板71を用いて試料中に含まれる目的物質の濃度を測定する手順について、図23(a)〜(d)を参照しながら説明する。なお、理解を容易にするために、図23(a)〜(d)において、液滴95と基質保持部85上の基質にハッチングを付している。
まず、目的物質を含む試料を試料導入孔91から入れる。これにより、試料の液滴95が微細流路76の試料導入部83に配置される(図23(a))。なお、試料導入孔91については、保持層105に予め設けておいてもよいし、試料導入時に針等を用いて孔をあけて形成させてもよい。液滴が試料導入部83に配置されたことを確認した後、試料導入孔91をテープ等で塞ぐ。
【0170】
次に、光応答性ガス発生フィルム73の気体導入孔90に対応する位置に光を照射する。光照射は、光照射装置30に物質測定用基板71をセットして行う。前述のとおり、光応答性ガス発生フィルム73の基材層18は光透過性であり、下から照射された光(紫外線)は基材層18を通過してガス発生層17に届く。このとき、気体導入孔90の近傍で気体が発生し、気体導入孔90に導入される。これにより、試料導入部83に配置された液滴95に対して気体による圧力が付与され、液滴が下流側(開放端86側)に向かって移動し、基質保持部85上に達する(図23(a),(b))。なお、光の照射時間については、液滴95が基質保持部85上でちょうど止まる程度の気体発生量となるよう制御する。例えば、光照射をパルス的に繰り返して微調整すればよい。
【0171】
液滴が基質保持部85上に達したら、光照射をいったん中止し、液滴95の移動を一時停止する。これにより、基質保持部85上で不溶性凝集物の生成反応が起こり、不溶性凝集物を含む液滴が調製される。例えば基質保持部85にLALを保持させた実施形態では、基質保持部85上でリムルス反応によるゲル化が開始する。基質保持部85上で液滴95を停止させる時間は、試料に含まれる目的物質の量や不溶性凝集物の種類等により適宜選択すればよいが、本発明では不溶性凝集物の生成量が小さい反応初期の段階でも測定可能であり、一般の測定法よりも短時間で済む。例えば、リムルス反応によるゲル化の場合には、数分程度でもよい。
【0172】
基質保持部85上で所望の液滴を調製できたら、再び光応答性ガス発生フィルム73に対する光照射を行い、気体を発生させる。これにより、液滴95(不溶性凝集物を含んでいる)の一時停止が解除される。そして液滴95は液滴移動部81へ進入し、開放端86に向かって移動する(図23(c))。このとき、不溶性凝集物の生成量が大きい液滴(不溶性凝集物の含量が大きい液滴)ほど移動度が小さく、一方、不溶性凝集物の生成量が小さい液滴(不溶性凝集物の含量が小さい液滴)ほど移動度が大きくなる。例えば、2種の試料を測定に供した場合に、液滴95a,95bがそれぞれ図23(d)に示すような移動度を示したら、微細流路76aに供した試料の目的物質濃度は、微細流路76bに供した試料の目的物質濃度よりも高いことになる。なお、この段階における光の照射時間(すなわち気体の発生量)についても、不溶性凝集物の生成量や種類等によって適宜選択すればよい、ただし、液滴95がオーバーランして開放端86から漏れ出ないように調整すべきである。
【0173】
液滴95の移動が終了したら、液滴95の移動度(移動距離)を目視で把握する。物質測定用基板71では保護層75が透明であるので、液滴95の移動度を目視で把握することができる。移動度は、例えば、微細流路76の任意の位置(例えば基質保持部85の位置)を基準点とし、当該基準点からの移動距離をもって測定することができる。ここで、既知濃度の標準試料を同時並行で移動に供し、その移動度で検量線を作成することもできる。また、液滴移動部81を流れ方向に沿って複数の領域に区分けしておき、液滴95がどの領域まで移動したかによって移動度を測定することもできる。
【0174】
以上の手順によって、物質測定用基板71を用いて、反応液(液滴)の移動度から試料に含まれる目的物質の濃度を測定することができる。
【0175】
上記の手順において、液滴95の移動度をより見やすくするために、試料に予め色素を含ませておいてもよい。また、液滴95の移動度をラインセンサ、CCDカメラ、磁気センサなどで検出する構成としてもよい。さらに、液滴95の一定区間における移動速度をラインセンサ、CCDカメラ、磁気センサなどで検出する構成としてもよい。
【0176】
本実施形態では、物質測定用基板71に2個の微細流路が設けられているが、微細流路の数については特に限定はなく、1個のみでもよいし、3個以上でもよい。
【0177】
本実施形態では、気体導入部82と試料導入部83が別々に設けられているが、気体導入部82と試料導入部83のいずれか一方のみを設け、気体導入部と試料導入部を兼ねてもよい。例えば、試料導入部83のみを設け、試料導入部83から気体を導入してもよい。
また本実施形態では、基質保持部85が凹部からなる構成を示したが、基質保持部85は凹部以外で構成されていてもよい。例えば、平坦であってもよい。
さらに、基質保持部85は、気体導入部82や試料導入部83に設けてもよい。
【0178】
本実施形態では、光応答性ガス発生フィルム73によって、液滴95を押すための気体を発生させているが、ポンプ、シリンジ、ピペット等を用いて気体を発生させてもよい。また、気体の圧力を使用しなくてもよく、例えば、微細流路76の開放端86から吸引することにより、液滴95を微細流路76に沿って移動させてもよい。
【0179】
上記した物質測定用基板71(又は基板本体72)、微細流路76、液滴調製部80、液滴移動部81等のサイズについては、これらに限定されるものではなく、微細流路76の数や、測定系に必要とされる分離能等によって適宜設定することができる。例えば、液滴移動部81の長さは20〜60mmに限定されない。例えば、10mm程度でもよいし、200mm程度でもよい。一般に、液滴移動部81の長さが大きいほど分離能の点で有利である。
【0180】
なお、微細流路76における流路の幅や深さは、全長にわたって一律である必要はない。流路の幅や深さが一律でない例を図24に示す。図24に示す液滴調製部50は、流路の幅と深さが絞られた2つの狭窄部51,52を有している。具体的には、気体導入部82と試料導入部83との間に第一狭窄部51が、液滴調製部50と液滴移動部81との間に第二狭窄部52が、それぞれ設けられている。より詳細には、第一狭窄部51は、試料導入部83の上流側直近に設けられ、一方、第二狭窄部52は、基質保持部85の下流側直近であって液滴移動部81の上流側直近に設けられている。第一狭窄部51と第二狭窄部52においては、流路の幅が小さく絞られているとともに、流路の深さも浅い。そのため、試料導入部83から導入された試料(液滴)は、第一狭窄部51と第二狭窄部52との間で堰き止められ、液滴の意図しない移動を防止することができる。
さらに、液滴調製部50と液滴移動部81とで流路の深さを変えてもよい。
【0181】
また、図25に示す液滴調製部60のように、試料導入部83を分岐させて設けることもできる。この例によれば、試料導入部83を形成する際に発生するおそれのあるバリ等が、流路内に混入するリスクを抑えることができる。なお、図25に示す例では上記した狭窄部51,52を設けているが、省略してもよい。
【0182】
液滴移動部81についても、幅や深さは全長にわたって一律である必要はない。例えば、第一実施形態の反応液移動流路6と同様に、図14に示すような、流路の幅が流れ方向に向かって徐々に小さくなるテーパ状を成すようにしてもよいし、図15に示すような、流路の深さが流れ方向に向かって徐々に小さくなるテーパ状を成すようにしてもよい。これらの構成によれば、液滴95が下流側に移動するにつれて流路断面積が絞られ、液滴95に対する抵抗を増加させることができる。例えば、不溶性凝集物の生成量が所定量を超えた場合には、液滴はそれ以上先に移動せずに、不溶性凝集物がその生成量に応じた位置(移動距離)に留まる構成とすることも可能である。これにより、液滴の移動度を明確に把握することが可能となる。
【0183】
図17に示した物質測定用基板71においては微細流路76が直線状であるが、微細流路76の形状については、図14、図15に示した例以外にも、種々の形態を採用することができる。特に、本発明においては、微細流路76の液滴移動部81が流れ方向に沿って複数の領域に区分されていることが好ましい。それにより、液滴の移動度を容易に把握することができる。以下、微細流路76の採用しうる種々の形状、特に、液滴移動部81を区分する種々の態様について、図26〜31を参照しながら説明する。
【0184】
図26(a)に示す例では、微細流路76の液滴移動部81が台形状の複数の領域41a〜41fに区分されている。詳細には、領域41a〜41fにおいては、正面視において底辺が上流側、頂点が下流側となる同一形状の二等辺三角形が一方向に複数連なっており、かつ隣接する二等辺三角形の底辺と頂点とが少し重なっている。その結果、領域41a〜41fは連続した台形状を成している。すなわち本実施形態では、各領域が、上流から下流に向かって流路幅が減少するテーパ状を成している。そのため、隣接する下流側の領域に液滴が移動する際に、流路断面積が絞られることとなる。その結果、例えば、不溶性凝集物の生成が液滴の移動と同時に進行する場合に、不溶性凝集物の生成量が所定値を超えた液滴は、小さい流路断面積のために次の領域へ移動することができず、その領域に留まることとなる。これにより、液滴の移動度を明確に把握することが可能となる。
【0185】
図26(a)に示した例では、液滴移動部81を構成する複数の領域41a〜41fの形状が台形状であるが、他の形状でもよい。図26(b)に示す例では、複数の領域42a〜42fが円形又は楕円形であり、かつ隣接する領域同士が短い直線流路(隣接する領域間の境界に相当)で繋がっている。本実施形態においても、隣接する下流側の領域に液滴が移動する際に、流路断面積が絞られる。
【0186】
図26(c)に示す例では、複数の領域43a〜43fの流路幅が段階的に小さくなっている。すなわち本実施形態では、上流から下流に進むに伴って流路断面積が段階的小さくなる。
【0187】
液滴移動部81の深さを変化させて、液滴移動部81を複数の領域に区分することもできる。図27(a)に示す例では、液滴移動部81の底面(基板本体72で構成される)が平らではなく、鋸歯状となっている。そして、その繰り返し単位によって複数の領域49a〜49fに区分されている。さらに、図27(b)に示すように、深さが流れ方向に向かって徐々に小さくなるテーパ状を成すようにしてもよい。これらの実施形態でも、隣接する下流側の領域に液滴が移動する際に、流路断面積が絞られる。なお、図27(a),(b)では光応答性ガス発生フィルム73の図示を省略している。
【0188】
図26(a)〜(c)、図27(a)、図27(b)に示す例では、いずれも隣接する領域間の境界(つなぎ目)の前後で、断面形状あるいは断面積が変化している。換言すれば、ある領域から境界を経由して次の領域に進む間に、断面形状あるいは断面積が変化している。さらに換言すれば、領域間の区別は、流路の断面形状あるいは断面積の変化によって行われている。
【0189】
一方、図28(a)、図28(b)、図29に示す例では、液滴移動部81の流路の断面形状と断面積は一定であり、隣接する領域間の境界前後で流路の断面形状や断面積が変化しない。ただし、液滴移動部81が1本の直線状ではなく、少なくとも1箇所で折れ曲がった屈折路を有している。そして、当該屈折路の屈折部(角部)によって液滴移動部81が複数の領域に区分されている。この実施形態について、順次説明する。
【0190】
図28(a)に示す例では、液滴移動部81が三角波のような形状となっている。すなわち、本実施形態では液滴移動部81が複数の直線流路(領域)44a〜44fで区分されており、これらが山谷を繰り返してジグザグ状に繋がっている。換言すれば、液滴移動部81は屈折路を有しており、前記した山と谷の部分が屈折部に相当する。そして、当該屈折部によって液滴移動部81が複数の領域に区分されている。本実施形態では、図26(a)〜(c)、図27(a)、図27(b)に示した例とは異なり、液滴移動部81の流路断面積は一定であり各領域間の境界(つなぎ目)において流路断面積は実質的に絞られていない。本実施形態においても、液滴がどの直線流路まで移動したかを把握することによって液滴の移動度を容易に測定することができる。さらに、本実施形態では液滴移動部81の長さを大きくとることができ、より高い分離能を得ることができる。
【0191】
図28(b)に示す例では、液滴移動部81が矩形波のような形状となっている。すなわち、本実施形態では液滴移動部81が複数の直線流路(領域)45a〜45fで区分されており、これらが互い違いかつ平行に配され、端部同士を重複させて繋がっている。本実施形態においても、液滴移動部81の流路断面積は一定であり、各領域間の境界(つなぎ目)において流路断面積は実質的に絞られていない。さらに、液滴移動部81の長さを大きくとることができ、より高い分離能を得ることができる。本実施形態においても液滴移動部81は屈折路を有しており、当該屈折路の屈折部によって液滴移動部81が複数の領域に区分されている。
【0192】
液滴移動部81の長さをさらに大きくとるために、図29に示す例を採用することができる。図29に示す例では、流れ方向の一定幅W内を微細流路76が複数回往復することにより、1つの領域が形成されている。そして、領域46a〜46fがこの順に繋がっている。本実施形態においても液滴移動部81は屈折路を有しており、当該屈折路の屈折部によって液滴移動部81が複数の領域に区分されている。
【0193】
直線状の液滴移動部81を複数領域に区分する実施形態も可能である。例えば、第一実施形態の図16に示した例と同様に、液滴移動部81を、基板表面に設けられた目盛り48によって複数の領域47a〜47fに区分することができる。本実施形態においても、液滴の移動度を容易に把握することができる。なお、目盛り48については、物質測定用基板71に直接設けてもよいし、別途用意した目盛り付きのシール等を貼付して設けてもよい。
【0194】
液滴移動部81に「不溶性凝集物の生成を促進する試薬」を設置し、その設置部位を境界として、液滴移動部81を複数の領域に区分することもできる。図30(a)に示す例では、液滴移動部81内の1箇所に「不溶性凝集物の生成を促進する試薬」である試薬55が設置されており、試薬55の設置部位を境界として、液滴移動部81が2つの領域56aと56bに区分されている。図30(b)に示す例では、液滴移動部81内の3箇所に試薬55が配置されており、試薬55の各設置部位を境界として、液滴移動部81が4つの領域56a〜56dに区分されている。
試薬55としては、例えば、基質保持部85に設置した基質(例えば、LAL)と同じものを採用することができる。
本実施形態では、液滴が試薬55に接触することにより、その場所で不溶性凝集物の生成が促進される。そして、不溶性凝集物の生成量が所定値を超えた液滴は、次の領域へ移動することができず、その領域に留まることとなる。これにより、液滴の移動度を明確に把握することが可能となる。
【0195】
図30、図31では、理解を容易にするために、試薬55にハッチングを付している。
【0196】
図31に示す例は、屈折路と「不溶性凝集物の生成を促進する試薬」とを組み合わせたものである。本実施形態では、液滴移動部81の両側面に、対向する側面に向かって延びる板状の突出部62が複数設けられており、突出部62によって液滴移動部81が複数の領域57a〜57dに区分されている。突出部62の先端は液滴移動部81の流路幅の半分程度の位置にあり、突出部62の先端と対向する側面との間には隙間がある。そのため、液滴移動部81には、結果的に屈折路が形成されている。
そして本実施形態では、突出部62の表面にLAL等の「不溶性凝集物の生成を促進する試薬」である試薬55が設置(固定化)されている。本実施形態では、液滴が突出部62の表面にある試薬55に接触することにより、その場所で不溶性凝集物の生成が促進される。そして、不溶性凝集物の生成量が所定値を超えた液滴は、次の領域へ移動することができず、その領域に留まることとなる。これにより、液滴の移動度を明確に把握することが可能となる。
【0197】
図26〜29に示す実施形態においても、隣接する領域間の境界部分に「不溶性凝集物の生成を促進する試薬」を設置(固定化)してもよい。
【0198】
液滴の移動度をさらに明確に把握するために、各領域に対応するポケットを設けてもよい。例えば、各領域のつなぎ目部分に流れ方向から分岐させたポケットを設け、移動後の液滴をポケットに導く構成としてもよい。
【0199】
図26〜31に示した液滴移動部81の各形状は、液滴95を移動させる実施形態に特に適したものであるが、反応液25の移動が可能であれば第一実施形態の反応液移動流路6に適用してもよい。
【0200】
本実施形態においても、物質測定用基板71と光照射装置30とを組み合わせることにより、物質測定システム97(図22)を構築することができる。物質測定システム97を用いることにより、不溶性凝集物の生成量に基づく物質濃度測定を迅速、簡便、かつ正確に行うことができる。
【0201】
上記した実施形態において、前処理として、試料を濃縮するための機構をさらに設けてもよい。これにより、検出感度をさらに向上させることができる。当該機構の例としては、膜濃縮などが挙げられる。当該機構は、基板内に設けてもよいし、基板外に設けてもよい。
【0202】
次に、全ての実施形態に共通の事項として、不溶性凝集物の生成反応と、当該生成反応に必要な基質類について説明する。
【0203】
不溶性凝集物の生成反応の1つの例は、エンドトキシン測定におけるリムルス反応(LAL反応)である。この場合の基質類は、例えば、カブトガニの血球抽出成分(LAL)である。なお、LAL反応による不溶性凝集物の生成(ゲル化)は、エンドトキシン以外にβグルカンによっても起こる。これは、LAL中のファクターGがβグルカンによって活性化され、活性化ファクターGが凝固酵素を活性化するためである。
【0204】
不溶性凝集物の生成反応の他の例は、ペプチドグリカン及び/又はβグルカン測定におけるSLP反応である。この場合の基質類は、例えば、昆虫の体液由来成分である。昆虫の例としては、カイコ、タバコガ、トマトガ、ニクバエ、イエバエ、トノサマバッタ、エンマコオロギ、カミキリおよびAcalolepa luxuriosaなどが挙げられる。
【0205】
不溶性凝集物の生成反応の他の例は、粒子凝集反応(例えば、ラテックス凝集反応)である。この場合の基質類は、例えば、抗原又は抗体、核酸、ペプチド核酸(PNA)、リガンド又はレセプター、ビオチン又はアビジンなどが固定化された不溶性担体である。
【0206】
上記不溶性担体としては、例えば、無機物質の粉末、有機高分子物質の粉末、微生物、血球、細胞膜片等が挙げられる。上記無機物質としては、例えば、金、銀、チタン、鉄、ニッケル等の金属;アルミナ、チタニア等の金属酸化物;シリカ等が挙げられる。上記有機高分子物質としては、特に限定されないが、例えば、スチレン重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、などが挙げられる。特に、これらの重合体粉末を水に均一に懸濁させたラテックス粒子を用いるのが好ましい。該ラテックス粒子の平均粒径は、0.01μm〜1.0mmが好ましく、より好ましくは、0.01μm〜0.5mmである。
【0207】
また、不溶性担体として標識粒子を採用することにより、生成した不溶性凝集物を目視で容易に観察することができるようになる。標識粒子の例としては、着色ラテックス粒子、コロイド状金属粒子(金コロイド粒子等)、コロイド状金属酸化物粒子、磁性粒子、蛍光粒子などが挙げられるが、色調の多様性や鮮明さの点から着色ラテックス粒子が好ましい。着色ラテックス粒子の色としては、青色、赤色、緑色などが挙げられる。
【0208】
不溶性凝集物の生成反応の他の例は、LAL反応と不溶性担体の凝集との組み合わせである。すなわち、前述したように、LAL反応においてはファクターCの活性化から始まるカスケード反応によって凝固酵素が活性化される。そして、活性化された凝固酵素の作用によりコアグローゲンがコアグリンに変換され、コアグリンが重合してゲルを形成する。そこで、LALの一成分であるコアグローゲンを固定化した不溶性担体(ラテックス粒子等)を用いることにより、不溶性凝集物(コアグリンと不溶性担体からなる)を効率的に生成させることができる。この場合の基質類は、例えば、LALと、コアグローゲンを固定化した不溶性担体との共存物(例えば混合物)である。
【0209】
LAL反応と不溶性担体の凝集との組み合わせにおける別の実施形態として、LALと不溶性担体とを共存させてもよい。本実施形態でも、不溶性凝集物(コアグリンと不溶性担体からなる)を効率的に生成させることができる。この場合の基質類は、例えば、LALと不溶性担体との共存物(例えば混合物)である。
【0210】
LAL反応と不溶性担体の凝集との組み合わせにおいて、不溶性担体としては、例えば、ラテックス粒子を用いることができる。着色ラテックス粒子、金コロイド粒子、磁性粒子、蛍光粒子等の標識粒子を用いてもよい。
【0211】
不溶性凝集物の生成反応の他の例は、SLP反応と不溶性担体の凝集との組み合わせである。すなわち、前述したように、SLP反応においては「PGRP・フェノールオキシダーゼ前駆体カスケード」によってフェノールオキシダーゼが活性化される。そして、活性化されたフェノールオキシダーゼの作用によりDOPAが酸化され、結果としてメラニンの凝集物が生成する。そこで、昆虫の体液抽出成分の1つであるDOPAを固定化した不溶性担体(ラテックス粒子等)を用いることにより、不溶性凝集物(メラニンと不溶性担体からなる)を効率的に生成させることができる。この場合の基質類は、例えば、昆虫の体液抽出成分と、DOPAを固定化した不溶性担体との共存物(例えば混合物)である。
【0212】
SLP反応と不溶性担体の凝集との組み合わせにおける別の実施形態として、昆虫の体液抽出成分と不溶性担体とを共存させてもよい。本実施形態でも、不溶性凝集物(メラニンと不溶性担体からなる)を効率的に生成させることができる。この場合の基質類は、例えば、昆虫の体液抽出成分と不溶性担体との共存物(例えば混合物)である。
本実施形態においても、不溶性担体としては、例えば、ラテックス粒子を用いることができる。着色ラテックス粒子、金コロイド粒子、磁性粒子、蛍光粒子等の標識粒子を用いてもよい。
【0213】
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例1】
【0214】
図1に示す物質測定用基板1を用いて、試料中のエンドトキシン濃度と反応液の移動度との関係を調べた。
【0215】
物質測定用基板1における各サイズは以下のとおりとした。
・物質測定用基板1:縦20mm、横150mm、厚み1mm
・反応液移動流路6の流路長さ:100mm
・反応液移動流路6の流路幅:100μm(一定)
・反応液移動流路6の流路深さ:100μm(一定)
・反応液移動流路6の流路断面積:10000平方マイクロメートル(100μm×100μm)
・反応液貯留部7:縦1mm、横11.5mm、深さ0.5mm
【0216】
基板本体2としてアクリル樹脂製の基板を採用し、切削加工にて反応液移動流路6を形成した。微細流路6の数は4本とした。
光応答性ガス発生フィルム3は、アクリル系のバインダー樹脂にアゾ化合物を加え、これをPETフィルムに塗工することにより作製した。
保護層5は、PETフィルムに粘着剤を塗工することにより作製した。
【0217】
リムルスHS−Jシングルテストワコー(和光純薬社製)を注射用水(大塚製薬工場社製)に溶解し、エンドトキシン濃度が10000EU/mL(EUはエンドトキシン単位)の溶液(以下、エンドトキシン標準品1という)を調製した。エンドトキシン標準品1を注射用水(大塚製薬工場社製)にて希釈し、エンドトキシン濃度が0EU/mL、0.01EU/mL、0.05EU/mL、0.5EU/mL、1EU/mLの5種類の試料を調製した。
リムルス試薬3μLと各試料3μLを反応液貯留部7に導入した。物質測定用基板1を光照射装置にセットし、この状態で37℃のインキュベーターで30分間放置し、不溶性凝集物の生成反応を行った。
UV−LEDにて紫外線を10秒間照射して気体を発生させて、反応液25を反応液移動流路6の上流側端部8に接触させた。毛細管力によって反応液25が反応液移動流路6に導入され、移動を開始した。反応液25の移動が自然に止まるまで待った。上流側端部8から反応液25の先端までの距離を測定した。
【0218】
結果を図32に示す。図32に示すように、試料のエンドトキシン濃度が高いほど反応液25の移動度が小さくなった。これは、リムルス反応によって生成する不溶性凝集物の量が反応液25の移動度に影響し、かつ、その移動度をもってエンドトキシン測定を迅速かつ正確に行えることを示していた。
【実施例2】
【0219】
本実施例では、物質測定用基板1として、深さが上流から下流に向かって漸減するテーパ状を成した反応液移動流路6(図15)を有するものを使用した。物質測定用基板1のサイズ等は以下のとおりとした。
・物質測定用基板1:縦20mm、横150mm、厚み1mm
・反応液移動流路6の流路幅:20μm(一定)
・反応液移動流路6の流路深さ
上流側端部8(入口側断面):20μm
下流側端部16(出口側断面):5μm
・反応液移動流路6の流路断面積
上流側端部8(入口側断面):400平方マイクロメートル(20μm×20μm)
下流側端部16(出口側断面):100平方マイクロメートル(5μm×20μm)
・反応液移動流路6の流路長さ:100mm
上記以外は実施例1と同じ。
【0220】
エンドトキシン標準品1を注射用水(大塚製薬工場社製)にて希釈し、エンドトキシン濃度が0EU/mL、0.01EU/mL、0.1EU/mL、1EU/mLの4種類の試料を調製した。これらの試料を用い、実施例1と同様の手順で反応液25の移動距離を測定した。結果を図33に示す。図33に示すように、試料のエンドトキシン濃度が高いほど反応液25の移動度が小さくなった。これは、リムルス反応によって生成する不溶性凝集物の量が反応液25の移動度に影響し、かつ、その移動度をもってエンドトキシン測定を迅速かつ正確に行えることを示していた。
特に本実施例では、実施例1と比較して0〜0.1EU/mLの範囲で移動距離が大きくなり、低濃度域の分解能が向上していた。
【実施例3】
【0221】
実施例1と同じ物質測定用基板1を用いて、以下の実験を行った。
pH8.2の0.1M Tris−HCl緩衝液に懸濁したポリスチレン粒子(品名「Polybead Polystyrene Microspheres (2.5% Solids-Latex), 0.10μm」、直径0.10μm、フナコシ社)に、抗CRP抗体(品名「Anti-C-Reactive Protein, Goat-Poly」、フナコシ社)を加え、25℃で1時間撹拌した。遠心分離により粒子を沈降させて上清を除去した後、前記Tris−HCl緩衝液を加えて撹拌し、再び遠心分離により粒子を沈降させ、粒子を洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、1%BSAでブロッキングした。さらに同様の洗浄操作を行った後、粒子濃度を0.5%に調整し、抗CRP抗体−ラテックス試薬を作製した。濃度調整は、1.0%PEGを含むpH8.2の0.1M Tris−HCl緩衝液で行った。
【0222】
試料として、CRP(品名「C-Reactive Protein, Human, Native」、フナコシ社)を0μg/mL、12.5μg/mL、45μg/mL、又は90μg/mLに濃度調整した各溶液を使用した。
【0223】
上記作製の抗CRP抗体−ラテックス試薬3μLと各試料3μLを反応液貯留部7に導入した。物質測定用基板1を光照射装置にセットし、この状態で37℃のインキュベーター内で10分間放置し、不溶性凝集物の生成反応を行った。
【0224】
反応終了後、光照射装置にて紫外線を10秒間照射して気体を発生させ、反応液25を反応液移動流路6の上流側端部8に接触させた。毛細管力によって反応液25が反応液移動流路6内に導入され、反応液移動流路6に沿って移動を開始した。反応液25が自然に止まるまで待った。上流側端部8から反応液25の先端までの距離を測定した。測定結果を表1に示す。すなわち、試料のCRP濃度に応じて、反応液25の移動距離が変化していた。これにより、ラテックス凝集反応に基づくCRP測定を、物質測定用基板1を用いて行えることが示された。
【0225】
【表1】

【実施例4】
【0226】
実施例1と同じ物質測定用基板1を用いて、以下の実験を行った。
0.2mLの注射用水(大塚製薬工場社製)に、ポリスチレン粒子(品名「Polybead Polystyrene Microspheres (2.5% Solids-Latex), 0.10μm」、直径0.10μm、フナコシ社)と、LAL試薬の凍結乾燥体(リムルスES−IIシングルテストワコー;和光純薬社)加え、ボルテックスミキサーで撹拌・混和した。そのまま4℃で一晩放置し、ポリスチレン粒子の表面にLAL試薬を固定化した。その後、遠心分離により粒子を沈降させて上清を除去した後、注射用水を再び加えて撹拌した。この洗浄操作を3回繰り返した。注射用水にて粒子濃度を0.5%に調整し、LAL−ラテックス試薬を作製した。
【0227】
リムルスES−IIシングルテストワコー(和光純薬社製)を注射用水(大塚製薬工場社製)に溶解し、エンドトキシン濃度が10000EU/mLの溶液(以下、エンドトキシン標準品2という)を調製した。エンドトキシン標準品2を注射用水(大塚製薬工場社製)にて希釈し、エンドトキシン濃度が0EU/mL、0.025EU/mL、0.1EU/mL、0.5EU/mL、1EU/mLの5種類の試料を調製した。
【0228】
上記作製のLAL−ラテックス試薬3μLと各試料3μLを反応液貯留部7に導入した。物質測定用基板1を光照射装置にセットし、この状態で37℃のインキュベーター内で10分間放置し、不溶性凝集物の生成反応を行った。
【0229】
反応終了後、光照射装置にて紫外線を10秒間照射して気体を発生させ、反応液25を反応液移動流路6の上流側端部8に接触させた。毛細管力によって反応液25が反応液移動流路6内に導入され、反応液移動流路6に沿って移動を開始した。反応液25が自然に止まるまで待った。上流側端部8から反応液25の先端までの距離を測定した。測定結果を表2に示す。すなわち、試料のエンドトキシン濃度に応じて、反応液25の移動距離が変化していた。これにより、LAL反応とラテックス凝集反応の組み合わせに基づくエンドトキシン測定を、物質測定用基板1を用いて行えることが示された。
【0230】
【表2】

【実施例5】
【0231】
図17に示す物質測定用基板71を用いて、試料中のエンドトキシン濃度と液滴の移動度との関係を調べた。物質測定用基板71の液滴移動部は、図25に示す構成とした。液滴移動部の形状は、図26(a)に示す台形領域が12個連結したものとした。また、物質測定用基板71には基質保持部85を設けず、リムルス反応を基板外で行って当該反応液を試料導入部83から導入する方法を採用した。
【0232】
物質測定用基板71における各サイズは以下のとおりとした。
・物質測定用基板71:縦50mm、横25mm、厚み1mm
・液滴移動部81の流路深さ:0.2mm
・液滴移動部81を構成する台形領域(計12個):上底0.05mm、下底1mm、高さ(流れ方向の長さ)2mm(液滴移動部11の全長:24mm)
・台形領域の上底部分の断面積:10000平方マイクロメートル(0.2mm×0.05mm)
・台形領域の下底部分の断面積:200000平方マイクロメートル(0.2mm×1mm)
・液滴調製部80の流路幅:1mm
・液滴調製部80の流路深さ:0.5mm
・試料導入孔91の直径:1mm
・気体導入孔90の直径:1mm
・第一狭窄部51:流路幅0.05mm、流路長さ0.4mm、流路深さ0.05mm
・第二狭窄部52:流路幅0.05mm、流路長さ0.4mm、流路深さ0.05mm
【0233】
基板本体72としてアクリル樹脂製の基板を採用し、切削加工にて微細流路76を形成した。微細流路76の数は4本とした。
光応答性ガス発生フィルム73は、アクリル系のバインダー樹脂にアゾ化合物を加え、これをPETフィルムに塗工することにより作製した。
保護層75は、PETフィルムに粘着剤を塗工することにより作製した。
【0234】
実施例1で調製したエンドトキシン標準品1を注射用水(大塚製薬工場社製)にて希釈し、エンドトキシン濃度が0EU/mL、0.025EU/mL、0.05EU/mL、0.1EU/mLの4種類の試料を調製した。リムルス試薬を含む試験管に各試料を加え、37℃の恒温槽で15分間インキュベートした。各試験管に1%クマシーブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue (CBB)、コスモバイオ社製)を加え、試料を青色に着色した。着色した試料1μLを、物質測定用基板71の試料導入孔91から導入した。
物質測定用基板71を光照射装置にセットした。UV−LEDにて紫外線を60秒間照射して気体を発生させて、各試料の液滴に圧力を付与し、液滴移動部81に沿って移動させた。各試料について、液滴移動部81の移動距離を測定した。結果を表3に示す。
【0235】
【表3】

【0236】
表3に示すように、試料のエンドトキシン濃度が高いほど液滴の移動度が小さくなった。これは、リムルス反応によって生成する不溶性凝集物の量が液滴の移動度に影響し、かつ、その移動度をもってエンドトキシン測定を迅速かつ正確に行えることを示していた。
【符号の説明】
【0237】
1 物質測定用基板
3 光応答性ガス発生フィルム(気体供給手段)
6,6a,6b 反応液移動流路(微細流路)
7 反応液貯留部
8 上流側端部
14a,14b,14c,14d 反応液排出路
25,25a,25b 反応液
27a、27b,27c,27d 接続部
30 光照射装置
40 物質測定システム
41a〜41f 領域
42a〜42f 領域
43a〜43f 領域
44a〜44f 領域
45a〜45f 領域
46a〜46f 領域
47a〜47f 領域
48 目盛り
49a〜49f 領域
55 試薬
56a〜56d 領域
57a〜57d 領域
71 物質測定用基板
73 光応答性ガス発生フィルム(気体供給手段)
76,76a,76b 微細流路
95,95a,95b 液滴
97 物質測定システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不溶性凝集物の生成量に基づいて試料中に含まれる目的物質の濃度を測定する物質の測定方法であって
微細流路を備えた基板を用いるものであり、
前記微細流路内に導入又は配置された不溶性凝集物を含む反応液を、当該微細流路に沿って移動させ、その際の前記反応液の移動度によって前記試料中に含まれる目的物質の濃度を測定することを特徴とする物質の測定方法。
【請求項2】
前記微細流路の入口たる上流側端部に不溶性凝集物を含む反応液を接触させて、毛細管力によって当該反応液を前記微細流路内に導入するとともに当該微細流路内を移動させることを特徴とする請求項1に記載の物質の測定方法。
【請求項3】
前記基板は、前記上流側端部を介して微細流路内に連通する反応液貯留部を有し、
反応液貯留部に溜めた不溶性凝集物を含む反応液を、前記上流側端部に接触させ、微細流路内に導入することを特徴とする請求項2に記載の物質の測定方法。
【請求項4】
前記基板は、反応液貯留部に連通する反応液排出路を有し、
反応液貯留部に溜めた不溶性凝集物を含む反応液を、反応液貯留部と反応液排出路との接続部を横断させた後、前記上流側端部に到達させることを特徴とする請求項3に記載の物質の測定方法。
【請求項5】
前記反応液排出路は、1個の反応液貯留部に対して少なくとも2個設けられており、
前記接続部は、接続部同士を結ぶ直線が反応液の進行方向と直交する位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の物質の測定方法。
【請求項6】
前記接続部の位置を指標として、反応液貯留部に一定量の反応液を導入することを特徴とする請求項5に記載の物質の測定方法。
【請求項7】
反応液貯留部には不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め設置されており、目的物質を含む試料を反応液貯留部に導入し、反応液貯留部内で不溶性凝集物を含む反応液を調製することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の物質の測定方法。
【請求項8】
反応液貯留部内の前記反応液の体積は、微細流路の容積よりも大きいことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の物質の測定方法。
【請求項9】
微細流路の断面積は、1〜60000平方マイクロメートルの範囲であることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の物質の測定方法。
【請求項10】
不溶性凝集物を含む反応液に対して気体の圧力を付与して、当該反応液を前記上流側端部に向かって移動させ、前記上流側端部に接触させることを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載の物質の測定方法。
【請求項11】
気体は、光応答性ガス発生材に光を照射して発生させたものであることを特徴とする請求項10に記載の物質の測定方法。
【請求項12】
光応答性ガス発生材はフィルム状又はテープ状であり、基板に貼付して使用されることを特徴とする請求項11に記載の物質の測定方法。
【請求項13】
前記微細流路に不溶性凝集物を含む反応液の液滴を配置し、当該液滴に対して気体による圧力を付与して液滴を前記微細流路に沿って移動させることを特徴とする請求項1に記載の物質の測定方法。
【請求項14】
基板には不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め導入されており、目的物質を含む試料を前記基板に導入して基板内で前記基質類と接触させ、微細流路に配置される前記液滴を基板内で調製することを特徴とする請求項13に記載の物質の測定方法。
【請求項15】
気体は、光応答性ガス発生材に光を照射して発生させたものであることを特徴とする請求項13又は14に記載の物質の測定方法。
【請求項16】
光応答性ガス発生材はフィルム状又はテープ状であり、基板に貼付して使用されることを特徴とする請求項15に記載の物質の測定方法。
【請求項17】
微細流路の断面積が、反応液の移動方向に向かって漸減していることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の物質の測定方法。
【請求項18】
微細流路は、その深さ又は幅が反応液の移動方向に向かって漸減するテーパ状を成していることを特徴とする請求項17に記載の物質の測定方法。
【請求項19】
微細流路は、流れ方向に沿って区分された複数の領域を有することを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の物質の測定方法。
【請求項20】
不溶性凝集物は、リムルス反応、SLP反応、不溶性担体の凝集、不溶性担体の凝集とリムルス反応との組み合わせ、又は不溶性担体の凝集とSLP反応との組み合わせにより生成するものであることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の物質の測定方法。
【請求項21】
不溶性凝集物は、不溶性担体の凝集とリムルス反応との組み合わせにより生成するものであり、不溶性担体には、カブトガニの血球抽出成分が固定化されていることを特徴とする請求項20に記載の物質の測定方法。
【請求項22】
不溶性凝集物は、不溶性担体の凝集とリムルス反応との組み合わせにより生成するものであり、不溶性担体とカブトガニの血球抽出成分とを共存させることを特徴とする請求項20に記載の物質の測定方法。
【請求項23】
不溶性凝集物は、不溶性担体の凝集とSLP反応との組み合わせにより生成するものであり、不溶性担体には、昆虫の体液由来成分が固定化されていることを特徴とする請求項20に記載の物質の測定方法。
【請求項24】
不溶性凝集物は、不溶性担体の凝集とSLP反応との組み合わせにより生成するものであり、不溶性担体と昆虫の体液由来成分とを共存させることを特徴とする請求項20に記載の物質の測定方法。
【請求項25】
不溶性担体は、ラテックス粒子であることを特徴とする請求項20〜24のいずれかに記載の物質の測定方法。
【請求項26】
不溶性担体は、標識粒子であることを特徴とする請求項20〜25のいずれかに記載の物質の測定方法。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれかに記載の物質の測定方法に用いるための基板であって、
不溶性凝集物を含む反応液が移動するための微細流路を備え、
前記微細流路は、流れ方向に沿って区分された複数の領域を有することを特徴とする物質測定用基板。
【請求項28】
微細流路の上流側に位置し、微細流路の上流側端部を介して微細流路内に連通する反応液貯留部をさらに備えたことを特徴とする請求項27に記載の物質測定用基板。
【請求項29】
反応液貯留部に連通する少なくとも2個の反応液排出路をさらに備え、
反応液貯留部と反応液排出路との接続部は、接続部同士を結ぶ直線が微細流路の延長線と直交する位置に設けられていることを特徴とする請求項28に記載の物質測定用基板。
【請求項30】
微細流路と、
微細流路の上流側に位置し、微細流路の上流側端部を介して微細流路内に連通する反応液貯留部と、
反応液貯留部に連通する少なくとも2個の反応液排出路とを備え、
反応液貯留部と反応液排出路との接続部は、接続部同士を結ぶ直線が微細流路の延長線と直交する位置に設けられていることを特徴とする物質測定用基板。
【請求項31】
請求項1〜26のいずれかに記載の物質の測定方法に用いるための物質測定用基板であって、
不溶性凝集物を含む反応液が移動するための微細流路と、
微細流路の上流側に位置し、微細流路の上流側端部を介して微細流路内に連通する反応液貯留部と、
反応液貯留部に連通する少なくとも2個の反応液排出路とを備え、
反応液貯留部と反応液排出路との接続部は、接続部同士を結ぶ直線が微細流路の延長線と直交する位置に設けられていることを特徴とする物質測定用基板。
【請求項32】
反応液貯留部には不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め設置されており、目的物質を含む試料を反応液貯留部に導入し、反応液貯留部内で不溶性凝集物を含む反応液を調製可能であることを特徴とする請求項28〜31のいずれかに記載の物質測定用基板。
【請求項33】
前記基質類は、カブトガニの血球抽出成分、昆虫の体液由来成分、抗原又は抗体が固定化された不溶性担体、カブトガニの血球抽出成分が固定化された不溶性担体、不溶性担体とカブトガニの血球抽出成分との共存物、昆虫の体液由来成分が固定化された不溶性担体、又は不溶性担体と昆虫の体液由来成分との共存物であることを特徴とする請求項32に記載の物質測定用基板。
【請求項34】
不溶性担体は、ラテックス粒子であることを特徴とする請求項33に記載の物質測定用基板。
【請求項35】
不溶性担体は、標識粒子であることを特徴とする請求項33又34に記載の物質測定用基板。
【請求項36】
反応液貯留部内の容積は、微細流路の容積よりも大きいことを特徴とする請求項28〜35のいずれかに記載の物質測定用基板。
【請求項37】
微細流路の断面積は、2500〜1000000平方マイクロメートルの範囲であることを特徴とする請求項28〜36のいずれかに記載の物質測定用基板。
【請求項38】
反応液貯留部に気体を供給する気体供給手段をさらに備えたことを特徴とする請求項28〜37のいずれかに記載の物質測定用基板。
【請求項39】
気体供給手段は、光応答性ガス発生材からなることを特徴とする請求項38に記載の物質測定用基板。
【請求項40】
光応答性ガス発生材はフィルム状又はテープ状であり、基板の少なくとも一方の面に貼付されていることを特徴とする請求項39に記載の物質測定用基板。
【請求項41】
微細流路に気体を供給する気体供給手段をさらに備えたことを特徴とする請求項27に記載の物質測定用基板。
【請求項42】
基板内に不溶性凝集物の生成に必要な基質類が予め導入されており、目的物質を含む試料を基板に導入して基板内で前記基質類と接触させ、微細流路に導入又は配置される不溶性凝集物を含む反応液を基板内で調製可能であることを特徴とする請求項41に記載の物質測定用基板。
【請求項43】
前記基質類は、カブトガニの血球抽出成分、昆虫の体液由来成分、抗原又は抗体が固定化された不溶性担体、カブトガニの血球抽出成分が固定化された不溶性担体、不溶性担体とカブトガニの血球抽出成分との共存物、昆虫の体液由来成分が固定化された不溶性担体、又は不溶性担体と昆虫の体液由来成分との共存物であることを特徴とする請求項42に記載の物質測定用基板。
【請求項44】
不溶性担体は、ラテックス粒子であることを特徴とする請求項43に記載の物質測定用基板。
【請求項45】
不溶性担体は、標識粒子であることを特徴とする請求項43又44に記載の物質測定用基板。
【請求項46】
微細流路を区分している前記複数の領域において、隣接する前記領域間の境界前後で、微細流路の断面形状又は断面積が変化することを特徴とする請求項41〜45のいずれかに記載の物質測定用基板。
【請求項47】
微細流路は屈折路を有し、当該屈折路の屈折部によって複数の領域に区分されていることを特徴とする請求項41〜45のいずれかに記載の物質測定用基板。
【請求項48】
微細流路の少なくとも1箇所に、不溶性凝集物の生成を促進する試薬が設置されており、当該試薬の設置部位によって微細流路が複数の領域に区分されていることを特徴とする請求項41〜45のいずれかに記載の物質測定用基板。
【請求項49】
気体供給手段は、光応答性ガス発生材からなることを特徴とする請求項41〜48のいずれかに記載の物質測定用基板。
【請求項50】
光応答性ガス発生材はフィルム状又はテープ状であり、基板の少なくとも一方の面に貼付されていることを特徴とする請求項49に記載の物質測定用基板。
【請求項51】
微細流路の断面積が、流れ方向に向かって漸減していることを特徴とする請求項27〜50のいずれかに記載の物質測定用基板。
【請求項52】
微細流路は、その深さ又は幅が反応液の流れ方向に向かって漸減するテーパ状を成していることを特徴とする請求項51に記載の物質測定用基板。
【請求項53】
微細流路内の反応液を目視可能であることを特徴とする請求項27〜52のいずれかに記載の物質測定用基板。
【請求項54】
微細流路を複数備え、複数の微細流路は互いに平行に配されていることを特徴とする請求項27〜53のいずれかに記載の物質測定用基板。
【請求項55】
請求項39、40、49又は50に記載の物質測定用基板と、光照射装置を備えたことを特徴とする物質測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−215535(P2012−215535A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123364(P2011−123364)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】